説明

米粒中の異品種混入割合判定方法

【課題】想定品種の複数の米粒中に混入した異品種の米粒割合を短時間で判定する方法を提供する。
【解決手段】被検査用の複数の米粒サンプルを粉砕した米粒粉砕物からDNAを抽出し、抽出されたDNAを増幅してこれをマイクロチップ電気泳動法に掛けた際に検出されたピークから、想定品種と異品種の各ピーク及びピーク強度値をそれぞれ特定する。即ち、前記DNAを増幅する際に複数の米粒品種に対して共通位置(塩基サイズb.p.)にピークが検出されるように設計した前記ポジティブプライマーを添加して検出されるピーク(陽性対照)のピーク強度値と、異品種のピーク強度値との割合(除算値)を算出するとともに、除算値と異品種混入割合との関係を表した検量線を予め求めておいて、該検量線に基づいて、前記算出した除算値に対応する値(異品種混入割合)を判定するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粒のデオキシリボ核酸(以下「DNA」という)に基づいて米粒の品種判別を行う技術に係り、特に、所定品種の米粒中に混入した異品種の米粒の割合を算出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、米粒からDNAを抽出して米粒の品種を判定する技術としては、例えば、本願発明者による特許文献1が知られている。該特許文献1による品種判定方法は、一粒の米粒について品種を判定するものである。この特許文献1の品種判定方法は、被検査米粒の一粒を粉砕し、この米粒粉砕物から公知のCTAB(cetyl-trimethyl-ammoniumbromide)法(以下「CTAB法」という)によってDNAを抽出し、この後、抽出された前記DNA(鋳型DNA)に対し、品種の識別に有用な識別バンドとなる塩基配列部位のみに結合する一対からなる対合プライマーを添加してPCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)法(以下「PCR法」という)を行い、前記塩基配列部位が増幅されたPCR産物を得る。この後、該PCR産物を電気泳動法(アガロース電気泳動法)にかけて品種特有の識別バンドを検出し、品種判定を行うものである。
【0003】
【特許文献1】特開2005−73655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、米粒の品種判定を科学的に判定する方法は、市場に流通する精米の品種表示が不正であるか否かを分析するうえで有用であり、昨今注目されている。しかしながら、上記の品種判定方法は、米粒(被検査米粒)を一粒単位で品種判定するものであるため、例えば、想定品種(精白米の包装袋などに表示された品種)とされる複数の米粒群の中に前記想定品種以外の異品種の米粒が混入しているか否か、また、その混入した異品種の米粒の割合を調査する際には、該調査・測定に係る作業時間が長時間になるという問題点があった。
そこで、本発明は、上記問題点にかんがみ、想定品種の複数の米粒中に、異品種の米粒が混入する割合を短時間に判定することができる米粒中における異品種混入割合算出方法を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明により、
想定品種の米粒に異品種の米粒が混入した複数の米粒サンプルを粉砕し、該米粒粉砕物からDNAを抽出するDNA抽出工程と、
該DNA抽出工程によって抽出されたDNAに複数の品種に対して共通のピークを検出するように設計したポジティブプライマーと米粒の品種特有の塩基配列部位のみに結合する複数の対合プライマーとを添加してPCR法を行うDNA増幅工程と、
該DNA増幅工程によって増幅されたPCR産物を基にしてマイクロチップ電気泳動法を行い、該マイクロチップ電気泳動法によって検出されたピークの中から前記想定品種が示すピークを除いて異品種のピークを特定する異品種ピーク検出工程と、
該異品種ピーク検出工程によって特定された異品種ピークのピーク強度値と前記ポジティブプライマーの添加によって検出されるポジティブコントロールのピーク強度値とをそれぞれ求めるピーク強度値検出工程と、
該ピーク強度値検出工程によって検出された異品種ピーク強度値を前記ポジティブコントロールのピーク強度値で除算する除算工程と、
前記対合プライマーごとに予め求めておいた、前記除算値と異品種混入割合との関係を示す検量線に基づいて、前記除算工程で算出した除算値における異品種混入割合を判定する異品種混入割合判定工程と、
を含む技術的手段を講じた。
【0006】
前記請求項1の方法によると、
