説明

粉体コーティングのための固体のシリコーン化ポリエステル樹脂

本発明は、十分に高いTgを有するシリコーン化ポリエステルであって、室温で固体であるシリコーン化ポリエステルに関する。前記シリコーンポリエステルは有利には30℃以上のTgを有する。前記シリコーンポリエステルは粒状として生成されてよく、かつ室温で安定のままである。前記粒状シリコーンポリエステルは、粉体コーティング組成物を含むコーティング組成物における使用に適している。このコーティングは、透明であるか又は着色されていてよく、従って場合により顔料を含んでよい。前記コーティング組成物は架橋剤をも含む。前記コーティング組成物は粉体へと粉砕されてよい。前記粉体は室温で安定である。前記粉体は次いで適した基材上にコーティングされることが可能であり、かつ次いで焼き付けしてコーティングされた金属物品を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体のシリコーン化ポリエステル樹脂、前記樹脂を含有するコーティング組成物、前記コーティング組成物から製造されたコーティング、前記コーティングにより被覆された製品、及びこの製造方法に関する。
【0002】
ポリエステル樹脂は産業界において何年も、工業用コーティング、建築用コーティング、及び保全用コーティングのための従来の焼き付けエナメル及び熱硬化性粉体コーティングの製造のためのバインダーとして使用されてきた。ヒドロキシ官能基を有するポリエステル樹脂は、架橋剤、例えばメラミン又はイソシアナートと組み合わせて使用されることに適している。
【0003】
シリコーンをこのポリエステルポリマーの骨格に組み込むと、前記ポリマーの耐熱性及び耐UV性が増加し、これによりこの従来のポリエステルは低耐久性から高耐久性へ移行する。シリコーンのこのポリエステル骨格への組み込みは、この生じるポリマーの耐熱性を増加させ、これによりこの生じるポリマーは、マフラー、調理用品及び加熱用品の製品、自動車製品、建築用製品のためのコーティングにおける使用により良好に適する。このアプローチを現在利用するコーティングは液状シリコーン変性ポリエステルであり、一般的に50〜70%の固体を含有する溶液中に存在する。
【0004】
現在の傾向は、低VOCコーティングへと移行することであり、従ってシリコーン変性ポリエステル(SMP)の固体の変形は、粉体コーティング適用のために理想的である。この従来の技術は液状又はフレーク状のシリコーン中間体を使用し、これは低ガラス転移温度(Tg)を有し、安定なSMPフレークを形成しない。この低Tg中間体の使用はSMPを形成し、これは時が経つと再凝集し、大きな塊を形成し、これによりこの生じるSMPは粉体コーティングにおける使用に不適となる。
【0005】
従って、適した固体のシリコーン変性ポリエステル及び従来技術における少なくとも1つの問題を克服するコーティングを提供することが望ましい。
【0006】
本発明は十分に高いTgを有するシリコーン化ポリエステル樹脂に関し、これによりこのシリコーン化ポリエステルは室温で安定な固体のままである。前記シリコーンポリエステルは有利には30℃以上のTgを有する。前記シリコーンポリエステルは、粒、例えばフレーク又は粉体として生成されてよく、かつ室温で安定のままである。前記の固体の粒状シリコーンポリエステルは、粉体コーティング組成物を含むコーティング組成物における使用に適している。このコーティングは、透明であるか又は着色されていてよく、従って場合により様々な種類の顔料及び充填剤を含んでよい。前記コーティング組成物は有利には架橋剤をも含む。任意の適した架橋剤が使用されてよいが、この架橋剤は有利にはイソシアナートである。
【0007】
このコーティング組成物は有利には、前記コーティング組成物成分、即ち前記の粒状シリコーンポリエステル、前記架橋剤、及び場合により顔料又は場合により他の成分のブレンド、加熱、有利には溶融押出により準備されてよく、この固体の成分に流動性の、比較的粘性のある混合物を形成させる。この熱溶融性の粘性の混合物を冷却させ(いくつかの実施態様では冷却ロール中を通すことにより)、破砕し、粉体へと粉砕する。前記粉体は室温で安定である。前記粉体は次いで適した基材上にコーティングされることが可能であり、かつ次いで焼き付けしてコーティングされた物品を形成する。前記コーティングのための適用は、調理用品、例えばクッキーシート、鍋及び釜、自動車部材、例えばマフラー、エンジン部材、及びエンジン、芝用取り付け器具(lawn fixture)、建築用部材、例えば建材、屋外標識、金属コイル及びその他の金属基材を含む。
【0008】
