説明

粉体処理装置および粉体の製造方法

【課題】 投入から回収までの工程において粉体の酸化を抑制できるようにする。
【解決手段】 粉体処理装置は、粉体を粉砕および分散する粉体処理部1と、粉体処理部1に供給する粉体を一時格納する格納部2と、粉体処理部1および格納部2を真空引きする真空吸引手段6と、真空吸引手段6により真空引きされた粉体処理部1および格納部2にガスを供給するガス供給手段5と、粉体処理部1に対して回収手段4を連結するための回収手段連結部3とを備える。格納部2に粉体を収納して真空ガス置換した後、格納部2から粉体を真空ガス置換された粉体処理部1に移す。粉体処理部1にて粉体を粉砕および分散した後、回収手段連結部3を介して粉体処理部1から回収手段4に移す。これにより、粉体処理部1内の残留酸素濃度を低減することができ、且つ、酸化性雰囲気に粉体を曝すことなく回収できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体の粉砕および分散等を行う粉体処理装置および粉体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミクロンオーダまたはサブミクロンオーダの微細な粒子は、顔料、セラミック、磁性材料、電極材料等の分野で広く用いられている。このような微細な粒子を製造する粉体処理装置の1つとして、原料をメディア(ボール)とともに攪拌棒により粉砕・分散するメディア攪拌型の装置がある。
【0003】
図8は、従来の粉体処理装置の構成を示す模式図である。図8に示すように、粉体処理装置は、所謂アトライタ(登録商標)であって、処理タンク101と、アジテータ102とを備えている。アジテータ102は、攪拌棒(アジテータアーム)103と、この攪拌棒103を回転させるための回転軸(アジテータシャフト)104とを備える。また、処理タンク101の上面にはフランジ(図示せず)が設けられ、底面には排出弁105が設けられている。
【0004】
また、この粉体処理装置は、処理タンク101内を大気からプロセスガスへ置換可能に構成され、そのガス置換方式としては、対流置換方式または加圧置換方式が用いられている。ここで、対流置換方式とは、プロセスガスの出口を開放し入口からプロセスガスを流入するガス置換方式であり、加圧置換方式とは、タンクを密閉しプロセスガスを流入してタンク内を加圧し、開放する作業を繰り返すガス置換方式である。また、酸化し易い粉体を処理する場合には、プロセスガスとしては不活性ガスを用いることが好ましいとされている。
【0005】
上述の構成を有する粉体処理装置では以下のようにして粉体が製造される。まず、処理タンク101の上部に備えられたフランジ(図示せず)を大気開放して粉体を投入する。そして、アジテータ102により微粉砕、分散、ボールミリング(メカニカルアロイング、メカニカルミリング)等の処理を行った後、処理タンク101の下部に備えられた排出弁105を開いて大気中で粉体を回収する(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−89802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の構成を有する粉体処理装置はガス置換効率が悪く、残留酸素濃度を低減することが困難であり、残留酸素によって粉体が悪影響を受け、所望とする粉体の物性が得られないことがある。また、回収時には、粉体が酸化性雰囲気に曝されてしまうので、粉体の酸化反応が進み、粉体特性が劣化してしまうこともある。
【0008】
したがって、この発明の目的は、投入から回収までの工程における粉体の酸化を抑制することができる粉体処理装置および粉体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、粉体を粉砕および分散する粉体処理部と、
粉体処理部に供給する粉体を一時格納する格納部と、
粉体処理部および格納部を真空引きする真空吸引手段と、
真空吸引手段により真空引きされた粉体処理部および格納部にガスを供給するガス供給手段と、
粉体処理部に対して回収手段を連結するための回収手段連結部と
を備えることを特徴とする粉体処理装置。
【0010】
