説明

米の製造装置及び米の製造方法

【課題】抗酸化能を付与した体内環境へ好ましい作用を発揮すると思われることが可能な米の製造装置を提供することを解決すべき課題とする。
【解決手段】プラチナ粒子を担持させたセラミックス担体に水を接触させて処理水を製造する水処理装置1と処理水に玄米を接触させる工程を1回又は繰り返し行い、その玄米の含水率を全体の質量を基準として、14%〜17%の含水率に調湿した原料玄米を製造する調湿装置31、32と原料玄米の表面を研削して原料玄米の表面の糠層の少なくとも一部を剥離する研削精米処理を行って研削精米を製造する研削精米装置5と研削精米を処理水にて洗浄後、乾燥する洗浄装置6とを有することにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米の製造装置及び米の製造方法に関し、詳しくは抗酸化能を有する米の製造装置及び米の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々のアプローチから健康増進に寄与することを目指した研究が行われている。その中でも、高血圧、糖尿病、そして、いわゆるメタボリックシンドロームなどと称される病気予備状態などの対策が急務とされている。
【0003】
本願発明者らは、食環境、住環境などの身の回りの通常の環境について改善することにより体内環境を改善し、これらの疾病又は疾病予備状態に対抗することを目指して研究を行っている。その研究の一環として、空気中への抗酸化物質の放出、空気清浄機、浄水器などにおける水に対する抗酸化性の付与などの観点に基づく知見を得ている。
【0004】
その研究における体内環境の改善の基本的な考え方として、新鮮な食品、新鮮な空気、新鮮な水を摂取することとしている。そのために、酸化還元触媒による還元反応を進行させること(抗酸化能発揮)を目指している。
【0005】
本願発明者らは抗酸化能を付与する対象として広く主食として食されている米に着目した。日々、自然に食べている米に抗酸化能を付与することができれば、日々の食生活を変えることなく生活改善が可能になり、理想的な体内環境が簡単に手に入るという利点がある。
【0006】
ところで、米に機能性を付与したものとしては発芽玄米が知られている。発芽玄米は発芽途中の玄米であり、GABAなどの有用成分を多く含むことが知られ、多くの商品が好評をもって上市されており、それと同様に米に抗酸化能を付与できれば歓迎されるものと思われる。
【0007】
玄米は白米と比べてビタミンB群を始めとした種々の栄養素に富んでいるが、糠層の存在により食味の改善が求められている。本願発明者のうちの一人は玄米の食味改質を目的として入荷された玄米の改質方法を開示している(特許文献1)。
【0008】
特許文献1に開示した改質方法では水を用いて玄米の含水率を所定の範囲に制御した後に果皮部分を所定量だけ研磨する方法を採用することにより、非常に優れた食味改善効果が認められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−219141号公報
【特許文献2】特開平5−192594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
後述する実施例にて詳細は説明するが、プラチナ粒子により改質した処理水を採用して玄米の処理を行う工程を採用することにより、充分な水の品質を確保できるばかりか、精米操作された米の抗酸化能が向上し、更には、食味の更なる改善が認められた。
【0011】
本願は上記知見に基づき完成したものであり、抗酸化能を付与することが可能な抗酸化能を有する米の製造装置及び製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する請求項1に係る米の製造装置の特徴は、プラチナ粒子を担持させたセラミックス担体に水を接触させて処理水を製造する水処理手段と、
前記原料玄米の表面を研削して前記原料玄米の表面の糠層の少なくとも一部を剥離する研削精米処理を行って研削精米を製造する研削精米手段と、
前記研削精米を前記処理水にて洗浄後、乾燥する洗浄手段と、
を有することにある。
【0013】
上記課題を解決する請求項2に係る米の製造装置の特徴は、請求項1において、前記処理水に玄米を接触させる工程を1回又は繰り返し行い、その玄米の含水率を全体の質量を基準として、14%〜17%の含水率に調湿した前記原料玄米を製造する調湿手段を有することにある。
