管腔内人工装具および管腔内人工装具を被膜するための方法
管腔内人工装具は、その外面の少なくとも一部に対して付着する被膜を有する骨格を含む。表面は改変され、被膜の結合を増強する。例えば、表面は、ポリマー被膜が骨格に、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力に付着することを可能とする、マイクロブラスティング、レーザー処置、化学エッチング、プラズマへの曝露、またはコロナ放電への曝露を受けてよい。被膜を用いて、その中に分散される治療作用物質または他の作用物質を送達することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、全般に、医療機器およびそれらの調製法に関する。より具体的に、本発明は、ポリマー被膜を有する管腔内人工装具およびそれらの調製法に関する。
【0002】
管腔内人工装具は、各体内管腔、とりわけ、血管系および尿管における開存を維持するのに用いる。管腔内人工装具の最も一般的な形態は、「ステント」と称し、体内管腔のセグメントを開放に保つために、またはこれを補強するために展開される、一般に管状の骨格である。ステントは、一般に、血管系において用いられ、そこで、冠動脈、頸動脈、大腿動脈のほか、末梢動脈系および同静脈系に展開される。しかし、ステントおよび他の管腔内人工装具は、また、大動脈瘤、胸部大動脈瘤の治療、人工生体弁の支援、および他の目的にも用いられる。
【0003】
ステントは、典型的には、カテーテルを用いて、体内管腔内の標的領域に送達される。バルーン拡張型ステントは、一般に、バルーン型カテーテルに取り付け、標的領域に誘導し、バルーンを膨張させることにより拡張する。自己拡張型ステントは、シースまたは他の管状部分内に拘束しながら標的領域へ送達することが最も多い。標的領域に到達すると、拘束を除去することができ、ステントは拡張し、体内管腔内に展開される。
【0004】
ステントおよび他の管腔内人工装具は、また、各種の目的に応じて、薬剤および医薬作用物質を体内管腔内に運び溶出するように改変してもよい。血管系内において、薬剤および医薬作用物質は、典型的には、組織炎症、再閉塞、もしくは血栓を軽減し、かつ/または、該機器の治癒効果および生体適合性を高めることを意図する。本発明にとって特に重要なのは、薬剤および他の医薬作用物質が、しばしば、ステント表面の少なくとも一部分にわたり被覆されたポリマーマトリックスから溶出することである。有効であるため、ポリマーは、ステントの調製および加工のほか、血管系および他の体内管腔内における後続の拡張にも適応する能力を有するべきである。特に、被膜は、ステントが送達過程中に圧縮、拡張、または他の形で変形する際の、変形および歪みから生じうるクラッキングまたはスミアリングが最小または皆無であるべきである。
【0005】
これらの理由から、被覆された人工装具の改善、こうした被覆された人工装具を送達するカテーテル、および、こうした被覆された人工装具を製作する方法を提供することが望ましいであろう。特に、人工装具上の被膜は、製作、調製、および標的体内管腔への送達時におけるクラッキングおよびスミアリングに耐えるべきである。送達用カテーテルは、さらに、送達時のクラッキングおよびスミアリングを軽減する一助となるべきである。最後に、製作法は、クラッキングおよびスミアリングに耐える被膜を促進する形で、人工装具に被膜を施すべきである。これらの目的の少なくとも一部は、以下に記載の本発明により満たされるであろう。
【背景技術】
【0006】
2.先行技術の説明
以下の米国特許および特許公開:特許文献1〜28が、薬剤送達および他の目的のポリマーおよび他の被膜を有する、管腔内人工装具および他の植込み式機器について記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,232,573号明細書
【特許文献2】米国特許第7,163,555号明細書
【特許文献3】米国特許第7,055,237号明細書
【特許文献4】米国特許第7,008,979号明細書
【特許文献5】米国特許第6,984,393号明細書
【特許文献6】米国特許第6,918,929号明細書
【特許文献7】米国特許第6,855,770号明細書
【特許文献8】米国特許第6,824,559号明細書
【特許文献9】米国特許第6,712,846号明細書
【特許文献10】米国特許第6,653,426号明細書
【特許文献11】米国特許第6,592,895号明細書
【特許文献12】米国特許第6,653,426号明細書
【特許文献13】米国特許第6,224,894号明細書
【特許文献14】米国特許第6,120,847号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2007/0207184号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2007/0185569号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2007/0168012号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2007/0123973号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2007/0106371号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2007/0073016号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2007/0003592号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2006/0282166号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2006/0257355号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2006/0212106号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2006/0198868号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2006/0093771号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2006/0067908号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2005/0271700号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本発明は、管腔内人工装具、こうした人工装具を送達するためのカテーテルアセンブリー、およびこうした人工装具を製作する方法を提供する。管腔内人工装具は、改変された表面領域と相互作用して、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な、表面への被膜の付着を提供する材料を含む被膜を有する、改変された表面領域を有する骨格を含む。管腔内人工装具は、生理的環境において柔軟化し、改変された表面領域と相互作用して、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な、表面への被膜の付着を提供する材料を含む被膜を有する、改変された表面領域を有する骨格を含む。被膜は、以下に論じる通り、典型的には、ポリマーを含むが、また、タンパク質、ペプチド、細胞外マトリックス、金属、合金、セラミックスなども含むことができ、被膜中に分散され分配されるか、または被膜に隣接する治療作用物質または他の作用物質を有し、生理的環境において被膜から放出されることを意図する。
【0009】
骨格は、典型的には、管腔内ステントの形態であり、冠動脈領域または他の血管系疾患を治療するために、患者の血管系内部への植え込みを意図するステントであることがより典型的である。より一般的に、ステントは金属から形成される。金属製ステントは、バルーン拡張型でもよく、自己拡張型でもよい。最も一般的なバルーン拡張型ステントは、ステンレス鋼またはコバルト−クローム合金で形成される。自己拡張型ステントは、ニッケル−チタン合金、または、場合によって、スプリングステンレス鋼で形成されるのが最も一般的である。金属製ステントに加え、本発明の骨格は、バルーン拡張型(展性)ポリマー、および、自己拡張型骨格を調製するのに用いうる弾性ポリマーを共に含む、ポリマー材料から形成してよい。ステントパターンおよびステント材料の具体的な例は、本明細書の後出で提供される。
【0010】
好ましい被膜材料は、生理的温度(37℃)を下回るガラス転移温度を有するポリマーを含む。こうしたポリマーは、非浸食性でもよく、浸食性(血管系または他の管腔内環境内部において生体分解性)でもよい。適切な浸食性または生体分解性ポリマーは、50KDaを上回り、通常150KDaを超え、しばしば200KDaを超える分子量を有することが典型的である。こうした浸食性または生体分解性被膜は、多種多様な分解時間を有しうる。例えば、比較的迅速に、例えば、6カ月未満、しばしば、3カ月未満、および、好ましい実施形態では、1カ月未満の期間にわたり分解するポリマーを用いることが望ましいことがある。本発明で用いるのに適する生体分解性ポリマーは、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリマーのポリエチレングリコールファミリーのコポリマーを含む。好ましい生体分解性ポリマーは、血管系環境に存在すると6カ月未満、しばしば3カ月未満、および、通常1カ月未満で実質的に分解する、150KDa以上の分子量を有するポリエチレンカーボネート(PEC)である。
【0011】
第2の例示的な浸食性ポリマーは、ポリ−L−ラクチドおよびトリメチレンカーボネートのコポリマー(PLLA:TMC)を含む。PLLA:TMC中のPLLAモル百分率は、50%PLLA〜95%PLLAの範囲であることが可能で、このポリマー被膜は、4年未満、より好ましくは2年未満、最も好ましくは1年未満で実質的に分解する。
【0012】
別の実施形態において、浸食性ポリマー被膜は、ポリ−L−ラクチドおよびポリグリコール酸のコポリマー(PLLA:GA)を含む。PLLA:GA中のPLLAモル百分率は、50%PLLA〜95%PLLAの範囲でありうる。
【0013】
別の実施形態において、浸食性ポリマー被膜は、ポリラクチドおよびポリエチレングリコールのコポリマー(PLA:PEG)を含む。PLA:PEG中のPLAモル百分率は、50%PLA〜99%PLAの範囲であることが可能で、このポリマー被膜は、2年未満、より好ましくは1年未満、最も好ましくは9カ月未満で分解する。
【0014】
例示的な非浸食性ポリマー組成物は、ポリ(アルキルメタクリレート)ポリマーを含む。好ましい実施形態において、ポリマーは、ポリ−n−ブチルメタクリレート(PBMA)である。非浸食性ポリマーは、典型的には、500KDaを超える分子量を有し、例示的なPBMAステント被膜は、700KDaを超える分子量を有する。
【0015】
上記のポリマー材料は、通常、ポリマー被膜により組み込まれ送達される治療作用物質または他の作用物質を除き、添加物または他の材料をわずかしかまたは全く含まない純粋製剤または純製剤中に存在する。しかし、他の場合において、上記のポリマーは、当技術分野で知られる目的の他の材料またはポリマーと組み合わせうる。こうした付加的材料は、可塑剤、抗酸化剤、安定化剤などを含む。
【0016】
骨格上のポリマーまたは他の被膜は、典型的には、0.1μm〜100μm、好ましくは1μm〜50μm、および、より好ましくは3μm〜10μmの範囲の厚さを有する。ポリマー被膜の量は、計10μg〜5mg、好ましくは25μg〜1mg、および、より好ましくは100mg〜500mgの範囲でありうる。
【0017】
ポリマー被膜は、典型的には、1つまたは複数の治療作用物質または他の作用物質を、比較的高添加百分率で含む。治療作用物質または他の作用物質は、総被膜重量(ポリマーおよび治療作用物質を共に含む)の30%を超える量、より好ましくは、総被膜重量の60%を超える量、および、最も好ましくは、総被膜重量の65%以上の量でポリマー内に存在することが典型的である。上述の通り、非ポリマー材料の総添加量は、上記の重量百分率の範囲内に保つのが望ましいが、他の材料もまた、ポリマー被膜内に含めうる。
【0018】
ポリマー内における治療作用物質または他の作用物質の添加量は、骨格面積に基づき、1ng/cm2〜1000μg/cm2、好ましくは1μg/cm2〜500μg/cm2、より好ましくは10μg/cm2〜400μg/cm2の範囲でありうる。治療作用物質または他の作用物質は、1ng/cm2/日〜1000μg/cm2/日、好ましくは1μg/cm2/日〜200μg/cm2/日、より好ましくは5μg/cm2/日〜100μg/cm2/日の範囲の速度でポリマー被膜から放出される。ポリマー被覆されたステントに隣接する組織における治療作用物質の取り込みは、0.001ng/組織g〜1000μg/組織g、好ましくは1ng/組織g〜100μg/組織g、より好ましくは100ng/組織g〜50μg/組織gの範囲でありうる。治療作用物質は、通常、1日間〜6カ月間、好ましくは1週間〜3カ月間、より好ましくは2〜6週間の範囲の時間にわたり、人工装具から実質的に完全に放出される。非浸食性ステントからの治療作用物質または他の作用物質の放出は、典型的には、ポリマーマトリックス内に形成された孔隙構造または他の貯留層の性質に依存する。浸食性ステントの場合、治療作用物質または他の作用物質は、ポリマーの浸食前に、孔隙ネットワークまたは他の貯留層の構造を介して同様に放出される場合もある。しかし、他の場合、治療作用物質の放出は、少なくとも部分的には、経時的なポリマー浸食の結果として生じる場合がある。
【0019】
ポリマー被膜内に保有されうる例示的な治療作用物質は、免疫調節物質、抗癌剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、抗真菌剤、抗糖尿病剤、抗高脂血症剤、抗血管新生剤、血管形成剤、降圧剤、もしくは他の治療クラスの薬剤、またはこれらの組合せを含む。
【0020】
例えば、免疫調節剤は、ラパマイシン、エベロリムス、ノボリムス、ABT 578、AP20840、AP23841、AP23573、CCI−779、重水素化ラパマイシン、TAFA93、タクロリムス、シクロスポリン、TKB662、ミリオシン、これらの類似体、プロドラッグ、塩、もしくはその他、またはこれらの組合せを含むがこれらに限定されない。
【0021】
例示的な抗癌剤は、アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール、アクロニシン、アドゼレシン、アラノシン、アルデスロイキン、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アモナフィド、アンプリゲン、アムサクリン、アンドロゲン、アングイジン、グリシン酸アフィジコリン、アサレイ、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、カルメット−ゲラン菌(BCG)、ベイカーのアンチフォル(可溶性)、ベータ−2’−デオキシチオグアノシン、ビサントレンHCl、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルフォキシミン、BWA 773U82、BW 502U83.HCl、BW 7U85メシレート、セラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、クロロキノキサリン−スルホンアミド、クロロゾトシン、クロモマイシンA3、シスプラチン、クラドリビン、コルチコステロイド、コリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)、CPT−11、クリスナトール、シクロシチジン、シクロホスファミド、シタラビン、シテムベナ、ダビスマレアート、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、デアザウリジン、デクスラゾキサン、ジアンヒドロガラクチトール、ジアジコン、ジブロモヅルシトール、ジデムニンB、ジエチルジチオカルバメート、ジグリコアルデヒド、ジヒドロ−5−アザシチジン、ドキソルビシン、エキノマイシン、エダトレキサート、エデルフォシン、エフロミチン、エリオットの溶液、エルサミトルシン、エピルビシン、エソルビシン、リン酸エストラムスチン、エストロゲン、エタニダゾール、エチオフォス、エトポシド、ファドラゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボン酢酸、フロクスリジン、リン酸フルダラビン、5−フルオロウラシル、フルオゾル、RTM、フルタミド、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、酢酸ゴセレリン、ヘプスルファム、ヘキサメチレンビスアセタミド、ホモハリングトニン、硫酸ヒドラジン、4−ヒドロキシアンドロステンジオン、ヒドロジウレア、イダルビシンHCl、イホスファミド、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターロイキン−1アルファおよびベータ、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−6、4−イポメアノール、イプロプラチン、イソトレチノイン、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、レバミゾール、リポソーマルダウノルビシン、リポソーム封入型ドキソルビシン、ロムスチン、ロニダミン、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、メルファラン、メノガリル、メルバロン、6−メルカプトプリン、メスナ、カルメット−ゲラン菌のメタノール抽出による残留物、メトトレキサート、N−メチルホルムアミド、ミフェプリストン、ミトグアゾン、マイトマイシン−C、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、単球/マクロファージコロニー刺激因子、ナビロン、ナフォキシジン、ネオカルジノスタチン、酢酸オクトレオチド、オルマプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パラ、ペントスタチン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、PIXY−321、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プレドニムスチン、プロカルバジン、プロゲスチン、ピラゾフリン、ラゾキサン、レベロマイシン、サルグラモシチム、セムスチン、スピロゲルマニウム、スピロムスチン、ストレプトニグリン、スレプトゾシン、スロフェヌル、スラミンナトリウム、タモキシフェン、タキソテレ、テガフル、テニポシド、テレフタルアミジン、テロキシロン、チオグアニン、チオテパ、チミジン注射、チアゾフリン、トポテカン、トレミフェン、トレチノイン、塩酸トリフルオペラジン、トリフルジン、トリメトレキサート、腫瘍壊死因子、ウラシルマスタード、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンゾリジン、Yoshi 864、ゾルビシン、QP−2、エポチロンD、エポチロンC、パクリタキセル、ドセタキセルなどのタキソール、ABJ879、パツピロン、MN−029、BMS247550、ET−743などのエクテイナシジン、テトラヒドロイソキノリンアルカロイド、シロリムス、アクチノマイシン、メトトレキサート、アンチオペプチン、ビンクリスチン、マイトマイシン、2−クロロケオキシアデノシンその他、カスポフンギン、ファルネシル化ジベンゾジアゼピノン、ECO−4601、フルコナゾール、その他などの抗真菌剤、フォリスタチン、レプチン、ミドキン、アンギオゲニン、アンギオポエチン−1、ベカプレルミン、レグラネックスなどの血管形成剤、カンスタチン、アンギオスタチン、エンドスタチン、レチノイド、ツミスタチン、バスキュロスタチン、アンギオアレスチン、バソスタチン、ベバシズマブ、プリノマスタット、その他などの抗血管新生剤、メトフォルミンなどの抗糖尿病剤、カンデサルタン、ジオバン、ジルチアゼム、アテノロール、アダラート、その他などの降圧剤、ラノラジン、二硝酸イソソルビドその他などの抗貧血剤を含む。
