説明

簡易型濾過器

【課題】フィルタ製袋体の前後の面に止着する支持体を前後方向に引き出す作業に伴わせて袋体の開口部を閉ざす封止を破って開放できるようにした簡易型濾過器を提供する。
【解決手段】袋体2の前後の面2a,2bに止着する支持体3,3の吊設片7若しくは係止片8の上端部7a,8aを前記袋体の前後の面2a,2bに剥離可能に接合6し、使用に際して上記支持体の係止片8を引き出す作業に伴わせて前記接合6する係止片8若しくは吊設片7の上端部7a,8aを介して前記袋体の前後の面2a,2bを引っ張り、これにより袋体の開口部5の封止を破り開口させると共に、更なる引き出しを通して前記接合部6を剥離して支持体3,3の吊設片7及び係止片8の引き伸ばし展開を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てに係る簡易型濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てに係る簡易型の濾過器については、レギュラーコーヒーを抽出する濾過器として広く一般に普及しており、様々な形態のものが提案され、実用化されている。
この使い捨ての簡易型濾過器(以下、単に「濾過器」という。)は、基本的な構造としてフィルタ製の袋、通常は不織布やプラスチック製乃至紙製のフィルタを素材にして形成する袋体と、この袋体をコーヒーカップ等の容器に装着して支持する厚紙等のシート状素材から成形される支持体から作られている。中でも最も簡略化した濾過器は、上記袋体の表面に厚紙から打ち抜き形成した支持体を直接止着して形成したものとなっている。
【0003】
この濾過器は、例えばコーヒー用の濾過器の場合、上記フィルタ製の袋体に予め所定量のコーヒー粉末(被抽出物)が封入され、使用する場合、先ず最初に袋体の上部を切り開いて開口させ、この状態で上記支持体を使ってコーヒーカップ等の容器の縁に掛け止めセットする。そうした後、前記開放した袋体の開口部から湯を注ぎ込んで袋の内部でコーヒー成分の抽出を行い、抽出したコーヒー液(抽出液)を袋体で濾過しながら容器に受け、飲料するものとなっている。
【0004】
この様な簡易型の濾過器の中で、最も簡略化したものの一つに袋体を前後向き合う2面から形成して偏平な袋に作り、この前後の面にそれぞれ支持体を止着して形成したものがある。
この偏平な袋体からなる濾過器の一つは、使用に際して先ずコーヒー粉末を封入した袋体の上端部、つまり前後の面の上部を千切り取って袋を開口させるもので、この開口作業の後に前後の面に止着する支持体を前後方向に引き伸ばしてその先端に設けるそれぞれの係止片をカップ容器の縁に掛け止め、セットするようにしたものである。例えば、特許文献1や2に記載される濾過器がその一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−230143号公報。
【特許文献2】特開2010−110335号公報。
【0006】
上記特許文献1に記載の濾過器は、使用に際して先ず袋本体2の上部を千切り取って開封し、開口部8を形成して次に袋本体2の前後の矩形面2a,2b(前後の面)に取付けた掛止部材3,3(支持体)の各係止片12,12を引き出し、この引き出しによって袋本体2の面部2a,2bに止着する貼着部11,11からアーム部5,5を引き起し、上記係止片12,12を前後方向に所定の長さに引き伸ばしてこれをカップ30の縁に掛け止めることによりセットするものにしてある。
【0007】
また、特許文献2に記載の濾過器は、前記特許文献1に記載の濾過器とその構造を略同様にするものであり、使用に際しては抽出用バッグ2(袋本体)の前後の面に止着する支持シート3(支持体)の先端部12(係止片)を引き出し、これに伴わせて上部境界線13,14を折り曲げて中間部8,9を逆V字型に引き伸ばし、この引き伸ばしによって上記先端部12をカップの縁に掛け止め、支持するようにしたものである。従って、この構造からこの濾過器は、支持シート3の引き伸ばしによって袋本体の開口部を広げ、この状態で支持して湯の注ぎ込みができるようにしたものとなっている。
【0008】
この2つの濾過器は、いずれも袋本体の前後の面に備える支持体(掛止部材、支持シート)をその先端に設ける係止片(先端部)を引き出し、これをカップの縁に掛け止めるようにしたものであり、またこの引き伸ばしによって袋本体の開放した開口部をそのまま開放した状態に維持するようにしたものであり、簡単な構造の中でカップ容器に対する安定的なセットを可能にし、コーヒーの抽出に当って便利に使用できるものになっている。
【0009】
しかしながら、上記既提案に係るそれぞれの濾過器は、上記した構造からこれを使用する使用者は、これを使用する際に支持体を引き伸ばす作業を通すことによって袋体が開封されるとの思い込みによって、或は先入観から袋体の開封作業は不要のものとの考えから直ちに支持体を引き伸ばしてそのままセット作業に入ってしまうことがあり、そのため袋体を開口させるために支持体を無理に引っ張って支持体そのものを千切る等して破損すると言った問題があった。
【0010】
勿論、開口部を開放した状態にして開封作業を要しない濾過器もあるが、多くの濾過器は袋本体にコーヒー等の被抽出物を予め投入し、これの零れ出しを防ぐ上から袋本体の開口部を封止しているのが普通であり、従って、この場合には使用に当って先ず開封作業から行わなくてはならないが、上述した様に使用者は開封作業をしないまま直に支持体を引き出し、セット作業に掛かる場合がある。このとき、当然のことながら袋本体は開口部がしっかり封止されて拡張しない状態にあるため、支持体だけが引き伸ばされることになり、この結果無理な力が厚紙等によって成形された支持体に作用して結果的に破損すると言った問題が発生したのである。
【0011】
言うまでもなく、上述した従来の支持体を引き出し、カップ容器の縁に掛け止めることによってセットできる構造の濾過器は、構造そのものが簡素であり、従って製造性にも優れ、また使用勝手の点からも便利なものではあるが、このタイプの濾過器において、更に上記支持体の引き出しに伴わせて封止される袋体の開口部が自動的に開封されれば、上記破損の問題も自動的に解消されることになり、使用者にとって更に便利なものとなる。
