説明

簡易核酸増幅装置及び簡易核酸増幅装置の使用方法

本発明は、関心のある液体生体試料中に存在する少なくとも1つのターゲット核酸を増幅する使い捨て装置(100)であって、固体ボディ(2)、ならびに汲み上げ及び/又は排出することができる関心のある試料の全部又は一部が通る入口(4)と上記関心のある試料の汲み上げ/排出のための手段にそれ自体が接続されている出口(5)とを接続する少なくとも1つの流体チャネル(3)で構成され、流体チャネル(3)は、入口(4)から出口(5)までの間に、
・耐熱成分の全部又は一部を収容する第1の区画(8)と、
・耐熱成分を関心のある試料と混合する手段(15)と、
・非耐熱成分の全部又は一部を収容する第2の区画(9)と、
・さらに、ターゲット核酸の増幅を可能にするために上記増幅成分と混合された上記関心のある試料(6)を加熱することを意図する少なくとも1つのゾーンと
をさらに備える装置に関係する。
発明は、このような装置を使用する増幅方法をさらに提案する。上記方法は、医療診断の分野に好ましい用途がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのターゲット核酸を増幅する使い捨て装置に関する。本発明は、上記装置を使用してこのようなターゲット核酸を増幅するための方法にさらに関する。この装置は、方法と同様に、PCRなどのあらゆるタイプの増幅技術、又はTMA若しくはNASBAなどの転写後増幅技術と共に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来技術は、流体を処理する内蔵式反応カートリッジに関係する国際公開第99/33559(A)号パンフレット、ならびに試薬ビードを保存し使用する方法及び装置に関する同一出願人による国際公開第2006/132886(A)号パンフレットによっても代表される。このシステムは、4個の同一の取り外し可能なモジュールを有する小型器具と、マルチチャネル・バルブを組み込む複数のウェルを有するカートリッジとを備える。ピストンは、液体を混合するためにカートリッジの一方のウェルから別のウェルへ液体を移動するのに役立つ。カートリッジの様々なゾーンのうちで、各ゾーンは、
・分析試料の捕捉、精製及び濃縮するためのシリカマトリックス上での濾過と、
・ガラスビーズを用いて、器具が発生する超音波の作用によって、試料中に存在する細胞の細胞膜を溶解させる溶解と、
・固体試薬若しくは液体試薬又は同時に両方を含むことがあるカートリッジの増幅ゾーン及び検出ゾーン(PCR)へ、溶出液の全部又は一部を移すことによって行われる増幅と
のうちのいずれかに適している。
【0003】
したがって、このシステムは完全に内蔵化かつ自動化されており、結果回答時間はかなり短い(約1時間)。しかしながら、選択した設計概念が原因となって、カートリッジは比較的複雑であり、かつ、高価である。したがって、このカートリッジは、高サンプルレートのシステムには適さない。さらに、同一体積内で増幅プライマー及び/又は検出プローブを多重化することを除いて、試料毎に数回のテストを実行することには適さない。このことにより、生物学的テストの進行がより複雑化し、かつ、より長い時間を要するため、検出性能の点では妥協が避けられない。
【0004】
我々の発明は、保護するカードが簡単なピペットコーンなどのロボットによって容易に取り扱えるので、高レートにより一層適している。さらに、カードの横寸法が低減され、高サンプルレートのために設計されたシステムに対して、許容可能な直径を有する蛍光読み取りカルーセルを使用する高レートアーキテクチャの実現可能性を与える。最終的に、平面を有する細長の設計は、読み取りカルーセル内でカードを移動させることを可能にし、読み取りカルーセルは、
・培養ブロック上を摺動することにより上記カードの移動を可能にしながら、熱サイクルのための良好な熱接触(PCRタイプ)、又は一定かつ均一な温度(NASBA、TMAタイプ)を確保するステップと、
・カードが様々な読み取りヘッド(様々な波長)の前方で容易に移動できる状態で、蛍光読み取りをさせるステップと
を必要とする。高サンプルレートとは、1日当たりに300回のテストを上回るレートを意味し、テスト1回当たりのコストが低下し、サイズが低減される。
【0005】
このシステムと比較して、本発明は、特に、開発された消耗品の単純さ、内蔵式ピペット機能、及び増幅反応体積の減少の結果により、テスト1回あたりのコストを日常的なウイルス又は微生物の診断と同等にするのに役立つだけでなく、POCT(ポイント・オブ・ケア・テスティング)とも呼ばれる患者のための携帯式テストにも役立ち、これによってテスト1回あたりのコスト低減(分子生物学における酵素は、テスト1回当たりの「試薬」部分のコストの大半を占めるため、反応体積の減少は、体積の減少に比例してコスト削減の達成に役立つ)(これらの用途では、50μ〜80μLではなく5μL)に役立っている。
【0006】
従来技術は、生物テロ、細菌戦争、及びPOCTの特殊な状況において、高速内蔵式移動テストのため設計され、最小限の手動操作を必要とする装置に関する国際公開第2004/004904(A)号パンフレットをさらに含む。このシステムは、増幅試薬(PCR)が凍結乾燥される1個又は複数の区画を有する柔軟性袋に接続されている入口ポートが設けられているカートリッジを使用する。蛍光は、変形可能な柔軟性膜を通して直接的に読み取られる。これらの袋は、真空下に維持されるので、消耗品入口ポートを介した核酸試料の導入後に、自動及び較正充填を実行し、かつ、PCR増幅前に凍結乾燥された試薬を溶解することを可能にする。
【0007】
この装置は、高サンプルレートでの日常的なテストの実行には適していない。この真空流体分配、及び/又は分割システムは、PCR増幅の場合に使用できるワンステップ流体プロトコル(充填)に効果的である。しかし、このシステムは、MBSBA又はTMA増幅の場合のように、複数の試薬を懸濁液中に連続して投入することを必要とする核酸を増幅する方法には適さない。その結果、この装置には、バルブを追加すること、及び増幅試薬を収容している2つのチャンバの間で部分真空を維持することが必要となり、消耗品及び関連器具の複雑化の原因となっている。さらに、消耗品は、手動動作なしに、したがって、ピペット機能なしに、核酸を含有する試料(ピペットによる沈積)をそのまま汲み上げるのに適していない。さらに、剛体部分を柔軟性袋部分と組み合わせるこの装置は、ランダム・アクセス・アーキテクチャと称される、器具の操作中であってもユーザがいつでも試料を入れることができる構造において容易には取り扱えない。
【0008】
一方、我々の発明は、ロボットによって容易に取り扱うことができ、かつ、増幅反応などの反応を行うために溶液をピペットで採取し、溶液を混合し、溶出液を吸収し、溶出液を汲み上げるコーンとして使用できるカードを提案する。本発明によるカードは、したがって、液体試薬を加え、チューブの中に汲み上げ、それによって、増幅/検出ステップより前のステップを実行するピペットコーンとして使用することができる。適切な自動化によって、上記カードは、複数のコーンを同時にサンプリングし、回収することができる。この目的のために、2つ以上の流体チャネルを備える実施形態が本明細書の残りの部分に提案されている。
【0009】
出願人の本発明は、当初の設計により、1つの試薬だけを必要とする(したがって、1つのチャンバで実施可能である)PCR(又はRT−PCR)増幅プロトコルと、転写後増幅の場合のように増幅試薬を2つの別個のチャンバに分離することを必要とする2ステップ増幅プロトコルとの両方を採用するのに役立つ。本発明は、従来型のコーン(増設型又は内蔵型)を使用するピペット機能を統合することにより、POCTシステム(1日当たりに数回のテスト)又は機械的な高レート診断システム(1日当たり300回を上回るテスト)で使用できる消耗品(又はカード)を提案することによって器具構造の問題をさらに解決する。
【0010】
従来技術は、国際公開第2007/100500(A)号パンフレットをさらに含む。これは、高配向性POCTシステム、又は、分子生物学における低レートに関係する。この使いやすいシステムでは、少量の血液(数十μL)から直ちに作業を行うことができる。関連器具は、管状消耗品の区画を隔離し、それにより、消耗品の事前充填によって製造時に規定された順序で液体の移動及び混合を可能にするように設計されたアクチュエータの組み合わせのおかげで、さらに小型になっている。
【0011】
このシステムの主な欠点は、このシステムの後に続く生物学的プロトコルのための柔軟性に欠けることである。一方では、試料体積及び緩衝液体積(磁気的核酸捕捉粒子、洗浄緩衝液及び溶出緩衝液)が、消耗品の製造中に規定されるように、消耗品の各区画の体積によって決定される。例えば、処置される生体試料のタイプ、阻害物質(唾液、LBA、血漿、尿、全血など)の有無などの様々なパラメータに従って、より優れた核酸捕捉、増幅及び検出性能を達成するために、生物学的プロトコルを修正すべきことが多いことが知られている。この従来技術のシステムを用いると、プロトコルの修正は、各区画に対し異なる体積毎に異なった消耗品を作り出すことが必要で、それによって、可動アクチュエータが、関連器具(過圧による上記シーリングゾーンの破裂のためのバルブ及びピストン)に設置されているゾーンの場所と関連付けられた非常に強い制限を伴って、シーリングゾーンを修正することが必要となる。さらに、試料体積は、非常に小さいままであり、したがって、特に、数ミリメートルの試料を用いるテストにおいてユーザのあらゆる要求を含むとはかぎらない。さらに、柔軟性物体は、高い追加コストがなければ、ロボットにより取り扱うことが難しい。ロボットは、ピペット機能をもたず、溶出体積及び洗浄体積の選択にも柔軟性がなく、その結果、試料調製の柔軟性が低い。
