説明

管路に存在する漏洩箇所の特定方法とそれに用いる装置

【課題】 管路に存在する漏洩箇所を正確に特定する。
【解決手段】 この方法は、第1位置で管路に加圧液体を送り込み始める工程と、漏洩箇所を挟んで第1位置と反対側に位置する第2位置で管路を開放する工程と、第1位置で管路に加圧液体を送り込むことを停止するのと同時に第1位置で管路に加圧気体を送り込み始める工程と、第1位置で管路に加圧気体を送り込み始めた時点から漏洩箇所で管路から気体が漏洩し始めた時点までの期間又は漏洩箇所で管路から気体が漏洩し始めた時点から第2位置で管路から気体が流出し始めた時点までの期間に、第1位置で管路に送り込んだ気体量又は第2位置で管路から流出した液体量を測定する工程と、測定工程の測定結果と管路の口径に基づいて漏洩箇所から第2位置までの距離又は第1位置から漏洩箇所までの距離を算出する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管、下水管、ガス管等の管路に漏洩箇所が存在する場合に、その漏洩箇所の位置を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、水道管の漏水箇所を特定する技術が開示されている。この技術では、セッティング作業と称される作業を実施する。セッティング作業では、水道管の下流端に設けられている蛇口を閉鎖した状態で、水道管の上流端から加圧された水道水を供給する。次いで、水道水の供給を停止するとともに、水道管の上流端から加圧された空気の供給を開始する。この状態でしばらく待機する。すると、漏水箇所よりも上流側にあった水は、空気の圧力によって漏水箇所から漏洩し、加圧空気が水道管内に浸入していく。水道管内に浸入した空気が漏水箇所に到達すると、漏水箇所から空気が漏洩し始め、この状態で安定する。この段階でセッティング作業が完了する。セッティング作業が完了すると、漏水箇所よりも上流側の水道管には空気が存在し、漏水箇所よりも下流側の水道管には水道水が存在する状態が得られると説明されている。
セッティング作業が完了すると、次いで漏水箇所を特定する作業が行われる。特許文献1には、漏水箇所を特定する3つの手法が開示されている。
第1の手法は、漏水箇所から生じる空気の漏洩音を、音聴探知器を用いて聴取するものである。
第2の手法は、水道管の途中に存在する蛇口を開放操作し、空気が流出するか否かを確認するものである。空気が流出すればその蛇口は漏水箇所よりも上流にあり、水が流出すればその蛇口は漏水箇所よりも下流にあることがわかる。開放操作する蛇口を順次に代えていくと、漏水箇所が存在する区間(どの蛇口とどの蛇口の間)かがわかる。
第3の方法は、水道管の下流端に設けられている蛇口を開放操作し、その蛇口から流出した水道水の量を測定するものである。この方法では、流出した水道水の量は、漏水箇所よりも下流側の水道管の容量に等しいはずであるという関係を用いて、漏水箇所から水道管の下流端に設けられている蛇口までの距離を算出する。
【0003】
【特許文献1】特開平07−055625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の第1方法は、空気の漏洩音を聴取する方法であるために、漏水箇所が床下や地中等に存在する場合には、漏洩音を聴取することが難しく、漏水箇所を特定できない場合がしばしば発生する。
従来の第2方法によると、漏水箇所がどの蛇口とどの蛇口の間にあるのかは判るが、その区間が長い場合には、区間内の位置までは判らない。
従来の第3方法によると、漏水箇所から蛇口までの距離を算出できるはずであるが、実際に測定して見ると、測定誤差が大きい。測定誤差が大きければ、修理のために地面を掘っても漏水箇所から離れており、広範囲に亘って地面を掘り起こすといった事態が頻発する。
本発明は、管路に存在する漏洩箇所の位置を正確に特定することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、従来の第3方法によると測定誤差が大きくなる原因を研究し、その原因を解明した。従来の技術では、漏水箇所よりも上流側の水道管には空気が存在し、漏水箇所よりも下流側の水道管には水道水が存在する状態から測定を開始する。すなわち、その状態で水道管の下流端に設けられている蛇口を開放操作し、その蛇口から流出した水の量を測定する。この場合、漏水箇所よりも下流側の水道管において、空気が水を押し出して水から空気に置き換わる現象が水道管の長手方向にスムースに進行していけば、蛇口から流出した水の量は、漏水箇所よりも下流側の水道管の容量に等しいはずであるということができる。
しかしながら、実験によって、水道管の下流端に設けられている蛇口を開放操作した時に、それまでは静止していた水道管内の水がスムースに流れ始めることができず、空気と水が混合してしまい、蛇口から空気が出て水の排出が終了した後も、相当量の水が水道管内に残存していることが確認された。そして、それが測定精度を低下させる原因であることを見出した。
さらに、本発明者らは、従来の技術で実施されるセッティング作業についても検証を行った。セッティング作業では、水道水で満たされた状態の水道管に、その下流端に設けられている蛇口を閉鎖した状態で、その上流端から加圧された空気を送り込む。本発明者らが実験したところ、水道管に送り込んだ空気は、ほぼ静止している水道管内の水と混合してしまい、漏水箇所で空気が漏洩し始めた時点でも、漏水箇所よりも上流側の水道管内に相当量の水が残存していることが確認された。従来の技術では、漏水箇所よりも上流側の水道管には空気が存在し、漏水箇所よりも下流側の水道管には水道水が存在するという状態を実現することができず、それが測定精度を低下させる原因であることを見出した。