【0014】
上記課題を解決する請求項3に係る米の製造装置の特徴は、請求項2において、前記調湿手段は、前記玄米を気体と共に流動化させる流動化手段と、流動化させた前記玄米に粒子状の前記処理水を噴射する処理水噴射手段とを有することにある。
【0015】
上記課題を解決する請求項4に係る米の製造装置の特徴は、請求項3において、前記処理水噴射手段は、前記処理水の少なくとも一部を粒径が5nm〜200nmの粒子にする微細化手段をもつことにある。
【0016】
上記課題を解決する請求項5に係る米の製造装置の特徴は、請求項4において、前記微細化手段は、圧電基板と前記圧電基板の表面に配置された一対の交叉指状の櫛形電極対と前記櫛形電極対間に所定周期の高周波信号を印加して前記圧電基板を振動させて当該圧電基板表面を伝播する表面弾性波を発生させるための高周波印加手段と前記圧電基板の表面に前記処理水を供給する処理水供給手段とを備えることにある。
【0017】
上記課題を解決する請求項6に係る米の製造装置の特徴は、請求項1〜5の何れか1項において、前記処理水は処理前よりも還元電位が低いことにある。
【0018】
上記課題を解決する請求項7に係る米の製造方法の特徴は、原料玄米の表面を研削して前記原料玄米の表面の糠層の少なくとも一部を剥離する研削精米処理を行って研削精米を製造する研削精米工程と、
プラチナ粒子を担持させたセラミックス担体に水を接触させて製造した処理水にて前記研削精米を洗浄後、乾燥する洗浄工程と、
を有することにある。
【0019】
上記課題を解決する請求項8に係る米の製造方法の特徴は、請求項7において、前記処理水に玄米を接触させる接触工程を1回又は繰り返し行い、その玄米の含水率を全体の質量を基準として、14%〜17%の含水率に調湿した前記原料玄米を製造する調湿工程を有することにある。
【0020】
上記課題を解決する請求項9に係る米の製造方法の特徴は、請求項8において、前記接触工程は、前記玄米を気体と共に流動化させる流動化手段と、流動化させた前記玄米に粒子状の前記処理水を噴射する処理水噴射手段とにより行うことにある。
【0021】
上記課題を解決する請求項10に係る米の製造方法の特徴は、請求項9において、前記処理水噴射手段は、前記処理水の少なくとも一部を粒径が5nm〜200nmの粒子にする微細化手段をもつことにある。
【0022】
上記課題を解決する請求項11に係る米の製造方法の特徴は、請求項10において、前記微細化手段は、圧電基板と前記圧電基板の表面に配置された一対の交叉指状の櫛形電極対と前記櫛形電極対間に所定周期の高周波信号を印加して前記圧電基板を振動させて当該圧電基板表面を伝播する表面弾性波を発生させるための高周波印加手段と前記圧電基板の表面に前記処理水を供給する処理水供給手段とを備えることにある。
【0023】
上記課題を解決する請求項12に係る米の製造方法の特徴は、請求項7〜11の何れか1項において、前記処理水は処理前よりも還元電位が低いことにある。
【発明の効果】
【0024】
請求項1、7に係る発明によると、プラチナ粒子を担持させたセラミックス担体に接触させて調製した処理水を用いて研削により生成した糠を洗浄することにより、米に何らかの変化が生じ抗酸化能が付与できる。また、付随的な効果として食味も向上する。
【0025】
請求項2、8に係る発明によると、プラチナ粒子を担持させたセラミックス担体に接触させて調製した処理水を用いて玄米の含水率を調節することにより、玄米へ与える影響が大きくなり、より多くの抗酸化能を付与できる。そして更に食味が向上できる。
【0026】
請求項3、9に係る発明によると、玄米の表面に必要十分な量の処理水を接触させることができる。気体と共に流動化させた玄米に粒子状とした処理水を噴射することにより、玄米の表面に均一に処理水を接触させることができ、それぞれの玄米における含水率のバラツキを小さくすることができる。
【0027】
請求項4、10に係る発明によると、玄米に噴射する処理水の粒径を5nm〜200nmの範囲に調節することにより、製造された精米の食味が向上することが分かっている。この理由としては明らかではないが、玄米内部への処理水の浸透が促進されるためと考えられる。
【0028】
