説明

米麺の製造方法と該方法による米麺

【課題】茹で後、所要保存時間経過時でも茹で伸びがなく、腰があって歯ごたえのある食感の良好な米麺の製造方法と該方法による米麺を提供すること。
【解決手段】麺原料が、白米粉27重量%乃至63重量%と発芽玄米粉63重量%乃至27重量%との米粉総量90重量%と、食感維持素材10重量%とから成り、該麺原料100重量%に対して増粘材として1.0重量%のアルギン酸エステルと0.5重量%のアルギン酸とが添加され、この組成で熱湯による加水(α化)工程と、混合工程と、押出し(最終α化)工程を経て複数度のα化処理がなされて製麺される。
このほか、麺原料が、発芽玄米粉90重量%又は白米粉90重量%と食感維持素材10重量%とから成り、該麺原料100重量%に対して増粘材として1.0重量%乃至0.5重量%のアルギン酸エステルと、0.5重量%のアルギン酸とが添加された組成でも製麺される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粉を使用した米麺の製造方法と該方法による米麺に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、特願2009−150909号(特許文献1)で米麺の製造方法と該方法による米麺(他乾麺)を提案済みであるが、特許文献1の基本発明に関して、該米麺の茹で後の所要保存時間経過時での茹で伸びの解消と食感の改善とを達成する技術を知見し、本発明の完成に至ったものである。
麺生地原料粉として穀粉には米粉が挙げられ、澱粉にはタピオカ澱粉が挙げられ、増粘多糖類としてアルギン酸および/またはアルギン酸塩が添加されて三層構造の生麺類の製造方法が特許第3157335号(特許文献2)で提案されているが、特許文献2の技術は、米麺において発芽玄米粉(又は白米粉)を主要生地原料粉としたものでなく、製麺工程中に複雑度のα化処理を伴うことを前提条件として、該麺生地原料粉に対するタピオカ澱粉等の食感維持素材の添加量及び増粘剤の添加量が知見された技術でもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2009−150909号
【特許文献2】特許第3157335号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、先の基本発明である特願2009−150909号の技術に関して、米麺を茹でた後、所要保存時間経過時でも茹で伸びがなく、腰があって歯ごたえのある食感の良好な米麺の製造方法と該方法による米麺の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載した米麺の製造方法は、所要配合の麺原料を熱湯による加水(α化)工程と、混合工程と、押出し(最終α化)工程を経て米麺として成り、複数度のα化処理がなされることを特徴とする米麺の製造方法において、
前記麺原料が、白米粉27重量%乃至63重量%と発芽玄米粉63重量%乃至27重量%との米粉総量90重量%と、食感維持素材10重量%とから成り、該麺原料100重量%に対して増粘材として1.0重量%のアルギン酸エステルと0.5重量%のアルギン酸とが添加されて成る。
請求項2に記載した米麺の製造方法は、所要配合の麺原料を熱湯による加水(α化)工程と、混合工程と、押出し(最終α化)工程を経て米麺として成り、複数度のα化処理がなされることを特徴とする米麺の製造方法において、
前記麺原料が、発芽玄米粉90重量%又は白米粉90重量%と食感維持素材10重量%とから成り、該麺原料100重量%に対して増粘材として1.0重量%乃至0.5重量%アルギン酸エステルと、0.5重量%のアルギン酸とが添加されて成る。
請求項3に記載した米麺は、請求項1又は2記載の米麺の製造方法により製造されて成る。
【発明の効果】
【0006】
本発明の米麺によれば、製造工程中で発芽玄米粉及び/又は白米粉の総量90重量%に対して食感維持素材としての10重量%のタピオカが添加され、かつ、アルギン酸エステル等の増粘材が添加された上で、複数度のα化処理がなされたものであるから、茹で後所要保存時間経過時でも茹で伸びがなく、腰があって歯ごたえのある食感の良好な品質が確保され、コンビニ弁当向けなどの市場へ提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】各種米麺製品の配合説明図。
【図2】各種米麺製品の茹で後の経時破断値図。
【図3】各種米麺製品の茹で後の破断値を示す折れ線グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の麺原料の構成要素である食感維持素材は、タピオカ等の原料澱粉のみならず加工澱粉も含まれ、増粘材としてはアルギン酸エステルとアルギン酸が選択され、各材の配合量は使用対象の各米粉の複数度のα化処理による糊化度の度合いにより選択されるが、タピオカが10重量%、アルギン酸エステルが総麺原料に対して1.0重量%乃至0.5重量%、アルギン酸が0.5重量%が最適であることが実験的に知見された。
【実施例】
【0009】
本発明を実施例により説明すると、図1に示すように、米麺新配合としてのリングイネDは、麺原料が白米粉27重量%と発芽玄米粉63重量%と食感維持素材としてのタピオカ10重量%とから成り、この麺原料100重量%に対して、増粘材としてアルギン酸エステル1重量%とアルギン酸0.5重量%とが添加され、これに対して40重量%の熱湯(95℃)が加水されてα化処理がなされ、次いで混合工程で混練され、押出し工程の押出し機で押し出されるとともに、最終のα化処理がなされて製造される。
【0010】