【0006】
本発明でも、管路を満たしている液体を加圧された気体によって押し出すことによって、管路を満たしている物質が液体から気体に置き換わる現象を利用する。しかしながら、本発明では、加圧された気体が液体を押し出す際に、それ以前に液体が静止しているとスムースに押し出せないことに着目し、液体が流れている状態で加圧された気体が液体を押し出す状態に切換える。液体が流れている状態で加圧された気体が液体を押し出す状態に切換えると、気体が液体を押し出して液体から気体に置き換わる現象が管路の長手方向にスムースに進行する。気体が侵入した区間の管路に残存する液体の量が顕著に減少するとともに、管路の容積に対して残存する液体の量が大きく変動することがないので、測定誤差を小さく抑えることができる。
【0007】
本発明に係る方法は、管路に存在する漏洩箇所の位置を特定するために、第1位置で管路に加圧液体を送り込み始める工程と、漏洩箇所を挟んで第1位置と反対側に位置する第2位置で管路を開放する工程と、第1位置で管路に加圧液体を送り込むことを停止するのと同時に第1位置で管路に加圧気体を送り込み始める工程と、第1位置で管路に加圧気体を送り込み始めた時点から漏洩箇所で管路から気体が漏洩し始めた時点までの期間又は漏洩箇所で管路から気体が漏洩し始めた時点から第2位置で管路から気体が流出し始めた時点までの期間に、第1位置で管路に送り込んだ気体量又は第2位置で管路から流出した液体量を測定する工程と、少なくとも測定工程の測定結果と管路の口径に基づいて第1位置から漏洩箇所までの距離又は漏洩箇所から第2位置までの距離を算出する工程を備えている。
【0008】
この方法では、第1位置で管路に加圧液体の供給源と加圧気体の供給源を接続する工程と、第2位置で管路を開放する工程を実施する。第2位置は、漏洩箇所を挟んで第1位置と反対側に位置している。即ち、第1位置と第2位置の間に漏洩箇所が存在するように、第1位置と第2位置を選定する。この方法では、最初に、第1位置で管路に加圧液体の供給を開始する工程と、第2位置で管路を開放する工程を実施する。これら2つの工程の順序は特に限定されない。2つの工程を実施することによって、加圧液体の圧力によって、液体が管路を第1位置から第2位置に流れている状態が得られる。
【0009】
次いで、第1位置で管路に加圧液体を送り込むことを停止するのと同時に第1位置で管路に加圧気体を送り込み始める。それにより、管路に加圧液体を送り込む状態から、管路に加圧気体を送り込む状態へ、連続的に切換えられる。両状態が連続するように切り換えられ、かつ第2位置では管路が開放され続けているので、管路を満たしている液体は流れ続ける。液体が管路を流れている状態で管路に加圧気体を送り込み始めるために、気体が液体を押し出して液体から気体に置き換わる現象が管路の長手方向にスムースに進行する。気体が侵入した区間の管路に残存する液体の量が顕著に減少するとともに、管路の容積に対して残存する液体の量が大きく変動することがない。
管路内に送り込まれた気体が漏洩箇所に到達すると、漏洩箇所から気体が漏洩し始める。この時点で、第1位置から漏洩箇所までの管路はほぼ気体で満たされ、漏洩箇所から第2位置までの管路は液体で満たされた状態が実現される。なおも第1位置で加圧気体を管路に送り込み続けると、漏洩箇所から第2位置までの管路においても、気体が液体を押し出して液体から気体に置き換わる現象が管路の長手方向にスムースに進行する。そして、液体から気体への置換が第2位置まで進行した時点で、第2位置から気体が流出し始める。この時点で管路内に残っている液体の量は少ない。第1位置から第2位置までの管路がほぼ気体で満たされた状態が実現される。
【0010】
第1位置で管路に加圧気体を送り込み始めた時点で、第1位置から第2位置までの管路は液体で満たされている。その後、漏洩箇所で管路から気体が漏洩し始めた時点では、第1位置から漏洩箇所までの管路はほぼ気体で満たされており、漏洩箇所から第2位置までの管路は液体で満たされている。第1位置から漏洩箇所までの管路には液体も残存しているが、管路の容積に対して残存する液体の量が大きく変動することはない。従って、第1位置で管路に加圧気体を送り込み始めた時点から、漏洩箇所で管路から気体が漏洩し始めた時点までの期間に、第1位置で管路に送り込んだ気体量、又は、第2位置で管路から流出した液体量を測定することによって、第1位置から漏洩箇所までの管路の容積を正確に把握することができる。
なおも第1位置で加圧気体を管路に送り込み続けると、第2位置で管路から気体が流出し始める。その時点では、第1位置から第2位置までの管路がほぼ気体で満たされている。第1位置から第2位置までの管路には液体も残存しているが、管路の容積に対して残存する液体の量が大きく変動することはない。従って、漏洩箇所で管路から気体が漏洩し始めた時点から、第2位置で管路から気体が流出し始めた時点までの期間に、第1位置で管路に送り込んだ気体量、又は、第2位置で管路から流出した液体量を測定することによって、漏洩箇所から第2位置までの管路の容積を正確に把握することができる。
第1位置から漏洩箇所までの管路の容積が判明すれば、管路の口径に基づいて、第1位置から漏洩箇所までの距離(管路長)を算出することができる。あるいは、漏洩箇所から第2位置までの管路の容積が判明すれば、管路の口径に基づいて、漏洩箇所から第2位置までの距離(管路長)を算出することができる。それらの距離が判明すれば、例えば配管図等を参照することによって、管路に存在する漏洩箇所を正確に特定することができる。
