説明

箱体

【課題】 材料費、作業工数や環境への負荷を増大させることなく、圧縮強度の向上が図られた箱体を提供すること。
【解決手段】 第1のシート材と第2のシート材を連結してなる連結シート材から形成される箱体であって、第1のシート材と第2のシート材の連結部は、箱体の周面の角隅縁を形成し、第1のシート材及び第2のシート材は、角隅縁に隣接する面の縁から箱体周方向に突設する一対の接続舌片をそれぞれ備え、第1のシート材の接続舌片のうち一方は、第2のシート材の箱体外面側に接続固定され、他方は、第2のシート材の箱体内面側に接続固定され、第2のシート材の一対の接続舌片のうち、第1のシート材の一方の接続舌片に隣接して配される接続舌片は、第1のシート材の箱体内面側に接続固定され、他方は、第1のシート材の箱体外面側に接続固定されることを特徴とする箱体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収容する箱体に関し、より詳しくは、材料費、作業工数や環境への負荷を増大させることなく、圧縮強度の向上が図られた箱体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、倉庫での保管或いは運搬中において、物品を収容する箱体を複数積重ねることが多い。この結果、特に、最下位置にある箱体には、大きな圧縮力が加わることがある。図4に示す如く、圧縮力による箱体の座屈を防止するために、多くの場合、箱体(B)の各角隅部に、L字形の補強スリーブ(S)が配される。補強スリーブ(S)の配設は、作業工程の増大をもたらすという問題を生ずる。
【0003】
特許文献1は、圧縮強度に優れた箱体の一例を開示する。図5は、特許文献1に開示される箱体の一実施形態を示す。
特許文献1の箱体(B)は、2つのシート材料(M1,M2)で構成される。シート材料(M1)は、接続舌片(C1)を備え、接続舌片(C1)は、シート材料(M2)の箱体内側面に接続する。同様に、シート材料(M2)は、接続舌片(C2)を備え、接続舌片(C2)は、シート材料(M1)の箱体内側面に接続する。
このように、2つのシート材料(M1,M2)を、箱体(B)対角位置において、接続舌片(C1,C2)を用いて接続することにより、箱体(B)の対角位置にある角隅部の圧縮強度の向上が図られている。
しかしながら、特許文献1の箱体(B)の構造では、接続舌片(C1又はC2)が接続する側の角隅部の強度は高くなるが、接続していない側の角隅部の強度は高くならず、箱体(B)の座屈を確実に防止できるものではない。したがって、特許文献1の箱体(B)も、L字形の補強スリーブ(S)等の追加的な補強手段を必要とする。
【0004】
特許文献2は、更に、圧縮強度に優れた箱体の一例を開示する。図6は、特許文献2に開示される箱体の平面断面図である。
特許文献2の箱体(B)は、一対のC型周面紙片を互いに対向させて噛み合わせた周面構造を備える。この構造を採用することにより、箱体(B)の周面の大部分が2重のシート材料から形成されることとなる。
特許文献2の箱体(B)は、非常に高い圧縮強度を有するものと考えられるが、材料費が高くなるという問題に加えて、箱体(B)の組立工程が非常に煩雑になるという問題を生ずる。また、シート材料の過度の使用は、環境への負荷を増大させるという二次的な問題も生じさせる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−139424号公報
【特許文献2】実開平7−15520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如く、材料費や組立工程の煩雑性などに起因する箱体製造費用の増大を招来することなく、また、追加的な補強材を要することなく、高い圧縮強度を有する箱体は、これまで存在していない。
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであって、材料費、作業工数や環境への負荷を増大させることなく、圧縮強度の向上が図られた箱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、第1のシート材と第2のシート材を連結してなる連結シート材から形成される箱体であって、前記第1のシート材と前記第2のシート材の連結部は、前記箱体の周面の角隅縁を形成し、前記第1のシート材及び前記第2のシート材は、前記角隅縁に隣接する面の縁から前記箱体周方向に突設する一対の接続舌片をそれぞれ備え、前記第1のシート材の接続舌片のうち一方は、前記第2のシート材の箱体外面側に接続固定され、他方は、前記第2のシート材の箱体内面側に接続固定され、前記第2のシート材の一対の接続舌片のうち、前記第1のシート材の前記一方の接続舌片に隣接して配される接続舌片は、前記第1のシート材の箱体内面側に接続固定され、他方は、前記第1のシート材の箱体外面側に接続固定されることを特徴とする箱体である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記接続舌片に挟まれる前記箱体の一対の角隅縁が、対角位置に配されることを特徴とする請求項1記載の箱体である。