【0012】
出願人は、従来技術を構成し得るある程度の数の文献を出願している。これらの文献は、特に、流体反応ステップ及び流体輸送ステップがカードに内蔵された制御手段の作用下で行われる分析カードを使用する装置に関する欧州特許第1187678(B)号明細書に関係する。
【0013】
このタイプの装置の1つの問題は、装置がアクチュエータの作用下で変形可能な要素で構成されるバルブの助けによって強制的に作動され、それによって、バルブと関連付けられたチャネルの直接的又は間接的な閉鎖を引き起こすことである。この装置に関連する基本的な問題は、この装置の複雑さである。したがって、バルブの存在は、このように形成された分析カードの製造をかなり複雑化し、分析カードの製造コストを高め、さらに、多くの外部要素(アクチュエータ)が上記バルブをすべて作動させるために必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術の文献すべてによって浮き彫りにされた問題を解決することを提案する。この目的のために、本発明は、使い捨てであり、かつ、ある程度の数の技術的特徴を満たす装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の特に有利な実施形態では、装置は、低減された体積の核酸(5μL〜10μL)からのRNA又はDNAターゲットの増幅のために必要とされる乾燥又は凍結乾燥された試薬を搬送し、これによって、試薬に関係のあるコストを削減し、汚染の危険性を取り除くためのバルブを組み込むピペットのようなものと考えられる消耗品である。このバルブは、通常は開き、そして、実行すべきさらなるステップが存在しないときに、読み取りゾーン内の反応体積を配置した後に閉じられるスライドバルブである。このタイプの装置は、従来技術において知られていない以下の多くの特徴を有している。
・この考え方に基づいて、POCTバージョン(1バッチ当たり8個〜24個の試料による処理)と、同じ消耗品を使用する高レート・ロボット・バージョンとにおいてロボットを製造することができる。
・増設されたチップ又は発明の装置の一体的な部分であるチップを移動することによって、手動ステップの数を削減するのに役立ち、これによって、このような消耗品を使用するロボット装置の自動化を簡単化するのに結果的に役立つために、精製された核酸を自動サンプリングする。
・単独の関連付けられた器具にPOCTのためのPCR又はNASBA増幅を組み込むことができる。
・搬送され、また、凍結乾燥又は乾燥された試薬を装置の中に組み込むことにより器具を簡素化し、装置の内部での簡単な移動により試薬を連続的に溶解し混合することができ、この装置の流体回路の構成がこの溶解及びこの混合を促進する。
・モノテスト(装置内部の流体チャネル1本当たり1組の増幅プライマー)、マルチプレックステスト(チャネル1本当たり少なくとも2組のプライマーを用いる)、又は、共通した器具構造からのパネル(少なくとも2チャネルにおける少なくとも2組の別個のプライマーの組)を用いて、実行することができる。
・安価な装置と小型の関連器具とを用いて増幅プロトコルを全体的に自動化する。
・好ましくない熱慣性をもつ厚いプラスチック管ではなく、反応チャネルの薄いカバー膜を通じた加熱によって、「従来型」の増幅と比較して変性時間を短縮することにより(5〜10分に対して1分)(特に、NASBAを用いて)全体的な増幅時間を短縮する。
・上記装置内で搬送される試薬は、増幅されるべき液体試料によって吸収されるまで乾燥されたままであるため、従来型の自動化と比較して酵素の寿命制限がない。
【0016】
本発明は、関心のある液体生体試料の中に存在する少なくとも1つのターゲット核酸を増幅する使い捨て装置であって、
固体ボディ、ならびに汲み上げ、及び/又は排出することができる関心のある試料の全部又は一部が通る入口と上記関心のある試料の汲み上げ/排出のための手段にそれ自体が接続されている出口とを接続する少なくとも1つの流体チャネルで構成され、
流体チャネルは、入口から出口までの間に、
・増幅を生成するために必要とされる耐熱成分の全部又は一部を収容する第1の区画と、
・耐熱成分を関心のある試料と混合する手段と、
・増幅を生成するために必要とされる非耐熱成分の全部又は一部を収容する第2の区画と、
・さらに、ターゲット核酸の増幅を可能にするために上記増幅成分と混合された上記関心のある試料を加熱することを意図する少なくとも1つのゾーンと
を備える装置に関する。
【0017】
実施形態によれば、アンプリコンを検出する装置は、第2の区画に、アンプリコンを検出するために必要とされる検出成分の全部又は一部を備えることを特徴とする。
【0018】
別の実施形態によれば、アンプリコンを検出する装置は、流体チャネルに、アンプリコンを検出するため必要とされる成分の全部又は一部を収容している第3の区画をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
さらに、別の実施形態では、装置は、流体チャネルに、何も収容していないが、クリーン環境におけるその後のアンプリコンの検出のために役立つ第3の区画をさらに備える。
【0020】
前段に記載された装置の代替的な実施形態では、第3の区画は、第2の区画と装置の出口との間に配置されている。
【0021】
代替的な実施形態にかかわらず、装置の入口がピペットのコーンを収容するか、又は、ピペットのチップがピペットコーン形状の構成を有している。
【0022】
前述の代替的な実施形態にかかわらず、汲み上げ/排出装置は、例えば、ピペットなどのピストン型の装置である。
【0023】
前述の代替的な実施形態にかかわらず、チャネルの断面は、一定であり、区画は、より大きい断面を有している。
【0024】
マルチチャネル実施形態によれば、入口は、少なくとも2つの流体チャネルと連通する。
【0025】
さらにマルチチャネル実施形態によれば、出口は、少なくとも2つの流体チャネルを備える。
【0026】
前述の代替的な実施形態にかかわらず、成分は、関心のある試料中で溶けやすい凍結乾燥又は乾燥された生物学的化合物で形成される。
【0027】
前述の代替的な実施形態にかかわらず、汲み上げ/排出手段は、使い捨て装置の一体的な部分である。
【0028】
後者の代替的な実施形態によれば、汲み上げ/排出手段は、流体チャネルに接続されているシリンダと、手動で又はアクチュエータを用いてシリンダの内部で運動するピストンとを備える。
【0029】
前述の代替的な実施形態にかかわらず、混合手段は、流体チャネルで構成され、流体チャネルの経路は、少なくとも1つのバッフルを備える。
【0030】
本発明は、また、前述された装置の内部で行われる、関心のある液体生体試料中に存在する少なくとも1つのターゲット核酸を増幅する方法であって、
(a)入口を介して装置内の関心のある試料の全部又は一部を汲み上げるステップと、
(b)試料中の耐熱増幅成分を溶解させるために上記試料を移動させるステップと、
(c)試料と耐熱成分とを混合するステップと、
(d)関心のある核酸を変性させるために第1の温度勾配を印加するステップと、
(e)混合物中の非耐熱性の増幅成分を溶解させるために混合物を移動させるステップと、
(f)混合物と非耐熱性成分とを混合するステップと、
(g)変性された核酸を増幅するために少なくとも1つの第2の温度勾配を印加するステップと
を含む方法を提案する。
【0031】
実施形態によれば、ステップ(b)の耐熱増幅成分は、ステップ(d)での第1の温度勾配の印加前に、必ずしも耐熱性ではないが、デオキシリボ核酸である関心のある核酸の所定の部位での開裂を可能にする制限酵素をさらに含有している。
【0032】
前述の実施形態に加えて使用できる別の実施形態によれば、アンプリコンの検出は、ステップ(g)の後に、
(h)中に含まれる検出成分を溶解させるために新しい混合物を移動させるステップと、
(i)混合物と検出成分とを混合するステップと、
(j)アンプリコンの存在を検出するステップと
を含む。
【0033】
前述の実施形態の少なくとも1つに加えて使用できる別の実施形態によれば、増幅は、PCR増幅であり、このPCR増幅のための第1の温度勾配は、90℃と100℃の間であり、第2の温度勾配は、3つの異なるステップ、すなわち、
・第1の変性温度に対して90℃と100℃の間、好ましくは、約94℃と、
・第2のハイブリダイゼーション温度に対して50℃と60℃の間、好ましくは、約55℃と、
・第3の重合温度に対して70℃と75℃の間、好ましくは、約72℃と
における温度の交番である。
【0034】
前述の実施形態の少なくとも1つに加えて使用できる別の実施形態によれば、増幅は、転写後増幅(NASBA又はTMA)であり、この転写後増幅のための第1の温度勾配は、60℃と70℃の間、好ましくは、約65℃であり、第2の温度勾配は、第2の重合温度勾配に対して40℃と50℃の間である。
【0035】
前述の実施形態の少なくとも1つに加えて使用できる別の実施形態によれば、第1の温度勾配は、第1の区画、及び/又は、混合手段に印加され、第2の(複数の)温度勾配は、混合手段、及び/又は、第2の区画、及び/又は、第3の区画に印加される。
【0036】
前述の実施形態の少なくとも1つに加えて使用できる別の実施形態によれば、第1の温度勾配は、5分〜20分、好ましくは、15分に亘って印加され、第2の(複数の)温度勾配は、
