説明

米の品種識別器具

【課題】米試料の品種および混米の有無を簡略化された操作で、短時間で効率的に、且つ安価で視認性に優れ、特別な装置や専門知識を必要とすることなく識別する技術を提供する。
【解決手段】 捕獲オリゴヌクレオチドと被検米試料由来の核酸とのハイブリダイゼーションにより、米の品種を識別するための器具であって、特定の塩基配列における多型を検出するためのオリゴヌクレオチド等が、支持体に固定化されてなることを特徴とする米の品種識別器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米の品種を識別するための器具、米の品種を識別する方法及び、当該方法を実施するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、現在200種を越える米の品種が栽培されるが、改正JAS法の施行により米の品種名の表示が義務づけられている。しかし、一部では、表示品種以外の米を混米しながら、表示を偽って販売する不正混米が行われている。近年の消費者の良食味指向をうけてコシヒカリなどの良食味品種が高価格で取り引きされている現状や、食品の情報公開への関心の高まりを考慮すると、内容物の表示の正確さは、行政的にも産業的にも重要な課題であり、混米による不正を防止する必要性等から、簡易で精度の高く、実用性の高い米の品種識別技術の開発が求められている。
【0003】
しかしながら、日本において栽培されている殆どの品種が、数種の在来品種をベースとした極近縁種間の交配によって育成されてきた経緯により、これらは極めて類縁しており、形態学的に米の品種識別を行うことは、非常に困難である。
【0004】
一方で近年、米のゲノム配列の解析が進み、米の品種間で差異を示す遺伝的多型を利用した米の品種の識別が試みられている。
【0005】
この手法として具体的には、PCR−RFLP法、RAPD法、STS法、マイクロサテライト法、SNPs法が行われている。
【0006】
PCR−RFLP法(Polymerase Chain Reaction - Restriction Fragment Length Polymorphism)、即ちPCR増幅産物の制限酵素断片長多型法においては、検出に利用する制限酵素の反応条件がRFLPマーカーより異なる場合が多いので、複数の反応条件を用いて多数回の検出を行う必要があり、極めて煩雑で時間がかかるという問題があった(非特許文献1、2、3)。
【0007】
RAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)法は、それぞれ別個のプライマーを1種類だけ加えて増幅したDNAを電気泳動にて分離し、多数の泳動バンドのうちから、識別性のあるバンドを選別して品種識別に使用する。使用するプライマーセットの種類分だけ多数回の増幅反応を行う必要があり、操作が煩雑で時間がかかる。また、識別に用いるバンド以外にも多数の共通バンドが出現するため、複数のプライマーを混合してPCR法による増幅を行うマルチプレックス法を採用することができない、識別バンドは増幅反応温度やDNAの純度や濃度の影響を受けやすい、PCR条件の設定が困難であり、かつ条件を設定しても、識別性や再現性に乏しい等の問題があった(非特許文献4、5、6、7)。
【0008】
STS(Sequence Tagged Site)法は、精米からDNAを抽出し、品種間で相違を示すプライマーを用いてPCR増幅を実施し、増幅の有無により多型を識別する技術である。この方法もまた、類縁品種を数多く識別する場合、増幅に使用するプライマーの種類分だけ多数回の増幅反応を行う必要があり、マルチプレックス法を採用して増幅反応を行うこともできるが、反応に供することができるプライマーの数に限度がある、操作が煩雑で時間がかかる、増幅時に陰性品種にも増幅を生じやすく、識別を困難にする場合がある、識別バンドのうちには、増幅反応温度やDNA濃度等の影響を受けやすく、識別性や再現性の十分でないバンドもある等の問題がある。また、日本の米品種間で見出される多型の多くが2種類の遺伝子型で構成されているにも関わらず、当該技術では1種類の遺伝子型しか検出できないという欠点がある。従って、異品種の米を1〜3割程度混米した場合や複数の品種を混米した場合に、品種の組み合わせによっては他方の遺伝子型に対するプライマーも準備して検出を試みる必要性が生じ、混米の有無および混米された品種を簡易迅速、且つ正確に判定することは困難な場合がある。さらにこの方法は、RAPD法によって同定されたバンドに基づく方法であるため、塩基配列がかなり異なる多型を有するゲノム部分を対象とする場合のみ使用可能であり、1塩基置換による多型を判別することが困難である(特許文献1、2、3、非特許文献8)。
【0009】
マイクロサテライト法は、塩基の繰り返しのパターンにより構成されるマイクロサテライト配列領域の繰り返し数の違いを利用して品種識別を行う方法である。反復配列間の微細な相違を検出する必要があり、アクリルアミドゲルを用いた電気泳動で分析しないと多型が明瞭に観察できない。アクリルアミドゲルでの分析は、通常のアガロースゲルを用いた電気泳動での分析と比較して、非常に煩雑である。従って当該方法は簡易且つ迅速な品種判別手法としては普及が困難で、多数の試料を分析するには不向きであるという問題がある。また、近縁間イネ品種の品種識別を行うには、一層、多様なマーカーが提供されることが必要となるが現状は満足できるものではない(特許文献4、5、非特許文献9、10、11)。
【0010】
また、近年米の品種間で相違を示す1塩基多型(SNPs, Single Nucleotide Polymorphism)を検出して米の品種を識別する手法も提供されている。当該技術は、SNP部位の一塩基手前までに対合するプライマーを用い、蛍光標識したヌクレオチドを一塩基だけ取り込ませる反応を行った後、各蛍光の偏光度を測定して取り込まれた塩基種を特定することで多型を判定する。類縁品種を数多く識別する場合、多数のプライマーを用意して個別に測定を行う必要があり、また、蛍光標識を用いるので、煩雑で且つコストが高いという問題を含有する。さらには、安定的な判別のためには、高価な装置を使用する必要がある。(非特許文献12、13)。
【0011】
以上の通り、米の品種を識別するためにゲノム配列の遺伝的多型を利用した種々の方法が開発されている。
しかし前述したように、日本において栽培されている殆どの米品種が極めて類縁していることから、異なる品種であってもその品種間で多型が共通していることが多く、それらの品種を厳密に特定するためには品種を識別するのに十分な程度の多数の遺伝子多型を取り揃えなければならない。
従って上述の方法を用いたとしても、米品種の厳密な特定をするためには被検試料が有する相当多数の遺伝子多型について分析しなければならず、さもなくば異なる品種を同一の品種であると誤って結論付けてしまうという問題が生じてしまう。
ところが上述の方法は本質的に迅速性、効率性、正確性が不十分な方法であるため、これらの手法を、品種を識別するのに十分な程度の多数の遺伝子多型の分析に適用すると、分析に時間がかかり、効率が悪くなってしまうという欠点がある。
つまり、米の品種識別検査に対する需要が高まり、被検米試料の数が急増している状況下、上述の方法によって迅速かつ効率的に米品種の厳密な特定を行うのは容易ではなく現実的ではない。
従って数多くの遺伝子多型を一括して判別でき、より簡便で効率よく、視認性に優れ、正確に米の品種を識別できる方法が希求されており、さらには品種混合の有無およびその混合された品種の判別が簡易迅速かつ正確である技術が希求されている。
【0012】
一方、標識ターゲット核酸を支持体上で捕獲して、その有無や存在比を解析するマイクロアレイ技術が近年開発された。これは、多数の捕獲オリゴヌクレオチドを支持体上に固定化し、標識ターゲット核酸を捕獲オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせて捕獲し、ターゲット核酸の有無や存在比を網羅的に解析する技術であり(非特許文献14)、特殊機器や熟練を要せずに迅速、正確、安価な品種の識別を可能にする。しかし、米の品種の識別に当該技術が利用された報告はこれまでにない。
【特許文献1】特許第3048149号公報
【特許文献2】特開2000−287691号公報
【特許文献3】特開2001−95589号公報
【特許文献4】特開平10−57073号公報
【特許文献5】特開2004−65251号公報
【非特許文献1】Botstein, D, et al., (1980) A M. J. Hum. Genet.32: 314-331
【非特許文献2】Wang, A. Y. et al, (1992) Theor. Appl. Genet. 83: 565-581
【非特許文献3】Zang, Q. et al, (1992) Theor. Appl. Genet. 83: 495-459
【非特許文献4】Virk, P. S. et al, (1995) Heredity 74: 170-179
【非特許文献5】Ishii T. et al, (1996) Genes Genet. Syst. 71: 195-201
【非特許文献6】大坪研一ら (1997) 日本食品科学工学会誌44: 386-390
【非特許文献7】橋野陽一ら (1998) 食総研報 62: 9-12
【非特許文献8】大坪研一ら (2000) 食料振興 68: 4-15
【非特許文献9】Powell,W.et al.,(1996) Trends Plant Sci 1:215-222
【非特許文献10】McCouch,SR.et al.,(1997)Plant Mol Biol 35:89-99
【非特許文献11】赤木宏守ら (2000) 米麦改良 2月号 p.14-24
【非特許文献12】Nasu, S. etal, (2002) DNA Res. 2002 31;9(5):163-71.