被検査用の複数の米粒サンプルを粉砕した米粒粉砕物からDNAを抽出し、抽出されたDNAを増幅してこれをマイクロチップ電気泳動法に掛けた際に検出されたピークから、想定品種と異品種の各ピーク及びピーク強度値をそれぞれ特定する。前記DNAを増幅する際には、複数の米粒品種に対して共通位置(塩基サイズb.p.)にピークが検出されるように設計したポジティブプライマーを添加する。本発明は、前記ポジティブプライマーの添加によって検出されるピーク(ポジティブコントロール=ポジコン)のピーク強度値と異品種のピーク強度値との間に相対的な比例関係があるとの知見を見出し、この知見を利用して異品種混入割合を判定するものである。そのため、異品種混入割合を判定する際は、前記ポジコンのピーク強度値と異品種ピーク強度値との割合である前記除算値を算出するとともに、除算値と異品種混入割合との関係を表した検量線を予め求めておいて、該検量線に基づいて、前記算出した除算値に対応する値(異品種混入割合)を判定するものである。
【0007】
また、請求項2の発明により、前記ポジティブプライマーは、配列表における配列番号13と配列番号14とを一対にしたプライマーとする技術的手段を講じた。品種の判別は、前記マイクロチップ電気泳動法を行って得られたピークのうち、該マイクロチップ電気泳動法の出力の横軸である、DNA増幅サイズ(b.p.)の所定の範囲内にピークが何本どの位置に検出されるかによって行われるが、請求項2の前記ポジティブプライマーによれば、前記所定範囲の下限値(例えば、100b.p.)に前記ポジティブコントロールピークを検出するように塩基配列が設計してある。このため、ポジティブプライマーの濃度や添加量などを調整してポジティブコントロールのピーク強度を大きくすることにより、前記下限値付近にノイズとして検出される非特異産物のピークとの区別が明確になるので、前記下限値(ロアーマーカー)が明確になる。
【0008】
さらに、請求項3の発明により、前記対合プライマーは、配列表における、配列番号1と配列番号2、配列番号3と配列番号4、配列番号5と配列番号6、配列番号7と配列番号8、配列番号9と配列番号10、配列番号11と配列番号12、をそれぞれ一対にしてなるプライマーを用いるという技術的手段を講じた。これにより、上記対合プライマーを使用することで、前記DNA増幅工程において、本発明の効果を得るための好適な作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、被検査用の米粒サンプルを一粒ずつ品種判定して異品種の混入割合を判定(算出)するのではなく、複数の米粒を基にして一度に異品種の混入割合を判定することができるので、判定に掛かる作業時間を短時間にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における想定品種とは、市場に流通している精白米の包装袋などに表示された品種のことを示す。以下、本発明の実施形態について、図1に示した本発明の異品種混入割合算出方法のフローチャートを参照しながら説明する。
【0011】
米粒サンプルの準備:
実施例の被検査用(原料)の米粒サンプルとして、「コシヒカリ」(想定品種)に「想定品種以外の異品種である、きらら397」を約9%混入させたものを50グラム(数十グラム)用意し、これを粉砕し、この粉砕物から取り出した0.1グラム(少量)を測定試料(以下「米粒粉砕物」という)とした。
【0012】
DNA抽出工程(S1):
前記米粒粉砕物を基にして、DNA抽出工程を行う。該DNA抽出工程は、一般的に用いられている前記CTAB法によって行う。該CTAB法は、所定の容器(チューブ)にビーズを入れ、粉砕装置(倉敷紡績株式会社製:サンプル粉砕装置<SH-100>)を使って潰し、さらに、植物用細胞溶解試薬(主成分:Tris,EDTA,NaCl,CTAB)を数mL添加して1時間加熱し、米粒の植物細胞を溶解する。この後、前記容器をDNA自動分離装置(倉敷紡績株式会社製:核酸自動分離装置、型式:PI−24)にセットする。そして、植物用蛋白変成試薬(主成分:SDS,その他界面活性剤)を数mL添加・攪拌して米粒の蛋白質を変性させ、この後、植物用蛋白変成試薬(主成分:クロロホルム(90%))を数mL添加・攪拌し、米粒の脂質を溶出する。次いで、植物用除蛋白試薬(主成分:酢酸カリウム)を数mL添加・攪拌した後、遠心作用を与えてクロロホルムと植物残渣等を含むペレットを形成し、上澄液の移液をスムーズにする。
【0013】
次に、核酸複合体沈殿試薬(主成分:Tris,EDTA,CTAB)を予め数mL入れた回収容器に、前記上澄液を移して攪拌し、CTAB−DNA複合体を形成する。この後、遠心作用を与えた後、前記上澄液を廃棄する。次いで、核酸再溶解試薬(主成分:NaCl)を数mL添加・攪拌し、CTAB−DNA複合体を解離させる。次に、沈殿試薬(主成分:イソプロパノール(90%以上))を数mL添加・攪拌及び遠心作用を順次与え、DNAを沈殿させる。この後、再度、前記上澄液を廃棄する。さらに、洗浄試薬(主成分:エタノール(70%以下),イソプロパノール)を数mL添加し、攪拌及び遠心作用を与えてDNAの洗浄を行う。そして、再々度、前記上澄液を廃棄し、最後に遠心分離により乾燥し、鋳型DNAを得る。
