説明

箱型スプレーヘッダー

【課題】金型型面への離型剤噴霧に適した薄型で簡単な構成のスプレーヘッダーを提供する。
【解決手段】箱型の外壁と、前記外壁に囲まれた内部空間を上下に仕切って液体充填室と気体充填室と分ける気液仕切壁と、前記記液体充填室に液体を供給する液体供給管と、前記気体充填室に気体を供給する気体供給管と、前記外壁の上下壁のいずれか一方又は両方から、前記気液仕切壁を貫通して形成された複数のノズル取付穴と、前記ノズル取付穴に取り付けられ、前記液体充填室に開口する液体流入口と前記気体充填室に開口する気体流入口とを有し、この液体流入口と気体流入口から夫々流入した気体と液体を前記上下壁のいずれか一方又は両方の側から気液混合して噴射する二流体ノズルとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱型スプレーヘッダーに関し、特に、鍛造機、プレス機、鋳造機、射出成形機等の金型への離型剤の噴射用として好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
前記鍛造機、プレス等では、成形工程の準備段階で、金型の型面に離型剤を塗布して成形品の離型性を向上させている。離型剤の塗布は、型開きした金型の間にノズルを挿入し、該ノズルから金型の型面に離型剤の溶液と空気との気液混合流体や、気体のみや液体のみを噴霧して行っている。
【0003】
この種の離型剤塗布装置として、例えば、特開平6−312251号公報(特許文献1)に、図9に示すようなスプレー装置が提供されている。該スプレー装置は離型剤とエアーとの貯留部50からマニホールド51にパイプ52で配管し、マニホールド51に長尺な棒状のスプレーノズル53を取り付け、マニホールド51を金型型面方向に移動可能とし、スプレーノズル53より型面に向けて離型剤を塗布する構成とされている。
他の金型型面に離型剤を塗布するスプレー装置も、前記特許文献1と同様に、気液混合部に長尺なパイプ状のノズルを突設し、該ノズルの先端から供給された気液混合流体を噴射する構成とされている場合が多い。
【0004】
【特許文献1】特開平6−312251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術のように、気液混合流体を長尺なパイプを通して、先端から噴霧する構成であると、混合部からノズルの噴射部まで距離があるため、気液が分離し、気液が均一に混合された良好な噴霧を得ることができない。
また、長尺なパイプを金型型面の形状に対応させて屈曲させて噴霧箇所や噴霧方向を調節する必要があり、これを何度も繰り返すと、パイプに損傷が生じ、パイプが破損することもある。
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、噴射直前で気液を混合して所要の噴霧を発生するボックスタイプとしながら、簡単な構成で薄型、小型化および軽量化を図ることができるスプレーヘッダーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、
箱型の外壁と、
前記外壁に囲まれた内部空間を上下に仕切って液体充填室と気体充填室と分ける気液仕切壁と、
前記液体充填室に液体を供給する液体供給管と、
前記気体充填室に気体を供給する気体供給管と、
前記外壁の上下壁のいずれか一方又は両方から、前記気液仕切壁を貫通して形成された複数のノズル取付穴と、
前記ノズル取付穴に取り付けられ、前記液体充填室に開口する液体流入口と前記気体充填室に開口する気体流入口とを有し、この液体流入口と気体流入口から夫々流入した気体と液体を前記上下壁のいずれか一方又は両方の側から噴射するノズルと、
を備えることを特徴とする箱型スプレーヘッダーを提供している。
【0008】
前記外壁は上下方向の寸法が前後方向及び左右方向の寸法より短い偏平な箱型とすること好ましい。
前記のように、本発明では、箱型の外壁で囲まれた内部を気液仕切壁で仕切って液体充填室と気体充填室を設けているため、この気液仕切板を貫通してノズルを取り付け、ノズルの液体流入口を液体充填室と連通させ、気体流入口を気体充填室と連通させるだけで、ノズル内部に液体および/あるいは気体を供給して、ノズルから二流体の混合噴霧あるいは一流体を噴射することができる。