【非特許文献13】門奈理佐ら (2004) 農業と園芸 1月号 p.163-167
【非特許文献14】Nat. Genet. (1999) supplement pp.1-60
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、米試料の品種および混米の有無を、簡略化された操作で、短時間で効率的に、且つ安価で視認性に優れ、特別な装置や専門知識を必要とすることなく識別する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討したところ、米のゲノム配列における特定の多型が米の品種の識別に有用であること、及びある種のオリゴヌクレオチドを用いることにより、ハイブリダイゼーション効率の差を指標に、それらの多型を効率よく検出できることを見出した。そして更に、同一の試薬を用い、同一の反応条件において、同一の反応系で米の複数の多型を同時に検出することが可能であることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は、捕獲オリゴヌクレオチドと被検米試料由来の核酸とのハイブリダイゼーションを指標に、米の品種を識別するための器具であって、下記の(1)及び(2)からなる群より選ばれる1種以上の捕獲オリゴヌクレオチドが、支持体に固定化されてなることを特徴とする米の品種識別器具を提供するものである。
(1)10〜40塩基長であって、以下の(a)〜(t)のいずれかに相当する位置における多型を検出するためのオリゴヌクレオチド:
(a)配列番号1で示される塩基配列における89位及び/又は92位
(b)配列番号2で示される塩基配列における71位
(c)配列番号3で示される塩基配列における104位
(d)配列番号4で示される塩基配列における401位、466位及び/又は547位
(e)配列番号5で示される塩基配列における126位
(f)配列番号6で示される塩基配列における106位
(g)配列番号7で示される塩基配列における97位及び/又は98位
(h)配列番号8で示される塩基配列における90位
(i)配列番号9で示される塩基配列における66位と67位の間
(j)配列番号10で示される塩基配列における39位
(k)配列番号11で示される塩基配列における36位、44位、62位、63位、73位、78位、189位及び/又は115位と116位の間
(l)配列番号12で示される塩基配列における30位、32位、39位、43位、46位及び/又は188位
(m)配列番号13で示される塩基配列における69位、87位、135位、153位、195位、204位、216位及び/又は283位
(n)配列番号14で示される塩基配列における70位
(o)配列番号15で示される塩基配列における51位、53位、158位、193位及び/又は182位〜193位の間
(p)配列番号16で示される塩基配列における142位と143位の間
(q)配列番号17で示される塩基配列における51位及び/又は53位
(r)配列番号18で示される塩基配列における40位及び/又は65位
(s)配列番号19で示される塩基配列における120位、411位、490位及び/又は537位
(t)配列番号23で示される塩基配列における45位
(2)10〜40塩基長であって、以下の(u)〜(w)で示される塩基配列を検出するためのオリゴヌクレオチド:
(u)配列番号20で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(v)配列番号21で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(w)配列番号22で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
【0016】
また、本発明は、配列番号28〜配列番号70で示される塩基配列若しくはそれと相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なオリゴヌクレオチドを提供するものである。
【0017】
また、本発明は、上記の捕獲オリゴヌクレオチドの配列又はそれと相補的な配列を含むゲノムDNA領域において、当該捕獲オリゴヌクレオチド又はそれと相補的な配列の5’端から5’側に向かって500塩基以内に設計され、かつ、10〜40塩基の長さからなるオリゴヌクレオチド、及び当該捕獲オリゴヌクレオチドの3’端から3’側に向かって500塩基以内に設計され、かつ、10〜40塩基の長さからなるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なプライマーからなるプライマー対を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、下記の(1)及び(2)からなる群より選ばれるプライマー対を提供するものである。
(1)配列番号1〜配列番号19、配列番号23で示される塩基配列の多型部位を含む領域の核酸をそれぞれ増幅するために用いられる下記の(a)〜(t)から選ばれるプライマー対若しくはそれと相補的な塩基配列からなるプライマー対又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なプライマー対。
(a)配列番号71で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号72で示される塩基配列からなるプライマー
(b)配列番号73で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号74で示される塩基配列からなるプライマー
(c)配列番号75で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号76で示される塩基配列からなるプライマー
(d)配列番号77で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号78で示される塩基配列からなるプライマー
(e)配列番号79で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号80で示される塩基配列からなるプライマー
(f)配列番号81で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号82で示される塩基配列からなるプライマー
(g)配列番号83で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号84で示される塩基配列からなるプライマー
(h)配列番号85で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号86で示される塩基配列からなるプライマー
(i)配列番号87で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号88で示される塩基配列からなるプライマー
(j)配列番号89で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号90で示される塩基配列からなるプライマー
(k)配列番号91で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号92で示される塩基配列からなるプライマー
(l)配列番号93で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号94で示される塩基配列からなるプライマー
(m)配列番号95で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号96で示される塩基配列からなるプライマー
(n)配列番号97で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号98で示される塩基配列からなるプライマー
(o)配列番号99で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号100で示される塩基配列からなるプライマー
(p)配列番号101で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号102で示される塩基配列からなるプライマー
(q)配列番号103で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号104で示される塩基配列からなるプライマー
(r)配列番号105で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号106で示される塩基配列からなるプライマー
(s)配列番号107で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号108で示される塩基配列からなるプライマー
(t)配列番号115で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号116で示される塩基配列からなるプライマー
(2)配列番号20〜配列番号22で示される塩基配列を含む核酸を、それぞれ増幅するために用いられる下記の(u)〜(w)から選ばれるプライマー対若しくはそれと相補的な塩基配列からなるプライマー対又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なプライマー対。
(u)配列番号109で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号110で示される塩基配列からなるプライマー
(v)配列番号111で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号112で示される塩基配列からなるプライマー
(w)配列番号113で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号114で示される塩基配列からなるプライマー
【0019】
また、本発明は、下記の(1)及び(2)で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと被検米試料由来の核酸とをハイブリダイゼーションし、ハイブリッド形成の有無に基づき当該核酸中に存在する1又は2以上の多型を検出することを特徴とする米の品種識別方法を提供するものである。
(1)10〜40塩基長であって、以下の(a)〜(t)のいずれかに相当する位置における多型を検出するためのオリゴヌクレオチド:
(a)配列番号1で示される塩基配列における89位及び/又は92位
(b)配列番号2で示される塩基配列における71位
(c)配列番号3で示される塩基配列における104位
(d)配列番号4で示される塩基配列における401位、466位及び/又は547位
(e)配列番号5で示される塩基配列における126位
(f)配列番号6で示される塩基配列における106位
(g)配列番号7で示される塩基配列における97位及び/又は98位
(h)配列番号8で示される塩基配列における90位
(i)配列番号9で示される塩基配列における66位と67位の間
(j)配列番号10で示される塩基配列における39位
(k)配列番号11で示される塩基配列における36位、44位、62位、63位、73位、78位、189位及び/又は115位と116位の間
(l)配列番号12で示される塩基配列における30位、32位、39位、43位、46位及び/又は188位
(m)配列番号13で示される塩基配列における69位、87位、135位、153位、195位、204位、216位及び/又は283位
(n)配列番号14で示される塩基配列における70位
(o)配列番号15で示される塩基配列における51位、53位、158位、193位及び/又は182位〜193位の間
(p)配列番号16で示される塩基配列における142位と143位の間
(q)配列番号17で示される塩基配列における51位及び/又は53位
(r)配列番号18で示される塩基配列における40位及び/又は65位
(s)配列番号19で示される塩基配列における120位、411位、490位及び/又は537位
(t)配列番号23で示される塩基配列における45位
(2)10〜40塩基長であって、以下の(u)〜(w)で示される塩基配列を検出するためのオリゴヌクレオチド:
(u)配列番号20で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(v)配列番号21で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(w)配列番号22で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
【0020】
また、本発明は、捕獲オリゴヌクレオチド、ハイブリダイゼーション工程及びハイブリッド検出工程で用いる試薬を含むことを特徴とする上記方法を実施するための米の品種識別キットを提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の米の品種識別器具及び方法を用いれば、視認性に優れ正確且つ簡便に米の品種の識別を行うことが出来る。また、捕獲オリゴヌクレオチドを複数固定化することにより、操作を繰り返すことなく一度に多数の多型を網羅して判定することができるので、極めて近縁な関係にある米品種を迅速に識別でき、混米であるか否かを迅速且つ簡便に識別することができる。また、本発明のプライマーを用いれば、当該捕獲オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより米の品種識別に用いることができる被検米試料由来の核酸を調製することができる。また、本発明の品種識別用キットは、上記米品種識別器具および必要な試薬を含むものであるため、これを用いることにより、一層簡便に米の品種判別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明で提供する米の品種識別器具は、捕獲オリゴヌクレオチドと被検米試料由来の核酸とのハイブリダイゼーションにより、米の品種を識別するための器具であって、下記の(1)及び(2)から選ばれる1種以上の捕獲オリゴヌクレオチドが、支持体上に固定されてなることを特徴とするものである。
(1)10〜40塩基長であって、以下の(a)〜(t)のいずれかに相当する位置における多型を検出するためのオリゴヌクレオチド。
(a)配列番号1で示される塩基配列における89位及び/又は92位
(b)配列番号2で示される塩基配列における71位
(c)配列番号3で示される塩基配列における104位
(d)配列番号4で示される塩基配列における401位、466位及び/又は547位