実施例以外は、又はその他に明白に記載されている箇所以外は、本明細書において材料の量又は反応及び/又は使用の条件を示す全ての数値は、本発明の最も広い範囲を説明する際に”約”との用語で修正されて理解されるべきである。記載した数的な限定内での実施は一般的に好ましい。また、明白に相反することが挙げられていない限り:パーセント、”部”及び比の値は重量によるもので、用語”ポリマー”は”オリゴマー”、”コポリマー”、”ターポリマー”及び類似物を含む;本発明の関連において所定の目的のために適するか又は有利である材料のグループ又は分類の説明は、このグループ又は分類の任意の2つ以上の種類の混合物が均等に適するか又は有利であることを示唆する;化学用語での構成要素の説明は、本明細書において明記された任意の組み合わせに対する添加の際の構成要素を指し、必ずしもひとたび混合された混合物の前記構成要素間での化学的相互作用を排除するものでない;かつ頭字語又はその他の略語の最初の定義は、同様の略語の本発明における全ての引き続く使用に適用し、必要な変更を加えて、この本来定義された略語の通常の文法上の変形にも適用する。
【0009】
本発明は、DSCにより測定して30℃より高いガラス転移温度(Tg)を有する固体のシリコーンポリエステルに関する。以下の適したDSC法を、Perkin Elmer DSC−7unit:SMP試料サイズ=8.0〜12.0mgに対して使用した。1)15℃で0.1分間維持。2)1分間に10.0℃の加熱率で15℃から120℃に加熱。3)1分間に200℃の冷却率で120℃から−20℃に冷却。4)3分間−20℃で維持。5)1分間に10℃の加熱率で−20℃から120℃に加熱。その他の実施態様において、前記シリコーンポリエステルは30℃〜175℃、より有利には35〜130℃、更に有利には35〜100℃、より一層有利には35〜75℃のTgを有し、最も有利には35〜50℃のTgを有する。
【0010】
前記シリコーンポリエステルは有利にはヒドロキシル官能性を有する脂肪族である。前記シリコーンポリエステルは有利には、数平均分子量、500〜500000、より有利には10000〜200000、最も有利には5000〜80000を有する。前記シリコーンポリエステルは酸価、1gのシリコーンポリエステルにつき0〜1000mgの、より有利には20mgより少ない、最も有利には0.1〜15mgの、最も有利には0.2〜10mgのKOHを有する。このシリコーンポリエステルは1〜1000、より有利には10〜800、更に有利には25〜400、最も有利には200〜300のヒドロキシル数を有する。
【0011】
前記シリコーンポリエステルは有利には、シリコーン1〜80質量%、より有利には20〜50質量%、最も有利には28〜33質量%を有する。
【0012】
前記シリコーンポリエステルのこの残りはポリエステルである。従って、前記シリコーンポリエステルは有利には、ポリエステル20〜99質量%、より有利には50〜80質量%、最も有利には67〜72質量%を有する。
【0013】
前記シリコーンポリエステルは有利には、56〜5610g/モルOH、より有利には70〜5610g/モルOH、更により有利には140〜2244g/モルOH、最も有利には187〜280g/モルOHのヒドロキシ当量を有する。
【0014】
前記シリコーンポリエステルは有利には、CAP 2000 H Brookfield Viscometerにより測定して、1〜150ポアズ、より有利には2〜125ポアズ、更に有利には3〜100ポアズ、最も有利には4〜60ポアズの溶融粘度を有する。適した測定は、Brookfield Engineering Laboratories’ Viscometer Model CAP 2000 H.Spindle #6を使用して、操作温度150〜200℃で実施できる。ASTM D4287;ISO 2884;BS 3900を参照してよい。
【0015】
前記シリコーンポリエステルは室温で安定な固体であり、室温で安定な粒、例えばフレーク又は粉体へと成形できる。前記シリコーンポリエステルは、少なくとも1つの架橋剤をも含むコーティング組成物の成分としての使用に適する。
【0016】
前記シリコーンポリエステルは、30℃より高いTgを有するポリエステル又はポリエステル中間体と、30℃より高いTgを有するシリコーンとを反応させることで製造されてよい。30℃より高いTgを有する任意の適したシリコーンを使用してよい。その他の実施態様では、前記シリコーン及びポリエステルはそれぞれ独立して、30〜175℃、有利には30〜150℃、より有利には35〜125℃、更により有利には35〜100℃、一層より有利には35〜75℃、更に一層より有利には35〜50℃、最も有利には35〜45℃のTgを有してよい。30℃より高いTgを有する任意の適したポリエステルを使用してよい。前記シリコーンポリエステル反応は縮合反応である。かかる反応は当業者に十分に公知であり、本明細書ではこれ以上更に詳細には議論しない。更に、30℃より高いTgを有する適したポリエステル及び30℃より高いTgを有する適したシリコーンの製造は十分に知られていて、本明細書中ではこれ以上詳細に議論しない。
【0017】
上述のとおり、適したシリコーンは30℃より高いTgを有する。かかるシリコーン及びこの製造は通常の当業者に十分に公知である。ある有利なシリコーン樹脂は、シラノール官能性オルガノポリシロキサン樹脂を有し、前記樹脂は、以下の式:
【0018】
【化1】