請求項1記載の発明では、格納部に粉体を格納し、真空吸引手段およびガス供給手段により格納部を真空ガス置換した後、格納部から真空吸引手段およびガス供給手段により真空ガス置換された粉体処理部に粉体を移すことができる。また、粉体処理部にて処理された粉体を、回収手段連結部を介して粉体処理部から回収手段に移すことができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、粉体処理部は、
粉体を収納する処理タンクと、
処理タンク内に投入された粉体を粉砕および分散する複数の攪拌棒と、
攪拌棒を駆動するための駆動手段と
を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、複数の攪拌棒のうち、処理タンクの最下部に設けられた攪拌棒が、掻き上げ型の攪拌棒であることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、処理タンクおよび駆動手段は冷却可能に構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、粉体が格納された格納部を真空ガス置換する工程と、
格納部から真空ガス置換された粉体処理部に粉体を移す工程と、
粉体処理部内にガスを導入しながら格納部から移された粉体を粉砕および分散する工程と、
回収手段連結部を介して粉体処理部に連結された回収手段に粉体を移す工程と
を備えることを特徴とする粉体の製造方法である。
【0015】
請求項5記載の発明では、粉体投入の際に粉体処理部へ大気が流入することを防止できる。また、粉体処理部にて処理された粉体を大気に触れさせることなく回収手段に移すことができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、粉体処理部に粉体を移す工程前に、粉体処理部を真空ガス置換するとともに、回収手段連結部を介して回収手段を真空ガス置換する工程をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項5記載の発明において、粉体を粉砕および分散する工程では、処理タンクの最下部に備えられた掻き上げ型の攪拌棒によりメディアを掻き上げながら粉体を粉砕および分散することを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項5記載の発明において、粉体を粉砕および分散する工程では、処理タンク内の圧力が一定となるようにガスを供給しながら粉体を粉砕および分散することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、この発明によれば、格納部に粉体を格納し、真空吸引手段およびガス供給手段により格納部を真空ガス置換した後、格納部から真空吸引手段およびガス供給手段により真空ガス置換された粉体処理部に粉体を移すことができるので、粉体処理部への大気の流入を防ぐとともに、粉体処理部の残留酸素濃度を低減できる。また、粉体処理部にて処理された粉体を、回収手段連結部を介して粉体処理部から回収手段に移すことができるので、酸化性雰囲気に粉体を曝すことなく回収できる。よって、投入から回収までの工程における粉体の酸化を抑制することができる。すなわち、酸化による粉体の特性劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0021】
(1)粉体処理装置の構成
図1は、この発明の一実施形態による粉体処理装置の模式図である。図1に示すように、この粉体処理装置は、粉体を粉砕および分散等する粉体処理部1と、粉体処理部1に供給する粉体を一時格納するバッファータンク(格納部)2と、回収カートリッジ4を粉体処理部1に連結するためのカートリッジ連結部3と、粉体処理部1およびバッファータンク2にプロセスガスを供給するガス供給部(ガス供給手段)5と、粉体処理部1およびバッファータンク2を真空引きする真空ポンプ(真空吸引手段)6とを備える。この粉体処理装置は、酸化性粉体等を処理するために好適なものである。
【0022】
なお、粉体処理装置は、この粉体処理装置を制御するための制御盤(図示せず)に接続されている。また、この制御盤は、粉体処理装置の近くに設けられた現場操作盤(図示せず)に接続され、作業者は現場操作盤を適宜操作することにより、制御盤を介して粉体処理装置を操作できる。具体的には、現場操作盤には、粉投入ボタン、ロック解除ボタン、ロックボタン、ガス置換ボタン、粉移動ボタン、粉体処理スタートボタンなどの操作ボタンが設けられており、これらのボタンを押すことによって粉体処理装置を適宜操作できる。また、図示を省略するが、粉体処理装置の近くには、投入部22および回収カートリッジ4の付近に飛び散った粉体をダクト吸引する集塵機が設けられている。
【0023】
粉体処理部1の側面上部にはバッファータンク2が連結され、バッファータンク2から粉体処理部1に粉体が移動可能に構成されている。また、バッファータンク2と粉体処理部1とは連通管23により接続され、この連通管23には連通弁23aが設けられている。この連通弁23aによって排気流量およびガス導入量が調整される。また、粉体処理部1の底面にはカートリッジ連結部(回収手段連結部)3が設けられ、このカートリッジ連結部3を介して粉体処理部1と回収カートリッジ(回収手段)4とが連結される。
【0024】
粉体処理部1は排気管を介して排ガスクリーナ7に接続されている。この排気管には、例えば電磁バルブ等のバルブが設けられ、このバルブにより排気流量が調整される。粉体処理部1は排気管を介して真空ポンプ6に接続されている。この排気管には、例えば電磁バルブ等のバルブが設けられ、このバルブにより排気流量が調整される。粉体処理部1は導入管を介してガス供給部5に接続されている。この導入管には、例えば電磁バルブ等のバルブが設けられ、このバルブによりガス導入量が調整される。
【0025】
粉体処理部1は、粉体を収納する処理タンク11と、処理タンク11に収納された粉体を粉砕および分散等するアジテータ12とを備える。処理タンク11は中空円柱状を有し、この処理タンク11の側面および底面を覆うようにして水冷ジャケット15が設けられている。処理タンク11内には、粉体の粉砕および分散等を行うためのメディア(ボール)が予め入れられている。このメディアの大きさおよび材質は、所望とする粉体に応じて適宜選択され、例えば鋼球が用いられる。
【0026】
アジテータ12は、処理タンク11の中央に備えられ、その回転により処理タンク11内に供給された粉体を粉砕および分散等する。具体的には、アジテータ12は、回転軸(アジテータシャフト)13と、回転軸13を回転するモータ(図示省略)と、回転軸13と直交するように設けられた攪拌棒(アジテータアーム)14とを備える。この回転軸13およびモータが、アジテータ12を駆動するための駆動手段を構成する。
【0027】
処理タンク11の最下部に設けられる攪拌棒14としては、例えば掻き上げ型の攪拌棒
(掻き上げアーム)、丸形の攪拌棒(以下、丸アーム)を用いることができ、粉体の拡散効率を高めることを考慮すると、掻き上げアームを用いることが好ましい。掻き上げアームは、タンク底面にあるメディアを掻き上げ可能な形状を有し、例えば、直角三角形等の三角形状の断面を有する。このような形状を有する掻き上げアームを用いることにより、処理タンク11の底にあるメディアを掻き上げることができ、処理タンク11の底の滞留を少なくし、メディアと粉体との攪拌効率を高めることができる。
【0028】
但し、掻き上げアームを使用する場合には、タンク底面と掻き上げアームとの隙間が大きすぎると、その隙間にメディアが噛み込まれてしまい、隙間が小さすぎるとタンク底面と掻き上げアームとが接触してしまう。この点を考慮すると、タンク底面と掻き上げアームとの距離を、1.5mm〜2mmの範囲に高精度に維持することが好ましい。
【0029】
図2は、処理タンク11の最下部に備えられた掻き上げアーム14aの断面図である。図2において、矢印aは掻き上げアーム14aの回転方向を示す。掻き上げアーム14aが三角形状の断面を有する場合には、その三角形の一辺がタンク底面11aと平行となり、回転方向aの側となる辺が傾斜することが好ましい。
【0030】
また、掻き上げアーム14aとタンク底面11aとの間の幅は、掻き上げアーム14aおよびタンク底面11aの間でのメディア19の噛み込みと、掻き上げアーム14aとタンク底面11aとの接触とを考慮して選ぶことが好ましく、例えば1.5〜2mmの範囲から選ばれ、具体的には2mmに選ばれる。
【0031】
図3は、処理タンク11の最下部に備えられた丸アーム14bの断面図である。図3において、矢印bは丸アーム14bの回転方向を示す。丸アーム14bはタンク底面11aより例えば25mm程度上方に位置するため、メディア19の噛み込みと、丸アーム14bとタンク底面11aとの接触が発生しない。したがって、攪拌棒14として丸アーム14bを用いた場合には、粉体処理装置の稼働率を向上できる。
【0032】
上述したように、掻き上げアーム14aを用いた場合には、丸アーム14bを用いた場合に比べて粉体の攪拌効率を高くできるという利点を得ることができるのに対して、丸アーム14bを用いた場合には、掻き上げアーム14aを用いた場合に比べて粉体処理装置の稼働率を向上できるという利点を得ることができる。
【0033】
したがって、稼働率および粉体品質のうちのどちらを優先させるかに応じて、掻き上げアーム14aおよび丸アーム14bを使い分けできるように、掻き上げアーム14aおよび丸アーム14bの両方を取付可能な構造とすることが好ましい。
【0034】
処理タンク11の容量を従来よりも大きくした場合にも、タンク底面と攪拌棒14との間の隙間を精度良く保持できるようにするためには、以下の点を考慮して粉体処理部1を構成することが好ましい。なお、この構成は、本発明者が大型化を抑制している原因を一つ一つ明確にして鋭意検討を行った結果、想起するに至ったものである。
【0035】
攪拌棒14の長さを長くすると攪拌棒14自体の撓みが大きくなるため(断面形状が同じ場合、長さの3乗に比例して撓みは増大する)、攪拌棒14を取り付けている回転軸13の太さを太くし攪拌棒14の長さを短くすることが好ましい。
【0036】
また、モータパワーの増大およびメディア投入量の増加に伴って、攪拌棒14にかかる荷重が増加し撓みが大きくなるため、攪拌棒14の断面形状を見直し、攪拌棒14にかかる荷重の増加に見合う断面形状に選定することが好ましい。
【0037】
さらに、発生熱量が大きくなり処理タンク11およびアジテータ12の熱膨張による変形が大きくなるため、処理タンク11の壁面、底面および回転軸13を水冷化可能な構成として熱膨張を抑制することが好ましい。
【0038】
さらにまた、処理タンク11の深さが深くなることによってタンク底面の高精度加工が困難になるため、処理タンク11を2分割構造として底面までの深さを低減してタンク底面の加工精度(平面度)を確保することが好ましい。
【0039】
上述の点を考慮した構成とすることにより、処理タンク11を大型化した場合にも、攪拌棒14とタンク底面との距離を精度良く保持することができる。よって、処理タンク11を大型化した場合にも、タンク底面との距離を精度良く保持することが必要とされる掻き上げアームを攪拌棒14として使用できる。例えば、従来の粉体処理装置では、大型化に伴い掻き揚げアームの隙間維持が困難となるため、掻き揚げアームを使用できるタンク容量は150リットルまでが限界とされていたが、上述の点を考慮した構成とすることで、タンク容量が450リットルの場合にも掻き揚げアームを使用できるようになる。
【0040】
また、ランニングコストの削減の点からすると、処理タンク11を上下2分割可能な構造とすることが好ましい。例えば、破線18により示す位置において処理タンク11を上部と下部とに2分割可能な構造とする。処理タンク11は消耗品であり磨耗量が一定レベルまで達した後には、処理タンク11を交換することが必要となるが、処理タンク11を2分割可能な構造にすることで、摩耗量が著しい処理タンク11の下部のみを交換することができる。これに対して、分割無しの一体構造を有する従来の処理タンクでは、タンク底部のみが磨耗している場合であっても、処理タンク全てを交換しなければならなくなってしまう。
【0041】
処理タンク11を水平移動する水平移動方式とし、アジテータ12を垂直に吊上げる方式とすることが好ましい。このような方式にすることにより、安全性および作業性を向上できる。これに対して、処理タンク11を傾斜させて攪拌棒14を斜めに引き出して交換する方式では、安全性および作業性が低下してしまう。
【0042】
大型機になるにつれて攪拌棒14の重量も増し、例えばタンク容量が450リットルとなる場合には、攪拌棒14の重量は約500kgとなることがあるが、このように大型化した場合にも、上述の方式を用いることで安全性および作業性を確保できる。
【0043】
処理タンク11の底面には、処理タンク11から回収カートリッジ4に粉体を供給するための開口が設けられており、この開口はメディアの落下を防止するための網により覆われている。また、開口には開閉可能に構成された排出弁17が設けられている。また、処理タンク11の側面下部には、開閉可能に構成されたメディア排出弁16が設けられ、このメディア排出弁16を介してメディアが排出される。
【0044】
バッファータンク2は、粉体を投入するための投入部22と、バッファータンク2から粉体処理部1への粉体の投入を制御するためのバッファータンクバルブと称するバルブ21を備える。投入部22は、バッファータンク2の上部に備えられ、開閉可能に構成されている。また、投入部22には、この投入部22が開かないようにロックするためのメカロック機構が設けられている。図1では、バッファータンク2に設けられた投入部22が開かれ、漏斗24が設置された状態が示されている。
【0045】
図4Aは、ロック状態におけるバッファータンク2を示す模式図である。図4Bは、ロック解除状態におけるバッファータンク2を示す模式図である。図4Aおよび図4Bに示すように、投入部22には、蓋22aと蓋受け22bとが設けられている。
【0046】
ロック状態では、図4Aに示すように、メカロック機構25により、重ね合わされた蓋22aと蓋受け22bとの両端が挟み合わされる。ロック解除状態では、図4Bに示すように、蓋22aと蓋受け22bとの両端を挟み合わせていたメカロック機構が解除される。
【0047】
バルブ21は、バッファータンク2の下部に備えられ、このバルブ21を開くことによりバッファータンク2から処理タンク11に粉体が投入される。このバルブ21は真空対応バルブであって、例えば電磁バルブである。
【0048】
真空ポンプ6は、処理タンク11を真空引きする。また、真空ポンプ6は、処理タンク11を介してバッファータンク2および回収カートリッジ4を真空引きする。真空ポンプ6としては、例えばロータリポンプを使用できる。
【0049】
カートリッジ連結部3は、回収カートリッジ4を着脱可能に構成されている。また、回収カートリッジ4には排出弁下部バルブと称するバルブ31が設けられて、このバルブ31によって粉体処理部1と回収カートリッジとの間の開閉が行われる。このバルブ31は真空対応バルブであって、例えば電磁バルブである。
【0050】
回収カートリッジ4は、処理タンク11にて粉砕および分散等された粉体を回収するためのものであり、カートリッジ連結部3に対して着脱可能に構成されている。回収カートリッジ4の上部には、回収カートリッジバタ弁とするバルブ41が設けられ、このバルブ41を粉体回収後に閉じることにより回収された粉体が大気に接触し、酸化することを防止することができる。バルブ41としては、例えば手動バルブを使用できる。
【0051】
ガス供給部5は、導入管を介して処理タンク11にプロセスガスを供給する。また、ガス供給部5は、処理タンク11を介してバッファータンク2および回収カートリッジ4にプロセスガスを供給する。このプロセスガスとしては、例えば、窒素ガスまたはArガス若しくはKrガス等の不活性ガスを使用でき、好ましくは不活性ガスを使用できる。不活性ガスを使用することにより、粉体とプロセスガスとの反応を抑え高品質な粉体を得ることができる。
【0052】
図5および図6は、カートリッジ連結部3と回収カートリッジ4との外観を示す側面図である。図5に示すように、カートリッジ連結部3には、カバーロックシリンダ32、カバー開閉確認33、バルブ閉確認34、バルブ開確認35、カバー36およびクランプ有無確認37が備えられている。また、回収カートリッジ4は台車51上に載せられており、この台車51の位置は、台車横方向位置決めローラ52によって規定される。
【0053】
(2)粉体処理装置の動作
次に、図7を参照しながら、この発明の一実施形態による粉体処理装置の動作の一例について説明する。図7は、この発明の一実施形態による粉体処理装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0054】
<回収カートリッジ取付工程>
まず、回収カートリッジ4を台車51に載せて、台車51を粉体処理装置の下方に搬送して、台車51を位置決めする。次に、回収カートリッジ4を粉体処理装置の排出口まで上昇させ、カバーロックシリンダ32を解除してカバー36を開く。その後、クランプにて粉体処理装置と回収カートリッジ4とを接続し、カバー36を閉じる。カバーロックシリンダ32をロックして、バルブ41を開ける。
【0055】
<粉体投入工程>
まず、図示を省略した現場操作盤に備えられた粉投入ボタンを押す。次に、ロック解除ボタンを押す。これにより、メカロック機構25が解除される。そして、蓋22aを開けて漏斗24を投入部22に配置して、この漏斗24を介してバッファータンク2内に粉体を導き入れる。ここで、粉体は、例えば、スズ(Sn)および珪素(Si)からなる金属粉末などである。その後、粉体を入れ終わったら蓋22aを閉じてロックボタンを押す。これにより、メカロック機構25により投入部22がロックされる。
【0056】
<ガス置換工程>
まず、排出弁17、バルブ31、連通弁23aを開ける。なお、バルブ41は、上述の回収カートリッジ取付工程にてすでに開かれている。そして、ガス置換ボタンを押して、バッファータンク2、処理タンク11および回収カートリッジ4を真空ガス置換する。これにより、バッファータンク2、処理タンク11および回収カートリッジ4内の大気がArからなる不活性ガスに置換される。真空ガス置換の際には、バッファータンク2、処理タンク11および回収カートリッジ4内を1000Pa以下まで真空引きすることが好ましい。1000Pa以下まで真空引きすることによって、1回のガス置換で残留酸素濃度を0.2%以下まで低減することができる。その後、排出弁17と、この排出弁17の下方に設けられたバルブ31とを閉める。
【0057】
<粉体移動工程>
次に、粉移動ボタンを押して、バッファータンク2の下部に設けられたバルブ21を開ける。これにより、バッファータンク2から処理タンク11へ粉体が移動する。
【0058】
<粉体処理工程>
次に、粉体処理スタートボタンを押す。これにより、アジテータ12が回転し粉体(ボールミリング)処理を開始する。設定時間経過後、アジテータ12の回転を停止し、設定時間冷却する。なお、粉体処理の間、処理タンク11内の内圧が常に一定となるようにプロセスガスを供給することが好ましい。このようにすることで、内圧上昇により粉体が大気へ放出される危険性を回避することができる。また、粉体処理終了後に温度が降下し、内圧が負圧となった場合にも、処理タンク11内に大気が吸い込まれることを防止できる。すなわち、酸化による粉体の特性低下を抑えることができる。
【0059】
<製品回収工程>
次に、製品回収ボタンを押す。これにより、排出弁17と、この排出弁17の下方に設けられたバルブ31が開き、アジテータ12が回転する。設定時間経過後、アジテータ12の回転を停止する。排出弁17とバルブ31とを閉じた後、設定時間冷却する。
【0060】
<回収カートリッジ取り外し工程>
次に、バルブ41を閉めて、カバーロックシリンダ32を解除する。その後、カバー36を開けてクランプを外した後、粉体処理装置と回収カートリッジ4とを切り離す。そして、カバー36を閉じ、カバーロックシリンダ32をロックし、回収カートリッジ4を下降させる。その後、台車51を移動して回収カートリッジ4を次工程へ搬送する。
【0061】
この発明の一実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
大気中から投入された粉体を一度バッファータンク2で受けてバッファータンク2をガス置換した後、処理タンク11内に粉を移動させるので、処理タンク11内への大気の流入を防止することができる。また、カートリッジ連結部3を介して粉体処理部1から回収カートリッジ4に粉体を移動できるので、粉体投入から回収まで大気に一切触れることなく処理することができる。また、粉体の投入部分および回収部分に各種センサおよび、安全機構を設けているので、粉体の大気放出および処理タンク11内への大気流入を防ぐことができる。
【0062】
また、従来の粉体処理装置では、処理タンクの粉体回収部は大気開放のため、回収時には、粉体は大気に暴露される。そのため粉塵爆発や火災の危険性が有る。また、投入する粉体は粒径が比較的大きく粉塵爆発等の危険性が少ないときでも、処理後の粉体は殆ど多くの場合、微粒子化されているため粉塵爆発の危険性は高くなる。また、粉体の投入および回収時に、大気が処理タンク内に入り込むため処理タンク内においても同様の危険性がある。これに対して、この一実施形態による粉体処理装置では、粉体を大気に暴露することなく、回収カートリッジ4内に回収することができる。また、粉体の投入および回収時に、処理タンク11内に大気が流入することもない。すなわち、粉体の投入および回収時における粉塵爆発や火災の危険性を無くすことができる。
【0063】
また、従来の粉体処理装置では、回収時には、粉体が酸化性雰囲気に曝されてしまうので、粉体の酸化反応が進み、粉体の特性が劣化してしまうことがある。これに対して、この一実施形態による粉体処理装置では、酸化性雰囲気に粉体を曝すことなく、回収できるので、粉体の特性劣化を抑制することができる。
【0064】
また、従来の粉体処理装置では、ガス置換方式として対流置換方式または加圧置換方式を使用しているため、置換効率が低くあまり酸素濃度を下げることができないのに対して(例えば、1.3気圧の加圧置換を5回繰り返しても残留酸素濃度は6%程度)、この一実施形態による粉体処理装置では、真空ガス置換方式を使用しているため、処理雰囲気の残留酸素濃度を極めて低くすることができ、処理中における粉体の酸化を抑制することができる。すなわち、粉体の特性を向上することができる。
【0065】
また、従来の粉体処理装置では、処理タンクが密閉構造のため温度上昇により内圧が上昇して粉体が大気へ放出される危険性や、処理終了後は温度降下によって大気を吸い込む可能性(粉体の酸化の問題)がある。また、吸い込んだ大気が爆発下限界である場合には、爆発の危険性がある。これに対して、この一実施形態による粉体処理装置では、処理中の圧力を一定に保つことができるので、粉の大気放出を防ぐことができ、且つ処理後の大気流入による粉体の酸化を防ぐことができる。
【0066】
また、従来の粉体処理装置では、最下部の攪拌棒は丸アーム仕様のみのため攪拌効率の高い掻揚げアームを使用できない。また、丸アームはタンク底部に粉が滞留する可能性があり、均一な粉体処理の弊害となる。特に付着性の高い粉に関してはその傾向が顕著に現れると考えられる。これに対して、この一実施形態による粉体処理装置では、最下部の攪拌棒14を丸アームおよび掻き上げアームの何れかを選択的に使用可能な構成としたので、最下部の攪拌棒14として攪拌効率の高い掻き上げアームを使用できる。
【0067】
また、従来の粉体処理装置では、処理タンク底面と攪拌棒との間の隙間を精度良く保持できないため、処理タンクを大型化した場合には、最下部の攪拌棒として掻き上げアームを備えることは困難である。これに対して、この一実施形態による粉体処理装置では、タンク底面と攪拌棒14との間の隙間を精度良保持できるため、処理タンクを大型化した場合にも攪拌効率の高い掻揚げアームを使用でき、粉体の均一な処理が可能となる。また処理時間も短縮化できる。
【0068】
また、従来の粉体処理装置では、アジテータ交換を処理タンクを斜めに傾斜させて行うため安全性および作業性が低いのに対して、この一実施形態による粉体処理装置では、処理タンク11を水平移動方式とするため安全性および作業性を向上できる。
【0069】
また、従来の粉体処理装置では、処理タンクは一体物であるため、処理タンクが磨耗して交換が必要になった場合、処理タンク全体を交換する必要があり、磨耗部分のみの交換ができないのに対して、この一実施形態による粉体処理装置では、処理タンク11を上下2分割構造にしているので、摩耗の著しい下側の部分のみを交換することができる。したがって、タンク磨耗時の交換コストを削減することができる。
【0070】
以上、この発明の一実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0071】
例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【0072】
また、上述の一実施形態では、処理タンク内に粉体を格納し、攪拌棒により粉体を攪拌および分散等する粉体処理装置に対してこの発明を適用する例について示したが、これ以外の粉体処理装置に対してもこの発明を適用するようにしてもよい。
【0073】
また、上述の一実施形態では、粉体をバッファータンク2に一時格納し、バッファータンク2内を真空ガス置換し、バッファータンク2から粉体処理部1に粉体を移す場合を例として示したが、粉体をバッファータンク2に一時格納し、バッファータンク2内を真空引きし、バッファータンク2から粉体処理部1に粉体を移すことができる。
【0074】
また、上述の一実施形態では、真空ガス置換を1回行う場合を例として示したが、真空ガス置換を2回以上繰り返すようにしてもよい。このように真空ガス置換を繰り返すことにより、更なる酸素濃度の低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明の一実施形態による粉体処理装置の模式図である。
【図2】処理タンクの最下部に備えられた掻き上げアームの断面図である。
【図3】処理タンクの最下部に備えられた丸アームの断面図である。
【図4】図4Aは、ロック状態におけるバッファータンクを示す模式図、図4Bは、ロック解除状態におけるバッファータンクを示す模式図である。
【図5】カートリッジ連結部と回収カートリッジとの外観を示す側面図である。
【図6】カートリッジ連結部と回収カートリッジとの外観を示す側面図である。
【図7】この発明の一実施形態による粉体処理装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図8】従来の粉体処理装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1・・・粉体処理部、2・・・バッファータンク、3・・・カートリッジ連結部、4・・・回収カートリッジ、5・・・ガス供給部、6・・・真空ポンプ、7・・・排ガスクリーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を粉砕および分散する粉体処理部と、
上記粉体処理部に供給する粉体を一時格納する格納部と、
上記粉体処理部および格納部を真空引きする真空吸引手段と、
上記真空吸引手段により真空引きされた上記粉体処理部および格納部にガスを供給するガス供給手段と、
上記粉体処理部に対して回収手段を連結するための回収手段連結部と
を備えることを特徴とする粉体処理装置。
【請求項2】
上記粉体処理部は、
粉体を収納する処理タンクと、
上記処理タンク内に投入された粉体を粉砕および分散する複数の攪拌棒と、
上記攪拌棒を駆動するための駆動手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の粉体処理装置。
【請求項3】
上記複数の攪拌棒のうち、上記処理タンクの最下部に設けられた攪拌棒が、掻き上げ型の攪拌棒であることを特徴とする請求項2記載の粉体処理装置。
【請求項4】
上記処理タンクおよび駆動手段は冷却可能に構成されていることを特徴とする請求項2記載の粉体処理装置。
【請求項5】
粉体が格納された格納部を真空ガス置換する工程と、
上記格納部から真空ガス置換された粉体処理部に粉体を移す工程と、
上記格納部から上記粉体処理部内に移された粉体を粉砕および分散する工程と、
回収手段連結部を介して上記粉体処理部に連結された回収手段に粉体を移す工程と
を備えることを特徴とする粉体の製造方法。
【請求項6】
上記粉体処理部に粉体を移す工程前に、上記粉体処理部を真空ガス置換するとともに、上記回収手段連結部を介して上記回収手段を真空ガス置換する工程をさらに備えることを特徴とする請求項5記載の粉体の製造方法。
【請求項7】
上記粉体を粉砕および分散する工程では、上記処理タンクの最下部に備えられた掻き上げ型の攪拌棒によりメディアを掻き上げながら粉体を粉砕および分散することを特徴とする請求項5記載の粉体の製造方法。
【請求項8】
上記粉体を粉砕および分散する工程では、処理タンク内の圧力が一定となるようにガスを供給しながら粉体を粉砕および分散することを特徴とする請求項5記載の粉体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−55691(P2006−55691A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237261(P2004−237261)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】