【0011】
測定工程では、管路に送り込んでいる加圧気体の流量を監視することによって、気体の漏洩開始時点を検知することが好ましい。
液体が漏洩している状態から気体が漏洩する状態に切換わると、漏洩量が増大し、送り込んでいる加圧気体の流量が増大する現象が生じる。管路に送り込んでいる加圧気体の流量を監視することによって、漏洩箇所から気体が漏洩し始めた時点を検知することができる。管路に送り込んでいる加圧気体の流量を監視する手法を採用すると、気体の漏洩開始時点を正確に検知することができる。測定工程における測定精度が向上し、管路に存在する漏洩箇所をより正確に特定することが可能となる。
加圧気体の流量を監視する手法は、気体の漏洩開始時点を検知する唯一の手法ではないが、実施しやすく、しかも気体の漏洩開始時点を正確に検知することができる。
なお、液体が漏洩している状態から気体が漏洩する状態に切換わると、漏洩音が変化する。この変化から、気体の漏洩開始時点を検知してもよい。音聴探知機等を用いて漏洩音の監視を行う場合は、管路内が液体で満たされている第2位置側で行うとよい。
【0012】
上記した方法では、第1位置で管路に加圧液体の供給源を接続するとともに第2位置で管路を閉鎖した状態で加圧流体の流量を計測する計測工程が付加されていることが好ましい。この場合、距離の算出工程では、計測工程の計測結果を加味して、漏洩箇所までの距離を算出することが好ましい。
第1位置で管路に加圧気体を送り込み始めた時点から、漏洩箇所で管路から気体が漏洩し始める時点までの期間では、漏洩箇所で管路から液体が漏洩し続ける。そのことから、同期間に第2位置で管路から流出する液体量は、第1位置から漏洩箇所までの管路の容積に対して、その漏洩量に起因する誤差を含むこととなる。また、漏洩箇所で管路から気体が漏洩し始めた時点から、第2位置で管路から気体が流出し始める時点までの期間では、漏洩箇所で管路から気体が漏洩し続ける。そのことから、同期間に第1位置で管路に送り込んだ気体量は、漏洩箇所から第2位置までの管路の容積に対して、その漏洩量に起因する誤差を含むこととなる。従って、測定工程による測定量から、漏洩量に起因する誤差を取り除くことができれば、漏洩箇所までの距離をより正確に算出することが可能となる。
この方法では、計測工程によって、漏洩箇所で液体が単位時間あたりに漏洩する漏洩量を計測する。漏洩箇所で液体が単位時間あたりに漏洩する漏洩量が判明すれば、測定工程中における液体又は気体の総漏洩量を推定し、測定工程による測定量を修正することが可能となる。あるいは、実験や経験等によってデータを蓄積し、計測工程による計測量と、測定工程による測定量と、管路の口径の三者を用いて漏洩箇所までの距離を算出する関係式や計算表を用意することもできる。計測工程による計測量を加味することによって、漏洩箇所までの距離をさらに正確に算出することが可能となる。なお、気体の総漏洩量を推定する際には、気体の漏洩量が液体の漏洩量に比して数倍に増大することに留意する必要がある。
【0013】
本発明の技術は、管路に存在する漏洩箇所を特定する作業に有用な装置を提供する。この装置は、加圧液体の供給源に接続する液体流入側接続部と、加圧気体の供給源に接続する気体流入側接続部と、管路に接続する流出側接続部と、液体流入側接続部と流出側接続部が連通しているとともに気体流入側接続部と流出側接続部が遮断されている状態から、液体流入側接続部と流出側接続部が遮断されているとともに気体流入側接続部と流出側接続部が連通している状態に切換可能な三方弁と、加圧気体の供給源から管路に送り込まれる加圧気体の流量を計測する流量計を備えている。
【0014】
この装置を用いると、三方弁に切換操作を加えることによって、管路に加圧液体を送り込むことを停止するのと同時に管路に加圧気体を送り込み始めることができる。管路に加圧液体を送り込む状態から、管路に加圧気体を送り込む状態へ、連続性を保って切換えることが可能となる。
この装置では、流量計を監視することによって、管路に送り込んでいる加圧気体の流量変化を明確に把握し、漏洩箇所で管路から気体が漏洩し始めた時点を正確に検知することができる。
この装置を管路の漏洩箇所を特定する作業に用いることによって、本発明に係る方法を適正に実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、管路に存在する漏洩箇所を正確に特定することが可能となる。修理のために地面を掘っても漏洩箇所から離れており、広範囲に亘って地面を掘り起こすといった事態を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好適な実施形態を列記する。
(形態1) 本発明の技術は、水道管の漏水箇所を特定する方法に好適に実施することができる。
(形態2) 管路の第2位置には、開度を調整可能な弁が設けられていることが好ましい。
(形態3) 管路に送り込む加圧液体の圧力と、管路に送り込む加圧気体の圧力は、略等しいことが好ましい。
(形態4) 第2位置で管路から流出する液体量を測定する際には、第2位置で管路から流出する液体を採取し、その体積又は重量を測定するとよい。あるいは、液体量を測定すべき期間を計時し、第2位置で管路から流出する液体の流量と併せて、流出した液体量を算出してもよい。