【0014】
DNA増幅工程(S2):
次に、前記鋳型DNAを基にして、DNA増幅工程を行う。該DNA増幅工程も、一般的に用いられている前記PCR法によって行う。該PCR法を行うにあたっては、まず、所定の容器内に、下記表1に示した組成からなる調製液を数十μL調製する。
(表1)
滅菌水
10×PCRバッファー(100mM-Tris HCL(pH8.3),500mM-KCL)
MgCl2
dNTPミックス(各2.5mM)
第1対合プライマー(配列番号1)フォワード側
第1対合プライマー(配列番号2)リバース側
第2対合プライマー(配列番号3)フォワード側
第2対合プライマー(配列番号4)リバース側
第3対合プライマー(配列番号5)フォワード側
第3対合プライマー(配列番号6)リバース側
第4対合プライマー(配列番号7)フォワード側
第4対合プライマー(配列番号8)リバース側
第5対合プライマー(配列番号9)フォワード側
第5対合プライマー(配列番号10)リバース側
第6対合プライマー(配列番号11)フォワード側
第6対合プライマー(配列番号12)リバース側
ポジティブプライマー(配列番号13)フォワード側
ポジティブプライマー(配列番号14)リバース側
鋳型DNA溶液
Taqポリメラーゼ(5U/μL)
【0015】
上記各対合プライマー(配列番号)の塩基配列は、以下のとおりである。
(化1)
gaacaattac tccctcggtt ctata (配列番号1)
(化2)
gcatgagcgg catgacagaa (配列番号2)
(化3)
cactgtaact tttgtaagtt acactg (配列番号3)
(化4)
tcccccgttc aatgagaagc t (配列番号4)
(化5)
cctcttgtat cctgtccccc tc (配列番号5)
(化6)
agttggcacg tggtgcagaa (配列番号6)
(化7)
gcatccatcc tggcctagcg ctgtata (配列番号7)
(化8)
gcaggtcgaa aacacacaga acgatac (配列番号8)
(化9)
cgctccatgc acacatgagc tag (配列番号9)
(化10)
cctatgctgt gatcttgtag tgc (配列番号10)
(化11)
catgccacat cgtcagagca ctcg (配列番号11)
(化12)
gtgcaatcca ttgctgaata ag (配列番号12)
(化13)
ggactaccaa ccccagctac (配列番号13)
(化14)
ccagctgggt atcctaggag a (配列番号14)
【0016】
上記のように、前記調製液の組成においては、ポジティブプライマーを使用する。該ポジティブプライマーは、後述するマイクロチップ電気泳動システムで解析した際に、複数の品種において共通のピークが検出されるように塩基配列を設計したものである。本実施例のポジティブプライマーは、ピーク検出範囲の下限値(ロアーマーカー)である例えば100塩基サイズ(b.p.)にピーク(ポジティブコントロール)が検出されるように塩基配列を設計するとともに、100塩基サイズ付近にノイズとして多数検出される異品種米粒(非特異産物)のピークとの区別を明確するために、濃度及び添加量を調整してピーク強度値を大きくしてある。また、前記6種類(第1〜第6)の対合プライマーは、反応があれば、それぞれ異なる塩基サイズ(図1における横軸)においてピークが現れるように塩基配列が設計してある。
【0017】
なお、上記調製液においては、再現性を確保するため、添加する前記ポジティブプライマー及び対合プライマーの濃度及び添加量については常に所定量にしておき、検出されるピークの各強度値の大小が相対的に上下することはあっても、隣り合ったピークの強度値が逆転しないようにしておく必要がある。
【0018】
次に、表1の組成からなる調製液が入った容器をPCR装置(ABI社製、Gene Amp PCR System 9700)にセットし、2分間95℃で加熱して熱変性させ、さらに、熱変性(95℃×2分)、アニーリング(62℃×1分)及び伸長反応(72℃×2分)を30サイクル繰り返し、伸長反応(72℃×4分)を行わせる。該伸長反応(72℃×4分)の後は、前記調製液が4℃になるまで放置する。以上により、PCR産物が得られる。
【0019】
非特異的ピーク検出工程(異品種ピーク検出工程)(S3):