(e)配列番号5で示される塩基配列における126位
(f)配列番号6で示される塩基配列における106位
(g)配列番号7で示される塩基配列における97位及び/又は98位
(h)配列番号8で示される塩基配列における90位
(i)配列番号9で示される塩基配列における66位と67位の間
(j)配列番号10で示される塩基配列における39位
(k)配列番号11で示される塩基配列における36位、44位、62位、63位、73位、78位、189位及び/又は115位と116位の間
(l)配列番号12で示される塩基配列における30位、32位、39位、43位、46位及び/又は188位
(m)配列番号13で示される塩基配列における69位、87位、135位、153位、195位、204位、216位及び/又は283位
(n)配列番号14で示される塩基配列における70位
(o)配列番号15で示される塩基配列における51位、53位、158位、193位及び/又は182位〜193位の間
(p)配列番号16で示される塩基配列における142位と143位の間
(q)配列番号17で示される塩基配列における51位及び/又は53位
(r)配列番号18で示される塩基配列における40位及び/又は65位
(s)配列番号19で示される塩基配列における120位、411位、490位及び/又は537位
(t)配列番号23で示される塩基配列における45位
(2)10〜40塩基長であって、以下の(u)〜(w)で示される塩基配列を検出するためのオリゴヌクレオチド。
(u)配列番号20で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(v)配列番号21で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(w)配列番号22で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
【0023】
上記捕獲オリゴヌクレオチドは、米由来の核酸中に存在する多型を検出するためのオリゴヌクレオチドであり、被検米試料由来の核酸断片とのハイブリダイズを試み、そのハイブリダイズの効率の結果によって、当該核酸断片の性質を識別する方法に用いることができるオリゴヌクレオチドである。
【0024】
なお、ここでいうヌクレオチドには、DNA、RNA、ペプチド核酸、又はロックド核酸(Locked Nucleic Acid(LNA))などが含まれるが、DNA又はRNAが好ましく、DNAがより好ましい。また、ここで米由来の核酸中に存在する多型とは、比較対象となる米どうしでの塩基配列の差異を意味し、1塩基〜数百塩基の置換、欠失、挿入、付加を含む概念である。
【0025】
配列番号1〜23に示した塩基配列が由来する米の品種は、日本晴である。また、上記(a)〜(r)に示す多型の有無などの情報は、Rice Genome Research Programにて公開されているイネゲノム配列およびRFLPマーカー情報、GenBankに登録されている配列などを元に、多型の周辺配列を解析して多型位置を特定し、見出された新規の多型である。また、上記(s)に示す多型は、社団法人農林水産先端技術産業振興センターのRice Genome Research Programにて公開されているマーカーの物理的ゲノム位置およびプライマー情報などを利用して選出されたものである。上記(t)に示す多型は、米品種間の識別性の高いバンドを増幅するプライマーとして開示されている塩基配列情報などを元に選出されたものである。
【0026】
上記の遺伝子における多型の位置は、その位置よりも上流側における配列中のヌクレオチドの挿入、欠失等によって変化し得る。上記の「相当する位置」とは、このように、遺伝子配列中の絶対的位置が変わった場合、配列番号1〜19及び23に示す基準配列中の相対位置を示すものである。すなわち、本発明で検出する多型は、配列番号1〜19、23で開示された塩基配列と、識別対象となりうる被検米が有する核酸の塩基配列とを比較することにより、配列番号1〜19、23で示される塩基配列における多型に相当すると適宜理解される多型を含む。したがって、本発明における多型の検出は、多型と理解される部位の周辺において、配列番号1〜19又は23で示される塩基配列とは必ずしも一致しないような核酸をターゲット核酸として行う検出をも含む。
【0027】
本願発明における捕獲オリゴヌクレオチドとしては、例えば、上記(a)〜(t)で示した多型部位を含む領域からなる核酸断片を用いることができる。斯かるオリゴヌクレオチドと、被検試料に由来する核酸とをハイブリダイゼーションさせると、多型の部位の塩基の相違により、捕獲オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズ効率において差が生じるため、ハイブリダイゼーション効率の検出結果をもとに、その被検試料に由来する核酸が多型部位においてどのような配列を有していたかを知ることができる。
【0028】
斯かる多型を含む領域からなる核酸断片の設計は、配列番号1〜23記載の塩基配列から、当該多型部位を含む塩基配列を選ぶことにより、又はそれらと相補的な塩基配列を選ぶことにより行うことができる。なお、多型部位が複数含まれている場合、当該部位を同時に含むものが好ましい。
【0029】
また、斯かる核酸断片の設計としては、当該多型部位において、塩基が置換、欠失及び/又は付加された配列番号1〜23記載の塩基配列から、当該多型部位を含む塩基配列を選ぶことによって、又はそれらと相補的な塩基配列を選ぶことによっても行うことができる。ここで置換又は付加としては、天然にある塩基への置換又は付加に限らず、人工的に作製された塩基への置換又は付加でもよい。なお、多型部位が複数存在する場合、それらいずれについても置換、欠失及び/又は付加がなされた配列から選ぶのが好ましい。
【0030】
かくして設計される核酸断片としては、例えば、配列番号28〜65、69若しくは70で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0031】
また、本発明の捕獲オリゴヌクレオチドは、かくして設計されるオリゴヌクレオチドの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なオリゴヌクレオチド、すなわち、例えば、斯かるオリゴヌクレオチドにおいて、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されたオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドと同様に被検試料に由来する核酸にハイブリダイズし、且つ多型の検出をすることができるオリゴヌクレオチドも用いることができる。
【0032】
また、上記の設計において、設計されるオリゴヌクレオチドの塩基長は、特に限定されるものではないが、短鎖の場合はハイブリッドの形成が困難になり、長鎖の場合は非特異的な塩基配列を有する核酸とのハイブリッドの形成を許容し、多型の判定が難しくなるので、公知の手法により特定塩基の含有率、同一塩基の連続性等の配列特性を考慮し、決定することが好ましい。標準的な長さとしては10〜40塩基が好ましく、10〜25塩基がより好ましく、12〜22塩基がさらに好ましい。
【0033】
また、かくして設計された捕獲オリゴヌクレオチドが、米の品種識別に利用することができない場合、ハイブリダイゼーションを妨げる要因であるヘアピン構造、ループ構造、又はそれ以外の立体構造的障害を持つことにより、機能が阻害されていることが考えられるため、斯かる場合、例えば、捕獲オリゴヌクレオチドを構成する1又はそれ以上の塩基をイノシン又はいずれの塩基とも対合しない核酸に置換するなどの検討を行うことが好ましい。
【0034】
(a)〜(t)で示される配列番号1〜23記載の塩基配列に存在する多型部位における塩基の置換、欠失又は付加としては、以下に挙げるものが好ましい。当該配列に存在する多型を検出するためのオリゴヌクレオチドの具体例及び当該オリゴヌクレオチドが識別できる米の品種と併せて示す。
【0035】
(a)配列表の配列番号1で示される塩基配列においては、89位に相当する位置におけるGからAへの置換、92位に相当する位置におけるAからGへの置換(但し、Aはアデニン、Cはシトシン、Gはグアニン、Tはチミンを表す。以下同様に表記する)が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号28および29に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号28記載の塩基配列及び配列番号29記載の塩基配列は、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、あいちのかおり、むつほまれ、あさひの夢、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、キヌヒカリ、夢つくしからなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0036】
(b)配列表の配列番号2で示される塩基配列においては、71位に相当する位置におけるCからTへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号30および31に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号30記載の塩基配列及び配列番号31記載の塩基配列は、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、あいちのかおり、むつほまれ、あさひの夢、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、キヌヒカリ、夢つくし、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0037】
(c)配列表の配列番号3で示される塩基配列においては、104位に相当する位置におけるCからTへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号32および33に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号32記載の塩基配列及び配列番号33記載の塩基配列は、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、キヌヒカリ、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、あさひの夢を識別するのに用いることができる。
【0038】
(d)配列表の配列番号4で示される塩基配列においては、401位に相当する位置におけるAからGへの置換、466位に相当する位置におけるCからAへの置換、547位に相当する位置におけるTからAへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号34および35に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号34記載の塩基配列及び配列番号35記載の塩基配列は、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、キヌヒカリ、はえぬき、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、あさひの夢、ハツシモ、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、きらら397、ほしのゆめ、ななつぼし、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0039】
(e)配列表の配列番号5で示される塩基配列においては、126位に相当する位置におけるCからTへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号36および37に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号36記載の塩基配列及び配列番号37記載の塩基配列は、コシヒカリ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、キヌヒカリ、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、むつほまれ、あさひの夢、ななつぼし、からなる群から選ばれる品種と、ひとめぼれ、ササニシキ、あいちのかおり、ハツシモ、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0040】
(f)配列表の配列番号6で示される塩基配列においては、106位に相当する位置におけるTからCへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号38および39に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号38記載の塩基配列及び配列番号39記載の塩基配列は、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、キヌヒカリ、はえぬき、つがるロマン、ササニシキ、日本晴、夢つくし、あいちのかおり、ハツシモ、からなる群から選ばれる品種と、コシヒカリ、あきたこまち、きらら397、ほしのゆめ、ゆめあかり、ハナエチゼン、むつほまれ、あさひの夢、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0041】
(g)配列表の配列番号7で示される塩基配列においては、97位に相当する位置におけるAからGへの置換、98位に相当する位置におけるTからGへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号40および41に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号40記載の塩基配列及び配列番号41に示される塩基配列は、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、キヌヒカリ、はえぬき、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、きらら397、ほしのゆめ、あさひの夢、ハツシモ、ななつぼし、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0042】