(形態5) 漏洩箇所の特定作業に用いる装置は、加圧液体の供給源から供給されている加圧液体の流量を計測する液体流量計を備えている。
(形態6) 漏洩箇所の特定作業に用いる装置は、加圧気体の供給源を備えている。
(形態7) 漏洩箇所の特定作業に用いる装置は、加圧気体の供給源から供給された気体の圧力を減圧する減圧弁を備えている。
(形態8) 漏洩箇所の特定作業に用いる装置は、気体流入側接続部と三方弁とを接続する管路上に設けられている逆止弁を備えている。
(形態9) 漏洩箇所の特定作業では、第2位置で取水した液体の量を、漏洩箇所における単位時間あたりの漏洩量に関する補正係数と、第1位置から送り込む加圧流体の流量に関する補正係数の少なくとも一方によって補正した後に、第1位置又は第2位置から漏洩箇所までの距離に換算する。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
本発明を実施した実施例1について図面を参照しながら説明する。本実施例は、水道管に存在する漏水箇所を特定する作業に、本発明の技術を実施したものである。なお、以下に説明する技術は、水道管に限られず、他の気体や液体等の流体を輸送する管路に存在する漏洩箇所を特定する作業にも同様に適用することができる。
図1は、水道管202に存在する漏水箇所Lを特定する作業に用いる装置(以下、単に作業用装置と略す)10を示している。図1に示すように、作業用装置10は、本体20と、エアコンプレッサ100と、気体流入用接続ホース110と、液体流入用接続ホース120と、流出用接続ホース130と、接続用アダプタ140を備えている。本体20には、気体流入側接続部24と、液体流入側接続部26と、流出側接続部28が設けられている。接続用アダプタ140は、水道管202に既設されている水道メータに置き換えて用いられる。
【0018】
エアコンプレッサ100は、加圧気体(ここでは圧縮空気)を供給する供給源である。図示省略するが、エアコンプレッサ100は、空気を圧縮する圧縮機を備えている。
気体流入用接続ホース110は、本体20の気体流入側接続部24を、圧縮空気の供給源であるエアコンプレッサ100に接続するための耐圧ホースである。本体20の気体流入側接続部24には、気体流入用接続ホース110を通じて、エアコンプレッサ100から圧縮空気が供給される。
液体流入用接続ホース120は、本体20の液体流入側接続部26を、加圧液体(水道水は加圧されている)の供給源に接続するための耐圧ホースである。液体流入用接続ホース120には、流通する液体の流量を測定する液体流量計122が設けられている。本実施例では、加圧液体の供給源として、上水道を利用する。液体流入用接続ホース120は、本体20の液体流入側接続部26を、接続用アダプタ140を介して、上水道の本管200に接続する。本体20の液体流入側接続部26には、液体流入用接続ホース120を介して、上水道の本管200から加圧された水道水が供給される。本体20の液体流入側接続部26に供給される水道水の流量は、液体流量計122に表示される。
流出用接続ホース130は、本体20の流出側接続部28を、漏水箇所Lが存在する水道管202に接続するための耐圧ホースである。液体流入用接続ホース120は、本体20の流出側接続部28を、接続用アダプタ140を介して、漏水箇所Lが存在する水道管202に接続する。
【0019】
接続用アダプタ140は、水道メータ(図示省略)等と交換して、水道管202に介装可能に構成されている。接続用アダプタ140は、水道管202に介装可能な管路部142を備えている。管路部142の一端142aは、水道管202の上流側(本管200側)に接続される。管路部142の他端142bは、水道管202の下流側に接続される。管路142の略中間部には隔壁144が設けられており、管路部142は隔壁144を挟んで二つの区間に分断されている。接続アダプタ140を介装した状態で、水道管202は隔壁144によって分断される。管路部142の隔壁144よりも一端142a側の区間には、液体流入用接続ホース120を接続するための流入ホース接続部146が設けられている。また、管路142の隔壁144よりも他端142b側の区間には、流出用接続ホース130を接続するための流出ホース接続部148が設けられている。なお、接続用アダプタ140を水道管202に介装する位置は、水道メータの取付位置に限定されず、漏水箇所Lよりも上流側であればよい。
【0020】
本体20は、ハウジング22を備えている。ハウジング22は、アルミニウム材を用いて形成されている。ハウジング22には、前出の気体流入側接続部24と液体流入側接続部26と流出側接続部28が、外部に臨む位置に固定されている。
ハウジング22内には、三方弁70と、三方弁70と気体流入側接続部24とを接続している気体流入管路42と、三方弁70と液体流入側接続部26とを接続している液体流入管路56と、三方弁70と流出側接続部28とを接続している流出管路80が設けられている。三方弁70には、作業者が操作するハンドル72が設けられている。三方弁70は、作業者によるハンドル72の操作に伴って、液体流入側接続部26と流出側接続部28が連通しているとともに気体流入側接続部24と流出側接続部28が遮断されている状態と、液体流入側接続部26と流出側接続部28が遮断されているとともに気体流入側接続部24と流出側接続部28が連通している状態とを切換える。
【0021】