次に、前記PCR産物を用いて、異品種の米粒が反応して示したピークを特定する非特異的ピーク検出工程(異品種ピーク検出工程)S3を行う。該非特異的ピーク検出工程S3は、公知の装置である、マイクロチップ電気泳動システム(商品名:SV1210コスモアイ,日立化成工業株式会社製)を用いて解析を行う。図2は、前記PCR産物を前記マイクロチップ電気泳動システムにセットして解析した結果である。一方、図3は、予め測定しておいた、本実施例のように上記6種の対合プライマー及びポジティブプライマーを使った際の、「コシヒカリ」(想定品種)が示すピークのパターンとポジコンを示したものである。この図3から、「コシヒカリ」は、548塩基サイズの位置にピークを示し、前記第2対合プライマーにのみに反応を示していることが分かる。なお、前記第2対合プライマー以下の5種類の対合プライマーについては、仮に反応があった場合には、
第1対合プライマーは1046塩基サイズの位置に、
第3対合プライマーは1596塩基サイズの位置に、
第4対合プライマーは409塩基サイズの位置に、
第5対合プライマーは626塩基サイズの位置に、
第6対合プライマーは1354塩基サイズとする位置に、
それぞれピークが検出されるように塩基配列が設計してある。
【0020】
前記非特異的ピーク検出工程S3は、前記図2と図3とを基に、図2に示された複数のピークの中から、図3に示された想定品種のコシヒカリのピーク、つまり、サイズ548塩基に現れたピーク(特異的ピーク)をまず取り除く。取り除いた結果、本実施例では、異品種の米粒が示す異品種ピーク(以下、「非特異的ピーク」という)が三つ検出され、これにより、前記米粒サンプルには異品種の米粒が含まれていることが示される。前記異品種ピークの一つ目は、1046塩基サイズのピーク(以下「非特異的ピークA」という)であり、前記第1対合プライマーに反応を示したピークである。二つ目は1354塩基サイズのピーク(以下「非特異的ピークB」という)であり、前記第6対合プライマーに反応を示したピークである。三つ目は1596塩基サイズのピーク(以下「非特異的ピークC」という)であり、前記第3対合プライマーに反応を示したピークである(図2)。なお、図2及び図3に検出されたピークLは、アッパーマーカーであり特異的ピーク又は非特異的ピークではない。また、図2及び図3に検出されている、前記ポジティブプライマーを添加したことによって現れるポジティブコントロール(以下「ポジコン」という)についても同様に、特異的ピーク又は非特異的ピークではない。
【0021】
ピーク強度値検出工程(S4):
次に、ピーク強度値検出工程は、図2に示された、前記非特異的ピークA,B,C及びポジコンの各ピーク強度値を検出する。検出結果は、以下のとおりである。
各ピーク強度値:
非特異的ピークA:503
非特異的ピークB:414
非特異的ピークC:378
ポジコン:3959
【0022】
除算工程(S5):
次に、除算工程として、前記ピーク強度値検出工程で検出した各ピーク強度値を基に、前記非特異的ピークA,B,Cのそれぞれのピーク強度値をポジコンのピーク強度値で除算する。この除算結果は以下のとおり。
除算結果:
(1)非特異的ピークAの除算値
非特異的ピークA÷ポジコン=503÷3959=0.127
(2)非特異的ピークBの除算値
非特異的ピークB÷ポジコン=414÷3959=0.105
(3)非特異的ピークCの除算値
非特異的ピークC÷ポジコン=378÷3959=0.095
【0023】
異品種混入割合判定工程(S6):
次に、前記異品種混入割合判定工程は、前記除算値と検量線(後述)とを用いて異品種の混入割合を判定する。前記検量線は、前記第1〜第6の対合プライマーごとに予め求めるものである。前記検量線の作成は、まず、単一の対合プライマーに、前記ポジティブプライマーを混入した前記調製液(前記DNA増幅工程(S2))を作り、当該調製液に対してピークが検出されない品種1とピークが検出される品種2とを予め求めておく。そして、前記品種1(ピークが検出されない)に品種2(ピークを検出する)を10%,20%,30%・・・の割合でそれぞれ混入させた各米粒サンプルを用意し、該各米粒サンプルにおける品種2のピーク及びポジコンの各ピーク強度値から前記除算値を演算し、前記品種2の混入割合が異なる各米粒サンプルとその該除算値との関係から検量線が作成される。これと同様にして、他の単一の対合プライマーについても検量線を予め求めておく。図4の(1)は、前記非特異的ピークAを検出した第1対合プライマーの検量線とその寄与率R2を示す。図5の(1)は、非特異的ピークBを検出した第6対合プライマーの検量線とその寄与率R2を示す。さらに、図6の(1)は、非特異的ピークCを検出した第3対合プライマーの検量線とその寄与率R2を示す。これらの第1、第6、第3の対合プライマーの各検量線と、その各非特異的ピークA,B,Cの除算値とに基づいて異品種の混入割合を判定すると、以下の結果となる。
(1)第1対合プライマーの検量線(図4)によると、非特異的ピークAの除算値0.127に対する異品種混入割合は、9%。
