米飯の製造保存方法
【課題】米飯を製造して冷却または冷却・冷凍保存するための処理において、冷却・冷凍工程においても保水性を高く維持し、歩留り良く、味、旨み分を保持しつつ、保存を行うことができる米飯の製造保存方法を提供する。
【解決手段】米を浸漬水に浸漬する浸漬工程14と、浸漬後の米を用いて炊飯する炊飯工程16と、炊き上がった米飯を冷却する冷却工程18と、を備え、浸漬工程14において浸漬水は糖を微量含有し、該浸漬水に減圧下で米を浸漬する。浸漬工程14において、糖は、米の内部の水分(自由水)と置換され、内部に進入するとともに、外表面にも付着する。こうして、米の一粒一粒に水分のみならず糖を含浸させて、水分及び糖の均一化、熟成化を図り、熟度が不揃いな一粒一粒の米に対して熟度が一律になるように調整することができる。これによって、その後の炊飯工程16、冷却工程18においても、各米粒の中心まで均質に熱を伝わせることができ、保水性を向上させ、味、旨みも向上させることができる。
【解決手段】米を浸漬水に浸漬する浸漬工程14と、浸漬後の米を用いて炊飯する炊飯工程16と、炊き上がった米飯を冷却する冷却工程18と、を備え、浸漬工程14において浸漬水は糖を微量含有し、該浸漬水に減圧下で米を浸漬する。浸漬工程14において、糖は、米の内部の水分(自由水)と置換され、内部に進入するとともに、外表面にも付着する。こうして、米の一粒一粒に水分のみならず糖を含浸させて、水分及び糖の均一化、熟成化を図り、熟度が不揃いな一粒一粒の米に対して熟度が一律になるように調整することができる。これによって、その後の炊飯工程16、冷却工程18においても、各米粒の中心まで均質に熱を伝わせることができ、保水性を向上させ、味、旨みも向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯を製造して冷却保存または冷却・冷凍保存する処理に関し、歩留り良く、味、旨み分を保持しつつ、米飯を保存するために適した米飯の製造保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯は、そのまま食する他に、弁当、寿司、おにぎり、チャーハン等の多数のメニューに使用されている。米飯は、日本人にとって主食であり、家庭内でも、炊飯して米飯を食べることが慣習化されているため、日本人の味覚にとって、その味を最も感知できる食物であり、その「味、旨さ」は敏感に感知される。
【0003】
大量に米飯を製造する食品工場では、家庭で炊飯している方式を自動化、巨大化した装置で炊飯処理がなされている。即ち、浸漬処理を含む前処理を行った後、炊飯処理を行っている。
【0004】
ここで、従来の炊飯処理前の前処理としては、例えば特許文献1〜3に示すような処理が提案されている。
【0005】
特許文献1では、水中に浸漬した洗米粒を大気圧より低圧な雰囲気中に置き、洗米粒内部の気体をその外部に排除した後、水中に浸漬した洗米粒を大気圧雰囲気中に置いて、洗米粒内部に水分を吸収させており、これによって、洗米粒を浸漬する水中の温度、洗米粒が新米か古米かの相違、乾米の含水率の相違あるいは精米の程度に左右されずに、洗米粒内部へ30%前後の飽和水分の吸収作業を行えるようにしている。
【0006】
特許文献2では、古米を、水及び椿油、紅花油、しらしめ油、コーン油等の無酸化脂肪と混合して減圧条件下で一定時間放置しており、これによって、古米に含有される酸化脂肪の揮発点が低下し、古米の組織中から酸化脂肪が揮発し、酸化脂肪の揮発した組織空洞中に無酸化脂肪と水とが入り込み、新米と比肩できる味となる古米を精製している。
【0007】
特許文献3では、米をグルタミン酸ソーダといった栄養素、及び/またはグリシン、アラニン、米糖抽出フイチン酸塩等の食味向上剤を溶解した微酸性水溶液とともに耐圧容器内で一定時間減圧に保持した後、常圧に戻し、さらに常温で1時間吸液させ、水切り、乾燥した後、炊飯することで、米の内外に均一に水分を分布させ、栄養素、食味向上剤を吸着させて、風味、旨みを増加させている。
【0008】
一方、炊飯処理後の米飯の冷却処理(98〜75℃の炊飯直後の米飯を、20℃前後までの温度帯域に急速に冷却する処理を言うものとする)では真空冷却方式が、冷凍処理(20℃前後から米飯が氷結点を超えて凍結する温度まで米飯を冷却する処理を言うものとする)ではブラストチラー方式が主流となっている。
【0009】
真空冷却方式は、被冷却物を減圧環境内に置くことで、蒸発温度が下がることを利用し、被冷却物に含まれる水分が水蒸気(気化水)となって被冷却物から潜熱を奪って蒸発していくことを利用して冷却するものである。そのため、米飯からは多量の水分が蒸発されていき、同時に脱気作用も働くために、米飯の乾燥を避けることができない。この蒸発量は、温度差が大きいほど、つまり、奪う熱が多いほど、多量になる。本発明者の実験によれば、6〜10%の水分が失われている。また、米飯の持つ香りも飛ばしてしまう。
【0010】
また、ブラストチラー方式では、庫内に、熱源として伝熱面積の大きなエバポレータと、強風ファンを設け、エバポレータのフィンの間に強制的に空気を通過させて、循環量を多くし、冷気を作り出して、庫内の被冷却物へ直接吹き付けることで熱交換の効率を高めた方式である。循環方式や熱交換方式には様々なものがあるが、基本的には低温冷風を効率よく作り出し高い熱交換を目指している点では共通している。
【0011】
このブラストチラー方式においても米飯の乾燥・脱気が生じるという問題があり、その主なる原因としては、米飯の表面は強冷風に晒されているために、米飯の表面と中心部との間に温度差が発生し、中心部の方が温度が高いために、熱は中心側から表面側へと移動し、同時に水分も熱と同じ方向に移動するので、中心部から水分が奪われていくことが考えられる。
【0012】
また、他の原因として、エバポレータに強制的に冷気を通過させるために、エバポレータの表面に水蒸気が結露して、冷気中の除湿を行ってしまうことがある。つまり、エバポレータ通過時に除湿されて乾燥した冷気が米飯に吹き付けられて、冷却と同時に米飯の除湿を行い、昇温した冷気が再びエバポレータで再冷却・除湿を行うサイクルが作られてしまい、米飯からの水分が奪われていくことが考えられる。
【0013】
以上の真空冷却方式及びブラストチラー方式では、米飯の乾燥・脱気を防ぐことができない。そのため、米飯の歩留り低下を招くという問題がある。大量生産を行っている食品工場では、僅かな(例えば、0.1%程度でも)の歩留りによって、その収益性を大きく左右することになる。また、米飯は、糖度と水分含有率が高いほど、「旨さ」を感じるため、味、旨み分も悪化させてしまうことになる。
【0014】
他方で、本出願人は、従来の冷却方式に対する問題を解決するものとして、特許文献4において、空間内に冷却器と、ファンと、被冷却物の設置される冷却室とを備える冷却装置において、予め得られた、被冷却物の中心温度と、前記空間の温度、被冷却物の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、被冷却物の冷却・冷凍過程において、被冷却物の中心温度と、前記空間の温度、被冷却物の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差を一定に保持しつつ被冷却物の中心温度を低下させる過程を持つように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させながら、被冷却物の冷却・冷凍を行うことを提案している。
【0015】
【特許文献1】特開昭64−86846号公報
【特許文献2】特開平7−203875号公報
【特許文献3】特開昭59−203453号公報
【特許文献4】特許4081507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、米飯を製造して冷却または冷却・冷凍保存するための処理において、冷却・冷凍の効果をより高めて、歩留り良く、味、旨み分を保持しつつ、保存を行うことができる米飯製造保存方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、従来の米飯に関する問題の原因として、次の点に着目した。
(1) 市販米について
原料となる市販米は、同じ袋に梱包されているものであっても、一粒一粒の米の品質が同一でない。米は本来、農作物であるから、産地、その年の天候、同じ産地であっても作付した場所、土壌などの影響を受け、等質な物だけを揃えることは不可能である。特に、ブレンド米と表記されている米は明らかに品質のばらつきがある。
いずれにしても、食品工場では大量の米を原料として仕入れるので、仕入れる米の銘柄程度の管理をすることはできても、一粒一粒の米の品質を揃えることは不可能である。
【0018】
(2) 米飯の旨さについて
米はデンプンを主体とする多孔質である。米飯の旨さは、米に含まれる水分量とデンプンの糖化で決まる。デンプンの糖化とは、米に加水し、加熱炊きしてデンプンを熱により糖化することである。
上記(1)で述べたように、米の品質にばらつきがあれば、吸水性が米によって異なり、また、均一な加熱を行っても、糖化の程度にもばらつきがある。そのため、全米粒に対して旨みを出させるのに最適な条件で浸漬処理、加熱処理を行うことは不可能である。
【0019】
(3) 浸漬処理について
従来の炊飯処理までの前処理としては、米を所定量計量し、洗米して糖を洗い流した後、水を切り、炊飯釜に米を投入し、この米に対し、質量比1.4倍前後の水を加水して、60分から120分程度、大気中に放置した後、炊飯を始めるようになっている。
この方法では、不揃いの米に均質に含水させることができない。つまり、吸水性の良い米と吸水性の悪い米とでは、当然に、含水率に差が出てしまう。そして、米の中心まで吸水されないものも出てくる。
また、従来の浸漬処理では、米に本来含まれている糖が浸漬水側に流出するために、旨み成分が失われることになる。
このように従来の浸漬処理は、主として自然まかせで行っており、含水量調節、糖度調節は一切行われていない。
また、従来の浸漬処理では、異物混入、浸漬中の水、大気中の酸素による劣化の促進の問題がある。
【0020】
(4) 炊飯処理について
上述のように、米の品質にばらつきがあれば、均等に熱が作用せずに、糖化にばらつきが生じ、また、水分含有量が不揃いな米飯となる。この結果、次の冷却処理においても、限界が生じることになる。
【0021】
(5) 冷却処理について
上述のように従来、米飯の冷却は、真空冷却方式が主流であり、その原理上、米飯の乾燥・脱気を防ぐことができない。以上の従来の真空冷却方式の持つ問題点の他に、上述の水分含有量、糖化のばらつきにより、均質に冷却熱を伝達することが困難で、均質な冷却が困難である。
【0022】
(6) 冷凍処理について
上述のように従来、米飯の冷凍は、ブラストチラー方式が主流であり、米飯の乾燥・脱気を防ぐことができない。以上の従来のブラストチラー方式の持つ問題点の他に、上述の水分含有量、糖化のばらつきにより、均質に冷却熱を伝達することが困難で、均質な冷却が困難である。
【0023】
以上(1)〜(6)の一連の各課題を鑑みたときに、本発明者は、そもそもの米の品質のばらつきが、その後の工程において、影響を及ぼしていることに着目した。各工程における問題を解決するように工夫したとしても、本来的にばらつきが存在する以上、限界がある。
【0024】
以上の考察から、発明者は、浸漬工程において、米一粒一粒のばらつきを極力なくして、均質化を図ることにより、炊飯工程、冷却工程、冷凍工程といったその後の工程においても、良好な結果をもたらすことを見出して本発明を完成させるに至ったものである。
【0025】