よって、複数の各ノズルに直接液体を供給する配管と気体を供給する配管を設ける必要はなく、極めて簡単な構成となるため、箱型を偏平化することができ、スプレーヘッダー全体の薄型化、小型化および軽量化を図ることができる。その結果、従来よりも組み立てやメンテナンスの手間を少なくでき、また、例えば、金型への離型剤の塗布に用いる際に金型の開き距離を短かくでき、さらに、小型の駆動装置で駆動することがきる。
【0009】
また、外壁と気液仕切壁にノズル取付孔を設けるだけで、任意の位置に任意の個数のノズルを取り付けることができる。かつ、複数のノズルは外壁および気液仕切壁にそれぞれ直接に固定して複合体としているため、強度の向上を図ることができ、外壁および気液仕切壁を薄くすることもでき、その分、さらに偏平化および軽量化を図ることができる。
さらに、各ノズルに配管を介さずに直接に液体および気体を共通の液体供給室と気体供給室から供給できるため、複数のノズルの間の噴射性能のバラつきを低減できる。
【0010】
なお、本明細書において、上下方向、左右方向及び前後方向は相対的な方向を意味し、箱型スプレーヘッダー自体の配置方向に応じて、前記上下方向が左右方向となり、ノズルの噴射方向が上下方向から左右方向に変わる。
【0011】
前記外壁および気液仕切壁はいずれも平面状で且つ平行配置し、かつ、
前記外壁の左右両側面を全面開口とし、これら開口に沿って前記液体供給管と気体供給管を配置して前記開口を閉鎖し、
前記液体供給管の周壁に設けた液体流出口を介して前記液体充填室に液体を供給すると共に、前記気体供給管の周壁に設けた気体流出口を介して前記気体充填室に気体を供給していることが好ましい。
【0012】
前記のように、外壁と気液仕切壁とを平行配置すると、同一形状の多数のノズルをそれぞれノズル取付孔に取り付けるだけでよく、組立工程が簡単となる、
また、液体供給管と気体供給管で左右開口を閉鎖して壁部材を兼用する構成とすると、箱型スプレーヘッダーの更なる小型化および軽量化を図ることができる。
【0013】
前記気液仕切壁を備えた前記外壁を上下2段に積層し、
上段の前記外壁では、前記上壁から気液仕切壁を貫通して形成した複数のノズル取付穴に前記ノズルを取り付けて上壁側から噴射する一方、
下段の前記外壁では、前記下壁から気液仕切壁を貫通して形成した複数の取付穴にノズルを取り付けて下壁側から噴射する構成とすることが好ましい。
【0014】
前記のように、上下2段の積層構造とすると、対向する上下両面より噴射する場合に、各面から同一方向に噴射するノズルを密に配置することができる。よって、例えば、金型の型開きした両側の型面に離型剤を効率良く噴霧でき、離型剤の塗布時間を短縮できる。
【0015】
前記上下2段とする場合、上段の下壁と前記下段の上壁とを兼ねる1枚の中央仕切壁を設けることが好ましい。
具体的には、下段は上壁を有しない構成とし、その上面に上段を載置固定して、上段の下壁を中央仕切壁としている。
前記構成とすると、上下2段とした場合に中央の壁を1枚除くことができ、更なる軽量化を図ることができる。
【0016】
前記2段の構成とした場合、具体的には、前記ノズルは気液仕切壁の取付穴から前記気体充填室内に突出した部分の端面に気体流入口が設けられている一方、前記液体充填室内を臨む周面に液体流入口が設けられており、前記気体流入口と液体流入口が、前記上壁又は下壁の取付穴から突出した先端部に設けられた噴射口と連通している。
前記ノズルにより、外壁内部の上下に形成された液体充填室と気体充填室から液体と気体を導き、この液体と気体を噴射直前に混合し、気液分離を生じることなく噴射口から噴射することができる。
【0017】
前記ノズルは、左右方向に少なくとも一列で等ピッチで配置し、あるいは前後左右方向に等ピッチで配置していることが好ましい。
このように、多数のノズルを等ピッチで配置することにより、金型の型面へ塗布する噴射量を均等とすることができる。
【0018】
また、前記ノズルを前記ノズル取付穴に嵌合して溶接やロウ付けで固定していることが好ましい。