【0022】
例示的な抗炎症剤は、アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、テノキシカム、トルメチン、ケトロラク、オキサプロシン、メフェナミン酸、フェノプロフェン、ナムブメトン(レラフェン)、アセトアミノフェン(タイレノールRTM)、およびこれらの混合物などの標準的な非ステロイド抗炎症剤(NSAIDS);ニメスリド、NS−398、フロスリド、L−745337、セレコキシブ、ロフェコキシブ、SC−57666、DuP−697、パレコキシブナトリウム、JTE−522、バルデコキシブ、SC−58125、エトリコキシブ、RS−57067、L−748780、L−761066、APHS、エトドラク、メロキシカム、S−2474、およびこれらの混合物などのCOX−2阻害剤;ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、フルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン、プロピオン酸フルチカゾン、ピロキシカム、セレオキシブ、メフェナミン酸、トラマドール、メロキシカム、メチルプレドニゾン、シュードプテロシン、その他などのグルココルチコイド;ゾレドロニン酸、アレンドロネートその他などの高カルシウム血症剤;プラビクス、ヘパリン、アリクストラ、およびフラクシパリンその他、またはこれらの混合物などの抗血栓剤を含む。
【0023】
治療作用物質は、また、上に列挙した医薬作用物質の類似体、プロドラッグ、誘導体、前駆体、フラグメント、塩、または、他の改変体もしくは変異体を含む。別の実施形態において、被膜は、RGDペプチド配列などのペプチド、硫酸ヘパリン、硫酸コンドロイチンなどの細胞外マトリックス、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、アルブミンなどのタンパク質、もしくはその他の内皮細胞接着作用物質および/または成長促進作用物質を含有する。一実施形態において、被膜は、人工装具表面に直接に塗布される。別の実施形態において、被膜は、ポリマーおよび/または治療作用物質内に分配または分散される。一実施形態において、内皮細胞接着作用物質および/または成長促進作用物質は、人工装具に付着される。別の実施形態において、内皮細胞接着作用物質および/または成長促進作用物質は、植え込み後、経時的に人工装具から放出される。該作用物質は、6時間〜7日間、好ましくは7日間〜30日間、最も好ましくは30日間〜6カ月間の範囲の期間にわたり、人工装具から放出されうる。別の実施形態において、内皮細胞接着作用物質および/または成長促進作用物質は、ポリマーおよび/または治療作用物質に対する上塗りとして塗布される。被膜の厚さは、5μm、好ましくは1μm未満、最も好ましくは0.1μm未満である。被膜は、スプレー、浸漬被覆、刷毛塗り、分注、または他の手段によって施すことが可能である。
【0024】
本発明は、また、カテーテル本体の遠位端付近に位置するのが典型的な、拡張型ポリマー製バルーンを有するカテーテルを含むカテーテルアセンブリーも提供する。管腔内人工装具は、拡張型バルーン上に担持され、上記で詳述した通り、人工装具は、一般に、骨格と、骨格内の改変された領域全体に形成される被膜とを含む。
【0025】
本発明のさらに別の態様において、管腔骨格は、骨格表面領域の少なくとも一部分を改変し、改変された表面領域全体に材料を被覆することにより、材料で被覆してよい。改変は、ポリマー被膜の付着を増大させるために実施し、被膜と改変された表面とが相互作用して、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な付着を有する。管腔骨格および例示的なポリマーは、管腔内人工装具自体の構造との関連で上述したのと同じでありうる。表面改変は、骨格表面の標的領域におけるポリマー被膜の付着を促進することを意図する各種の処置の任意の1つであってよい。特に、付着が、ステントの圧縮時、加工時、または展開時の拡張時における被膜のクラッキングもしくはスミアリングを防止または最小化するのに十分であることが望ましい。表面のテクスチャリングは、マイクロブラスティング、レーザー処置、化学エッチング、プラズマ曝露、またはコロナ曝露を含む各種の方法を介して達成しうる好ましい改変である。表面改変は、完全でもよく、部分的もしくは選択的でもよく、骨格の曝露された表面の全体または一部分に及ぶ。
【0026】
具体例として、マイクロブラスティングにより改変された表面は、丸形、溝、規則的または不規則的な形の特徴部を提示しうる。特徴部の平均サイズ(最大長、直径、または幅)は、好ましくは50nm〜50μm、より好ましくは1μm〜10μm、および、最も好ましくは5μm〜10μmで変化しうる。特徴部の平均深さは、好ましくは50nm〜50μm、より好ましくは1μm〜10μm、および、最も好ましくは5μm〜10μmで変化しうる。特徴部の平均密度は、好ましくは1μm2当たり0.001〜0.10箇所、より好ましくは1μm2当たり0.003〜0.05箇所、および、最も好ましくは1μm2当たり0.005〜0.02箇所である。マイクロブラスティング用ブラスティング媒体の平均サイズは、好ましくは5μm〜100μm、より好ましくは20μm〜50μmである。ブラスティング媒体の種類は、酸化アルミニウム、ガラス、金属、または当技術分野で知られる他の媒体で作製しうる。
【0027】
ステント表面の改変は、高率の治療作用物質を含有するポリマー被膜組成物が、最小のクラッキングもしくはスミアリングで、またはこれらなしに圧縮または拡張されることを可能とする。一実施形態において、ポリマー組成物中の治療作用物質の百分率は、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な付着をなおも維持しながら、約40%以上、好ましくは65%以上、および、より好ましくは約80%以上でありうる。
【0028】
骨格の表面領域が上記の通りに改変された後で、典型的には、治療作用物質または他の作用物質と共にポリマーを塗布する。ポリマーおよび治療作用物質または他の作用物質は、通常、ステント表面に被膜を施す前に、1つまたは複数の溶媒中で溶解させる。溶媒の選択は、ポリマーおよび治療作用物質の溶解度に基づくのが典型的である。溶媒は、クラッキングもしくはスミアリングを最小化もしくは除去する、または圧縮もしくは拡張時におけるステントへの被膜の付着を増進する付加的な特性を有するように選択するのが好ましい。
【0029】
ステント上のポリマー被膜中の残留溶媒は、被膜のクラッキングまたはスミアリングに有害な影響を及ぼしうる。本明細書において、本発明者らにより、低沸点、高蒸発速度、低粘度、および/または高蒸気圧を有する溶媒が、ポリマー被膜中の残留溶媒を最小化することが判明している。溶媒を適正に選択することにより、ポリマー中の残留溶媒は、ステント被覆後に10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、および、より好ましくは1000ppm未満である。被膜を溶解させるのに用いる溶媒は、10以上の相対蒸発速度(n−ブチルアセテートに対する速度1に対する)を有することが好ましい。溶媒は、また、60℃以下の沸点を有することも好ましい。さらに、溶媒は、20℃において50mmHg以上の蒸気圧を有することが好ましい。さらにまた、溶媒は、25℃において1cP以下の粘度を有することが好ましい。
【0030】
ステント材料との表面張力が低い溶媒は、被膜によりステント表面の湿性を増大させ、ステントの改変された表面への被膜の付着を増大させるのに好ましい。溶媒は、70ダイン/cm未満、好ましくは50ダイン/cm未満、より好ましくは30ダイン/cm未満の表面張力を有することが好ましい。
【0031】
本明細書において本発明者らにより考案された経験的な式を用いて、どの溶媒が被膜を溶液中に溶解させ、該溶液を用いて最小の残留溶媒でステントに被膜を施す要件を最もよく満たすかを判定することができる。被膜溶媒指数は、以下の式:
【0032】
【化1】
を用いて計算される。一部の典型的な溶媒の特性および指数を、以下の表1に提示する。
【0033】
【表1−1】
【0034】
【表1−2】
。
【0035】
本発明は、被膜溶媒指数が1より大きい、好ましくは10より大きい、および、より好ましくは20より大きい溶媒の使用を主張する。
【0036】
上記の通りに管腔内人工装具を調製した後で、これを送達用カテーテルに装着する。バルーン拡張型人工装具の場合、バルーン型カテーテルは、典型的にはポリマー、より典型的には非伸張性ポリマーから形成される、膨張式バルーンを有する。人工装具の骨格は、典型的には、圧縮してバルーン上に取り付け、その後、ステントおよびバルーンをポリマーシース内に入れ、高圧下で加熱する。従来のこうした熱硬化(heat setting)は、バルーンの一部をステントエレメント間の隙間内へ「膨張(pillowing)」させて、骨格を送達バルーンに埋め込むことを支援する。熱硬化は、かつて、ポリマー被膜内にクラッキングまたはスミアリングを引き起こす傾向があったが、被膜ポリマーの場合よりも低いガラス転移温度を有するバルーンを用いることにより、被膜ポリマー材料に有害な影響を及ぼす温度よりも低い温度での熱硬化が可能となる。
【0037】
本発明のさらに別の態様では、圧縮および拡張時における表面応力を最小化するように設計された特定の骨格構造が提供される。管腔骨格は、クラウンにより接合されたストラットを有する、軸方向に接合された複数の蛇行リングを含む。隣接するリングにおける対向するクラウンは、直線状の結合部リンクにより結合され、ここで、一連の隣接するリングペア間の結合部は、軸方向に対して反対方向の角度を有する。好ましい実施形態において、結合部は、軸方向に対して40°〜60°の範囲の角度に配置される。骨格は、典型的には、6〜12箇所のクラウン、および、隣接するリングの各ペア間において正反対に対向する2〜4箇所の結合部を含む。結合部は、通常、約0.025mm〜2.5mmの範囲の長さを有し、クラウンは、5°〜75°の範囲の回転角でオフセットし、0.25mm〜0.1mmの範囲の距離で軸方向に分離している。結合部の幅および/または厚さは、クラウンの幅および/または厚さよりも小さいのが典型的である。こうして、クラウンは、通常、骨格半径方向の最大拡張において50%以下の歪みを有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の原理に従い構築された例示的な骨格構造を示す図である。
【図2】本発明の原理に従い構築された例示的な骨格構造を示す図である。
【図3】実施例1に記載の通りに調製された、管腔骨格の外側のSEM画像である。
【図4】実施例3において調製された、骨格の表面特徴部を示すSEM画像である。
【図5】実施例7に記載の通りに取り付けおよび拡張した後における、実施例5で調製されたステントの内側の光学顕微鏡画像である。
【図6】実施例7に記載のステントの外側直径の光学顕微鏡画像である。
【図7】実施例8に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおける28日間の植え込み後において、PECおよびPBMAで被覆されたステントの新生内膜面積を、裸の金属製ステントと比較するチャートである。
【図8】植え込みの90日後における結果を示す、図7と同様の図である。
【図9】実施例9に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおける28日間の植え込み後において、PEC薬剤被覆ステントにより達成された新生内膜面積を、ラパマイシン溶出Cypher(商標)ステントにおいて達成された新生内膜面積と比較する図である。
【図10】植え込みの90日後における結果を示す、図9と同様の図である。
【図11】ブタ冠動脈モデルにおける180日間の植え込み後において、PEC被覆ステントにより達成された新生内膜面積を、ラパマイシン溶出Cypher(商標)ステントにおいて達成された新生内膜面積と比較する図である。
【図12】ブタ冠動脈モデルにおける、被覆したステントからのPECの経時的な放出百分率を示すグラフである。
【図13】実施例10に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおいて、異なる時点で達成された、PECの組織濃度を示すグラフである。
【図14】実施例11に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおける28日間の植え込み後において、PBMA被覆ステントにより達成された新生内膜面積を、ラパマイシン溶出Cypher(商標)ステントにおいて得られた新生内膜面積と比較する図である。
【図15】植え込みの90日後における結果を示す、図14と同様の図である。
【図16】実施例11に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおいて、被覆したステントから経時的に放出されたPBMAの百分率を示すグラフである。
【図17】実施例12に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおいて、被覆したステントから経時的に放出されたPBMAの組織濃度を示すグラフである。
【図18】実施例12に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおける28日間の植え込み後において、PLLA−TMC被覆ステントにより達成された新生内膜面積を、ラパマイシン溶出Cypher(商標)ステントと比較する図である。
【図19】実施例14に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおいて、被覆したステントから経時的に放出されたPLLA−TMCの百分率を示すグラフである。
【図20】実施例12に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおいて、経時的に放出されたPLLA−TMCの組織濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
発明の詳細な説明
被膜の応力、クラッキング、またはスミアリングを最小化するように設計された、例示的な血管系骨格を、図1および2に示す。骨格の基本構造は、長手方向の構造を形成する単位構成要素である蛇行リングを形成する、一連の相互結合されたクラウン12およびストラット14から形成される、格子様の枠組みである。リング間のリンク16は、骨格の可撓性に影響を及ぼす。リング間のリンク16は、通常、クラウンの中心線または頂点からわずかにオフセットした、クラウン12の外側先端部において結合され、次のリングが前のリングからオフセットすることで、ステントを屈曲させたとき、クラウンが接触し合うことを回避することを可能とするように方向づけられている。このオフセット量は、テイクオフ角により決定される。図2に示す通り、本発明は、リンクのテイクオフ角αが30°〜60°、より好ましくは45°〜55°であることを主張する。
【0040】
図1は、可撓性および側枝へのアクセスを提供する2箇所の結合部16および8箇所のクラウン12を有する、拡張状態における好ましい実施形態を示す。リングは、拡張時の十分な骨格支持を維持しながら、圧縮および屈曲時におけるクラウン間の接触を回避することによりストラット間の接触を最小化するように、わずかにオフセットしている。図2は、結合部が、50°のテイクオフ角でクラウン12の頂点からわずかにオフセットしたクラウンにどのように接合され、リングからリングへの方向をどのように変化させて不均等な拡張を最小化するかを示す。
【0041】
リンク長およびリンクの形状もまた、被膜プラットフォームとしての骨格の適切性に影響を及ぼしうる。リンクの形状は、クラウンへの干渉を回避するため、直線状であることが好ましい。また、リンク長は、圧縮および屈曲時におけるクラウン間の接触に対する干渉を回避するのに必要な最小のギャップを提供するように選択され、通常、0.025mm〜2.5mmである。リング間の長手方向のリンクは、圧縮状態において、リング間のギャップを増大させる。圧縮されたステントのリング間またはクラウン間の軸方向のギャップは、0.025mm〜0.5mm、好ましくは0.05mm〜0.1mm、および、より好ましくは0.1mm〜0.05mmの範囲である。
【0042】
本発明の別の態様は、リンク数を最小化して、ステントの可撓性を増進し、十分な側枝アクセスを提供することである。リンク数は、ステントのクラウン数に応じて変化しうる。リンク数は、クラウン数の倍数であることで、不均等な拡張を最小化しうる。例えば、9クラウンステントは、3箇所のリンクを有し、8クラウンステントは、2箇所または4箇所のリンクを有するなどである。クラウン数が増加するほど、所与の拡張時直径における骨格支持または支持範囲が広がる。例えば、2箇所のリンクを有する8クラウンステントは、所与の直径における同様のクラウン設計で2箇所のリンクを有する6クラウンステントよりもすぐれた骨格支持を提供する。好ましい実施形態では、2〜4箇所のリンクおよび6〜12箇所のクラウンを有する、2.5〜4.5mmの直径で拡張するステント設計が提供される。好ましい実施形態は、2箇所のリンクおよび8箇所のクラウンを有し、1つのステントパターンで全直径範囲をカバーするステントである。
【0043】
本発明の別の態様は、リンクの幅を最小化して、ステントの可撓性を改善することである。本発明は、リンクの幅が、クラウンのストラット幅よりも狭くなることを主張する。好ましい実施形態は、幅0.05mm〜0.075mmの範囲のリンク幅を伴う、0.1mmのストラット幅を有する。ストラット幅に対するリンク幅比50%〜90%を維持しながら、より狭いストラットを用いてよい。
【0044】
本発明の別の態様は、拡張時の十分な骨格支持を提供しながら、所望の直径または屈曲状態への圧縮時に、クラウンが接触し合うことによりステント上の被膜を損傷しないように、クラウンの数および形状を設計することである。典型的には、クラウン数をより少なくすることにより、クラウン間の接触なしにより小さなクリンプ直径が可能となる。クラウンの形状もまた、クラウン間の接触可能性に影響を及ぼし、小さな半径から形成されるU形のクラウンは、より大きな半径による鍵穴形クラウンよりも占める空間が小さい。本発明は、0.1mm未満のクリンプ直径を有し、2箇所のリンクを有する、8箇所のU形クラウンによるステントを主張する。
【0045】
ステントの圧縮または拡張時において誘導される歪みを予測するには、有限要素法を用いるのが一般的である。歪みが小さければ、圧縮または拡張時における被膜のクラッキングまたはスミアリングを最小化または除去する一助となる。異なる材料は、ステントが異なる形で拡張する原因となり、このため、最大直径において異なるピーク歪みを示す。
