説明

粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法

【課題】着火遅延時間を変えて実験を行う回数を減らすことができ、試験時間を短縮できる粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法を提供する。
【解決手段】ハルトマン型円筒10の下端より粉体を吹き上げ、粉体と気体とが混在する混合物に着火して最小発火エネルギーを測定する方法における着火遅延時間を決定する方法であって、ハルトマン型円筒10内に粉体を吹き上げた後、粉じん雲mに着火せずにハルトマン型円筒10内における粉体の動きを観察し、観察された粉体の動きに基づいて着火遅延時間を決定する。火花を発生させる時間を順次変化させながら最小発火エネルギーを求める場合に比べて、試験を繰り返す回数を少なくでき、試験期間を短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法に関する。さらに詳しくは、吹き上り法により粉じん雲を形成する粉じん爆発試験装置を使用した粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある一定濃度の粉じんが気体中に浮遊している場合に、火花などにより粉じんに着火すると粉じん爆発が生じる。かかる粉じん爆発は、小麦粉等の食品やプラスチック粉末、金属粉末等種々の粉体において生じる現象であるので、各種粉体の粉じん爆発を予防する上では、各種粉体についてそれぞれ粉じん爆発が生じる条件を把握することが重要である。
【0003】
各種粉体について粉じん爆発が生じる条件を把握するために、各種粉体の最小発火エネルギーを測定することが行われている。
各種粉体の最小発火エネルギーは、その各種粉体が気体中に均一混合された状態で測定することが理想であるが、かかる状態を得ることは非常に難しい。このため、粉じんを形成する方法等の条件が変われば、得られる最小発火エネルギーの値が大きく異なってしまう可能性がある。
【0004】
最小発火エネルギーの測定精度を一定に保つために、実験装置や試料粉じんの事前処理等を規定した測定方法が定められているが、その一つにCEN(欧州標準化委員会)によって作成された欧州規格がある。この欧州規格では、粉じんの最小発火エネルギーは、ハルトマン型円筒を用いて以下の手順で測定することが規定されている(非特許文献1)。
【0005】
(手順1)
試験する粉体(試験粉体)によって所定の濃度の粉じん雲を形成し、この粉じん雲に対して放電による火花によって着火する着火試験を繰り返す。そして、10回の着火試験において、すべてで発火しなくなるまで、火花を形成するエネルギー(火花エネルギー)を段階的(例えば、50%ずつ)に低下させて、最低エネルギーを求める。この間、粉じん濃度および着火遅延時間は一定に保たれる。なお、試験は、所定の濃度の粉じん雲に確実に発火させることができる火花エネルギー値から試験を開始する。また、着火遅延時間とは、試験粉体が試験装置内(ハルトマン型円筒内)に分散・浮遊し始めた時点から着火源を起動させるまでの時間を意味している。
(手順2)
手順1で明らかになった最低エネルギーのままで、粉じん濃度を変えて着火試験を繰り返す。そして、ある粉じん濃度で発火が発生した場合は、その濃度において手順1を行い、その濃度において新たに最低エネルギーを求める。そして、新たな最低エネルギーにおいて粉じん濃度を変えて着火試験を繰り返す。この手順を繰り返して、全ての粉じん濃度において発火が発生しなくなる最低エネルギーを求める。なお、この間も、着火遅延時間は一定に保たれる。
(手順3)
上記手順1、手順2を着火遅延時間を変化させて繰り返せば、各着火遅延時間について最低エネルギーが求められるので、粉じん濃度および着火遅延時間の影響も考慮した、試験粉体の粉じん雲に発火が生じない最高エネルギー(E)を求める。そして、最高エネルギー(E)が見つかると、発火が生じる最低エネルギー(E)を求める。
すると、最低エネルギー(E)と最高エネルギー(E)との間の値として、試験する粉体の最小発火エネルギーが得られる。
【0006】
