説明

管路連結構造

【課題】、連結対象管A,Bの一方の管路端に、他方の連結対象管Aの管端に接続されている挿入管1が密挿される鞘管2を設け、挿入管1に係止突部を形成すると共に、鞘管端部近傍内周面に、係止突部11が係合する係合凹条部21並びに前記凹条部に係止突部が進出可能とする開口端切欠部24を形成し、係止突部を係合凹条部内に位置させて管接続を実現する管路連結構造において、抜け耐力の強化を図る。
【解決手段】係止突部11,12を端部から距離が異なり、且つ管外周における形成位置の角度が相違する複数段に形成し、係合凹条部21,22も複数段に形成し、前奥隣接する係合凹条部間に、係止突部の形成角度に対応した角度で且つ係止突部11が通過可能とした連絡凹部25を設けて、各段の係止突部を各段の係止凹条部に係合させ管接続を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として上下水道工事,ガス工事等の際に使用される各種代替配管や、工場内の配管の取り替え工事の際の代替配管のために臨時に設置される仮設配管路や、ビル内や工場内で採用される各種の配管管路において、管路を形成するための管路連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の配管路は、その用途に応じて適宜な管径並びに長さの金属管を適宜連結して所望の管路を設置することで実現しているものである。そして管路形成に必要な金属管の連結は、各金属管の端縁近傍に管を一周する浅い凹条を形成しておき、前記凹条に係合する脚部を備えた継手を用いているものである。
【0003】
具体的には、この継手は、リング状シール(ゴム製)と、シールの外周に位置せしめてなる2個の半月状の締付けリング(金属製)と、締付けリングの内径を小さくする方に作用する締付ボルトで構成されており、連結しようとする隣接管の端面を正確に一致せしめ、隣接する両管にまたがってリング状シールを嵌挿すると共に、締付けボルトの操作で金属リングを締付け、締付け金属リングでシールを強圧し、締付け金属リングの脚を凹条に係合してなるものである。
【0004】
前記の管路接続は、金属管の端部を正確に一致させる作業が必要であり、且つ当該連結作業は、シールによる密閉作業も兼ねているので、正確な連結作業が要求される。従って必ずしも作業能率上優れているとは言い難い。そこで本願出願人は、連結対象の一方の管路端に他方の連結対象管が密挿される鞘管を設け、他方の挿入する連結対象管の端部近傍に係止突部を形成すると共に、前記鞘管端部近傍内周面に、前記係止突部が係合する凹条部並びに前記凹条部に係止突部が進出可能とする開口端切欠部を形成し、係止突部が凹条部に位置した際の、挿入管外周面と鞘管内周面とを密封するリングシールを鞘管に内装し、前記鞘管に係止突部の凹条部からの離脱を防止する離脱防止機構を付設した連結構造を提案した(特許文献1:特開2002−250492号公報)。
【0005】
更に前記の改良として開口端切欠部と、切欠部に面した係合凹条部を空所とした際に、前記空所凹条部を塞ぎ且つ開口端切欠部を満たすと共に、鞘管又は挿入管への係止構造を備えた樹脂製装着体を装着する連結構造を提案した(特許文献2:特開2003−176883号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−250492号公報。
【特許文献2】特開2003−176883号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の管路連結構造は、一方の管(挿入管)の同一外円周上に設けられた係止突部が、他方管(鞘管)の内周面に設けられた凹条部内に位置することで、管軸方向の抜け止めとして作用するもので、而も前記の係止突部を凹条部に導入する開口端切欠部を備えることになり、係止突部と凹条部との当接範囲(抜け止め抵抗となる当接面)が限定されてしまい、抜け止め耐力に限界がある。
【0008】
そこで本発明は、前記抜け止め耐力を高めた管路連結構造の改良を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る管路構造は、連結対象管の一方の管路端に他方の連結対象管の管端に接続されている挿入管が密挿される鞘管を設け、前記挿入管に、端部から距離が異なり、且つ管外周における形成位置の角度が相違する複数段の係止突部を形成し、前記鞘管端部近傍内周面に、前記複数段の係止突部が係合する複数段の係合凹条部と、係合凹条部の奥方にシール収納凹条部を設けると共に、開口端側の係合凹条部と連続し、開口端から係止突部が開口端側の係合凹条部内へ進出可能とした開口端切欠部と、前奥に隣接する係合凹条部間に、係止突部の形成角度に対応した角度で且つ係止突部が通過可能とした連絡凹部を設けて、各段の係止突部を各段の係止凹条部に係合可能とし、端部側の係止突部が最奥方の係合凹条部に位置した際に、挿入管外周面がシール収納凹条部に内装したリングシールで密封されるようにしてなることを特徴とするものである。