【0012】
ことに、支持体の引き出しによって袋体の胴部が拡張され、また開口部が広く開放されて注湯に便利になることに加えて、封止される袋体の開口部の開封作業が同時に可能となれば、支持体を引き伸ばすと言う一つの作業によって袋体の開封作業と、カップ容器に対する装着作業が同時に行えることになるので更に便利なものとなる。
【0013】
しかし、前記した如く各特許文献に記載の濾過器は、支持体の構造が、掛止部材3,3乃至支持シート3の係止片12、先端部12を引き出すと、これに伴ってアーム部5乃至中間部8,9の上端部が袋本体を残して浮き上るように延び出す構造になっているため、袋体の開口部を開封することはできないものとなっているのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明は上述した事情、問題点に鑑み、これを改善すべく開発されたものである。つまり本発明は、濾過器を使用する際にこれをカップ容器にセットするため袋体の前後の面に設ける支持体を前後方向(離反方向)へ引き出す操作を利用して袋体の上部に形成する開口部の封止を破り、これを開封することができるようにした簡易型濾過器を提案しようとするものである。
更に言えば、支持体の引き伸ばし作業によるカップ容器に対するセット作業を利用して袋体上部に設けられる開口部の開封作業を同時に行えるようにし、これによって従来別々にしていた2つの作業を単一化し、これにより使用の迅速化と、安全な取り扱いが行えるようにしたコーヒー等の簡易型濾過器を提供せんとするものである。
【0015】
前述した様に、袋体に直接支持体を止着し、使用時にこの支持体を引き出すことによってカップに対するセットを行うようにした特許文献1,2に記載の濾過器は、使用する際には支持体を引き出すことになっているが、この引き出しによって袋体の開口部を開放する構造にはなっていない。
つまり、従来の濾過器は、袋体の開口部の開放は、支持体を引き出すのとは別に予め開封作業をすることによって行っており、実際の支持体の引き出しは、開口部を開封した後に行うものにしている。従って、袋体の胴部を拡張すること、開封された開口部を拡張することは、上記支持体の引き出しの時点で可能になっているが、開口部の封止状態を破ってこれを開放し、広げることはできないのである。
【0016】
従来のこの種の濾過器は、前記特許文献にも説明されるように、指で袋体の一部を千切り取る等して開封する方法で行われており、支持体を引き出すことによって開封することにはなっていないのである。
つまり、これらについて前記特許文献1に記載の濾過器では、掛止部材3の掛止片12を引き出したとき、袋本体2の矩形面2a,2bの下部に貼り付く貼着部11を基点にしてアーム部5の上端を外に開いて上記掛止片12との間で逆V字状を作ることによって係止片12をカップの縁に掛け止められる構造になっているが、しかし、袋本体2に直接止着する上記アーム部5は、引き出される上端が袋本体から離れてしまうことから上記掛止片12をカップに掛け止めることはできても袋本体の上記矩形面2a,2bを引っ張ることはできず、従って、この構造では袋本体2の開口部8を強制的に開封することができないのである。
【0017】
また、特許文献2においてもこのことは同様である。これでは支持シート3の先端部12を引き出したとき、これに続く中間部8は袋本体(バッグ本体)に止着する逆T字形部分7の下端の下部境界線10,11を基点にして上端を外に開き、先端部12を引き出す構造になっている。従って、前記特許文献1の場合と同様に、先端部12の引き出しが開口部に直接的に作用することはなく、開口部を強制的に開封することはできないものとなっているのである。
【0018】
本発明は、この様な実情に鑑み、袋体の前後の面に一体に止着され、備え付けられる支持体を濾過器の使用に当ってカップ容器に対するセットに備えて前後に引き出すとき、この支持体の引き出しを利用して袋体の開口部を前後開封方向に引っ張り、これによって封止された開口部を強制的に、且つ自動的に開封することができるようにしたことにある。
つまり、本発明は、濾過器の使用に当たって支持体を前後方向へ引き出す操作に連動させて、袋体の前後の面を引き離し方向に引き出すことができるようにして、これによって支持体のセット作業に併せて袋体の開口部の開封作業が行えるようにした簡易型濾過器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記の目的を達成するため、フィルタ製の袋体の前後の面部に止着される支持体について、下端部を袋体に止着して上向きに設けられる吊設片と、この吊設片の上端部から下向きに延設される係止片から構成して、濾過器の使用に当って上記支持体を引き出すとき、この操作に伴って引き出される吊設片、若しくはこの吊設片の引き出しによって引き出される上記係止片のいずれか、若しくは双方の上端部を、前記袋体の前後の面に剥離可能な状態に接合し、これによって使用に際して上記係止片を引き出したとき、この引き出しによって前記袋体の前後の面を直接的に引き剥がし方向に引っ張り、これによって袋体の上部に形成する開口部を封止する接合部分を破って開封し、更にはこの開封と共に、更なる上記係止片の引っ張りを利用して前記吊設片若しくは係止片の上端部と袋体の前後の面との前記接合を剥離し、これによって上記吊設片の引き起こしを可能にし、上記係止片の引き伸ばしを自由にしてカップ容器に対する当該係止片の掛け止めを行えるようにした簡易型濾過器を提供するものである。
【0020】
更に詳述すれば、本発明は被抽出物を封入するフィルタ製の袋体と、該袋体の前後の面に止着される支持体からなり、前記支持体は下端部を前記袋体の前後の面に止着して上端部を引き起こせるようにした吊設片と、該吊設片の上端部から折り返し下向きに延設される係止片を備え、未使用時には上記両片を前記袋体の前後の面に添わせて偏平にたたみ、使用時には前記係止片の引き出しによって前記吊設片を引き起こし立体的に展開しながら伸長させて該係止片をカップ容器の縁に掛け止め前記袋体をカップ容器の開口部内に吊設状に支持するようにした簡易型濾過器において、