気体流入側接続部24と三方弁70を接続している気体流入管路42には、気体流入側接続部24側から順に、減圧弁44と、第1分岐管46と、ニードルバルブ48と、第2分岐管50と、逆止弁52が設けられている。減圧弁44には、気体圧力計40が接続されている。第1分岐管46では、第1計測用管路62が分岐している。第2分岐管50では、第2計測用管路66が分岐している。第1計測用管路62には、ニードルバルブ64が設けられている。
減圧弁44は、気体流入側接続部24側から入力した圧縮空気を減圧し、三方弁70側に送り出す圧縮空気の圧力を所定の圧力に調整する。減圧弁44による減圧後の圧力は気体圧力計40に表示される。作業者は、減圧弁44を操作することによって、三方弁70側に送り出す圧縮空気の圧力(即ち、水道管202に送り込む圧縮空気の圧力)を調整することができる。ニードルバルブ48は、気体流入管路42を流れる圧縮空気の流量を調整するための流量調整バルブである。逆止弁52は、気体流入側接続部24側から三方弁70側に向けて気体や液体が流通することを許容するとともに、三方弁70側から気体流入側接続部24側に向けて気体や液体が流通することを禁止する。逆止弁52によって、液体流入側接続部26に供給された水道水等が、気体流入管路42を逆流することが防止される。
気体流入管路42には、第1計測用管路62と第2計測用管路66を介して、気体流量計54が接続されている。気体流量計54は、気体流入管路42を流通する圧縮空気の流量を表示する。気体流量計54は、差圧式流量計である。気体流量計54には、第1計測用管路62と第2計測用管路66によって、気体流入管路42の第1分岐管46における圧力と第2分岐管46における圧力が入力される。気体流量計54は、入力した両位置における圧力の差に応じて流量表示を変化させる。気体流量計54の感度は、2つのニードルバルブ48、64によって調整することができる。なお、気体流量計54は、気体流入管路42の流量変化を検知できるものであればよく、気体流入管路42の流量を相対的に表示するもので足りる。
【0022】
三方弁70と流出側接続部28とを接続している流出管路80には、三方弁70側から順に、第3分岐管82と、ボール弁84が設けられている。第3分岐管82では、第3計測用管路90が分岐している。第3計測用管路90には、流体圧力計92が接続されている。流体圧力計92は、流出管路80内の圧力を表示する。流体圧力計92は、主に、流出管路80を流通する加圧液体(ここでは水道水)の圧力を計測するために用意されている。ボール弁84には、ハンドル86が設けられている。作業者は、そのハンドル86を操作することによって、流出管路80の導通/遮断を切り換えることができる。
【0023】
図2は、水道管202に存在する漏水箇所Lを特定する作業の流れを示すフローチャートである。図2に示すフローチャートに沿って、漏水箇所Lの特定作業を詳細に説明する。
ステップS2では、漏水箇所Lが存在する水道管202に、作業用装置10を接続する。作業用装置10と水道管202との接続は図1に示すように行われる。漏水箇所Lは、水道メータよりも下流側に位置するものとする。このステップS2により、水道管202の一方端202aに、三方弁70を介して、加圧気体の供給源であるエアコンプレッサ100と、加圧液体の供給源である上水道の本管200が接続される。
ステップS4では、三方弁70のハンドル72を操作し、液体流入側接続部26と流出側接続部28が連通しているとともに気体流入側接続部24と流出側接続部28が遮断されている状態とする。また、ボール弁84のハンドル86を操作し、流出管路80が導通している状態とする。それにより、図3に示すように、水道管202は、本体20を介して上水道の本管200に接続される。水道管202には、一方端(第1位置)202aから、加圧された水道水が送り込まれる。図3に図示する蛇口204は、漏水箇所Lが存在する水道管202の他方端202bに配設されている端末栓である。水道管202に複数の蛇口が設けられている場合、漏水箇所Lを挟んで一方端202aと反対側に位置する蛇口の一つを選定する。また、図3に図示する測量容器150は、後述する水道水の流出量を測定する際に用いるものであり、蛇口204の側に用意しておく。この段階で、蛇口204は、開放されていてもよいし、閉鎖されていてもよい。ただし、蛇口204を一旦開放し、作業用装置10の接続に伴って水道管202内に混入した空気を排出しておく。このステップS4では、気体流量計54の表示部54aに変化は現れない。
【0024】
ステップS6では、蛇口204を閉鎖した状態で、漏水箇所Lにおける漏水量を計測する。図3に示すように、水道管202の漏水箇所Lでは、水道管202が漏洩している。蛇口204を閉鎖した状態では、水道管202に送り込んでいる水道水の流量が、漏水箇所Lにおける漏水量に等しくなる。即ち、蛇口204を閉鎖した状態で液体流量計122に表示される水道水の流量が、漏水箇所Lにおける単位時間あたりの漏水量となる。なお、このステップS6における漏水量の計測は必須のものではない。
ステップS8では、蛇口204を開放する。それにより、図4に示すように、水道管202では、一方端202aから他方端202bに向けて、水道水が流れる状態となる。水道水の流量は、蛇口204によって調整することができる。一般的な宅内用の水道管であれば、水道水の流量は18〜27秒/リットルとすることが好ましい。
【0025】