【0046】
例えば、図1および2において上記の設計を有する、厚さ0.08mmでコバルト−クローム製の8クラウンステントは、最大拡張時における歪みの25%未満をもたらし、被膜のクラックを全く示さなかった。本発明は、ピーク歪みの50%未満、好ましくはピーク歪みの30%、より好ましくはピーク歪みの25%未満を有するステント形状を主張する。
【0047】
本発明の別の態様は、拡張時に、セル形状が、骨格支持および十分な側枝アクセスを提供するように設計されるため、リングの位相が一致でも不一致でもない状態で並ぶことである。クラウン先端部が先端同士で並ぶとき、骨格支持は最適ではない。リングが同位相であると、側枝アクセスが損なわれる。リングをわずかにオフセットさせることにより、十分な側枝アクセスも維持しながら、骨格支持を最適化することができる。
【0048】
本発明の別の態様は、拡張時の力が釣り合い、骨格が均等に拡張するように、軸方向に対して傾いたリンク16を、骨格の長手方向に沿って交互に別の方向に向けることである。不均等または釣り合いのとれない拡張は、局所的な高歪み領域を導入するので、骨格表面に存在する被膜に対して望ましくない影響を及ぼしうる。拡張時における釣り合いは、有限要素法を用い、各クラウンの開口部を測定して特徴付けることができる。クラウン開口部間の偏差または変動係数は、最小化すべきである。ステントの長手方向に沿うリンクの方向を交互に変化させることにより、図1および2の設計におけるクラウン開口部間の変動係数は、8%から3%に軽減された。本発明は、5%未満のクラウン開口部間変動係数を達成することができる。
【0049】
ストラット幅に対して薄すぎるストラットは、ステント拡張時に捻じれる傾向があり、被膜がクラッキングまたはスミアリングする原因となりうる。本発明は、ストラット幅に対するストラット厚の比が、0.6〜1.0であることを主張する。別の実施形態において、今回のステント設計は、拡張時に、平面から逸脱する捻じれをほとんどまたは全く有さない。
【0050】
ステントインプラントは、化学エッチング、化学フライス加工、レーザー切削、スタンピング、EDM、ウォータージェット切削、ワイヤーの屈曲、射出成形、および溶接など各種の方法を用いて製造してよい。
【0051】
ステント材料は、ワイヤー、延伸チューブ、多層ステント構造用の共延伸チューブ、平面シート、または他の形態として出発しうる。ステント材料自体は、316Lステンレス鋼、コバルト−クローム合金(L−605、MP35N)、エルジロイ、ニチノール合金、白金、パラジウム、タンタル、または他の合金およびポリマーなど、恒久性であると考えてよい。あるいは、マグネシウム、亜鉛、もしくはこれらの合金、または、ポリ−L−乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸およびポリエチレングリコールのコポリマーその他などのポリマーなど、生体分解材料も用いてよい。
【0052】
本出願中に含まれるすべての各種発明および実施形態は、単独で、または相互の各種組合せにより用いることができる。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
ステント表面のテクスチャリング
ワイヤーマンドレル上に3×l8mmのステントを置き、200rpmで回転させた。直径0.020インチ(0.5mm)のノズルを伴うマイクロブラスターを作動させ、直径20μmの媒体を射出させた。ノズルは、ステントから1インチに置き、インチ当たり2秒の割合で、ステントの軸方向に沿って前後に往復させる。計5サイクルにわたり、ステントをマイクロブラストさせる。ステントの向きを逆にして、マイクロブラスティングを繰り返す。次いで、ステントを0.036インチ(0.91mm)などのより小さな内径に予備圧縮する。表面のテクスチャリングに用いられるパラメータは変化しうることが理解できる。このテクスチャリング工程では、内径および側壁面よりも外径の方が、高い平均特徴部密度を有する。図3は、ステント外径の表面特徴部に対するSEM画像を示す。
【0054】
(実施例2)
ステント表面のテクスチャリング
直径0.050インチ(1.25mm)および長さ2インチ(5cm)のハイポチューブを、マイクロブラスター(Comco社製)のノズルに接続する。3mm×18mmステントの管腔内に、ハイポチューブを挿入する。マイクロブラスターを作動させ、ハイポチューブ端から直径25μmの媒体を射出させる。次いで、ハイポチューブからステントをゆっくりと取り外すと、ステントの内面および少なくとも一部の側壁面がテクスチャリングされる。マイクロブラスターを停止させる。ステントの管腔内にハイポチューブを再び挿入するが、逆向きとする。マイクロブラスターを作動させ、ハイポチューブ端から直径25μmの媒体を射出させる。次いで、ハイポチューブからステントをゆっくりと取り外すと、ステントの内面および少なくとも一部の側壁面がテクスチャリングされる。次いで、ステントを0.036インチ(0.91mm)などのより小さな内径に予備圧縮する。表面のテクスチャリングに用いられるパラメータは変化しうることが理解できる。
【0055】
(実施例3)
ステント表面のテクスチャリング
より小さな内径に予備圧縮する前に、実施例2から得られるステントにさらなる表面改変を加える。ワイヤーマンドレル上にステントを置き、200rpmで回転させる。直径0.020インチ(0.5mm)のノズルを伴うマイクロブラスターを作動させ、直径20μmの媒体を射出させる。ノズルは、ステントから1インチに置き、インチ当たり2秒の割合で、ステントの軸方向に沿って前後に往復させる。計5サイクルにわたり、ステントをマイクロブラストさせる。ステントの向きを逆にして、マイクロブラスティングを繰り返す。次いで、ステントを0.036インチ(0.91mm)などのより小さな内径に予備圧縮する。表面のテクスチャリングに用いられるパラメータは変化しうることが理解できる。図4は、ステント内径の表面特徴部に対するSEM画像を示す。
【0056】
(実施例4)
PBMA被膜を伴うステント
0.011インチ(0.27mm)のワイヤーマンドレルを360度曲げて、先端部でループを形成する。これを、内径0.036インチ(0.91mm)に予備圧縮した、実施例3から得られる、表面処置したステント内に挿入する。次いで、Sono−Tek Micromist(商標)超音波被覆機の試料保持固定具にマンドレルを取り付け、超音波ノズル下において、ステントを回転させ、前後に動かす。被覆機は、ジクロロメタン溶媒中に溶解させたPBMAを伴う、濃度40%の、ノボリムスなどの大環状ラクトンを、超音波ノズル表面に30μl/分の速度で送達することによりそれらの微粒化をもたらす、シリンジポンプを有する。多数サイクルにわたってステントを前後に直線的に動かした後、被膜重量が約450μgのPBMA:ノボリムスとなる時点で、被覆工程を終了する。次いで、36時間にわたりステントを真空中に置き、残留溶媒を50ppm未満まで除去する。
【0057】
(実施例5)
ポリエチレンカーボネート被膜を有するステント
0.011インチ(0.27mm)のワイヤーマンドレルを360度曲げて、先端部でループを形成する。これを、内径0.036インチ(0.91mm)に予備圧縮した、実施例1から得られる、表面処置したステント内に挿入する。次いで、Sono−Tek Micromist(商標)超音波被覆機の試料保持固定具にマンドレルを取り付け、超音波ノズル下において、ステントを回転させ、前後に動かす。被覆機は、ジクロロメタン溶媒中に溶解させたPECを伴う、濃度66%の大環状ラクトンを、超音波ノズル表面に30μl/分の速度で送達することによりそれらの微粒化をもたらす、シリンジポンプを有する。多数サイクルにわたってステントを前後に直線的に動かした後、被膜重量が約75μgのPEC:大環状ラクトンとなる時点で、塗布工程を終了する。次いで、36時間にわたりステントを真空中に置き、残留溶媒を50ppm未満まで除去する。
【0058】
(実施例6)
PLLA−TMC被膜を有するステント
0.011インチ(0.27mm)のワイヤーマンドレルを360度曲げて、先端部でループを形成する。これを、内径0.036インチ(0.91mm)に予備圧縮した、実施例1から得られる、表面処置したステント内に挿入する。次いで、Sono−Tek Micromist(商標)超音波被覆機の試料保持固定具にマンドレルを取り付け、超音波ノズル下において、ステントを回転させ、前後に動かす。被覆機は、ジクロロメタン溶媒中に溶解させたPLLA−TMCを伴う、濃度40%の大環状ラクトン(ノボリムスなど)を、超音波ノズル表面に30μl/分の速度で送達することによりそれらの微粒化をもたらす、シリンジポンプを有する。多数サイクルにわたってステントを前後に直線的に動かした後、被膜重量が約450μgのPLLA−TMC:大環状ラクトンとなる時点で、被覆工程を終了する。次いで、36時間にわたりステントを真空中に置き、残留溶媒を50ppm未満まで除去する。
【0059】
(実施例7)
ステントクリンプの取り付けと拡張
実施例4、5、または6から得られる被覆したステントを、内径0.046インチ(1.1mm)のPTFEシース内に挿入する。長さ20mmのバルーン型ステント送達システムの遠位端において折りたたんだナイロン製コポリマーバルーンを、ステント管腔内に挿入する。約30秒間にわたり、ポリマー被膜のTgを上回る約35℃までPTFEシース表面を加熱し、次いで、冷却する間、バルーンを250psiまで加圧する。冷却後、バルーンを脱加圧する。ステントからPTFEシースを取り外し、圧縮させたステントをカテーテルのバルーン上に残す。次いで、ステント送達用カテーテルをパッケージングし、エチレンオキサイドにより滅菌する。被膜のクラッキングまたはスミアリングが最小〜皆無の状態である生理的条件下で、ステントを拡張する。図5および6は、拡張後のPEC被覆ステントの内径および外径の光学顕微鏡画像を示す。
【0060】
(実施例8)
PBMA被覆ステントおよびPEC被覆ステントのin vivo試験
植え込みの28および90日後のブタ冠動脈モデルにおけるステント周囲組織の組織形態測定および病理学的解析を比較することにより、PBMA被覆ステントおよびPEC被覆ステントの組織適合性および血液適合性を評価した。ステントは、PBMA(実施例4の通り)およびPEC(実施例5の通り)で被覆したが、ポリマーのみによる被覆であり、薬剤含量は伴わなかった。
【0061】
ステントおよび血管形成術に関する研究には、非アテローム性動脈硬化ブタモデルが広く用いられ、該血管系応答特性およびそのヒト血管系応答との相関について大量のデータがもたらされている(Schwartzら、Circulation、2002年、第106巻、1867〜1873頁)ので、同モデルを本モデルとして選択した。動物は、米国学術研究会議により確立された「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」に従い飼育し、ケアした。
【0062】
すべての動物は、介入の少なくとも3日前から、経口による325mgアスピリンおよびクロピドグレル(75mg)で前治療し、試験期間にわたり継続した。麻酔の誘導後、標準的な技法を用いて左または右の大腿動脈にアクセスし、動脈シースを導入し、動脈内に送り込んだ。
【0063】
蛍光顕微鏡の誘導下で血管造影法を実施し、7Fr.の誘導カテーテルをシース中に挿入し、適切な位置まで送り込み、冠動脈内ニトログリセリンを投与した。平均管腔内径2.25〜4.0mmの範囲の冠動脈セグメントを選択し、0.014インチ(0.35mm)のガイドワイヤーを挿入した。定量的冠動脈造影法(QCA)を実施して、基準血管径を記録した。
【0064】
適切なサイズのステントを展開部位まで送り込んだ。1.1:1.0のバルーン対動脈比を達成するのに十分な圧力まで、一定の速度でバルーンを膨張させた。約10秒間にわたり圧力を維持した。血管造影法を実施して、術後の血管開存および血管径を記録した。
【0065】
各動物に対し、指定の終了時点において、追跡血管造影法を実施した。ステントの移動、管腔の狭窄化、ステントのアポジション、切開部または動脈瘤の存在、および血流特性の証拠について、各血管造影図を定性的に評価した。
【0066】
各動物から心臓を採取し、100〜120mmHgにおいて、10%に緩衝したホルマリンにより冠動脈を灌流した。心臓は10%緩衝ホルマリンに浸漬した。心筋病変または異常な観察があれば、報告した。
【0067】
測定または計算された血管造影法パラメータは、
1.末梢血管(近位および遠位)平均管腔径(ステント設置後および最終)
2.標的領域の平均管腔径(すべての血管造影図)
3.標的領域の最小管腔径(MLD)(ステント設置後および最終のみ)
4.管腔径狭窄[[1−(MLD/RVD)]×100%]:式中、RVDとは、閉塞部における基準管腔径の計算値(病変なしの推定血管の外挿値を生成する、ソフトウェアベースの反復線形回帰法により得られる測定値)(最終血管造影図のみ)である。
5.バルーン対動脈比[バルーン/ステント前平均管腔径]
6.ステント対動脈比[ステント後平均管腔径/ステント前平均管腔径]
7.遅発喪失比[最終MLD−ステント後MLD]。
【0068】
すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。28日後に、PEC被覆ステント、PBMA被覆ステント、裸の金属製ステントの3つの群が、それぞれ、血管内膜面積(mm2)において、1.44±0.58対1.64±0.82対1.42±0.68という同様の結果を示した(図7)。フィブリンの沈着、石灰化、および内皮化の病理学試験は、すべてのステントを通して同等の結果を示した。90日後に、PEC被覆ステント、PBMA被覆ステント、裸の金属製ステントの3つの群が、それぞれ、血管内膜面積(mm2)において、1.92±0.8対2.61±0.7対1.79±9いう同様の結果を示した(図8)。フィブリンの沈着、石灰化、および内皮化病理学試験は、すべてのステントを通して同等の結果を示した。
【0069】
本実施例におけるPEC被膜およびPBMA被膜は、in vivoモデルにおいて、裸の金属製ステントと同等の生体適合性を示した。
【0070】
(実施例9)
PEC薬剤被覆ステントに対するin vivo試験
ブタ冠動脈における28±2日後、90±5日後、および180±5日後の組織形態測定結果を、非罹患ブタ冠動脈モデルにおけるラパマイシン溶出ステントシステムCypher(商標)冠動脈ステント(Cordis社製)と比較することにより、60〜75μgのPEC:大環状ラクトン薬剤化合物を有する、PEC薬剤被覆ステント(上記の実施例5において調製)の有効性を評価した。介入手順は、実施例8に記載の通りであり、1.3:1.0の高バルーン:動脈比で28日間のインプラントステントの植え込みを実施し、90日間および180日間のインプラントには、1.1:1.0のより低いバルーン:動脈比でステント植え込みを実施した。
28日間のインプラント:すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。PEC薬剤被覆ステント(約2.5μg薬剤用量/mmステント長)の平均血管内膜面積(mm2)は、2.5±0.9(n=40)の平均血管内膜面積(mm2)を提供する、プールされたCypher(商標)ステントデータに対し、2.5±1.2(n=15)であった(図9)。
【0071】
本実施例におけるPEC薬剤被覆ステントは、28日間にわたりブタモデルに植え込まれた場合、Cypher(商標)ステントと同様の新生内膜形成をもたらした。
90日間のインプラント:すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。PEC薬剤被覆ステント(約2.5μg薬剤用量/mmステント長)の平均血管内膜面積(mm2)は、2.39±2.2(n=20)の平均血管内膜面積(mm2)を提供する、植え込み式Cypher(商標)ステントに対し、2.50±0.9(n=6)であった(図10)。
【0072】
本実施例におけるPEC薬剤被覆ステントは、90日間にわたりブタモデルに植え込まれた場合、Cypher(商標)ステントと同様の新生内膜形成をもたらした。
180日間のインプラント:一匹を除くすべての動物が、指定の終了時点まで生存した。生存しなかった動物は、植え込み時におけるステント膨張下の手術上の問題により引き起こされた血栓形成により、第6日に死亡した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。PEC薬剤被覆ステント(約4.4μg薬剤用量/mmステント長)の平均血管内膜面積(mm2)は、2.70±1.15(n=2)の平均血管内膜面積(mm2)を提供する、同時に植え込んだCypher(商標)ステントに対し、1.98±0.7(n=2)であった(図11)。
【0073】
本実施例におけるPEC薬剤被覆ステントは、180日間にわたりブタモデルに植え込まれた場合、Cypher(商標)ステントと同様の新生内膜形成をもたらした。
【0074】
(実施例10)
PEC薬剤被覆ステントのin vivoにおける薬物動態
実施例9から得られるPEC薬剤被覆ステントシステムに対する薬物動態評価を、ブタ冠動脈モデルにおいて、6時間後、3日後、および28日後に実施した。
【0075】
介入手順は、ステント植え込みまでは、実施例8に記載のin vivo血管造影法試験と同様である。適切なサイズのステントを展開部位まで送り込んだ。1:1のバルーン対動脈比を達成するのに十分な圧力まで、一定の速度でバルーンを膨張させた。約10秒間にわたり圧力を維持した。血管造影法を実施して、術後の血管開存および血管径を記録した。計9個のステント(時点当たり3個)を植え込んだ。
【0076】
適切な時点で動物を安楽死させ、心臓を切除した。ステント区間に対して近位の約10mmの血管および同遠位の約10mmの血管を含むステントセグメントを切除した。該近位区間および遠位区間を分離し、別個のバイアルに保管した。ステント周囲の組織をステントから注意深く除去し、各々を別個のバイアルに入れた。次いで、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて解析する前に、すべてを−70℃に凍結する。
【0077】
すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。PEC薬剤被覆ステントについてのステントおよび組織の薬物動態を、図12および13に示す。
【0078】
本実施例におけるPEC薬剤被覆ステントは、薬剤の約90%が7日間以内に放出され、少なくとも同じ期間にわたり薬剤の組織濃度が存在する、ステントからの薬剤放出プロファイルを示す。
【0079】
(実施例11)
PBMA薬剤被覆ステントに対するin vivo試験
ブタ冠動脈における28±2日後、90±5日後の組織形態測定結果を、非罹患ブタ冠動脈モデルにおけるラパマイシン溶出ステントシステムCypher(商標)冠動脈ステント(Cordis社製)と比較することにより、450μgのPBNA:ノボリムス薬剤化合物を有する、PBMA薬剤被覆ステント(上記の実施例4において調製)の有効性を評価した。介入手順は、実施例8に記載の通りであるが、1.3:1.0の高バルーン:動脈比を用い、90日間のインプラントには、1.1:1.0のより低いバルーン:動脈比でステント植え込みを実施した。
28日間のインプラント:すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。Cypher(商標)ステントに関する3つの異常値データ点(完全閉塞または完全に近い閉塞)は除外した。PBMA薬剤被覆ステント(約10μg薬剤用量/mmステント長)の平均血管内膜面積(mm2)は、Cypher(商標)について2.5±0.9(n=40)の平均狭窄百分率を提供する、同様のプロトコールによる本試験およびかつての試験から得られるプールされたCypher(商標)ステントデータに対し、2.0±0.5(n=14)であった(図14)。