前記支持体は、前記吊設片の上端部及び或は係止片の上端部を前記袋体の上端部に近い前後の面に剥離可能に接合し、前記使用時における前記係止片の引き出しによる第1次的な引き出しによって前記袋体の前後の面を前後に引き離してその上端部に形成する開口部の封止状態を破りこれを開封せしめる一方、更なる引き出しによる第2次的な伸長操作によって前記吊設片及び或は係止片の上端部と前記袋体の前後の面との前記接合を剥離して前記吊設片の引き起こしにより前記係止片を前記カップ容器の縁に掛け止めるようにした簡易型濾過器を提供することにある(請求項1に記載の発明)。
【0021】
この発明は、濾過器の使用に当って袋体を支える支持体を引き出す作業を利用して予め封止される袋体の開口部を開封するものであり、支持体を使用のため引き伸ばすと言う一つの作業によって、つまり支持体によるカップ容器に対するセット作業を通して予め封止されている袋体の開口部の開放を同時に行うようにしたものである。
【0022】
更に言えば、本発明は支持体の引き起こされる吊設片の上端部、若しくはこの吊設片の上端部に連設される係止片の上端部を、袋体の上端部に近い前後の面に剥離可能な状態に接合して、これにより係止片が引き出されたとき、この引き出しに伴わせて袋体の前後の面を前後方向に引っ張り、この引っ張りの力を袋体の前後の面を貼り合わせる等して封止した袋体の開口部に作用させ、その引き剥がしに働くようにして開口部の上記封止状態を破って開封し、開口させるようにしたのである(第1次的引き出し)。
【0023】
そして本発明では、上記袋体の開口部の開封のため作用した係止片の引き出しが更に続けられることによって、その力がこの係止片若しくは吊設片の上端部と袋体の前後の面とを接合する接合部に作用するようにして、この力が接合部の接合力を超えた時点で接合を剥がし、上記両片の上端部を自由にして吊設片の上端部の引き起こしと共に、係止片の引き出しを自由にして支持体を所定の長さに伸長させ、この係止片をカップ容器の縁に係合できるようにして掛け止めセットができるようにしたのである(第2次的引き出し)。
【0024】
前記袋体については、前後の2面を向き合わせた偏平な袋状に形成し、前後の面が寄り合う上縁部を接合して予め封止した開口部を形成し、内部に濾過する所定量の被抽出物、例えばコーヒー粉末等を封入することになる。
上記開口部の封止については、封入されるコーヒー粉末等の軽量な被抽出物の零れ出しを防止できる程度の封止状態であれば足りること、また同時に、この封止は使用時の引き裂きを容易にする上から、小さな引張りによって開封できる脆弱な封止状態であれば足りる。従って、例えば接着剤や加熱接着乃至高周波溶着によって前後の面を接合し封止する場合は、前後の面を引き剥がし方向に引っ張ったとき、簡単に或は容易に剥離する程度の接合であればよい。
【0025】
尚、この袋体の開口部の封止については、後述する様に、袋体と支持体の吊設片乃至係止片の上端部との接合状態と密接な関係があるもので、この両者の間では上記開口部の封止はこれら支持体の片と袋体の前後の面との接合より小さな接合力で封止されることが前提となる。
【0026】
一方、上記袋体の前後の面に止着される支持体は、袋体の前後の面に対称状に止着される。この支持体は、厚紙(尚、本発明では「厚紙」と記すが、これについては紙質のものに限らず、広く所要の剛性を有した厚紙状のシート状物を含むものとする。)を素材にして偏平な状態に形成することになる。実際にはシーとを打ち抜き等の方法によって切り出し形成することになり、前記吊設片と係止片は一枚の厚紙等のシートから連続した状態で切り出し形成されることになる。
【0027】
尚、上記係止片については、吊設片の上端部の左右から折り返すように2片を並行させて下向きに延設し、更にこの2片の下端同士を前記吊設片の下側で連続させて全体をU字型に形成して係止片の強度を高め、併せて上記連続部分を摘み片として支持体の引き出し操作時に利用する。
【0028】
この支持体は、吊設片の下端部を袋体の前後の面の中間部に接着して止め付け、この吊設片の上端部が袋体の開口部に近い位置に臨むように上向きに取り付け、またこの片の上端部から折り返すように下向きに延設される係止片の上端部が袋体の上端部に揃って臨むようにされる。
上記係止片は、支持体をカップ容器の縁に掛け止めるためのものであり、吊設片はこの係止片と袋体との間を繋いで袋体をカップ容器の開口部の内側に吊り下げ状に支持するものである。この両片は使用されるまでは厚紙から切り抜いたままの偏平な状態にして袋体の前後の面に寄り添わせることになる。
【0029】
この様にしてなる上記支持体は、前記吊設片の下端部を袋体に止着する際、併せて上記吊設片の上端部、若しくはこれに接続する上記係止片の上端部のいずれかを、若しくは双方をこの袋体の前後の面に剥離可能な状態に止着し結合させ、この接合によって上記吊設片が係止片の引き出しによって引き出されるとき、その上端部が直ちに袋体の前後の面から離れないようにしてあり、これにより吊設片は一時的に引き起こしが阻止されるものにしてある。
【0030】
上記袋体と支持体との接合は、使用時における係止片の引き出しに際して、最終的には引き剥がされ、係止片の上端部が袋体の表面から離れて所定の長さに伸長することになるが、前記袋体の開口部の封止が破られて開封されるまでは、この接合状態は維持されることになる。
そのため、係止片は最初の引き出し時には、前記接合によって袋体に止め付けられる上端部を基点にして、下端部を引き起こし、片の長さ分だけ袋体の表面から延び出すことになる。そして、この状態において当該係止片が更に引き出され、これによって開口部の封止が破られたとき、例えば前後の面同士の接合が剥がれたとき、開封され開口部を開放することになる(第1次的な引き出し)。
【0031】
次に、この開口部の開放後、更に係止片が引き出されると、この開口部の開口幅が最大となり限界に達して前後の面が緊張したとき、この引き出しの力が前記袋体との接合部に集中することになることからこれを契機にして接合部が剥離し、これに伴って支持体は上記接合の拘束から解かれて所定の長さに伸長することになる(第2次的な引き出し)。 従って、この伸長によって吊設片に接続する係止片は、カップ容器の縁まで引き出され、掛け止められることになる。