・PCR増幅の場合、
−変性に対して、1分未満、好ましくは、2秒〜20秒、好ましくは、5秒に亘って、
−ハイブリダイゼーションに対して、1分未満、好ましくは、2秒〜20秒、好ましくは、5秒に亘って、そして、
−重合に対して、2分未満、好ましくは、5秒〜80秒、好ましくは、10秒に亘って印加され、
・転写後増幅の場合、2時間未満、好ましくは、5分〜80分、より好ましくは、
−RNAターゲット核酸の場合に約60分に亘って、
−DNAターゲット核酸の場合に約90分に亘って印加される。
【0037】
以下の用語は、単数形又は複数形で同様に使用することができる。
【0038】
用語「成分」は、「試薬」、「増幅試薬」、「抽出試薬」、若しくは「精製試薬」、又は反応緩衝液、酵素、ヌクレオシドモノホスフェート、ヌクレオシドジホスフェート、ヌクレオシドトリホスフェートなどの試薬、ならびに溶媒、すなわち、核酸抽出、精製、若しくは、酵素増幅反応を実行するため必要な塩を表す「原材料」も意味する。
【0039】
本発明との関連では、「容器」又は「プラスチック容器」は、プラスチック製(例えば、エッペンドルフ型)、ガラス製、又は他のすべての材料製であるかを問わずに、チューブ、ピペットコーン、又はチップなどの入れ物を意味する。
【0040】
本発明との関連では、「核酸」は、少なくとも2個のヌクレオチドの鎖、好ましくは、遺伝情報の4タイプのヌクレオチド、すなわち、核酸がDNAである場合:
・dAMP(デオキシアデノシン 5’−モノホスフェート)、
・dGMP(デオキシグアノシン 5’−モノホスフェート)、
・dTMP(デオキシチミジン 5’−モノホスフェート)、及び
・dCMP(デオキシシチジン 5’−モノホスフェート)
とから選択され、核酸がRNAである場合:
・AMP(アデノシン 5’−モノホスフェート)、
・GMP(グアノシン 5’−モノホスフェート)、
・UMP(ウリジン 5’−モノホスフェート)、及び
・CMP(シチジン 5’−モノホスフェート)
とから選択された少なくとも10個のヌクレオチドの鎖を意味する。
【0041】
核酸は、場合によっては、少なくとも1つのイノシン、及び/又は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含むこともある。本発明との関連では、用語「修飾ヌクレオチド」は、ヌクレオチド、例えば、修飾核塩基と、デオキシウリジンと、ジアミノ−2,6−プリンと、ブロモ−5−デオキシウリジンと、又は、好ましくは、5−メチル−シトシンを除く任意の他の修飾塩基とを含む少なくとも1つのヌクレオチドを意味する。核酸は、例えば、アルファ−オリゴヌクレオチド(仏国特許出願公開第2607507号明細書)、ポリアミド核酸(PMA)(Egholm M.外著、J. Am. Chem. Soc.、1992年;114; 1895−1897)、又は、2’−O−アルキル−リボヌクレオチド、及び/又は、2’−O−フルオロヌクレオチド、及び/又は、2’−アミンヌクレオチド、及び/又は、アラビノースヌクレオチド、及びLNA(Sun B.W.外著、 Biochemistry、2004年4月13日、43;(14)、4160−69)などの構造体における、例えば、ホスホロチオエート、H−ホスホネート、アルキル−ホスホネートなどのヌクレオチド間結合で修飾されることもある。2’−O−アルキル−リボヌクレオチドのうちで、2’−O−メチル−リボヌクレオチドが好ましいが、5−プロピニル ピリミジン オリゴヌクレオチドを使用することも可能である(Seitz O.著、Angewandte Chemie International Edition 1999年、38(23)、12月、3466−69)。
【0042】
用語「ヌクレオチド」は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかを定義する。
【0043】
本発明との関連では、「生体試料」又は「液体生体試料」は、どんな核酸でも含有することがある試料を意味する。後者は、患者の組織、血液、血清、唾液、循環細胞から抽出されることがあり、又は食品、農業食品から発生することがあり、又は環境に由来することさえある。抽出は、当業者に知られているプロトコルによって、例えば、欧州特許第0369063(B)号明細書に記載されたアイソレーション方法によって行われる。
【0044】
本発明との関連では、「汚染」、「汚染した酸」、「汚染した核酸」、又は「汚染した要素」は、増幅が望ましくないが、検出中に偽陽性結果を発生しやすい核酸を意味する。
【0045】
「増幅」又は「増幅反応」は、以下などの当業者によく知られている核酸増幅技術を意味する。
−米国特許第4683195(A)号明細書、米国特許第4683202(A)号明細書、及び米国特許第4800159(A)号明細書に記載されたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)と、特に、欧州特許第0569272(B)号明細書に記載されるような1ステップフォーマットにおけるPCR派生型のRT−PCR(逆転写PCR)。好ましくは、PCRは、単一のプライマーペアを用いるシングルストランドで実行される。
−例えば、欧州特許出願第0201184(B)号明細書に記載されたLCR(リガーゼ連鎖反応)。
−国際公開第90/01069(A)号パンフレットに記載されたRCR(修復連鎖反応)。
−国際公開第90/06995(A)号パンフレットによる3SR(自家持続配列複製)。
−国際公開第91/02818(A)号パンフレットによるNASBA(核酸配列ベース増幅)。
−米国特許第5399491号明細書によるTMA(転写仲介増幅)。
−米国特許第6576448号明細書に記載されたRCA(ローリングサークル増幅)。
【0046】
本発明との関連では、「ターゲット」、「ターゲット核酸」、「核ターゲット」、「関心のあるターゲット」、又は「関心のある核酸」は、増幅、及び/又は検出されるべき核酸(オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸の断片、リボソームRNA、伝令RNA、転移RNA)を意味する。ターゲットは、細胞から抽出されるか、又は化学合成されることがある。ターゲットは、溶液なしでもよく、又は固体支持体に結合されてもよい。
【0047】
用語「関心のある液体生体試料」は、均一、又は不均一水溶液を意味する。
【0048】
「固体支持体」は、ラテックス、ガラス(CPG)、シリカ、ポリスチレン、アガロース、セファロース、ナイロンなどで作られた粒子を意味する。これらの材料は、場合によっては、磁性材料の閉じ込めを可能にする。これらは、フィルタ、フィルム、膜、又は、ストリップでもよい。これらの材料は、当業者によく知られている。
【0049】
ターゲットは、DNA及び/又はRNAのシングル又はダブルストランドの形をした混合物中に存在するウイルス、バクテリア、真菌核酸、又はイースト菌でもよい。一般に、ターゲットは、50ヌクレオチドと10000ヌクレオチドの間の長さを有するが、通常は、100ヌクレオチドと1000ヌクレオチドの間である。
【0050】
「マーカー」は、ヌクレオチドによって運ばれる分子を意味する。マーカーとヌクレオチドとの間のリンクは、当業者に知られている様々な方法で行うことができる。手動連結が、活性化基、典型的に、対応する試薬基(例えば、アミン又はチオール)を運ぶ内部修飾ヌクレオチド上に、又はこれらの同じ試薬基を用いて修飾ヌクレオチドストランドの一端上で連結されたカルボキシル基又はチオールを運搬するマーカーを使用して行われる。自動連結は、マーカーを運ぶホスホラミダイトを使用して取得され、また、連結は、次いで、使用されるホスホラミダイトのタイプに従って、ストランドの一端、又は内部位置のいずれかでヌクレオチドストランドの自動合成中に行われる。マーカーは、蛍光色素分子でもよく、又は、蛍光消光剤でもよい。
【0051】
「蛍光色素分子」は、適切な波長の光によって励起された蛍光信号を放射する分子を意味する。蛍光色素分子は、特に、ローダミン、若しくは、テキサスレッドなどのローダミン誘導体、フルオレセイン、若しくは、フルオレセイン誘導体(例えば、FAM)、Alexa 532及びAlexa 647、Alexa 405、Alexa 700、Alexa 680、Cy5などのAlexa族の中の蛍光色素分子、又は、利用される測定器具に適した他の蛍光色素分子でもよい。検出プローブのために利用できる蛍光色素分子は、多種多様であり、当業者に知られている。
【0052】
本発明との関連では、「フルオレセイン」は、約490nm〜500nm、好ましくは、495nmの波長の光によって励起されたときにおよそ530nmの放射ピークで蛍光信号を放射する芳香族化学分子を意味する。
【0053】
「蛍光消光剤」又は「消光剤」は、蛍光色素分子によって放射された蛍光を妨害する分子を意味する。この消光剤は、妨害放射を回避するために非蛍光芳香族分子から選択されることがある。好ましくは、上記消光剤は、蛍光色素分子の物理的な近傍にあるときに蛍光の放射を阻止する非蛍光芳香族分子であるDabsyl、Dabcyl、又は、ブラック・ホール・クエンチャー(商標)(BHQ)でもよい。蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)技術は、例えば、Fluorescent Energy Transfer Nucleic Acid Probe、P.4、Ed. V. V. Didenko著、Humana Press 2006年、ISSN 1064−3745に記載されているように使用することも可能である。消光剤は、例えば、TAMRA(カルボキシテトラメチルローダミン)などの蛍光分子から選択されることもある。