を有する少なくとも1つ以上の繰り返し単位を有し、
その際、R及びRは独立してC1〜20炭化水素であり、場合によりこれは制限されないが以下の異種原子の連結基、例えば
【0019】
【化2】

[aは0、1、2又は3の整数、有利には0、1又は2;
bは0、1、2又は3の整数、有利には0、1又は2;かつ
M単位ではa+b+c=3、
D単位ではa+b+c=2、及び
T単位ではa+b+c=1]が点在していてよい。
【0020】
有利にはR及びRは個々にC1〜18アルキル、C6〜20アリール、C7〜18アルキルアリール、C7〜18アリールアルキル、C5〜12シクロアルキル、C2〜18アルケニル、グリコール、エポキシ(この酸素原子が直接的にSi原子に結合していない場合)、C1〜18アルコキシ、C2〜20不飽和炭化水素、例えばビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル及び末端のC4〜18アルケニル、アルキニル、ビニルエーテル、及びアリルエーテルの基である。
【0021】
より有利には前記R及びRは個々にメチル、エチル、ビニル、アリル、メトキシ、エトキシ及びフェニルの基である。
【0022】
この分子は、T単位からの、シルセスキオキサン、及びポリフェニルシルセスキオキサン及び/又はポリメチルシルセスキオキサンを含有するか又は形成してよい。
【0023】
前記オルガノポリシロキサン樹脂は、従来の末端基、例えばトリアルキルシリル、ジアルキルシラノイル、ジアルキルアルコキシシリル、アルキルジアルコキシシリル、ジアルキルビニルシリル、トリアリールシリル、ジアリールシラノイル、ジアリールアルコキシシリル、アリールジアルコキシシリル、ジアリールビニルシリル及びその類似物で停止していてよい。
【0024】
前記オルガノポリシロキサン樹脂は有利には、このオルガノポリシロキサン樹脂のモル総数に対して、Q単位を0〜15モル%、T単位を30〜100モル%、M単位を0〜20モル%、D単位を0〜20モル%有する。より有利には、前記オルガノポリシロキサン樹脂は、このオルガノポリシロキサン樹脂のモル総数に対して、Q単位を0〜5モル%、T単位を75〜100モル%、M単位を0〜10モル%、及びD単位を0〜10モル%有する。更により有利には、前記オルガノポリシロキサン樹脂は、オルガノポリシロキサン樹脂のこのモル総数に対してT単位を95モル%及びD単位を5モル%有する。最も有利には、前記オルガノポリシロキサン樹脂は、T−フェニル単位を57モル%、T−メチル単位を39モル%、及びD−メチル単位を4モル%有する。
【0025】
少なくとも1つの実施態様において、前記オルガノポリシロキサン樹脂は、DIN53180”Softening Point of Resins”で測定して、30〜109℃、より有利には30〜70℃、最も有利には45〜60℃の範囲で軟化する。有利な樹脂はSILRES 530又はREN 168であり、Wacker Chemical, Adrian, Michiganから入手可能であって、フェニル基対メチル基1.1:1の比を有するメチルフェニルオルガノポリシロキサン樹脂であり、50〜70℃の範囲で軟化点を有する。少なくとも1つの実施態様において、有利な樹脂はフェニル含量100〜0%、より有利には80〜20%、最も有利には60〜50%:メチルの組成0〜100%、より有利には20〜80%、最も有利には40〜50%:アルキル含量0〜100%;前記樹脂のフェニル対メチル(又はアルキル)比は5:1、より有利には3:1、更に有利には6:1、最も有利には1.1:1を有する。
【0026】
有利には、前記オルガノポリシロキサン樹脂は、このオルガノポリシロキサン樹脂の質量に対して20質量%より少ない、より有利には10質量%より少ない、最も有利には6質量%以下のシラノール/アルコキシ含量を有する。
【0027】
前記オルガノポリシロキサン樹脂は有利には、室温で固体であり、重量平均分子量500〜100000、より有利には750〜50000、最も有利には1200〜14000を有する。
【0028】
前記ポリエステルは有利には、ヒドロキシル官能性を有する飽和ポリエステルである。前記ポリエステルは、少なくとも30℃のTgを有する中間体(即ち、完全には反応していない)であってもよい。
【0029】