【0032】
従って、本発明によれば、濾過器の使用に当ってコーヒーカップ等の容器に対してセットする場合に、被抽出物を封入した袋体の前後の面に折り畳んだ支持体の上記係止片の先端部分を、つまり下端部分を摘んで引き出すと、係止片は袋体の前後の面に接合した上端部を基点にして起き上がり、続けて引き出されると、袋体の前後の面を前後に引き離し、更にこの引き離しが行われると、袋体は前記開口部の封止が破られ開封することになる。
【0033】
そして更に、上記開封に続けて係止片が引き出されると、前記した様に例えば開口部の開口幅が最大になることを限界にして、開口部が緊張し、これを契機に引き出しの力が袋体の前後の面との接合部分に集中することになる結果、剥離が誘導されて支持体の折り畳み状態の拘束から解放され、これにより、係止片の引き出しと共に吊設片の上端部が起き上がって支持体の全体が伸長して、係止片のカップ容器への掛け止めによるセットができることになるのである。
【0034】
この様なことから、本発明においては、袋体の封止された開口部を予め開封して置かなくとも、セットのため袋体の前後の支持体を前後方向に引き出す操作によって、上記開口部を開口させることができ、これに併せて、同時に支持体を引き伸ばしてカップ容器に対する装着をそのまま行うことができることから、単独の支持体の引き出し作業によって袋体の開口作業とカップ容器に対するセット作業が同時に行うことができるのである。
【0035】
上記の如く構成される発明において、更に本発明は、前記袋体は前後の面の上縁部同士を接合して開口部を封止し、その一方前記支持体は、前記吊設片の上端部を上記前後の面の上縁部に臨ませ、該上端部若しくは前記係止片の上端部と前記袋体の前後の面とを前記開口部を封止する接合部の近傍において剥離可能に接合することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項2に記載の発明)。
【0036】
この発明は、袋体の上端部に形成される開口部を封止するにおいて、袋体を形成する前後の面の上縁部同士の接合によって行う一方、この接合部に近接したところで支持体の吊設片乃至係止片の上端部を接合することによりこの両接合部分を接近させるものであり、これによって係止片の引き出しによる引張り力を袋体の開口部の封止部分に直接的に作用させられるようにして、この封止を効果的に破ることができるものとなる。
【0037】
また本発明は、上記記載の簡易型濾過器において、前記支持体は前記吊設片の上端部を前記袋体の前後の面の上縁部に臨ませると共に、該吊設片の上端部若しくは該上端部から延設する係止片の上端部と前記袋体の前後の面とを剥離可能に接合する一方、前記袋体はその前後の面を上記支持体の接合位置に対応した位置で剥離可能に接合して袋体の開口部を封止することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項3に記載の発明)。
【0038】
この発明は、支持体の吊設片乃至係止片の上端部を袋体の前後の面の上縁部に臨ませ、且つこれらをこの上縁部において接合すると共に、袋体の開口部の封止をこの接合部に合せて接合することによって、支持体の係止片の引き出しによる力を効果的に開口部の封止部分に導入し、これの引き裂きを容易にし、支持体の接合部の剥離に先立ってより確実に開封できるようにしたものである。これにより、引き出し時における支持体の負担を軽減することができる。
【0039】
また本発明は、上記記載の簡易型濾過器において、前記袋体は上端部に形成する開口部を前後の面の上縁部に沿って線状に接合することにより封止することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項4に記載の発明)。
【0040】
この発明は、袋体の前後の面を脆弱な状態に接合して開口部の封止を簡略な状態で実現したものである。これによれば、係止片の引っ張りを受けて容易に封止状態を解放することができる。
尚、この場合の上記線状の接合は、前後の面の上縁部に沿って連続したものであっても、また破線状に不連続なものにしてもよい。つまり、ここにおける封止は袋体に封入する被抽出物の零れ出しを防止できる程度の阻止力があれば充分であり、特に強固な封止状態は望まれない。
【0041】
また、本発明は上記記載の簡易型濾過器において、前記袋体の開口部を封止する前後の面の接合面積に対して該袋体の前後の面に接合される前記支持体の吊設片若しくは係止片の上端部との接合面積を大にして両接合部の接合強度に差を設け、第1次的な引き出しにより前記開口部を開封し、第2次的な伸長操作によって前記前後の面に対する吊設片の上端部若しくは係止片の上端部との接合が剥離するようにしたことを特徴とする簡易型濾過器を提供することにある(請求項5に記載の発明)。
【0042】
この発明は、袋体の封止部分と袋体の前後の面に接合する支持体の吊設片乃至係止片の上端部の接合部分との接合の強さをそれぞれの接合範囲に差を設けることによって確実に順番を守って剥離し、開口部の開封の後に支持体の引き伸ばしが実行されるようにしたものである。尚、この場合、接合部は1点における接合に限るものではなく、複数点に分散して接合する場合を含むものであり、それぞれは集合した面積全体同士の比較の中で決められることになる。
【0043】
また、本発明は上記記載の簡易型濾過器において、前記袋体は前後の面の上縁部を接合して封止すると共に、該封止した上縁部に沿って前後の面を上下に切断する切り分け部を形成し、前記係止片の第1次的な引き出し操作によって前記切り分け部を破り袋体の開口部を開放することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項6に記載の発明)。
【0044】