【0080】
本実施例におけるPBMA薬剤被覆ステントは、28日間にわたりブタモデルに植え込まれた場合、Cypher(商標)ステントと同様の新生内膜形成をもたらした。
90日間のインプラント:すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。Cypher(商標)ステントに関する3つの異常値データ点(完全閉塞または完全に近い閉塞)は除外した。PBMA薬剤被覆ステント(約10μg薬剤用量/mmステント長)の平均血管内膜面積(mm2)は、Cypher(商標)ステントについて3.9±2.2(n=20)の平均狭窄百分率を提供する、同様のプロトコールによる本試験およびかつての試験から得られるプールされたCypher(商標)ステントデータに対し、2.5±0.6(n=6)であった(図15)。
【0081】
本実施例におけるPBMA薬剤被覆ステントは、90日間にわたりブタモデルに植え込まれた場合、Cypher(商標)ステントと同様の新生内膜形成をもたらした。
【0082】
(実施例12)
PBMA薬剤被覆ステントのin vivoにおける薬物動態
実施例11から得られるPBMA薬剤被覆ステントシステムに対する薬物動態評価を、ブタ冠動脈モデルにおいて、6時間後、3日後、および28日後に実施した。
【0083】
介入手順は、実施例10に記載のin vivo血管造影法試験と同様である。すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。PBMA薬剤被覆ステントについてのステントおよび組織の薬物動態を、図16および17に示す。
【0084】
本実施例におけるPBMA薬剤被覆ステントは、薬剤の約50%が7日後、および同約70%が28日後に放出され、少なくとも14日間にわたり薬剤の組織濃度が存在する、ステントからの薬剤放出を示す。
【0085】
(実施例13)
PLLA−TMC薬剤被覆ステントに対するin vivo試験
ブタ冠動脈における28±2日後の血管造影結果を、非罹患ブタ冠動脈モデルにおけるラパマイシン溶出ステントシステムCypher(商標)冠動脈ステント(Cordis社製)と比較することにより、75μgのPLLA−TMC薬剤化合物を有する、PLLA−TMC薬剤被覆ステント(上記の実施例6において調製)の有効性を評価した。介入手順は、実施例8に記載の通りであるが、28日間のインプラントには、1.3:1.0の高バルーン:動脈比によりステント植え込みを実施した。
【0086】
すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。PLLA−TMC薬剤被覆ステント(約2.7μg薬剤用量/mmステント長)の平均血管内膜面積(mm2)は、2.5±0.9(n=40)の平均血管内膜面積(mm2)を提供するCypher(商標)ステントに対し、2.3±0.9(n=8)であった(図18)。
【0087】
本実施例におけるPEC薬剤被覆ステントは、28日間にわたりブタモデルに植え込まれた場合、Cypher(商標)ステントと同様の新生内膜形成をもたらした。
【0088】
(実施例14)
PLLA−TMC薬剤被覆ステントのin vivoにおける薬物動態
実施例6から得られるPEC薬剤被覆ステントシステムに対する薬物動態評価を、ブタ冠動脈モデルにおいて、6時間後、3日後、および28日後に実施した。
【0089】
介入手順は、ステント植え込みまでは、実施例8に記載のin vivo血管造影法試験と同様である。適切なサイズのステントを展開部位まで送り込んだ。1:1のバルーン対動脈比を達成するのに十分な圧力まで、一定の速度でバルーンを膨張させた。約10秒間にわたり圧力を維持した。血管造影法を実施して、術後の血管開存および血管径を記録した。計9個のステント(時点当たり3個)を植え込んだ。
【0090】
適切な時点で動物を安楽死させ、心臓を切除した。ステント区間に対して近位の約10mmの血管および同遠位の約10mmの血管を含むステントセグメントを切除した。該近位区間および遠位区間を分離し、別個のバイアルに保管した。ステント周囲の組織をステントから注意深く除去し、各々を別個のバイアルに入れた。次いで、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて解析する前に、すべてを−70℃に凍結した。
【0091】
すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。PLLA−TMC薬剤被覆ステントについてのステントおよび組織の薬物動態を、図19および20に示す。
【0092】
本実施例におけるPEC薬剤被覆ステントは、薬剤の約90%が7日間以内に放出され、少なくとも同じ期間にわたり薬剤の組織濃度が存在する、ステントからの薬剤放出プロファイルを示す。
【0093】
当業者は、本発明が、本明細書に記載され意図された特定の実施形態以外の各種の形態において明示されることを認識するであろう。したがって、付随の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲および精神から逸脱しない限りにおいて、形態および詳細の逸脱を行ってよい。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、全般に、医療機器およびそれらの調製法に関する。より具体的に、本発明は、ポリマー被膜を有する管腔内人工装具およびそれらの調製法に関する。
【0002】
管腔内人工装具は、各体内管腔、とりわけ、血管系および尿管における開存を維持するのに用いる。管腔内人工装具の最も一般的な形態は、「ステント」と称し、体内管腔のセグメントを開放に保つために、またはこれを補強するために展開される、一般に管状の骨格である。ステントは、一般に、血管系において用いられ、そこで、冠動脈、頸動脈、大腿動脈のほか、末梢動脈系および同静脈系に展開される。しかし、ステントおよび他の管腔内人工装具は、また、大動脈瘤、胸部大動脈瘤の治療、人工生体弁の支援、および他の目的にも用いられる。
【0003】
ステントは、典型的には、カテーテルを用いて、体内管腔内の標的領域に送達される。バルーン拡張型ステントは、一般に、バルーン型カテーテルに取り付け、標的領域に誘導し、バルーンを膨張させることにより拡張する。自己拡張型ステントは、シースまたは他の管状部分内に拘束しながら標的領域へ送達することが最も多い。標的領域に到達すると、拘束を除去することができ、ステントは拡張し、体内管腔内に展開される。
【0004】
ステントおよび他の管腔内人工装具は、また、各種の目的に応じて、薬剤および医薬作用物質を体内管腔内に運び溶出するように改変してもよい。血管系内において、薬剤および医薬作用物質は、典型的には、組織炎症、再閉塞、もしくは血栓を軽減し、かつ/または、該機器の治癒効果および生体適合性を高めることを意図する。本発明にとって特に重要なのは、薬剤および他の医薬作用物質が、しばしば、ステント表面の少なくとも一部分にわたり被覆されたポリマーマトリックスから溶出することである。有効であるため、ポリマーは、ステントの調製および加工のほか、血管系および他の体内管腔内における後続の拡張にも適応する能力を有するべきである。特に、被膜は、ステントが送達過程中に圧縮、拡張、または他の形で変形する際の、変形および歪みから生じうるクラッキングまたはスミアリングが最小または皆無であるべきである。
【0005】
これらの理由から、被覆された人工装具の改善、こうした被覆された人工装具を送達するカテーテル、および、こうした被覆された人工装具を製作する方法を提供することが望ましいであろう。特に、人工装具上の被膜は、製作、調製、および標的体内管腔への送達時におけるクラッキングおよびスミアリングに耐えるべきである。送達用カテーテルは、さらに、送達時のクラッキングおよびスミアリングを軽減する一助となるべきである。最後に、製作法は、クラッキングおよびスミアリングに耐える被膜を促進する形で、人工装具に被膜を施すべきである。これらの目的の少なくとも一部は、以下に記載の本発明により満たされるであろう。
【背景技術】
【0006】
2.先行技術の説明
以下の米国特許および特許公開:特許文献1〜28が、薬剤送達および他の目的のポリマーおよび他の被膜を有する、管腔内人工装具および他の植込み式機器について記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,232,573号明細書
【特許文献2】米国特許第7,163,555号明細書
【特許文献3】米国特許第7,055,237号明細書
【特許文献4】米国特許第7,008,979号明細書
【特許文献5】米国特許第6,984,393号明細書
【特許文献6】米国特許第6,918,929号明細書
【特許文献7】米国特許第6,855,770号明細書
【特許文献8】米国特許第6,824,559号明細書
【特許文献9】米国特許第6,712,846号明細書
【特許文献10】米国特許第6,653,426号明細書
【特許文献11】米国特許第6,592,895号明細書
【特許文献12】米国特許第6,653,426号明細書
【特許文献13】米国特許第6,224,894号明細書
【特許文献14】米国特許第6,120,847号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2007/0207184号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2007/0185569号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2007/0168012号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2007/0123973号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2007/0106371号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2007/0073016号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2007/0003592号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2006/0282166号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2006/0257355号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2006/0212106号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2006/0198868号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2006/0093771号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2006/0067908号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2005/0271700号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本発明は、管腔内人工装具、こうした人工装具を送達するためのカテーテルアセンブリー、およびこうした人工装具を製作する方法を提供する。管腔内人工装具は、改変された表面領域と相互作用して、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な、表面への被膜の付着を提供する材料を含む被膜を有する、改変された表面領域を有する骨格を含む。管腔内人工装具は、生理的環境において柔軟化し、改変された表面領域と相互作用して、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な、表面への被膜の付着を提供する材料を含む被膜を有する、改変された表面領域を有する骨格を含む。被膜は、以下に論じる通り、典型的には、ポリマーを含むが、また、タンパク質、ペプチド、細胞外マトリックス、金属、合金、セラミックスなども含むことができ、被膜中に分散され分配されるか、または被膜に隣接する治療作用物質または他の作用物質を有し、生理的環境において被膜から放出されることを意図する。
【0009】
骨格は、典型的には、管腔内ステントの形態であり、冠動脈領域または他の血管系疾患を治療するために、患者の血管系内部への植え込みを意図するステントであることがより典型的である。より一般的に、ステントは金属から形成される。金属製ステントは、バルーン拡張型でもよく、自己拡張型でもよい。最も一般的なバルーン拡張型ステントは、ステンレス鋼またはコバルト−クローム合金で形成される。自己拡張型ステントは、ニッケル−チタン合金、または、場合によって、スプリングステンレス鋼で形成されるのが最も一般的である。金属製ステントに加え、本発明の骨格は、バルーン拡張型(展性)ポリマー、および、自己拡張型骨格を調製するのに用いうる弾性ポリマーを共に含む、ポリマー材料から形成してよい。ステントパターンおよびステント材料の具体的な例は、本明細書の後出で提供される。
【0010】
好ましい被膜材料は、生理的温度(37℃)を下回るガラス転移温度を有するポリマーを含む。こうしたポリマーは、非浸食性でもよく、浸食性(血管系または他の管腔内環境内部において生体分解性)でもよい。適切な浸食性または生体分解性ポリマーは、50KDaを上回り、通常150KDaを超え、しばしば200KDaを超える分子量を有することが典型的である。こうした浸食性または生体分解性被膜は、多種多様な分解時間を有しうる。例えば、比較的迅速に、例えば、6カ月未満、しばしば、3カ月未満、および、好ましい実施形態では、1カ月未満の期間にわたり分解するポリマーを用いることが望ましいことがある。本発明で用いるのに適する生体分解性ポリマーは、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリマーのポリエチレングリコールファミリーのコポリマーを含む。好ましい生体分解性ポリマーは、血管系環境に存在すると6カ月未満、しばしば3カ月未満、および、通常1カ月未満で実質的に分解する、150KDa以上の分子量を有するポリエチレンカーボネート(PEC)である。
【0011】
第2の例示的な浸食性ポリマーは、ポリ−L−ラクチドおよびトリメチレンカーボネートのコポリマー(PLLA:TMC)を含む。PLLA:TMC中のPLLAモル百分率は、50%PLLA〜95%PLLAの範囲であることが可能で、このポリマー被膜は、4年未満、より好ましくは2年未満、最も好ましくは1年未満で実質的に分解する。
【0012】
別の実施形態において、浸食性ポリマー被膜は、ポリ−L−ラクチドおよびポリグリコール酸のコポリマー(PLLA:GA)を含む。PLLA:GA中のPLLAモル百分率は、50%PLLA〜95%PLLAの範囲でありうる。
【0013】
別の実施形態において、浸食性ポリマー被膜は、ポリラクチドおよびポリエチレングリコールのコポリマー(PLA:PEG)を含む。PLA:PEG中のPLAモル百分率は、50%PLA〜99%PLAの範囲であることが可能で、このポリマー被膜は、2年未満、より好ましくは1年未満、最も好ましくは9カ月未満で分解する。
【0014】
例示的な非浸食性ポリマー組成物は、ポリ(アルキルメタクリレート)ポリマーを含む。好ましい実施形態において、ポリマーは、ポリ−n−ブチルメタクリレート(PBMA)である。非浸食性ポリマーは、典型的には、500KDaを超える分子量を有し、例示的なPBMAステント被膜は、700KDaを超える分子量を有する。
【0015】
上記のポリマー材料は、通常、ポリマー被膜により組み込まれ送達される治療作用物質または他の作用物質を除き、添加物または他の材料をわずかしかまたは全く含まない純粋製剤または純製剤中に存在する。しかし、他の場合において、上記のポリマーは、当技術分野で知られる目的の他の材料またはポリマーと組み合わせうる。こうした付加的材料は、可塑剤、抗酸化剤、安定化剤などを含む。
【0016】
骨格上のポリマーまたは他の被膜は、典型的には、0.1μm〜100μm、好ましくは1μm〜50μm、および、より好ましくは3μm〜10μmの範囲の厚さを有する。ポリマー被膜の量は、計10μg〜5mg、好ましくは25μg〜1mg、および、より好ましくは100mg〜500mgの範囲でありうる。
【0017】
ポリマー被膜は、典型的には、1つまたは複数の治療作用物質または他の作用物質を、比較的高添加百分率で含む。治療作用物質または他の作用物質は、総被膜重量(ポリマーおよび治療作用物質を共に含む)の30%を超える量、より好ましくは、総被膜重量の60%を超える量、および、最も好ましくは、総被膜重量の65%以上の量でポリマー内に存在することが典型的である。上述の通り、非ポリマー材料の総添加量は、上記の重量百分率の範囲内に保つのが望ましいが、他の材料もまた、ポリマー被膜内に含めうる。
【0018】
ポリマー内における治療作用物質または他の作用物質の添加量は、骨格面積に基づき、1ng/cm2〜1000μg/cm2、好ましくは1μg/cm2〜500μg/cm2、より好ましくは10μg/cm2〜400μg/cm2の範囲でありうる。治療作用物質または他の作用物質は、1ng/cm2/日〜1000μg/cm2/日、好ましくは1μg/cm2/日〜200μg/cm2/日、より好ましくは5μg/cm2/日〜100μg/cm2/日の範囲の速度でポリマー被膜から放出される。ポリマー被覆されたステントに隣接する組織における治療作用物質の取り込みは、0.001ng/組織g〜1000μg/組織g、好ましくは1ng/組織g〜100μg/組織g、より好ましくは100ng/組織g〜50μg/組織gの範囲でありうる。治療作用物質は、通常、1日間〜6カ月間、好ましくは1週間〜3カ月間、より好ましくは2〜6週間の範囲の時間にわたり、人工装具から実質的に完全に放出される。非浸食性ステントからの治療作用物質または他の作用物質の放出は、典型的には、ポリマーマトリックス内に形成された孔隙構造または他の貯留層の性質に依存する。浸食性ステントの場合、治療作用物質または他の作用物質は、ポリマーの浸食前に、孔隙ネットワークまたは他の貯留層の構造を介して同様に放出される場合もある。しかし、他の場合、治療作用物質の放出は、少なくとも部分的には、経時的なポリマー浸食の結果として生じる場合がある。
【0019】
ポリマー被膜内に保有されうる例示的な治療作用物質は、免疫調節物質、抗癌剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、抗真菌剤、抗糖尿病剤、抗高脂血症剤、抗血管新生剤、血管形成剤、降圧剤、もしくは他の治療クラスの薬剤、またはこれらの組合せを含む。
【0020】
例えば、免疫調節剤は、ラパマイシン、エベロリムス、ノボリムス、ABT 578、AP20840、AP23841、AP23573、CCI−779、重水素化ラパマイシン、TAFA93、タクロリムス、シクロスポリン、TKB662、ミリオシン、これらの類似体、プロドラッグ、塩、もしくはその他、またはこれらの組合せを含むがこれらに限定されない。
【0021】