適したポリエステルは従来の様式で、酸官能性2以上を有するカルボン酸(又はその無水物)と2以上のヒドロキシル官能性を有するポリオールとから形成される。適した多官能性カルボン酸の例は、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、フタル酸、テトラヒドラフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドビシクロ−2,2,1−5−ヘプチンー2、3−ジカルボン酸、テトラクロロフタル酸、シクロヘキサン二酸、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、トリメシン酸、3,6−ジクロロフタル酸、テトラクロロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、及び類似のカルボン酸を含む。適した多官能性アルコールの例は、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリスヒドロキシエチルイソシアナート、ペンタエリトリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール及び1,4−ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、2,2’−ビス(4−シクロヘキサノール)プロパン、ネオペンチルグリコール、2,2,3−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン−ジオールその他を含む。
【0030】
前記ポリエステルが実質的に、−COOH残基を有するカルボン酸官能性であるか又は−OH基を有するヒドロキシ官能性であるかは、このモノマーミックスの−COOH/−OHのモル比に依存する。本発明において使用できる大抵のヒドロキシル官能性ポリエステルは、70〜5610のヒドロキシ当量を有する。本発明において使用できる大抵のカルボン酸官能性ポリエステルは25〜100mg KOH/gの酸価を有する。本発明において使用できる大抵のポリエステルは、ヒドロキシル又はカルボン酸の官能性2つ以上を有する実質的な直鎖であるか、又は2.5より多いヒドロキシル又はカルボン酸の官能性を有する分枝鎖であってよい。同様に、様々な官能性を有するポリエステルの混合物を使用してよい。
【0031】
特定の実施態様では、前記ポリエステルをイソフタル酸とトリメチロールプロパンとを反応させて製造する。又は、その他の酸、例えばイソフタル酸、TPA、トリメリト酸無水物、及びテトラヒドロフタル酸と、その他のアルコール、例えばTME、MPG、TMP、及びNPGを使用してよい。縮合反応を用いて製造される。前記ポリエステルを次いで、Wacker Silicones(Adrian, Michigan)から入手可能なSILRES(R) REN 168と反応させる。前記シリコーンを、このポリエステル反応が完全に終了する前にポリエステルに添加してよい。ある特定の実施態様において、前記シリコーンは3〜6%のシラノール官能性を有するメチルフェニルシリコーン樹脂である。この生じる生成物はヒドロキシル官能性を有するシリコーンポリエステルである。前記シリコーンポリエステルは、安定な粒、例えばフレーク又は粉体へと、従来の成形技術、例えば粉砕を用いて形成することが適する。
【0032】
前記粒状シリコーンポリエステルは、コーティング組成物を形成するために使用でき、これは透明又は着色されていてよい。本発明のシリコーンポリエステル樹脂を使用する粉体化したコーティング組成物は、当業者により製造されてよい。このコーティング組成物は固体の架橋剤及び場合により顔料及び/又は体質顔料を含む。任意の適した固体の顔料又は体質顔料を使用してよい。適した固体の架橋剤は、メラミン及びイソシアナートを含むがこれらに限定されず、イソシアナートを有するものが好ましい。この粒状の粉体化したコーティング組成物に依存して、前記組成物は一実施態様においてシリコーンポリエステル20〜90質量%、架橋剤10〜80質量%、及び0.25〜70質量%の顔料/染料及び/又は体質顔料及び/又は充填剤を有する。少なくとも1つの実施態様において、前記組成物はシリコーンポリエステル30〜80質量%、架橋剤20〜70質量%、及び顔料及び/又は体質顔料及び/又は充填剤0.5〜60質量%を有する。更なる少なくとも1つの実施態様において、前記組成物はシリコーンポリエステル40〜70質量%、架橋剤30〜60質量%、及び顔料及び/又は体質顔料及び/又は充填剤1〜50質量%を有する。顔料が存在しない場合には、前記組成物は少なくとも1つの実施態様においてシリコーンポリエステル10〜90質量%及び架橋剤10〜90質量%を有し、少なくとも1つのその他の実施態様においてシリコーンポリエステル15〜85質量%及び架橋剤15〜85質量%を有し、そして少なくとも1つのまた別の実施態様においてシリコーンポリエステル20〜80質量%及び架橋剤20〜80質量%を有する。充填剤及び/又は体質顔料は上記組成物において場合により、70質量%までの量で存在してよい。
【0033】