この発明は、袋体の開口部の封止状態を切り分け部の切断によって開封するようにしたものである。袋体の開口部を前後の面の接合によって封止する一方、この封止部分を避けて前後の面の上部に面を上下に切り分ける切り分け部、例えばミシン線等の切り目線を形成して、支持体の引き出し操作によってこの切り目線を引き破り、袋体の上部を開放して開口部を開口するようにしたものである。
上記切り分け部は、ミシン線として形成することができるが、この場合において、開封を容易にするために切れ目の接続部分を狭くして係止片の引っ張り力が作用したとき容易に破断し、簡単に開口できるようにするとよい。
【0045】
また、本発明は、上記記載の簡易型濾過器において、前記袋体は、フィルタ素材の表面側を強接着性に、裏面側を弱接着性とする少なくとも2層構造のフィルタ素材によって形成し、該袋体の開口部を上記弱接着性の裏面側同士による接合とし、また前後の面に対する前記支持体の吊設片若しくは係止片の上端部との接合は前記表面側の強接着性による接合にして両接合部における接合強度に差を設けたことを特徴とする簡易型濾過器を提供することにある(請求項7に記載の発明)。
【0046】
この発明は、袋体の素材として例えば合成樹脂製の二層構造のフィルタを使用するもので、袋体の裏面側(内面側)に弱接着性のフィルタ層を置いてその開口部において弱接着性の層同士の接合とし、表面側においては強接着性の層と支持体の吊設片乃至係止片の上端部との接合にして、この両者間の接合の強度に差を設けるようにしたものであり、ここでは、このフィルタの素材の選択によって両接合部の接着強度の設定を図り、引っ張りによる剥離の順番を確実に、しかも容易に設定することができるものとなっている。
【発明の効果】
【0047】
本発明濾過器は、上述の如く構成されるものであって、支持体の係止片の引き出しにより封止した袋体の開口部を開封し、更なる引き出しによって支持体の係止片と共に吊設片の引き起こしを通して支持体全体の引き伸ばしを図ることができるものであり、これによって、袋体の開封とこの袋体をカップ容器に掛け止めセットする作業が同時に行えることになり、従って、従来の濾過器において求められた袋体の開口部の開封作業を省略することができ、その使用が更に便利なものとなる。
【0048】
そして又、本発明濾過器は、上述の如く支持体の引き出しに伴って袋体の開口部が連動して開封する構造に係ることから、前記従来の濾過器のように開封されない状態で無理に支持体が引き出されることがなくなるので、支持体が切断されるような損傷を受けることがなく、従って安全に、しかも使用不能になる等の問題もなく無駄なく使用できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る簡易型濾過器の正面図である。
【図2】本発明に係る簡易型濾過器の斜視図である。
【図3】使用に備えて支持体を引き伸ばし、同時に袋体の開口部の封止を破って開放した状態を示した斜視図である。
【図4】濾過器の未使用状態における袋体と支持体の関係を説明する要部の拡大中央縦断側面図である。
【図5】支持体の係止片を引き出すことによって袋体の前後の面が前後方向に離反する状態を説明する要部の拡大中央縦断側面図である。
【図6】支持体の係止片の引き出しによって袋体の前後の面が引っ張りを受けて開口部を封止する接合部が剥離し、開封した状態を説明する要部の拡大中央縦断側面図である。
【図7】支持体の係止片の更なる引き出しによって係止片並びに吊設片の上端部と袋体の前後の面との接合部が剥離して吊設片が起き上り、更に伸張するのに伴い引き伸ばされた係止片が掛け止め可能となった状態を示す要部の拡大中央縦断側面図である。
【図8】簡易型濾過器をカップ容器に掛止めた使用状態を説明する斜視図である。
【図9】袋体の上縁部に形成する開口部の他の実施形態を示す要部の正面図である。
【図10】袋体を二層構造のフィルタを素材にして形成した要部の拡大縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図面の図1〜図8は、本発明に係る簡易型濾過器をコーヒーの濾過器として実施した一実施形態を示したものである。以下、この図面に基づき本発明を説明し、その特徴とするところを明らかにする。
図面において、符号1は本発明に係るコーヒーの濾過器である。2はこのコーヒーの濾過器1の袋体、3は使用に際して袋体2をコーヒーカップである容器4の縁に掛け止め支持する支持体である。
【0051】
袋体2は、ここでは合成樹脂製の不織布からなるフィルタを素材にしてやや縦長の長方形状をなす偏平な袋状に形成してある。そして、この袋体の上縁部には予め閉ざされる開口部5が形成される(尚、図1,2において開口部5は未開封状態にあるので図示されない。)。
【0052】
この袋体2について更に説明すると、成形時には上記開口部5となる上縁部分を開放した状態で成形し、この開放部分を通して予め所定量の被抽出物、ここではコーヒー粉末を投入し、その後袋体2の前後の面2a,2bの上縁部同士を接合して封止するもので、これによって開口部5は封止された状態に置かれる。尚、上記封止は、前後の面2a,2bの上縁部同士を寄り合わせ、その縁部に沿って線状に接合6することによって行っている。この接合部6によって開口部5を封止すると共に、この線状の接合によって前後の面2a,2bが引き離し方向に引かれたとき、簡単に剥離し上記開口部5が開放するようにしてある。
【0053】
一方、前記支持体3は、所要剛性を有したやゝ厚手の板紙を素材にしてこれを切抜くことによって形成してあ、ここでは、図1に示したように略方形の板厚紙を切抜くことによって一体的に形成している。この支持体3は、吊設片7を中央に置いてこの吊設片7を囲むように係止片8を設けるようにしてあり、この両片を一体に連続した状態に形成してある。
【0054】
上記吊設片7は、縦長にしてやや幅広の帯状に形成して、その上端部7aの左右側部から下向きに折返すように左右並行するように係止片8,8を延設し、更にここではこの係止片8,8の下端部を繋いでU字型に形成し、その連結部分に摘み片9を設けるようにしている。
そして、上記吊設片7は、その下端部7bの左右側部から止着状態を安定化させる固定補助片10,10を上向きに延設して係止片8,8との間に設け、更に上端部7aに近い両側部分に左右の挟持片11,11を延設している。