例示的な抗癌剤は、アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール、アクロニシン、アドゼレシン、アラノシン、アルデスロイキン、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アモナフィド、アンプリゲン、アムサクリン、アンドロゲン、アングイジン、グリシン酸アフィジコリン、アサレイ、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、カルメット−ゲラン菌(BCG)、ベイカーのアンチフォル(可溶性)、ベータ−2’−デオキシチオグアノシン、ビサントレンHCl、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルフォキシミン、BWA 773U82、BW 502U83.HCl、BW 7U85メシレート、セラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、クロロキノキサリン−スルホンアミド、クロロゾトシン、クロモマイシンA3、シスプラチン、クラドリビン、コルチコステロイド、コリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)、CPT−11、クリスナトール、シクロシチジン、シクロホスファミド、シタラビン、シテムベナ、ダビスマレアート、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、デアザウリジン、デクスラゾキサン、ジアンヒドロガラクチトール、ジアジコン、ジブロモヅルシトール、ジデムニンB、ジエチルジチオカルバメート、ジグリコアルデヒド、ジヒドロ−5−アザシチジン、ドキソルビシン、エキノマイシン、エダトレキサート、エデルフォシン、エフロミチン、エリオットの溶液、エルサミトルシン、エピルビシン、エソルビシン、リン酸エストラムスチン、エストロゲン、エタニダゾール、エチオフォス、エトポシド、ファドラゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボン酢酸、フロクスリジン、リン酸フルダラビン、5−フルオロウラシル、フルオゾル、RTM、フルタミド、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、酢酸ゴセレリン、ヘプスルファム、ヘキサメチレンビスアセタミド、ホモハリングトニン、硫酸ヒドラジン、4−ヒドロキシアンドロステンジオン、ヒドロジウレア、イダルビシンHCl、イホスファミド、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターロイキン−1アルファおよびベータ、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−6、4−イポメアノール、イプロプラチン、イソトレチノイン、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、レバミゾール、リポソーマルダウノルビシン、リポソーム封入型ドキソルビシン、ロムスチン、ロニダミン、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、メルファラン、メノガリル、メルバロン、6−メルカプトプリン、メスナ、カルメット−ゲラン菌のメタノール抽出による残留物、メトトレキサート、N−メチルホルムアミド、ミフェプリストン、ミトグアゾン、マイトマイシン−C、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、単球/マクロファージコロニー刺激因子、ナビロン、ナフォキシジン、ネオカルジノスタチン、酢酸オクトレオチド、オルマプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パラ、ペントスタチン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、PIXY−321、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プレドニムスチン、プロカルバジン、プロゲスチン、ピラゾフリン、ラゾキサン、レベロマイシン、サルグラモシチム、セムスチン、スピロゲルマニウム、スピロムスチン、ストレプトニグリン、スレプトゾシン、スロフェヌル、スラミンナトリウム、タモキシフェン、タキソテレ、テガフル、テニポシド、テレフタルアミジン、テロキシロン、チオグアニン、チオテパ、チミジン注射、チアゾフリン、トポテカン、トレミフェン、トレチノイン、塩酸トリフルオペラジン、トリフルジン、トリメトレキサート、腫瘍壊死因子、ウラシルマスタード、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンゾリジン、Yoshi 864、ゾルビシン、QP−2、エポチロンD、エポチロンC、パクリタキセル、ドセタキセルなどのタキソール、ABJ879、パツピロン、MN−029、BMS247550、ET−743などのエクテイナシジン、テトラヒドロイソキノリンアルカロイド、シロリムス、アクチノマイシン、メトトレキサート、アンチオペプチン、ビンクリスチン、マイトマイシン、2−クロロケオキシアデノシンその他、カスポフンギン、ファルネシル化ジベンゾジアゼピノン、ECO−4601、フルコナゾール、その他などの抗真菌剤、フォリスタチン、レプチン、ミドキン、アンギオゲニン、アンギオポエチン−1、ベカプレルミン、レグラネックスなどの血管形成剤、カンスタチン、アンギオスタチン、エンドスタチン、レチノイド、ツミスタチン、バスキュロスタチン、アンギオアレスチン、バソスタチン、ベバシズマブ、プリノマスタット、その他などの抗血管新生剤、メトフォルミンなどの抗糖尿病剤、カンデサルタン、ジオバン、ジルチアゼム、アテノロール、アダラート、その他などの降圧剤、ラノラジン、二硝酸イソソルビドその他などの抗貧血剤を含む。
【0022】
例示的な抗炎症剤は、アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、テノキシカム、トルメチン、ケトロラク、オキサプロシン、メフェナミン酸、フェノプロフェン、ナムブメトン(レラフェン)、アセトアミノフェン(タイレノールRTM)、およびこれらの混合物などの標準的な非ステロイド抗炎症剤(NSAIDS);ニメスリド、NS−398、フロスリド、L−745337、セレコキシブ、ロフェコキシブ、SC−57666、DuP−697、パレコキシブナトリウム、JTE−522、バルデコキシブ、SC−58125、エトリコキシブ、RS−57067、L−748780、L−761066、APHS、エトドラク、メロキシカム、S−2474、およびこれらの混合物などのCOX−2阻害剤;ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、フルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン、プロピオン酸フルチカゾン、ピロキシカム、セレオキシブ、メフェナミン酸、トラマドール、メロキシカム、メチルプレドニゾン、シュードプテロシン、その他などのグルココルチコイド;ゾレドロニン酸、アレンドロネートその他などの高カルシウム血症剤;プラビクス、ヘパリン、アリクストラ、およびフラクシパリンその他、またはこれらの混合物などの抗血栓剤を含む。
【0023】
治療作用物質は、また、上に列挙した医薬作用物質の類似体、プロドラッグ、誘導体、前駆体、フラグメント、塩、または、他の改変体もしくは変異体を含む。別の実施形態において、被膜は、RGDペプチド配列などのペプチド、硫酸ヘパリン、硫酸コンドロイチンなどの細胞外マトリックス、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、アルブミンなどのタンパク質、もしくはその他の内皮細胞接着作用物質および/または成長促進作用物質を含有する。一実施形態において、被膜は、人工装具表面に直接に塗布される。別の実施形態において、被膜は、ポリマーおよび/または治療作用物質内に分配または分散される。一実施形態において、内皮細胞接着作用物質および/または成長促進作用物質は、人工装具に付着される。別の実施形態において、内皮細胞接着作用物質および/または成長促進作用物質は、植え込み後、経時的に人工装具から放出される。該作用物質は、6時間〜7日間、好ましくは7日間〜30日間、最も好ましくは30日間〜6カ月間の範囲の期間にわたり、人工装具から放出されうる。別の実施形態において、内皮細胞接着作用物質および/または成長促進作用物質は、ポリマーおよび/または治療作用物質に対する上塗りとして塗布される。被膜の厚さは、5μm、好ましくは1μm未満、最も好ましくは0.1μm未満である。被膜は、スプレー、浸漬被覆、刷毛塗り、分注、または他の手段によって施すことが可能である。
【0024】
本発明は、また、カテーテル本体の遠位端付近に位置するのが典型的な、拡張型ポリマー製バルーンを有するカテーテルを含むカテーテルアセンブリーも提供する。管腔内人工装具は、拡張型バルーン上に担持され、上記で詳述した通り、人工装具は、一般に、骨格と、骨格内の改変された領域全体に形成される被膜とを含む。
【0025】
本発明のさらに別の態様において、管腔骨格は、骨格表面領域の少なくとも一部分を改変し、改変された表面領域全体に材料を被覆することにより、材料で被覆してよい。改変は、ポリマー被膜の付着を増大させるために実施し、被膜と改変された表面とが相互作用して、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な付着を有する。管腔骨格および例示的なポリマーは、管腔内人工装具自体の構造との関連で上述したのと同じでありうる。表面改変は、骨格表面の標的領域におけるポリマー被膜の付着を促進することを意図する各種の処置の任意の1つであってよい。特に、付着が、ステントの圧縮時、加工時、または展開時の拡張時における被膜のクラッキングもしくはスミアリングを防止または最小化するのに十分であることが望ましい。表面のテクスチャリングは、マイクロブラスティング、レーザー処置、化学エッチング、プラズマ曝露、またはコロナ曝露を含む各種の方法を介して達成しうる好ましい改変である。表面改変は、完全でもよく、部分的もしくは選択的でもよく、骨格の曝露された表面の全体または一部分に及ぶ。
【0026】
具体例として、マイクロブラスティングにより改変された表面は、丸形、溝、規則的または不規則的な形の特徴部を提示しうる。特徴部の平均サイズ(最大長、直径、または幅)は、好ましくは50nm〜50μm、より好ましくは1μm〜10μm、および、最も好ましくは5μm〜10μmで変化しうる。特徴部の平均深さは、好ましくは50nm〜50μm、より好ましくは1μm〜10μm、および、最も好ましくは5μm〜10μmで変化しうる。特徴部の平均密度は、好ましくは1μm2当たり0.001〜0.10箇所、より好ましくは1μm2当たり0.003〜0.05箇所、および、最も好ましくは1μm2当たり0.005〜0.02箇所である。マイクロブラスティング用ブラスティング媒体の平均サイズは、好ましくは5μm〜100μm、より好ましくは20μm〜50μmである。ブラスティング媒体の種類は、酸化アルミニウム、ガラス、金属、または当技術分野で知られる他の媒体で作製しうる。
【0027】
ステント表面の改変は、高率の治療作用物質を含有するポリマー被膜組成物が、最小のクラッキングもしくはスミアリングで、またはこれらなしに圧縮または拡張されることを可能とする。一実施形態において、ポリマー組成物中の治療作用物質の百分率は、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な付着をなおも維持しながら、約40%以上、好ましくは65%以上、および、より好ましくは約80%以上でありうる。
【0028】
骨格の表面領域が上記の通りに改変された後で、典型的には、治療作用物質または他の作用物質と共にポリマーを塗布する。ポリマーおよび治療作用物質または他の作用物質は、通常、ステント表面に被膜を施す前に、1つまたは複数の溶媒中で溶解させる。溶媒の選択は、ポリマーおよび治療作用物質の溶解度に基づくのが典型的である。溶媒は、クラッキングもしくはスミアリングを最小化もしくは除去する、または圧縮もしくは拡張時におけるステントへの被膜の付着を増進する付加的な特性を有するように選択するのが好ましい。
【0029】
ステント上のポリマー被膜中の残留溶媒は、被膜のクラッキングまたはスミアリングに有害な影響を及ぼしうる。本明細書において、本発明者らにより、低沸点、高蒸発速度、低粘度、および/または高蒸気圧を有する溶媒が、ポリマー被膜中の残留溶媒を最小化することが判明している。溶媒を適正に選択することにより、ポリマー中の残留溶媒は、ステント被覆後に10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、および、より好ましくは1000ppm未満である。被膜を溶解させるのに用いる溶媒は、10以上の相対蒸発速度(n−ブチルアセテートに対する速度1に対する)を有することが好ましい。溶媒は、また、60℃以下の沸点を有することも好ましい。さらに、溶媒は、20℃において50mmHg以上の蒸気圧を有することが好ましい。さらにまた、溶媒は、25℃において1cP以下の粘度を有することが好ましい。
【0030】
ステント材料との表面張力が低い溶媒は、被膜によりステント表面の湿性を増大させ、ステントの改変された表面への被膜の付着を増大させるのに好ましい。溶媒は、70ダイン/cm未満、好ましくは50ダイン/cm未満、より好ましくは30ダイン/cm未満の表面張力を有することが好ましい。
【0031】
本明細書において本発明者らにより考案された経験的な式を用いて、どの溶媒が被膜を溶液中に溶解させ、該溶液を用いて最小の残留溶媒でステントに被膜を施す要件を最もよく満たすかを判定することができる。被膜溶媒指数は、以下の式:
【0032】
【化1】
を用いて計算される。一部の典型的な溶媒の特性および指数を、以下の表1に提示する。
【0033】
【表1−1】
【0034】
【表1−2】
。
【0035】
本発明は、被膜溶媒指数が1より大きい、好ましくは10より大きい、および、より好ましくは20より大きい溶媒の使用を主張する。
【0036】
上記の通りに管腔内人工装具を調製した後で、これを送達用カテーテルに装着する。バルーン拡張型人工装具の場合、バルーン型カテーテルは、典型的にはポリマー、より典型的には非伸張性ポリマーから形成される、膨張式バルーンを有する。人工装具の骨格は、典型的には、圧縮してバルーン上に取り付け、その後、ステントおよびバルーンをポリマーシース内に入れ、高圧下で加熱する。従来のこうした熱硬化(heat setting)は、バルーンの一部をステントエレメント間の隙間内へ「膨張(pillowing)」させて、骨格を送達バルーンに埋め込むことを支援する。熱硬化は、かつて、ポリマー被膜内にクラッキングまたはスミアリングを引き起こす傾向があったが、被膜ポリマーの場合よりも低いガラス転移温度を有するバルーンを用いることにより、被膜ポリマー材料に有害な影響を及ぼす温度よりも低い温度での熱硬化が可能となる。
【0037】
本発明のさらに別の態様では、圧縮および拡張時における表面応力を最小化するように設計された特定の骨格構造が提供される。管腔骨格は、クラウンにより接合されたストラットを有する、軸方向に接合された複数の蛇行リングを含む。隣接するリングにおける対向するクラウンは、直線状の結合部リンクにより結合され、ここで、一連の隣接するリングペア間の結合部は、軸方向に対して反対方向の角度を有する。好ましい実施形態において、結合部は、軸方向に対して40°〜60°の範囲の角度に配置される。骨格は、典型的には、6〜12箇所のクラウン、および、隣接するリングの各ペア間において正反対に対向する2〜4箇所の結合部を含む。結合部は、通常、約0.025mm〜2.5mmの範囲の長さを有し、クラウンは、5°〜75°の範囲の回転角でオフセットし、0.25mm〜0.1mmの範囲の距離で軸方向に分離している。結合部の幅および/または厚さは、クラウンの幅および/または厚さよりも小さいのが典型的である。こうして、クラウンは、通常、骨格半径方向の最大拡張において50%以下の歪みを有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の原理に従い構築された例示的な骨格構造を示す図である。
【図2】本発明の原理に従い構築された例示的な骨格構造を示す図である。
【図3】実施例1に記載の通りに調製された、管腔骨格の外側のSEM画像である。
【図4】実施例3において調製された、骨格の表面特徴部を示すSEM画像である。
【図5】実施例7に記載の通りに取り付けおよび拡張した後における、実施例5で調製されたステントの内側の光学顕微鏡画像である。
【図6】実施例7に記載のステントの外側直径の光学顕微鏡画像である。
【図7】実施例8に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおける28日間の植え込み後において、PECおよびPBMAで被覆されたステントの新生内膜面積を、裸の金属製ステントと比較するチャートである。
【図8】植え込みの90日後における結果を示す、図7と同様の図である。
【図9】実施例9に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおける28日間の植え込み後において、PEC薬剤被覆ステントにより達成された新生内膜面積を、ラパマイシン溶出Cypher(商標)ステントにおいて達成された新生内膜面積と比較する図である。
【図10】植え込みの90日後における結果を示す、図9と同様の図である。
【図11】ブタ冠動脈モデルにおける180日間の植え込み後において、PEC被覆ステントにより達成された新生内膜面積を、ラパマイシン溶出Cypher(商標)ステントにおいて達成された新生内膜面積と比較する図である。
【図12】ブタ冠動脈モデルにおける、被覆したステントからのPECの経時的な放出百分率を示すグラフである。
【図13】実施例10に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおいて、異なる時点で達成された、PECの組織濃度を示すグラフである。
【図14】実施例11に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおける28日間の植え込み後において、PBMA被覆ステントにより達成された新生内膜面積を、ラパマイシン溶出Cypher(商標)ステントにおいて得られた新生内膜面積と比較する図である。
【図15】植え込みの90日後における結果を示す、図14と同様の図である。
【図16】実施例11に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおいて、被覆したステントから経時的に放出されたPBMAの百分率を示すグラフである。
【図17】実施例12に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおいて、被覆したステントから経時的に放出されたPBMAの組織濃度を示すグラフである。
【図18】実施例12に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおける28日間の植え込み後において、PLLA−TMC被覆ステントにより達成された新生内膜面積を、ラパマイシン溶出Cypher(商標)ステントと比較する図である。
【図19】実施例14に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおいて、被覆したステントから経時的に放出されたPLLA−TMCの百分率を示すグラフである。