即ち、請求項1記載の本発明は、米を浸漬水に浸漬する浸漬工程と、浸漬後の米を用いて炊飯する炊飯工程と、炊き上がった米飯を冷却する冷却工程と、を備える米飯の製造保存方法において、前記浸漬水は糖を含有し、該浸漬水に減圧下で米を浸漬することを特徴とする。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記糖が、浸漬水に0.1質量%から5質量%含有されることを特徴とする。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の前記糖が、二糖類以上の多糖類であることを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の前記冷却工程が、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備える冷却装置の冷却室に米飯を投入し、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差が所定温度範囲となるように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させながら、冷却を行うことを特徴とする。
【0029】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法において、米飯を凍結させる冷凍工程をさらに含み、冷凍工程は、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備える冷却装置の冷却室に投入された米飯を、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差が所定温度範囲となるように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させながら、冷凍を行うことを特徴とする。
【0030】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の米飯の製造保存方法の浸漬工程に使用される浸漬装置であって、
浸漬液と米とが投入された容器を減圧するための減圧回路を備えることを特徴とする。
【0031】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の米飯の製造保存方法の冷却工程に使用される冷却装置であって、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備え、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、冷却工程において、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差を一定に保持しつつ米飯の中心温度を低下させる過程を持つように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させることを特徴とする。
【0032】
請求項8記載の発明は、請求項5記載の米飯の製造保存方法の冷凍工程に使用される冷却装置であって、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備え、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、冷凍工程において、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差を一定に保持しつつ米飯の中心温度を低下させる過程を持つように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、浸漬工程において、浸漬水に糖を含めることで、糖は、米の内部の水分(自由水)と置換され、内部に進入するとともに、外表面にも付着する。こうして、米の一粒一粒に水分のみならず糖を含浸させて、水分及び糖の均一化、熟成化を図り、熟度が不揃いな一粒一粒の米に対して熟度が一律になるように調整することができる。これによって、その後の炊飯工程において、米粒の中心まで均質に熱が伝わり、デンプンを速やかに且つ均一に熱変性させて糖に変えることができる。含浸させた糖と、デンプンが熱変性により変化した糖により保水性が大幅に向上する。また、その後の冷却工程、また、必要に応じて行う冷凍工程において、熱伝導率が高く、各米粒の中心まで均質に熱が伝わり、冷却することができ、中心温度と表面温度との差を小さくしながら、冷却・冷凍を行うことができるので、保水性を向上させ、味、旨みも向上させることができる。
【0034】
こうして、保水性を向上させることにより、歩留りを大きく向上させることができ、米飯製造の収益性の向上に資することができる。また、長期保存にも適したものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。尚、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
【0036】
図1は、本発明による米飯の製造保存方法の手順の1つの例を表すフローチャートである。
【0037】
図1の方法は、大別して、米計量工程12、浸漬工程14、炊飯工程16、冷却工程18を有している。
【0038】
米計量工程12は、原料の生米に対して予め決められた量の米の計量を行い、無洗米でない場合には、洗米し、水切りを行う。原料米が無洗米である場合には、洗米処理を省略する。
【0039】
次に、浸漬工程14では、浸漬水を作製し、米を浸漬する。浸漬水は、水に糖類を微量溶解させたものを使用する。糖は、グラニュー糖、黒砂糖、ブドウ糖、ショ糖、果糖、トレハロース、セルロース等の糖のいずれか1つまたは2つ以上の混合とすることができる。好ましくは、単糖類よりも二糖類以上の多糖類とすると米粒内に糖分を確実に留めておくことができるため、好都合である。単糖類の場合には、分子構造が大きく、米のデンプンと絡み難いためである。また、糖類の含有量は、具体的には0.1〜5質量%、好ましくは、1〜3質量%とするとよい。米の本来持つ糖度は、1°Bx程度であるため、それに対応する程度の糖とすればよいからである。
【0040】
全体の浸漬水の量は、米質量の1.4倍前後の量とする。この量は従来の浸漬水の量と同じである。
【0041】
米計量工程12で計量された米と浸漬水とを炊飯釜102に投入し、浸漬装置に装着する。本発明による方法で使用する浸漬装置100を図2に示す。図において、浸漬装置100は、複数の炊飯釜102を保持可能で開閉可能な扉104aを有する真空槽104を備える。真空槽104内には、複数の炊飯釜102を載置可能なトレー106が設けられる。
【0042】
真空槽104には、槽内部を減圧するための減圧回路110が接続される。減圧回路110は、真空槽104から逆止弁112を介して凝集器114、真空ポンプ116が接続される減圧ライン118と、循環ポンプ120、貯水槽122が設けられて、凝集器114を通過して冷却する循環式冷却水ライン124とが設けられる。貯水槽122には適宜給水がなされる。
【0043】
真空槽104内の圧力(ゲージ圧)は、−0.1MPa〜0.05MPa、好ましくは、−0.09〜−0.08MPaとし、浸漬時間は、10分〜60分程度、好ましくは、20〜40分程度とするとよい。
【0044】
図3は、他の浸漬装置130の例である。この浸漬装置130では、密閉タンク132を備えており、密閉タンク132内に炊飯釜102を載置可能となっている。図の例では、1つの炊飯釜102が載置可能となっているが、複数の炊飯釜102を載置可能とすることもできる。密閉タンク132の蓋132aは、図2と同様、減圧ライン118によって減圧回路110に接続されている。
【0045】
図4は、さらに他の浸漬装置140の例であり、専用の炊飯釜142と該炊飯釜142を搬送するコンベア144とを備え、該炊飯釜142の密閉蓋142aは、減圧ライン118によって減圧回路110に接続されている。減圧ライン118は、炊飯釜142の移動に対して追随可能となっている。
【0046】
炊飯釜142には、直接、米と浸漬水とが投入され、炊飯釜142をコンベア144によって搬送しながら、浸漬処理を行い、次の処理へと炊飯釜142を連続的に移動させることができる。
【0047】
以上の浸漬装置100,130,140で行われる浸漬工程では、浸漬水に糖を含有させることで、糖は、米の内部の水分(自由水)と置換され、米内部に進入するとともに、米の外表面にも付着する。こうして、米の一粒一粒に水分のみならず糖を含浸させて、水分及び糖の均一化、熟成化を図る。熟度が不揃いな一粒一粒の米に対して熟度が一律になるように調整することができる。これによって、米のランクが低くても、またブレンド米であっても、一律の上位ランクの米と同等の品質にすることができる。
【0048】
また、減圧下で浸漬処理を行うことで、各米粒の中心まで水分と糖度を含浸させて、水分と糖度の均一化を高速に図ることができる。よって、浸漬時間も短縮することができる。また、減圧下で、真空槽104(または密閉タンク132、炊飯釜142)内、米粒内、浸漬水内の酸素が外部に放出されるため、脱酸化により、劣化スピードを遅らせることができる。また、密閉下で浸漬処理を行うために、異物混入も防ぐことができる。また、減圧下で浸漬処理を行うことで、浸漬水の温度(5℃〜11℃)が低下するので、洗米時に必ずしも冷水で洗米する必要がない。
【0049】
こうして、予め決められた時間、浸漬を行った炊飯釜102(142)は、炊飯工程16へと供される。
【0050】
炊飯は、従来と同様に加熱することで行われる。しかしながら、浸漬工程14において各米粒の糖度、水分が均一化されているために、米粒の中心まで均質に熱が伝わり、デンプンを速やかに且つ均一に熱変性させて糖に変えることができる。含浸させた糖と、デンプンが熱変性により変化した糖により保水性が大幅に向上する。
【0051】
次に、炊飯後の米飯は、蒸らして炊飯窯から取り出して冷却バット210(図5参照)に移されて、冷却工程18へと供される。冷却工程は、98〜75℃の炊飯直後の米飯を、20℃前後までの温度帯域に急速に冷却する工程である。30〜20℃の温度領域で菌が最も増殖しやすいために、その温度領域を急速に通過して下回ることが重要となる。
【0052】
この冷却工程18では、従来の真空冷却方式による真空冷却庫ではなく、図5に示すような冷気式冷却法による冷却装置200に米飯を投入する。
【0053】
冷却装置200は、断熱壁体212によって包囲されて外部と断熱的に隔離された室内216を有しており、その室内216の一側面(前面)には、冷却バット210に収容された米飯を搬入出するための扉214が開閉自在に備えられている。
【0054】
室内216には、その一側面(後面)に沿って冷却器218が設けられる。冷却器218は、この中を冷媒が通過する際に気化することで周囲の空気を冷却するエバポレータとなっており、例えば、冷却フィンがその周囲に形成された冷却コイルで構成することができる。
【0055】
冷却器218の前面には、任意の数のモータ付きファン220が配設される。ファン220は米飯表面の熱交換された熱を静かに動かす程度の弱いものとする。ファン220の前方には、好ましくは整流板221が設けられており、整流板221によって室内216は、冷却器218が設けられる冷気生成室222と、冷却室224とに完全に区分けされる。冷却室224には、適宜、複数のトレー226が配設され、トレー226上に冷却バット210が載置可能となっている。
【0056】
整流板221によって一様に冷却される冷却室224には、温度センサ228が設けられる。また、冷却器218を通過する冷媒の循環回路230は、室外に配置される凝縮器232、冷媒タンク234、圧縮機236及び膨張弁238を有する。そして、温度センサ228からの検出信号は、制御器240へと供給される。制御器240は、インバータ242を制御して、圧縮機236の回転を制御するようになっており、前記冷却室224が予め決められた温度変化をとるように圧縮機236の運転を制御して冷媒の温度を変化させるようになっている。
【0057】
