説明

管路切断治具

【課題】管路間隔が狭隘な個所においても管路の相互間隔を拡げることをせずに切断作業ができる管路切断冶具を提供する。
【解決手段】管路切断冶具本体2を管路1に取り付け、管路1の外周面を巻くようにダイヤモンドワイヤーソー4を配置し、回転駆動プーリー6にセット後、ダイヤモンドワイヤーソー4の両端を接合する。張力調節ハンドルを回し、回転駆動プーリー6を移動させてダイヤモンドワイヤーソー4の張力を調整する。回転ハンドル9を手動で回すことにより、ダイヤモンドワイヤーソー4を管路1の外周面に接して走行させて管路1を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルが収容されている狭隘箇所の通信管路を切断する管路切断冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁添架等の通信管路を補修により切断する場合、管路内に収容されているケーブルを損傷させないため、専用の切管用適正工具(切管工具)により切断作業を実施している。その専用の切管工具の一般的な構造としては、切断する刃の部分が管路内のケーブルに達しないような構造となっており、個別にケーブルを防護せずに切断作業を実施している。
【0003】
図5は、専用の切管工具で管路を切断しているときの他の管路との位置関係を説明する図である。専用の切管工具10が使用可能な管路1の間隔は、工具により多少の差異があるが、図5に示すように、概ね3.5cm以上が必要である。そのため、管路1の間隔が3.5cm以下の場合は、専用の切管工具10の使用が困難である。
【0004】
このような場合、管路1の間隔が3.5cm以下の狭隘な個所に、図6に示すように、管の相互間にクサビ16を打ち込み、管の相互間隔を拡げて専用の切管工具10をセットして切断作業を実施している。
【0005】
なお、特許文献1には、ケーブル収容管の外周面を巻くように取り回すことが可能なチェーンと、このチェーンの長さ方向に沿って設けられた多数の鋸歯状のカッターとを備えるケーブル収容管切断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−263316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図7に示すように、橋梁添架管路の橋台15の際等における管路間隔が狭隘な個所では、クサビ16を打ち込んで管の相互間隔を拡げることが不可能であり、上述した専用の切管工具10をセットできない場合がある。したがって、専用の切管工具の使用が困難なことから切断作業ができずに補修が実施されないことがある。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、管路間隔が狭隘な個所においても管路の相互間隔を拡げることをせずに切断作業ができる管路切断冶具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の管路切断冶具は、駆動装置により回転駆動される駆動プーリーと、管路の外周面に巻くように配置され、前記管路と前記駆動プーリーとの間に掛け渡されたワイヤーソーと、前記管路と前記駆動プーリーとの相互距離を調整して、前記ワイヤーソーの張力を調整する張力調整部と、を備え、前記駆動装置により前記駆動プーリーを回転させて前記ワイヤーソーを循環走行させ、前記ワイヤーソーを前記管路の外周面に接して走行させて前記管路を切断することを特徴とする。
【0010】
前記駆動プーリーは、複数からなる異なる外径のプーリーを選択的に取り付け可能となっており、異なる外径のプーリーを選択的に取り付けて、切断する管路の管径に応じて前記駆動プーリーの回転するトルクを調整可能とすることが好ましい。
【0011】
前記張力調整部は、張力調整用ハンドルにより前記管路と前記駆動プーリーとの相互距離を調整して、前記ワイヤーソーの張力の緩みに応じて張力を調整可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、管路間隔が狭隘な個所において専用の切管工具が使用できない場合でも、管路の相互間隔を拡げることをせずに補修のための切断作業が可能となる。
【0013】
また、本発明は、切管工具が使用できないために不良設備、不安定設備が解消されないことに対して、安全な補修施工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る管路切断治具の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る管路切断治具の正面図である。
【図3】ケーブル防護部材の切断対象位置への挿入方法を説明する図である。
【図4】管路を切断しているときの管路切断治具のイメージ図である。
【図5】専用の切管工具で管路を切断しているときの他の管路との位置関係を説明する図である。
【図6】管の相互間にクサビを打ち込んだときの状態を示す図である。
【図7】橋台際等では管の相互間隔を拡げられないことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明は、管路間隔が狭隘な個所において管路の所定位置を切断するために使用する管路切断冶具である。図1は、本発明の実施の形態に係る管路切断治具を、切断する管路に取り付けたときの、管路切断治具の側面図であり、図2は、管路切断治具の正面図である。
【0016】
図1、2に示す管路切断治具は、管路切断冶具本体2と、管路切断冶具本体2を管路1に取り付ける冶具固定部3と、管路1を切断するためのダイヤモンドワイヤーソー4と、管路1の長手方向におけるダイヤモンドワイヤーソー4のずれを抑えるガイドプーリー5と、ダイヤモンドワイヤーソー4に駆動力を伝える回転駆動プーリー6と、切断対象となる管路1と回転駆動プーリー6との相互距離を調整することによりダイヤモンドワイヤーソー4の張力を調整する張力調整部7、回転駆動プーリー6を回転駆動させる回転ハンドル9(駆動装置)と、を備えている。
【0017】
治具固定部3は、U字ボルトからなる。ダイヤモンドワイヤーソー4は、直径が、例えば4.1mmのワイヤーにダイヤモンド砥粒を装着したものであり、管路1の外周面に巻くように配置され、管路1と回転駆動プーリー6との間に掛け渡されて、回転駆動プーリー6にセットされる。