(h)配列表の配列番号8で示される塩基配列においては、90位に相当する位置におけるTからGへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号42および43に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号42記載の塩基配列及び配列番号43に示される塩基配列は、はえぬき、ササニシキ、日本晴、ハナエチゼン、あさひの夢、ハツシモ、からなる群から選ばれる品種と、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、キヌヒカリ、ほしのゆめ、つがるロマン、ゆめあかり、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0043】
(i)配列表の配列番号9で示される塩基配列においては、66位と67位の間に相当する位置における配列番号24で示した塩基配列の挿入が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号44および45に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号44記載の塩基配列及び配列番号45に示される塩基配列は、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、キヌヒカリ、ほしのゆめ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、あさひの夢、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、はえぬき、つがるロマン、ササニシキ、むつほまれ、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0044】
(j)配列表の配列番号10で示される塩基配列においては、39位に相当する位置におけるAからGへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号46および47に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号46記載の塩基配列及び配列番号47に示される塩基配列は、例えばコシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、きらら397、キヌヒカリ、ほしのゆめ、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、あさひの夢、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、あきたこまち、はえぬき、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、むつほまれ、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0045】
(k)配列表の配列番号11で示される塩基配列においては、36位に相当する位置におけるAからTへの置換、44位に相当する位置におけるTからCへの置換、62位に相当する位置におけるTからCへの置換、63位に相当する位置におけるGからAへの置換、73位に相当する位置におけるCからGへの置換、78位に相当する位置におけるTからAへの置換、189位に相当する位置におけるCからAへの置換、115位と116位の間に相当する位置における配列番号25に示す塩基配列の挿入が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号48および49に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号48記載の塩基配列及び配列番号49に示される塩基配列は、例えばコシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、キヌヒカリ、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、あさひの夢、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0046】
(l)配列表の配列番号12で示される塩基配列においては、30位に相当する位置におけるAからGへの置換、32位に相当する位置におけるCからTへの置換、39位に相当する位置におけるCからAへの置換、43位に相当する位置におけるGからAへの置換、46位に相当する位置におけるAからCへの置換、188位に相当する位置におけるAからGへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号50および51に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号50記載の塩基配列及び配列番号51に示される塩基配列は、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、キヌヒカリ、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、あさひの夢、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0047】
(m)配列表の配列番号13で示される塩基配列においては、69位に相当する位置におけるCからTへの置換、87位に相当する位置におけるCからTへの置換、135位に相当する位置におけるTからCへの置換、153位に相当する位置におけるGからAへの置換、195位に相当する位置におけるCからTへの置換、204位に相当する位置におけるTからAへの置換、216位に相当する位置におけるCからTへの置換、283位に相当する位置におけるCからAへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号52および53に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号52記載の塩基配列及び配列番号53に示される塩基配列は、例えば日本晴、ハナエチゼン、あいちのかおり、ハツシモ,ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、キヌヒカリ、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、夢つくし、むつほまれ、あさひの夢、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0048】
(n)配列表の配列番号14で示される塩基配列においては、70位に相当する位置におけるCからTへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号54および55に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号54記載の塩基配列及び配列番号55に示される塩基配列は、例えばコシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、キヌヒカリ、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、あさひの夢、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、ハナエチゼン等からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0049】
(o)配列表の配列番号15で示される塩基配列においては、51位に相当する位置におけるCからTへの置換、53位に相当する位置におけるGからAへの置換、158位に相当する位置におけるCからTへの置換、193位に相当する位置におけるGからAへの置換、あるいは183位から192位に相当する位置における配列番号26に示す塩基配列の欠失が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号56および57に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号56記載の塩基配列及び配列番号57に示される塩基配列は、例えば、はえぬき、ササニシキ、日本晴、ハナエチゼン、あさひの夢、ハツシモ、からなる群から選ばれる品種と、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、キヌヒカリ、ほしのゆめ、つがるロマン、ゆめあかり、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0050】
(p)配列表の配列番号16で示される塩基配列においては、142位と143位の間に相当する位置における配列番号27に示す塩基配列の挿入が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号58および59に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号58記載の塩基配列及び配列番号59に示される塩基配列は、例えばコシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、キヌヒカリ、はえぬき、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、あさひの夢、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、きらら397、ほしのゆめ、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0051】
(q)配列表の配列番号17で示される塩基配列においては、51位に相当する位置におけるTからAへの置換、53位に相当する位置におけるCからGへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号60および61に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号60記載の塩基配列及び配列番号61に示される塩基配列は、例えばコシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、キヌヒカリ、はえぬき、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、あさひの夢、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、きらら397、ほしのゆめ、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0052】
(r)配列表の配列番号18で示される塩基配列においては、40位に相当する位置におけるCからTへの置換、65位に相当する位置におけるCからGへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号62および63に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号62記載の塩基配列及び配列番号63に示される塩基配列は、例えばコシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、キヌヒカリ、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種と、あさひの夢、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0053】
(s)配列表の配列番号19で示される塩基配列においては、120位に相当する位置におけるAからTへの置換、411位に相当する位置におけるAからCへの置換、490位に相当する位置におけるAからGへの置換、537位に相当する位置におけるGからAへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号64および65に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号64記載の塩基配列及び配列番号65に示される塩基配列は、例えばあきたこまち、キヌヒカリ、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ゆめあかり、日本晴、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、あさひの夢、ハツシモ、ななつぼし、からなる群から選ばれる品種と、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、きらら397、ササニシキ、ハナエチゼン、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0054】
(t)配列表の配列番号23で示される塩基配列においては、45位に相当する位置におけるTからAへの置換が好ましい。これらの多型を検出する捕獲オリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号69および70に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。また、例えば、配列番号69記載の塩基配列及び配列番号70に示される塩基配列は、例えばコシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、からなる群から選ばれる品種と、例えばきらら397、キヌヒカリ、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、あさひの夢、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ、からなる群から選ばれる品種を識別するのに用いることができる。
【0055】
かくして設計された捕獲オリゴヌクレオチドは、遺伝子工学的手法により、又は合成的方法により作製することができる。合成的方法としては、例えば、通常の固相合成法が挙げられる。当該方法による合成は、市販のDNA合成機を用いることにより行うことができる。
【0056】
かくして作製された捕獲オリゴヌクレオチドと、当該オリゴヌクレオチドに相当する領域からなる被検試料由来の核酸断片とのハイブリダイズを試みた場合、当該核酸断片の中に多型部位が存在するため、異品種試料から得た当該核酸断片が同等の長さであるなどで同等の領域に相当する場合であっても、当該核酸断片を得た由来の違いによって、多型の有無によりハイブリダイズの効率に差が生じる。したがって、斯かる捕獲オリゴヌクレオチドは、多型を検出するのに有用である。