予め決められた温度変化とは、米飯の中心温度(即ち、冷却バット210の略中央部)の変化によって決められ、米飯の中心温度と、冷却室224の温度との温度差ΔTを所定温度範囲内で、好ましくはある温度差ΔT1とすることで決める。
【0058】
米飯の中心温度と表面温度との差が大きいと、そのために、中心部から表面に向かって温度差の大きさに比例して熱移動が起こり、同時に水分も大量に移動する。これに対して、米飯に対してファン220からの冷風は弱くし、米飯の中心温度と表面温度との間での温度差ΔTを一定以下とし、可能な限り温度差ΔTを小さくするようにすれば、従来のような水分の移動が発生せず、水分蒸発量を少なく抑えることができる。また、あまり大きな温度差ΔTにしないことで、相対湿度差を小さくして、米飯からの蒸発水量を抑えることができる。
【0059】
温度差ΔTを一定とする過程を持つために、予め、図5(b)に示すように同じ冷却装置200において、または他の同じ仕様の冷却装置200において、冷却バット210に収容した米飯の中心温度を測定する温度センサ244を設け、温度センサ228と温度センサ244の両方の温度センサからの検出信号をマイクロコンピュータで構成される解析器246で受けて、インバータ242を変化させて冷媒の温度を変化させながら、冷却を行って、米飯の中心温度と、表面温度(結果として、冷却室224の温度または冷媒の温度)との温度差が可能な限り一定となるような、冷却室224の温度と時間との関係を予め求めておく。
【0060】
図6は、冷却工程における、米飯の中心温度と冷却室224の温度、冷媒温度との関係を表す図であり、米飯を20℃まで冷却する場合を示す。図6において、冷却室の温度は、冷媒温度の範囲(10℃〜−30℃)によって上限温度と下限温度があり、それらの温度の間において、温度差ΔTが一定となるようにする。つまり、両者の温度差は常時一定とすることが理想であるが、上述のように冷却室即ち冷媒温度の上限温度によって、冷却初期段階においては、米飯の中心温度と、冷却室224の温度との差はある程度大きくなる場合がある。特に米飯が高温域(約90℃〜約30℃)にある場合には、温度差は大きくなってしまうので、初期段階のみ温度差を大きくし、その後、温度差をほぼ一定に保持するとよく、全冷却工程において温度差が所定温度範囲内に収まるようにする。一定の温度差としては、5℃〜100℃とし、好ましくは10℃〜40℃とすることができる。
【0061】
こうして、求められた冷却室224の温度と時間との関係を表すデータ(温度変化データ)(図6)が制御器240において格納されている。
【0062】
次からのほぼ同じ質量の同じ条件での米飯の冷却を行うに当たっては、同じ冷却装置200を使う場合には温度センサ244及び解析器246は除去して制御器240とし、温度センサ228からの温度を検出して、それを温度変化データに合致するように、制御器240がインバータ242の制御を行って冷媒の温度を変化させる。こうして、冷却室224の温度を制御することにより、米飯の中心温度と表面温度とが小さい温度差を保持しながら低下していく。
【0063】
尚、以上の例では、冷却室224の温度を検出して、この冷却室224の温度が予め決められた温度変化をするようにインバータ242の制御を行って冷媒温度を変化させていたが、これに限るものではなく、冷却室24の温度を検出する代わりに、米飯の表面の温度、冷媒の温度(冷却器218の入口温度または出口温度のいずれでもよい)、冷気生成室222の温度を検出して、これらの温度が予め決められた時間変化をするように冷媒の温度を時間的に変化させることが可能である。
【0064】
また、インバータ242を制御して圧縮機236の回転数を変えることで、冷媒の温度を変化させていたが、これに限るものではなく、凝縮器232のファンの回転数を変化させることにより、冷媒の温度を変化させることも可能であり、循環回路230を流れる流量を制御器240で調整することにより、冷媒の流量を変化させることも可能である。または、図示した以外に、膨張弁238を制御して、膨張弁238で冷媒流量調整を行うことも可能である。
【0065】
このように、米飯の中心温度との温度差を可能な限り小さくなるようにして、冷却室224の温度を制御することにより、米飯の乾燥・脱気を防ぐことができるようになる。
【0066】
また、冷却装置200の室内216は密閉空間であるために、炊き立ての米飯を冷却室224に投入すると、室内216が蒸発水ですぐに飽和するために、飽和状態を保ちながら、米飯を冷却することで、米飯の水分の蒸発を防ぐことができる。
【0067】
ところで、冷却装置200の室内216は密閉空間であるが、米飯の出し入れにより扉214を開閉するために、空気の入れ替えが定期的に行われている。空気中には菌が生存しており、この中には−10℃程度の低温でも発芽が進行するものも存在するので、そのような菌を防ぐために、図7〜図10に示すような殺菌手段を設けるとよい。
【0068】
図7に例示した殺菌手段は、冷却装置200の室内216にエア循環ライン250を通し、室外のエア循環ライン250に除菌フィルタ252と、送風機254とを設けたものである。送風機254によりエアを循環させて、除菌フィルタ252で菌を除去する。
【0069】
図8に例示した殺菌手段は、冷却装置200の室内216の壁面に吹き出しノズル260を設け、吹き出しノズル260をオゾンライン262を介してオゾン発生器264に接続したものであり、オゾンの殺菌効果を利用する。
【0070】
図9に例示した殺菌手段は、冷却装置200の室内216の壁面に紫外線灯270を設け、紫外線灯270をAC電源272に接続したものであり、紫外線の殺菌効果を利用する。
【0071】
図10に例示した殺菌手段は、冷却装置200の室内216に、ノズル280を設け、ノズル280を洗浄水ライン282を介してポンプ284に接続し、ポンプ284にさらに、温水槽286、アルカリ水槽288、酸性水槽290に接続し、それぞれの接続をバルブで切換可能としたものである。酸洗浄、アルカリ洗浄を行った後、熱水で室内216を洗浄する。
【0072】
図7〜図10に示す殺菌手段は、装置が停止中または冷却作業の開始前に適時実施するとよい。
【0073】
また、冷却器218とファン220と冷却室224を備える空間としては、扉214によって完全な密閉室内216を形成するものに限るものではなく、また、米飯の冷却室224への搬送は、手動で行うこともできるが、半自動的または自動的に行うこともできる。
【0074】
以上の冷却装置200による冷却工程を行って、炊飯後の米飯を冷却することで、米飯を歩留り良く、味、旨み分を保持しつつ保存することができるようになる。浸漬工程14において各米粒の糖度、水分が均一化されているために、熱伝導率が高く、各米粒の中心まで均質に熱が伝わるようにして冷却することができる。
【0075】
図1は、普通の米飯を製造し、冷却することで保存する場合の手順であったが、これに限るものではない。図11は、米飯として寿司飯を製造し、冷却することで保存する寿司飯製造保存方法の手順の1つの例を表すフローチャートである。図11において、図1と同一の工程は図示を簡略化している。
【0076】
この寿司飯製造保存方法においては、浸漬工程14において必要に応じて混合具材を計量して浸漬水に追加する。また、炊飯工程16において、米飯をほぐすときに、計量された合わせ酢及び必要に応じて計量された混合具材を混合する。
【0077】
また、図12は、本発明による米飯の製造保存処理の手順の他の例を示すフローチャートであり、図12において、図1と同一の工程は図示を簡略化している。
【0078】
冷却工程18の後に、おにぎり、弁当箱に合致した形状に成形する成形工程20が追加されており、また、長期保存を図る場合には、冷凍工程22、保管工程24、解凍工程26が追加される。尚、これらの成形工程20、冷凍工程22、保管工程24及び解凍工程26は、図11の寿司飯製造に対して行うことも可能である。また、成形工程20において寿司ネタと合わせて寿司を成形することも可能である。
【0079】
冷凍工程22は、冷却工程18で20℃程度に冷却した米飯を凍らせて針状結晶点以下の温度まで例えば−20℃〜−30℃前後にまで冷却を行う工程である。米飯の針状結晶点は、−2℃前後〜−4℃前後であり、デンプンの劣化温度は、+10℃〜−1℃前後であり、この温度帯に米飯を保存すると急速に劣化するために、長期保存を図る場合には、この温度帯以下の温度に凍結する必要がある。
【0080】
この冷凍工程22で使用する装置は、冷却装置200と同じ装置または同じ原理に基づく装置である。よって、炊飯後に冷却から冷凍までを一度に行う場合には、同じ冷却装置を用いて、連続的に冷却工程と冷凍工程とを行うことも可能である。
【0081】
冷却工程においては、図13に示すような温度変化をするようになっており、冷媒の温度及び/又は流量を変化させることにより、米飯の中心温度と表面温度とを均等に低下させていくことができる。
【0082】
中心温度と表面温度との差が小さいと、針状結晶点を飛び越える時間を大幅に短縮化できて、氷結晶を小さくできる。
【0083】
以上の冷凍工程を行って、炊飯後の米飯を冷凍することで、米飯を歩留り良く、味、旨み分を保持しつつ保存することができるようになる。浸漬工程14において各米粒の糖度、水分が均一化されているために、熱伝導率が高く、各米粒の中心まで均質に熱が伝わるようにして冷凍することができる。
【0084】
冷凍工程22の終了後は、保管工程24で保存庫(−30℃〜−35℃)に入れて保管する。この保管工程24では、低温乾燥を防止するために、通気性のない包装に封入し、密閉して保管するとよい。冷凍工程22で氷結晶が生成されているので、冷凍工程22は−20℃程度で終了して、その後は、より低温の保管工程24に入れることでもよい。
【0085】
保管工程24で保管することで、長期保存が可能になる。浸漬工程14において、糖分が多く含有されているために、より長期の保存が可能になる。
解凍した米飯を使用する際には、解凍工程26で解凍する。
【0086】
以上のように、本発明では、浸漬工程14において、浸漬水に微量の糖を含めることで、処理を行い、各米粒一粒一粒の品質のばらつきをならし、且つ、その米粒の内部に糖及び水分を含浸させることで、それ以降の炊飯工程16、冷却工程18、冷凍工程22及び保管工程24においても良い影響を与え、結果として保水性の良い米飯の製造・保存を行うことができる。また、長期保存にも適したものとすることができる。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
以下の材料から米飯を製造した。
【表1】
【0088】
計量工程
米を450g計量し、18℃の上水で洗米を4回行った。ざるに洗米を投入して水切りし、5分保持した。
浸漬工程
洗米と、糖を溶解した浸漬水をボールに入れて、浸漬装置100内にセットし、圧力(ゲージ圧)−0.08MPaで、30分浸漬を行った。
30分後ボールを取り出した。水温は5℃となっていた。
炊飯工程
電子IHジャーで炊飯を行った、炊飯時間は約35分であった。蒸らしのために10分保持し、冷却バットに炊き上がり米飯を取り出した。このときの温度は98℃であった。しゃもじで3分間をほぐした。ほぐし後は約82℃であった。
冷却工程
冷却装置200内に冷却バットをセットし、冷却を開始した。冷却開始時の温度は78℃となっていた。約17分で冷却を終了した。冷却終了時の品温は23℃であった。
この冷却後の米飯の質量は、1069.7gであり、16.3gの損失となった。
【0089】
(比較例1)
以下の材料から米飯を製造した。
【表2】
【0090】
計量工程
米を450g計量し、18℃の上水で洗米を4回行った。ざるに洗米を投入して水切りし、5分保持した。
浸漬工程
洗米と、糖を溶解した浸漬水を炊飯器に投入し、90分浸漬を行った。
炊飯工程
電子IHジャーで炊飯を行った、炊飯時間は約35分であった。蒸らしのために10分保持し、冷却バットに炊き上がり米飯を取り出した。このときの温度は98℃であった。しゃもじで3分間をほぐした。ほぐし後は約82℃であった。