ステップS10では、三方弁70のハンドル72を操作し、液体流入側接続部26と流出側接続部28が遮断されているとともに気体流入側接続部24と流出側接続部28が連通している状態に切換える。それにより、一方端202aで水道管202に水道水を送り込むことを停止するのと同時に、一方端202aで水道管202に圧縮空気を送り込み始める。このステップS10では、水道管202に水道水を送り込む状態から、水道管202に圧縮空気を送り込む状態へ、連続的に切換えられる。両状態が連続するように切り換えられ、他方端202bが開放されているので、水道管202を満たしている液体は流れ続ける。図5に示すように、圧縮空気が水道管202内の水道水を押し出し、水道管202を満たしている物質が水道水から圧縮空気に置き換わる現象が水道管202の長手方向にスムースに進行する。圧縮空気が浸入した位置Hまでの水道管202に残存する水道水の量は少ないとともに、位置Hまでの水道管202の容積に対して残存する液体の量が大きく変動することもない。また、このステップS10では、三方弁70の切換操作と同時に、他方端202bから流出する水道水を、測量容器150によって取水し始める。測量容器150に取水される水道水の量は、気体が浸入した位置Hまでの水道管202の容積に正しく対応する。ただし、漏水箇所Lにおける漏水に起因する誤差は生じる。送り込んでいる圧縮空気の流量は、気体流量計54の表示部54aに表示される。なお、圧縮空気の圧力は、水道水の給水圧と略同一になるように、減圧弁44によって予め調整しておく。
【0026】
ステップS12では、気体流量計54を監視し、水道管202に送り込んでいる圧縮空気の流量が有意に増大する時点を検知する。図6に示すように、水道管202に送り込まれた空気が漏水箇所Lに到達すると、漏水箇所Lでは空気が漏洩し始める。漏水箇所Lでは、液体である水道水よりも、気体である空気の方が、より多く漏洩することが知られている。そのことから、水道管202に送り込まれた空気が漏水箇所Lに到達し、漏水箇所Lで空気が漏洩し始めると、水道管202に送り込んでいる圧縮空気の流量が有意に増大し、その変化が気体流量計54の表示部54bに現れる。気体流量計54を監視し、送り込んでいる圧縮空気の流量が有意に増大した時点を検知することによって、漏水箇所Lで空気が漏洩し始めた時点を検知することができる。圧縮空気の流量増大を検知したら、ステップS14へ進む。この時点では、一方端202aから漏水箇所Lまでの水道管202はほぼ空気で満たされ、漏水箇所Lから他方端202bまでの水道管202は水道水で満たされた状態が実現される。一方端202aから漏水箇所Lまでの水道管202内に残存する水道水の量は少ないとともに、一方端202aから漏水箇所Lまでの水道管202の容積に対して残存する水道水の量が大きく変動することもない。
上記したステップS12では、水道管202に送り込んでいる圧縮空気の流量を監視することに代えて、水道管202を伝播する漏洩音の変化を監視(聴取)してもよい。漏水箇所Lでは、液体である水道水が漏洩する時と、気体である空気が漏洩する時で、異なる漏洩音が生じる。そのことから、水道管202を伝播する漏洩音の変化を検知することによって、漏水箇所Lで空気が漏洩し始めた時点を検知することができる。音聴探知機等を用いて漏洩音の監視を行う場合は、水道管202内が水道水で満たされている他方端202b側で行うと、漏水箇所Lにおける漏洩音を聴取しやすい。
【0027】
ステップS14では、他方端202bから流出する水道水の取水を中止する。図6に示すように、測量容器150には、一方端202aで水道管202に圧縮空気を送り込み始めた時点から、漏水箇所Lで水道管202から空気が漏洩し始めた時点までの期間に、他方端202から流出した水道水が取水されている。測量容器150に取水した水道水の量は、一方端202aから漏水箇所Lまでの水道管202の容積に正しく対応する。ただし、測量容器150に取水された水道水の量は、一方端202aから漏水箇所Lまでの水道管202の容積に対応する量よりも、漏水箇所Lにおける漏水量だけ少なくなる。
【0028】
ステップS16では、測量容器150に取水した水道水の量と、ステップS6で計測した漏水量と、水道管202の口径に基づいて、一方端202aから漏水箇所Lまでの距離D1(図6に図示)を算出する。先に説明したように、測量容器150に取水した水道水の量は、一方端202aから漏水箇所Lまでの水道管202の容積に正しく対応する。そのことから、漏水箇所Lにおける漏水量を無視すれば、測量容器150に取水した水道水の量(体積)から、一方端202aから漏水箇所Lまでの水道管202の容積を正しく推定することができる。そして、推定した容積を水道管202の口径で除算することによって、漏水箇所Lまでの距離D1を算出することができる。このとき、ステップS6で計測した漏水量を加味することによって、漏水箇所Lまでの距離D1をより正確に算出することができる。なお、ステップS6で計測した漏水量は、漏水箇所Lにおける単位時間あたりの漏水量である。従って、測量容器150に水道水を取水した期間における漏水量を、ステップS6で計測した単位時間あたりの漏水量から推定する必要がある。また、ステップS6で計測した漏水量は、蛇口204を閉鎖した状態での計測値であり、蛇口204を開放している状態での漏水量とは差異を生じる。従って、蛇口204を閉鎖した状態での計測値から、蛇口204を開放している状態での漏水量に換算することが好ましい。