請求項5、11に係る発明によると、表面弾性波を用いて処理水を微細化する機構は簡単な機構で粒径5nm〜200nmといったナノメートルオーダーの粒子を製造することができ、装置を簡略化することができる。
【0029】
請求項6、12に係る発明によると、処理水として処理前と比較して還元電位が低いものを採用することで精米の食味及び抗酸化能がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例にて用いた精米機の概略図である。
【図2】実施例にて用いた精米機の調湿装置の概略図である。
【図3】実施例にて用いた精米機の調湿装置に採用した微細化手段の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の米の製造装置及び米の製造方法について実施形態(精米機及び精米方法)に基づき詳細に説明する。本実施形態の米の製造装置及び米の製造方法は原料となる玄米(原料玄米)に対して精米操作をして精米にするために用いる。ここで、精米とは白米ばかりではなく、原料玄米の糠層の一部を研削したものであれば含めることとする。従って原料玄米に対する精米の程度については特に限定しない。例えば、精米率を96%〜98%程度とすることにより、糠層の剥離を僅かなものとした場合には栄養学的に玄米とほぼ同等の精米を提供することも可能である。当然、白米や胚芽付の白米にまで精米操作を行っても良い。
【0032】
(米の製造装置:精米機)
本実施形態の精米機は、水処理手段と、必要に応じて採用される調湿手段と、研削精米手段と、洗浄手段と、その他必要な手段とを有する。
・水処理手段
水処理手段はプラチナ粒子を担持させたセラミックス担体に水を接触させて処理水を製造する手段である。プラチナ粒子を担持させたセラミックス担体を水が流れる流路中に配設し、水と接触させることにより処理水とする。処理水としては処理前よりも酸化還元電位が低いことが望ましい。酸化還元電位の測定は適正な参照電極及び作用電極を用いて常法により行う。
【0033】
プラチナは、水に対して、又は、水に含まれる極微量の不純物に対して作用することにより酸化還元電位を低下させる。プラチナ粒子は水に接触することにより水を処理水に変化させる。従って比表面積が大きい方が効果的に水に接触させることができるため、できるだけ粒径が小さい方が望ましい。例えば、その体積平均粒径は1nm〜10nm程度にでき、好ましくは1nm〜5nm程度にできる。そして、特に質量基準で90%の粒子の粒径が0.1nm〜10nmに入るものであることが望ましい。セラミックス担体に対してプラチナ粒子の含有量は特に限定されず、必要に応じて適正な量だけ混合される。
【0034】
ここで、処理水中にはプラチナ粒子を懸濁させても良い。プラチナ粒子の懸濁は200μg/mLの濃度にて調製したコロイド溶液を処理水1Lあたり0.0001mL〜0.001mL程度の量を含有させればよい。懸濁させるプラチナ粒子の粒径としては前述のナノメートルオーダーの粒子(体積平均粒径は1nm〜10nm程度にでき、好ましくは1nm〜5nm程度にできる。そして、特に質量基準で90%の粒子の粒径が0.1nm〜10nmに入るものであることが望ましい。)とすることが望ましい。このような低濃度でプラチナ粒子を含有させる場合には凝集が抑制されるため、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アスコルビン酸などのコロイド化剤は必須ではない。特に後述するSAWデバイスを用いた調湿装置を採用する場合には処理水の粒径を非常に小さくできるため極微量の処理水にて効果的に作用させることが可能になるため、プラチナ粒子を含有させる効果が高くなる。
【0035】
セラミックス担体はセラミックスから形成されており、その形状は任意である。例えば、球状、ハニカム状、板状、粉末状とすることができる。セラミックス担体が粉末状である場合、その大きさはプラチナ粒子と同じかそれ以上の大きさであれば十分であり、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。また、0.1μm以上とすることが好ましく、0.5μm以上とすることがより好ましい。多孔質体とすることもできる。セラミックス担体として内部を貫通する孔をもつ多孔質体にすることにより、内部を水が通過可能にできる。セラミックス担体を形成するセラミックスとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、粘土化合物を焼成したもの、そして、これらの混合物が例示できる。特にシリカ、アルミナが望ましい。
