説明

粉体塗料およびそれを用いる粉体塗装

【課題】 吸着性多孔体を含む、新規な粉体塗料を提供する。
【解決手段】 第1の樹脂を含む第1の粉体塗料粒子と、第2の樹脂を含む第2の粉体塗料粒子と、吸着性多孔体とを含む粉体塗料であって、第1の粉体塗料粒子が、第2の粉体塗料粒子中に、独立した相をなして存在し、吸着性多孔体は、少なくとも第1の粉体塗料粒子中に含まれている粉体塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体塗装に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスや家庭内では、VOC(Volatile Organic Compounds、揮発性有機化合物)を初めとする臭気物を取り除くことが強く要求されるようになってきた。これに伴い、空気清浄機、脱臭剤等が多く使われるようになってきた。また、最近では、竹炭等の脱臭効果のある物質を混合した塗料が、部屋の壁用塗料として用いられるようになってきた。
【0003】
しかしながら、部屋の壁以外の用途、たとえばオフィス内に多く存在する電子機器等については竹炭を含有した塗料の適用は実用化されていない。これは、脱臭効果を発揮させるためには、壁に比べ面積が小さいためであった。また、脱臭効果を大きくするため、塗料に対する竹炭の含有量を増加させた場合には、塗膜の基材に対する接着力の低下や塗膜表面の凹凸が目立つ等不具合が発生する問題がある等のためであった。
【0004】
なお、塗料としては、大きく分けて、有機溶剤型塗料、水性エマルジョン型塗料、粉体塗料の3種類がある。このうち、有機溶剤型塗料、水性エマルジョン型塗料はともに、VOCを含有するが、粉体塗料では溶剤を使用しないため、VOCフリーとなる。このため、粉体塗料が最も環境への負荷が小さい塗料と考えられている。しかしながら、粉体塗料を用いる場合においても、竹炭含有塗料は実用化されていない。
【特許文献1】特開2006−181287(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書に開示された種々の実施形態は、上記問題に鑑み、竹炭に代表される吸着性多孔体を含む、新規な粉体塗料を提供することを目的としている。これらの実施形態の更に他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の樹脂を含む第1の粉体塗料粒子と、第2の樹脂を含む第2の粉体塗料粒子と吸着性多孔体とを含む粉体塗料によって上記課題を達成することができることが見出された。この粉体塗料では、第1の粉体塗料粒子が、第2の粉体塗料粒子中に、独立した相をなして存在し、吸着性多孔体が、少なくとも第1の粉体塗料粒子中に含まれている。
【0007】
この粉体塗料を用いて形成された塗膜は、吸着性多孔体の吸着性にすぐれた塗膜となり得、電子機器筐体等の塗装に好適に適用し得る。
【0008】
更に、この粉体塗料を粉体塗装する場合に、その該加熱処理における加熱温度と加熱時間との少なくともいずれかを調節することにより、吸着性多孔体が当該塗膜中の自由表面側に偏在するようになすことが可能であることが見出された。
【発明の効果】
【0009】
ここに開示した技術により、吸着性多孔体を含む、新規な粉体塗料が提供される。また、吸着性多孔体が塗膜中の自由表面側に偏在する粉体塗装塗膜が提供され得る。また、そのような粉体塗装塗膜を持つ塗装体、たとえば電子機器筐体、が提供され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態を図、表、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、表、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0011】