【0018】
ガイドプーリー5は、管路1の長手方向におけるダイヤモンドワイヤーソー4のずれを抑える目的のほか、ガイドプーリー5の取付け位置を変えることにより管路外周面の切削範囲の調節を可能にする。ガイドプーリー5の相互間隔を狭くすると管路1の切削範囲は大きくなり、反対に相互間隔を拡げると管路1の切削範囲は小さくなる。
【0019】
回転駆動プーリー6は、複数からなる異なる外径のプーリーを選択的に取り付け可能であり、切断する管路1の管径に応じて、異なる外径の回転駆動プーリーを使用することで、回転駆動プーリーの回転するトルクの調整が可能である。張力調整部7には、回転駆動プーリー6を移動させて、管路1と回転駆動プーリー6との相互距離を調整して、ダイヤモンドワイヤーソー4の張力の緩みに応じて張力を調整するための張力調節ハンドル8が取り付けられている。
【0020】
次に、本発明の実施の形態に係る管路切断治具を用いてケーブル収容管路を切断するときの動作について説明する。
【0021】
まず、管路内にケーブルが収容されている場合は、切断に先立ち、切断対象位置へケーブル防護部材を挿入してケーブルを防護する。図3は、ケーブル防護部材の切断対象位置への挿入方法を説明する図である。ケーブル防護部材11の管路切断位置12への挿入は、専用の切管工具により管路切断が可能である管路間隔が標準の位置において管路1を切断、除去した後、その開口端部から行われる。ケーブル防護部材11は、ケーブル14を防護する円筒状の半割可能な構造を有しており、開口端部から挿入ロッド13を連結して挿入される。挿入ロッド13には、挿入位置を示す目盛が付加されており、この目盛りにより、管路切断位置12が、開口端部または橋台15の際の任意の位置であっても、管路切断位置12にケーブル防護部材11を挿入できる。
【0022】
図4は、ケーブルが収容されている管路を切断しているときの管路切断治具のイメージ図である。管路切断位置にケーブル防護部材11を挿入した後、管路切断冶具本体2を管路1に取り付け、管路1の外周面を巻くようにダイヤモンドワイヤーソー4を配置し、回転駆動プーリー6にセット後、ダイヤモンドワイヤーソー4の両端を接合する。張力調節ハンドルを回し、回転駆動プーリー6を移動させてダイヤモンドワイヤーソー4の張力を調整する。そして、回転ハンドル9を手動で回すことにより、回転駆動プーリー6を回転させてダイヤモンドワイヤーソー4を循環走行させ、ダイヤモンドワイヤーソー4を管路1の外周面に接して走行させて管路1を切削する。
【0023】
切削が進むとダイヤモンドワイヤーソー4の張力が緩んでいくが、張力調節ハンドルによりダイヤモンドワイヤーソー4の張力を調節しながら切断作業を続ける。
【0024】
なお、上述した実施の形態では、治具固定部2は、U字ボルトを用いているが、チェーンを用いて管路切断冶具本体2を管路1に取り付けるようにしてもよい。また、回転ハンドル9(駆動装置)は、手動により回転駆動プーリー6を回転させるほか、電動工具用のアタッチメントを接続できる構造とすることで、電動による切断作業も可能である。
【0025】
上述したように、本発明の実施の形態に係る管路切断冶具は、ワイヤーソーを用いるため管路の間隔が狭隘な場所においても切断作業が可能となる。直径が4.1mmのダイヤモンドワイヤーソーを用いた場合、管路の間隔が概ね0.5〜1.0cm以上あれば、切断可能である。
【0026】
また、本発明の実施の形態に係る管路切断冶具は、手動駆動および電動駆動による切断が可能であり、切込み状況に応じた切断速度の調節が可能である。
【0027】
また、本発明の実施の形態に係る管路切断冶具は、ワイヤーソーの長さ調節およびガイドプーリーの組合せにより任意の位置の切断が可能である。
【0028】
また、従来の切管工具の刃(カッター)は、円形または鋸歯状のものが一般的であり、多数の関連取付け部品により構成されているが、本発明の実施の形態に係る管路切断冶具は、ワイヤーにダイヤモンド砥粒を装着した市販のダイヤモンドワイヤーソーであるため、装置構成がシンプルで、刃の交換を容易に行うことが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 管路
2 管路切断治具本体
3 治具固定部
4 ダイヤモンドワイヤーソー
5 ガイドプーリー
6 回転駆動プーリー
7 張力調整部
8 張力調整ハンドル
9 回転ハンドル
10 切管工具
11 ケーブル防護部材
12 管路切断位置
13 挿入ロッド
14 ケーブル
15 橋台
16 クサビ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置により回転駆動される駆動プーリーと、
管路の外周面に巻くように配置され、前記管路と前記駆動プーリーとの間に掛け渡されたワイヤーソーと、
前記管路と前記駆動プーリーとの相互距離を調整して、前記ワイヤーソーの張力を調整する張力調整部と、を備え、
前記駆動装置により前記駆動プーリーを回転させて前記ワイヤーソーを循環走行させ、前記ワイヤーソーを前記管路の外周面に接して走行させて前記管路を切断することを特徴とする管路切断冶具。
【請求項2】
前記駆動プーリーは、複数からなる異なる外径のプーリーを選択的に取り付け可能となっており、異なる外径のプーリーを選択的に取り付けて、切断する管路の管径に応じて前記駆動プーリーの回転するトルクを調整可能としたことを特徴とする、請求項1に記載の管路切断冶具。
【請求項3】
前記張力調整部は、張力調整用ハンドルにより前記管路と前記駆動プーリーとの相互距離を調整して、前記ワイヤーソーの張力の緩みに応じて張力を調整可能としたことを特徴とする、請求項1に記載の管路切断冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107140(P2013−107140A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251488(P2011−251488)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】