説明

簡易な清掃方法

【課題】従来の床面などに飛散する油はウエスやおが屑による吸収除去や界面活性剤を用いた除去が主であり、清掃後に来る油は除去できなく清掃すべき頻度が高い。
【解決手段】飛散した油あるいは古くこびり付いた油を多孔質の吸収材であらかた除去する。次いで、其処へ微生物の活性剤を含む溶液に浮遊させた油分解微生物を噴霧する。噴霧後は飛散してくる油は床面などに定着している微生物により順次分解される。この2段階の清掃作業で床面に飛散した油の清掃は著しく軽減され、産業廃棄物の排出も抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械工場や調理場等の油がミスト状に成り飛散して床面等に付着した所から洗剤や溶剤を使用して油を除去もしくは回収するのではなく油を分解する微生物と分解に必要な補助栄養剤溶液を油上に撒布することで油を分解除去する簡易な清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械工場の中では旋盤、プレスなどの多くの工程の中で油が使用されており、その際油がミスト状になって広範囲に飛散する。厨房においても油を使用した加熱調理では油がミスト状になって工場と同様に広範囲に飛散する。このような飛散した油は洗剤液で除去し排水系統に油を移行させるか、おがくず、砂、珪藻土末、ウエスなどで吸収除去する方法が取られていた。
【0003】
しかし、排水系統に移行させた油は消滅しているわけではなく油を分解するためには微生物を用いて曝気設備存在か処理槽で分解するとか、油を吸着したおがくずやウエスは焼却処分をするなどの方法が取られ、焼却処分が出来ない物に対しては埋め立て処分をする等の方法が取られていた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−216353
【特許文献2】特開2002−66582
【特許文献3】特開平7−102298
【特許文献4】特開2005−066521
【特許文献5】特開2003−061643
【0005】
特許文献1にはそれ以前に出願されている排水中の油分を分解するための装置の改良型が提案されているが、微生物と油を接触させるためには基本的には通気により微生物による油の分解を行っている。
【0006】
特許文献2には油分を含む排水の微生物処理で、排水が通過可能な浮遊ろ材を通して通気しながら処理する物である。
【0007】
特許文献3には油汚染物の表面に界面活性剤生産能を有する微生物を撒布し、該微生物の生産する海面活性物質により汚染物表面に付着した汚染油を洗浄除去することを特徴とする洗浄方法が開示されている。
【0008】
特許文献4には珪藻土の様な多孔質物質に油が容易に吸収され、大きさの異なる珪藻土はより早く油を吸収することを開示している。
【0009】
特許文献5には多孔質の炭の表面では油は微生物により容易に分解され消失する事が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、床面などにミストとして飛散した油は界面活性物質を生産する微生物を含め、界面活性剤で洗浄し、排水系統に移行させて、排水処理設備内で曝気を行いながら分解するか、珪藻土、おがくずあるいはウエスなどに吸着させて除去し、吸着物は焼却もしくは埋め立てなどの処分する方法でエネルギーを使用するあるいは環境に負荷をかける方法で処理される点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、飛散した油を界面活性剤や溶剤で回収するのではなく、且つ油を吸着させて除去する物でもない。油分解能を有する微生物を分解に必要な補助栄養源と共に油に接触させ、大気との直接接触による表面からの酸素供給により、油を微生物により分解除去させる物である。
【発明の効果】
【0012】
油の飛散した床面等に水に溶解した補助栄養源に微生物を加えた物を噴霧もしくは撒布して分解する時間放置すればよい。この様な操作のみで油は炭酸ガスと水に分解される。従って、油で汚染された所を洗浄したり、ふき取ったりするような作業が要らず、清掃にかける労働時間を著しく短縮できる。その上、油を移動することなく分解できるので、二次的に発生する廃棄物の削減の及び環境汚染を著しく減少できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
油は大きくは動植物油と鉱物油とに区分できる。これは化学構造上の差が基本的にあるが、微生物も油分を分解する能力を持っていても必ずしも両方の油を共に分解するとは限らない。従って、ここで述べる微生物もしくは微生物製剤は単一菌により構成されていても複合菌で成り立ってみても何れでも良い。油を分解する微生物は沢山のものが知られており、好気性菌、嫌気性菌、通性嫌気性菌、カビ、酵母等がある。例えば、比較的多く見受けられるものとしてはAchromobacter,Arthrobacter,Acinetobacter,Corynebacterium,Micrococcus,Pseudomonas,Flabobacterium,Mycobacterium,Nocardia,Aeromonas,Bacillus,Moraxella,Alcaligenes,Actinomyces,Penicillium,Cunninghamella,Brevibacterium,Rhodococcus,Rhodotorula,Acremonium,Beauveria,Cladosporium等多くの属の微生物があり、沢山の成書(石油発酵、石油発酵研究会編、幸書房(1970年)、Petroleum Microbiology、J.B.Davis,Elsevier Publishing Company(1967)、Environmental Biotechnology:Principles and Applications,M.Moo−Young等編、Kluwer Academic Publishers(1996),Remediation of Petroleum Contaminated Soils,E.Riser−Roberts,Lewis Publishers(1998)を参考できる。
【0014】
油を分解するにあたり、微生物が必要とするものには窒素、リンのほかにNa,K,Mg,Ca,S,B,O,H,Fe,Co,Cu,Mo,Zn,Mn等の元素があり、これら全ての元素もしくは一部を与えると分解は促進される。これら無機塩の組成については沢山の文献が知られており、成書(石油発酵、石油発酵研究会編、幸書房(1970年)、Petroleum Microbiology、J.B.Davis,Elsevier Publishing Company(1967)、Environmental Biotechnology:Principles and Applications,M.Moo−Young等編、Kluwer Academic Publishers(1996),Remediation of Petroleum Contaminated Soils,E.Riser−Roberts,Lewis Publishers(1998)を参考にすることが出来る。さらには、微生物の活性は糖やアミノ酸及びペプチド、蛋白質等の有機物質でも行うことが出来る
【0015】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
油を吸収しないプラスチック面上に鉱物油として軽油及び潤滑油を薄く塗布し、栄養剤を含む水溶液に油分解複合微生物を加えた溶液を噴霧し油の除去率を調べた所表に示す結果を得た。栄養剤には無機塩の場合は硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、燐酸ニ水素カリウムを10:5:2の割合で窒素の最終濃度が50ppmとなるように調整した液と蛋白質の濃度が4000ppmとなる液及び無機塩及び蛋白質が夫々の濃度で加えられたよう液の3種で行った、微生物は最終濃度が1ml当たり5百万個に成るように調整した。
【表1】