【0036】
セラミックス担体上にプラチナ粒子を担持させる方法としては特に限定しない。セラミックス担体上にプラチナ粒子を付着させて焼成する方法や、両者の間にコロイダルシリカなどの結着材を介設して固着させる方法が例示される。コロイダルシリカを介設する場合にコロイダルシリカを含有させる量としては特に限定しないが、全体の質量を基準として、20%〜50%程度とすることが望ましく、25%〜30%程度とすることが更に望ましい。
【0037】
セラミックス担体にプラチナ粒子を担持させる方法としては特に限定しない。例えば、プラチナ粒子を分散させた分散液中にセラミックス担体を浸漬させた後、乾燥又は焼成させる方法が挙げられる。プラチナ粒子を分散させた分散液の分散媒としては水、有機溶媒(アルコールなど)のいずれも採用できる。また、安定して分散させるために分散剤を用いることができる。分散剤としては特に限定されないが、いわゆる増粘剤、界面活性剤、カルボキシ基を化学構造中に含むカルボキシ基含有化合物(ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アスコルビン酸など)が例示できる。分散媒は乾燥により除去し、分散剤は酸化雰囲気下での加熱(例えば800℃〜1100℃での加熱)による酸化などにより除去することができる。
・調湿手段
調湿手段は処理水に玄米を接触させる工程を1回又は繰り返し行い、その玄米の含水率を全体の質量を基準として、14%〜17%の含水率に調湿した原料玄米を製造する手段である。処理水に玄米を接触させる工程の後には玄米の内部に水分が浸透できるように適正な時間放置することが望ましい。放置する際に空気などの気体を玄米中に導入して撹拌を行い、同時に玄米の表面に付着している余分な処理水を蒸発させて除去することもできる。この放置する工程は処理水に接触させる工程の間に適宜行うことができる。
【0038】
処理水を玄米に接触させる方法としては処理水中に玄米を浸漬する方法、玄米に処理水を噴霧する方法などがあり、好ましくは玄米を気体と共に流動化させてその中に処理水の粒子を噴射する方法が挙げられる。気体と共に流動化させた玄米を上方に噴射しながら、処理水の粒子を噴射することで玄米の表面に均一に処理水を接触させることができる。
【0039】
処理水の粒子としては特に限定されず、ナノメートルオーダーの粒子からミリメートルオーダーの粒子まで任意の大きさの粒子を採用することができる。例えば、霧吹きなどにより製造できる霧状(例えば50μm〜1mm程度)にしたり、水蒸気発生装置などにより製造できる湯気状(例えば5μm以下)などの大きさが採用できる。更に、5nm〜200nmの粒子を調製できる微細化手段を採用することにより、均一に玄米への給水を行うことができる。微細化手段としては後述する表面弾性波を用いる装置や、水滴に高電圧を印加することで自身の電荷の反発力により微細化する装置などが採用できる。
【0040】
表面弾性波を用いてナノメートルオーダーの粒子を生成する装置としては圧電基板と櫛形電極対と高周波印加手段と処理水供給手段とを備えるものが例示される。圧電基板は圧電材料から形成される。圧電材料としては水晶、ニオブ酸リチウムなどの一般的なものが採用できる。櫛形電極対は櫛状に突出する電極が互い違いに組み合わされるように(指を交叉するように)1組の電極を圧電基板の表面にて組み合わせた構成をもつ。この櫛形電極対の櫛が形成されるピッチにより生成する表面弾性波の周波数が制御できる。圧電基板上に櫛形電極対を配設した状態で表面弾性波素子(SAWデバイス)を構成する。高周波印加手段は圧電基板を構成する圧電材料の種類と櫛形電極対の形状とにより適正値が決定される周波数(例えば共振周波数)を発生し、櫛形電極対に供給する手段である。通常、60MHz以上の高周波を印加する。この高周波を印加することにより励振する。処理水供給手段は圧電基板の表面に処理水を供給する手段である。供給方法はどのような方法であってもよい。ペリスターポンプなどの定量ポンプにより処理水を圧電基板表面に供給したり、圧電基板の表面に接触する吸水体などが例示できる。