【0057】
さらに、本発明における捕獲オリゴヌクレオチドとしては、以下の(u)〜(w)で示される塩基配列を検出するためのオリゴヌクレオチドを用いることもできる。
(u)配列番号20で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(v)配列番号21で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(w)配列番号22で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
【0058】
上記(u)〜(w)で示される塩基配列からなるヌクレオチドは、米品種間の識別性の高いバンドを増幅するプライマーとして開示されている塩基配列情報を元に、発明者が、プライマーの位置する周辺領域の遺伝子配列を解析し、マイクロアレイによる識別方法に適する形で選出した、それぞれ以下の(1)〜(3)に示されるプライマー対を用いてPCR反応を行った場合の増幅産物である。
(1)配列番号109で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号110で示される塩基配列からなるプライマー。
(2)配列番号111で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号112で示される塩基配列からなるプライマー。
(3)配列番号113で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号114で示される塩基配列からなるプライマー。
斯かるプライマー対は、米の有する塩基配列における多型などの何らかの原因により、ある品種においてはPCR産物を増幅できるものの、他のある品種においてはPCR産物を増幅できないような性質を有している。したがって、斯かる増幅産物を検出することにより、品種を識別することができる。
【0059】
上記の(u)〜(w)で示される塩基配列若しくはそれと相補的な塩基配列を検出するための捕獲オリゴヌクレオチドとしては、当該配列からなるヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いることができ、例えば、(u)〜(w)で示される塩基配列若しくはそれらと相補的な配列の全部又は一部からなるオリゴヌクレオチドを用いることができる。さらには、本発明の捕獲オリゴヌクレオチドは、かくして設計されるオリゴヌクレオチドの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なオリゴヌクレオチド、すなわち、例えば、斯かるオリゴヌクレオチドにおいて、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されたオリゴヌクレオチドであって、(u)〜(w)で示される塩基配列からなるヌクレオチドにハイブリダイズし、且つ当該ヌクレオチドを検出をすることができるオリゴヌクレオチドも用いることができる。
【0060】
斯かる捕獲オリゴヌクレオチドの長さとしては、特に限定されるものではないが、標準的な長さとしては10〜40塩基が好ましく、10〜25塩基がより好ましく、12〜22塩基がさらに好ましい。
【0061】
斯かる捕獲オリゴヌクレオチドとしては、より具体的には、例えば配列番号66で示される塩基配列若しくはそれと相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なオリゴヌクレオチド、配列番号67で示される塩基配列若しくはそれと相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なオリゴヌクレオチド、配列番号68で示される塩基配列若しくはそれと相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なオリゴヌクレオチドが挙げられ、それぞれ、配列番号20で示される塩基配列、配列番号21で示される塩基配列、配列番号22で示される塩基配列を検出するのに有用である。
【0062】
配列番号66で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いて検出できる米の品種としては、例えばひとめぼれ、ヒノヒカリ、きらら397、はえぬき、ほしのゆめ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、あいちのかおり、むつほまれ、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめが挙げられる。
【0063】
配列番号67で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いて検出できる米の品種としては、例えばきらら397、ななつぼしが挙げられる。
【0064】
配列番号68で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いて検出できる米の品種としては、例えばキヌヒカリ、つがるロマン、ササニシキ、むつほまれが挙げられる。
【0065】
斯かる捕獲オリゴヌクレオチドは、遺伝子工学的手法により、又は合成的方法により作製することができる。合成的方法としては、例えば、通常の固相合成法が挙げられる。当該方法による合成は、市販のDNA合成機を用いることにより行うことができる。
【0066】
上述のとおり、本発明の捕獲オリゴヌクレオチドを用いれば、米のある品種からなる群とその他の品種からなる群を識別することが可能である。したがって、被検米の品種がある程度特定されている場合、例えば被検米の品種の候補が2種類に絞られている場合などには、最適な捕獲オリゴヌクレオチドを一つ選び判別に供することによって、品種を識別することができる。また、この場合、捕獲オリゴヌクレオチドを複数用いれば、より確実に品種を特定することができる。
【0067】
ここで、捕獲オリゴヌクレオチドを複数組み合わせて用いる場合、識別は、オリゴヌクレオチドごとに別個に行うこともでき、また、複数のオリゴヌクレオチドを同一の器具に固定して行うこともできるが、識別が迅速に行えること、及び識別が容易であることから、複数のオリゴヌクレオチドを同一の器具に固定して行うことが好ましい。
【0068】
本発明の米の品種識別器具は、上記により設計された捕獲オリゴヌクレオチドを、支持体に固定することにより作製することができる。
ここで、固定する捕獲オリゴヌクレオチドは、上述の如く単数でも複数でもよいが、品種をより正確に特定するためには、複数であることが好ましい。
ここで、複数用いる場合に用いるオリゴヌクレオチドの選択は、当該オリゴヌクレオチドが識別することができる米の品種の種類と、識別したい米の品種と、識別したい米が該当する可能性のある米の品種の情報を参酌することにより、適宜設計すればよい。また、極めて近縁の品種も確実に識別するために、同一の支持体上で複数、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上の多型を網羅的に検出することが、操作の簡便性および識別の正確性と迅速性の観点から好ましい。
【0069】
当該捕獲オリゴヌクレオチドを固定する支持体は、捕獲オリゴヌクレオチドを安定して固定することができ、被検米試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーション及び、ハイブリッドの検出に必要な反応工程に耐え得るものであれば、その材質は特に制限されず、例えば有機高分子、無機高分子、金属、天然高分子、セラミック等を使用することができる。
【0070】
ここで、有機高分子としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビリニデン、ポリフッ化エチレン、ポリイミド及びアクリル樹脂等が挙げられる。また、無機高分子としては、ガラス、水晶、カーボン、シリカゲル及び、グラファイト等が挙げられる。また、金属としては、金、白金、銀、銅、鉄、アルミニウム、磁石、パラマグネット等が挙げられる。また、天然高分子としては、ポリアミノ酸、セルロース、キチン、キトサン、アルギン酸及び、それらの誘導体等が挙げられる。また、セラミックとしては、アパタイト、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素及び、炭化ホウ素等が挙げられる。
【0071】
支持体の形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、板状、フィルム状、膜状、粒子状等の支持体を好適に用いることが出来るが、板状のものが好ましい。
【0072】
本発明においては、担体を支持体に担持させて、担体を介して捕獲オリゴヌクレオチドを支持体に固定化してもよい。担体としては、担体自体が捕獲オリゴヌクレオチドに結合性を有してもよく、捕獲オリゴヌクレオチドに結合性を有するリンカーを介して捕獲オリゴヌクレオチドを固定化できるものであってもよい。ここで、「担持」とは、担体に捕獲オリゴヌクレオチドを固定化する際や捕獲オリゴヌクレオチドの固定化支持体を実際の検出に用いる際等に用いられる水溶性溶剤、有機溶剤等の各種溶剤中で、支持体から上記担体が実質的に脱離しないことを意味する。
【0073】
担体は、上記支持体上に担持される限り、単に物理的な接着性を利用して担持されていてもよく、また、化学的に共有結合等を介して担持されていてもよい。また、上記担体は、必要に応じ、支持体上の全面において担持されていても、また、その一部において担持されていてもよい。
【0074】
担体としては、有機低分子、有機高分子、無機高分子、金属、天然高分子、セラミック等が挙げられる。ここで、有機低分子としては、例えば、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、窒素イペリット基含有化合物、アルデヒド基含有化合物、アミノ基含有化合物等が挙げられる。また、有機高分子、無機高分子、金属、セラミックは、前記したものと同様のものを使用することができる。本発明において特に好ましい担体は、カルボジイミド基含有化合物又はイソシアネート基含有化合物である。
【0075】
捕獲オリゴヌクレオチドを支持体に固定する手段は、多型の判定ができれば特に制限されるものでなく、公知の方法を適宜選択して用いれば良い。例えば、単に物理的な接着性を利用して固定されていてもよく、また、化学的に共有結合等を介して固定されていてもよい。また、紫外線等の電磁波を照射することによって固定することもできる。さらに、捕獲オリゴヌクレオチドとカルボジイミド樹脂、窒素イペリット、ポリアミノ酸、ニトロセルロース等の公知の化合物を化学的に結合又は物理的に結合した状態で、これら混合物と担体を接触させ固定させても良く、また、このとき適宜紫外線等の電磁波を照射して固定を行うこともできる。
【0076】
ここで、支持体において上記捕獲オリゴヌクレオチドを固定する場所については、支持体の全面であっても、また、その一部にであってもよい。
【0077】
また、捕獲オリゴヌクレオチドを支持体上に固定化する際、固定化されたオリゴヌクレオチドが占める場所の形状は、被検米試料に由来する核酸とのハイブリッド形成に影響を及ぼさず、また、検出が困難にならなければ特にその形状は制限されないが、例えば、円形、四角形などが挙げられる。
【0078】
固定化に用いられる具体的な手段としては、分注機器を用いる方法、ピン式スポット機器を用いる方法、インクジェット式スポット機器を用いる方法などが例示でき、これらにより捕獲オリゴヌクレオチド溶液は、通常ほぼ円形の形状にて支持体の一部分に固定化できる。
【0079】
支持体上へ各捕獲オリゴヌクレオチドが固定化される部位のサイズは、径10μm〜1,000μmのサイズに固定されることが好ましい。これより小さいと検出が困難になり、また、これより大きいと配置された捕獲オリゴヌクレオチド全体の占める面積が大きくなり、操作性が悪くなるという問題が生じることがある。
【0080】
各捕獲オリゴヌクレオチドの支持体上への配置は、各多型の判定が出来れば特に制限されないが、各多型の判定を容易にするために、多型の判定に用いられる捕獲オリゴヌクレオチドを1区画にまとめるか、あるいは一列に並べるなどして配置することが好ましい。
【0081】
なお、担体を支持体に担持させて、担体を介して捕獲オリゴヌクレオチドを支持体に固定する場合、捕獲オリゴヌクレオチドの固定は、担体に直接担持させる方法のほか、捕獲オリゴヌクレオチドに担体との結合性を有するリンカーを介して担体に担持させる方法により行うことができる。ここで、リンカーとしては、例えばカルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、窒素イペリット基含有化合物、アルデヒド基含有化合物及びアミノ基含有化合物等が挙げられる。
【0082】
かくして得られる米の品種識別器具は、以下に述べるように、捕獲オリゴヌクレオチドと被検米試料由来の核酸とのハイブリダイゼーションを行うために使用される。
【0083】
本発明の米の品種識別方法は、下記の(1)及び(2)で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと被検米試料由来の核酸とをハイブリダイゼーションし、ハイブリッド形成の有無に基づき当該核酸中に存在する1又は2以上の多型を検出することを特徴とする米の品種識別方法である。
(1)10〜40塩基長であって、以下の(a)〜(t)のいずれかに相当する位置における多型を検出するためのオリゴヌクレオチド:
(a)配列番号1で示される塩基配列における89位及び/又は92位
(b)配列番号2で示される塩基配列における71位
(c)配列番号3で示される塩基配列における104位
(d)配列番号4で示される塩基配列における401位、466位及び/又は547位
(e)配列番号5で示される塩基配列における126位
(f)配列番号6で示される塩基配列における106位
(g)配列番号7で示される塩基配列における97位及び/又は98位
(h)配列番号8で示される塩基配列における90位
(i)配列番号9で示される塩基配列における66位と67位の間
(j)配列番号10で示される塩基配列における39位
(k)配列番号11で示される塩基配列における36位、44位、62位、63位、73位、78位、189位及び/又は115位と116位の間
(l)配列番号12で示される塩基配列における30位、32位、39位、43位、46位及び/又は188位