【0054】
S3Bと呼ばれる「3塩基検出プローブ」又は「3塩基プローブ」は、既に定義されているようなプローブであり、前述の特徴に加えて、アデニン、チミン、グアニン、シトシンの群から選択された3種類の塩基のヌクレオチド連鎖で構成されたプローブである。当業者によく分かるように、プローブの形式(分子ビーコン、欧州特許第95/904104.7号明細書、欧州特許第96/303544.9号明細書、及び、欧州特許第97/923412.7号明細書を参照、又は、O−プローブ、国際出願PCT/FR2009/051315明細書などを参照のこと)に従って、プローブは、ヌクレオチド連鎖が4種類の塩基のヌクレオチドを含む配列と、ヌクレオチド連鎖が3種類の塩基のヌクレオチドを含む配列との部分で構成されることになる(配列は、アンプリコンのハイブリダイゼーション及び検出を可能にする)。
【0055】
ある一定の場合に、発明によるプローブは、アンプリコンとのハイブリダイゼーションと、したがって、アンプリコンの検出とを改善するために、時にはチミンの代わりにウラシルを含有することがある。この場合、発明によるプローブは、4種類の塩基(ウラシル、グアニン、アデニン、チミン)のヌクレオチド連鎖で構成されることになる。
【0056】
「ハイブリダイゼーション」は、適切な条件下で、全体的又は部分的に相補的配列を有する2個のシングルストランドのヌクレオチド断片が、核塩基の間の水素結合によって安定化されたダブルストランド又は「デュプレックス」を形成することができるプロセスを意味する。ハイブリダイゼーション条件は、動作条件のストリンジェンシー、すなわち、厳密さと、低塩分濃度とによって決定される。ハイブリダイゼーションは、より高いストリンジェンシーで実行されるときに、ますます特異である。ストリンジェンシーは、特に、プローブ/ターゲットデュプレックスの塩基中の組成に従って、また、同時に2つの核酸の間の不一致の程度によって定義される。ストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション溶液中に存在するイオン種の濃度及びタイプと、変性剤のタイプ及び濃度と、及び/又は、ハイブリダイゼーション温度となどの反応パラメータの関数でもよい。ハイブリダイゼーション反応が実施されるべき条件のストリンジェンシーは、使用されるハイブリダイゼーションプローブに主に依存することになる。これらのデータはすべて、よく知られており、適切な条件を当業者によって決定することができる。
【0057】
添付の実施例及び図面は、特有の実施形態を表し、本発明の範囲を限定するものとみなすことができない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】単一の流体チャネルを収容している発明の使い捨て装置の第1の実施形態を示す図である。この特有の構成において、装置は、少なくとも1つのターゲット核酸が存在する可能性が高い処置されるべき生体試料を汲み上げる準備ができている。
【図2】装置が処置されるべき生体試料(本図に示さず)を汲み上げている別の特有の構成で、同様に第1の実施形態を示す図である。
【図3】2個の流体チャネルを並列に収容している発明の使い捨て装置の第2の実施形態を示す図である。この特有の構成では、装置は、存在する可能性が高い少なくとも1つのターゲット核酸を含有している上記生体試料を汲み上げる準備ができている。
【図4】装置が処置されるべき生体試料(本図に示さず)を汲み上げている別の特有の構成で、同様に第2の実施形態を示す図である。
【図5】8個の流体チャネルを並列に収容している発明の使い捨て装置の第3の実施液体を示す図である。この特有の構成では、装置は、存在する可能性が高い少なくとも1つのターゲット核酸を含有している上記生体試料を汲み上げる準備ができている。
【図6】汲み上げ動作及び排出動作が上記装置の内部で実施される方法をより良く視覚化する図5のA−Aによる断面図である。
【図7】第2の実施形態の代案による使用中の装置を示す図である。使い捨て装置は、関心のある液体試料を収容していない。装置のチップは、容器の中に存在している試料とちょうど接触している。
【図8】第2の実施形態の代案による使用中の装置を示す図である。チップは、試料と接触し、ピストンは、関心のある試料を使い捨て装置の中へ汲み上げるために駆動される。この場合、試料は、第1の区画と、第1の区画が収容する耐熱成分とに配置されている。ピストンがこのフェーズにおいて汲み上げを完了する前に、使い捨て装置が上昇され、及び/又は、容器が下降されるので、装置と上記容器の試料とは、この図8の場合と同様に、これ以上接触せず、単一のチャネルは、空気だけが充填される。2個の下流チャネルは、それぞれ一定分量の試料の液体カラムを収容している。好ましくは、ピストンによる汲み上げは、装置が容器内に残存している試料から回収されたときに停止される。
【図9】第2の実施形態の代案による使用中の装置を示す図である。上記ピストンによる関心のある試料の汲み上げが継続し、上記試料は、往復運動が試料と耐熱成分との適切な混合を可能にさせる混合手段へ運ばれる。サンプルと耐熱成分との組み合わせは、解釈と理解とを容易化するため引き続き「試料」と呼ばれることになる。
【図10】第2の実施形態の代案による使用中の装置を示す図である。ピストンは、関心のある試料を使い捨て装置へ汲み上げることを可能にするために運動させられる。この場合、試料は、第2の区画と、第2の区画が収容している耐熱成分との中に配置されている。
【図11】第2の実施形態の代案による使用中の装置を示す図である。汲み上げが停止されるが、関心のある試料が上記ピストンによって排出され、上記試料は、往復運動が試料と耐熱成分との適切な混合を可能にさせる混合手段へ運ばれる。この場合も、試料と耐熱成分及び非耐熱成分との組み合わせは、解釈と理解とを容易化するため引き続き「試料」と呼ばれることになる。
【図12】第2の実施形態の代案による使用中の装置を示す図である。ピストンは、関心のある試料を使い捨て装置へ汲み上げることを可能にするために運動させられる。この場合、試料は、第3の区画と、第3の区画が収容している検出のために必要な成分との中に配置される。
【図13】増加するターゲットの量の値に対して従来技術(EasyQ)のNASBA増幅曲線を示す図である(高い位置にある0から10000までのスケールを参照されたい−矢印Bを参照されたい)。HIVターゲット配列の増幅に対応する曲線は、下方位置にプロットされ(矢印Aを参照されたい)、キャリブレータに対応する曲線は、上方位置にある。
【図14】図13に適用された条件と同じ条件下での発明のNASBA増幅曲線を示す図である(矢印A及びBの使い方も同様である)。この図14の読みやすさを改善するために、HIVターゲットに対応する曲線は、5倍に拡大されていることに注意されたい。したがって、本発明の装置によると、ターゲット(HIV)に対応する曲線は、約8rfuから40rfu(相対蛍光単位)まで変化する。キャリブレータの曲線は、50から250まで変化するので、2つの曲線が同じスケールを使ってプロットされた場合、グラフは、読みやすくない。プロットされているように、HIV曲線は、40と200との間で変化するので、一層読みやすい。最後に、これらは、増幅の有効性への先入観のない相対的な値であり、実際には、解釈上の値を有する各曲線の変曲点である。
【図15】EasyQ(左)に対して、及び本発明(右)による、アルゴリズムHIV v.2.0によって計算された変数定量化を提案する図である。
【図16】ターゲットの量の関数として定量化結果を示す図である。
【図17】発明の装置の図2のB−Bによる縦断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、図1から図17の組によって明瞭に表される。3つの実施形態が、より詳しく示される。
図1及び図2に示す第1の実施形態は、本発明の完全に単純な実施形態を表す。この実施形態は、表面に流体回路又はチャネル3が刻み込まれた固体ボディ2で形成された使い捨て装置で構成される。この流体回路3は、これらの図において参照されていないが、図17において符号14を用いて表されたBOPP(バイ−オリエンテッド・ポリプロピレン)タイプのフィルムによって明らかに境界を定められ、このフィルムは、液体試料が上記回路3から出ることを妨げる。流体チャネル3は、一方で、各図の下部にある入口と呼ばれる貫通孔4と、各図の上部にある出口と呼ばれる別の貫通孔とを備え、チャネル3が2個の出口開口部を有することを可能にする。実際上、入口4は、符号16で示されるピペットチップによって形成され、すなわち、全体的なボディ2と共に単一部品に成形されている。図1は、従来型のチップを使用する特殊な実施形態を示す増設ピペットチップ27を示す。他の側で、出口5は、汲み上げ/排出手段7の部品のうちの1つを構成するシリンダ17内に存在する。この汲み上げ/排出手段7の他の部品は、シリンダ17の内部で摺動可能であり、図示されないアクチュエータによって、一方では、流体回路3内の流体の体積が減少するシリンダ19内でのピストン18の運動である矢印F1に沿って運動させられ、他方では、上記運動とは全く異なって、すなわち、流体回路3内の流体の体積が増加するシリンダ19内でのピストン18の運動である矢印F2に沿って運動させられるピストン18で構成される。アクチュエータは、リンケージ手段21を介してピストンに作用することができる。このシステムは、システム全体が自動化されるべき場合に特に有利である。図1及び図2における本実施形態では、流体回路は、チャネル3に沿って、実質的に一定の断面を有し、第1の区画8と、第2の区画9と、区画8と9との間で、1組のバッフル19を構成する混合手段15とを備えるので、比較的単純であることに気付くであろう。これらの区画8及び9と、この混合手段15との役割は、後でさらに十分に説明される。