【0041】
ここで、玄米の状態で処理水を接触させるため、処理水を無駄なく玄米に給水させることができる。また、後述する研削精米手段にて玄米の表面の糠層を研削する前であるため、研削により糠層から漏れ出した成分が処理水と共に精米の胚乳中に浸透することを防止でき、風味に優れる精米が提供できる。なお、後述する洗浄手段により洗浄した精米においては風味が損なわれるおそれが少ないため、再度調湿手段を適用して精米の含水率を適正に制御することもできる。
・研削精米手段
研削精米手段は原料玄米の表面を研削して原料玄米の表面の糠層の少なくとも一部を剥離する研削精米処理を行って研削精米を製造する手段である。研削の方法は特に限定しない。精米率を96%〜98%程度にするなど精米の程度を低くして、玄米の栄養素を残存させる場合には研削はダイヤモンド砥粒などを用いて行うことが望ましい。ダイヤモンド砥粒などの鋭い砥粒を用いて糠層を研削すると、糠層に微細な孔を形成することができるため、玄米の栄養素を保ったまま炊飯時における内部への水分の浸透を促進することができる。ダイヤモンド砥粒を用いた研削精米手段としては外周面にダイヤモンド砥粒を固着させた精米ロールを内部に配設する精米室を有する手段が例示できる。精米ロールとしては軸状に形成されたものであり、外周面に沿って螺旋突条が形成されると共に、この螺旋突条の表面にの少なくとも一部ダイヤモンド砥粒が固着されたものが挙げられる。この精米ロールが回転することにより、螺旋突条の動きに伴い原料玄米は精米ロールの軸方向に移動すると共にその表面をダイヤモンド砥粒により研削されることになる。
・洗浄手段
洗浄手段は、研削精米を処理水にて洗浄後、乾燥する手段である。洗浄は研削精米手段により表面に残存する研削屑を除去することを目的とする。処理水にて洗浄を行うことにより、抗酸化能に優れる精米を提供できる。
【0042】
(米の製造方法:精米方法)
本実施形態の精米方法は、必要に応じて採用される調湿工程と、研削精米工程と、洗浄工程と、その他必要な工程とを有する。
【0043】
調湿工程はプラチナ粒子を担持させたセラミックス担体に水を接触させて製造した処理水に玄米を接触させる接触工程を1回又は繰り返し行い、その玄米の含水率を全体の質量を基準として、14%〜17%の含水率に調湿した原料玄米を製造する工程である。処理水の製造については前述の処理水供給手段にて説明したものが採用できるため更なる説明は省略する。調湿の詳細については前述の調湿手段にて説明したものが採用できるため更なる説明は省略する。
【0044】
研削精米工程は原料玄米の表面を研削して原料玄米の表面の糠層の少なくとも一部を剥離する研削精米処理を行って研削精米を製造する工程である。前述の研削精米手段にて説明したものが採用できるため更なる説明は省略する。
【0045】
洗浄工程は研削精米を前記処理水にて洗浄後、乾燥する工程である。前述の洗浄手段にて説明したものが採用できるため更なる説明は省略する。
【実施例1】
【0046】
以下、本発明の米の製造装置及び米の製造方法について実施例に基づき更に詳細に説明する。
【0047】
本実施例の精米装置は、図1に示すように、水処理装置1とコンテナ2と第1搬送機1と第1調湿装置31と第2搬送機42と第2調湿手段32と研削精米装置5と第3搬送機43と洗浄装置6とを有する。
【0048】
水処理装置1は内部にプラチナ粒子が表面に担持されたセラミックス担体としてのセラミックスボール(プラチナ担持セラミックスボール)が充填されており、水が流通可能に構成されている。流通された水はプラチナ担持セラミックスボールに接触することにより処理水になり、吐出路12を介して第1調湿装置31、第2調湿装置32、洗浄装置6に向けて各供給路13、14、15を通じて供給される。水は水道水、井戸水などを用いることができ、本実施例では水道水が水処理装置1の水入り口11に接続される。プラチナ担持セラミックスボールを充填する量としては特に限定しないが、水処理装置1により処理する水の量に応じて適正に充填する。例えば、水の還元電位が目的の値以下になるように選択することができる。
【0049】