このように、溶接やロウ付けで固定すると、水漏れやエア漏れを確実に防止できると共に、ノズルの取付強度の向上、ひいてはスプレーヘッダー全体の強度向上を図ることができる。
【0019】
前記ノズルは先端にノズルチップを着脱自在に連結し、該ノズルチップは二流体ノズルチップ、一流体ノズルチップ、短尺ノズルチップ、長尺ノズルチップあるいはボールジョイント付きノズルチップからなる。
このように、ボックスに固定したノズル(ノズル本体)にノズルチップを着脱自在に連結する構成としているため、用途に応じて適宜のノズルチップを取り付けることができる。 よって、二流体用、一流体用、二流体と一流体との併用が可能となる。
さらに、ノズルチップの長さを変えることで、例えば、金型型面に凹凸がある場合に、凹凸からのノズル噴射位置を均等とすることができ、各型面への塗布量を均等化することができる。
さらにまた、ノズルチップを着脱自在とすることで、ノズルチップに目詰まりが発生した場合においても、その交換を容易に行え、メンテナンス性を良いものとすることができる。
なお、前記ボックスに溶接固定するノズルをノズルチップを連結せずに、噴射口を有する一体化したものでもよい。
【0020】
本発明のスプレーヘッダーは、ロボットアームに取り付けられ、上下方向に型開きした金型の間に挿入して、前記型開きした金型の型面に、離型剤又は冷却液を噴射するものとして好適に用いられる。
前記箱型スプレーヘッダーは、従来よりも薄型化と軽量化を図ることができるため、従来よりも小型のロボットアームを用いて少ない駆動力により、金型の型面に離型剤又は冷却液の塗布を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
上述のように、本発明によれば、偏平な箱型の内部に気液仕切壁を設けて、気体充填室と液体充填室とを設け、外壁から気液仕切壁に貫通させてノズルを取り付け、該ノズルに気体充填室から気体を直接供給すると共に液体充填室から液体を直接供給する構成としているため、各ノズルへの個別の気体供給管と液体供給管を設ける必要はなく、多数の二流体ノズルを取り付けたスプレーヘッダーを簡単な構成とすることができる。よって、スプレーヘッダーの薄型化および軽量化を図ることができ、かつ、多数のノズルへ共通の液体充填室と気体充填室から直接に気体と液体を供給するため、多数のノズルからの噴射特性を均等化できると共に、各ノズル内部で気液混合を行うため、気液混合液を配管を通して供給する場合と比較して、気液分離を防止でき、噴射特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の箱型スプレーヘッダーの実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に第1実施形態を示す。
【0023】
第1実施形態は前記したボックスタイプに属する箱型スプレーヘッダー1であって、図中、上下方向Yに上段ボックス2と下段ボックス3を積層した上下2段構造としている。上段ボックス2の上面と下段ボックス3の下面は互いに略平行な矩形状の平面とし、夫々前後左右方向に間隔をあけて二流体ノズル20(以下、ノズル20と略称する)を取り付けている。これらのノズル20は、鍛造機等の型開きされて所要寸法を空けて対向する金型型面に離型剤と空気とを気液混合して噴射するものとしている。
なお、上下方向Y、左右方向X、前後方向Zは相対関係を示し、使用に応じて方向は変えられるものである。
【0024】
箱型スプレーヘッダー1は、上下方向Yの寸法が左右方向Xおよび前後方向Zの寸法よりも小さい偏平な上段ボックス2と下段ボックス3を備え、上段ボックス2の下壁と下段ボックス3の上壁は共通の中央仕切壁4からなる。
前記上段ボックス2は上壁5と前後壁6を有し、左右両端は開口とした外壁7を備えた形状としている。下段ボックス3は下壁8と前後壁9を有し、左右両端は開口とした外壁10を備えた形状としている。
前記上段ボックス2の前後壁6の下面と、下段ボックス3の前後壁9の上面との間に前記中央仕切壁4を介在させて溶接している。
【0025】