【0060】
第2の実施形態は、図3及び図4に示される。この実施形態は、前述の実施形態と実質的に同一であるが、2本の流体チャネルが互いに並列している。この装置は、符号100で参照されるが、他の要素すべては、前に使用された符号と同じ符号を有している。図3は、ピストン18が静止位置に、すなわち、ピストン18がシリンダ17内の低位置にあり、アクチュエータ又はマニピュレータがリンケージ手段21を介して上記ピストン18を動かすので、図1と実質的に同一である。本実施形態では、したがって、入口4と、下流部に1本のチャネル3とがあり、この1本のチャネルは、その後、同一断面をもち、装置100のボディ2に沿って並列に上昇する2本のチャネルに分割される。前述の場合と同様に、チャネル3のそれぞれに沿って、第1の区画8と、混合手段15と、第2の区画9とが配置されている。しかし、上流に第3の区画10がさらに存在する。現実的な理由のため、第2の区画9と第3の区画10との間にトラップが形成され、すなわち、トラップの第1の曲がりは、第1の区画9の上方に配置され、第3の区画10は、トラップの第2の曲がりに配置さている。代替的に、区画10は、削除することができ、読み取りは、区画9で直接的に行うことができる。区画9又は10の役割は、主として、垂直位置で使用されるカードの下方部分へ向かう液体の望ましくない動きを保護し、次に、器具内の関連した加熱ユニット内に作られた読み取り蓋の直径を最大化することにより蛍光検出のために使用できる液体の体積を増加させ、また、区画9又は10の反対側にそれを位置決めすることである。本実施形態の別の特徴は、各チャネル3が上流で汲み上げ/排出手段7に接続されているので、入口4に対して2つの出口5が存在することである。その結果、各チャネル3は、シリンダ17及びピストン18と関連付けられる。この特別な実施形態では、2台のピストン18は、図4に明瞭に示されるように、互いに独立し、すなわち、2台のピストンは、相互に独立してF1及びF2に沿って作動させることができる。
【0061】
相互に独立して運動する2台の個別化されたピストンを含む構成は、特に、検出ゾーンにおける上記セグメントの再校正によって、各流体チャネル内の液体セグメントの位置決め不良を個別に修正するのに役立ち、例えば、シフトは、不均一な粘性試料と、カードの流体回路の僅かな成形不良と、又は流体セグメントの両側に圧力差分を一時的に生成する熱勾配による望ましくない動きとに起因する可能性がある。したがって、このことは、装置の動作頑強性を増大するのに役立つ。このシステムは、2本以上のチャネルが存在するときに、一方では、装置内部で、他方では、発明によるカードに関して、適切なロケーションに位置決めされた位置センサを用いていつでも動作する。
【0062】
各ピストン18のための引き抜き防止システムを有することが特に有利であることに留意されたい。そのために、かつ、有利には、各ピストン18にはガイド23が設けられ、このガイドは、一端でピストンロッド18の上端に接続され、図示されない他端で、マニピュレータによる取り扱い(例えば、分析の最後での器具からの消耗品の取り外し、又は、器具によるピストン位置決め誤差)の間に、増幅後ピストンの偶発的な引き抜きを防止する、より大きい断面形状に接続されている。この引き抜き防止システムは、本発明によって検討されるすべての実施形態に適合できることが自明である。
【0063】
図5及び図6は、並列する8本の流体チャネル3を備える点を除いて前述の実施形態と実質的に同一である第3の実施形態を示す。前述の2つの実施形態に関して、1個の入口4だけが、単一のチャネル3が出るチップ16に配置されている。このチャネル3は、2から3回繰り返して分割され、装置200の能動的な部分に全部で8本のチャネル3と、8個の出口5とをもたらす。各チャネル3は、その結果、
・一定数のバッフル19で構成される混合手段15が後に続く第1の区画8と、
・第2の区画9と、また最後に、
・第3の区画10と、
によって構成される。各チャネルは、通常、シリンダ17及びピストン18で構成される汲み上げ/排出手段7で終端することが自明である。第2の実施形態と同様に、この第3の実施形態は、他の隣接するピストン18に関して、内蔵式かつ独立したやり方でリンケージ手段21を介して操作可能であるピストン18を備える。
【0064】
図6は、チャネル3と汲み上げ/排出手段7との間に存在する接続のより良い視覚化のために、図5の軸A−Aによる縦断面を示す。この断面は、適切な材料から作られた仕切フィルム14によって外側に境界が定められたチャネル3を上面に備える機器200のボディ2を示すのに役立つ。このフィルムは、好ましくは、シリコンセメントを用いたBOPP(バイ−オリエンテッド・ポリプロピレン)から作られるが、流体チャネルの周りにレーザによって封止することができる、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、TPE(サーモプラスチックエラストマー)、又は、PP/PE型複合フィルムから作られることもある。このチャネル3は、シリンダ17内で終端する横穴25で最高点に達する。このシリンダ17内に存在するのは、ピストン18であり、このピストンのピストンヘッド26は、上記シリンダ17のスリーブと共にシールを形成する。ピストンヘッド26は、2個の部品(溝付きボディ及びエラストマー製O−リング)で構成されることがあり、又は、1部品ピストンで構成されることがあり、カード組立体操作を単純化し、テスト1回当たりのコストを削減するのに役立つ。したがって、アクチュエータ又はマニピュレータがF2に沿ってピストン18に力を印加するとき、ピストンがチャネル3に存在する気体状又は液体状の流体の汲み上げを可能にさせ、一方、図6に示されないが、F1に沿った動作が出口4を介して流体を排出するのに役立つことは自明である。
【0065】
内蔵式ピストンは、2つの異なった方法で製造することができる。1つは、上記の場合と同様に、リングセグメント(「O−」)の有無にかかわらず単純なピストンであるか、又は、2区分ピストンである。このタイプのピストンは、当業者によく知られているが、2区分ピストンの使用は、以下の利点がある。
−汲み上げられる液体の体積は、上記区分の2つの区分の体積の差によって決定/較正されるので(汲み上げ機能は、その結果、このピストンの2つの直径の間に配置される)、内在的な位置決め精度は、(同じ直径を有する)単純なピストンと比べて改善される。
−ポンプ動作後、このピストンは、このピストンが中で運動させられるスリーブ/カートリッジの中に完全に押し込まれる。これは、ピストンがユーザの過誤によって引き抜かれることになる危険性を取り除く。
【0066】
図7〜図14は、機器100の使用中での図3及び図4の第2の実施形態を示す。この装置100は、この場合の2台のピストンが2本のチャネル3のそれぞれにおける流体運動が同一であるように1つに連結されているので、前述の実施形態と非常に僅かに異なることに留意されたい。これは、明白に1つの代替案であり、ピストンは、ロボットによって自動的に、又は、必要に応じてマニピュレータによって手動で互いに切り離すことも可能である。2台のピストンを接続するブリッジは、必ずしも物理的に切断されなくても変形させることができる。
【0067】
図7は、液体生体試料6が装置100と接触しているが、液体生体試料6だけが容器20の中に収容され、特に、チップ16が上記液体6の中に部分的に浸漬されることを示す。装置100は、図3及び図4に示されたものに加えて、第1の区画8に存在する耐熱成分12と、第2の区画9の中の非耐熱成分13とを備える。実際には、成分は、例えば、欧州特許第0641389(B)号明細書に記載された技術データに従って、固体形式で保存され、読者は、この主題に関するさらなる詳細を得るためにこの特許を調べることが求められる。
【0068】
図1及び図2の場合と同様に、2つの区画8及び9だけが存在すると考えられることは自明である。この場合、第2の区画9の中に非耐熱及び検出成分13及び14が一緒に存在することが必要である。同様に、耐熱成分だけを有する増幅が使用される場合、含有物すべてが、特に、単一の区画8又は9の中に存在することも可能である。好ましくは、チップは、図1に示されるように、例えば、50μL〜200μLの容量を備えるピペットコーン27に適合し、或いは、そうでなければ、図示されないが、当業者によく知られている、流体配列すべてがカード内で生成された後に熱封止することができるポリエチレン製ストローに適合する。図7では、生体試料の容器がチップと接触した状態で上昇可能であるか、又は、カードが器具によって容器内に存在する液体と接触させられ、後者の場合は、高レート機械のためのアーキテクチャに対応している。装置は、この場合、従来型のピペットコーンとして使用されることになり、その結果、(1又は複数の)容器から試料を採取するためにロボットによってX軸、Y軸及び/又はZ軸に沿って動かされることになる。
【0069】