【0055】
吊設片7を中心としたこれら固定補助片10、挟持片11は、図示するように前記U字型に形成される係止片8の内側に納められた形態で形成されるが、更にここでは上記係止片8を取り囲む形で補強片12を同じ厚紙から切り出し形成している。
【0056】
上記補強片12は、吊設片7の上端部7aと係止片8の上端部8aの各上部に添う上片部分12aと、この上片部分の両端から垂下し、係止片8,8の側部に添う側片部分12b,12bを有し、門形に形成してあり、それぞれの部分は本発明の濾過器の使用において袋体2が拡張されたとき前後の面2a,2bの立ち上がり状態を支えるものとなる。
【0057】
この厚紙から切り出すことにより形成される支持体3,3は、袋体2の前後の面2a,2bに対して接面した状態で取付けられる。
この取付において、前記吊設片7は下端部7bを袋体2の面2a(又は2b)に直接接着して固定し、更にこの例では固定補助片10,10を接着固定してこの吊設片7の固定を補強しており、この固定部分を基点にして上端部7aを引き起こせるようにしてある。そして、この吊設片7の固定を通してその上端部7aから一体に連設される係止片8,8を支持するようにしてある。尚、図1において、破線(イ)は上記固定のための接着範囲の境界を示したものである。
【0058】
そして、この取付において、上記吊設片7は前後の面2a,2bに対してその中央部に位置させ、その上端部7aが袋体2の上縁部に近接した位置に臨むようにし、この上端部7aを前後の面2a,2bに対して剥離可能な状態に接着する。更にここでは、この接着に合せてその側部から延設する係止片8,8の上端部8a,8aを同様にして剥離可能に接着し、ここに接合部13,14を形成するようにしている。
【0059】
補強片12は、上片部分12aを袋体の前後の面2a,2bの上縁部と吊設片7の上端部7aとの間に残される狭い範囲に添わせ、ここに補強片12の全体を貼り付け、一体に固定して使用に際してフィルタで作られる袋体2の腰折れを防止するようにしている。
【0060】
尚、この実施形態では、上記補強片12を支持体3に添わせて袋体2の前後の面2a,2bを補強するが、この補強片12を省略することもある。この場合には、支持体2の上端部、つまり吊設片7、係止片8のそれぞれの上端部7a,8aを直接袋体2の上縁部に沿った位置に臨ませ、前記接合部13,14をこの袋体2の上縁部、つまり開口部5が設けられる位置に近接させて設けることになる。
この近接は、後述するように係止片8を引き出したとき、この引き出しの力を上記上端部7a,8aの接合部13,14を介して直接的に接合部6に伝達し易くするためで、開口部5の開封に有効となる。
【0061】
ところで、上記接合部13,14は、支持体3を引き出すとき、係止片8の引き出しに伴わせて袋体2の前後の面2a,2bを引き離すために接合させるものである。そして、この引き離しによって前記袋体2の上縁部の接合部6が破られたとき、つまりこの接合による封止状態が破れ開口部5が開封されたときには、係止片7の更なる引き出しによってこれらの接合部は剥離され、袋体から係止片8及び吊設片7は離れることになる。
そのため、この接合部13,14は、開口部5を封止する接合部6より強固に接合し、上記係止片7による引っ張りにおいて接合部6の剥離より後から剥離するように相互間における接合強度に差が設けられる。
【0062】
上記接合の関係について更に説明すると、この実施形態においては、図1に示したように上記接合部13,14を共に楕円形状に形成し、所定の接合面積を確保して前記線状に接合する接合部6より実質的に強固な接合が得られるようにしてある。これによって、上記係止片8の引っ張りの際には剥離が接合部6から始り、開口部5の開封が接合部13,14の剥離より先になるようにしてある。
【0063】
尚、ここでは袋体2と支持体3の関係において前記吊設片7と係止片8の各上端部7a,8aをそれぞれ接合部13,14を以て接合しているが、接合力の調整によってはいずれか一方であってもよい。例えば、直接的に引っ張り出す係止片8,8の上端部8a,8aのみを接合して接合部14,14を設ける場合や、或は吊設片7の上端部7aを接合して接合部13のみとする場合がある。
【0064】
この様にしてなる本発明の濾過器は、同種の濾過器と同様に、袋体2に予め被抽出物、ここてはコーヒー粉末を投入して開口部5を閉じ、この状態でアルミ製の包装袋等に収納して保管乃至運搬に供される。そして、使用する場合には、包装袋から取り出した後、袋体2の前後の面2a,2bに設ける支持体3,3を引き出し、コップ容器4に対するセット作業に掛かることになる。
この場合、前記従来の濾過器にあっては支持体の引き出しの前に、先ず袋体の開口部を開封する作業をし、その後セットのため支持体を引き伸ばす作業に入ることになるが、本発明の濾過器1にあっては、包装袋から取り出した後、そのまま前後の支持体3,3を引き出す作業から開始することになる。
【0065】
図4〜図7の各図は、この使用時における作業の進行と、袋体2の開口部5の開封、及び支持体3,3の引き出しによる伸長状態を要部の拡大縦断側面図を以て説明したものであり、次に、実際の使用時の取扱いをこれらの図面に従って説明することにする。
【0066】
図4は、未使用状態にある本発明の濾過器1を示している。この時点において袋体2は前後の面2a,2bの上縁部同士を接面させ、この縁部に沿って線状に接合部6を形成し、この上縁部間に形成される開口部5を封止している。このとき、袋体2の内部には所定量のコーヒー粉末が封入され、前後の支持体3,3は厚紙から切り出した偏平な状態にあって袋体2の両面に寄り添った状態にある。
【0067】
次に、図5は、上記支持体3の係止片8の自由端となっている下端部8a、ここでは下端部8a,8a同士を繋ぐ摘み片9を前後方向に引き出し、支持体3,3の伸長作業に入ったところを示している。