しかるに、上記規格の手順による試験では、粉じん濃度や着火遅延時間を変えながら、粉じん雲の形成、着火を繰り返し行わなければならないので、一つの試験粉体について最小発火エネルギーを求めるだけでも非常に多くの手間を要し、また、非常に長時間を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“ EUROPEAN STANDARD EN13821 : 2002E ,CEN , November 2002 ”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、着火遅延時間を変えて実験を行う回数を減らすことができ、試験時間を短縮できる粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法は、ハルトマン型円筒の下端より粉体を吹き上げ、該粉体と気体とが混在する混合物に着火して最小発火エネルギーを測定する方法における最適着火遅延時間決定する方法であって、前記ハルトマン型円筒内に前記粉体を吹き上げた後、前記混合物に着火せずに前記ハルトマン型円筒内における前記粉体の動きを観察し、該観察された粉体の動きに基づいて最適着火遅延時間を決定することを特徴とする粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法。
第2発明の粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法は、第1発明において、前記ハルトマン型円筒内における前記粉体の動きを高速度カメラによって撮影し、該高速度カメラによって撮影された画像に基づいて最適着火遅延時間を決定することを特徴とする。
第3発明の粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法は、第1または第2発明において、前記混合物の上部が前記ハルトマン型円筒の上部に到達した後、前記混合物中の粉体が一様に沈降し始めるまでの時間を最適着火遅延時間とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、混合物に着火せずに混合物の動きを観察するので、最小発火エネルギー測定を行う上で最適なタイミングを把握できる。すると、粉体の吹き上げを開始してからこのタイミングまでの時間を最適着火遅延時間として、この最適着火遅延時間に火花を発生させる着火試験を行えば、粉じん雲に発火が生じない最高エネルギーや粉じん雲mに発火が生じる最低エネルギーを求めることができる。よって、火花を発生させる時間を順次変化させながら最高エネルギーや最低エネルギーを求める場合に比べて、試験を繰り返す回数を少なくでき、試験期間を短縮できる。
第2発明によれば、ハルトマン円筒内における混合物の極短時間の動きを静止画像やスローモーション画像によって確認できるので、最適なタイミングをより正確に把握することができる。
第3発明によれば、ハルトマン円筒内に粉体が均一分散した状態に近くなるので、最適着火遅延時間をより適切に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)は本発明の着火遅延時間決定方法に使用する装置1の概略説明図であり、(B)はハルトマン型円筒10の概略説明図である。
【図2】本発明の着火遅延時間決定方法の概略説明図である。
【図3】実施例における粉じんの挙動の撮影画像である。
【図4】実施例において得られた着火遅延時間と、実際に着火実験を行った場合における各着火遅延時間の着火エネルギーの関係を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の着火遅延時間決定方法は、粉じんの最小発火エネルギーを測定する際に、粉体の挙動を画像で確認することによって、粉じんに着火することなく、適正な着火遅延時間(最適着火遅延時間)をおおまかに決定できるようにしたことに特徴を有している。
【0013】
まず、本発明の着火遅延時間決定方法を説明する前に、着火遅延時間および最適着火遅延時間について説明する。
着火遅延時間とは、粉体と空気の混合物(以下、粉じん雲という)を形成するためにハルトマン型円筒10内に粉体を吹き上げて、粉体がハルトマン型円筒10内分散・浮遊し始めた時点から放電するまでの時間を意味している。