上段ボックス2は上壁5と下壁となる中央仕切壁4で上下壁を構成し、該上下壁に挟まれた上下中央位置に気液仕切壁11を設け、上段ボックス2の内部の上側に液体充填室L1、下側に気体充填室V1を形成している。
同様に下段ボックス3は下壁8と上壁となる中央仕切壁4で上下壁を構成し、該上下壁に挟まれた上下中央位置に気液仕切壁12を設け、下段ボックス3の内部の下側を液体充填室L2、上側に気体充填室V2を形成している。
【0026】
前記上下段ボックス2、3の開口とした左右両側には、図中、左側開口に沿って、上段に離型剤の溶液からなる液体を供給する第1液体供給管15を配置し、下段に圧力エアを供給する第2気体供給管16を配置し、第1液体供給管15で上段ボックス2の左側開口を密閉し、第2気体供給管16で下端ボックス3の左側開口を密閉している。
同様に、右側開口に沿って、上段に第1気体供給管17を配置して、該第1気体供給管17で上端ボックス3の右開口に密閉し、下段に第2液体供給管18を配置して、該第2液体供給管18で下段ボックス3の右側開口を密閉している。
【0027】
このように、上下段ボックス2、3の左右両側を開口とし、気体供給管と液体供給管で閉鎖すると共に、上段ボックス2の左右両側に第1液体供給管15と第1気体供給管17を配置し、下段ボックス3の左右両側に第2気体供給管16と第2液体供給管18を配置している。
前記液体供給管15、18より気体供給管16、17を大径としている。
【0028】
前記各気体供給管および液体供給管15〜18はいずれも、左右開口を挟む上下対向する上壁5と中央仕切壁4、該中央仕切壁4と下壁8の端縁に上下頂点部を溶接固定すると共に、上下段ボックス2、3側に突出した先端部を気液仕切壁11、12の先端と溶接固定している。図中、溶接箇所をHで示す。
【0029】
前記第1気体供給管17、第2気体供給16に軸線方向に沿って所定間隔をあけて、気体流出口17a、16aを設け、エアを気体充填室V2、V1に夫々供給している。
同様に、前記第1液体供給管15、第2液体供給管18に軸線方向に沿って所定間隔をあけて、液体流出口15a、18aを設け、液体を液体充填室L1、L2に夫々供給している。
【0030】
前記上下段ボックス2、3内の気液仕切壁11、12には左右方向Xと前後方向Zとに一定ピッチをあけてノズル取付孔11a、12aを貫通して設けている。これらノズル取付孔11a、12aと上下方向Yで対向する上段ボックス2の上壁5と下段ボックス3の下壁8とにそれぞれノズル取付孔5a、8aを貫通して設けている。
本実施形態では図1に示すように左右方向に5個、前後方向に4個として、合計20個のノズル取付孔を前記気液仕切壁11、12、上下壁5、8に夫々設けている。
気液仕切壁11、12に設けるノズル取付孔11a、12aは同径とし、上下壁5、8に設けるノズル取付孔5a、8aは互いに同径とすると共に前記ノズル取付孔11a、12aよりも大径としている。
【0031】
前記上段ボックス2側の上下方向に対向するノズル取付孔11aと5aに上段側のノズル20−1を嵌合固定し、下段ボックス3側の上下方向に対向するノズル取付孔12aと8aに下段側のノズル20−2を嵌合固定している。
詳細には上下両側のノズル20(20−1、20−2)は図3に示すように、ノズル取付孔11a、12aに貫通する基端側部20aとノズル取付孔5a、8aに貫通する噴射側部20bは小径部とし、その間の中間部20cを大径部としている。上側ノズル20−1では中間部20cを上下両側の上壁5と気液仕切板11で狭持する一方、下側ノズル20−2では中間部20cを気液仕切壁12と下壁8とで狭持している。かつ、各ノズル20は、前記ノズル取付孔11a、12a、5a、8aの貫通部で溶接またはロウ付けして固定している。
【0032】
前記各ノズル20は軸線に沿って中央流路20dを備え、該中央流路20dに連通させて基端側先端面に気体流入口20eを設けると共に中間部20cの周壁に液体流入口20fを設けている。前記気体流入口20eは気体充填室V1、V2に開口し、エアを中央流路20dに流入させると共に、前記液体流入口20fは液体充填室L1、L2に開口し、液体を中央流路20dに流入させている。