同様の種類のコーティングにおいて典型的に見出される適した成分を使用してよく、例えば染料、流動助剤、及び改質ポリマーを使用してよいがこれらに限定されない。前記改質ポリマーは前記組成物中で、前記シリコーンポリエステルのいくつかと置き換わってよい。前記改質ポリマーは非シリコーン化ポリエステル、シリコーン又はこれらの混合物であってよい。存在する場合には、前記改質ポリマーは前記シリコーンポリマーの90質量%まで存在してよい。言い換えると、前記シリコーンポリエステル成分の量の90質量%は改質ポリマーを有し、この残りの10%は本発明のシリコーンポリエステルを有する。
【0034】
前記コーティング組成物は前記の固体のシリコーンポリエステルと前記架橋剤(及び存在するその他の選択的な任意の成分)を組み合わせることにより、当業者に公知である任意の適した技術により製造される。前記組成物の成分はドライブレンドされ、そして加熱され、例えば溶融押出により加熱され、粘性のある液状混合物を形成する。前記シリコーンポリエステル樹脂及び適した架橋剤は、この残りの組成物成分と、この分野で公知のように溶融ブレンド、溶液ブレンド又は低温ブレンドされてよい。”溶融ブレンド”は従来の意味合いでは、例えば前記シリコーンポリエステル樹脂、前記架橋剤及び任意のその他の成分が溶融して混合されていることを意味する。有利には、前記組成物は、この分野で公知のように押出機中で溶融混合されている。有利には、前記組成物の成分は、押出機中で溶融ブレンドされている。この溶融した混合物はタフィ又はペーストのコンシステンシーを有する。
【0035】
この加熱した組成物を次いで冷却させるか又は冷やし、少なくとも部分的に少なくとも1つの実施態様において、前記組成物を冷却ロールに通し、コーティング組成物の成分の均一な混合物を有する固体の組成物を形成させる。前記コーティング組成物を次いで、破砕しかつコーティング適用のために適した粉体サイズに粉砕した。前記コーティング粉体のこの適した粒子サイズは、2〜250ミクロン、より有利には5〜150ミクロン、更により有利には10〜60ミクロン、最も有利には20〜40ミクロンである。前記の粉体化したコーティング組成物は一般的に、通例の付加的な成分、例えば染料、顔料、充填剤、その他の添加剤、例えば流動促進剤及び/又は付着促進剤、UV改質剤、その他の改質ポリマー、及びこの類似物を含むがこれらに限定されない。
【0036】
このようにして形成されたコーティング組成物は、様々な基材、例えば調理用品、例えばクッキーシート、ポット及び平鍋、自動車部材、例えばマフラー、エンジン部材、芝用取り付け器具、屋外標識、外面建材、金属コイル及びその他の金属物品をコーティングするために使用されてよい。前記コーティングを堆積させる方法は決定的ではないが、静電スプレー及びディップコーティング、例えば流動床コーティングが特に適することが見出されている。
【0037】
物品に堆積した前記粉体を、次いでこれを均一に架橋したフィルムへと変換するために熱硬化させる。通常はこの架橋条件は、5〜50分間の間150〜500℃にわたる温度にある。
【0038】
このフィルムは、前記組成物から本発明において適切に製造される場合には、多数の優れた特性、例えば良好な耐候性、良好な耐熱性、良好な付着性、良好な耐腐食性、良好な耐引掻性、そして特に、レベリングの欠点を有さず、かつ特筆すべき耐表面損傷性を有する。
【0039】
本発明を一般的に説明したので、更なる理解をある特定の実施例を参照することで得ることが可能であり、この実施例は本明細書において説明の目的のためだけに提供されるものであり明記されていなければ制限する意図はないものとする。
【0040】
実施例1
トリメチロールプロパン、イソフタル酸及びアジピン酸を三口丸底フラスコ中で、工程Aで表1に示した量で一緒に、190℃の温度で、水42gが回収されるまで反応させ、この生じる生成物は10mgのKOH/gの酸価を有した。この混合物は30℃より高いTgを有するポリエステルを形成し、これを次いで130℃に冷却した。工程Bのシリコーンは30℃未満のTgを有し、これを次いで前記ポリエステルに添加した。工程Bの前記シリコーンは液体であり、低メチルフェニル比のポリマーであり分子量1200を有する。この反応器を次いで170℃に加熱し、この際この反応を21gのアルコールが回収されるまで行った。適切であれば、この生じる生成物をこの溶融状態から、アルミニウムトレーに注ぎ、室温に冷却し、固体のシート状のシリコーンポリエステルを成形させる。この固体のシート状のシリコーンポリエステルを可能であればフレーク状へと破砕する。
【0041】
実施例1の樹脂に関して、このTgは室温より低く、このシリコーン含量は31.31%であり、この当量は322.9gグラム/1モルのOHであり、この酸価は10mgのKOH/gである。
【0042】
実施例1のシリコーンポリエステルは見た目がゴム状であり、フレーク又は粉体へと成形されることが可能ではなかった。表1
【0043】
【表1】