一方、最適着火遅延時間とは、あらゆる粉じん濃度において、最も小さい放電エネルギー(最低エネルギー(E))で粉じんに着火できる着火遅延時間のことである。
(ハルトマン型円筒10の説明)
【0014】
つぎに、本発明の着火遅延時間決定方法に使用するハルトマン型円筒10について説明する。
図1において、符号10はハルトマン型円筒を示している。このハルトマン型円筒10は、粉じんの最小発火エネルギーの測定等に使用される装置であり、中空な内部を外部から視認できる、ガラス等によって形成された透明円筒11を備えている。この透明円筒11内の中空な空間11a内には、互いに対向するように配置された一対の放電電極12,12を有している。この一対の放電電極12,12は、放電用電源回路に接続されており、この放電用電源回路から電圧が印加されると、一対の電極12,12間に放電が発生し火花が形成されるように配置されている。
【0015】
この透明円筒11はその下端が閉塞されており、その下端では貫通孔でのみ外部と連通されている。この貫通孔の外端には、透明円筒11内に加圧空気を吹き込むため配管15が連通されており、一方、貫通孔の内端にはノズル13が設けられている。このノズル13は、配管15と貫通孔を通って供給された加圧空気の流れを、上向きから下向きに変更するために設けられている。
なお、配管15は加圧空気を透明円筒11内に供給しうる、例えば、ボンベやコンプレッサ等の手段に接続されている。そして、配管15に介装されている電磁弁16を開閉することによって、透明円筒11内への加圧空気の供給停止を制御できるようになっている。
【0016】
また、透明円筒11の下端部内底面には、最適着火遅延時間を測定する対象である粉体を配置するための凹部11cが設けられている。この凹部11cは、前記ノズル13の周囲を囲むように形成されている。
【0017】
一方、透明円筒11の上端には蓋状部材14が設けられている。この蓋状部材14は、透明円筒11の上端開口部分と対応する位置に、空気が通過できるが粉体は通過できない粉体遮断部を備えている。この粉体遮断部の構造はとくに限定されないが、例えば、蓋状部材14に設けた貫通孔を通気性を有する紙等によって塞いだ構造等とすることができる。
(ハルトマン型円筒10を用いた粉じん雲形成の説明)
【0018】
以上のごとき構造であるから、以下の方法によって、ハルトマン型円筒10内に所定の濃度の粉じん雲を形成することができる。
【0019】
まず、着火凹部11cに所定の量の粉体を配置して電磁弁16を開くと、配管15と貫通孔を通って、透明円筒11内に加圧空気が供給される。加圧空気は、ノズル13によって下方に流れるように流動方向が変えられるので、加圧空気が凹部11c内の粉体に吹き付けられる。すると、粉体は透明円筒11内に舞い上がり、透明円筒11内には粉じん雲が形成される。
ここで、透明円筒11の蓋状部材14には空気が通過できる粉体遮断部が設けられているので、透明円筒11内に供給された加圧空気は粉体遮断部に向かって流動する。言い換えれば、加圧空気は透明円筒11の上端に向かって流動する。すると、加圧空気とともに粉じん雲も透明円筒11の上端に向かって移動するから、透明円筒11内全体に粉じん雲が拡がった状態になる。つまり、粉体が透明円筒11内全体に分散・浮遊した状態となるのである。
【0020】
なお、透明円筒11内全体に粉じん雲が形成された状態で一対の電極12,12間に放電を発生させれば、粉じん雲に着火することもできる。
また、着火凹部11cに配置する粉体の量は、透明円筒11内全体に均一な粉じん雲が形成されたときに所定の粉じん濃度となるように、透明円筒11の容積に基づいてその量(重量)が調整される。
(本発明の装置の説明)
【0021】
図1に示すように、本発明の着火遅延時間を決定する方法に使用する装置(以下、着火遅延時間決定装置1という)では、上述したハルトマン型円筒10に加えて、画像を撮影する撮影手段である高速度カメラ20を備えている。この高速度カメラ20は、前記ハルトマン型円筒10の側方において、ハルトマン型円筒10内を撮影できる位置に配設されている。この高速度カメラ20の性能はとくに限定されないが、ハルトマン型円筒10内における粉体の動きを捉えるためには、500コマ/秒程度の機能を有するものが好ましい。