前記各ノズル20は、図2においてはノズルチップ40を取り付けていない状態で示している。各ノズル20は、図3に示すように、噴射側先端部20bにノズルチップ40をネジ締めで取り付けており、中央流路20dで混合したエアと液体をノズルチップ40の先端噴射口40xより噴射する構成としている。
【0033】
図中、左側の前記第1液体供給管15と第2気体供給管16、右側の第1気体供給管17と第2液体供給管18はそれぞれスプレーヘッダー1から延長して集合させ、図4に示すように、フランジ19の取付孔19a〜19dに貫通保持して、4本の供給管を一体的に支持している。各供給管15〜18は液体供給源およびエア供給源(図示せず)に夫々接続しいる。
前記フランジ19によって箱型スプレーヘッダー1を前記4本の供給管15〜18を介して支持し、該フランジ19をロボットアーム(図示せず)に連結して、箱型スプレーヘッダー1を所要位置に移動させている。
【0034】
次に、前記構成の箱型スプレーヘッダー1の動作を説明する。
金型鋳造機等の金型が開き、離型剤の塗布の準備が完了すると、箱型スプレーヘッダー1をロボットアームによって駆動し、開いた金型の型面の間に挿入配置する。
続いて、液体供給源から第1、第2液体供給管15、18に離型剤を供給すると共に、エア供給源から第1、第2気体供給管17、16に気体を供給する。
第1、第2液体供給管15、18を通して上下の液体充填室L1、L2に液体が供給されると共に、第1、第2気体供給管17、16を通して上下の気体充填室V1,V2にエアが供給される。
【0035】
上段ボックス2側の液体充填室L1と気体充填室V1がそれぞれ供給された液体とエアとで充満状態となると、上段のノズル20−1に液体とエアが流入して、内部混合されて噴射口40xから気液混合噴霧を金型型面に向けて噴射する。
同様に、下段ボックス3側の液体充填室L2と気体充填室V2がそれぞれ供給された液体とエアとで充満状態となると、下段のノズル20−2に液体とエアが流入して、内部混合されて噴射口40xから気液混合噴霧を金型型面に向けて噴射する。
【0036】
このように、本実施形態の箱型スプレーヘッダー1は、外部に噴射する直前に離型剤と空気の混合体を形成するので、離型剤と空気を気液分離することなく噴射できて、型面に離型剤をムラ等の不都合を生じることなく塗布できる。
また、本実施形態の箱型スプレーヘッダー1は、上段ボックス2、下段ボックス3内に夫々気体充填室V1,V2と液体充填室L1.L2を設け、これら気体充填室と液体充填室に開口した複数のノズル20の流入口にそれぞれ液体と気体を流入させる構成としているため、多数のノズルに一定圧の気体と液体とを供給でき、気液混合流体を安定して噴射でき、噴射性能のバラツキを低減できる。
【0037】
さらに、上段ボックス2および下段ボックス3に夫々任意の個数且つ任意の位置にノズルを簡単に取り付けることができる。かつ、シンプルな偏平形状としながら両面に多数のノズルを取り付けることができるため、金型の開き距離を短縮でき、離型剤塗布の所要時間を短縮することができ、成形工程のサイクルタイムの短縮を図ることができる。
さらに、本実施形態の箱型スプレーヘッダー1は、枝管が不要であるので軽量化ができ、したがって、小型のロボットアームによって駆動できる。
【0038】
なお、前記箱型スプレーヘッダー1において、離型剤を含む溶液の液体とエアとの混合噴霧を金型型面に塗布した後、液体の供給を停止し、エアーのみをノズル20から金型型面に噴霧してもよい。
【0039】
図5に第2実施形態を示す。
第2実施形態では、ボックスは1段とし、上下壁30と31と前後壁(不図示)を有すると共に左右両側が開口した外壁を備え、その内部を気液仕切壁33で仕切り、上側に液体充填室L、下側に気体充填室Vを設けている。左右開口には、第1実施形態と同様に、左開口には液体供給管36、右開口には気体供給管37を配置して開口を閉鎖し、液体供給管36から液体充填室Lに液体を供給し、気体供給管37から気体充填室Vに気体を供給している。
前記気液仕切壁33と上壁30とに上下対向してノズル取付孔33a、30aを設けて、上向きのノズル20を取り付けている。