【0010】
而して挿入管の最前段(端部側)の係止突部を開口端切欠部から差し入れて最前方の係合凹条部内に位置させ、挿入管(又は鞘管)を回動させて最前段の係止突部を開口端切欠部から移動させて、連結凹部の位置に移動させる。この時次段係止突部は、開口端切欠部に臨む箇所に位置する。そして挿入管を更に押し込むと、次段係止突部が開口端切欠部から最前方の係合凹条部内に位置し、最前段係止突部は次段(開口部から見て)の係合凹条部内に入り、挿入管(又は鞘管)を回動させて当該位置からずらし、更に次々段も同様に操作し、最前段の係止突部が最奥方の係合凹条部に位置した際に、挿入管外周面がシール収納凹条部に内装したリングシールで密封されると共に、各段の係止突部が格段の係合凹条部に係合することになり、管軸方向に対して強い抜け止め耐力を有して管路接続が実現するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、係止突部が設けられた挿入管と、挿入管が密挿される鞘管を設けた連結対象管とを連結して管路接続を行うものであって、特に挿入管外周面に係止突部を多段に形成し、鞘管端部近傍内周面に、各段の係止突部が係合する多段の係合凹条部を設け、前記凹条部に各段の係止突部が順次進出可能とした開口端切欠部及び連絡凹部を形成し、係止突部を係合凹条部の係合を多段として、抜け止め耐力を大きくし、管路の連結強度を高めたものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の連結前の説明図(斜視図)。
【図2】同挿入管端部の説明図で、(イ)は側面図(ロ)は一部切断正面図。
【図3】同鞘管端部の説明図で、(イ)は管軸方向断面図(ロ)は端面図(ハ)はa−a線断面図。
【図4】同連結操作の説明図(前段係止突部挿入時)。
【図5】同図(前段係止突部挿入後回動時)。
【図6】同連結操作の説明図(次段係止突部挿入時)。
【図7】同図(次段係止突部挿入後回動時:管路接続状態)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した管路連結構造は、係止突部及び係合凹条部を二段に形成した例である。
【0014】
管路を構成するための連結対象である管A,Bは、その開口端(連結箇所)に、各々挿入管1及び鞘管2を、予め溶接或いは螺合等の適宜な手段で一体としているもので、本発明の実施形態では、前記の挿入管1及び鞘管2の他にリングシール3及び樹脂製装着体4用いてなるものである。
【0015】
挿入管1は、外周面に前後段の係止突部11,12を設けたもので、前記前段係止突部11と後段係止突部(次段係止突部)12は、開口端部からの距離が異なるもので、且つ形成角度が相違するものである。
【0016】
即ち前段係止突部11は、後述するシール密封周面に該当する長さ分だけ開口端より離れた位置の外周円上に、外周の1/4以下の長さ(中心角で40〜60度)で且つ適宜幅(管軸方向長さ)の突出部分を180度の対向位置に形成して設けたものである。
【0017】
また後段係止突部12は、前記の前段係止突部11に対して90度ずれた位置で、且つ管軸方向において適宜間隔を空けて設けたものである。
【0018】
鞘管2は、前記挿入管1が略密挿される内径を有し、内周面に前記の前後段の係止突部11,12と対応する前段奥段の係合凹条部21,22を設けると共に、奥段係合凹条部22の奥方にシール収納凹条部23を設けてなる。このシール収納凹条部23には、リングシール3を内装してなる。
【0019】
更に前段係合凹条部21の開口端側の一部を切欠して開口端切欠部24を形成したもので、前記開口端切欠部24は、係止突部11,12の形状及び位置に対応し(180度の対向位置に設けている)、開口端から係止突部11,12が前段の係合凹条部21内へ進出可能としたものである。
【0020】
また前段係合凹条部21と奥段係合凹条部22との間に、前記開口端切欠部24の位置から90度ずれた位置で、係止突部11,12が通過可能とした連絡凹部25を設けてなる。
【0021】
樹脂製装着体4は、断面コの字状に形成して、開口端切欠部24を満たし且つ開口端切欠部24に隣接する係合凹条部21内をも満たすと共に、係合凹条部21と鞘管2の外周面部を自己の弾性で挟持するようにしたものである。
【0022】
更に前記樹脂製装着体4で挟持される鞘管2の外周面には、係止凹部26を設けると共に、樹脂製装着体4の対応箇所に突部41を設けてなる。
【0023】
而して連結対象管Aの先端部分(挿入管1)を鞘管2に挿入すると共に、前段係止突部11を開口端切欠部24から前段係合凹条部21内に進出させた後(図4)、軸方向を中心に90度回動させる(図5)。