図8では、リンケージ手段21は、F2に沿って動かされるので、ピストン18は、カード内の容器20の中に存在する液体試料を汲み上げる。同図に示されないこのステップの最後に、装置100は、上昇させられ、一方、ピストン18は、ピストンの汲み上げ動作を継続し、チャネル3のそれぞれにおける2つの液体カラムの存在を明らかにする。汲み上げられる体積は、カードに内蔵されたピストンの断面と、ピストンの運動の長さとに関係することに留意されたい。ピペットコーンにおける選択的な初期滞留とは別に、各液体試料6の1回目の滞留は、第1の区画8で、すなわち、耐熱成分12で発生するので、他の成分9及び10の場合と同様に、凍結乾燥又は乾燥形態で実際に蓄積された上記成分が希釈化することを可能にする。液体セグメントは、乾燥又は凍結乾燥試薬を再び懸濁液の中に入れることを容易化するために、典型的に10秒、一般に1分未満に亘って試薬位置に維持される。
【0070】
図9では、流体は、混合手段15へ向かってF4に沿って移動し続ける。F4に沿ったこの移動は、F2に沿ったピストンの汲み上げに対応する。混合物6+12がバッフル19に到達したとき、多くの機会に、混合手段15内での上記混合物の多少急速な通過を可能にさせるために、F3及びF4に沿った往復運動がF1及びF2に沿ったピストンの運動によって発生される。典型的に、カード内の混合物往復行程の回数は、反応の化合物の十分な均一化を保証するために1回〜10回の往復行程であり、典型的に、5回の往復行程である。バッフル19の存在による方向の変化は、それによって、関心のある液体試料6内での耐熱成分12と呼ばれる希釈成分の良好な混合を可能にする。耐熱成分12は、特に、増幅プライマーと、(1又は複数の)検出プローブと、ヌクレオチドと、増幅中にプライマーを引き延ばすために必要とされる他の耐熱含有物すべてとを意味する。
【0071】
図9は、破線によって示された加熱を意図するする第1のゾーン11が存在することを示す。このゾーンは、NASBAなどの増幅技術を開始するために、マニピュレータ又はロボットが液体試料6+12、すなわち、耐熱成分12の存在の下での試料6を処置するために熱源を当てる場所を象徴的に表す。
【0072】
加熱が行われると、図10は、F2に沿った汲み上げが継続し、その結果、液体カラムが第2の区画9まで上昇すること、又は、次には非耐熱成分13が希釈化されることを示す。このF4に沿った運動は、常にF2に沿ったピストンの上昇に起因する。非耐熱成分は、基本的に、増幅のため必要な酵素を意味する。特に、転写後増幅との関連では、非耐熱成分は、AWV−RT(トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素)、RNase、及び、ポリメラーゼT7(DNA依存性RNAポリメラーゼ)を意味する。
【0073】
液体移動ステップすべてに対し、流速は、典型的に、毎秒1μLである。有利な点として、図示されていないが、各試薬の約2ミリメートル前方に位置決めされ、カード内に装填された器具の光学センサは、液体セグメントの存在を検出し、それによって、各資料の差違と関連付けられた効果を補償すると共に満足できる動作頑強性を確実にするのに役立つ。
【0074】
代替的に、光学センサの使用は、液体セグメントの長さを測定し、その結果、試料を汲み上げ、カード内に充填するステップ中に行われた液体分離の精度をチェックすることも可能にする。
【0075】
図11では、各液体カラムは、その後に、F1に沿って混合手段15の高さまで再び下げられる。この高さで、混合物全体6+12+13も、F3及びF4に沿って移動させられるので、バッフル19は、試料6内での耐熱成分12と非耐熱成分13との適切な混合を可能にする。チャンバ内への到達は、有利には、増幅反応のリアルタイム測定を行うために、器具に内蔵された蛍光読み取りヘッドによって検出できる。
【0076】
図11は、図9と同様に、NASBA増幅を実行するのに同様に役立つ加熱のための第2のゾーン22を示す。
【0077】
図12では、F2に沿った汲み上げは、液体カラム6+12+13が結果的にレッドゾーンとしての役目を果たす第3の区画10まで上昇することを可能にする。このレッドゾーンは、第1の区画8、第2の区画9又は第3の区画10でも構わないことに留意されたい。本例の場合、第3の区画10は、装置の上部へ向かう液体の望ましくない上昇を妨げるための緩衝ゾーンとしての役目を果たし、この作用は、バルブ27の閉鎖によって補強される。
【0078】
しかし、第3の区画10がレッドゾーンとしての役目を果たす場合、F2に沿った汲み上げは、より大きくなり、液体カラム6+12+13が読み取りを行うことができる上記第3の区画10まで上昇することを可能にする。
【0079】
別の実施形態によれば、耐熱成分12をペレットと呼ばれる2つの球体に分離することが可能である。第1の区画8に存在する第1の球体は、増幅プライマーと、ヌクレオチドと、増幅中にプライマーの引き延ばしのために必要とされる他の耐熱含有物とを収容している。第3の区画10に存在する第2の球体は、増幅ステップ後に、アンプリコンを検出するために必要とされる(1又は複数の)検出プローブを収容している。この場合、混合物は、混合手段15の高さまで戻らねばならず、この混合手段の内部では、混合物全体が依然としてF3及びF4に沿って移動させられるので、バッフル19は、試料6の内部での耐熱成分12と非耐熱成分13との混合を可能にする。読み取りは、区画8、9又は10のうちのいずれか1つで行うことができる。
【0080】
図示されないが、第3の区画における位置決めの直後に、器具に内蔵されたアクチュエータを用いてバルブ27を閉鎖することを含む最終的なステップが存在する。代替的に、上記バルブは、削除すること、及び、前述されたように、例えば、熱によって封止することができ、試料をピペットで容器へ採取する機能と、次いで、関連付けられた器具内の加熱ワイヤを使用することによって閉鎖する機能との2つの機能を有するストローによって置き換えることが可能である。
【0081】
特別な実施形態によれば、小型カルーセルが本発明の装置と関連付けられる。このカルーセルは、上記発明による方法を実施する前に抽出ステップを実行するために必要とされる以下の様々なチューブ:
・処置されるべき生体試料を収容している第1のチューブと、
・洗浄緩衝液を収容している少なくとも1つの第2のチューブと、
・希釈緩衝液用の第3のチューブと、
・溶出液を回収するための第4のチューブと、
を支持する。後者のチューブは、選択的であるが、例えば、増幅を実施する装置への新たな汲み上げ前にシーケンシングを実行するために、一定分量を採取するのに有用である。
【0082】
この新規実施形態によれば、シリカフィルタが、コーン16又はピペットコーン28に追加される。このシリカフィルタは、Akonni(照会先:300−10606、米国メリーランド州フレデリック)から入手することができる。
【0083】
使用方法によれば、発明の装置は、第1のチューブの約5μL〜100μLに対し処置されるべき生体試料(血液、尿など)の全部又は一部を汲み上げるために下降する。これらの値は、ピストン(図1)又は複数のピストン(2台のピストンに対する図3、及び、8台のピストンに対する図5)のストローク及び体積によって制限されるので、近似である。
【0084】
複数台のピストンの場合、これらのピストンは、汲み上げられる体積を最大化するために同時に運動する。代替的に、カードに内蔵されたピストンの寸法(ストローク及び直径)は、増幅ステップの間に、一方で、大量の試料の汲み上げと、他方で、上記装置内の溶出液の移動の精度との間で最良の妥協を達成するために増大することができる。
【0085】
試料は、選択的にGuSCnの存在下で、又は、超音波によってカルーセル内で、最初に溶解され、この場合、チューブは、カルーセルの下に設置された音極と結合されている。この試料は、フィルタ内での試料の滞留時間を増加させ、そして、核酸(RNA/DNA)捕捉効率を改善するために、必要に応じて、往復行程を用いてシリカフィルタ内に汲み上げられる。
【0086】
残留試料は、次いで、第1のチューブ、又は、廃棄物を収容している別の入れ物若しくはチューブに廃棄される。
【0087】
カルーセルは、次いで、第2の洗浄チューブをピペットコーンの下へ運ぶために回転する。洗浄緩衝液は、必要に応じて、フィルタ内で混合されてピストンによって汲み上げられ、その後に、第1のチューブ、又は、廃棄物を収容している別の入れ物若しくはチューブに廃棄される。
【0088】
選択的に、洗浄は、少なくとも1回以上実行できる。この場合、装置は、前と同じ洗浄緩衝液が未だ使用されていない場合に、この洗浄緩衝液を汲み上げ、又は、カルーセルは、別の洗浄チューブをピペットコーンの下へ運ぶために回転する。洗浄手順は、このようにして、ピストンによって汲み上げられ、必要に応じて、フィルタ内で混合され、その後、第2のチューブ又は廃棄物チューブに廃棄される洗浄緩衝液を用いて繰り返される。
【0089】
カルーセルは、次いで、希釈緩衝液を収容している第3のチューブをピペットコーンの下へ運ぶために回転する。チューブプレートは、選択的に、大気温度と75℃との間に希釈緩衝液の温度を維持し、その結果、必要に応じて、フィルタからの核酸の塩析を改善するために加熱ブロックが設けられることがある。
【0090】
10μL〜160μL(1個の流体回路3当たりの反応体積と、1台の装置当たりの回路3の個数とに依存する)の体積の緩衝液がピストンによって汲み上げられ、必要に応じて、フィルタ内で混合され、次いで、カルーセルの回転後に(溶出液を復元するために)空のチューブに廃棄されるか、又は、増幅プロセスを開始するためにカードの中へ汲み上げることにより直接的に移送される。