【図20】実施例12に記載の通り、ブタ冠動脈モデルにおいて、経時的に放出されたPLLA−TMCの組織濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
発明の詳細な説明
被膜の応力、クラッキング、またはスミアリングを最小化するように設計された、例示的な血管系骨格を、図1および2に示す。骨格の基本構造は、長手方向の構造を形成する単位構成要素である蛇行リングを形成する、一連の相互結合されたクラウン12およびストラット14から形成される、格子様の枠組みである。リング間のリンク16は、骨格の可撓性に影響を及ぼす。リング間のリンク16は、通常、クラウンの中心線または頂点からわずかにオフセットした、クラウン12の外側先端部において結合され、次のリングが前のリングからオフセットすることで、ステントを屈曲させたとき、クラウンが接触し合うことを回避することを可能とするように方向づけられている。このオフセット量は、テイクオフ角により決定される。図2に示す通り、本発明は、リンクのテイクオフ角αが30°〜60°、より好ましくは45°〜55°であることを主張する。
【0040】
図1は、可撓性および側枝へのアクセスを提供する2箇所の結合部16および8箇所のクラウン12を有する、拡張状態における好ましい実施形態を示す。リングは、拡張時の十分な骨格支持を維持しながら、圧縮および屈曲時におけるクラウン間の接触を回避することによりストラット間の接触を最小化するように、わずかにオフセットしている。図2は、結合部が、50°のテイクオフ角でクラウン12の頂点からわずかにオフセットしたクラウンにどのように接合され、リングからリングへの方向をどのように変化させて不均等な拡張を最小化するかを示す。
【0041】
リンク長およびリンクの形状もまた、被膜プラットフォームとしての骨格の適切性に影響を及ぼしうる。リンクの形状は、クラウンへの干渉を回避するため、直線状であることが好ましい。また、リンク長は、圧縮および屈曲時におけるクラウン間の接触に対する干渉を回避するのに必要な最小のギャップを提供するように選択され、通常、0.025mm〜2.5mmである。リング間の長手方向のリンクは、圧縮状態において、リング間のギャップを増大させる。圧縮されたステントのリング間またはクラウン間の軸方向のギャップは、0.025mm〜0.5mm、好ましくは0.05mm〜0.1mm、および、より好ましくは0.1mm〜0.05mmの範囲である。
【0042】
本発明の別の態様は、リンク数を最小化して、ステントの可撓性を増進し、十分な側枝アクセスを提供することである。リンク数は、ステントのクラウン数に応じて変化しうる。リンク数は、クラウン数の倍数であることで、不均等な拡張を最小化しうる。例えば、9クラウンステントは、3箇所のリンクを有し、8クラウンステントは、2箇所または4箇所のリンクを有するなどである。クラウン数が増加するほど、所与の拡張時直径における骨格支持または支持範囲が広がる。例えば、2箇所のリンクを有する8クラウンステントは、所与の直径における同様のクラウン設計で2箇所のリンクを有する6クラウンステントよりもすぐれた骨格支持を提供する。好ましい実施形態では、2〜4箇所のリンクおよび6〜12箇所のクラウンを有する、2.5〜4.5mmの直径で拡張するステント設計が提供される。好ましい実施形態は、2箇所のリンクおよび8箇所のクラウンを有し、1つのステントパターンで全直径範囲をカバーするステントである。
【0043】
本発明の別の態様は、リンクの幅を最小化して、ステントの可撓性を改善することである。本発明は、リンクの幅が、クラウンのストラット幅よりも狭くなることを主張する。好ましい実施形態は、幅0.05mm〜0.075mmの範囲のリンク幅を伴う、0.1mmのストラット幅を有する。ストラット幅に対するリンク幅比50%〜90%を維持しながら、より狭いストラットを用いてよい。
【0044】
本発明の別の態様は、拡張時の十分な骨格支持を提供しながら、所望の直径または屈曲状態への圧縮時に、クラウンが接触し合うことによりステント上の被膜を損傷しないように、クラウンの数および形状を設計することである。典型的には、クラウン数をより少なくすることにより、クラウン間の接触なしにより小さなクリンプ直径が可能となる。クラウンの形状もまた、クラウン間の接触可能性に影響を及ぼし、小さな半径から形成されるU形のクラウンは、より大きな半径による鍵穴形クラウンよりも占める空間が小さい。本発明は、0.1mm未満のクリンプ直径を有し、2箇所のリンクを有する、8箇所のU形クラウンによるステントを主張する。
【0045】
ステントの圧縮または拡張時において誘導される歪みを予測するには、有限要素法を用いるのが一般的である。歪みが小さければ、圧縮または拡張時における被膜のクラッキングまたはスミアリングを最小化または除去する一助となる。異なる材料は、ステントが異なる形で拡張する原因となり、このため、最大直径において異なるピーク歪みを示す。
【0046】
例えば、図1および2において上記の設計を有する、厚さ0.08mmでコバルト−クローム製の8クラウンステントは、最大拡張時における歪みの25%未満をもたらし、被膜のクラックを全く示さなかった。本発明は、ピーク歪みの50%未満、好ましくはピーク歪みの30%、より好ましくはピーク歪みの25%未満を有するステント形状を主張する。
【0047】
本発明の別の態様は、拡張時に、セル形状が、骨格支持および十分な側枝アクセスを提供するように設計されるため、リングの位相が一致でも不一致でもない状態で並ぶことである。クラウン先端部が先端同士で並ぶとき、骨格支持は最適ではない。リングが同位相であると、側枝アクセスが損なわれる。リングをわずかにオフセットさせることにより、十分な側枝アクセスも維持しながら、骨格支持を最適化することができる。
【0048】
本発明の別の態様は、拡張時の力が釣り合い、骨格が均等に拡張するように、軸方向に対して傾いたリンク16を、骨格の長手方向に沿って交互に別の方向に向けることである。不均等または釣り合いのとれない拡張は、局所的な高歪み領域を導入するので、骨格表面に存在する被膜に対して望ましくない影響を及ぼしうる。拡張時における釣り合いは、有限要素法を用い、各クラウンの開口部を測定して特徴付けることができる。クラウン開口部間の偏差または変動係数は、最小化すべきである。ステントの長手方向に沿うリンクの方向を交互に変化させることにより、図1および2の設計におけるクラウン開口部間の変動係数は、8%から3%に軽減された。本発明は、5%未満のクラウン開口部間変動係数を達成することができる。
【0049】
ストラット幅に対して薄すぎるストラットは、ステント拡張時に捻じれる傾向があり、被膜がクラッキングまたはスミアリングする原因となりうる。本発明は、ストラット幅に対するストラット厚の比が、0.6〜1.0であることを主張する。別の実施形態において、今回のステント設計は、拡張時に、平面から逸脱する捻じれをほとんどまたは全く有さない。
【0050】
ステントインプラントは、化学エッチング、化学フライス加工、レーザー切削、スタンピング、EDM、ウォータージェット切削、ワイヤーの屈曲、射出成形、および溶接など各種の方法を用いて製造してよい。
【0051】
ステント材料は、ワイヤー、延伸チューブ、多層ステント構造用の共延伸チューブ、平面シート、または他の形態として出発しうる。ステント材料自体は、316Lステンレス鋼、コバルト−クローム合金(L−605、MP35N)、エルジロイ、ニチノール合金、白金、パラジウム、タンタル、または他の合金およびポリマーなど、恒久性であると考えてよい。あるいは、マグネシウム、亜鉛、もしくはこれらの合金、または、ポリ−L−乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸およびポリエチレングリコールのコポリマーその他などのポリマーなど、生体分解材料も用いてよい。
【0052】
本出願中に含まれるすべての各種発明および実施形態は、単独で、または相互の各種組合せにより用いることができる。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
ステント表面のテクスチャリング
ワイヤーマンドレル上に3×l8mmのステントを置き、200rpmで回転させた。直径0.020インチ(0.5mm)のノズルを伴うマイクロブラスターを作動させ、直径20μmの媒体を射出させた。ノズルは、ステントから1インチに置き、インチ当たり2秒の割合で、ステントの軸方向に沿って前後に往復させる。計5サイクルにわたり、ステントをマイクロブラストさせる。ステントの向きを逆にして、マイクロブラスティングを繰り返す。次いで、ステントを0.036インチ(0.91mm)などのより小さな内径に予備圧縮する。表面のテクスチャリングに用いられるパラメータは変化しうることが理解できる。このテクスチャリング工程では、内径および側壁面よりも外径の方が、高い平均特徴部密度を有する。図3は、ステント外径の表面特徴部に対するSEM画像を示す。
【0054】
(実施例2)
ステント表面のテクスチャリング
直径0.050インチ(1.25mm)および長さ2インチ(5cm)のハイポチューブを、マイクロブラスター(Comco社製)のノズルに接続する。3mm×18mmステントの管腔内に、ハイポチューブを挿入する。マイクロブラスターを作動させ、ハイポチューブ端から直径25μmの媒体を射出させる。次いで、ハイポチューブからステントをゆっくりと取り外すと、ステントの内面および少なくとも一部の側壁面がテクスチャリングされる。マイクロブラスターを停止させる。ステントの管腔内にハイポチューブを再び挿入するが、逆向きとする。マイクロブラスターを作動させ、ハイポチューブ端から直径25μmの媒体を射出させる。次いで、ハイポチューブからステントをゆっくりと取り外すと、ステントの内面および少なくとも一部の側壁面がテクスチャリングされる。次いで、ステントを0.036インチ(0.91mm)などのより小さな内径に予備圧縮する。表面のテクスチャリングに用いられるパラメータは変化しうることが理解できる。
【0055】
(実施例3)
ステント表面のテクスチャリング
より小さな内径に予備圧縮する前に、実施例2から得られるステントにさらなる表面改変を加える。ワイヤーマンドレル上にステントを置き、200rpmで回転させる。直径0.020インチ(0.5mm)のノズルを伴うマイクロブラスターを作動させ、直径20μmの媒体を射出させる。ノズルは、ステントから1インチに置き、インチ当たり2秒の割合で、ステントの軸方向に沿って前後に往復させる。計5サイクルにわたり、ステントをマイクロブラストさせる。ステントの向きを逆にして、マイクロブラスティングを繰り返す。次いで、ステントを0.036インチ(0.91mm)などのより小さな内径に予備圧縮する。表面のテクスチャリングに用いられるパラメータは変化しうることが理解できる。図4は、ステント内径の表面特徴部に対するSEM画像を示す。
【0056】
(実施例4)
PBMA被膜を伴うステント
0.011インチ(0.27mm)のワイヤーマンドレルを360度曲げて、先端部でループを形成する。これを、内径0.036インチ(0.91mm)に予備圧縮した、実施例3から得られる、表面処置したステント内に挿入する。次いで、Sono−Tek Micromist(商標)超音波被覆機の試料保持固定具にマンドレルを取り付け、超音波ノズル下において、ステントを回転させ、前後に動かす。被覆機は、ジクロロメタン溶媒中に溶解させたPBMAを伴う、濃度40%の、ノボリムスなどの大環状ラクトンを、超音波ノズル表面に30μl/分の速度で送達することによりそれらの微粒化をもたらす、シリンジポンプを有する。多数サイクルにわたってステントを前後に直線的に動かした後、被膜重量が約450μgのPBMA:ノボリムスとなる時点で、被覆工程を終了する。次いで、36時間にわたりステントを真空中に置き、残留溶媒を50ppm未満まで除去する。
【0057】
(実施例5)
ポリエチレンカーボネート被膜を有するステント
0.011インチ(0.27mm)のワイヤーマンドレルを360度曲げて、先端部でループを形成する。これを、内径0.036インチ(0.91mm)に予備圧縮した、実施例1から得られる、表面処置したステント内に挿入する。次いで、Sono−Tek Micromist(商標)超音波被覆機の試料保持固定具にマンドレルを取り付け、超音波ノズル下において、ステントを回転させ、前後に動かす。被覆機は、ジクロロメタン溶媒中に溶解させたPECを伴う、濃度66%の大環状ラクトンを、超音波ノズル表面に30μl/分の速度で送達することによりそれらの微粒化をもたらす、シリンジポンプを有する。多数サイクルにわたってステントを前後に直線的に動かした後、被膜重量が約75μgのPEC:大環状ラクトンとなる時点で、塗布工程を終了する。次いで、36時間にわたりステントを真空中に置き、残留溶媒を50ppm未満まで除去する。
【0058】
(実施例6)
PLLA−TMC被膜を有するステント
0.011インチ(0.27mm)のワイヤーマンドレルを360度曲げて、先端部でループを形成する。これを、内径0.036インチ(0.91mm)に予備圧縮した、実施例1から得られる、表面処置したステント内に挿入する。次いで、Sono−Tek Micromist(商標)超音波被覆機の試料保持固定具にマンドレルを取り付け、超音波ノズル下において、ステントを回転させ、前後に動かす。被覆機は、ジクロロメタン溶媒中に溶解させたPLLA−TMCを伴う、濃度40%の大環状ラクトン(ノボリムスなど)を、超音波ノズル表面に30μl/分の速度で送達することによりそれらの微粒化をもたらす、シリンジポンプを有する。多数サイクルにわたってステントを前後に直線的に動かした後、被膜重量が約450μgのPLLA−TMC:大環状ラクトンとなる時点で、被覆工程を終了する。次いで、36時間にわたりステントを真空中に置き、残留溶媒を50ppm未満まで除去する。
【0059】
(実施例7)
ステントクリンプの取り付けと拡張
実施例4、5、または6から得られる被覆したステントを、内径0.046インチ(1.1mm)のPTFEシース内に挿入する。長さ20mmのバルーン型ステント送達システムの遠位端において折りたたんだナイロン製コポリマーバルーンを、ステント管腔内に挿入する。約30秒間にわたり、ポリマー被膜のTgを上回る約35℃までPTFEシース表面を加熱し、次いで、冷却する間、バルーンを250psiまで加圧する。冷却後、バルーンを脱加圧する。ステントからPTFEシースを取り外し、圧縮させたステントをカテーテルのバルーン上に残す。次いで、ステント送達用カテーテルをパッケージングし、エチレンオキサイドにより滅菌する。被膜のクラッキングまたはスミアリングが最小〜皆無の状態である生理的条件下で、ステントを拡張する。図5および6は、拡張後のPEC被覆ステントの内径および外径の光学顕微鏡画像を示す。
【0060】
(実施例8)
PBMA被覆ステントおよびPEC被覆ステントのin vivo試験
植え込みの28および90日後のブタ冠動脈モデルにおけるステント周囲組織の組織形態測定および病理学的解析を比較することにより、PBMA被覆ステントおよびPEC被覆ステントの組織適合性および血液適合性を評価した。ステントは、PBMA(実施例4の通り)およびPEC(実施例5の通り)で被覆したが、ポリマーのみによる被覆であり、薬剤含量は伴わなかった。
【0061】
ステントおよび血管形成術に関する研究には、非アテローム性動脈硬化ブタモデルが広く用いられ、該血管系応答特性およびそのヒト血管系応答との相関について大量のデータがもたらされている(Schwartzら、Circulation、2002年、第106巻、1867〜1873頁)ので、同モデルを本モデルとして選択した。動物は、米国学術研究会議により確立された「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」に従い飼育し、ケアした。
【0062】
すべての動物は、介入の少なくとも3日前から、経口による325mgアスピリンおよびクロピドグレル(75mg)で前治療し、試験期間にわたり継続した。麻酔の誘導後、標準的な技法を用いて左または右の大腿動脈にアクセスし、動脈シースを導入し、動脈内に送り込んだ。
【0063】
蛍光顕微鏡の誘導下で血管造影法を実施し、7Fr.の誘導カテーテルをシース中に挿入し、適切な位置まで送り込み、冠動脈内ニトログリセリンを投与した。平均管腔内径2.25〜4.0mmの範囲の冠動脈セグメントを選択し、0.014インチ(0.35mm)のガイドワイヤーを挿入した。定量的冠動脈造影法(QCA)を実施して、基準血管径を記録した。
【0064】
適切なサイズのステントを展開部位まで送り込んだ。1.1:1.0のバルーン対動脈比を達成するのに十分な圧力まで、一定の速度でバルーンを膨張させた。約10秒間にわたり圧力を維持した。血管造影法を実施して、術後の血管開存および血管径を記録した。
【0065】
各動物に対し、指定の終了時点において、追跡血管造影法を実施した。ステントの移動、管腔の狭窄化、ステントのアポジション、切開部または動脈瘤の存在、および血流特性の証拠について、各血管造影図を定性的に評価した。
【0066】
各動物から心臓を採取し、100〜120mmHgにおいて、10%に緩衝したホルマリンにより冠動脈を灌流した。心臓は10%緩衝ホルマリンに浸漬した。心筋病変または異常な観察があれば、報告した。
【0067】
測定または計算された血管造影法パラメータは、
1.末梢血管(近位および遠位)平均管腔径(ステント設置後および最終)
2.標的領域の平均管腔径(すべての血管造影図)
3.標的領域の最小管腔径(MLD)(ステント設置後および最終のみ)
4.管腔径狭窄[[1−(MLD/RVD)]×100%]:式中、RVDとは、閉塞部における基準管腔径の計算値(病変なしの推定血管の外挿値を生成する、ソフトウェアベースの反復線形回帰法により得られる測定値)(最終血管造影図のみ)である。
5.バルーン対動脈比[バルーン/ステント前平均管腔径]
6.ステント対動脈比[ステント後平均管腔径/ステント前平均管腔径]
7.遅発喪失比[最終MLD−ステント後MLD]。
【0068】
すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。28日後に、PEC被覆ステント、PBMA被覆ステント、裸の金属製ステントの3つの群が、それぞれ、血管内膜面積(mm2)において、1.44±0.58対1.64±0.82対1.42±0.68という同様の結果を示した(図7)。フィブリンの沈着、石灰化、および内皮化の病理学試験は、すべてのステントを通して同等の結果を示した。90日後に、PEC被覆ステント、PBMA被覆ステント、裸の金属製ステントの3つの群が、それぞれ、血管内膜面積(mm2)において、1.92±0.8対2.61±0.7対1.79±9いう同様の結果を示した(図8)。フィブリンの沈着、石灰化、および内皮化病理学試験は、すべてのステントを通して同等の結果を示した。
【0069】
本実施例におけるPEC被膜およびPBMA被膜は、in vivoモデルにおいて、裸の金属製ステントと同等の生体適合性を示した。
【0070】
(実施例9)
PEC薬剤被覆ステントに対するin vivo試験
ブタ冠動脈における28±2日後、90±5日後、および180±5日後の組織形態測定結果を、非罹患ブタ冠動脈モデルにおけるラパマイシン溶出ステントシステムCypher(商標)冠動脈ステント(Cordis社製)と比較することにより、60〜75μgのPEC:大環状ラクトン薬剤化合物を有する、PEC薬剤被覆ステント(上記の実施例5において調製)の有効性を評価した。介入手順は、実施例8に記載の通りであり、1.3:1.0の高バルーン:動脈比で28日間のインプラントステントの植え込みを実施し、90日間および180日間のインプラントには、1.1:1.0のより低いバルーン:動脈比でステント植え込みを実施した。