【0044】
実施例2
トリメチロールプロパン、イソフタル酸及びアジピン酸を三口丸底フラスコ中で、工程Aで表2に示した量で一緒に、約190℃の温度で、水約40gが回収されるまで反応させ、この生じる生成物は約15の酸価を有した。この混合物は30℃より高いTgを有するポリエステルを形成し、これを次いで約130℃に冷却した。工程Bのシリコーンは約52℃のTgを有し、これを次いで前記ポリエステルに添加した。この反応器を次いで170℃に加熱し、この際この反応を水4.5gが回収されるまで行った。適切であれば、この生じる生成物をこの溶融状態から、アルミニウムトレーに注ぎ、室温に冷却し、固体のシート状のシリコーンポリエステルを成形させる。
【0045】
実施例2の樹脂に関して、このTgは室温より低く、このシリコーン含量は31.31%であり、この当量は242.33gグラム/1モルのOHであり、この酸価は15.37mgのKOH/gである。
【0046】
実施例2のシリコーンポリエステルは見た目がゴム状であり、フレーク又は粉体へと成形されることが可能ではなかった。
表2
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
実施例3:
工程Aでアジピン酸を使用しないこと及び工程Aでより多くのイソフタル酸を使用したことを除き実施例2と同様である。これら成分の量を表3に示した。工程Aの材料を170〜200℃に加熱した。
【0050】
実施例3のシリコーンポリエステルは、30℃より高いTg、シリコーン含量31%、1モルのOHにつき238.39gグラムの当量、及び1グラムにつき5.49mgのKOHの酸価を有する。
【0051】
実施例3の生成物は安定な固体の塊を形成し、これはフレークに変換可能であった。
表3
【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
実施例4
表4に示したように成分の量が異なる以外は実施例3と同様。工程Aの材料を205℃から230℃に加熱した。
【0055】
実施例4の生じるシリコーンポリエステルは30℃より高いTg、31%のシリコーン含量、1モルのOHにつき223.23gの当量、及び4.77の酸価を有した。
【0056】
実施例4の生成物は安定な固体の塊を形成し、これはフレークへと変換することが可能であった。
表4
【0057】
【表6】