第1の樹脂を含む第1の粉体塗料粒子と、第2の樹脂を含む第2の粉体塗料粒子とを準備した場合、第1の粉体塗料粒子が第2の粉体塗料粒子中に独立した相をなして存在するようにできることが見出された。しかも、この場合、このようにして得た粉体塗料を粉体塗装に供すると、第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層を塗膜中の自由表面側に形成し得ることが見出された。
【0012】
上記性質は、ある物質が少なくとも前記第1の粉体塗料粒子中に含まれている場合に、その物質が、自由表面側にある第1の粉体塗料粒子中から形成される塗膜層中に存在するようにできると言う効果を生み出す。この「ある物質」として、吸着性多孔体を使用すれば、吸着性多孔体が自由表面側にある第1の粉体塗料粒子中から形成される塗膜層中に存在する塗膜を得ることができる。
【0013】
従って、第1の樹脂を含む第1の粉体塗料粒子と、第2の樹脂を含む第2の粉体塗料粒子と、吸着性多孔体とを含む粉体塗料であって、第1の粉体塗料粒子が、第2の粉体塗料粒子中に、独立した相をなして存在し、吸着性多孔体は、少なくとも第1の粉体塗料粒子中に含まれている粉体塗料から、吸着性多孔体が、塗膜中の自由表面側にある塗膜を得ることができる。
【0014】
このような粉体塗料はこれまで知られていない。また、このような態様における塗膜では、自由表面側にある塗膜中の吸着性多孔体が、外界の物質を吸着する性能(たとえば脱臭性能)を発揮しやすくなるという効果を実現することができる。更に、吸着性多孔体が第1の粉体塗料粒子のみに含まれている場合には、吸着性多孔体が自由表面側に集中することにより、(1)無駄なく、経済的にその性能を発揮しやすくなる、(2)第2の粉体塗料粒子から形成される塗膜層と被塗装面との間における密着力が吸着性多孔体によって妨げられなくなると言った効果を実現することができる。
【0015】
ただし、吸着性多孔体が第2の粉体塗料粒子中に含まれていてもよい場合もある。たとえば、第1の粉体塗料粒子中の吸着性多孔体の濃度が高すぎると表面の凹凸が目立つようになる等の欠点が生じる一方、第2の粉体塗料粒子から形成される塗膜層中の吸着性多孔体もその性能を発揮し得る場合である。上記の効果は、このように何らかの事情で第2の粉体塗料粒子から形成される塗膜層中に吸着性多孔体が含まれる場合でも、程度の差はあれ、発揮されるものと考えられる。
【0016】
本明細書において、「独立した相をなして存在する」とは、任意の一個の第2の粉体塗料粒子を取り出してその断面を目視した場合、第2の粉体塗料粒子の中に第1の粉体塗料粒子が、第2の粉体塗料粒子の領域とは区別できるものとして、複数個(通常多数個)含まれた状態で見出されることを意味する。一個の第2の粉体塗料粒子を「海」にたとえるならば、第1の粉体塗料粒子が「島」として存在する「海島構造」である。この場合の目視には、顕微鏡等の拡大装置の助けを借りる。なお、第1の粉体塗料粒子が独立した相をなしていない状態のものが混在していたとしても、そのことは、「第1の粉体塗料粒子が独立した相をなして存在する」ことと相反するわけではない。また、第2の粉体塗料粒子中に第1の粉体塗料粒子の成分が移行する現象やその逆の現象もあるかも知れないが、それらは「第1の粉体塗料粒子が独立した相をなして存在する」ことと相反するわけではない。
【0017】
もちろん、二個以上の第2の粉体塗料粒子の断面を目視してもよいが、実際に粉体塗料を粉体塗装に供した場合に、第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層が塗膜中の自由表面側に形成されていれば、本態様の効果をあげ得るので、その確認の方が実用的である場合が多い。
【0018】
第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層が塗膜中の自由表面側に形成されているかどうかは、塗装面に垂直な断面を目視して確認することができる。この場合の目視にも、顕微鏡等の拡大装置の助けを借りることも含まれる。また、偏光顕微鏡等の層の区別のし易い器具を使用することもできる。更に、染色等により、層の区別を容易にする処理を行ってもよい。第1の粉体塗料粒子からなる塗膜層は、第2の粉体塗料粒子から形成される塗膜層と接する。この場合、その界面は必ずしも明瞭である必要はなく、二つの塗膜層があると認識できれば十分である。連続した層をなしていない場合もあり得る。