冷却工程
真空冷却槽に冷却バットをセットし、冷却を開始した。冷却開始時の温度は78℃となっていた。約15分で冷却を終了した。冷却終了時の品温は23℃であった。
この冷却後の米飯の質量は、1004.5gであり、81.5gの損失となった。
【0091】
実施例1と比較例1との比較をまとめると次のようになった。
【表3】
【0092】
以上の比較により、実施例1による浸漬工程を行うことにより、保水性が向上していることが分かる。真空冷却方式を使った比較例1では、水分損失が大きい。実施例1は比較例1に比較して味、旨みにおいても優れていた。
実施例1は比較例1に比較して、味、旨み、歩留率を向上させることができると共に、加工時間も1/3短縮できることが分かった。
【0093】
(実施例2)
以下の材料から寿司飯を製造した。
【0094】
【表4】
【0095】
計量工程〜浸漬工程までは、実施例1と同一に行った。
炊飯工程
電子IHジャーで炊飯を行った、炊飯時間は約35分であった。蒸らしのために10分保持し、冷却バットに炊き上がり米飯を取り出した。このときの温度は98℃であった。
調理工程
冷却バット内に取り出した米飯をほぐしながら、材料2の合わせ酢を3分間混合した。ほぐし後は約76℃であった。
冷却工程
冷却装置200内に冷却バットをセットし、冷却を開始した。冷却開始時の温度は75℃となっていた。約15分で冷却を終了した。冷却終了時の品温は23℃であった。
この冷却後の米飯の質量は、1158.8gであり、17.2gの損失となった。
【0096】
(比較例2)
以下の材料から寿司飯を製造した。
【0097】
【表5】
【0098】
計量工程〜浸漬工程までは、比較例1と同一に行った。
炊飯工程
電子IHジャーで炊飯を行った、炊飯時間は約35分であった。蒸らしのために10分保持し、冷却バットに炊き上がり米飯を取り出した。このときの温度は98℃であった。
調理工程
冷却バット内に取り出した米飯をほぐしながら、材料2の合わせ酢を3分間混合した。ほぐし後は約78℃であった。
冷却工程
真空冷却槽に冷却バットをセットし、冷却を開始した。冷却開始時の温度は75℃となっていた。約15分で冷却を終了した。冷却終了時の品温は23℃であった。
この冷却後の米飯の質量は、1077.2gであり、98.8gの損失となった。
【0099】
実施例2と比較例2との比較をまとめると次のようになった。
【表6】
【0100】
以上の比較により、寿司飯においても、普通の米飯と同様の結果が得られた。酢飯の酢の残量は、明らかに実施例2の方が比較例2に比べて、酢の香り、旨みも残った感じがした。真空冷却方式では、香りの放出も大きいことが分かった。これは、真空下での低温沸騰が原因ではないかと推察される。
【0101】
(実施例3)
実施例1で製造した普通の米飯を成形しておにぎりを製造した。
【表7】
【0102】
成形工程
実施例1によって製造された米飯に塩を混合し、おにぎり2個を型を使って成形した。
冷凍工程
本発明の冷凍装置200におにぎりをセットして、冷凍を開始した。おにぎりの中心温度と、表面温度とをセンサにて測定しながら、温度差が限りなく近い状態で冷却した。品温が−30℃に達したところで停止した。
冷凍装置200から取り出して、通気性のない袋に入れて、ヒートシールして密閉した。−30℃の時の、おにぎりの質量は、それぞれ81.2g(実施例3−1)、81.5g(実施例3−2)であった。
保管工程
−35℃以下の保冷庫で保管した。
【0103】
(比較例3)
比較例1で製造した普通の米飯を成形しておにぎりを製造した。
【表8】
【0104】
成形工程
比較例1によって製造された米飯に塩を混合し、おにぎり2個を型を使って成形した。
冷凍工程
ブラストチラー方式の冷凍装置におにぎりをセットして、冷凍を開始した。品温が−30℃に達したところで停止した。
【0105】
冷凍装置から取り出して、通気性のない袋に入れて、ヒートシールして密閉した。−30℃の時の、おにぎりの質量は、それぞれ80.5g(比較例3−1)、80.4g(比較例3−2)であった。
保管工程
−35℃以下の保冷庫で保管した。
【0106】
実施例3と比較例3との比較をまとめると次のようになった。
【表9】
以上の比較により、冷凍工程においても、保水性が向上していることが分かる。
【0107】
(実施例4)
以下の材料から米飯を製造した。
【表10】
【0108】
計量工程
米を450g計量し、18℃の上水で洗米を4回行った。ざるに洗米を投入して水切りし、5分保持した。
浸漬工程
洗米と、糖を溶解した浸漬水をボールに入れて、浸漬装置100内にセットし、圧力(ゲージ圧)−0.09MPaで、30分浸漬を行った。
30分後ボールを取り出した。水温は4℃となっていた。
炊飯工程
電子IHジャーで炊飯を行った、炊飯時間は約35分であった。蒸らしのために10分保持し、冷却バットに炊き上がり米飯を取り出した。このときの温度は98℃であった。しゃもじで3分間をほぐした。ほぐし後は約82℃であった。
冷却・冷凍工程
冷却装置200内に冷却バットをセットし、冷却及び冷却に引き続き冷凍を行った。冷却開始時の温度は77℃となっていた。冷凍終了時の品温は−30℃であった。
冷却終了に相当する23℃、冷凍終了に相当する−30℃での米飯の質量を計測したところ、23℃で1069.5gであり、−30℃で1068.9gであった。
【0109】
(比較例4)
以下の材料から米飯を製造した。
【表11】
【0110】
計量工程
米を450g計量し、18℃の上水で洗米を4回行った。ざるに洗米を投入して水切りし、5分保持した。
浸漬工程
洗米と、糖を溶解した浸漬水をボールに入れて、浸漬装置100内にセットし、圧力(ゲージ圧)−0.09MPaで、30分浸漬を行った。
30分後ボールを取り出した。水温は4℃となっていた。
炊飯工程
電子IHジャーで炊飯を行った、炊飯時間は約35分であった。蒸らしのために10分保持し、冷却バットに炊き上がり米飯を取り出した。このときの温度は98℃であった。しゃもじで3分間をほぐした。ほぐし後は約82℃であった。
冷却・冷凍工程
冷却装置200内に冷却バットをセットし、冷却及び冷却に引き続き冷凍を行った。冷却開始時の温度は77℃となっていた。冷凍終了時の品温は−30℃であった。
冷却終了に相当する23℃、冷凍終了に相当する−30℃での米飯の質量を計測したところ、23℃で1060.2gであり、−30℃で1051.5gであった。
【0111】
実施例4と比較例4との比較をまとめると次のようになった。
【表12】
【0112】
同じ冷却、冷凍条件であっても、浸漬工程における糖の有無によって、保水性が大きく異なり、糖を追加することによって、保水性が大幅に向上することが分かった。これは、米の中心まで水分が到達していることを表している。糖を追加することにより、甘味が微量加わることで、味、旨みが増し、上位ランクの米に匹敵するものとなった。
また、糖度が上がることで、解凍後の長期保存の時間も延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明による米飯の製造保存処理の手順の1つの例を表すフローチャートである。
【図2】本発明による方法で使用可能な浸漬装置の説明断面図である。
【図3】本発明による方法で使用可能なその他の浸漬装置の説明断面図である。
【図4】本発明による方法で使用可能なその他の浸漬装置の説明断面図である。
【図5】本発明による方法で使用可能な冷却装置(冷凍装置)の説明断面図である。
【図6】冷却工程における米飯の中心温度と冷却室の温度と時間との関係を表す図である。
【図7】殺菌手段を設けた冷却装置の説明断面図である。
【図8】他の殺菌手段を設けた冷却装置の説明断面図である。
【図9】他の殺菌手段を設けた冷却装置の説明断面図である。
【図10】他の殺菌手段を設けた冷却装置の説明断面図である。
【図11】本発明による米飯としての寿司飯の製造保存方法の手順の1つの例を表すフローチャートである。
【図12】本発明による他の米飯製造保存方法の手順を示すフローチャートである。
【図13】冷凍工程における米飯の中心温度と冷却室の温度と時間との関係を表す図である。
【符号の説明】
【0114】
14 浸漬工程
16 炊飯工程
18 冷却工程
22 冷凍工程
100、130、140 浸漬装置
200 冷却装置
216 室内(空間)
218 冷却器
220 ファン
224 冷却室
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯を製造して冷却保存または冷却・冷凍保存する処理に関し、歩留り良く、味、旨み分を保持しつつ、米飯を保存するために適した米飯の製造保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯は、そのまま食する他に、弁当、寿司、おにぎり、チャーハン等の多数のメニューに使用されている。米飯は、日本人にとって主食であり、家庭内でも、炊飯して米飯を食べることが慣習化されているため、日本人の味覚にとって、その味を最も感知できる食物であり、その「味、旨さ」は敏感に感知される。
【0003】
大量に米飯を製造する食品工場では、家庭で炊飯している方式を自動化、巨大化した装置で炊飯処理がなされている。即ち、浸漬処理を含む前処理を行った後、炊飯処理を行っている。
【0004】
ここで、従来の炊飯処理前の前処理としては、例えば特許文献1〜3に示すような処理が提案されている。
【0005】
特許文献1では、水中に浸漬した洗米粒を大気圧より低圧な雰囲気中に置き、洗米粒内部の気体をその外部に排除した後、水中に浸漬した洗米粒を大気圧雰囲気中に置いて、洗米粒内部に水分を吸収させており、これによって、洗米粒を浸漬する水中の温度、洗米粒が新米か古米かの相違、乾米の含水率の相違あるいは精米の程度に左右されずに、洗米粒内部へ30%前後の飽和水分の吸収作業を行えるようにしている。
【0006】
特許文献2では、古米を、水及び椿油、紅花油、しらしめ油、コーン油等の無酸化脂肪と混合して減圧条件下で一定時間放置しており、これによって、古米に含有される酸化脂肪の揮発点が低下し、古米の組織中から酸化脂肪が揮発し、酸化脂肪の揮発した組織空洞中に無酸化脂肪と水とが入り込み、新米と比肩できる味となる古米を精製している。
【0007】
特許文献3では、米をグルタミン酸ソーダといった栄養素、及び/またはグリシン、アラニン、米糖抽出フイチン酸塩等の食味向上剤を溶解した微酸性水溶液とともに耐圧容器内で一定時間減圧に保持した後、常圧に戻し、さらに常温で1時間吸液させ、水切り、乾燥した後、炊飯することで、米の内外に均一に水分を分布させ、栄養素、食味向上剤を吸着させて、風味、旨みを増加させている。
【0008】
一方、炊飯処理後の米飯の冷却処理(98〜75℃の炊飯直後の米飯を、20℃前後までの温度帯域に急速に冷却する処理を言うものとする)では真空冷却方式が、冷凍処理(20℃前後から米飯が氷結点を超えて凍結する温度まで米飯を冷却する処理を言うものとする)ではブラストチラー方式が主流となっている。
【0009】
真空冷却方式は、被冷却物を減圧環境内に置くことで、蒸発温度が下がることを利用し、被冷却物に含まれる水分が水蒸気(気化水)となって被冷却物から潜熱を奪って蒸発していくことを利用して冷却するものである。そのため、米飯からは多量の水分が蒸発されていき、同時に脱気作用も働くために、米飯の乾燥を避けることができない。この蒸発量は、温度差が大きいほど、つまり、奪う熱が多いほど、多量になる。本発明者の実験によれば、6〜10%の水分が失われている。また、米飯の持つ香りも飛ばしてしまう。
【0010】
また、ブラストチラー方式では、庫内に、熱源として伝熱面積の大きなエバポレータと、強風ファンを設け、エバポレータのフィンの間に強制的に空気を通過させて、循環量を多くし、冷気を作り出して、庫内の被冷却物へ直接吹き付けることで熱交換の効率を高めた方式である。循環方式や熱交換方式には様々なものがあるが、基本的には低温冷風を効率よく作り出し高い熱交換を目指している点では共通している。