28日間のインプラント:すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。PEC薬剤被覆ステント(約2.5μg薬剤用量/mmステント長)の平均血管内膜面積(mm2)は、2.5±0.9(n=40)の平均血管内膜面積(mm2)を提供する、プールされたCypher(商標)ステントデータに対し、2.5±1.2(n=15)であった(図9)。
【0071】
本実施例におけるPEC薬剤被覆ステントは、28日間にわたりブタモデルに植え込まれた場合、Cypher(商標)ステントと同様の新生内膜形成をもたらした。
90日間のインプラント:すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。PEC薬剤被覆ステント(約2.5μg薬剤用量/mmステント長)の平均血管内膜面積(mm2)は、2.39±2.2(n=20)の平均血管内膜面積(mm2)を提供する、植え込み式Cypher(商標)ステントに対し、2.50±0.9(n=6)であった(図10)。
【0072】
本実施例におけるPEC薬剤被覆ステントは、90日間にわたりブタモデルに植え込まれた場合、Cypher(商標)ステントと同様の新生内膜形成をもたらした。
180日間のインプラント:一匹を除くすべての動物が、指定の終了時点まで生存した。生存しなかった動物は、植え込み時におけるステント膨張下の手術上の問題により引き起こされた血栓形成により、第6日に死亡した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。PEC薬剤被覆ステント(約4.4μg薬剤用量/mmステント長)の平均血管内膜面積(mm2)は、2.70±1.15(n=2)の平均血管内膜面積(mm2)を提供する、同時に植え込んだCypher(商標)ステントに対し、1.98±0.7(n=2)であった(図11)。
【0073】
本実施例におけるPEC薬剤被覆ステントは、180日間にわたりブタモデルに植え込まれた場合、Cypher(商標)ステントと同様の新生内膜形成をもたらした。
【0074】
(実施例10)
PEC薬剤被覆ステントのin vivoにおける薬物動態
実施例9から得られるPEC薬剤被覆ステントシステムに対する薬物動態評価を、ブタ冠動脈モデルにおいて、6時間後、3日後、および28日後に実施した。
【0075】
介入手順は、ステント植え込みまでは、実施例8に記載のin vivo血管造影法試験と同様である。適切なサイズのステントを展開部位まで送り込んだ。1:1のバルーン対動脈比を達成するのに十分な圧力まで、一定の速度でバルーンを膨張させた。約10秒間にわたり圧力を維持した。血管造影法を実施して、術後の血管開存および血管径を記録した。計9個のステント(時点当たり3個)を植え込んだ。
【0076】
適切な時点で動物を安楽死させ、心臓を切除した。ステント区間に対して近位の約10mmの血管および同遠位の約10mmの血管を含むステントセグメントを切除した。該近位区間および遠位区間を分離し、別個のバイアルに保管した。ステント周囲の組織をステントから注意深く除去し、各々を別個のバイアルに入れた。次いで、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて解析する前に、すべてを−70℃に凍結する。
【0077】
すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。PEC薬剤被覆ステントについてのステントおよび組織の薬物動態を、図12および13に示す。
【0078】
本実施例におけるPEC薬剤被覆ステントは、薬剤の約90%が7日間以内に放出され、少なくとも同じ期間にわたり薬剤の組織濃度が存在する、ステントからの薬剤放出プロファイルを示す。
【0079】
(実施例11)
PBMA薬剤被覆ステントに対するin vivo試験
ブタ冠動脈における28±2日後、90±5日後の組織形態測定結果を、非罹患ブタ冠動脈モデルにおけるラパマイシン溶出ステントシステムCypher(商標)冠動脈ステント(Cordis社製)と比較することにより、450μgのPBNA:ノボリムス薬剤化合物を有する、PBMA薬剤被覆ステント(上記の実施例4において調製)の有効性を評価した。介入手順は、実施例8に記載の通りであるが、1.3:1.0の高バルーン:動脈比を用い、90日間のインプラントには、1.1:1.0のより低いバルーン:動脈比でステント植え込みを実施した。
28日間のインプラント:すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。Cypher(商標)ステントに関する3つの異常値データ点(完全閉塞または完全に近い閉塞)は除外した。PBMA薬剤被覆ステント(約10μg薬剤用量/mmステント長)の平均血管内膜面積(mm2)は、Cypher(商標)について2.5±0.9(n=40)の平均狭窄百分率を提供する、同様のプロトコールによる本試験およびかつての試験から得られるプールされたCypher(商標)ステントデータに対し、2.0±0.5(n=14)であった(図14)。
【0080】
本実施例におけるPBMA薬剤被覆ステントは、28日間にわたりブタモデルに植え込まれた場合、Cypher(商標)ステントと同様の新生内膜形成をもたらした。
90日間のインプラント:すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。Cypher(商標)ステントに関する3つの異常値データ点(完全閉塞または完全に近い閉塞)は除外した。PBMA薬剤被覆ステント(約10μg薬剤用量/mmステント長)の平均血管内膜面積(mm2)は、Cypher(商標)ステントについて3.9±2.2(n=20)の平均狭窄百分率を提供する、同様のプロトコールによる本試験およびかつての試験から得られるプールされたCypher(商標)ステントデータに対し、2.5±0.6(n=6)であった(図15)。
【0081】
本実施例におけるPBMA薬剤被覆ステントは、90日間にわたりブタモデルに植え込まれた場合、Cypher(商標)ステントと同様の新生内膜形成をもたらした。
【0082】
(実施例12)
PBMA薬剤被覆ステントのin vivoにおける薬物動態
実施例11から得られるPBMA薬剤被覆ステントシステムに対する薬物動態評価を、ブタ冠動脈モデルにおいて、6時間後、3日後、および28日後に実施した。
【0083】
介入手順は、実施例10に記載のin vivo血管造影法試験と同様である。すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。PBMA薬剤被覆ステントについてのステントおよび組織の薬物動態を、図16および17に示す。
【0084】
本実施例におけるPBMA薬剤被覆ステントは、薬剤の約50%が7日後、および同約70%が28日後に放出され、少なくとも14日間にわたり薬剤の組織濃度が存在する、ステントからの薬剤放出を示す。
【0085】
(実施例13)
PLLA−TMC薬剤被覆ステントに対するin vivo試験
ブタ冠動脈における28±2日後の血管造影結果を、非罹患ブタ冠動脈モデルにおけるラパマイシン溶出ステントシステムCypher(商標)冠動脈ステント(Cordis社製)と比較することにより、75μgのPLLA−TMC薬剤化合物を有する、PLLA−TMC薬剤被覆ステント(上記の実施例6において調製)の有効性を評価した。介入手順は、実施例8に記載の通りであるが、28日間のインプラントには、1.3:1.0の高バルーン:動脈比によりステント植え込みを実施した。
【0086】
すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。ステントの移動、ステントのマルアポジション、切開部の遷延、または動脈瘤の証拠の発生は記録されなかった。PLLA−TMC薬剤被覆ステント(約2.7μg薬剤用量/mmステント長)の平均血管内膜面積(mm2)は、2.5±0.9(n=40)の平均血管内膜面積(mm2)を提供するCypher(商標)ステントに対し、2.3±0.9(n=8)であった(図18)。
【0087】
本実施例におけるPEC薬剤被覆ステントは、28日間にわたりブタモデルに植え込まれた場合、Cypher(商標)ステントと同様の新生内膜形成をもたらした。
【0088】
(実施例14)
PLLA−TMC薬剤被覆ステントのin vivoにおける薬物動態
実施例6から得られるPEC薬剤被覆ステントシステムに対する薬物動態評価を、ブタ冠動脈モデルにおいて、6時間後、3日後、および28日後に実施した。
【0089】
介入手順は、ステント植え込みまでは、実施例8に記載のin vivo血管造影法試験と同様である。適切なサイズのステントを展開部位まで送り込んだ。1:1のバルーン対動脈比を達成するのに十分な圧力まで、一定の速度でバルーンを膨張させた。約10秒間にわたり圧力を維持した。血管造影法を実施して、術後の血管開存および血管径を記録した。計9個のステント(時点当たり3個)を植え込んだ。
【0090】
適切な時点で動物を安楽死させ、心臓を切除した。ステント区間に対して近位の約10mmの血管および同遠位の約10mmの血管を含むステントセグメントを切除した。該近位区間および遠位区間を分離し、別個のバイアルに保管した。ステント周囲の組織をステントから注意深く除去し、各々を別個のバイアルに入れた。次いで、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて解析する前に、すべてを−70℃に凍結した。
【0091】
すべての動物は、指定の終了時点まで生存した。PLLA−TMC薬剤被覆ステントについてのステントおよび組織の薬物動態を、図19および20に示す。
【0092】
本実施例におけるPEC薬剤被覆ステントは、薬剤の約90%が7日間以内に放出され、少なくとも同じ期間にわたり薬剤の組織濃度が存在する、ステントからの薬剤放出プロファイルを示す。
【0093】
当業者は、本発明が、本明細書に記載され意図された特定の実施形態以外の各種の形態において明示されることを認識するであろう。したがって、付随の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲および精神から逸脱しない限りにおいて、形態および詳細の逸脱を行ってよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内管腔内で半径方向に変形するように適合された骨格であって、外面領域を有し、骨格が変形されると歪みが生じ、表面領域が改変されている骨格と、
改変された表面領域と相互作用して、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な付着を有する、表面領域全体に堆積された被膜と
を含む、管腔内人工装具。
【請求項2】
被膜が生理的環境内で柔軟化する、請求項1に記載の管腔内人工装具。
【請求項3】
被膜がポリマーを含む、請求項2に記載の管腔内人工装具。
【請求項4】
ポリマーが生理的温度を下回るガラス転移温度を有する、請求項3に記載の管腔内人工装具。
【請求項5】
ポリマーが、ポリブチルメタクリレート、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールのコポリマーからなる群から選択される、請求項3に記載の管腔内人工装具。
【請求項6】
表面領域の改変が、表面のテクスチャリングを含む、請求項1に記載の管腔内人工装具。
【請求項7】
表面のテクスチャリングが、マイクロブラスティング、レーザー処置、化学エッチング、プラズマ曝露、またはコロナ放電の結果である、請求項6に記載の管腔内人工装具。
【請求項8】
表面のテクスチャリングが、50nm〜50μmの範囲のサイズを有する表面特徴部を含む、請求項6に記載の管腔内人工装具。
【請求項9】
表面特徴部が、0.001〜0.1箇所/μm2の範囲の平均密度を有する、請求項8に記載の管腔内人工装具。
【請求項10】
ポリマーが、管腔内環境において非浸食性であり、500KDaを超える分子量を有する、請求項3に記載の管腔内人工装具。
【請求項11】
ポリマーが、ポリ−n−ブチルメタクリレートを含む、請求項3に記載の管腔内人工装具。
【請求項12】
ポリマーが、管腔内環境において浸食性であり、50KDaを上回る分子量を有する、請求項3に記載の管腔内人工装具。
【請求項13】
ポリマーが、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールのコポリマーからなる群から選択される、請求項2に記載の管腔内人工装具。
【請求項14】
被膜中に分散され分配されるか、または被膜に隣接する治療作用物質をさらに含む、請求項1に記載の管腔内人工装具。
【請求項15】
治療作用物質が、被膜および治療作用物質の総重量に基づき少なくとも50重量%の濃度を有する、請求項14に記載の管腔内人工装具。
【請求項16】
治療作用物質が、免疫調節物質、抗癌剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、抗真菌剤、抗糖尿病剤、抗高脂血症剤、抗血管新生剤、血管新生剤、降圧剤、もしくは他の治療クラスの薬剤、またはこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の管腔内人工装具。
【請求項17】
骨格が、半径方向の変形を受けるとき、変形された領域内においてピーク歪みの50%未満の歪みを有するように構成される、請求項1に記載の管腔内人工装具。
【請求項18】
拡張型ポリマー製バルーンを有するカテーテルと、
拡張型バルーンにより担持される管腔内人工装具であって、
体内管腔内で半径方向に変形するように適合された骨格であって、外面領域を有し、骨格が変形されると歪みが生じ、表面領域が改変されている骨格と、
改変された表面領域と相互作用して、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な付着を有する、表面領域全体に堆積された被膜と
を含む、管腔内人工装具と
を含むカテーテルアセンブリー。
【請求項19】
被膜が生理的環境内で柔軟化する、請求項18に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項20】
被膜がポリマーを含む、請求項19に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項21】
ポリマーが生理的温度を下回るガラス転移温度を有する、請求項20に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項22】
拡張型バルーンが、被膜ポリマーのガラス転移温度を下回るガラス転移温度を有するポリマーからなる、請求項20に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項23】
ポリマーが、ポリブチルメタクリレート、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールのコポリマーからなる群から選択される、請求項20に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項24】
表面領域の改変が、表面のテクスチャリングを含む、請求項18に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項25】
表面のテクスチャリングが、マイクロブラスティング、レーザー処置、化学エッチング、プラズマ曝露、またはコロナ放電の結果である、請求項24に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項26】
表面のテクスチャリングが、50nm〜50μmの範囲のサイズを有する表面特徴部を含む、請求項24に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項27】
表面特徴部が、0.001〜0.1箇所/μm2の範囲の平均密度を有する、請求項26に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項28】
ポリマーが、管腔内環境において非浸食性であり、500KDaを超える分子量を有する、請求項20に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項29】
ポリマーが、ポリ−n−ブチルメタクリレートを含む、請求項20に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項30】
ポリマーが、管腔内環境において浸食性であり、50KDaを上回る分子量を有する、請求項21に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項31】
ポリマーが、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールのコポリマーからなる群から選択される、請求項30に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項32】
被膜中に分散され分配されるか、または被膜に隣接する治療作用物質をさらに含む、請求項18に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項33】
治療作用物質が、被膜および治療作用物質の総重量に基づき少なくとも50重量%の濃度を有する、請求項32に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項34】
治療作用物質が、免疫調節物質、抗癌剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、抗真菌剤、抗糖尿病剤、抗高脂血症剤、抗血管新生剤、血管新生剤、降圧剤、もしくは他の治療クラスの薬剤、またはこれらの組合せからなる群から選択される、請求項32に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項35】
骨格が、半径方向の変形を受けるとき、変形された領域内においてピーク歪みの50%未満の歪みを有するように構成される、請求項18に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項36】
管腔骨格を被覆する方法であって、
骨格表面領域の少なくとも一部分を改変して、ポリマー被膜の付着を増大させるステップと、
改変された表面領域全体に材料を被覆するステップであって、材料が改変された表面領域と相互作用して、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な付着を有するステップと
を含む方法。
【請求項37】
材料が生理的環境内で柔軟化する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
材料がポリマーを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ポリマーが生理的温度を下回るガラス転移温度を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ポリマーが、ポリブチルメタクリレート、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールのコポリマーからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
表面領域を改変するステップが、表面のテクスチャリングを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