請求項3記載の発明は、前記第1のシート材と前記第2のシート材が同一形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の箱体である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、箱体の角隅部が、角隅縁を挟む2つの領域において2重のシート材からなる構造となるので、高い圧縮強度を得ることができ、追加的な補強材を必要としない。したがって、箱体組立作業の工程数の低減を図ることができ、箱体組立作業に係る費用を低減することができる。更に、箱体の角隅部のみが2重構造となり、他の箱体周面部分は、1枚のシート材から構成することができるので、過度に多くの材料を用いることがなく、材料費や環境への負荷の増大を避けることができる。
請求項2記載の発明によれは、箱体中心点及び箱体角隅部を通過する対角線を中心に箱体の圧縮強度が高められるので、積重ねられた箱体内に収容される製品の重心位置が箱体中心位置からずれている場合においても、箱体の座屈を防止することができる。
請求項3記載の発明によれば、箱体を構成するシート材の統一化を図ることができ、箱体組立工程並びにこれに関連する工程(例えば、シート材の保管等)を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る箱体について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る箱体の斜視図である。尚、図1において、箱体の特徴部分を明瞭に示すために、箱体上面を形成するフラップの一部を切り欠いて示している。
図1に示す箱体(1)の全体形状は、略直方体形状である。箱体(1)は、第1のシート材(2)と第2のシート材(3)から形成される。尚、本実施形態に係る第1のシート材(2)及び第2のシート材(3)は、段ボールからなるが、本発明はこれに限定されるものではなく、物品を収容するために適切な他の材料を用いてもよい。
第1のシート材(2)は、図1において、箱体(1)の正面側周面(21)及び右側面側周面(22)を形成する。第2のシート材(3)は、箱体(1)の背面側周面(31)及び左側面側周面(32)を形成する。
第1のシート材(2)は更に、正面側周面(21)から箱体(1)周方向に突設する第1の接続舌片(23)と、右側面側周面(22)から箱体(1)周方向に突設する第2の接続舌片(24)を備える。第2のシート材(3)は更に、背面側周面(31)から箱体(1)周方向に突設する第3の接続舌片(33)と、左側面側周面(32)から箱体(1)周方向に突設する第4の接続舌片(34)を備える。
【0011】
箱体(1)周面の4つの角隅部(11,12,13,14)のうち、対角位置にある2つの角隅部(11,13)において、2つのシート材(2,3)が接続する。
箱体(1)の正面側に位置する角隅部(11)において、第4の接続舌片(34)は、第1のシート材(2)の正面側周面(21)に接続固定され、箱体(1)外面に現れる。第1の接続舌片(23)は、第2のシート材(3)の左側面側周面(32)に接続固定され、箱体(1)の内面に現れる。
箱体(1)の背面側に位置する角隅部(13)において、第2の接続舌片(24)は、第2のシート材(3)の背面側周面(31)に接続固定され、箱体(1)外面に現れる。第3の接続舌片(33)は、第1のシート材(2)の右側面側周面(22)に接続固定され、箱体(1)の内面に現れる。
尚、箱体(1)外面に現れる接続舌片(34,24)の幅寸法は、外観上、小さいことが好ましいが、圧縮強度、接続強度等の観点から、3cm以上7cm以下の範囲とされる。尚、本実施例においては、接続舌片(23,24,33,34)の固定には、接着剤を用いるが、ステープラなどの他の適切な固定手法を用いることも可能である。
【0012】
図2は、箱体(1)の展開図である。図2(a)は、第1のシート材(2)を展開した図であり、図2(b)は、第2のシート材(3)を展開した図である。
図2に示す如く、第1のシート材(2)の正面側周面(21)の上下縁からは、一対の内フラップ(25,26)が上下にそれぞれ突設する。第1のシート材(2)の右側面側周面(22)の上下縁からは、一対の外フラップ(27,28)が上下にそれぞれ突設する。内フラップ(25,26)は、外フラップ(27,28)よりも箱体(1)内方に位置し、外フラップ(27,28)はそれぞれ、箱体(1)の上下面の一部を形成する。
また、第2のシート材(3)の背面側周面(31)の上下縁からは、一対の内フラップ(35,36)が上下にそれぞれ突設する。第2のシート材(3)の左側面側周面(32)の上下縁からは、一対の外フラップ(37,38)が上下にそれぞれ突設する。内フラップ(35,36)は、外フラップ(37,38)よりも箱体(1)内方に位置し、外フラップ(37,38)はそれぞれ、箱体(1)の上下面の一部を形成する。