【実施例1】
【0091】
本実施例は、発明の第2の実施形態による使い捨て装置、すなわち、並列する2本の流体チャネルを含むカード(図3及び4を参照されたい)を用いて取得された定量化性能を示す。テストは、ターゲットとしてヒト免疫不全ウイルス(HIV)を使用して実行された。
【0092】
我々の発明は、合成HIVターゲットを含有する同じ生体試料を使用して、Nuclisens EasyQアナライザ(照会先:285060、bioMerieux S.A., Marcy l’Etoile、仏国)と呼ばれる既に市販されている製品と比較された。
【0093】
1−ターゲットの調製:
転写は、2台の機器:Nuclisens EasyQ及び発明による機器に導入された。例えば、抽出のような試料調製ステップは、存在しなかった。
【0094】
2−材料及び方法:
EasyQ上の実験は、使用のための命令に従うbioMerieux HIV2.0キット(以下、PVB1と呼ぶ)(照会先:285033、bioMerieux B.V., Boxtel、オランダ国)を使用して実行された。キットには、
・酵素の混合物:以下、ENZ(バッチ番号:83281SXX)と呼ばれる酵素の球体+45μLの酵素希釈剤(83301AXX)と、
・以下、P/Bと呼ばれるプライマーとプローブとの混合物:実際には、180μLの希釈剤がP/B 2X(83272AXX)に添加された2個のP/B球体(バッチ番号:83283SXX)とが収容されていた。
これは、5μLの混合物ENZと、20μLの混合物P/B+15μLのターゲットとのNASBA混合物を与えた。
【0095】
発明の使い捨て装置は、増幅及び検出のために完全自動化されている。これは、ターゲットを含有している、処置されるべき生体試料を採取することを可能にする。
【0096】
発明の装置の実験プロトコルは、試薬(特に、プライマー、プローブ及び酵素)がEasyQプロトコルの場合と同じ濃度を有するように規定されている。しかし、我々の発明で使用されたテスト1回当たりの体積は、EasyQの場合のように40μLではなく、5μLである。試薬の量は、したがって、8分割されている。PVB1キットからの試薬は、凍結乾燥され、発明の装置の中に入れられた。凍結乾燥ベンチは、発明の装置の専用区画において、P/Bに対して1μL、ENZに対して1.25μLの再生可能な液滴の堆積を可能にさせるハミルトン・ピペッタ・ロボット(照会先:202997、Bonaduz、スイス国)と関連付けられている。
【0097】
発明と共に使用される増幅器具及び検出器具は、増幅曲線を取得するために、すなわち、試料の汲み上げ、試薬の混合、加熱、及び、蛍光読み取りを達成するために必要とされる機能すべてを実行する。この考え方は、EasyQの場合の殆どの強制的な手動ステップを取り除く。
【0098】
以下の表1は、EasyQと発明との間の主たる相違を示す。
【表1】

表1:従来技術の装置(EasyQ)と発明とによる技術データ及び使用された方法の比較
【0099】
前述の通り、本研究のために使用された生体試料は、HIVターゲットを含有していた。次いで、この試料は、EasyQ及び発明における実験のため希釈化されたが、同じシリーズの希釈が使用された。以下の表2は、テスト1回当たりのHIVターゲットの個数と、2台の装置(EasyQ及び発明)のそれぞれを用いて実行された実験の回数とを示す。抽出前「当量」のコピー数は、テスト1回当たりのコピー数を取得するために抽出ステップの上流で必要とされるコピー数に対応する(すなわち、抽出前「当量」は、抽出収率で除したテスト1回当たりのコピー数に等しい)。
【表2】

表2:2台の装置(EasyQ及び発明)のそれぞれによるテスト1回当たりのHIVターゲットの数及び実行された実験の回数
【0100】
「複製」は、テストが同じ初期試料を使用して並列に実行された回数を意味する。内部検査のためのコピー数は、EasyQ及び発明の両方に対してテスト1回当たり290個であった。この場合、発明は、2つのテストを並行して行うことを許容しないので、複製回数は、我々の発明の場合、EasyQの場合よりかなり少なくなることに留意されたい。
【0101】
EasyQに対し要求された検出限界は、25コピー(抽出前当量)であり、テスト1回当たり7.5コピーに対応する。
【0102】
EasyQを用いて獲得されたデータは、HIV−1DB 2.0 テストプロトコル(照会先:285033、bioMerieux B.V., Boxtel、オランダ国)を使用して、EasyQ Directorソフトウェア(BioMerieux S.A., La Balme、仏国)を用いて処理された。発明を使用する器具を用いて測定された各増幅曲線は、EasyQ Directorソフトウェア及びHIV−1DB 2.0 テストプロトコルによって使用されるアルゴリズムと同じアルゴリズムを用いて、上記のEasyQ Director市販ソフトウェアに含まれている増幅曲線の計算及び解釈のためのアルゴリズムに関するEDrecalc再計算のような内部ツールを使用して処理された。
【0103】
3−結果:
未加工蛍光曲線は、従来技術の装置(EasyQ)に対する図13と、発明に対する図14とに示される。発明を用いて取得された増幅曲線は、EasyQを用いて取得された増幅曲線と非常に類似している。蛍光値の広範な分布は、キャリブレータからの信号の蛍光平坦域に対して観察できる。この分布は、器具毎に存在するので、この伝搬は、計装と関連付けられない。
【0104】
3.1−検出限界:
複製の個数が少数であるため、狭い信頼区間で検出限界を決定することができない。したがって、以下の表3では、表2から抽出されたコピー数のうちのいくつかの値に対して2台の器具を用いて取得された陽性結果だけを比較した。
【表3】

表3:2台の装置(EasyQ及び発明)のそれぞれによる検出限界
【0105】
NucliSENS HIV 2.0テストのために要求された検出限界は、25コピー(95%陽性での検出限界)である。この入力値を用いると、発明の装置を用いて実行されたテストすべてが陽性であった。12.5コピーを用いると、EasyQの場合、テストの約50%が陽性であり、発明の場合、僅かに高かった。したがって、我々の発明は、従来技術のEasyQの検出限界に少なくとも類似した結果を有すると論理的に考えることができる。
【0106】
3.2−定量化性能:
図15は、入力コピー数の関数としてQratio(定量化変数)を示す。データに対応する点の分布は、両方の機器に対して類似している。試薬バッチと関連付けられたパラメータを使用して、当業者は、計算によってコピー数を取得することができ、このコピー数の平均値が図16に対数目盛でプロットされる。以下の表4及び表5は、これらの2台の機器と関連付けられた定量化性能を示す。
【表4】

表4:EasyQの定量化性能

【表5】

表5:発明の定量化性能
【0107】
HIV2.0テストの高度仕様によれば、精度、すなわち、様々な複製の結果の標準偏差は、0.3 log未満でなければならない。装置と関連付けられた器具プロトタイプのデータに対するいくつかの精度値は、この仕様を上回る。これは、精度の正確な推定を阻止する、複製の個数が少ないことに起因していることがある。プロトタイプは、正確度(すなわち、結果とテスト入力コピー数との間の差)が0.25である、という仕様を明らかに満たす。発明の直線性は、EasyQの場合と同じであるが、本研究の10個を上回るコピーで測定される必要がある。
【0108】
4−結論:
本発明は、2本の並列流体チャネルを含む構成において、HIV v.2.0キットを用いてHIVターゲットを検出するために使用された。結果は、基準としての役割を果たしたEasyQアナライザと比較された。
【0109】
発明の性能は、HIVテスト(HIV v.2.0)を実行するために要求される最も厳しい制約に従い、EasyQアナライザを用いて記録された性能に少なくとも匹敵している。
【0110】
発明は、(EasyQに対する40μLの代わりに)反応体積5μLを使用したので、テスト1回当たりの試薬の量は、8つに分割された。テスト1回当たりの生産コストは、主としてキット内の含有物すべてのうちの約80%を占める酵素に起因するので、試薬の量が8つに分割されたことは、テスト1回当たりの生産コストをかなり低下させる。発明の装置は、テストを開始するために以下の3回の基本動作のみ:
・発明の装置を装填するステップ、
・(EasyMAG抽出装置(照会先:200111, bioMerieux SA, Marcy l’Etoile、仏国)により)抽出されたターゲットを収容しているチューブを装填するステップ、および
・テストを開始するステップ
を必要とするので、手動ステップの回数も著しく低減させる。
【符号の説明】
【0111】
1 使い捨て装置
2 装置1の固体ボディ
3 ボディ2内の流体回路又はチャネル
4 入口と称されるチャネルの貫通孔
5 出口と称されるチャネルの貫通孔
6 関心のある液体生体試料
7 汲み上げ/排出手段
8 チャネル3に沿った第1の区画
9 チャネル3に沿った第2の区画
10 チャネル3に沿った第3の区画
11 加熱を意図する第1のゾーン
12 区画8に存在する耐熱成分
13 区画9に存在する非耐熱成分
14 境界フィルム
15 混合手段
16 内蔵式ピペットコーン又はコーン28を収容するスピンドル
17 汲み上げ/排出する手段7のシリンダ
18 汲み上げ/排出する手段7のピストン
19 混合手段15のバッフル