【0011】
このブラストチラー方式においても米飯の乾燥・脱気が生じるという問題があり、その主なる原因としては、米飯の表面は強冷風に晒されているために、米飯の表面と中心部との間に温度差が発生し、中心部の方が温度が高いために、熱は中心側から表面側へと移動し、同時に水分も熱と同じ方向に移動するので、中心部から水分が奪われていくことが考えられる。
【0012】
また、他の原因として、エバポレータに強制的に冷気を通過させるために、エバポレータの表面に水蒸気が結露して、冷気中の除湿を行ってしまうことがある。つまり、エバポレータ通過時に除湿されて乾燥した冷気が米飯に吹き付けられて、冷却と同時に米飯の除湿を行い、昇温した冷気が再びエバポレータで再冷却・除湿を行うサイクルが作られてしまい、米飯からの水分が奪われていくことが考えられる。
【0013】
以上の真空冷却方式及びブラストチラー方式では、米飯の乾燥・脱気を防ぐことができない。そのため、米飯の歩留り低下を招くという問題がある。大量生産を行っている食品工場では、僅かな(例えば、0.1%程度でも)の歩留りによって、その収益性を大きく左右することになる。また、米飯は、糖度と水分含有率が高いほど、「旨さ」を感じるため、味、旨み分も悪化させてしまうことになる。
【0014】
他方で、本出願人は、従来の冷却方式に対する問題を解決するものとして、特許文献4において、空間内に冷却器と、ファンと、被冷却物の設置される冷却室とを備える冷却装置において、予め得られた、被冷却物の中心温度と、前記空間の温度、被冷却物の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、被冷却物の冷却・冷凍過程において、被冷却物の中心温度と、前記空間の温度、被冷却物の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差を一定に保持しつつ被冷却物の中心温度を低下させる過程を持つように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させながら、被冷却物の冷却・冷凍を行うことを提案している。
【0015】
【特許文献1】特開昭64−86846号公報
【特許文献2】特開平7−203875号公報
【特許文献3】特開昭59−203453号公報
【特許文献4】特許4081507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、米飯を製造して冷却または冷却・冷凍保存するための処理において、冷却・冷凍の効果をより高めて、歩留り良く、味、旨み分を保持しつつ、保存を行うことができる米飯製造保存方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、従来の米飯に関する問題の原因として、次の点に着目した。
(1) 市販米について
原料となる市販米は、同じ袋に梱包されているものであっても、一粒一粒の米の品質が同一でない。米は本来、農作物であるから、産地、その年の天候、同じ産地であっても作付した場所、土壌などの影響を受け、等質な物だけを揃えることは不可能である。特に、ブレンド米と表記されている米は明らかに品質のばらつきがある。
いずれにしても、食品工場では大量の米を原料として仕入れるので、仕入れる米の銘柄程度の管理をすることはできても、一粒一粒の米の品質を揃えることは不可能である。
【0018】
(2) 米飯の旨さについて
米はデンプンを主体とする多孔質である。米飯の旨さは、米に含まれる水分量とデンプンの糖化で決まる。デンプンの糖化とは、米に加水し、加熱炊きしてデンプンを熱により糖化することである。
上記(1)で述べたように、米の品質にばらつきがあれば、吸水性が米によって異なり、また、均一な加熱を行っても、糖化の程度にもばらつきがある。そのため、全米粒に対して旨みを出させるのに最適な条件で浸漬処理、加熱処理を行うことは不可能である。
【0019】
(3) 浸漬処理について
従来の炊飯処理までの前処理としては、米を所定量計量し、洗米して糖を洗い流した後、水を切り、炊飯釜に米を投入し、この米に対し、質量比1.4倍前後の水を加水して、60分から120分程度、大気中に放置した後、炊飯を始めるようになっている。
この方法では、不揃いの米に均質に含水させることができない。つまり、吸水性の良い米と吸水性の悪い米とでは、当然に、含水率に差が出てしまう。そして、米の中心まで吸水されないものも出てくる。
また、従来の浸漬処理では、米に本来含まれている糖が浸漬水側に流出するために、旨み成分が失われることになる。
このように従来の浸漬処理は、主として自然まかせで行っており、含水量調節、糖度調節は一切行われていない。
また、従来の浸漬処理では、異物混入、浸漬中の水、大気中の酸素による劣化の促進の問題がある。
【0020】
(4) 炊飯処理について
上述のように、米の品質にばらつきがあれば、均等に熱が作用せずに、糖化にばらつきが生じ、また、水分含有量が不揃いな米飯となる。この結果、次の冷却処理においても、限界が生じることになる。
【0021】
(5) 冷却処理について
上述のように従来、米飯の冷却は、真空冷却方式が主流であり、その原理上、米飯の乾燥・脱気を防ぐことができない。以上の従来の真空冷却方式の持つ問題点の他に、上述の水分含有量、糖化のばらつきにより、均質に冷却熱を伝達することが困難で、均質な冷却が困難である。
【0022】
(6) 冷凍処理について
上述のように従来、米飯の冷凍は、ブラストチラー方式が主流であり、米飯の乾燥・脱気を防ぐことができない。以上の従来のブラストチラー方式の持つ問題点の他に、上述の水分含有量、糖化のばらつきにより、均質に冷却熱を伝達することが困難で、均質な冷却が困難である。
【0023】
以上(1)〜(6)の一連の各課題を鑑みたときに、本発明者は、そもそもの米の品質のばらつきが、その後の工程において、影響を及ぼしていることに着目した。各工程における問題を解決するように工夫したとしても、本来的にばらつきが存在する以上、限界がある。
【0024】
以上の考察から、発明者は、浸漬工程において、米一粒一粒のばらつきを極力なくして、均質化を図ることにより、炊飯工程、冷却工程、冷凍工程といったその後の工程においても、良好な結果をもたらすことを見出して本発明を完成させるに至ったものである。
【0025】
即ち、請求項1記載の本発明は、米を浸漬水に浸漬する浸漬工程と、浸漬後の米を用いて炊飯する炊飯工程と、炊き上がった米飯を冷却する冷却工程と、を備える米飯の製造保存方法において、前記浸漬水は糖を含有し、該浸漬水に減圧下で米を浸漬することを特徴とする。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記糖が、浸漬水に0.1質量%から5質量%含有されることを特徴とする。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の前記糖が、二糖類以上の多糖類であることを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の前記冷却工程が、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備える冷却装置の冷却室に米飯を投入し、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差が所定温度範囲となるように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させながら、冷却を行うことを特徴とする。
【0029】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法において、米飯を凍結させる冷凍工程をさらに含み、冷凍工程は、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備える冷却装置の冷却室に投入された米飯を、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差が所定温度範囲となるように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させながら、冷凍を行うことを特徴とする。
【0030】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の米飯の製造保存方法の浸漬工程に使用される浸漬装置であって、
浸漬液と米とが投入された容器を減圧するための減圧回路を備えることを特徴とする。
【0031】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の米飯の製造保存方法の冷却工程に使用される冷却装置であって、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備え、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、冷却工程において、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差を一定に保持しつつ米飯の中心温度を低下させる過程を持つように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させることを特徴とする。
【0032】
請求項8記載の発明は、請求項5記載の米飯の製造保存方法の冷凍工程に使用される冷却装置であって、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備え、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、冷凍工程において、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差を一定に保持しつつ米飯の中心温度を低下させる過程を持つように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、浸漬工程において、浸漬水に糖を含めることで、糖は、米の内部の水分(自由水)と置換され、内部に進入するとともに、外表面にも付着する。こうして、米の一粒一粒に水分のみならず糖を含浸させて、水分及び糖の均一化、熟成化を図り、熟度が不揃いな一粒一粒の米に対して熟度が一律になるように調整することができる。これによって、その後の炊飯工程において、米粒の中心まで均質に熱が伝わり、デンプンを速やかに且つ均一に熱変性させて糖に変えることができる。含浸させた糖と、デンプンが熱変性により変化した糖により保水性が大幅に向上する。また、その後の冷却工程、また、必要に応じて行う冷凍工程において、熱伝導率が高く、各米粒の中心まで均質に熱が伝わり、冷却することができ、中心温度と表面温度との差を小さくしながら、冷却・冷凍を行うことができるので、保水性を向上させ、味、旨みも向上させることができる。
【0034】
こうして、保水性を向上させることにより、歩留りを大きく向上させることができ、米飯製造の収益性の向上に資することができる。また、長期保存にも適したものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。尚、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
【0036】
図1は、本発明による米飯の製造保存方法の手順の1つの例を表すフローチャートである。
【0037】
図1の方法は、大別して、米計量工程12、浸漬工程14、炊飯工程16、冷却工程18を有している。
【0038】
米計量工程12は、原料の生米に対して予め決められた量の米の計量を行い、無洗米でない場合には、洗米し、水切りを行う。原料米が無洗米である場合には、洗米処理を省略する。