油分濃度は25平方センチメートルに存在する油を10mlの溶液とした時濃度を示し、赤外分光器を用いて測定した数値で単位はppmである。
【実施例2】
【0017】
部品組立工場の工作油のこびり付いた床を特許公開2005−066521の珪藻土を用い余剰油を除去した後実施例1の結果に基づき無機塩・蛋白質溶液に油分解微生物を加えた溶液を撒布した。撒布後3日間はオイルミストの積層が観察されなかった。3日目に再度同溶液を撒布すると更に次ぎの3日間はオイルミストの積層は観察されなかった。3日目に再度無機塩・蛋白質溶液に油分解微生物を加えた溶液を撒布すると次の3日間は前回と同様にオイルミストの積層は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を薄く被覆している油を微生物が分解するに充分な無機塩もしくは有機化合物いずれかを含むあるいは両方を含む水溶液からなる補助栄養剤液に微生物を懸濁した液体を油上に撒布して油を除去する方法
【請求項2】
過剰の油やこびり付いた油が存在する場合は油吸収材で大方の油を除去し、其処へ前項微生物液を噴霧して油を除去する方法

【公開番号】特開2007−21467(P2007−21467A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234951(P2005−234951)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(501332688)株式会社 エー・イー・エル (6)
【Fターム(参考)】