表面のテクスチャリングが、マイクロブラスティング、レーザー処置、化学エッチング、プラズマ曝露、またはコロナ放電を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
表面のテクスチャリングが、50nm〜50μmの範囲のサイズを有する表面特徴部を与えるステップを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
表面特徴部が、0.001〜0.1箇所/μm2の範囲の平均密度を有する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ポリマーが、管腔内環境において非浸食性であり、500KDaを超える分子量を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
ポリマーが、ポリ−n−ブチルメタクリレートを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ポリマーが、管腔内環境において浸食性であり、50KDaを上回る分子量を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
ポリマーが、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールのコポリマーからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
被膜中に治療作用物質をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
治療作用物質が、被膜および治療作用物質の総重量に基づき少なくとも50重量%の濃度を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
治療作用物質が、免疫調節物質、抗癌剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、抗真菌剤、抗糖尿病剤、抗高脂血症剤、抗血管新生剤、血管新生剤、降圧剤、もしくは他の治療クラスの薬剤、またはこれらの組合せからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
被覆するステップが、治療作用物質および被膜を溶媒中に溶解させて混合物または溶液を形成すること、ならびに混合物または溶液を改変された表面領域に塗布することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
混合物または溶液を塗布するステップが、スプレー、浸漬、または塗装することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
式:
【化2】
[式中:
ER=蒸発速度、
VP=蒸気圧、
BP=沸点、
VISC=粘度、および
ST=表面張力]
により計算される、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
溶媒が、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、トリクロロフルオロメタン、およびメチル−t−ブチルエーテルからなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
クラウンにより接合されたストラットを有する、軸方向に接合された複数の蛇行リングと、
隣接するリングにおける対向するクラウンを接合する直線状の結合リンクであって、一連の隣接するリングペア間の(1つまたは複数の)結合部が、軸方向に対して反対方向の角度を有する結合リンクと
を含む、管腔骨格。
【請求項57】
結合部が、軸方向に対して40°〜60°の範囲の角度に配置される、請求項56に記載の管腔骨格。
【請求項58】
6〜12箇所のクラウンと、隣接するリングの各ペア間において正反対に対向する2〜4箇所の結合部とを有する、請求項57に記載の管腔骨格。
【請求項59】
結合部が、約0.025mm〜2.5mmの範囲の長さを有し、クラウンが、5°〜75°の範囲の回転角でオフセットし、0.025mm〜0.1mmの範囲の距離で軸方向に離す、請求項56に記載の管腔骨格。
【請求項60】
結合部の幅および/または厚さが、クラウンの幅および/または厚さよりも小さい、請求項56に記載の管腔骨格。
【請求項61】
クラウンが、骨格半径方向の最大拡張において50%未満の歪みを有する、請求項56に記載の管腔骨格。
【請求項1】
体内管腔内で半径方向に変形するように適合された骨格であって、外面領域を有し、骨格が変形されると歪みが生じ、表面領域が改変されている骨格と、
改変された表面領域と相互作用して、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な付着を有する、表面領域全体に堆積された被膜と
を含む、管腔内人工装具。
【請求項2】
被膜が生理的環境内で柔軟化する、請求項1に記載の管腔内人工装具。
【請求項3】
被膜がポリマーを含む、請求項2に記載の管腔内人工装具。
【請求項4】
ポリマーが生理的温度を下回るガラス転移温度を有する、請求項3に記載の管腔内人工装具。
【請求項5】
ポリマーが、ポリブチルメタクリレート、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールのコポリマーからなる群から選択される、請求項3に記載の管腔内人工装具。
【請求項6】
表面領域の改変が、表面のテクスチャリングを含む、請求項1に記載の管腔内人工装具。
【請求項7】
表面のテクスチャリングが、マイクロブラスティング、レーザー処置、化学エッチング、プラズマ曝露、またはコロナ放電の結果である、請求項6に記載の管腔内人工装具。
【請求項8】
表面のテクスチャリングが、50nm〜50μmの範囲のサイズを有する表面特徴部を含む、請求項6に記載の管腔内人工装具。
【請求項9】
表面特徴部が、0.001〜0.1箇所/μm2の範囲の平均密度を有する、請求項8に記載の管腔内人工装具。
【請求項10】
ポリマーが、管腔内環境において非浸食性であり、500KDaを超える分子量を有する、請求項3に記載の管腔内人工装具。
【請求項11】
ポリマーが、ポリ−n−ブチルメタクリレートを含む、請求項3に記載の管腔内人工装具。
【請求項12】
ポリマーが、管腔内環境において浸食性であり、50KDaを上回る分子量を有する、請求項3に記載の管腔内人工装具。
【請求項13】
ポリマーが、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールのコポリマーからなる群から選択される、請求項2に記載の管腔内人工装具。
【請求項14】
被膜中に分散され分配されるか、または被膜に隣接する治療作用物質をさらに含む、請求項1に記載の管腔内人工装具。
【請求項15】
治療作用物質が、被膜および治療作用物質の総重量に基づき少なくとも50重量%の濃度を有する、請求項14に記載の管腔内人工装具。
【請求項16】
治療作用物質が、免疫調節物質、抗癌剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、抗真菌剤、抗糖尿病剤、抗高脂血症剤、抗血管新生剤、血管新生剤、降圧剤、もしくは他の治療クラスの薬剤、またはこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の管腔内人工装具。
【請求項17】
骨格が、半径方向の変形を受けるとき、変形された領域内においてピーク歪みの50%未満の歪みを有するように構成される、請求項1に記載の管腔内人工装具。
【請求項18】
拡張型ポリマー製バルーンを有するカテーテルと、
拡張型バルーンにより担持される管腔内人工装具であって、
体内管腔内で半径方向に変形するように適合された骨格であって、外面領域を有し、骨格が変形されると歪みが生じ、表面領域が改変されている骨格と、
改変された表面領域と相互作用して、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な付着を有する、表面領域全体に堆積された被膜と
を含む、管腔内人工装具と
を含むカテーテルアセンブリー。
【請求項19】
被膜が生理的環境内で柔軟化する、請求項18に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項20】
被膜がポリマーを含む、請求項19に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項21】
ポリマーが生理的温度を下回るガラス転移温度を有する、請求項20に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項22】
拡張型バルーンが、被膜ポリマーのガラス転移温度を下回るガラス転移温度を有するポリマーからなる、請求項20に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項23】
ポリマーが、ポリブチルメタクリレート、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールのコポリマーからなる群から選択される、請求項20に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項24】
表面領域の改変が、表面のテクスチャリングを含む、請求項18に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項25】
表面のテクスチャリングが、マイクロブラスティング、レーザー処置、化学エッチング、プラズマ曝露、またはコロナ放電の結果である、請求項24に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項26】
表面のテクスチャリングが、50nm〜50μmの範囲のサイズを有する表面特徴部を含む、請求項24に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項27】
表面特徴部が、0.001〜0.1箇所/μm2の範囲の平均密度を有する、請求項26に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項28】
ポリマーが、管腔内環境において非浸食性であり、500KDaを超える分子量を有する、請求項20に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項29】
ポリマーが、ポリ−n−ブチルメタクリレートを含む、請求項20に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項30】
ポリマーが、管腔内環境において浸食性であり、50KDaを上回る分子量を有する、請求項21に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項31】
ポリマーが、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールのコポリマーからなる群から選択される、請求項30に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項32】
被膜中に分散され分配されるか、または被膜に隣接する治療作用物質をさらに含む、請求項18に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項33】
治療作用物質が、被膜および治療作用物質の総重量に基づき少なくとも50重量%の濃度を有する、請求項32に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項34】
治療作用物質が、免疫調節物質、抗癌剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、抗真菌剤、抗糖尿病剤、抗高脂血症剤、抗血管新生剤、血管新生剤、降圧剤、もしくは他の治療クラスの薬剤、またはこれらの組合せからなる群から選択される、請求項32に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項35】
骨格が、半径方向の変形を受けるとき、変形された領域内においてピーク歪みの50%未満の歪みを有するように構成される、請求項18に記載のカテーテルアセンブリー。
【請求項36】
管腔骨格を被覆する方法であって、
骨格表面領域の少なくとも一部分を改変して、ポリマー被膜の付着を増大させるステップと、
改変された表面領域全体に材料を被覆するステップであって、材料が改変された表面領域と相互作用して、表面改変がなされていない場合の付着よりも強力な付着を有するステップと
を含む方法。
【請求項37】
材料が生理的環境内で柔軟化する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
材料がポリマーを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ポリマーが生理的温度を下回るガラス転移温度を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ポリマーが、ポリブチルメタクリレート、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールのコポリマーからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
表面領域を改変するステップが、表面のテクスチャリングを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
表面のテクスチャリングが、マイクロブラスティング、レーザー処置、化学エッチング、プラズマ曝露、またはコロナ放電を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
表面のテクスチャリングが、50nm〜50μmの範囲のサイズを有する表面特徴部を与えるステップを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
表面特徴部が、0.001〜0.1箇所/μm2の範囲の平均密度を有する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ポリマーが、管腔内環境において非浸食性であり、500KDaを超える分子量を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
ポリマーが、ポリ−n−ブチルメタクリレートを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ポリマーが、管腔内環境において浸食性であり、50KDaを上回る分子量を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
ポリマーが、ポリ(アルケンカーボネート)ポリマー、ポリ(ラクチド)およびトリメチレンカーボネートのコポリマー、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)のコポリマー、ならびにポリ(ラクチド)およびポリエチレングリコールのコポリマーからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
被膜中に治療作用物質をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
治療作用物質が、被膜および治療作用物質の総重量に基づき少なくとも50重量%の濃度を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
治療作用物質が、免疫調節物質、抗癌剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、抗真菌剤、抗糖尿病剤、抗高脂血症剤、抗血管新生剤、血管新生剤、降圧剤、もしくは他の治療クラスの薬剤、またはこれらの組合せからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
被覆するステップが、治療作用物質および被膜を溶媒中に溶解させて混合物または溶液を形成すること、ならびに混合物または溶液を改変された表面領域に塗布することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
混合物または溶液を塗布するステップが、スプレー、浸漬、または塗装することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
式:
【化2】
[式中:
ER=蒸発速度、
VP=蒸気圧、
BP=沸点、
VISC=粘度、および
ST=表面張力]
により計算される、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
溶媒が、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、トリクロロフルオロメタン、およびメチル−t−ブチルエーテルからなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
クラウンにより接合されたストラットを有する、軸方向に接合された複数の蛇行リングと、
隣接するリングにおける対向するクラウンを接合する直線状の結合リンクであって、一連の隣接するリングペア間の(1つまたは複数の)結合部が、軸方向に対して反対方向の角度を有する結合リンクと
を含む、管腔骨格。
【請求項57】
結合部が、軸方向に対して40°〜60°の範囲の角度に配置される、請求項56に記載の管腔骨格。
【請求項58】
6〜12箇所のクラウンと、隣接するリングの各ペア間において正反対に対向する2〜4箇所の結合部とを有する、請求項57に記載の管腔骨格。
【請求項59】
結合部が、約0.025mm〜2.5mmの範囲の長さを有し、クラウンが、5°〜75°の範囲の回転角でオフセットし、0.025mm〜0.1mmの範囲の距離で軸方向に離す、請求項56に記載の管腔骨格。
【請求項60】
結合部の幅および/または厚さが、クラウンの幅および/または厚さよりも小さい、請求項56に記載の管腔骨格。
【請求項61】
クラウンが、骨格半径方向の最大拡張において50%未満の歪みを有する、請求項56に記載の管腔骨格。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2010−507408(P2010−507408A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533575(P2009−533575)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/081996
【国際公開番号】WO2008/051867
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(507331221)エリクシアー メディカル コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/081996
【国際公開番号】WO2008/051867
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(507331221)エリクシアー メディカル コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】
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