コンテナ2は本精米機により精米処理される米穀を一時的に保持する部材である。第1調湿装置31は前述の水処理装置1により処理されて調製された処理水を玄米に噴霧し、玄米の含水率を調整する手段である。コンテナ2から第1調湿装置31には第1搬送機41にて搬送される。第1調湿装置31内で玄米に処理水を接触させる手段としては特に限定しない。例えば、貯留された処理水内に玄米を浸漬する手段、玄米を保持している上部から処理水を噴霧する手段(処理水噴射手段)、玄米を空気と共に流動化させた中に処理水を噴霧する図2に示すような手段(流動化手段31c、処理水噴射手段31b;図2においては流路311及び312の間を切り替える機構の記載が省略されている)などが挙げられる。噴霧する処理水の粒径は50μm〜1mm程度である。第1搬送機41により玄米を空気と共に流動化させた状態で、筐体31a内にて噴出口31c(流動化手段)から上方(矢印Eのように)に噴出させ、処理水をノズル31b(処理水噴射手段)から連続的乃至断続的に噴霧することにより玄米の表面が濡れすぎることがなくなり、玄米の含水率をその断面深さ方向において均一に近づけることができる。ここで、玄米の含水率は14%〜17%の範囲になるように調節する。含水率は処理水の噴霧量、処理水を接触させた状態での保持時間、処理温度などにより調節できる。噴霧量は多い方が、保持時間は長い方が、温度は高い方が、それぞれ含水率を高くすることができる。第1調湿装置31において玄米の含水率が目的の範囲に入って調湿工程が完了するまでは、第1調湿装置31から流路311の方向(矢印A)に玄米を流し、第1搬送機41を通じて第1調湿装置31に戻る閉開路を形成する。第1搬送機41は常に玄米を循環させる必要はなく、断続的に循環させるものであっても良い。第1調湿装置31内での調湿工程が終了したら玄米を流路312(矢印B)に切り替えて次工程に送る。
【0050】
調湿された原料玄米は第2搬送機42にて次工程である第2調湿装置32に搬送される。第2調湿装置32ではナノメートルオーダーの粒径に調節された処理水に玄米(原料玄米)を接触させる装置である(図2)。処理水をナノメートルオーダーの粒子にする微細化手段32bは表面弾性波(SAW)を用いて処理水を微細化する手段であり、図3に示すように、圧電基板81a及び81bと、櫛形電極対82a及び82bと、高周波印加手段83と、処理水供給手段84とを備える。圧電基板81a及び81bは短冊状の圧電セラミックス製であり、その2枚の圧電基板81a及び81bを僅かな隙間を介して並設する。並設された圧電基板81a及び81bのの対向面の長軸方向の一端近傍にそれぞれ1対の交叉指状の櫛形電極対82a及び82bがそれら交叉する電極821a及び822a(821b及び822b)の対向方向に直角な方向が圧電基板81a及び81bの長軸方向に一致するように配設される。櫛形電極対82a及び82bには高周波印加手段83により高周波電流が印加される。この印加によりそれぞれの圧電基板81a及び81bには一端から他端に向けて移動する表面弾性波が生成する。処理水供給手段84は多孔質材料から構成される棒状の部材であり、処理水が一端から供給させる。処理水供給手段84は圧電基板81a及び81bに接触するようにその間に介設されている。高周波印加手段83により櫛形電極対82a及び82bに高周波電流が印加されることにより生成するSAWは圧電基板81a及び81bの一端側から他端側に向けて伝播していき、その過程において処理水供給手段84からしみ出る処理水を他端側に移動させ、他端から突出する方向Fに向けて粒子状に噴霧させる。噴霧した処理水の粒径は5nm〜200nmの範囲になっている。微細化手段において処理水を噴霧する速度は1時間あたり5mLであり、6時間処理を行う。第2調湿装置32における調湿工程が完了するまでは、第2調湿装置32から流路321の方向(矢印C)に玄米を流し、第2搬送機42を通じて第2調湿装置32に戻る閉開路を形成する。第2搬送機42は常に玄米を循環させる必要はなく、断続的に循環させるものであっても良い。第2調湿装置32内での調湿工程が終了したら玄米を流路322(矢印D)に切り替えて次工程に送る。
【0051】
その後、ダイヤモンド製の砥粒をもつ研削精米装置5にて玄米の表面(糠層)の研削を行う。研削の程度は玄米の栄養素を生かす場合には精米率を96%〜98%程度にし、白米とする場合には糠層を全て取り去る程度の精米率を採用する。その後、洗浄装置6にて処理水を用いて精米を洗浄し、速やかに洗浄水を除去・乾燥させることで精米処理が完了する。処理水は水処理手段1から流路15を介して流入する処理水を用いる。洗浄・乾燥が終了した精米は排出口61から取り出される。