【0058】
【表7】

【0059】
実施例5:
実施例5は表5に示したように使用した成分の異なる量を除いて実施例4と同様である。また工程Aでこの材料を185℃から234℃に加熱した。
【0060】
工程B及び実施例4で回収された水の量は184gであった。実施例5から生じるシリコーンポリエステルは30℃より高いTg、31%のシリコーン含量、1モルのOHにつき227.6gの当量、及び1gにつき9.54mgのKOHの酸価を有した。
【0061】
実施例5の生成物は安定な固体の塊を形成し、これはフレークへと変換することが可能であった。
表5
【0062】
【表8】

【0063】
実施例6
表6に示した成分の量を変更した以外は実施例5と同様。工程Aで、この材料を194℃から217℃に加熱した。工程Aで回収した水の量は37.70gであった。
工程Bで回収した水の量は44.40gであった。
【0064】
実施例6で生じるシリコーンポリエステルは40℃のTg、30%のシリコーン含量、1モルのOHにつき247.81gの当量、及び1gにつき16.83mgのKOHの酸価を有した。
【0065】
実施例6の生成物は安定な固体の塊を形成し、これはフレークへと変換することが可能であった。
表6
【0066】
【表9】

【0067】
実施例7
実施例7は、この成分の量が表7に示したように異なることを除いて実施例6と同様である。実施例6の工程Aで回収した水の量は243.9gであった。実施例7の工程Aで、この材料を195℃から200℃に加熱した。
【0068】
実施例7の工程Bで回収された水の量は16.9gであった。
【0069】
実施例7のこの生じるシリコーンポリエステルのシリコーン含量は31%、この当量は1モルのOHにつき235.08gであり、この酸価は1gにつき20.34mgのKOHであった。このシリコーンポリエステルのTgは30℃より高かった。
【0070】
実施例7の生成物は安定な固体の塊を形成し、これはフレークへと変換することが可能であった。
表7
【0071】
【表10】

【0072】
【表11】

【0073】
実施例8
実施例8は、この成分の量が表8に示したように異なる以外は実施例7と同様である。
【0074】
実施例8で回収した水の量は29.9gであった。実施例8の工程Aで、この材料を221℃から230℃に加熱した。
【0075】
実施例8の工程Bで回収された水の量は0.9gであった。
【0076】
この生じるシリコーンポリエステルは30℃より高いTg、31%のシリコーン含量、1モルのOHにつき229.3gの当量、及び1gにつき8.13mgのKOHの酸価を有した。
【0077】
実施例8の生成物は安定な固体の塊を形成し、これはフレークへと変換することが可能であった。
表8
【0078】
【表12】

【0079】
実施例9
実施例9は、この成分の量が表9に示したように異なる以外は実施例8と同様である。実施例9の工程Aで回収した水の量は240.7gであり、工程Aのこの反応の温度は196℃であった。
【0080】
実施例9の工程Bで回収した水の量は10.9gであり、工程Bのこの反応の温度は125〜152℃であった。
【0081】
実施例9のこの生じるシリコーンポリエステルは30℃より高いTg、31%のシリコーン含量、1モルのOHにつき230.38gの当量、及び1gにつき20mgのKOHの酸価を有した。
【0082】
実施例9の生成物は安定な固体の塊を形成し、これはフレークへと変換することが可能であった。
表9
【0083】
【表13】