なお、ハルトマン円筒10内における粉体の動きを撮影する手段は、高速度カメラ20に限らず、デジタルビデオカメラでもよいが、高速度カメラ20を用いれば、静止画像やスローモーション画像によって極短時間の粉体の動きでも確認できるので、最適なタイミングをより正確に把握することができる。
【0022】
なお、高速度カメラ20が、十分に長い撮影可能時間(例えば、数秒以上)が有するものであれば、高速度カメラ20による撮影を開始した後、手動操作などによって電磁弁16を開いても、最適着火遅延時間と考えられるタイミング前後の画像も十分に撮影できる。
しかし、図1に示すように、高速度カメラ20と電磁弁16の作動を制御する制御手段30を設けておけば、高速度カメラ20の撮影時間を有効に活用することができる。例えば、制御手段30によって高速度カメラ20の撮影開始タイミングと電磁弁16の開閉タイミングの両方を制御するようにしておけば、電磁弁16を開いて円筒内に空気を供給したタイミング、又は、空気を供給したタイミングから所定の期間経過後に、高速度カメラ20による撮影を開始させることができる。すると、粉じん雲形成前の期間を撮影した時間を少なくできるので、高速度カメラ20の撮影可能時間が短い場合には好ましい。
(本発明の方法の説明)
【0023】
つぎに、上記装置1を用いて本発明の着火遅延時間を決定する方法(以下、着火遅延時間決定方法という)を説明する。
【0024】
本発明の着火遅延時間決定方法では、ハルトマン型円筒10内に粉じん雲を形成させるときに、粉じん雲に着火せず、粉じん雲の挙動を高速度カメラ20によって撮影する。そして、高速度カメラ20によって撮影された画像から粉体の挙動を確認して、最適着火遅延時間をおおまかに決定する。
【0025】
最適着火遅延時間と考えられるタイミングは、粉体が気体中に均一混合された状態であると考えられる。かかる状態を特定する方法は種々考えられるが、例えば、ハルトマン型円筒10内に吹き上げられた粉体と空気の混合物(粉じん雲)が、ハルトマン型円筒10の上部、つまり、蓋状部材14に到達した後、粉じん雲が一様に沈降し始めるまでの時間を最適着火遅延時間とすることができる。
この時間を最適着火遅延時間とすることができるのは、加圧空気をハルトマン型円筒10内に供給したことによって生じる粉じん雲が、ハルトマン型円筒10内において、以下のごとき挙動をするからである。
【0026】
まず、電磁弁16を開いて加圧空気がハルトマン型円筒10内に供給されると、粉体は加圧空気によって吹き上げられ、粉じん雲mが形成される。このとき円筒11の上端に設けられている蓋状部材14は空気を通すので、空気の上方への流れに乗って粉じん雲mは上方に移動しながら拡散していく(図2(A))。
【0027】
所定の量の加圧空気を透明円筒11内に供給すると電磁弁16が閉じられ、加圧空気の供給が停止される。すると、空気の上方への流れは徐々に遅くなるが、しばらくは上方への流れが継続するので、粉じん雲mの上方への移動と透明円筒11内への粉じん雲mの拡散も継続する(図2(B))。このとき、粉じん雲mは拡散によってその濃度は低下し、所定の濃度に近づいていく。
【0028】
そして、粉じん雲mの上端が蓋状部材14まで到達する頃には、空気の上方への流れは停止する(図2(C))。すると、粉じん雲mはしばらく透明円筒11内を漂い、その後、粉じん雲mは下方に移動を開始する(図2(D))。
つまり、透明円筒11内において、粉じん雲mの上端が蓋状部材14まで到達した後、粉じん雲mが一様に沈降し始めるまでの期間は、粉じん雲mを構成する粉体の移動が最も少なくなる。言い換えれば、透明円筒11内における空気の流れが非常に弱くなった状態となる。
しかも、この期間は粉じん雲mが最も広い範囲に拡散した状態となっているので、透明円筒11内において粉じん雲mが最も均一に分散した状態となる。
【0029】
ここで、粉じん雲mが同じ濃度であれば、ハルトマン型円筒10内の空気の流れが弱いほど粉じん雲mは着火しやすいと考えられる。
すると、粉じん雲がハルトマン型円筒10の蓋状部材14に到達した後、粉じん雲が一様に沈降し始めるまでの時間は、ハルトマン型円筒10内に粉体が均一に分布されており粉じん雲mは着火しやすい状況となっていると考えられるから、最適着火遅延時間となる状況であると推定できるのである。
【0030】