(m)配列番号13で示される塩基配列における69位、87位、135位、153位、195位、204位、216位及び/又は283位
(n)配列番号14で示される塩基配列における70位
(o)配列番号15で示される塩基配列における51位、53位、158位、193位及び/又は182位〜193位の間
(p)配列番号16で示される塩基配列における142位と143位の間
(q)配列番号17で示される塩基配列における51位及び/又は53位
(r)配列番号18で示される塩基配列における40位及び/又は65位
(s)配列番号19で示される塩基配列における120位、411位、490位及び/又は537位
(t)配列番号23で示される塩基配列における45位
(2)10〜40塩基長であって、以下の(u)〜(w)で示される塩基配列を検出するためのオリゴヌクレオチド:
(u)配列番号20で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(v)配列番号21で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(w)配列番号22で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
【0084】
上記の方法は、具体的には例えば、以下の(A)〜(D)の工程に従って行うのが好ましい。
(A)被検米試料中の米の核酸を調製する核酸調製工程
(B)当該核酸を鋳型としてターゲット核酸を調製するターゲット核酸調製工程
(C)支持体に固定された捕獲オリゴヌクレオチドとターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程
(D)ハイブリダイゼーションシグナルの検出を行うハイブリッド検出工程
【0085】
(A)被検米試料中の米の核酸を調製する核酸調製工程
本工程において、米由来の試料から核酸を調製する。被検試料からの核酸の調製法は公知の核酸調製法を適宜選択して用いることができる。例えば、CTAB法(Murray M.G.,Thompson W.F.:Nucleic Acids Res.,8,4321〜4325)、酵素法、アルカリSDS法等に従って調製することができる。これらの方法は植物のゲノムDNAを抽出する標準的な調製法であるが、多くの代替法があり、いずれを用いても構わない。また、市販されているDNA抽出キットを使用して調製することもできる。
【0086】
被検試料としては、イネであれば特に限定されることは無いが、好ましくは形態学的な品種の識別がより困難な種子、より好ましくは、形態学的又は生化学的な品種の識別がさらに困難になる玄米あるいは精米あるいはそれらの加工品がよい。
【0087】
(B)ターゲット核酸の調製工程
ターゲット核酸とは、被検米が有する核酸の全部又は一部をもとに調製された核酸であって、被検米の品種を反映しうる核酸をいい、その一部又は全部の領域において捕獲オリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることが期待される核酸が好ましく、捕獲オリゴヌクレオチドと相補的な塩基配列若しくはこれと相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価な配列の全部又は一部を含む配列からなる核酸がより好ましい。
【0088】
かかるターゲット核酸の長さは、50〜500塩基が好ましく、70〜300塩基がより好ましい。
【0089】
かかるターゲット核酸は、例えば、被検米試料中の米の核酸を鋳型とし、すなわち例えば、前述の核酸調製工程で調製した核酸を鋳型とし、PCR法等による増幅により得ることができる。ここでPCR法による増幅に用いられるプライマーは、ターゲット核酸が前述の性質を有するように適宜設計すればよいが、当該ターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを行う捕獲オリゴヌクレオチドとして本発明の多型を検出するためのオリゴヌクレオチドを用いる場合には、例えば、「捕獲オリゴヌクレオチドの塩基配列若しくはそれと相補的な配列が含まれるゲノムDNA領域の部分からなるヌクレオチドであって、当該捕獲オリゴヌクレオチド又はそれと相補的な配列の5’端から5’側に向かって500塩基以内に設計され、かつ、10〜40塩基、好ましくは20〜35塩基の長さからなるオリゴヌクレオチド」が挙げられる。また、「当該捕獲オリゴヌクレオチドの塩基配列若しくはそれと相補的な配列が含まれるゲノムDNA領域の部分からなるヌクレオチドであって、当該捕獲オリゴヌクレオチド又はそれと相補的な配列の3’端から3’側に向かって500塩基以内に設計され、かつ、10〜40塩基、好ましくは20〜35塩基の長さからなるオリゴヌクレオチド」も用いることができる。このようなプライマーを適宜組み合わせたプライマー対は、ターゲット核酸の調製に用いることができる。また、このようなプライマーの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なプライマー、すなわち、例えば、その1又は数個の塩基において、置換、欠失及び/又は付加がなされており、かつ、目的とするターゲット核酸を増幅することができるものを用いて行うこともできる。
【0090】
また、上記のPCR法による増幅反応に用いられるプライマーとしては、特定の米品種から調製した核酸を鋳型としたPCR反応を行った場合に特異的な増幅産物が得られるようなプライマーを用いることもできる。かかるプライマーを用いた場合には、かかる増幅産物の塩基配列を検出するための任意のヌクレオチドを、捕獲オリゴヌクレオチドとすればよい。このようなプライマーとしては、例えば、そのプライマー配列の中に、多型存在部位及びその周辺領域が含まれ、且つ、当該多型部位における塩基配列の違いにより、PCR増幅効率に影響が生じるように設計されたプライマーを用いることができる。かかるプライマーとしては、ある種の米が有する核酸の塩基配列のうちの部分配列であって、その3’末端の塩基配列が多型部位に相当するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0091】
また、かかるプライマーとしては、例えば、PCR反応を行ったときに、米の有する塩基配列における多型など、何らかの原因により、ある品種においてはPCR産物が増幅するものの、ある品種においてはPCR産物が増幅しないようなプライマーが挙げられる。また、かかるプライマーとしては、その長さが10〜40塩基のものが好まし、く、更に20〜35塩基のものが好ましい。
【0092】
かくして設計されるプライマーとしては、例えば、ある種の米が有する核酸の塩基配列のうちの部分配列であるプライマーが好ましいが、特定の米品種から調製した核酸を鋳型とした場合に特異的にPCR増幅産物を増幅することができれば、一部の塩基配列において置換、欠失及び/又は付加されていてもかまわない。
【0093】
斯かるターゲット核酸の増幅に用いることができるプライマー対としては、例えば、下記の(a)〜(w)から選ばれるプライマー対若しくはそれと相補的な塩基配列からなるプライマー対又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なプライマー対が挙げられる。
(a)配列番号71で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号72で示される塩基配列からなるプライマー
(b)配列番号73で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号74で示される塩基配列からなるプライマー
(c)配列番号75で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号76で示される塩基配列からなるプライマー
(d)配列番号77で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号78で示される塩基配列からなるプライマー
(e)配列番号79で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号80で示される塩基配列からなるプライマー
(f)配列番号81で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号82で示される塩基配列からなるプライマー
(g)配列番号83で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号84で示される塩基配列からなるプライマー
(h)配列番号85で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号86で示される塩基配列からなるプライマー
(i)配列番号87で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号88で示される塩基配列からなるプライマー
(j)配列番号89で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号90で示される塩基配列からなるプライマー
(k)配列番号91で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号92で示される塩基配列からなるプライマー
(l)配列番号93で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号94で示される塩基配列からなるプライマー
(m)配列番号95で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号96で示される塩基配列からなるプライマー
(n)配列番号97で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号98で示される塩基配列からなるプライマー
(o)配列番号99で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号100で示される塩基配列からなるプライマー
(p)配列番号101で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号102で示される塩基配列からなるプライマー
(q)配列番号103で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号104で示される塩基配列からなるプライマー
(r)配列番号105で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号106で示される塩基配列からなるプライマー
(s)配列番号107で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号108で示される塩基配列からなるプライマー
(t)配列番号115で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号116で示される塩基配列からなるプライマー
(u)配列番号109で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号110で示される塩基配列からなるプライマー
(v)配列番号111で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号112で示される塩基配列からなるプライマー
(w)配列番号113で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号114で示される塩基配列からなるプライマー
上記(a)〜(t)に示されるプライマー対は、それぞれ順に配列番号1〜19、23記載の塩基配列に存在する前記の多型部位を含む領域からなるヌクレオチドを、上記(u)〜(w)に示されるプライマー対は、それぞれ順に配列番号20〜22で示される塩基配列又はそれと相補的な配列からなるオリゴヌクレオチドを増幅することができ有用である。
【0094】
ここで、相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なプライマーとしては、例えば、斯かるプライマーにおいて、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されたプライマーであって、当該プライマーと同等にPCR法による増幅反応を行うことができるプライマーが挙げられる。
【0095】
また、ターゲット核酸は、当該捕獲オリゴヌクレオチドとターゲット核酸のハイブリッド形成の有無を検出するために、標識されていることが好ましい。
【0096】
標識方法は、ハイブリッドの形成を阻害しない方法であれば特に制限されないが、このような方法として、ターゲット核酸の増幅に使用するプライマーを予め標識しておく方法、ターゲット核酸の作製中に標識する方法、及び、ターゲット核酸の作製後に標識する方法が例示できる。
【0097】
標識物質は通常のハイブリダイゼーション法に用いられる標的物質を使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、このような標的物質として蛍光物質やハプテンなどが挙げられ、蛍光物質としては具体的にはフルオレセイン、ローダミン、フィコエリスリン、テキサスレッド、シアニン系蛍光色素が、ハプテンとしては具体的にはビオチン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェニルなどが挙げられる。
【0098】
(C)ハイブリダイゼーション工程
ハイブリダイゼーション工程は、捕獲オリゴヌクレオチドと、上記の標識したターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを行う工程である。ハイブリダイゼーションは上記捕獲オリゴヌクレオチドを固定した例えば核酸検出用メンブレン上などで実施することもできるが、前述した本発明の米の品種識別器具を用いることが好ましい。当該米の品種識別用器具を用いることにより、極近縁な関係にある米の品種も迅速、簡便且つ正確に、視認性に優れた識別を行うことが可能になる。ハイブリダイゼーション工程に用いる方法としては特に限定されるものではなく、公知の核酸ハイブリダイゼーション方法を適宜採用して用いることができる。以下に具体的なハイブリダイゼーション方法の一態様を示す。
【0099】