他の構成および作用は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
前記第2実施形態の箱型スプレーヘッダー1では、偏平なボックスの一面側にのみノズル20を設けて一方向へのみ噴霧している。
該構成とすると、箱型スプレーヘッダー1の厚さを第1実施形態の略半分とすることができる。
型開きした両側の金型型面に噴霧する場合には、箱型スプレーヘッダー1を180度回転可能にロボットで支持し、一方向への噴霧終了後に、180度回転させて他方へ噴霧している。
【0041】
図6に第3実施形態を示す。
第3実施形態は第2実施形態と同様に、ボックスは1段としているが、上下壁30、31にノズル取付孔30a、31aを設け、上壁のノズル取付孔30aと気液仕切壁33のノズル取付孔33aに上向きのノズル20−1を取り付ける一方、下壁のノズル取付孔31aと気液仕切壁33のノズル取付孔33aに下向きのノズル20−2を取り付けている。 ノズル20−1と20−2とでは液体流入口と気体流入口とは逆となるが、ノズル内部に気液混合でき、ボックス両面のノズル20−1、20−2から気液混合噴霧を両側に噴霧することができる。
【0042】
図7に第4実施形態を示す。
第4実施形態は第1実施形態と同様な上下2段のボックスを備えた形状とし、上下両側に取り付けるノズル20の先端に連結するノズルチップ40を相違させている。
ノズルチップ40aは第1実施形態と同様な、短尺ノズルチップからなる。
ノズルチップ40bは長い直管40b−1を付設した長尺ノズルチップからなる。
ノズルチップ40cは長い屈曲管40c−1を付設したの長尺ノズルチップからなる。
ノズルチップ40dはノズルチップ40aと40bの中間長さの中尺ノズルチップからなる。
ノズルチップ40eはボールジョイント付きのノズルチップからなる。
【0043】
前記ノズルチップ40a〜40eは、離型剤を塗布する金型の型面45A、45Bの凹凸形状に対応して夫々取り付けており、例えば、短尺ノズルチップ40aは型面45Aの凸部に対向する位置に取り付け、長尺ノズルチップ40bは型面45Aの凹部と対向する位置に取り付けている。
このように、ノズル20に連結するノズルチップ40を着脱自在に取り替えることにより、型面とノズル20のノズルチップ40の先端噴射口との間の寸法を略等しくすることができ、型面へ離型剤を厚さムラを発生させることなく塗布できる。
【0044】
図8に第5実施形態を示す。
第5実施形態は第1実施形態と同様な上下2段のボックスを備えた形状とし、下段のボックス3の下面側に取り付けるノズルには液体のみを噴射する一流体用のノズル20xと気体のみを噴射する一流体ノズル20y取り付けている。上面側に取り付けるノズル20は第1実施形態と同様に二流体ノズルのノズルチップ40aを取り付けている。
前記スプレーヘッダーでは、気液混合噴霧を上面側のノズル20で噴霧できると共に、液体のみと気体のみを下面側のノズル20x、20yで噴霧することができる。
【0045】
また、図示していないが、上下両側にすべて一流体ノズルを取り付け、液体充填室に液体を充填する一方、気体充填室に気体を充填しない状態として液体を噴射させ、ついで、逆にして、気体充填室にのみ気体を状態する一方、液体充填室には液体を充填しない状態として気体のみを噴射させてもよい。
前記構成のスプレーヘッダーでは、まず、洗浄液を噴射した後に、エアブローする場合等に好適に用いられる。
【0046】
このように、ボックスにノズル20を溶接あるいはロウ付け固定した状態で、該ノズル20の先端に連結するノズルチップ40を任意の形状に変えることにより、種々の用途に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の箱型スプレーヘッダーは、自動車製造工程、自動車部品製造工程、ゴム成形品製造工程、樹脂成形品製造工程、建材製造工程等において用いられる鋳造機、鍛造機、プレズ機、樹脂成形機等の金型への離型剤の塗布等に用いられる。
さらに、冷却噴霧、乾燥用エアブロー等にも好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態の箱型スプレーヘッダーの概略斜視図である。