次の図1に示す米麺新配合としてのリングイネCは、麺原料が発芽玄米粉90重量%と食感維持素材としてのタピオカ10重量%とから成り、この麺原料100重量%に対して、増粘材としてアルギン酸エステル1重量%とアルギン酸0.5重量%とが添加され、これに対して40重量%の熱湯(95℃)が加水されてα化処理がなされ、次いで混合工程で混練され、押出し工程の押出し機で押し出されるとともに、最終のα化処理がなされて製造される。
【0011】
また、図1に示す米麺従来品としてのリングイネBは、麺原料が発芽玄米粉100重量%であり、これに対してアルギン酸エステル1重量%が添加される。この状態で40重量%の熱湯(95℃)が加水されてα化処理がなされ、次いで混合工程で混練され、押出し工程の押出し機で押し出されるとともに、最終のα化処理がなされて製造される。
【0012】
さらに、図1に示す小麦麺市販品としてのリングイネAは、デュラム小麦のセモリナと小麦粉とを原材料(大豆粉を含むこともある)とし、これに卵、食塩、着色料(カロチノイド)等を添加して押出し成形により製造される。
【0013】
次の図1に示す米麺新配合としてのリングイネFは、麺原料が白米粉63重量%と発芽玄米粉27重量%と食感維持素材としてのタピオカ10重量%とから成り、この麺原料100重量%に対して、増粘材としてアルギン酸エステル1重量%とアルギン酸0.5重量%とが添加され、これに対して40重量%の熱湯(95℃)が加水されてα化処理がなされ、次いで混合工程で混練され、押出し工程の押出し機で押し出されるとともに、最終のα化処理がなされて製造される。
【0014】
また、図1に示す米麺新配合としてのリングイネGは、麺原料が白米粉90重量%と食感維持素材としてのタピオカ10重量%とから成り、この麺原料100重量%に対して、増粘材としてアルギン酸エステル0.5重量%とアルギン酸0.5重量%とが添加され、これに対して40重量%の熱湯(95℃)が加水されてα化処理がなされ、次いで混合工程で混練され、押出し工程の押出し機で押し出されるとともに、最終のα化処理がなされて製造される。
【0015】
図1の米麺従来品としてのリングイネEは、麺原料が白米粉100重量%であり、これに対してアルギン酸エステル1重量%が添加される。この状態で40重量%の熱湯(95℃)が加水されてα化処理がなされ、次いで混合工程で混練され、押出し工程の押出し機で押し出されるとともに、最終のα化処理がなされて製造される。
【0016】
前記の仕様で製造されたリングイネA乃至Gに関して、腰の強さを破断値測定機(有限会社タケモト電機製)で測定した破断値で示したものが図2に示されるが、リングイネAは8分間茹でられ、リングイネBは5分間茹でられ、リングイネC乃至Gは共に茹で時間が4分である。
そして、一般的に必要な保存時間(茹で後48時間)での破断強度は、腰の強さの基準(特定測定機の数値と官能評価の合致点)とされる100に対して、本発明に係わるリングイネC、D、F、Gは、レンジ加熱前はそれぞれ85.26、126.18、110.86、107.08であるが、レンジ加熱後はそれぞれ107.37、217.76、102.00、107.37となって前記100がキープされるもので、茹で伸びによる腰がなくなることもなく、歯ごたえのある食感の良好な品質が確保されたものである。
上記の破断強度を経時的に折れ線グラフに示したものを図3に示したが、本発明のリングイネDが48時間経過時(レンジ加熱後)と、茹で後10分時での破断強度が略同等であり、しかも、小麦麺市販品のリングイネAの腰の強さより上位で、食感の良好な品質であることが一目瞭然である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、茹で後食されるに要する時間帯及び必要保存時間経過時においても茹で伸びがなく、腰があって歯ごたえのある食感の良好な品質が確保される米麺を提供する技術であるから、外食産業での需要は勿論のこと、米麺対象の製麺業界にも多大に貢献できる。
【符号の説明】
【0018】
A乃至G:リングイネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要配合の麺原料を熱湯による加水(α化)工程と、混合工程と、押出し(最終α化)工程を経て米麺として成り、複数度のα化処理がなされることを特徴とする米麺の製造方法において、
前記麺原料が、白米粉27重量%乃至63重量%と発芽玄米粉63重量%乃至27重量%との米粉総量90重量%と、食感維持素材10重量%とから成り、該麺原料100重量%に対して増粘材として1.0重量%のアルギン酸エステルと0.5重量%のアルギン酸とが添加されて成る米麺の製造方法。
【請求項2】
所要配合の麺原料を熱湯による加水(α化)工程と、混合工程と、押出し(最終α化)工程を経て米麺として成り、複数度のα化処理がなされることを特徴とする米麺の製造方法において、
前記麺原料が、発芽玄米粉90重量%又は白米粉90重量%と食感維持素材10重量%とから成り、該麺原料100重量%に対して増粘材として1.0重量%乃至0.5重量%のアルギン酸エステルと、0.5重量%のアルギン酸とが添加されて成る米麺の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の米麺の製造方法により製造されて成る米麺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−115090(P2011−115090A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275302(P2009−275302)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(502278415)株式会社大潟村あきたこまち生産者協会 (3)
【Fターム(参考)】