Standard Saline Citrate(SSC)などの緩衝塩溶液、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ウシ血清アルブミン(BSA)などの非特異的吸着の阻害剤、およびハイブリッド形成反応促進のための添加剤を含む混合溶液に予め標識を施したターゲット核酸を加える。当該ターゲット核酸が2本鎖を形成する場合は、加熱等による変性を施す。捕獲オリゴヌクレオチドが固定された支持体上に上述の標識したターゲット核酸を含む混合溶液を適量、好ましくは20〜100μL添加した後、通常適当な温度、好ましくは30℃〜80℃の熱を数時間加え、支持体上に固定されている捕獲オリゴヌクレオチドとターゲット核酸との塩基配列に特異的なハイブリッドを形成させる。次いで、前出混合溶液を取り除き、支持体上に5×SSC溶液又は3Mテトラメチルクロライド溶液等の溶液を加えて適温、好ましくは30℃〜80℃で加熱し、非特異的なハイブリッドを形成している標識ターゲット核酸を支持体上から剥離させ、特異的なハイブリッドのみを選択的に支持体上に残存させる。
【0100】
(D)ハイブリッド検出工程
ハイブリッド検出工程は、前記ハイブリダイゼーション工程においてハイブリダイゼーションの成立、つまりハイブリッドの有無をハイブリダイゼーションシグナルを検出することにより判定する工程であり、通常上記ハイブリダイゼーション工程と連続的に行われる。
【0101】
ハイブリッド検出工程で用いる方法は、上記のターゲット核酸の調製工程で調製したターゲット核酸を標識した物質に依存する。すなわち、ハイブリッドの検出には、ターゲット核酸の標識に用いられた蛍光物質やハプテン等の標識物質を使用する。従って、当該標識物質を検出できる公知の方法を適宜選択して使用すればよい。例えば、蛍光物質を使用する場合は、専用の蛍光スキャナーを用いてハイブリダイズしたターゲット核酸に標識された蛍光を検出する。他方、ハプテンを使用する場合は、ハプテンを認識するタンパク質又はそれに結合する別のタンパクと、アルカリフォスファターゼ又はホースラディッシュ・パーオキシダーゼなどの結合体(酵素コンジュゲートと呼ぶ)を含む溶液を支持体上に加え、例えば、室温で数10分間反応させる。
【0102】
ハイブリッドの視覚化は、ハプテンと酵素コンジュゲートとの結合体が存在する場合にのみ不溶化合物が形成されるような色素化合物を添加することにより行うことができる。その不溶性化合物の生成は酵素反応によって増幅され、ハイブリッドが形成されている捕獲オリゴヌクレオチドの固定化部位が色素によって可視化される。添加される化合物としては、酵素コンジュゲートの酵素部分がアルカリフォスファターゼで構成される場合には、ニトロブルーテトラゾリウムクロライド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸−p−トルイジン塩が挙げられ、ホースラディッシュ・パーオキシダーゼで構成される場合には、3,3’,5,5’−テトラメチルベンチジンなどが挙げられる。
【0103】
捕獲オリゴヌクレオチドを固定化した位置におけるハイブリッドの色素沈着又は蛍光発色等の有無を判定して多型の型を決定することにより、被検試料中に含まれる米の品種の識別を行うことができる。すなわち、ハイブリッドの形成を検出した場合には、当該色素沈着等が存在する位置に固定化された捕獲オリゴヌクレオチドに対応する品種が、被検試料中に含まれていることを意味する。
【0104】
なお、本発明の方法においては、多型の検出及びその結果に基づく米の品種の識別は、1つ又は2つ以上の上記多型と組み合わせて行ってもよい。被検試料中に2品種以上の米が混在していた場合、当該品種間で多型の型が異なる塩基位置を検出する捕獲オリゴヌクレオチドのいずれの型においてもハイブリッドの形成が認められるので、混米が識別できる。
【0105】
表2及び表3に、配列番号28〜配列番号70に示す塩基配列を有する捕獲オリゴヌクレオチドを支持体上に固定した器具を用いたときの、被検米試料に由来する核酸から調製された標識ターゲット核酸と当該捕獲オリゴヌクレオチドとのハイブリッド形成有無(検出の有無)の対応を示す。
【0106】
本発明の米の品種識別キットは、上述の米の品種識別方法を実施するためのキットであり、捕獲オリゴヌクレオチド、上記ハイブリダイゼーション工程およびハイブリッド検出工程で使用する試薬を含むものである。
【0107】
ハイブリダイゼーション工程で用いる試薬としては、例えばStandard Saline Citrate(SSC)などの緩衝塩溶液、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ウシ血清アルブミン(BSA)などの非特異的吸着の阻害剤、およびハイブリッド形成反応促進のための添加剤などを挙げることができる。
【0108】
ハイブリッド検出工程で用いる試薬としては、例えばハプテンを認識するタンパク質と酵素との結合体(酵素コンジュゲート)や、ニトロブルーテトラゾリウムクロライド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸−p−トルイジン塩、3,3’,5,5’−テトラメチルベンチジン等の試薬を挙げることができる。
【0109】
なお、例示したハイブリダイゼーション工程およびハイブリッド検出工程で使用する試薬は、これらに限定されるものではなく、目的に見合う適切な試薬を適宜選択してキットの構成とすれば良い。
【0110】
当該キットには、本発明の米の品種識別器具を用いるのが好ましい。当該米の品種識別器具を含むキットとすることにより、極近縁な関係にある米の品種も迅速、簡便且つ正確に、視認性に優れた識別を行うことが可能となる。
【0111】
さらに、上記キットは、上記試料核酸調製工程で使用する試薬、及び/又は上記のターゲット核酸の調製工程で使用する試薬を含むものが好ましい。
【0112】
ターゲット核酸の調製工程で使用する試薬としては、例えばPCR用の緩衝液、耐熱性DNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオチド三リン酸混合溶液等が挙げられ、核酸調製工程で使用する試薬としては、DNA抽出用の緩衝液等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく目的に見合う適切な試薬を適宜選択してキットの構成とすれば良い。また、ターゲット核酸を作製するためのプライマーもキットに含めることができる。
【0113】
本発明の米の品種識別器具および各工程に使用する試薬を含むキットを用いることにより、被検試料を受領してから約6時間で被検試料中に含まれる米の品種識別を実施することも可能になる。これは従来法では達成が非常に困難であった。
【0114】
本発明の米の品種識別器具、米の品種識別方法および米の品種識別キットは、米の品種識別に必要な用途全てに用いることができる。具体的には、例えば、播種時における米の種子の判別、苗の判別、収穫時における米の判別、米の流通段階で品種を判別するかあるいは混米の有無を判別する必要がある場合、米の種子の品種を管理する場合、さらには炊飯後の米の品種を判別するかあるいは混米の有無を判別する必要がある場合等に好適に用いられる。
【実施例】
【0115】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本実施例における、多型を含む基準配列の配列番号、捕獲オリゴヌクレオチドの配列番号、ターゲット核酸の調製に用いたプライマーの配列番号の関係を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
〔捕獲オリゴヌクレオチドの合成〕
定法に従い、オリゴヌクレオチド合成機(Perkin−elmer Applied biosystems社製)を用いて、5’末端にアミノ基又は水酸基を有する捕獲オリゴヌクレオチドを合成し、脱保護を施した後、乾燥させた。この捕獲オリゴヌクレオチド乾燥体を10mM Tris−HCl(pH7.5),1mM EDTA緩衝液を用いて溶解し、100pmol/μLの捕獲オリゴヌクレオチド溶液を調製した。本実施例に使用したすべての捕獲オリゴヌクレオチドはこの方法で合成した。
【0118】
合成した捕獲オリゴヌクレオチドの塩基配列を配列番号28〜70に示した。これらのうち、配列番号28〜65、69、70が米の品種に特異的又は米の品種間で高頻に差異を示す特徴的な塩基配列を含む捕獲オリゴヌクレオチドであり、配列番号66〜68が米の品種に特異的な増幅の有無を検出する捕獲オリゴヌクレオチドである。配列番号71〜116は、被検体米由来の核酸を鋳型としたPCR増幅反応によりターゲット核酸を得るためのプライマーである。配列番号28〜70の捕獲オリゴヌクレオチドについては、上述合成機を用いて5’末端にアミノ基を結合させ、配列番号71〜116のプライマーは5’末端にビオチンを結合させた。
【0119】
〔支持体への捕獲オリゴヌクレオチドの供給と固定化〕
5’末端にアミノ基を有する捕獲オリゴヌクレオチド溶液10μLに対してマイクロスポッティング溶液(TeleChem International Inc.)を10μL混合し、マイクロタイタープレート(Greiner Laboratory Ltd.)上に分注した。スポッティングマシンの所定の位置にカルボジイミド樹脂処理化スライドグラス(日清紡績株式会社製「オリゴアレイ」、商標登録第4418627号、第4606691号)を配置し、スポッティングマシンを作動させ、スライドグラス上に捕獲オリゴヌクレオチド溶液を供給した。
【0120】
捕獲オリゴヌクレオチド溶液の供給終了後、スライドグラスに熱水からの蒸気を数秒間あてた。その後、紫外線を600mJ照射した。再度蒸気に数秒間曝露した後、ホットプレート上にスライドグラスを置いて水分を除去した。次いで0.1%硫酸ドデシルナトリウム水溶液でスライドグラスを濯いだ後、蒸留水で濯いだ。
【0121】
スライドグラスを3% BSA(ウシ血清アルブミン)を含む100mM Tris−HCl(pH7.5),100mM NaCl, 0.1% Triton X−100に室温で30分間浸し、ブロッキングした。その後、スライドグラスを室温で乾燥させた後、10mM Tris−HCl(pH7.5),1mM EDTA緩衝液で洗浄した。スライドグラスを再度室温で乾燥させ、使用まで乾燥状態で冷暗所に保存した。
【0122】
〔ターゲット核酸の調製〕
国際特許出願PCT/JP02/00001(国際公開番号WO02/055689)に開示されている1粒の米試料からDNAを抽出する方法にしたがって、米のゲノムDNAを抽出した。被検試料として、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、キヌヒカリ、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ササニシキ、ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、あさひの夢、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめを用いた。
【0123】
〔ターゲット核酸の調製工程〕
上述の方法にて調製した米のゲノムDNAを鋳型として、PCRによりターゲット核酸を調製した。ターゲット核酸の標識方法は、予めハプテンであるビオチンで5‘末端を標識したプライマーを準備してPCRに供することにより実施した。
PCR増幅は以下のようにして行った。サーマルサイクラー用0.2mLチューブにHotstartaq Master Mix Kit(QIGEN K.K.)25μLと、被検米試料に由来するゲノムDNA 1μLと、100pmol/μLの濃度で各々のプライマー対が含まれる溶液を予め用意してこれを2μL添加し、蒸留水で全量を50μLにした。サーマルサイクラー(PTC−200, MJ Research Inc.)にチューブをセットして、(1)95℃:15分、(2)95℃:1分、(3)66℃:90秒、(4)72℃:30秒、(5)72℃、10分の加熱サイクル中、(2)〜(4)を40回繰り返すプログラムを作動させ、反応を終了した。
【0124】
〔ハイブリダイゼーション工程〕
かくして調製したターゲット核酸溶液5μLを取り、0.5mL容チューブに加え、さらにUniHyb Hybridization solution(Telechem International Inc.)45μLを加えて混合し、ハイブリダイゼーション溶液を調製した。この溶液を100℃で5分間加熱処理を行った後、氷中に5分間浸した。このターゲット核酸を含むハイブリダイゼーション溶液を、捕獲オリゴヌクレオチドを固定化した支持体に10μLのせ、さらにカバーフィルムを載せた。42℃にて加温し、1時間静置した。支持体を取り出し、50℃に保温した2×SSC(0.75M NaCl,0.075M クエン酸ナトリウム)に浸してカバーフィルムを除去後、2×SSCに5分間浸す操作を2回行った。
【0125】
〔化学発色検出〕
支持体上の2×SSCを軽く振り払い、次に、VECTASTAIN Elite ABC kit (VECTER社)を用いてアビジンービオチン化ペルオキシターゼ複合体を作製し、支持体上に1.4mLを添加して室温にて30分間静置した。
【0126】
アビジンービオチン化ペルオキシターゼ複合体溶液を軽く振り払い、TBST溶液にて室温で5分間の洗浄を2回繰り返した。TBST溶液を軽く振り払い、TMB substrate kit for peroxidase (Vector Laboratories, Inc.)を1.4mL載せ、室温で30分間酵素反応による色素沈着を行わせた後、支持体を脱イオン水で洗浄し酵素反応を停止させた。
【0127】
〔判定〕
酵素反応による色素沈着は、支持体上に固定化された捕獲オリゴヌクレオチドと被検米体試料由来のターゲット核酸との特異的なハイブリッド形成を示していると考えられることから、この酵素反応後にOA用スキャナー(GT―8700F、エプソン社製)を用いて600dpiの画像密度でスキャンし、スキャンした画像に現れる色素沈着を確認した。必要に応じ、スキャンした画像を電子ファイルとして保存した。
【0128】
〔結果〕
被検米試料として用いた米品種に対するハイブリッドの形成有無を表2(コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397、キヌヒカリ、はえぬき、ほしのゆめ、つがるロマン、ササニシキ)および表3(ゆめあかり、日本晴、ハナエチゼン、夢つくし、あいちのかおり、むつほまれ、あさひの夢、ハツシモ、ななつぼし、ふさおとめ)に示した。なお、表中の+は、ハイブリッドが形成されて色素沈着が検出されることを示し、−はハイブリッドが形成されず色素沈着が検出されないことを示す。
【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

【0131】