【0052】
なお、第1〜第3搬送機41〜43は適宜省略することができ、また、流路中の他の部分に新たに設けることもできる。第1調湿装置31と第2調湿装置32とは別個の装置としているが、同一の装置を用い、処理水の噴霧装置を切り替えて用いることもできる。
【0053】
従来の精米機は水処理手段1、12に代えてアルミナ、ムライトシリカセラミックス(Al/AlSi13)にて水道水をろ過していた。
・試験
本発明の精米機は従来の精米機と比較した結果を表1に示す。評価項目としては調理前の生米、炊飯器により炊飯した後のご飯のそれぞれについて食味、抗酸化能、還元糖、各種成分濃度を測定した。
【表1】

【0054】
食味(サタケ食味計)の結果から本発明の精米機にて精米した精米を炊飯した玄米、白米は高い食味を示すことが分かった。ESRヒドロキシスーパー及びDPPH法(抗酸化能)の結果から、本発明の精米機にて精米した精米を炊飯した玄米、白米は高い抗酸化能を示すことが分かった。水画分の還元糖測定の結果から、玄米において本発明の精米機により精米した精米を炊飯したものは高い還元糖含有量を示すことが明らかになった。ORAC(抗酸化力)の測定結果から、生米における玄米は本発明の精米機により処理したものが高いORACの値を示すことが明らかになり、反対に遊離グルタミン量は低いことが分かった。また、本願製造方法にて製造した米はγ−アミノ酸(GABA)の量が従来方法により製造した米よりも少なく、その前駆体である遊離グルタミン酸が多かった。すなわち、抗酸化能を付与したことにより、米における酸化反応が停止した結果、遊離グルタミン酸からGABAへの変換が抑制されているものと推測される。
【0055】
食味の分析結果の詳細を示すと、精米(玄米、従来)は外観4.5、硬さ7.6、粘り2.5、バランス3.3であり、精米(玄米、本発明)は外観6.0、硬さ6.6、粘り3.5、バランス4.8であり、精米(白米、従来)は外観7.0、硬さ6.2、粘り7.5、バランス7.3であり、精米(白米、本発明)は外観7.7、硬さ5.8、粘り8.0、バランス7.9であった。
【0056】
90%アルコール画分と水画分との抽出は純水15mL中にて試料(炊飯ご飯)5gを4℃で15分間震とうし、その上澄みを凍結乾燥後。90%アルコールで抽出した画分を90%アルコール画分、残分から更に水で抽出した画分を水画分とした。
【0057】
(参考試験)
本発明の精米機にて精米した精米(玄米)を用いて日本酒を醸造し、種々の評価を行った。試験条件を表2に示す。表2において●で示す工程にてプラチナ粒子を担持した器具(蒸しの場合はこしきにプラチナ粒子を担持したセラミックス担体(粉末)を塗布、醪を保存するタンクの内面にプラチナ粒子を担持したセラミックス担体(粉末)を配合したフッ素樹脂でライニング))にて操作を行ったことを表す。
【0058】
【表2】

【0059】
表2で示す条件にて醸造した日本酒の成分を分析した。結果を表3に示す。これらの結果は日本酒の評価方法に準拠して行った。
【0060】
【表3】

【0061】
各試験試料についてORP(酸化還元電位)及びpHを測定した。測定はpH/ION METER D−23(HORIBA製)にて行い、測定プローブはOPRが型式9300、pHが型式承認 第S8721 6366のプローブにて行った。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
プラチナ粒子を担持した器具を用いて醸造したものほど、ORPが低く、pHga高い傾向を示すことが明らかになった。
・次に各試料について抗酸化能を評価した。評価方法は以下の通りである。
【0064】
DPPHエタノ−ル溶液に調製したサンプル液を入れたときに、サンプルに抗酸化性があればDPPHエタノ−ル溶液のラジカルが減少し、紫色から黄色に溶液が変色する。これを分光光度計を用いて測定し、DPPHの主ピーク515nm値について、DPPH ラジカルをどの程度、消去できるか吸光度の吸収指数から濃度をアスコルビン酸相当に換算して求めた。
【0065】