この引き出しにおいて、係止片8は接合部14,14を以て袋体の前後の面2a,2bに接合されていることから、この接合部分を基点に前後の面4a,2bを引っ張って袋体の胴部を拡張することになる。このとき、前記接合部6にはこの引張り力が作用して緊張した状態が作られが、吊設片7は図示するように接合部14及び接合部13が接合状態にあることから袋体2の面2a,2bの表面に寄り添ったままにある。
【0068】
図6は、上記引き出した係止片8の摘み片9を更に引き出して開口部5の接合部6を破り、開封させた状態を示す。
この開封によって開口部5は前後に大きく開き、同時に袋体2の胴部を更に拡張させることになる。この開封に当って前記接合部14はまだ接着状態を剥離せず、従って係止片8は上端部8aを面2a,2bに固定し、吊設片7はこの面に寄り添った状態にある。
【0069】
次に、図7は、上記係止片8の引き出しが更に続けられる結果、上記開口部5の最大幅の開放状態を限界にしてこの開口部5の周縁が緊張するのを契機に、係止片8の接合部14、そして吊設片7の接合部13が袋体2の面2a,2bから剥離し、吊設片7の上端部7aが引き起され、係止片8と共に伸長した状態を示している。
引き出された上記係止片8は、前述したように吊設片7の上端部7aから折り返すように延設したものであるから、接合部14,13を剥離した後に引き出しを緩めると、この図に示したように上端部8aを上にして垂直状に下がってカップ容器4の縁に掛け止めが可能になる。
尚、図面において符号6a及び13a,14aはそれぞれ接合部の跡を示したものである。6aについては線状を誇張して示している。
【0070】
ここで、上記開口部5が開放された後、更に係止片8が引き出されてその上端部8aが接合部14を介して袋体の上縁部分に引き離し方向の力が作用したとき、この力はこの実施態様では、上記上縁部分に沿って止着した前記補強片12の上片部分12aに伝達されることになり、これによって上片部分12aの全体に分散して開口部5の中央部分の一定の範囲に亘って開封が開始されることになる。そして同時に、上片部分12aが横幅を確保することから開口部5の前後の開口幅が制約されることになり、支持体3の必要以上の伸張が抑えられることになる。
【0071】
図3は、上記の操作を通して濾過器1をカップ容器4に対してセット可能な状態に展開した姿を示している。この状態では、袋体2は胴部の拡張と共に、補強片12の上片部分12aに形成する折り曲げ腺15,15で折り曲げ、偏平な前後の面2a,2bをこの上片部分12aで断面コの字形にして袋体2の胴部を矩形の筒型にすることになる。そして、この折れ曲がりによって側片部分12b,12bを胴部の拡張した側面に添わせ、胴部の拡張状態を支えることになる。
【0072】
従って、本発明の濾過器によれば、その使用において前後の支持体3の係止片8を引き出すと、この引き伸ばしを通して袋体2の開口部5の開放が同時に行われることになり、より簡単に取り扱うことができ、またカップ容器に対しての迅速なセットが可能となる。
そして更に、支持体3の引き出しによって最初に袋体の開口部5が開放することから無理に支持体を引っ張ることが避けられ、従って引き千切られるようなことが未然に防止されることになる。
【0073】
この支持体の引き出しによってカップに対するセットを行うタイプの濾過器は、前述したように、使用者において、支持体の引き出しによって全てのセット作業ができるものとの思い込みから、開口部を開放するため強く引き出し、これによって支持体を無理に強く引き出してこれを切断したり、袋体を破ったりすることがあったが、本発明の濾過器は支持体の引き出しによって開口部が開放されることから、更に強く引き出すようなことがなく、従ってこの様なことを原因にして損傷することがなく、未然に防止することができるものとなる。
【0074】
次に、図9は、袋体2の上部に形成する開口部5の他の実施形態を示す要部の正面図である。
ここに示す濾過器1は、フィルタ製の袋体2を前記同様に前後の面2a,2bによって縦長の袋に形成しすると共に、上記2面の左右並びに下縁部を閉じて袋に形成し、その内部に被抽出物を投入した後、上縁部相互を貼り合せて封止するものであり、その一方、この閉じた上縁部に沿って全幅に亘りミシン線からなる切り分け部16を形成して開封時にこの切り分け部16を破断し、開口部5を開放するようにした場合である。
【0075】
この例は、開口部5の封止を接合部6によって行う前記の実施態様に対して、この接合部6を切り分け部16に代えたものである。従って、支持体3を引き伸ばしたとき第1次的にこの切り分け部16が前後の面2a,2bの緊張によって引き裂かれ、開口部5が開放することになる。このため上記切り分け部16は切り込みの部分を大きくして接続部分が係止片8の引っ張りによって容易に切断されるようにしてある。
尚、上記きり分け部16は、前後の面2a,2bの両方に形成しても、また一方であっても良い。
【0076】
また、図10は、袋体2を形成する素材のフィルタにつき、外面側と内面側の接着強度が異なる二層構造の合成樹脂製フィルタを素材にしてこの接着強度の違いによって前記開口部5を閉じる接合部6と、支持体3の吊設片7、係止片8の各上端部7a,8aと袋体2の接合部13,14との接合力に差を設けた例であり、これによって係止片8の引き伸ばし時に両者の剥離に時間差を設け、第1次的に開口部5の接合部6が剥離し、第2次的に支持体3と袋体2の接合部13,14が剥離するようにしたものである。
【0077】
ここでは、前記袋体2を形成するフィルタの素材としてヒートシールが可能な合成樹脂製フィルタFにすると共に、フィルタの外面側F1が強接着性に、また内面側F2が弱接着性になる二層構造のフィルタを選択して高周波等による接合手段を用いての接着に当って、開口部5の接合について弱接着性の内面側F2,F2同士の接合にして、これにより剥離性をよくし、開口部5の開封を容易にする一方、強接着性の外面側F1と支持体の吊設片7及び係止片8の上端部7a,8aとを接合して開口部5の開口後に剥離するようにしてある。
【0078】
この二層構造のフィルタFについては、素材の選択は自由であり特定されるものではないが、例えば、外面側F1になる強接着性のフィルタ層としてポリプロピレン層を、そして内面側F2の弱接着性のフィルタ層としてポリエステル層を配置してこの両層を一体にする二層構造のフィルタとすることができる。