被検米試料として用いた20種類の米品種に対する検出結果を図1に示す。なお、被検米試料として、1はコシヒカリを、2はひとめぼれを、3はヒノヒカリを、4はあきたこまちを、5はきらら397を、6はキヌヒカリを、7ははえぬきを、8はほしのゆめを、9はつがるロマンを、10はササニシキを、11はゆめあかりを、12は日本晴を、13はハナエチゼンを、14は夢つくしを、15はあいちのかおりを、16はむつほまれを、17はあさひの夢を、18はハツシモを、19はななつぼしを、20はふさおとめを、21は陰性コントロールを用いた場合の検出結果を示す。上記20品種の色素沈着パターンが異なる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】検出結果の例を示した図である。
【図2】検出結果の例を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕獲オリゴヌクレオチドと被検米試料由来の核酸とのハイブリダイゼーションを指標に、米の品種を識別するための器具であって、下記の(1)及び(2)からなる群より選ばれる1種以上の捕獲オリゴヌクレオチドが、支持体に固定化されてなることを特徴とする米の品種識別器具。
(1)10〜40塩基長であって、以下の(a)〜(t)のいずれかに相当する位置における多型を検出するためのオリゴヌクレオチド:
(a)配列番号1で示される塩基配列における89位及び/又は92位
(b)配列番号2で示される塩基配列における71位
(c)配列番号3で示される塩基配列における104位
(d)配列番号4で示される塩基配列における401位、466位及び/又は547位
(e)配列番号5で示される塩基配列における126位
(f)配列番号6で示される塩基配列における106位
(g)配列番号7で示される塩基配列における97位及び/又は98位
(h)配列番号8で示される塩基配列における90位
(i)配列番号9で示される塩基配列における66位と67位の間
(j)配列番号10で示される塩基配列における39位
(k)配列番号11で示される塩基配列における36位、44位、62位、63位、73位、78位、189位及び/又は115位と116位の間
(l)配列番号12で示される塩基配列における30位、32位、39位、43位、46位及び/又は188位
(m)配列番号13で示される塩基配列における69位、87位、135位、153位、195位、204位、216位及び/又は283位
(n)配列番号14で示される塩基配列における70位
(o)配列番号15で示される塩基配列における51位、53位、158位、193位及び/又は182位〜193位の間
(p)配列番号16で示される塩基配列における142位と143位の間
(q)配列番号17で示される塩基配列における51位及び/又は53位
(r)配列番号18で示される塩基配列における40位及び/又は65位
(s)配列番号19で示される塩基配列における120位、411位、490位及び/又は537位
(t)配列番号23で示される塩基配列における45位
(2)10〜40塩基長であって、以下の(u)〜(w)で示される塩基配列を検出するためのオリゴヌクレオチド:
(u)配列番号20で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(v)配列番号21で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(w)配列番号22で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
【請求項2】
捕獲オリゴヌクレオチドが、配列番号28〜配列番号70で示される塩基配列若しくはそれと相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なオリゴヌクレオチドより選ばれる1種以上である請求項1記載の器具。
【請求項3】
支持体が、表面にカルボジイミド基又はイソシアネート基を有し、当該カルボジイミド基又はイソシアネート基と、捕獲オリゴヌクレオチド又は捕獲オリゴヌクレオチド末端に付加されたリンカーが共有結合してなる請求項1又は2記載の器具。
【請求項4】
配列番号28〜配列番号70で示される塩基配列若しくはそれと相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1又は2記載の捕獲オリゴヌクレオチドの配列又はそれと相補的な配列を含むゲノムDNA領域において、当該捕獲オリゴヌクレオチド又はそれと相補的な配列の5’端から5’側に向かって500塩基以内に設計され、かつ、10〜40塩基の長さからなるオリゴヌクレオチド、及び当該捕獲オリゴヌクレオチドの3’端から3’側に向かって500塩基以内に設計され、かつ、10〜40塩基の長さからなるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なプライマーからなるプライマー対。
【請求項6】
下記の(1)及び(2)からなる群より選ばれるプライマー対。
(1)配列番号1〜配列番号19、配列番号23で示される塩基配列の多型部位を含む領域の核酸をそれぞれ増幅するために用いられる下記の(a)〜(t)から選ばれるプライマー対若しくはそれと相補的な塩基配列からなるプライマー対又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なプライマー対。
(a)配列番号71で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号72で示される塩基配列からなるプライマー
(b)配列番号73で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号74で示される塩基配列からなるプライマー
(c)配列番号75で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号76で示される塩基配列からなるプライマー
(d)配列番号77で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号78で示される塩基配列からなるプライマー
(e)配列番号79で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号80で示される塩基配列からなるプライマー
(f)配列番号81で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号82で示される塩基配列からなるプライマー
(g)配列番号83で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号84で示される塩基配列からなるプライマー
(h)配列番号85で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号86で示される塩基配列からなるプライマー
(i)配列番号87で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号88で示される塩基配列からなるプライマー
(j)配列番号89で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号90で示される塩基配列からなるプライマー
(k)配列番号91で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号92で示される塩基配列からなるプライマー
(l)配列番号93で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号94で示される塩基配列からなるプライマー
(m)配列番号95で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号96で示される塩基配列からなるプライマー
(n)配列番号97で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号98で示される塩基配列からなるプライマー
(o)配列番号99で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号100で示される塩基配列からなるプライマー
(p)配列番号101で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号102で示される塩基配列からなるプライマー
(q)配列番号103で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号104で示される塩基配列からなるプライマー
(r)配列番号105で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号106で示される塩基配列からなるプライマー
(s)配列番号107で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号108で示される塩基配列からなるプライマー
(t)配列番号115で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号116で示される塩基配列からなるプライマー
(2)配列番号20〜配列番号22で示される塩基配列を含む核酸を、それぞれ増幅するために用いられる下記の(u)〜(w)から選ばれるプライマー対若しくはそれと相補的な塩基配列からなるプライマー対又はこれらの塩基配列と相同な塩基配列からなり且つ機能的に等価なプライマー対。
(u)配列番号109で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号110で示される塩基配列からなるプライマー
(v)配列番号111で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号112で示される塩基配列からなるプライマー
(w)配列番号113で示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号114で示される塩基配列からなるプライマー
【請求項7】
下記の(1)及び(2)で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと被検米試料由来の核酸とをハイブリダイゼーションし、ハイブリッド形成の有無に基づき当該核酸中に存在する1又は2以上の多型を検出することを特徴とする米の品種識別方法。
(1)10〜40塩基長であって、以下の(a)〜(t)のいずれかに相当する位置における多型を検出するためのオリゴヌクレオチド:
(a)配列番号1で示される塩基配列における89位及び/又は92位
(b)配列番号2で示される塩基配列における71位
(c)配列番号3で示される塩基配列における104位
(d)配列番号4で示される塩基配列における401位、466位及び/又は547位
(e)配列番号5で示される塩基配列における126位
(f)配列番号6で示される塩基配列における106位
(g)配列番号7で示される塩基配列における97位及び/又は98位
(h)配列番号8で示される塩基配列における90位
(i)配列番号9で示される塩基配列における66位と67位の間
(j)配列番号10で示される塩基配列における39位
(k)配列番号11で示される塩基配列における36位、44位、62位、63位、73位、78位、189位及び/又は115位と116位の間
(l)配列番号12で示される塩基配列における30位、32位、39位、43位、46位及び/又は188位
(m)配列番号13で示される塩基配列における69位、87位、135位、153位、195位、204位、216位及び/又は283位
(n)配列番号14で示される塩基配列における70位
(o)配列番号15で示される塩基配列における51位、53位、158位、193位及び/又は182位〜193位の間
(p)配列番号16で示される塩基配列における142位と143位の間
(q)配列番号17で示される塩基配列における51位及び/又は53位
(r)配列番号18で示される塩基配列における40位及び/又は65位
(s)配列番号19で示される塩基配列における120位、411位、490位及び/又は537位
(t)配列番号23で示される塩基配列における45位
(2)10〜40塩基長であって、以下の(u)〜(w)で示される塩基配列を検出するためのオリゴヌクレオチド:
(u)配列番号20で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(v)配列番号21で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
(w)配列番号22で示される塩基配列又はそれと相補的な塩基配列
【請求項8】
被検米試料由来の核酸が、被検米試料中の米の核酸を鋳型とし、請求項5又は6記載のプライマー対を用いた増幅によって得られたターゲット核酸である、請求項7記載の米の品種判別方法。
【請求項9】
以下の(A)〜(D)の工程を行うことを特徴とする請求項7又は8記載の米品種の識別方法。
(A)被検米試料中の米の核酸を調製する核酸調製工程
(B)当該核酸を鋳型としてターゲット核酸を調製するターゲット核酸調製工程
(C)支持体に固定された捕獲オリゴヌクレオチドとターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程
(D)ハイブリダイゼーションシグナルの検出を行うハイブリッド検出工程
【請求項10】
捕獲オリゴヌクレオチド、ハイブリダイゼーション工程及びハイブリッド検出工程で用いる試薬を含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項記載の方法を実施するための米の品種識別キット。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1項記載の器具を用いる請求項10項記載のキット。
【請求項12】
さらに、試料核酸調製工程、及び/又はターゲット核酸調製工程で用いる試薬を含む請求項10又は11記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−158253(P2006−158253A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352381(P2004−352381)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【出願人】(502444825)ジェネティックアイディー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】