本評価では、DPPH (和光純薬製:1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)を0.25mmol/Lのエタノ−ル溶液に調製し、これの溶液3mLに、3、4点の適当な濃度のアスコルビン酸の標準水溶液をそれぞれ1.5mL加えたもののピークを測定して検量線をあらかじめ作成し、これらの吸光度比からサンプルの抗酸化成分濃度をアスコルビン酸相当に換算した。結果を表5に示す。
【0066】
【表5】

【0067】
プラチナ粒子を担持した器具を用いて醸造した日本酒は値の上下はあるものの、全体として高い抗酸化能を示すことが明らかになった。
【符号の説明】
【0068】
1…水処理装置
2…コンテナ
31…第1調湿装置 32…第2調湿装置 311、312、321、322…流路
41、42、43…第1〜第3搬送機
5…研削精米装置
6…洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラチナ粒子を担持させたセラミックス担体に水を接触させて処理水を製造する水処理手段と、
前記原料玄米の表面を研削して前記原料玄米の表面の糠層の少なくとも一部を剥離する研削精米処理を行って研削精米を製造する研削精米手段と、
前記研削精米を前記処理水にて洗浄後、乾燥する洗浄手段と、
を有することを特徴とする抗酸化能を有する米の製造装置。
【請求項2】
前記処理水に玄米を接触させる工程を1回又は繰り返し行い、その玄米の含水率を全体の質量を基準として、14%〜17%の含水率に調湿した前記原料玄米を製造する調湿手段を有する請求項1に記載の米の製造装置。
【請求項3】
前記調湿手段は、前記玄米を気体と共に流動化させる流動化手段と、流動化させた前記玄米に粒子状の前記処理水を噴射する処理水噴射手段とを有する請求項2に記載の米の製造装置。
【請求項4】
前記処理水噴射手段は、前記処理水の少なくとも一部を粒径が5nm〜200nmの粒子にする微細化手段をもつ請求項3に記載の米の製造装置。
【請求項5】
前記微細化手段は、圧電基板と前記圧電基板の表面に配置された一対の交叉指状の櫛形電極対と前記櫛形電極対間に所定周期の高周波信号を印加して前記圧電基板を振動させて当該圧電基板表面を伝播する表面弾性波を発生させるための高周波印加手段と前記圧電基板の表面に前記処理水を供給する処理水供給手段とを備える請求項4に記載の米の製造装置。
【請求項6】
前記処理水は処理前よりも還元電位が低い請求項1〜5の何れか1項に記載の米の製造装置。
【請求項7】
原料玄米の表面を研削して前記原料玄米の表面の糠層の少なくとも一部を剥離する研削精米処理を行って研削精米を製造する研削精米工程と、
プラチナ粒子を担持させたセラミックス担体に水を接触させて製造した処理水にて前記研削精米を洗浄後、乾燥する洗浄工程と、
を有することを特徴とする抗酸化能を有する米の製造方法。
【請求項8】
前記処理水に玄米を接触させる接触工程を1回又は繰り返し行い、その玄米の含水率を全体の質量を基準として、14%〜17%の含水率に調湿した前記原料玄米を製造する調湿工程を有する請求項7に記載の米の製造方法。
【請求項9】
前記接触工程は、前記玄米を気体と共に流動化させる流動化手段と、流動化させた前記玄米に粒子状の前記処理水を噴射する処理水噴射手段とにより行う請求項8に記載の米の製造方法。
【請求項10】
前記処理水噴射手段は、前記処理水の少なくとも一部を粒径が5nm〜200nmの粒子にする微細化手段をもつ請求項9に記載の米の製造方法。
【請求項11】
前記微細化手段は、圧電基板と前記圧電基板の表面に配置された一対の交叉指状の櫛形電極対と前記櫛形電極対間に所定周期の高周波信号を印加して前記圧電基板を振動させて当該圧電基板表面を伝播する表面弾性波を発生させるための高周波印加手段と前記圧電基板の表面に前記処理水を供給する処理水供給手段とを備える請求項10に記載の米の製造方法。
【請求項12】
前記処理水は処理前よりも還元電位が低い請求項7〜11の何れか1項に記載の米の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−131190(P2011−131190A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295594(P2009−295594)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(596087812)株式会社エルブ (15)
【Fターム(参考)】