また、圧縮空気が侵入した区間の水道管202内に残存する水道水の量は、ステップS8で設定した水道水の流量によって変化する。詳しくは、ステップS8で設定した水道水の流量が小さいほど、圧縮空気が侵入した区間の水道管202内に残存する水道水の量は多くなる。例えば、一方端202aから漏水箇所Lまでの距離D1が同じであっても、ステップS8で設定した水道水の流量が小さいほど、測量容器150に取水される水道水の量は少なくなる。そのことから、測量容器150に取水した水道水の量を、ステップS8で設定した水道水の流量に応じて補正した後に、一方端202aから漏水箇所Lまでの距離D1に換算することが好ましい。
以上のことから、本実施例では、測量容器150に取水した水道水の量から漏水箇所Lまでの距離D1に換算する計算表を、ステップS6で計測される漏水量と、ステップ8で設定した水道水の流量と、管路の口径のそれぞれ毎に用意している。この計算表では、測量容器150に取水した水道水の量が、ステップS6で計測された漏水量に関する補正係数とステップ8で設定した水道水の流量に関する補正係数によって補正された後に、一方端202aから漏水箇所Lまでの距離D1に換算されるようになっている。漏水量に関する補正係数や水道水の流量に関する補正係数は、複数回の実験によって解析的に求めることができる。
以上の作業手順により、一方端202aから漏水箇所Lまでの距離D1を正確に算出することができる。一方端202aから漏水箇所Lまでの距離D1が判明すれば、水道管202の配管図等を参照して、水道管202に存在する漏水箇所Lの位置を正確に特定することができる。漏水箇所Lの位置を正確に特定することによって、漏水箇所Lの補修作業を効率的に行うことができる。
【0029】
上記した作業手順では、ステップS10〜S14の期間に他方端202bで水道管202から流出する水道水の量を測定することに代えて、同期間に一方端202aで水道管202に送り込んだ圧縮空気の量(体積)を測定してもよい。同期間に一方端202aで水道管202に送り込んだ圧縮空気の量も同様に、一方端202aから漏水箇所Lまでの水道管202の容積に正しく対応する。さらに、同期間に一方端202aで水道管202に送り込んだ圧縮空気の量と、一方端202aから漏水箇所Lまでの水道管202の容積との間には、漏水に起因する誤差が生じない。そのことから、漏水量を加味する必要がない。
【0030】
(実施例2)
本発明を実施した実施例2について図面を参照しながら説明する。本実施例は、実施例1と同様に、水道管に存在する漏水箇所を特定する作業に、本発明の技術を実施したものである。本実施例は、上記した実施例1の一部を改変したものである。以下では、実施例1と異なる点を主に説明し、重複する内容についての説明は省略する。
図7は、実施例2の作業手順を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートに沿って、実施例2による漏水箇所Lの特定作業を詳細に説明する。
ステップS102では、実施例1のステップS2と同様に、漏水箇所Lが存在する水道管202に、作業用装置10を接続する。本実施例でも、図1に示す作業用装置10を有効に利用することができる。
ステップS104では、実施例1のステップS4と同様に、三方弁70やボール弁84を操作し、水道管202の一方端202aを上水道の本管200に接続する(図3の状態)。それにより、水道管202の一方端202aに、加圧された水道水を送り込み始める。
ステップS106では、実施例1のステップS8と同様に、蛇口204を開放する(図4の状態)。本実施例では、蛇口204の開放に先立って、漏水量の計測を実施しない。
ステップS108では、三方弁70に切換操作を加え、一方端202aで水道管202に水道水を送り込むことを停止するのと同時に、一方端202aで水道管202に圧縮空気を送り込み始める。本実施例では、実施例1と異なり、他方端202bで水道管202から流出する水道水の取水を、この時点では開始しない。
ステップS110では、実施例1のステップS12と同様に、気体流量計54を監視し、水道管202に送り込んでいる圧縮空気の流量が有意に増大する時点を検知する。即ち、このステップS110では、漏水箇所Lで水道管202から空気が漏洩し始めた時点を検知する。圧縮空気の流量増大を検知したら、ステップS112へ進む。
【0031】
ステップS112では、図8に示すように、他方端202bから流出する水道水を、測量容器150によって取水し始める。即ち、本実施例では、他方端202bから流出する水道水の取水を、漏水箇所Lで水道管202から空気が漏洩し始めた時点から開始する。
ステップS114では、他方端202b(蛇口204)を監視し、水道管202から空気が流出し始めた時点を検知する。図9に示すように、水道管202から空気が流出し始めた時点では、水道管202は一方端202aから他方端202bまでほぼ空気で満たされている。水道管202内に残存する水道水の量は少なく、水道管202の容積に対して残存する水道水の量が大きく変動することはない。水道管202から空気が流出し始めたら、ステップS116へ進む。
ステップS116では、他方端202bから流出する水道水の取水を中止する。本実施例では、実施例1と異なり、漏水箇所Lで水道管202から空気が漏洩し始めた時点から、他方端202bで水道管202から空気が流出し始めた時点までの期間に、他方端202bで水道管202から流出した水道水を取水する。
【0032】