【図2】前記箱型スプレーヘッダーの断面図である。
【図3】前記箱型スプレーヘッダーに取り付けるノズルの拡大図である。
【図4】箱型スプレーヘッダーの配管の支持部を示す正面図である。
【図5】第2実施形態の断面図である。
【図6】第3実施形態の断面図である。
【図7】第4実施形態の断面図である。
【図8】第5実施形態の断面図である。
【図9】従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0049】
1 箱型スプレーヘッダー
2 上段ボックス
3 下段ボックス
4 中央仕切壁
5 上壁
8 下壁
11、12 気液仕切壁
15、18 液体供給管
16、17 気体供給管
20(20−1、20−2)ノズル
L1、L2 液体充填室
V1、V2 気体充填室
40 ノズルチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型の外壁と、
前記外壁に囲まれた内部空間を上下に仕切って液体充填室と気体充填室と分ける気液仕切壁と、
前記液体充填室に液体を供給する液体供給管と、
前記気体充填室に気体を供給する気体供給管と、
前記外壁の上下壁のいずれか一方又は両方から、前記気液仕切壁を貫通して形成された複数のノズル取付穴と、
前記ノズル取付穴に取り付けられ、前記液体充填室に開口する液体流入口と前記気体充填室に開口する気体流入口とを有し、この液体流入口と気体流入口から夫々流入した気体と液体を前記上下壁のいずれか一方又は両方の側から噴射するノズルと、
を備えることを特徴とする箱型スプレーヘッダー。
【請求項2】
前記外壁は上下方向の寸法が前後方向及び左右方向の寸法より短い偏平な箱型である請求項1に記載の箱型スプレーヘッダー。
【請求項3】
前記外壁の上下壁および気液仕切壁はいずれも平面状で且つ略平行配置し、かつ、
前記外壁の左右両側面は全面開口とし、これら開口に沿って前記液体供給管と気体供給管を配置して前記開口を閉鎖し、
前記液体供給管の周壁に設けた液体流出口を介して前記液体充填室に液体を供給すると共に、前記気体供給管の周壁に設けた気体流出口を介して前記気体充填室に気体を供給している請求項1または請求項2に記載の箱型スプレーヘッダー。
【請求項4】
前記気液仕切壁を備えた前記外壁を上下2段に積層し、
上段の前記外壁では、前記上壁から気液仕切壁を貫通して形成した複数の取付穴に前記ノズルを取り付けて上壁側から噴射する一方、
下段の前記外壁では、前記下壁から気液仕切壁を貫通して形成した複数の取付穴にノズルを取り付けて下壁側から噴射する構成としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の箱型スプレーヘッダー。
【請求項5】
前記上段の下壁と前記下段の上壁とを兼ねる1枚の中央仕切壁を備えている請求項4に記載の箱型スプレーヘッダー。
【請求項6】
前記ノズルは、左右方向に少なくとも一列で等ピッチで配置し、あるいは前後左右方向に等ピッチで配置し、かつ、
前記ノズルを前記ノズル取付穴に嵌合して溶接またはロウ付けで固定している請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の箱型スプレーヘッダー。
【請求項7】
前記ノズルは先端にノズルチップを着脱自在に連結し、該ノズルチップは二流体ノズルチップ、一流体ノズルチップ、短尺ノズルチップ、長尺ノズルチップあるいはボールジョイント付きノズルチップからなる請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の箱型スプレーヘッダー。
【請求項8】
ロボットアームに取り付けられ、上下方向に型開きした金型の間に挿入して、前記型開きした金型の型面に、離型剤又は冷却液を噴射するものである請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の箱型スプレーヘッダー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate