説明

粉体乾燥装置

【課題】粉体に含まれる水分を効率的に除去し、大量の粉体を目的の水分値に乾燥させることができる粉体乾燥装置を提供する。
【解決手段】円筒本体1内に多数のフィルタ2,2が配置され、熱風供給源14から熱風が接線入射ノズル群4によって入射され、被乾燥粉体が被乾燥粉体供給部11から乾燥室1Bの上部に供給される。乾燥室1Bには多数の回転滞留リング3が形成され、フィルタ2,2によって水蒸気を含む熱風が吸引排気装置17によって外部に排出される。被乾燥粉体は、回転滞留リング3で回転しながら水分が取り除かれ乾燥し、徐々に落下する。落下した乾燥済粉体は乾燥済粉体受容器15Bに集積する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥機内部に粉体を供給し熱風などを加えることにより粉体を乾燥させる粉体乾燥装置、さらに詳しくいえば、例えば30%水分の粉体を乾燥して水分1%以下としたい場合に好適に使用することができる粉体乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用などに用いる粉体,大豆から豆腐を作る過程でできるおからなどの粉体,その他の粉体を乾燥させる乾燥装置が実用に供されている。
通常、乾燥装置は粉体の水分含有量を少なくするために乾燥機内に被処理粉体と熱風,ガスなどを入れ乾燥機内で粉体を熱風にさらすことにより水分を抜くシステムが形成されている。
【0003】
特許文献1はこの種の粉体乾燥機で、粉体を均一に乾燥することができる装置が提案されている。
外筒と、内筒と、外筒および内筒との間に設けられる螺旋熱風路とから構成されており、内筒上端は外筒上端より低位にしてその間に選別室を形成し、内筒に上端からロート体が挿着され、内筒下部とロート体により形成される熱風溜室に連絡されている。そして、外筒上部に設けられる熱風発生装置と内筒下部の熱風溜室とが連絡し、さらに螺旋熱風路下部に連絡している。螺旋熱風路下部に外筒の外側から被処理粉体供給器が連絡し、外筒上端に乾燥粉体取出し路が連絡している。
粉体は螺旋熱風路の下部から熱風の中に導入され、螺旋熱風路内を上昇して選別室内に至り、選別室内で自由旋回して所定の乾燥状態に達した粉体のみ取出し路から取り出されるようになっている。
所定の乾燥状態に達しない粉体は落下しロート下部から噴出する熱風と接触してさらに乾燥され、再び選別室内に戻されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−180877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の粉体乾燥機は内筒の下部から被処理粉体が導入され、熱風にさらされながら螺旋状に上部に上昇し、選別室を経て外筒の上部から乾燥された粉体が取り出される機構であり、均一に乾燥された粉体を得るという目的を達成している。
ところで、水分を多く含み乾燥し難い粉体を処理して低水分にまで乾燥することができる乾燥機能を持った粉体乾燥装置の実現が要請されている。
本発明は上記状況に鑑みなしたもので、その目的は、粉体に含まれる水分を効率的に除去し、大量の粉体を目的の水分値に乾燥させることができる粉体乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は上方から排気室,分離壁,乾燥室を有する円筒本体と、前記排気室に上端開口が連通している複数本のフィルタと、前記乾燥室の上側空間に水平接線方向に被乾燥粉体を供給する粉体供給部と、前記乾燥室の内壁水平接線方向に開く多数段に配置される熱風接線入射ノズル群と、前記ノズル群に熱風を供給する熱風供給源と、前記排気室を介して乾燥室内の空気を吸引排気することにより前記乾燥室に複数の回転滞留リングを形成する吸引排気手段と、前記フィルタに高圧空気パルスを供給するフィルタ制御手段と、前記回転滞留リング中で浮遊回転中に除湿乾燥された粉体を乾燥室下端から取り出す取出手段とから構成されている。
前記フィルタはプリーツフィルタを用いることができる。プリーツフィルタは、熱成形され、フィルタ面を形成する円周面がひだで構成されている。ひだの形状は円周面に沿ってその横断面が歯車に類似するギザギザ形状で構成されている。
前記粉体供給部は粉体をスクリューコンベアの上に供給し、該スクリューコンベアにより、前記乾燥室の上側空間に水平接線方向に導くように構成することができる。
前記内壁水平接線方向に配置される熱風接線入射ノズル群は、各段毎に内壁円周面に沿って等間隔で複数個の入射ノズルを備えることができる。
前記フィルタ制御手段は、前記フィルタの上端開口からパルス状の圧縮空気を所定のタイミングで繰り返し送り込み、前記フィルタの外面側に付着している粉体を払い落とすことができる。
前記円筒本体の下部には乾燥済粉体を冷却するための冷風を供給する冷風源を設けることができる。
前記円筒本体の底面付近に回転羽根を配置し、回転羽根を回転させることにより乾燥済粉体を前記取出手段に導く乾燥済粉体収集機構を設けることができる。
前記取出手段は前記円筒本体の底面に繋がり、乾燥済粉体を集積する乾燥済粉体受容器と、前記乾燥済粉体受容器までの経路に配置された排出バルブとから構成することができる。
本発明の請求項2は、上方から排気室,分離壁,乾燥室を有する円筒本体と、前記排気室に上端開口が連通している複数本のフィルタと、前記乾燥室の上側空間に水平接線方向に被乾燥粉体を供給する粉体供給部と、前記乾燥室の内壁水平接線方向に開く多数段に配置される熱風接線入射ノズル群と、前記ノズル群に熱風を供給する熱風供給源と、前記排気室を介して乾燥室内の空気を吸引排気することにより前記乾燥室に複数の回転滞留リングを形成する吸引排気手段と、前記フィルタに高圧空気パルスを供給するフィルタ制御手段と、前記円筒本体の下部に設置され、前記円筒本体から下降する粉体を吹き上げ流動させて乾燥させるために熱風を上に向かって供給する流動層乾燥部と、該流動層乾燥部で流動し乾燥された粉体を取り出す取出手段とから構成されている。
前記流動層乾燥部には目皿板を設け、目皿板の下側より上に向けて熱風を供給する構成にすることができる。
また、攪拌羽根を設け、該攪拌羽根の駆動により流動層の粉体の流動化を促進させ、更には羽根の回転速度を上げて被処理物を衝撃力で解砕することができる。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、大量の粉体を高効率で乾燥でき水分含有率を少なくした数値になるように確実に乾燥させた乾燥粉体を作ることができる。
この乾燥装置の構成の効果は具体的には以下の通りである。
(1)円筒本体に接線方向に熱風を吹き込むノズルを多段に多数設けている。多数のノズルから例えば60〜70m/Sの高速の風が吹き出ているため、ノズルの上側にできる回転滞留リングに浮遊する粉体はつぎから次へと粉体が供給されるため、抗しきれずに下に少しずつ漏れ、つぎの回転滞留リングに下降する。そのため、円筒本体の下方位置に漏れ出るには多数のノズルから出る風の部分を通過しなければならず、粉体は乾燥されながら下方位置に達するまで長い時間滞留して熱風を吹き付ける熱エネルギーを最大限乾燥のために充分使用できる。
例えば、従来の乾燥機、気流乾燥機では20m〜30mの乾燥管を通して乾燥し、配管に材料を投入し風速15〜20m/Sで熱風を送り込むように構成されており、これによれば材料の滞留時間は2〜3秒程度であり低水分までの乾燥には滞留時間が十分でない。したがって水分が30%のものを20%程度にしかできない。そのためにもう一度同じ配管内を通すか、同じような乾燥のための配管を2,3個設けて繰り返し乾燥させないと、充分に水分を除くことができない。
本発明による乾燥装置によれば、多数のノズルから例えば60m/s前後の熱風を入射すれば、滞留時間は飛躍的に延び、従来の気流乾燥機に比べ5倍以上の滞留時間となる。
(2)通常の乾燥機ではサイクロンとバグフィルタで粉体を捕集し、低水分が要求される場合はもう1回戻してサイクロンとバグフィルタで粉体を捕集する工程を取っている。
本発明によれば、乾燥装置内にフィルタを設けているため粉体の捕集がこの乾燥工程で同時に行えるという完結した乾燥機である。また、フィルタの表面に付着した粉末は圧縮パルスを加えることにより払い落とし、各回転滞留リングで乾燥されるため、非常に長い時間乾燥のために滞留させることができる。
従来の乾燥機では例えば100°Cの熱風が排気では80°Cとなる。本発明では100°Cの熱風が排気では例えば50°Cとなり熱エネルギーが有効に使われる。また、多数のノズルによる回転滞留リングは各ノズルからつぎから次へと100°Cの熱風が加えられるため、下の回転滞留リングに漏れ出ていく程回転滞留リングの粉体の温度は上昇する。そのため、水分の非常に少ない粉体を得るには非常に有利なものである。
(3)以上のようなことから本発明による乾燥機は、乾燥のために粉体を長く滞留させることができ、滞留した粉体はつぎから次へとフレッシュな熱風に接触することができる。乾燥機内部にフィルタを有しているので乾燥機後段にバグフィルタを設ける必要がないなどの特徴を備えている。
また、回転滞留リングにより乾燥させ、さらに流動層乾燥部により乾燥させるものでは、水分含有率が1%以下を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による粉体乾燥装置の実施の形態を示す概略図で、円筒を破断して示したものである。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】吸引排気装置の一実施例を示す図である。
【図4】取出手段の一実施例を示す図で、乾燥済粉体収容室の内部を示したものである。
【図5】被乾燥粉体供給部の一実施例を示す図である。
【図6】乾燥済粉体収集機構の一実施例を示す図である。
【図7A】フィルタ制御装置の一実施例を示す図で、この例は多数のプリーツフィルタを乾燥機内に配置し、各プリーツフィルタ内に高圧空気パルスを発射する機能の一実施例を示す図である。
【図7B】図7AのB−B断面図である。
【図7C】フィルタ制御装置のダイヤフラム弁付近を含む平面図である。
【図8】プリーツフィルタの形状の詳細図である。
【図9】本発明による粉体乾燥装置の他の実施の形態を示す概略図で、円筒の一部を破断して示したものである。
【図10】本発明による粉体乾燥装置のさらに他の実施の形態を示す概略図で、円筒の上部を省略しその一部を破断して示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1は、本発明による粉体乾燥装置の実施の形態を示す概略図で、図2のB−B面で円筒を破断して示したものである。図2は図1のA−A断面図である。
この実施の形態はフィルタ2を4個配置し、接線入射ノズル群4を高さ方向4段に設けた例である。
円筒本体1は上下面が密閉された円筒形状であり、分離壁1Cが上部付近に設けられ、水分を含んだ熱風を排気する排気室1Aと、粉体を乾燥させる乾燥室1Bが形成されている。フィルタ2は図2に示すような配置により分離壁1Cに取り付けられている。
フィルタ2は上側から抜き取るか、乾燥室側から外すことにより交換することが可能である。
【0010】
図1および図2に示すように、各段に設けられる熱風を導入する入射ノズルは、円筒本体1の周囲から水平方向に対しタンジェンシャルに配置され、円周方向に等間隔で2個設けられている。図2において、各入射ノズル42−1,42−2に入射する熱風が矢印5−1,5−2に示すように円周壁水平方向の接線方向に入射する。
このため、粉体は旋回する高速気流に挟まれ、遠心力によって円周壁に沿って円環状の回転滞留リング3を形成する。この実施の形態では、入射ノズルが4段構成であるので、各段を挟んで回転滞留リング3が4個形成される。回転滞留リング3内の粉体の粒子はリング内で旋回しながら徐々に落下する過程で熱風により水分が蒸発させられる。
各段の入射ノズルに結合される熱風供給管41〜44は熱風を作り出して送るための熱風供給源14に結合されている。
【0011】
粉体は被乾燥粉体供給部11から供給管23,供給バルブ18,粉体供給管40を介して乾燥室1B内に水平接線方向に供給されるようになっている。供給管23は熱風供給源14に結合されている粉体供給管40に接続されており、供給バルブ18を開口すると、粉体は被乾燥粉体供給部11より粉体供給管40内に導かれ、熱風供給源14からの熱風により乾燥室1B内に送り込まれる。
排気室1Aは吸引管19に接続されており、吸引排気装置17により排気室1A内の水分を含んだ風が吸い出され、外部に排出するようになっている。
このため回転滞留リング3内の水蒸気と微粉体を含む空気はフィルタ2の外表面に吸い寄せられ、気体は排気室1Aに送り出される。フィルタ2に吸い寄せられた粉体の粒子はフィルタ2を通過することなく外表面に付着する。また、粉体は回転滞留リング3中で浮遊回転中に除湿乾燥される。
【0012】
フィルタ制御装置12はフィルタ2の外表面に付着した粉体の粒子を一定のタイミング(例えば一定間隔)で振るい落とすために各フィルタ2の上面開口端から高圧空気のパルスを吹きつけるための機構である。
フィルタ制御装置12は、フィルタ2の外表面に付着した粉体の粒子を所定のタイミングで振るい落とすことにより、フィルタの目詰まりを防ぐことができる。
このようにして水分が除去されつつ落下する粉体の粒子は矢印25に示すように乾燥室1Bの底部に落下し堆積する。
冷気源16は低温の空気を送り出すもので、乾燥室1Bの底部付近に接続され乾燥室1Bの下部に空気を吹き込むようになっている。落下し堆積する粉体の温度を下げるのは、排出された粉体が変質するのを防ぐためである。
【0013】
乾燥済粉体を取り出す取出手段15は乾燥室1Bの底面に繋がる管に設けられた排出バルブ15Aと、乾燥済粉体を取り出すための乾燥済粉体受容器15Bより構成されている。
乾燥済粉体収集機構22は落下し堆積する粉体を乾燥室1Bの底面に堆積させることなく乾燥済粉体受容器15Bに繋がる管の開口端に導くためのものである。排出バルブ15Aを開口することにより乾燥済粉体収集機構22で集められた乾燥済粉体を乾燥済粉体受容器15Bに受け入れることができる。
【0014】
図3〜図7Cは、吸引排気装置,取出手段,被乾燥粉体供給部,乾燥済粉体収集機構およびフィルタ制御装置の各実施例を示すもので、これら各図を用いてプラスチック粉を乾燥する乾燥装置について説明する。
図3は吸引排気装置の一実施例を示す図である。
吸引排気装置は排気室1Aに繋がる吸引管173,吸引ブロワ171および排気管172により構成されている。吸引ブロワ171は吸引管173を介して例えば水蒸気などを含む熱風(40℃〜60℃程度)が排気室1Aより吸引され、排気管172から外部に排出される。
【0015】
図4は取出手段(乾燥済粉体受容器)の一実施例を示す図で、乾燥済粉体収容室内部を示したものである。
排出管155は乾燥室1Bの底面に結合され、乾燥済粉体収容室154内に導入されている。乾燥済粉体収容室154内には容器152が配置され、乾燥済粉体153が容器152内に集積される。乾燥室1Bの乾燥済粉体は排出管155に設けられている排出バルブ151を開口することにより容器152に落下する。熱風供給源14から例えば120℃の熱風が供給されると、容器152に集積される乾燥済粉体153の温度は円筒本体1の下部の冷気で冷やされ、38℃程度まで低くなる。
【0016】
図5は被乾燥粉体供給部の一実施例を示す図である。
ロート形状の被乾燥粉体容器112にプラスチック粉111が溜まっている。プラスチック粉111は例えば、粒子の大きさは1μm〜10μm、水分含有率略30%であり、被乾燥粉体容器112の下部にはスクリューコンベア114が配置されており、内部のスクリュー115をモータ113により回転駆動することにより、被乾燥粉体容器112から供給するプラスチック粉111をスクリューコンベア114の端部に搬送する。供給管116はスクリューコンベア114の端部の下部に配置され、その他方端が熱風供給源14からの熱風を導く管に繋がっている。供給管116に設けられている供給バルブ118を開口することにより乾燥室1Bの上部にプラスチック粉111を導入する。
【0017】
図6は乾燥済粉体収集機構の一実施例を示す図である。
乾燥室1Bの底部付近には乾燥済粉体誘導羽根21が設けられ、モータ103により回転させられる。乾燥済粉体誘導羽根21をモータ103により回転駆動することにより落下する乾燥済粉体24が排出管155の開口部に導かれる。
【0018】
図7A〜図7Cはフィルタ制御装置の一実施例を示す図で、この例は60個のプリーツフィルタを乾燥機内に配置しており、各プリーツフィルタ内に高圧空気パルスを発射する装置の一実施例を示す図である。図7Aは排気室1Aの上部の蓋(図示しない)を取り除いた平面図であり、図7Bは図7AのB−B断面図である。図7Cはフィルタ制御装置のダイヤフラム弁付近を含む平面図で、ブロー管の一部を省略しプリーツフィルタの上面から示す図である。図8はプリーツフィルタの形状の詳細図である。
円筒本体1の内部には縦横合計60個のプリーツフィルタ20が等間隔で配置されている。プリーツフィルタ20は、図8に示すように、横断面が歯車の外形に類似した筒形の形状である。その寸法は例えば外径12cm,長さ1.5mであり、ひだ211は44個設けられている。ひだ211は不織布を多数重ねて熱成形されており、1μm以下の微粒子でも99%以上捕集できる。プリーツフィルタ20は円筒の周囲面積に対し大きなフィルタ面を持つ特徴を有し、フィルタ効果を最大限に発揮できるものである。
【0019】
横方向に配列されたプリーツフィルタ群の上部開口に位置するようにそれぞれブロー管124−1〜124−8が配置されている。ブロー管124−1〜124−8の端部はブロー管受け126により支持されている。ブロー管124−1〜124−8の各プリーツフィルタ20の上部位置にあたる部分に圧縮空気を噴射するための小孔が設けられている。ブロー管124−1〜124−8はそれぞれダイヤフラム弁127を介してエアヘッダ125に接続され、さらにエアヘッダパイプ129に結合されている。エアヘッダパイプ129には圧縮空気供給管130から圧縮空気が送られている。各ダイヤフラム弁127にはパイロット電磁弁128が接続されている。各ダイヤフラム弁127はパイロット電磁弁128の作動により開き、エアヘッダパイプ129内の圧縮空気がブロー管124−1〜124−8の小孔より例えば0.1秒間噴射するようになっている。各プリーツフィルタ20の上部開口部付近に噴射空気量の10倍前後の2次空気を同伴し、フィルタバック内に入りエアショックを与え、逆洗と振動によりフィルタに付着したプラスチック粉の粒子が払い落とされる。
【0020】
図9は本発明による粉体乾燥装置の他の実施の形態を示す概略図で、円筒の一部を破断して示したものである。
この実施の形態は、水分30%の湿潤のプラスチック粉体を水分1%以下に乾燥する場合に適している構成である。基本的な構成は図1で示す粉体乾燥装置と同じであり、円筒本体の下部に流動層乾燥部70を設けたものである。接線入射ノズル群5を多段に配置し円筒本体31内で多数の回転滞留リング33を形成し円筒本体31上部から供給され円筒本体31内に長い時間滞留させて乾燥させた円筒本体31からの粉体を流動層乾燥部70で流動層を作ってさらに水分含有率を低下させる。図9において、排気室31A,乾燥室31B,分離壁31Cは、図1の排気室1A,乾燥室1B,分離壁1Cの機能に、ブロー管36,ダイヤフラム弁37,エアヘッダ38はブロー管124,ダイヤフラム弁127,エアヘッダ125(図7A〜図7C参照)にそれぞれ対応する。また、入射ノズル群5の熱風供給管51〜55は入射ノズル群4の熱風供給管41〜44に対応し、粉体を供給する粉体供給管50は粉体供給管40に対応する。なお、熱風供給管51〜53および粉体供給管50に送り込む熱風の温度は例えば120°Cである。熱風供給管54,55へは途中に空気を導入する管が接続され、円筒本体31内には100°Cの熱風が供給される。
さらに吸引ブロワ56は吸引排気装置17の機能に、プリーツフィルタ32はフィルタ2に、回転滞留リング33は回転滞留リング3にそれぞれ対応する。
【0021】
流動層乾燥部70は有底円筒形状であり、円筒本体31下部の円錐台形状部31aに接続されている。この乾燥装置の実寸を示すと、例えば円筒本体31の直径および高さはそれぞれ500mmφ,1600mm、有底円筒形状部70aの直径は250mmφである。
有底円筒形状部70aの上部に乾燥粉体を排出する排出管67が接続されている。バルブ67aを開くことにより、流動層乾燥部70からの乾燥粉体(プラスチック粉体69)が容器68に導かれる。
流動層乾燥部70の下部に目皿板60が配置され、目皿板60の上側に攪拌羽根59が設けられている。攪拌羽根59はモータ61の駆動軸に接続され、モータ61の駆動により回転し、流動層乾燥部70内部を攪拌する。
流動層乾燥部70の底部と目皿板60の間には熱風を送り込むための熱風供給管62が接続される。この熱風供給管62には送風ブロワ57によって熱源58より120°Cの熱風を送り込むための管が接続されている。この管の中間には空気を導入する管が接続され、空気の導入により熱風供給管62へは80°Cの熱風が供給される。
【0022】
被乾燥粉体供給部34からプラスチック粉体(水分含有率30%)が供給管36,粉体供給管50を介して円筒本体31の接線方向に供給される。粉体供給管50の上側位置にプラスチック粉体が浮遊する回転滞留リング33が形成され、熱風供給管51〜55の相互の間にはそれぞれ回転滞留リング33が形成される。プラスチック粉体は回転滞留リング33に浮遊乾燥され、徐々に下側の回転滞留リング33に漏れ出し、円筒本体31の下部に達するまでには長い時間浮遊し水分が取り除かれる。
下降途中に吸引ブロワ56で空気が引かれるためプラスチック粉体を含む流体はプリーツフィルタ32に吸い寄せられ、湿った空気はプリーツフィルタ32を通過して排気室31Aに引かれ排気される。プリーツフィルタ32の表面にはプラスチック粉体が付着するが、ブロー管36からパルス状の高圧空気をプリーツフィルタ32上部に導入することにより付着したプラスチック粉体は払い落とされる。
このようにして水分含有率が低下したプラスチック粉体が流動層乾燥部70に落下すると、熱風供給管62から供給される80°Cの熱風が目皿板60の下方から上に向けて吹き上げられるため、落下したプラスチック粉体は吹き上げられる。目皿板60は多孔板であり、落下するプラスチック粉体は目皿板60の上に乗るが、熱風により上昇が繰り返される。
【0023】
プラスチック粉体は流動層の中に入り、浮遊滞留して熱風と流動によりさらに水分が取り除かれる。
流動層は80°Cの熱風と同時に攪拌羽根59により攪拌されるため、この攪拌の衝撃により湿って固まったプラスチック粉体のダマは解砕され粉体の粒子の分散を助長するとともに流動がさらに活発になる。この流動層乾燥部70でさらに水分が取り除かれたプラスチック粉体69は排出管67より容器68に導かれ収容される。このような構成により水分含有率30%のプラスチック粉体を0.5%〜1.0%へ容易に実現することができる。
【0024】
図10は本発明による粉体乾燥装置のさらに他の実施の形態を示す概略図で、円筒の上部を省略しその一部を破断して示したものである。
この実施の形態は流動層乾燥部71に目皿板を設けることなく、熱風供給管78から150°Cの熱風を流動層乾燥部71の下部から供給する例である。フィルタ75を内蔵する円筒本体74の構成は図9の円筒本体31と同じ構成である。
流動層乾燥部71は円筒形状部71aおよび該円筒形状部71aに繋がる円錐形状部71bより構成されている。流動層乾燥部71の円筒形状部71aが円筒本体74下部の円錐台形状部74aに接続されている。流動層乾燥部71には流動層乾燥部71を加熱する加熱室77が周設されており、熱風を導入する管75が加熱室77下部に接続され、さらに熱風を排出する管76が加熱室77上部に接続されている。例えば管75に180°Cの熱風が送られ、管76から150°Cの熱風が排出される。
【0025】
熱風供給管78から供給される熱風は流動層乾燥部71の下部より上部に向かって吹き上がり、下降してくる粉体に対し流動層を形成し、流動層形成によって粉体に含まれる水分がさらに取り除かれ乾燥する。流動層の粉体は排出管72を経由して容器73に導かれる。
【0026】
つぎにこの流動層乾燥部の処理能力について具体的な数値を用いて説明する。
流動層乾燥部71の直径は250mmφで、その断面積は0.049m2 、熱風供給管78の直径は43mmφで、その断面積は0.00145m2 とする。熱風供給管78に送り込まれる熱風の温度は150°Cとする。
1分当たりのガス(流体)の容積は1Nm3 /minとすると、150°Cの熱風を供給することにより1×(273+150)/273=1.55m3 /minとなる。
従って熱風供給管78に供給される熱風の速度はv=1.55/(60×0.00145)=17.8m/secとなる。
流動層の筒内平均風速はV=1.55/(60×0.049)=0.52m/secとなる。流動層乾燥部の寸法は直径が250mmφ×250mmHであるので、流動層の容積は0.049m2 ×250mm=12.25mm3 ≒12lとなる。
従って粉体が1時間あたり30kg(60l)供給されると、粉体滞留時間T=12(l)/60(l/H)=0.2(H)=12(分)となる。
流動層に滞留する時間は12分となり、従来の気流乾燥機などの滞留時間に比べて、非常に長く滞留し低水分まで乾燥できる。
【0027】
以上の実施の形態は、フィルタとしてプリーツフィルタを用いる例を説明したが、形状に対しフィルタ面の面積を実質的に大きくする機能のフィルタであるならば、プリーツフィルタ以外のフィルタを用いてもよい。フィルタを4個,60個設けた例を説明したが、フィルタの数はこのような数に限ることなく多数のフィルタを用いても同様な効果を得ることができる。また、フィルタ制御装置として各列に配置されたプリーツフィルタに対しブロー管を8個配置し、各ブロー管に設けた小孔により圧縮空気を噴射する例を説明したが、ブロー管の配置構造はプリーツフィルタの配置に依存するためブロー管の数および配置方向はこの限りではなくとも実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
工業の原料に用いる粉体や食料加工の分野に利用できる。具体例としては、米粉やプラスチックなどの粉体の水分を除去する粉体乾燥装置である。
【符号の説明】
【0029】
1,31,74 円筒本体
1A 排気室
1B 乾燥室
1C 分離壁
2,75 フィルタ
3,33 回転滞留リング
4,5 接線入射ノズル群
11,34 被乾燥粉体供給部
12 フィルタ制御装置
14 熱風供給源
15 取出手段
15A 排出バルブ
15B 乾燥済粉体受容器
16 冷気源
17 吸引排気装置
20 プリーツフィルタ
21 乾燥済粉体誘導羽根
56,171 吸引ブロワ
57 送風ブロワ
58 熱源
59 攪拌羽根
60 目皿板
61 モータ
62,78 熱風供給管
67,72 排出管
68,73,152 容器
69 プラスチック粉体
70,71 流動層乾燥部
75,76 管
77 加熱室
103,113 モータ
111 プラスチック粉
114 スクリューコンベア
124−1〜124−8 ブロー管
126 ブロー管受け
127 ダイヤフラム弁
128 パイロット電磁弁
129 エアヘッダパイプ
151 排出バルブ
153 乾燥済粉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から排気室,分離壁,乾燥室を有する円筒本体と、
前記排気室に上端開口が連通している複数本のフィルタと、
前記乾燥室の上側空間に水平接線方向に被乾燥粉体を供給する粉体供給部と、
前記乾燥室の内壁水平接線方向に開く多数段に配置される熱風接線入射ノズル群と、
前記ノズル群に熱風を供給する熱風供給源と、
前記排気室を介して乾燥室内の空気を吸引排気することにより前記乾燥室に複数の回転滞留リングを形成する吸引排気手段と、
前記フィルタに高圧空気パルスを供給するフィルタ制御手段と、
前記回転滞留リング中で浮遊回転中に除湿乾燥された粉体を乾燥室下端から取り出す取出手段と、
からなる粉体乾燥装置。
【請求項2】
上方から排気室,分離壁,乾燥室を有する円筒本体と、
前記排気室に上端開口が連通している複数本のフィルタと、
前記乾燥室の上側空間に水平接線方向に被乾燥粉体を供給する粉体供給部と、
前記乾燥室の内壁水平接線方向に開く多数段に配置される熱風接線入射ノズル群と、
前記ノズル群に熱風を供給する熱風供給源と、
前記排気室を介して乾燥室内の空気を吸引排気することにより前記乾燥室に複数の回転滞留リングを形成する吸引排気手段と、
前記フィルタに高圧空気パルスを供給するフィルタ制御手段と、
前記円筒本体の下部に設置され、前記円筒本体から下降する粉体を吹き上げ流動させて乾燥させるために熱風を上に向かって供給する流動層乾燥部と、
該流動層乾燥部で流動し乾燥された粉体を取り出す取出手段と、
からなる粉体乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−251740(P2012−251740A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125461(P2011−125461)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(592096188)株式会社アコー (3)
【Fターム(参考)】