【0039】
次に、浸漬工程14では、浸漬水を作製し、米を浸漬する。浸漬水は、水に糖類を微量溶解させたものを使用する。糖は、グラニュー糖、黒砂糖、ブドウ糖、ショ糖、果糖、トレハロース、セルロース等の糖のいずれか1つまたは2つ以上の混合とすることができる。好ましくは、単糖類よりも二糖類以上の多糖類とすると米粒内に糖分を確実に留めておくことができるため、好都合である。単糖類の場合には、分子構造が大きく、米のデンプンと絡み難いためである。また、糖類の含有量は、具体的には0.1〜5質量%、好ましくは、1〜3質量%とするとよい。米の本来持つ糖度は、1°Bx程度であるため、それに対応する程度の糖とすればよいからである。
【0040】
全体の浸漬水の量は、米質量の1.4倍前後の量とする。この量は従来の浸漬水の量と同じである。
【0041】
米計量工程12で計量された米と浸漬水とを炊飯釜102に投入し、浸漬装置に装着する。本発明による方法で使用する浸漬装置100を図2に示す。図において、浸漬装置100は、複数の炊飯釜102を保持可能で開閉可能な扉104aを有する真空槽104を備える。真空槽104内には、複数の炊飯釜102を載置可能なトレー106が設けられる。
【0042】
真空槽104には、槽内部を減圧するための減圧回路110が接続される。減圧回路110は、真空槽104から逆止弁112を介して凝集器114、真空ポンプ116が接続される減圧ライン118と、循環ポンプ120、貯水槽122が設けられて、凝集器114を通過して冷却する循環式冷却水ライン124とが設けられる。貯水槽122には適宜給水がなされる。
【0043】
真空槽104内の圧力(ゲージ圧)は、−0.1MPa〜0.05MPa、好ましくは、−0.09〜−0.08MPaとし、浸漬時間は、10分〜60分程度、好ましくは、20〜40分程度とするとよい。
【0044】
図3は、他の浸漬装置130の例である。この浸漬装置130では、密閉タンク132を備えており、密閉タンク132内に炊飯釜102を載置可能となっている。図の例では、1つの炊飯釜102が載置可能となっているが、複数の炊飯釜102を載置可能とすることもできる。密閉タンク132の蓋132aは、図2と同様、減圧ライン118によって減圧回路110に接続されている。
【0045】
図4は、さらに他の浸漬装置140の例であり、専用の炊飯釜142と該炊飯釜142を搬送するコンベア144とを備え、該炊飯釜142の密閉蓋142aは、減圧ライン118によって減圧回路110に接続されている。減圧ライン118は、炊飯釜142の移動に対して追随可能となっている。
【0046】
炊飯釜142には、直接、米と浸漬水とが投入され、炊飯釜142をコンベア144によって搬送しながら、浸漬処理を行い、次の処理へと炊飯釜142を連続的に移動させることができる。
【0047】
以上の浸漬装置100,130,140で行われる浸漬工程では、浸漬水に糖を含有させることで、糖は、米の内部の水分(自由水)と置換され、米内部に進入するとともに、米の外表面にも付着する。こうして、米の一粒一粒に水分のみならず糖を含浸させて、水分及び糖の均一化、熟成化を図る。熟度が不揃いな一粒一粒の米に対して熟度が一律になるように調整することができる。これによって、米のランクが低くても、またブレンド米であっても、一律の上位ランクの米と同等の品質にすることができる。
【0048】
また、減圧下で浸漬処理を行うことで、各米粒の中心まで水分と糖度を含浸させて、水分と糖度の均一化を高速に図ることができる。よって、浸漬時間も短縮することができる。また、減圧下で、真空槽104(または密閉タンク132、炊飯釜142)内、米粒内、浸漬水内の酸素が外部に放出されるため、脱酸化により、劣化スピードを遅らせることができる。また、密閉下で浸漬処理を行うために、異物混入も防ぐことができる。また、減圧下で浸漬処理を行うことで、浸漬水の温度(5℃〜11℃)が低下するので、洗米時に必ずしも冷水で洗米する必要がない。
【0049】
こうして、予め決められた時間、浸漬を行った炊飯釜102(142)は、炊飯工程16へと供される。
【0050】
炊飯は、従来と同様に加熱することで行われる。しかしながら、浸漬工程14において各米粒の糖度、水分が均一化されているために、米粒の中心まで均質に熱が伝わり、デンプンを速やかに且つ均一に熱変性させて糖に変えることができる。含浸させた糖と、デンプンが熱変性により変化した糖により保水性が大幅に向上する。
【0051】
次に、炊飯後の米飯は、蒸らして炊飯窯から取り出して冷却バット210(図5参照)に移されて、冷却工程18へと供される。冷却工程は、98〜75℃の炊飯直後の米飯を、20℃前後までの温度帯域に急速に冷却する工程である。30〜20℃の温度領域で菌が最も増殖しやすいために、その温度領域を急速に通過して下回ることが重要となる。
【0052】
この冷却工程18では、従来の真空冷却方式による真空冷却庫ではなく、図5に示すような冷気式冷却法による冷却装置200に米飯を投入する。
【0053】
冷却装置200は、断熱壁体212によって包囲されて外部と断熱的に隔離された室内216を有しており、その室内216の一側面(前面)には、冷却バット210に収容された米飯を搬入出するための扉214が開閉自在に備えられている。
【0054】
室内216には、その一側面(後面)に沿って冷却器218が設けられる。冷却器218は、この中を冷媒が通過する際に気化することで周囲の空気を冷却するエバポレータとなっており、例えば、冷却フィンがその周囲に形成された冷却コイルで構成することができる。
【0055】
冷却器218の前面には、任意の数のモータ付きファン220が配設される。ファン220は米飯表面の熱交換された熱を静かに動かす程度の弱いものとする。ファン220の前方には、好ましくは整流板221が設けられており、整流板221によって室内216は、冷却器218が設けられる冷気生成室222と、冷却室224とに完全に区分けされる。冷却室224には、適宜、複数のトレー226が配設され、トレー226上に冷却バット210が載置可能となっている。
【0056】
整流板221によって一様に冷却される冷却室224には、温度センサ228が設けられる。また、冷却器218を通過する冷媒の循環回路230は、室外に配置される凝縮器232、冷媒タンク234、圧縮機236及び膨張弁238を有する。そして、温度センサ228からの検出信号は、制御器240へと供給される。制御器240は、インバータ242を制御して、圧縮機236の回転を制御するようになっており、前記冷却室224が予め決められた温度変化をとるように圧縮機236の運転を制御して冷媒の温度を変化させるようになっている。
【0057】
予め決められた温度変化とは、米飯の中心温度(即ち、冷却バット210の略中央部)の変化によって決められ、米飯の中心温度と、冷却室224の温度との温度差ΔTを所定温度範囲内で、好ましくはある温度差ΔT1とすることで決める。
【0058】
米飯の中心温度と表面温度との差が大きいと、そのために、中心部から表面に向かって温度差の大きさに比例して熱移動が起こり、同時に水分も大量に移動する。これに対して、米飯に対してファン220からの冷風は弱くし、米飯の中心温度と表面温度との間での温度差ΔTを一定以下とし、可能な限り温度差ΔTを小さくするようにすれば、従来のような水分の移動が発生せず、水分蒸発量を少なく抑えることができる。また、あまり大きな温度差ΔTにしないことで、相対湿度差を小さくして、米飯からの蒸発水量を抑えることができる。
【0059】
温度差ΔTを一定とする過程を持つために、予め、図5(b)に示すように同じ冷却装置200において、または他の同じ仕様の冷却装置200において、冷却バット210に収容した米飯の中心温度を測定する温度センサ244を設け、温度センサ228と温度センサ244の両方の温度センサからの検出信号をマイクロコンピュータで構成される解析器246で受けて、インバータ242を変化させて冷媒の温度を変化させながら、冷却を行って、米飯の中心温度と、表面温度(結果として、冷却室224の温度または冷媒の温度)との温度差が可能な限り一定となるような、冷却室224の温度と時間との関係を予め求めておく。
【0060】
図6は、冷却工程における、米飯の中心温度と冷却室224の温度、冷媒温度との関係を表す図であり、米飯を20℃まで冷却する場合を示す。図6において、冷却室の温度は、冷媒温度の範囲(10℃〜−30℃)によって上限温度と下限温度があり、それらの温度の間において、温度差ΔTが一定となるようにする。つまり、両者の温度差は常時一定とすることが理想であるが、上述のように冷却室即ち冷媒温度の上限温度によって、冷却初期段階においては、米飯の中心温度と、冷却室224の温度との差はある程度大きくなる場合がある。特に米飯が高温域(約90℃〜約30℃)にある場合には、温度差は大きくなってしまうので、初期段階のみ温度差を大きくし、その後、温度差をほぼ一定に保持するとよく、全冷却工程において温度差が所定温度範囲内に収まるようにする。一定の温度差としては、5℃〜100℃とし、好ましくは10℃〜40℃とすることができる。
【0061】
こうして、求められた冷却室224の温度と時間との関係を表すデータ(温度変化データ)(図6)が制御器240において格納されている。
【0062】
次からのほぼ同じ質量の同じ条件での米飯の冷却を行うに当たっては、同じ冷却装置200を使う場合には温度センサ244及び解析器246は除去して制御器240とし、温度センサ228からの温度を検出して、それを温度変化データに合致するように、制御器240がインバータ242の制御を行って冷媒の温度を変化させる。こうして、冷却室224の温度を制御することにより、米飯の中心温度と表面温度とが小さい温度差を保持しながら低下していく。
【0063】
尚、以上の例では、冷却室224の温度を検出して、この冷却室224の温度が予め決められた温度変化をするようにインバータ242の制御を行って冷媒温度を変化させていたが、これに限るものではなく、冷却室24の温度を検出する代わりに、米飯の表面の温度、冷媒の温度(冷却器218の入口温度または出口温度のいずれでもよい)、冷気生成室222の温度を検出して、これらの温度が予め決められた時間変化をするように冷媒の温度を時間的に変化させることが可能である。
【0064】
また、インバータ242を制御して圧縮機236の回転数を変えることで、冷媒の温度を変化させていたが、これに限るものではなく、凝縮器232のファンの回転数を変化させることにより、冷媒の温度を変化させることも可能であり、循環回路230を流れる流量を制御器240で調整することにより、冷媒の流量を変化させることも可能である。または、図示した以外に、膨張弁238を制御して、膨張弁238で冷媒流量調整を行うことも可能である。
【0065】
このように、米飯の中心温度との温度差を可能な限り小さくなるようにして、冷却室224の温度を制御することにより、米飯の乾燥・脱気を防ぐことができるようになる。
【0066】
また、冷却装置200の室内216は密閉空間であるために、炊き立ての米飯を冷却室224に投入すると、室内216が蒸発水ですぐに飽和するために、飽和状態を保ちながら、米飯を冷却することで、米飯の水分の蒸発を防ぐことができる。
【0067】
ところで、冷却装置200の室内216は密閉空間であるが、米飯の出し入れにより扉214を開閉するために、空気の入れ替えが定期的に行われている。空気中には菌が生存しており、この中には−10℃程度の低温でも発芽が進行するものも存在するので、そのような菌を防ぐために、図7〜図10に示すような殺菌手段を設けるとよい。
【0068】
図7に例示した殺菌手段は、冷却装置200の室内216にエア循環ライン250を通し、室外のエア循環ライン250に除菌フィルタ252と、送風機254とを設けたものである。送風機254によりエアを循環させて、除菌フィルタ252で菌を除去する。
【0069】
図8に例示した殺菌手段は、冷却装置200の室内216の壁面に吹き出しノズル260を設け、吹き出しノズル260をオゾンライン262を介してオゾン発生器264に接続したものであり、オゾンの殺菌効果を利用する。
【0070】
図9に例示した殺菌手段は、冷却装置200の室内216の壁面に紫外線灯270を設け、紫外線灯270をAC電源272に接続したものであり、紫外線の殺菌効果を利用する。
【0071】
図10に例示した殺菌手段は、冷却装置200の室内216に、ノズル280を設け、ノズル280を洗浄水ライン282を介してポンプ284に接続し、ポンプ284にさらに、温水槽286、アルカリ水槽288、酸性水槽290に接続し、それぞれの接続をバルブで切換可能としたものである。酸洗浄、アルカリ洗浄を行った後、熱水で室内216を洗浄する。
【0072】
図7〜図10に示す殺菌手段は、装置が停止中または冷却作業の開始前に適時実施するとよい。
【0073】
また、冷却器218とファン220と冷却室224を備える空間としては、扉214によって完全な密閉室内216を形成するものに限るものではなく、また、米飯の冷却室224への搬送は、手動で行うこともできるが、半自動的または自動的に行うこともできる。
【0074】
以上の冷却装置200による冷却工程を行って、炊飯後の米飯を冷却することで、米飯を歩留り良く、味、旨み分を保持しつつ保存することができるようになる。浸漬工程14において各米粒の糖度、水分が均一化されているために、熱伝導率が高く、各米粒の中心まで均質に熱が伝わるようにして冷却することができる。
【0075】
図1は、普通の米飯を製造し、冷却することで保存する場合の手順であったが、これに限るものではない。図11は、米飯として寿司飯を製造し、冷却することで保存する寿司飯製造保存方法の手順の1つの例を表すフローチャートである。図11において、図1と同一の工程は図示を簡略化している。
【0076】
この寿司飯製造保存方法においては、浸漬工程14において必要に応じて混合具材を計量して浸漬水に追加する。また、炊飯工程16において、米飯をほぐすときに、計量された合わせ酢及び必要に応じて計量された混合具材を混合する。
【0077】
また、図12は、本発明による米飯の製造保存処理の手順の他の例を示すフローチャートであり、図12において、図1と同一の工程は図示を簡略化している。
【0078】
冷却工程18の後に、おにぎり、弁当箱に合致した形状に成形する成形工程20が追加されており、また、長期保存を図る場合には、冷凍工程22、保管工程24、解凍工程26が追加される。尚、これらの成形工程20、冷凍工程22、保管工程24及び解凍工程26は、図11の寿司飯製造に対して行うことも可能である。また、成形工程20において寿司ネタと合わせて寿司を成形することも可能である。
【0079】
冷凍工程22は、冷却工程18で20℃程度に冷却した米飯を凍らせて針状結晶点以下の温度まで例えば−20℃〜−30℃前後にまで冷却を行う工程である。米飯の針状結晶点は、−2℃前後〜−4℃前後であり、デンプンの劣化温度は、+10℃〜−1℃前後であり、この温度帯に米飯を保存すると急速に劣化するために、長期保存を図る場合には、この温度帯以下の温度に凍結する必要がある。
【0080】
この冷凍工程22で使用する装置は、冷却装置200と同じ装置または同じ原理に基づく装置である。よって、炊飯後に冷却から冷凍までを一度に行う場合には、同じ冷却装置を用いて、連続的に冷却工程と冷凍工程とを行うことも可能である。
【0081】
冷却工程においては、図13に示すような温度変化をするようになっており、冷媒の温度及び/又は流量を変化させることにより、米飯の中心温度と表面温度とを均等に低下させていくことができる。
【0082】
中心温度と表面温度との差が小さいと、針状結晶点を飛び越える時間を大幅に短縮化できて、氷結晶を小さくできる。
【0083】
以上の冷凍工程を行って、炊飯後の米飯を冷凍することで、米飯を歩留り良く、味、旨み分を保持しつつ保存することができるようになる。浸漬工程14において各米粒の糖度、水分が均一化されているために、熱伝導率が高く、各米粒の中心まで均質に熱が伝わるようにして冷凍することができる。
【0084】
冷凍工程22の終了後は、保管工程24で保存庫(−30℃〜−35℃)に入れて保管する。この保管工程24では、低温乾燥を防止するために、通気性のない包装に封入し、密閉して保管するとよい。冷凍工程22で氷結晶が生成されているので、冷凍工程22は−20℃程度で終了して、その後は、より低温の保管工程24に入れることでもよい。
【0085】
保管工程24で保管することで、長期保存が可能になる。浸漬工程14において、糖分が多く含有されているために、より長期の保存が可能になる。
解凍した米飯を使用する際には、解凍工程26で解凍する。
【0086】
以上のように、本発明では、浸漬工程14において、浸漬水に微量の糖を含めることで、処理を行い、各米粒一粒一粒の品質のばらつきをならし、且つ、その米粒の内部に糖及び水分を含浸させることで、それ以降の炊飯工程16、冷却工程18、冷凍工程22及び保管工程24においても良い影響を与え、結果として保水性の良い米飯の製造・保存を行うことができる。また、長期保存にも適したものとすることができる。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
以下の材料から米飯を製造した。
【表1】
【0088】
計量工程
米を450g計量し、18℃の上水で洗米を4回行った。ざるに洗米を投入して水切りし、5分保持した。
浸漬工程
洗米と、糖を溶解した浸漬水をボールに入れて、浸漬装置100内にセットし、圧力(ゲージ圧)−0.08MPaで、30分浸漬を行った。
30分後ボールを取り出した。水温は5℃となっていた。
炊飯工程
電子IHジャーで炊飯を行った、炊飯時間は約35分であった。蒸らしのために10分保持し、冷却バットに炊き上がり米飯を取り出した。このときの温度は98℃であった。しゃもじで3分間をほぐした。ほぐし後は約82℃であった。
冷却工程
冷却装置200内に冷却バットをセットし、冷却を開始した。冷却開始時の温度は78℃となっていた。約17分で冷却を終了した。冷却終了時の品温は23℃であった。
この冷却後の米飯の質量は、1069.7gであり、16.3gの損失となった。
【0089】
(比較例1)
以下の材料から米飯を製造した。
【表2】
【0090】
計量工程
米を450g計量し、18℃の上水で洗米を4回行った。ざるに洗米を投入して水切りし、5分保持した。
浸漬工程
洗米と、糖を溶解した浸漬水を炊飯器に投入し、90分浸漬を行った。
炊飯工程
電子IHジャーで炊飯を行った、炊飯時間は約35分であった。蒸らしのために10分保持し、冷却バットに炊き上がり米飯を取り出した。このときの温度は98℃であった。しゃもじで3分間をほぐした。ほぐし後は約82℃であった。
冷却工程
真空冷却槽に冷却バットをセットし、冷却を開始した。冷却開始時の温度は78℃となっていた。約15分で冷却を終了した。冷却終了時の品温は23℃であった。
この冷却後の米飯の質量は、1004.5gであり、81.5gの損失となった。
【0091】
実施例1と比較例1との比較をまとめると次のようになった。
【表3】
【0092】
以上の比較により、実施例1による浸漬工程を行うことにより、保水性が向上していることが分かる。真空冷却方式を使った比較例1では、水分損失が大きい。実施例1は比較例1に比較して味、旨みにおいても優れていた。
実施例1は比較例1に比較して、味、旨み、歩留率を向上させることができると共に、加工時間も1/3短縮できることが分かった。
【0093】
(実施例2)
以下の材料から寿司飯を製造した。
【0094】
【表4】
【0095】
計量工程〜浸漬工程までは、実施例1と同一に行った。
炊飯工程
電子IHジャーで炊飯を行った、炊飯時間は約35分であった。蒸らしのために10分保持し、冷却バットに炊き上がり米飯を取り出した。このときの温度は98℃であった。
調理工程
冷却バット内に取り出した米飯をほぐしながら、材料2の合わせ酢を3分間混合した。ほぐし後は約76℃であった。
冷却工程
冷却装置200内に冷却バットをセットし、冷却を開始した。冷却開始時の温度は75℃となっていた。約15分で冷却を終了した。冷却終了時の品温は23℃であった。
この冷却後の米飯の質量は、1158.8gであり、17.2gの損失となった。
【0096】
(比較例2)
以下の材料から寿司飯を製造した。
【0097】
【表5】
【0098】
計量工程〜浸漬工程までは、比較例1と同一に行った。
炊飯工程
電子IHジャーで炊飯を行った、炊飯時間は約35分であった。蒸らしのために10分保持し、冷却バットに炊き上がり米飯を取り出した。このときの温度は98℃であった。
調理工程
冷却バット内に取り出した米飯をほぐしながら、材料2の合わせ酢を3分間混合した。ほぐし後は約78℃であった。
冷却工程
真空冷却槽に冷却バットをセットし、冷却を開始した。冷却開始時の温度は75℃となっていた。約15分で冷却を終了した。冷却終了時の品温は23℃であった。
この冷却後の米飯の質量は、1077.2gであり、98.8gの損失となった。
【0099】
実施例2と比較例2との比較をまとめると次のようになった。
【表6】
【0100】
以上の比較により、寿司飯においても、普通の米飯と同様の結果が得られた。酢飯の酢の残量は、明らかに実施例2の方が比較例2に比べて、酢の香り、旨みも残った感じがした。真空冷却方式では、香りの放出も大きいことが分かった。これは、真空下での低温沸騰が原因ではないかと推察される。
【0101】
(実施例3)
実施例1で製造した普通の米飯を成形しておにぎりを製造した。
【表7】
【0102】
成形工程
実施例1によって製造された米飯に塩を混合し、おにぎり2個を型を使って成形した。
冷凍工程
本発明の冷凍装置200におにぎりをセットして、冷凍を開始した。おにぎりの中心温度と、表面温度とをセンサにて測定しながら、温度差が限りなく近い状態で冷却した。品温が−30℃に達したところで停止した。
冷凍装置200から取り出して、通気性のない袋に入れて、ヒートシールして密閉した。−30℃の時の、おにぎりの質量は、それぞれ81.2g(実施例3−1)、81.5g(実施例3−2)であった。
保管工程
−35℃以下の保冷庫で保管した。
【0103】
(比較例3)
比較例1で製造した普通の米飯を成形しておにぎりを製造した。
【表8】
【0104】
成形工程
比較例1によって製造された米飯に塩を混合し、おにぎり2個を型を使って成形した。
冷凍工程
ブラストチラー方式の冷凍装置におにぎりをセットして、冷凍を開始した。品温が−30℃に達したところで停止した。
【0105】
冷凍装置から取り出して、通気性のない袋に入れて、ヒートシールして密閉した。−30℃の時の、おにぎりの質量は、それぞれ80.5g(比較例3−1)、80.4g(比較例3−2)であった。
保管工程
−35℃以下の保冷庫で保管した。
【0106】
実施例3と比較例3との比較をまとめると次のようになった。
【表9】
以上の比較により、冷凍工程においても、保水性が向上していることが分かる。
【0107】
(実施例4)
以下の材料から米飯を製造した。
【表10】
【0108】
計量工程
米を450g計量し、18℃の上水で洗米を4回行った。ざるに洗米を投入して水切りし、5分保持した。
浸漬工程
洗米と、糖を溶解した浸漬水をボールに入れて、浸漬装置100内にセットし、圧力(ゲージ圧)−0.09MPaで、30分浸漬を行った。
30分後ボールを取り出した。水温は4℃となっていた。
炊飯工程
電子IHジャーで炊飯を行った、炊飯時間は約35分であった。蒸らしのために10分保持し、冷却バットに炊き上がり米飯を取り出した。このときの温度は98℃であった。しゃもじで3分間をほぐした。ほぐし後は約82℃であった。
冷却・冷凍工程