20 試料6が初期に存在する容器
21 アクチュエータとのリンケージ手段
22 加熱を意図する第2のゾーン
23 ピストン18のガイド
25 貫通孔
26 ピストンヘッド
27 第1のクロージャ又はシーリングバルブ
28 従来型ピペットコーン
100 2本の並列チャネル3を有する使い捨て装置
200 8本の並列チャネル3を有する使い捨て装置
F1 流体回路3内の流体の体積を減少させるシリンダ19内のピストン18の運動
F2 流体回路3内の流体の体積を増加させるシリンダ19内のピストン18の運動
F3 運動F1の作用下での試料6の移動
F4 運動F2の作用下での試料6の移動
F5 スリーブ16上へのコーン28のはめ込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心のある液体生体試料(6)の中に存在する少なくとも1つのターゲット核酸を増幅するための使い捨て装置であって、
固体ボディ(2)、ならびに汲み上げ及び/又は排出することができる関心のある試料(6)の全部又は一部が通る入口(4)と前記関心のある試料の汲み上げ/排出のための手段(7)にそれ自体が接続されている出口(5)とを接続する少なくとも1つの流体チャネル(3)で構成され、
前記流体チャネル(3)は、前記入口(4)から前記出口(5)までの間に、
・前記増幅を生成するために必要とされる耐熱成分(12)の全部又は一部を収容する第1の区画(8)と、
・前記耐熱成分(場合によっては13と組み合わされる12)を前記関心のある試料(6)と混合する手段(15)と、
・前記増幅を生成するために必要とされる非耐熱成分(13)の全部又は一部を収容する第2の区画(9)と、
・さらに、前記ターゲット核酸の前記増幅を可能にするために前記増幅成分(13と組み合わされた12)と混合された前記関心のある試料(6)を加熱することを意図する少なくとも1つのゾーン(11)と
をさらに備える装置。
【請求項2】
前記第2の区画(9)に、アンプリコンを検出するため必要とされる検出成分の全部又は一部をさらに備えることを特徴とする、前記アンプリコンを検出する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流体チャネル(3)に、アンプリコンを検出するため必要とされる前記成分の全部又は一部を収容している第3の区画(10)をさらに備えることを特徴とする、前記アンプリコンを検出する請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第3の区画(10)は、前記第2の区画(9)と前記装置(1)の出口(5)との間に配置されることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記入口(3)は、ピペット(16)のコーン(28)を受け入れるか、又は、前記ピペットのチップ(3)がピペットコーン状構成を有していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記汲み上げ/排出装置(7)は、例えば、ピペット(7)などのピストン型の装置であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記チャネル(3)の断面は、一定であり、前記区画(8、9、及び、場合によっては10)は、より大きい断面を有していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記入口(4)は、少なくとも2本の流体チャネル(3)と連通していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記出口(5)は、少なくとも2本の流体チャネルを備えることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記成分(12及び13)は、前記関心のある試料(6)の中で溶けやすい凍結乾燥又は乾燥された生物学的化合物で形成されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記汲み上げ/排出する手段(7)は、前記使い捨て装置(1)の一体的な部分であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記汲み上げ/排出する手段(7)は、前記流体チャネル(3)に接続されているシリンダ(17)と、手動で又はアクチュエータを用いて前記シリンダ(17)の内部で運動するピストンとを備えることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記混合する手段(15)は、経路に少なくとも1つのバッフル(19)を備える前記流体チャネル(3)で構成されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置の内部で行われ、関心のある液体生体試料(6)の中に存在する少なくとも1つのターゲット核酸を増幅する方法であって、
(a)前記入口(4)を介して前記装置(1)内の前記関心のある試料(6)の全部又は一部を汲み上げるステップと、
(b)前記試料中の前記耐熱増幅成分を溶解させるために前記試料(6)を移動させるステップと、
(c)前記試料(6)と前記耐熱成分(12)とを混合するステップと、
(d)前記関心のある核酸を変性させるために第1の温度勾配を印加するステップと、
(e)混合物中の前記非耐熱増幅成分(13)を溶解させるために混合物(6+12)を移動させるステップと、
(f)混合物(6+12)と非耐熱成分(13)とを混合するステップと、
(g)前記変性された核酸を増幅するために少なくとも1つの第2の温度勾配を印加するステップと
を含む方法。
【請求項15】
ステップ(b)の前記耐熱増幅成分(12)は、ステップ(d)での前記第1の温度勾配の前記印加前に、必ずしも耐熱性ではないが、デオキシリボ核酸(DNA)である前記関心のある核酸の消化切断を許容する制限酵素をさらに含有することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(g)の後に、
(h)混合物(6+12+13)を混合するステップと、
(i)前記新しい混合物(6+12+13)の中に含まれる前記検出成分(14)を溶解させるために前記新しい混合物(6+12+13)を移動させるステップと、
(j)前記アンプリコンの存在を検出するステップと
を含むことを特徴とする、アンプリコンを検出するための請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記増幅は、PCR増幅であり、前記PCR増幅のための前記第1の温度勾配は、90℃と100℃の間であり、前記第2の温度勾配は、3つの異なるステップ、すなわち、
・第1の変性温度に対する90℃と100℃との間、好ましくは、約94℃と、
・第2のハイブリダイゼーション温度に対する50℃と60℃との間、好ましくは、約55℃と、
・第3の重合温度に対する70℃と75℃との間、好ましくは、約72℃と、
における温度の交番であることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記増幅は、転写後増幅(NASBA又はTMA)であり、前記転写後増幅のため前記第1の温度勾配は、60℃と70℃の間、好ましくは、約65℃であり、前記第2の温度勾配は、第2の重合温度勾配に対する40℃と50℃の間であることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の温度勾配は、前記第1の区画(8)、及び/又は、前記混合する手段(15)に印加され、前記(複数の)第2の温度勾配は、前記混合する手段(15)、及び/又は、前記第2の区画(9)、及び/又は、前記第3の区画(10)に印加されることを特徴とする、請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の温度勾配は、5分から10分、好ましくは、15分に亘って印加され、
前記(複数の)第2の温度勾配は、
・PCR増幅の場合、
−前記変性に対して、1分未満、好ましくは、2秒から20秒、好ましくは、5秒に亘って、
−前記ハイブリダイゼーションに対して、1分未満、好ましくは、2秒から20秒、好ましくは、5秒に亘って、そして、
−前記重合に対して、2分未満、好ましくは、5秒から80秒、好ましくは、10秒に亘って印加され、
・転写後増幅の場合、2時間未満、好ましくは、5分から80分、より好ましくは、
−RNAターゲット核酸の場合に約60分に亘って、又は、
−DNAターゲット核酸の場合に約90分に亘って印加されることを特徴とする、
請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−505010(P2013−505010A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529330(P2012−529330)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051936
【国際公開番号】WO2011/033231
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(304043936)ビオメリュー (26)
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
【Fターム(参考)】