【0079】
以上実施の形態に基づき本発明濾過器を説明したが、開口部5を封止する接合部6については、袋体の上縁部に沿って線状に接合する場合の他、破線状に接合するものであってもよい。要するに、ここでは開口部5を閉じて封入する被抽出物の零れ出しが防げることと、開封時には小さな引っ張り力で破られるものであればよく、この様な範囲で自由に選択することができる。
【0080】
また、この接合部6に対して吊設片7及び係止片8の上端部7a,8aと袋体2との接合部13,14は、係止片8の引き出しに際してこの両接合部に対して直接的に引き出しの力が作用する様に、できるだけ近接して設けられることが望ましく、従って好ましくは接合部6と接合部13,14とが袋体2のフィルタを挟んで内外一致する位置に設けるようにするとよい。
【0081】
以上、本発明の濾過器をコーヒーの濾過器について説明したが、この濾過器は被抽出物としてコーヒーが選択される他、紅茶や緑茶などの茶葉や、だし等の濾過器としても利用することができることは言うまでもなく、これらは本発明の実施の対象である。
【符号の説明】
【0082】
1 本発明に係る簡易型濾過器
2 袋体
2a,2b 袋体を形成する前後の面
3 支持体
4 容器となるコーヒーカップ
5 袋体の上部に形成される開口部
6 袋体の開口部を封止する接合部
7 支持体の吊設片
7a 吊設片の上端部
7b 吊設片の下端部
8 支持体の係止片
8a 係止片の上端部
8b 係止片の下端部
9 摘み片
10 固定補助片
12 補強片
12a 補強片の上片部分
12b 補強片の側片部分
13 吊設片の上端部と袋体の前後の面との接合部
14 係止片の上端部と袋体の前後の面との接合部
15 補強片の折れ曲げ線
16 切り分け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被抽出物を封入するフィルタ製の袋体と、該袋体の前後の面に止着される支持体からなり、前記支持体は下端部を前記袋体の前後の面に止着して上端部を引き起こせるようにした吊設片と、該吊設片の上端部から折り返し下向きに延設される係止片を備え、未使用時には上記両片を前記袋体の前後の面に添わせて偏平にたたみ、使用時には前記係止片の引き出しによって前記吊設片を引き起こし立体的に展開しながら伸長させて該係止片をカップ容器の縁に掛け止め前記袋体をカップ容器の開口部内に吊設状に支持するようにした簡易型濾過器において、
前記支持体は、前記吊設片の上端部及び或は係止片の上端部を前記袋体の上端部に近い前後の面に剥離可能に接合し、前記使用時における前記係止片の引き出しによる第1次的な引き出しによって前記袋体の前後の面を前後に引き離してその上端部に形成する開口部の封止状態を破りこれを開封せしめる一方、更なる引き出しによる第2次的な伸長操作によって前記吊設片及び或は係止片の上端部と前記袋体の前後の面との前記接合を剥離して前記吊設片の引き起こしにより前記係止片を前記カップ容器の縁に掛け止めるようにしたことを特徴とする簡易型濾過器。
【請求項2】
請求項1に記載の簡易型濾過器において、前記袋体は、前後の面の上縁部同士を接合して開口部を封止し、その一方前記支持体は、前記吊設片の上端部を上記前後の面の上縁部に臨ませ、該上端部若しくは前記係止片の上端部と前記袋体の前後の面とを前記開口部を封止する接合部の近傍において剥離可能に接合することを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項3】
請求項1に記載の簡易型濾過器において、前記支持体は、前記吊設片の上端部を前記袋体の前後の面の上縁部に臨ませると共に、該吊設片の上端部若しくは該上端部から延設する係止片の上端部と前記袋体の前後の面とを剥離可能に接合する一方、前記袋体はその前後の面を上記支持体の接合位置に対応した位置で剥離可能に接合して袋体の開口部を封止することを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の簡易型濾過器において、前記袋体は上端部に形成する開口部を前後の面の上縁部に沿って線状に接合することにより封止することを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項5】
請求項1乃至3に記載の簡易型濾過器において、前記袋体の開口部を封止する前後の面の接合面積に対して該袋体の前後の面に接合される前記支持体の吊設片若しくは係止片の上端部との接合面積を大にして両接合部の接合強度に差を設け、第1次的な引き出しにより前記開口部を開封し、第2次的な伸長操作によって前記前後の面に対する吊設片の上端部若しくは係止片の上端部との接合が剥離するようにしたことを特徴とする簡易型濾過器。
【請求項6】
請求項1に記載の簡易型濾過器において、前記袋体は前後の面の上縁部を接合して封止すると共に、該封止した上縁部に沿って前後の面を上下に切断する切り分け部を形成し、前記係止片の第1次的な引き出し操作によって前記切り分け部を破り袋体の開口部を開放することを特徴とした簡易型濾過器。
【請求項7】
請求項1に記載の簡易型濾過器において、前記袋体は、フィルタ素材の表面側を強接着性に、裏面側を弱接着性とする少なくとも2層構造のフィルタ素材によって形成し、該袋体の開口部を上記弱接着性の裏面側同士による接合とし、また前後の面に対する前記支持体の吊設片若しくは係止片の上端部との接合は前記表面側の強接着性による接合にして両接合部における接合強度に差を設けたことを特徴とする簡易型濾過器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−231973(P2012−231973A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102722(P2011−102722)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(591253401)片岡物産株式会社 (18)
【Fターム(参考)】