【0013】
図2中に表される点線部は、シート材(2,3)の折り曲げ線である。
正面側周面(21)と第1の接続舌片(23)の間、正面側周面(21)と右側面側周面(22)の間、右側面側周面(22)と第2の接続舌片(24)の間、背面側周面(31)と第3の接続舌片(33)の間、背面側周面(31)と左側面側周面(32)の間及び左側面側周面(32)と第4の接続舌片(34)の間の折り曲げ線は、箱体(1)周面の角隅縁となる。
尚、図2中に示される第1のシート材(2)と第2のシート材(3)の形状は同一である。
【0014】
図3は、第1のシート材(2)と第2のシート材(3)を連結した連結シート材を示す。
第1のシート材(2)と第2のシート材(3)が用意された後、第1の接続舌片(23)及び第4の接続舌片(34)の接着面に接着剤が塗布される。或いは、第2の接続舌片(24)と第3の接続舌片(33)の接着面に接着剤が塗布される。
その後、第1の接続舌片(23)と正面側周面(21)の間の折り曲げ線と、第4の接続舌片(34)と左側面側周面(32)との間の折り曲げ線を一致させるように、第1のシート材(2)と第2のシート材(3)の一部を重ね合わせる。或いは、第2の接続舌片(24)と右側面側周面(22)の間の折り曲げ線と、第3の接続舌片(33)と背面側周面(31)との間の折り曲げ線を一致させるように、第1のシート材(2)と第2のシート材(3)の一部を重ね合わせる。
第1のシート材(2)と第2のシート材(3)を連結させ、連結シート材(23)を得た後、連結シート材(23)の左右縁に存する一対の接続舌片(24,33又は23,34)の接着面に接着剤を塗布し、連結シート材(23)上の折り曲げ線に沿って連結シート材(23)に折り曲げ加工を施し、連結シート材(23)の左右端を接続し、箱体(1)の組み立てが完了する。
したがって、本発明の箱体(1)の組立工程は、追加的な補強材の配設作業を要せず完了し、高い圧縮強度を有する箱体を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、物品を収容する箱体に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る箱体の概略斜視図である。
【図2】本発明に係る箱体の展開図である。
【図3】本発明に係る箱体の第1のシート材と第2のシート材を連結させて得られる連結シート材を示す。
【図4】従来の箱体の圧縮強度を向上させる手法を示す。
【図5】圧縮強度を向上させる構造を備える従来の箱体の一例を示す斜視図である。
【図6】圧縮強度を向上させる構造を備える従来の箱体の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0017】
1・・・・・・・・・・・・・箱体
11・・・・・・・・・・・・角隅部
12・・・・・・・・・・・・角隅部
13・・・・・・・・・・・・角隅部
14・・・・・・・・・・・・角隅部
2・・・・・・・・・・・・・第1のシート材
23・・・・・・・・・・・・第1の接続舌片
24・・・・・・・・・・・・第2の接続舌片
3・・・・・・・・・・・・・第2のシート材
33・・・・・・・・・・・・第3の接続舌片
34・・・・・・・・・・・・第4の接続舌片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシート材と第2のシート材を連結してなる連結シート材から形成される箱体であって、
前記第1のシート材と前記第2のシート材の連結部は、前記箱体の周面の角隅縁を形成し、
前記第1のシート材及び前記第2のシート材は、前記角隅縁に隣接する面の縁から前記箱体周方向に突設する一対の接続舌片をそれぞれ備え、
前記第1のシート材の接続舌片のうち一方は、前記第2のシート材の箱体外面側に接続固定され、他方は、前記第2のシート材の箱体内面側に接続固定され、
前記第2のシート材の一対の接続舌片のうち、前記第1のシート材の前記一方の接続舌片に隣接して配される接続舌片は、前記第1のシート材の箱体内面側に接続固定され、他方は、前記第1のシート材の箱体外面側に接続固定されることを特徴とする箱体。
【請求項2】
前記接続舌片に挟まれる前記箱体の一対の角隅縁が、対角位置に配されることを特徴とする請求項1記載の箱体。
【請求項3】
前記第1のシート材と前記第2のシート材が同一形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の箱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−126201(P2010−126201A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303133(P2008−303133)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】