ステップS118では、測量容器150に取水した水道水の量と、水道管202の口径に基づいて、他方端202bから漏水箇所Lまでの距離D2(図9に図示)を算出する。水道管202内に残存する水道水の量が大きく変動することがないので、測量容器150に取水した水道水の量(体積)は、他方端202bから漏水箇所Lまでの水道管202の容積に正しく対応する。この両者の間には、漏水箇所Lにおける水や空気の漏洩に起因する誤差は生じない。測量容器150に取水した水道水の量(体積)から、他方端202bから漏水箇所Lまでの水道管202の容積を正確に推定することができる。そして、その容積を水道管202の口径で除算することによって、他方端202bから漏水箇所Lまでの距離D2を正確に算出することができる。
以上の作業手順により、他方端202bから漏水箇所Lまでの距離D2を正確に算出することができる。他方端202bから漏水箇所Lまでの距離D2が判明すれば、水道管202の配管図等を参照して、水道管202に存在する漏水箇所Lの位置を正確に特定することができる。漏水箇所Lの位置を正確に特定することによって、漏水箇所Lの補修作業を効率的に行うことができる。
【0033】
上記した作業手順では、ステップS112〜S116の期間に他方端202bで水道管202から流出する水道水の量を測定することに代えて、同期間に一方端202aで水道管202に送り込んだ圧縮空気の量(体積)を測定してもよい。同期間に一方端202aで水道管202に送り込んだ圧縮空気の量も同様に、他方端202bから漏水箇所Lまでの水道管202の容積に正しく対応する。ただし、同期間に一方端202aで水道管202に送り込んだ圧縮空気の量と、他方端202bから漏水箇所Lまでの水道管202の容積との間には、漏水箇所Lにおける空気の漏洩に起因する誤差が生じる。そのことから、漏水箇所Lにおける空気の漏洩量を加味することが好ましい。漏水箇所Lにおける空気の漏洩量は、例えばステップS116の後に蛇口204を閉鎖すれば、気体流量計54によって把握することができる。あるいは、漏水箇所Lにおける水道水の漏水量を計測し、計測した水道水の漏水量から、漏水箇所Lで空気が漏洩する際の漏洩量を推定することもできる。
【0034】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】漏水箇所の特定作業に用いる装置の構成を示す模式図。
【図2】漏水箇所の特定作業の流れを示すフローチャート(実施例1)。
【図3】作業状態を模式的に示す図(ステップS4、6)。
【図4】作業状態を模式的に示す図(ステップS8)。
【図5】作業状態を模式的に示す図(ステップS10)。
【図6】作業状態を模式的に示す図(ステップS12)。
【図7】漏水箇所の特定作業の流れを示すフローチャート(実施例2)。
【図8】作業状態を模式的に示す図(ステップS112)。
【図9】作業状態を模式的に示す図(ステップS116)。
【符号の説明】
【0036】
10:漏水箇所の特定作業に用いる装置(作業用装置)
20:本体
22:ハウジング
24:気体流入側接続部
26:液体流入側接続部
28:流出側接続部
40:気体圧力計
42:気体流入配管
44:減圧弁
48、64:ニードル弁
52:逆止弁
54:気体流量計
70:三方弁
92:流体圧力計
100:エアコンプレッサ
122:液体流量計
140:接続アダプタ
200:本管
202:水道管
202a:水道管の一方端(第1位置)
202b:水道管の他方端(第2位置)
L:漏水箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路に存在する漏洩箇所を特定する方法であり、
第1位置で管路に加圧液体の供給源と加圧気体の供給源を接続する工程と、
第1位置で管路に加圧液体を送り込み始める工程と、
漏洩箇所を挟んで第1位置と反対側に位置する第2位置で管路を開放する工程と、
第1位置で管路に加圧液体を送り込むことを停止するのと同時に第1位置で管路に加圧気体を送り込み始める工程と、
第1位置で管路に加圧気体を送り込み始めた時点から漏洩箇所で管路から気体が漏洩し始めた時点までの期間、又は、漏洩箇所で管路から気体が漏洩し始めた時点から第2位置で管路から気体が流出し始めた時点までの期間に、第1位置で管路に送り込んだ気体量、又は、第2位置で管路から流出した液体量を測定する工程と、
少なくとも、測定工程の測定結果と、管路の口径に基づいて、第1位置から漏洩箇所までの距離、又は、漏洩箇所から第2位置までの距離を算出する工程と、
を備える漏洩箇所特定方法。
【請求項2】
測定工程では、管路に送り込んでいる加圧気体の流量を監視することによって、気体の漏洩開始時点を検知することを特徴とする請求項1の漏洩箇所特定方法。
【請求項3】
第1位置で管路に加圧液体の供給源を接続するとともに第2位置で管路を閉鎖した状態で加圧流体の流量を計測する計測工程を備えており、
算出工程では、計測工程の計測結果を加味して、漏洩箇所までの距離を算出することを特徴とする請求項1又は2の漏洩箇所特定方法。
【請求項4】
管路に存在する漏洩箇所を特定する作業に用いる装置であって、
加圧液体の供給源に接続する液体流入側接続部と、
加圧気体の供給源に接続する気体流入側接続部と、
管路に接続する流出側接続部と、
液体流入側接続部と流出側接続部が連通しているとともに気体流入側接続部と流出側接続部が遮断されている状態から、液体流入側接続部と流出側接続部が遮断されているとともに気体流入側接続部と流出側接続部が連通している状態に切換可能な三方弁と、
加圧気体の供給源から管路に送り込まれる加圧気体の流量を計測する流量計と、
を備える漏洩箇所の特定作業に用いる装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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