(2)第6対合プライマーの検量線(図5)によると、非特異的ピークBの除算値0.105に対する異品種混入割合は、8%。
(3)第3対合プライマーの検量線(図6)によると、非特異的ピークCの除算値0.059に対する異品種混入割合は、8%。
【0024】
以上のことから、非特異的ピークAにおける異品種混入割合は9%、非特異的ピークBにおける異品種混入割合は8%、非特異的ピークCにおける異品種混入割合は8%、と求められたことから、本実施例の米粒サンプル(被検査用の米粒群)の異品種混入割合は、前記最低値から最高値の範囲内である、8%〜9%と判定するものである。この判定結果は、本実施例の米粒サンプルとした「コシヒカリ」(想定品種)に約9%の「想定品種以外の異品種である、きらら397」を混入したものと一致する。
【0025】
また、本発明における異品種混入割合の判定は、上記のように最高値から最低値の範囲内とするだけでなく、最高値と最低値の平均値としてもよい。さらに、本実施例においては、非特異的ピークは三本検出されたが、米粒サンプルによってはこれが3本以外になることもある。このように非特異的ピークの検出数が3本以外であったとしても、問題はなく、前述と同様の工程によって異品種混入割合の判定を行えばよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の米粒中の異品種混入割合判定方法を説明するフローチャート。
【図2】実施例において、「コシヒカリ」(想定品種)に「その他の異品種(きらら397)」を添加した米粒サンプルをマイクロチップ電気泳動法にかけた結果。
【図3】実施例において、「コシヒカリ」をマイクロチップ電気泳動法にかけた結果。
【図4】(1)は、第1対合プライマーにおける検量線。(2)は同検量線を用いて異品種混入割合を判定した実施例。
【図5】(1)は、第6対合プライマーにおける検量線。(2)は同検量線を用いて異品種混入割合を判定した実施例。
【図6】(1)は、第3対合プライマーにおける検量線。(2)は同検量線を用いて異品種混入割合を判定した実施例。
【符号の説明】
【0027】
S1 DNA抽出工程
S2 DNA増幅工程
S3 非特異的ピーク検出工程(異品種ピーク検出工程)
S4 ピーク強度値検出工程
S5 除算工程
S6 異品種混入割合判定工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
想定品種の米粒に異品種の米粒が混入した複数の米粒サンプルを粉砕し、該米粒粉砕物からDNAを抽出するDNA抽出工程と、
該DNA抽出工程によって抽出されたDNAに複数の品種に対して共通のピークを検出するように設計したポジティブプライマーと米粒の品種特有の塩基配列部位のみに結合する複数の対合プライマーとを添加してPCR法を行うDNA増幅工程と、
該DNA増幅工程によって増幅されたPCR産物を基にしてマイクロチップ電気泳動法を行い、該マイクロチップ電気泳動法によって検出されたピークの中から前記想定品種が示すピークを除いて異品種のピークを特定する異品種ピーク検出工程と、
該異品種ピーク検出工程によって特定された異品種ピークのピーク強度値と前記ポジティブプライマーの添加によって検出されるポジティブコントロールのピーク強度値とをそれぞれ求めるピーク強度値検出工程と、
該ピーク強度値検出工程によって検出された異品種ピーク強度値を前記ポジティブコントロールのピーク強度値で除算する除算工程と、
前記対合プライマーごとに予め求めておいた、前記除算値と異品種混入割合との関係を示す検量線に基づいて、前記除算工程で算出した除算値における異品種混入割合を判定する異品種混入割合判定工程と、
を有することを特徴とする米粒中における異品種混入割合算出方法。
【請求項2】
前記ポジティブプライマーは、配列表における配列番号13と配列番号14とを一対にしたプライマーであることを特徴とする請求項1に記載の米粒中における異品種混入割合算出方法。
【請求項3】
前記対合プライマーは、配列表における、配列番号1と配列番号2、配列番号3と配列番号4、配列番号5と配列番号6、配列番号7と配列番号8、配列番号9と配列番号10、配列番号11と配列番号12、をそれぞれ一対にしてなるプライマーを用いてなることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の米粒中における異品種混入割合算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−130014(P2007−130014A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277563(P2006−277563)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】