【0084】
【表14】

【0085】
実施例10
実施例10は、この成分の量が表10に示したように異なる以外は実施例9と同様である。実施例10の工程Aで回収した水の量は78.38gであり、工程Aのこの反応の温度は200〜220℃であった。
【0086】
実施例10の工程Bで回収した水の量は4.18gであり、工程Bのこの反応の温度は130〜180℃であった。
【0087】
実施例10の生じるシリコーンポリエステルは43.6℃のTg、30.95%のシリコーン含量、1モルのOHにつき319.58gの当量、及び1gにつき15.2mgのKOHの酸価を有した。
【0088】
実施例10の生成物は安定な固体の塊を形成し、これはフレークへと変換することが可能であった。
表10
【0089】
【表15】

【0090】
【表16】

【0091】
実施例11
実施例11は、この成分の量が表11に示したように異なる以外は実施例10と同様である。実施例11の工程Aで回収した水の量は250.9gであり、工程Aのこの反応の温度は200〜220℃であった。
【0092】
実施例11の工程Bで回収した水の量は27.54gであり、工程Bのこの反応の温度は130〜180℃であった。
【0093】
実施例11の生じるシリコーンポリエステルは46.11℃のTg、30.95%のシリコーン含量、1モルのOHにつき345.58gの当量、及び1gにつき12.68mgのKOHの酸価を有した。
【0094】
実施例11の生成物は安定な固体の塊を形成し、これはフレークへと変換することが可能であった。
【0095】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンとポリエステルとを反応させることで製造され、この生じるシリコーンポリエステルが30℃より高いTgを有する、粉体コーティングに適した固体のシリコーンポリエステル。
【請求項2】
前記の生じるシリコーンポリエステルが30〜175℃のTgを有する、請求項1記載のシリコーンポリエステル。
【請求項3】
前記シリコーンポリエステルが35〜50℃のTgを有する、請求項1又は2記載のシリコーンポリエステル。
【請求項4】
前記シリコーンポリエステルがヒドロキシル官能性を有する脂肪族である、請求項1から3までのいずれか1項記載のシリコーンポリエステル。
【請求項5】
前記シリコーンポリエステルが2000〜10000の分子量を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のシリコーンポリエステル。
【請求項6】
前記シリコーンポリエステルが、シリコーン28〜33質量%及びポリエステル67〜72質量%を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のシリコーンポリエステル。
【請求項7】
それぞれ30℃より高いTgを有するポリエステル及びシリコーンを、シリコーンポリエステルを形成すべく反応させる、請求項1から6までのいずれか1項記載のシリコーンポリエステル。
【請求項8】
それぞれ35〜115℃のTgを有するポリエステル及びシリコーンを、シリコーンポリエステルを形成すべく反応させる、請求項1から7までのいずれか1項記載のシリコーンポリエステル。
【請求項9】
前記ポリエステルを、芳香族カルボン酸と三官能性アルコールとを反応させることで形成させる、請求項1から8までのいずれか1項記載のシリコーンポリエステル。
【請求項10】
30℃より高いTgを有する固体のシリコーンポリエステルと固体の架橋剤とを有する、コーティング組成物。
【請求項11】
前記の生じるシリコーンポリエステルが30〜175℃のTgを有する、請求項10記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記シリコーンポリエステルがヒドロキシル官能性を有する脂肪族である、請求項10又は11記載のコーティング組成物。
【請求項13】
それぞれ30℃より高いTgを有するポリエステル及びシリコーンを、シリコーンポリエステルを形成すべく反応させる、請求項10から12までのいずれか1項記載のコーティング組成物。
【請求項14】
それぞれ35〜115℃のTgを有するポリエステル及びシリコーンを、シリコーンポリエステルを形成すべく反応させる、請求項10から13までのいずれか1項記載のコーティング組成物。
【請求項15】
請求項10から14までのいずれか1項記載の、架橋したコーティング組成物を有するコーティング。
【請求項16】
請求項15記載のコーティングを有する金属基材を有する、コーティングされた製品。
【請求項17】
30℃より高いTgを有するポリエステルと、30℃より高いTgを有するシリコーンとを反応させることを含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の固体のシリコーンポリエステルの製造方法。

【公表番号】特表2007−520593(P2007−520593A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546084(P2006−546084)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014699
【国際公開番号】WO2005/063857
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】