【0024】
前記の状態では、後段係止突部12は開口端切欠部24に対面する位置であり、前段係合凹条部21内の前段係止突部11は、連結凹部25に対面する位置となる。
【0025】
そして更に前記状態で連結対象管Aを押し込むと、後段係止突部12は開口端切欠部24を通過して前段係合凹条部21に入り、前段係合凹条部21内の前段係止突部11は、連結凹部25を通過して奥段係合凹条部22に入り、鞘管1の先端部分はリングシール3内に圧挿される(図6)。
【0026】
更に連結対象管A(鞘管1)を回動すると、後段係止突部12は開口端切欠部24位置よりずれて前段係合凹条部21内に位置し、奥段係合凹条部22内の前段係止突部11は、連結凹部25の位置よりずれる。
【0027】
そして開口端切欠部24と、開口端切欠部24に隣接した係合凹条部21の各空所を同時に満たすように樹脂製装着体4を装着(鞘管2を挟持)すると、樹脂製装着体4は、自己の弾性と、係止凹部26と突部41の係止とで装着状態が維持される。
【0028】
従って連結対象管Aの先端部分の挿入管1を、連結対象管Bの先端の鞘管2に挿入すると共に、90度回動させ、更に押し込み挿入して再度回動すると、前後段の各係止突部11,12が前奥段の各係合凹条部21,22内に位置し、管軸方向(抜け方向)への抵抗となり、連結対象管A,Bが連結され管路が構成されるものである。特に前記の抵抗体力が従前の一条の係合による管路連結に比較して、抜け耐力が2倍となるものである。
【0029】
また樹脂製装着体4の装着によって、挿入管1の回動範囲が制限され、係止突部12が開口端切欠部24の位置に達することが無いので、管路の分離が生ずることが無いし、仮に樹脂製装着体4が外れてしまい、且つ何らかの理由(地震などの自然災害も含む)で挿入管1が回動して、偶然に係止突部12が開口端切欠部24の位置に達し、管軸方向に力が作用したとしても、前段係止突部11が前段係合凹条部21に係止されて、連結対象管Aの先端(挿入管1)が完全に他方の連結対象管B(鞘管2)から外れることが無い。
【0030】
尚前記実施形態は、前後二段の係止突部の例を示したが、3段構成(ただし60度回動による押し込み操作となる)としても良い。勿論樹脂製装着体にかえて、その他の開口端切欠部の閉塞機構を採用しても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 挿入管
11 前段係止突部
12 後段係止突部(次段係止突部)
2 鞘管
21 前段係合凹条部
22 奥段係合凹条部(奥方係合凹条部)
23 シール収納凹条部
24 開口端切欠部
25 連絡凹部
26 係止凹部
3 リングシール
4 樹脂製装着体
41 突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結対象管の一方の管路端に、他方の連結対象管の管端に接続されている挿入管が密挿される鞘管を設け、前記挿入管に、端部から距離が異なり、且つ管外周における形成位置の角度が相違する複数段の係止突部を形成し、前記鞘管端部近傍内周面に、前記複数段の係止突部が係合する複数段の係合凹条部と、係合凹条部の奥方にシール収納凹条部を設けると共に、開口端側の係合凹条部と連続し、開口端から係止突部が開口端側の係合凹条部内へ進出可能とした開口端切欠部と、前奥隣接する係合凹条部間に、係止突部の形成角度に対応した角度で且つ係止突部が通過可能とした連絡凹部を設けて、各段の係止突部を各段の係止凹条部に係合可能とし、端部側の係止突部が最奥方の係合凹条部に位置した際に、挿入管外周面がシール収納凹条部に内装したリングシールで密封されるようにしてなることを特徴とする管路連結構造。
【請求項2】
挿入管の端部最遠方段の係止突部を開口端切欠部の位置から移動し、開口端切欠部に面した係合凹条部を空所とした際に、前記空所凹条部を塞ぎ且つ開口端切欠部を満たすと共に、鞘管又は挿入管への係止構造を備えた樹脂製装着体を装着してなる請求項1記載の管路連結構造。
【請求項3】
係止突部を前後二段で、且つ同一段の係止突部を180度の対向位置で、前後段の係止突部を90度ずれた位置に形成し、係合凹条部も前奥二段で、開口端切欠部と連結凹部も90度ずらして設けてなる請求項1又は2記載の管路連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−24280(P2013−24280A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157642(P2011−157642)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(591197633)明和工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】