そして、本発明の着火遅延時間決定方法によって最適着火遅延期間を決定すれば、この最適着火遅延期間およびその前後の期間でのみ、粉じん濃度を変えながら着火実験を行うことによって、粉じん雲mに発火が生じる最低エネルギーを求めることができる。すると、粉じん濃度および着火遅延期間の両方を順次変化させながら最低エネルギーを求める場合に比べて、試験を繰り返す回数を少なくできるから、最小発火エネルギーを測定する試験を行う試験期間を短縮することができる。
【実施例】
【0031】
つぎに、本発明の着火遅延時間を決定する方法の妥当性を、本発明の方法によって決定した最適着火遅延時間において着火実験を行い、その測定結果である最小発火エネルギーに基づいて評価した。
【0032】
実験は、まず、本発明の装置によってハルトマン型円筒内に形成される粉じん雲を撮影して最適着火遅延時間を決定した。その後、最適着火遅延時間の近傍において、粉じん濃度を変えて着火実験を行い、各着火遅延時間において粉じん雲mに発火が生じる最低エネルギーを測定した。
【0033】
実験は以下の装置、条件で行った。
粉じん雲爆発試験装置: MIKE3(Kuhner社製)
撮影手段 : 高速度カメラ(nac社製:型番V-140-J)
試験粉体 : 石松子
粉じん濃度 : 750g/m
なお、粉体の吹き上げには、50cmバッファー容器内の加圧空気(0.8MPa)を瞬時に供給した。
(最適着火遅延時間の決定)
【0034】
図3に示すように、吹き上げられた粉体によって形成される粉じんは、時間の経過とともに円筒内を上昇し、空気を吹き込んでから150ms後に円筒の上端に到達していることが確認できる。そして、上端到達後、100msぐらいの期間(つまり、吹き上げ後250msまで)は、粉じん雲が円筒11内を漂っていることが確認できる。そして、上端到達後、200ms経過した時点では(つまり、吹き上げ後350ms経過した時点では)、粉じん雲が下方に移動していることが確認できる。
以上から、高速度カメラによって撮影された画像から粉体の挙動が確認でき、この実験条件では、空気を吹き込んでから150〜250msの期間が最適着火遅延時間であると推定できる。
(着火実験との比較)
【0035】
上記実験で推定された最適着火遅延時間近傍の各着火遅延時間で最小発火エネルギーを測定した。
粉じん濃度を変えながら着火実験を行ったところ、図4に示すように、最適着火遅延時間と推定した期間において、粉じん雲mに発火が生じる最低エネルギーが極小値を示すことが確認できる。つまり、本発明の方法は、最適着火遅延時間を決定する方法として妥当であることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法は、粉じんの最小発火エネルギー測定に適している。
【符号の説明】
【0037】
1 最適着火遅延時間決定装置
10 ハルトマン型円筒
20 高速度カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハルトマン型円筒の下端より粉体を吹き上げ、該粉体と気体とが混在する混合物に着火して最小発火エネルギーを測定する方法における着火遅延時間を決定する方法であって、
前記ハルトマン型円筒内に前記粉体を吹き上げた後、前記混合物に着火せずに前記ハルトマン型円筒内における前記粉体の動きを観察し、該観察された粉体の動きに基づいて着火遅延時間を決定する
ことを特徴とする粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法。
【請求項2】
前記ハルトマン型円筒内における前記粉体の動きを高速度カメラによって撮影し、該高速度カメラによって撮影された画像に基づいて着火遅延時間を決定する
ことを特徴とする請求項1記載の粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法。
【請求項3】
前記混合物の上部が前記ハルトマン型円筒の上部に到達した後、前記混合物中の粉体が一様に沈降し始めるまでの時間を着火遅延時間とする
ことを特徴とする請求項1または2記載の粉じんの最小発火エネルギー測定における着火遅延時間決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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