冷却装置200内に冷却バットをセットし、冷却及び冷却に引き続き冷凍を行った。冷却開始時の温度は77℃となっていた。冷凍終了時の品温は−30℃であった。
冷却終了に相当する23℃、冷凍終了に相当する−30℃での米飯の質量を計測したところ、23℃で1069.5gであり、−30℃で1068.9gであった。
【0109】
(比較例4)
以下の材料から米飯を製造した。
【表11】
【0110】
計量工程
米を450g計量し、18℃の上水で洗米を4回行った。ざるに洗米を投入して水切りし、5分保持した。
浸漬工程
洗米と、糖を溶解した浸漬水をボールに入れて、浸漬装置100内にセットし、圧力(ゲージ圧)−0.09MPaで、30分浸漬を行った。
30分後ボールを取り出した。水温は4℃となっていた。
炊飯工程
電子IHジャーで炊飯を行った、炊飯時間は約35分であった。蒸らしのために10分保持し、冷却バットに炊き上がり米飯を取り出した。このときの温度は98℃であった。しゃもじで3分間をほぐした。ほぐし後は約82℃であった。
冷却・冷凍工程
冷却装置200内に冷却バットをセットし、冷却及び冷却に引き続き冷凍を行った。冷却開始時の温度は77℃となっていた。冷凍終了時の品温は−30℃であった。
冷却終了に相当する23℃、冷凍終了に相当する−30℃での米飯の質量を計測したところ、23℃で1060.2gであり、−30℃で1051.5gであった。
【0111】
実施例4と比較例4との比較をまとめると次のようになった。
【表12】
【0112】
同じ冷却、冷凍条件であっても、浸漬工程における糖の有無によって、保水性が大きく異なり、糖を追加することによって、保水性が大幅に向上することが分かった。これは、米の中心まで水分が到達していることを表している。糖を追加することにより、甘味が微量加わることで、味、旨みが増し、上位ランクの米に匹敵するものとなった。
また、糖度が上がることで、解凍後の長期保存の時間も延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明による米飯の製造保存処理の手順の1つの例を表すフローチャートである。
【図2】本発明による方法で使用可能な浸漬装置の説明断面図である。
【図3】本発明による方法で使用可能なその他の浸漬装置の説明断面図である。
【図4】本発明による方法で使用可能なその他の浸漬装置の説明断面図である。
【図5】本発明による方法で使用可能な冷却装置(冷凍装置)の説明断面図である。
【図6】冷却工程における米飯の中心温度と冷却室の温度と時間との関係を表す図である。
【図7】殺菌手段を設けた冷却装置の説明断面図である。
【図8】他の殺菌手段を設けた冷却装置の説明断面図である。
【図9】他の殺菌手段を設けた冷却装置の説明断面図である。
【図10】他の殺菌手段を設けた冷却装置の説明断面図である。
【図11】本発明による米飯としての寿司飯の製造保存方法の手順の1つの例を表すフローチャートである。
【図12】本発明による他の米飯製造保存方法の手順を示すフローチャートである。
【図13】冷凍工程における米飯の中心温度と冷却室の温度と時間との関係を表す図である。
【符号の説明】
【0114】
14 浸漬工程
16 炊飯工程
18 冷却工程
22 冷凍工程
100、130、140 浸漬装置
200 冷却装置
216 室内(空間)
218 冷却器
220 ファン
224 冷却室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米を浸漬水に浸漬する浸漬工程と、浸漬後の米を用いて炊飯する炊飯工程と、炊き上がった米飯を冷却する冷却工程と、を備える米飯の製造保存方法において、
前記浸漬工程において浸漬水は糖を含有し、該浸漬水に減圧下で米を浸漬することを特徴とする米飯の製造保存方法。
【請求項2】
前記糖は、浸漬水に0.1質量%から5質量%含有されることを特徴とする請求項1記載の米飯の製造保存方法。
【請求項3】
前記糖が、二糖類以上の多糖類であることを特徴とする請求項1または2記載の米飯の製造保存方法。
【請求項4】
前記冷却工程が、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備える冷却装置の冷却室に米飯を投入し、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差が所定温度範囲となるように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させながら、冷却を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の米飯の製造保存方法。
【請求項5】
米飯を凍結させる冷凍工程をさらに含み、冷凍工程は、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備える冷却装置の冷却室に投入された米飯を、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差が所定温度範囲となるように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させながら、冷凍を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の米飯の製造保存方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の米飯の製造保存方法の浸漬工程に使用される浸漬装置であって、
浸漬液と米とが投入された容器を減圧するための減圧回路を備えることを特徴とする浸漬装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の米飯の製造保存方法の冷却工程に使用される冷却装置であって、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備え、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、冷却工程において、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差を一定に保持しつつ米飯の中心温度を低下させる過程を持つように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させることを特徴とする冷却装置。
【請求項8】
請求項5記載の米飯の製造保存方法の冷凍工程に使用される冷却装置であって、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備え、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、冷凍工程において、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差を一定に保持しつつ米飯の中心温度を低下させる過程を持つように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させることを特徴とする冷却装置。
【請求項1】
米を浸漬水に浸漬する浸漬工程と、浸漬後の米を用いて炊飯する炊飯工程と、炊き上がった米飯を冷却する冷却工程と、を備える米飯の製造保存方法において、
前記浸漬工程において浸漬水は糖を含有し、該浸漬水に減圧下で米を浸漬することを特徴とする米飯の製造保存方法。
【請求項2】
前記糖は、浸漬水に0.1質量%から5質量%含有されることを特徴とする請求項1記載の米飯の製造保存方法。
【請求項3】
前記糖が、二糖類以上の多糖類であることを特徴とする請求項1または2記載の米飯の製造保存方法。
【請求項4】
前記冷却工程が、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備える冷却装置の冷却室に米飯を投入し、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差が所定温度範囲となるように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させながら、冷却を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の米飯の製造保存方法。
【請求項5】
米飯を凍結させる冷凍工程をさらに含み、冷凍工程は、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備える冷却装置の冷却室に投入された米飯を、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差が所定温度範囲となるように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させながら、冷凍を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の米飯の製造保存方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の米飯の製造保存方法の浸漬工程に使用される浸漬装置であって、
浸漬液と米とが投入された容器を減圧するための減圧回路を備えることを特徴とする浸漬装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の米飯の製造保存方法の冷却工程に使用される冷却装置であって、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備え、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、冷却工程において、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差を一定に保持しつつ米飯の中心温度を低下させる過程を持つように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させることを特徴とする冷却装置。
【請求項8】
請求項5記載の米飯の製造保存方法の冷凍工程に使用される冷却装置であって、空間内に冷却器と、ファンと、冷却室とを備え、予め得られた、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との関係に基づき、冷凍工程において、米飯の中心温度と、前記空間の温度、米飯の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差を一定に保持しつつ米飯の中心温度を低下させる過程を持つように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させることを特徴とする冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−22256(P2010−22256A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186443(P2008−186443)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【特許番号】特許第4392046号(P4392046)
【特許公報発行日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(507328830)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【特許番号】特許第4392046号(P4392046)
【特許公報発行日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(507328830)
【Fターム(参考)】
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