【0019】
上記態様を模式的に図示すると次のようになる。
【0020】
図1は、吸着性多孔体3を含む第1の粉体塗料粒子1が、第2の粉体塗料粒子2中に、独立した相をなして存在する様子を示す、第2の粉体塗料粒子2の模式的断面図である。第2の粉体塗料粒子を海と見れば、第1の粉体塗料粒子がその中に島として浮かんでいる。この図では、吸着性多孔体3も第1の粉体塗料粒子1も球体として示してあるが、それ以外の形状であってもよい。層の境界部分が互いに溶け合った状態であってもよい場合もある。従って、相の境界が不明確である場合もあり得る。
【0021】
図2〜5は、この粉体塗料を被塗装面4上に付着させた後加熱により、第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層が形成されていく様子を模式的に表している。ただし、実際の第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層がこの図通りに形成されていくとは限らない。
【0022】
図2は、加熱初期を表す。この図では、第2の粉体塗料粒子が溶融して塗膜5を形成している。その塗膜5の海の中に第1の粉体塗料粒子1が島として浮かんでいる。
【0023】
その後、第1の粉体塗料粒子が、図3,4のように自由表面6側に移行し、溶融して、図5のように、塗膜9が、第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層7と、その下にある第2の粉体塗料粒子から形成される塗膜層8との積層体として得られる。図3中の矢印は移行の方向を表す。なお、自由表面6側への移行前または移行中に第1の粉体塗料粒子が溶融していてもよい。溶融していない場合の方が移行が速いようである。この観点からは、第1の粉体塗料粒子の溶融温度が、第2の粉体塗料粒子の溶融温度に比べ高いことが好ましい。5℃以上高いと、自由表面6側への移行速度を上げることができ、好ましい場合が多い。この溶融温度は、実際に粉体塗料粒子を加熱して溶解し始める温度等で決めることができる。
【0024】
第1の粉体塗料粒子が自由表面側に移行する理由については定かでないが、いわゆるブリードアウト現象と、第1および第2の粉体塗料粒子と被塗装面との親和性の相違によって決まると推察される。ブリードアウトの観点からは、たとえば溶解度指数等によって示される、第1の粉体塗料粒子と第2の粉体塗料粒子との間の相溶性が小さいほど、すなわち、非相溶性が大きいほど、有利であろうと考えられる。また、第2の粉体塗料粒子が硬化型樹脂を含む場合には、第2の粉体塗料粒子に含まれる硬化型樹脂の硬化が、第1の粉体塗料粒子を自由表面側に移行させる駆動力として働くことも考えられる。なお、この硬化型樹脂の硬化が速すぎる場合には、第1の粉体塗料粒子が、第1の粉体塗料粒子から形成されるべき塗膜層の形成に寄与し得ず、第2の粉体塗料粒子から形成される塗膜層中にトラップされてしまうものも生じ得る。ただし、このような場合であっても上記態様の効果は発揮され得る場合が多い。
【0025】
第1の粉体塗料粒子については、熱硬化型樹脂を使用する場合、自由表面6側への移行前または移行中に第1の粉体塗料粒子が溶融するタイプにおいては、自由表面側に移行し得ない内に、硬化が起こってしまう場合もあり得る。このような場合であっても、第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層が形成されていれば所望の効果を得ることができる場合が多いが、吸着性多孔体の使用効率の点からは、このような現象は少ない方が有利である。
【0026】
上記観点からは、第1の粉体塗料粒子の硬化温度が、第2の粉体塗料粒子の硬化温度に比べ高いことが好ましい。5℃以上高いと、自由表面6側への移行速度を上げることができ、好ましい場合が多い。逆に、5℃以上高くない場合、第1の粉体塗料粒子の硬化と第2の粉体塗料粒子の硬化とがほとんど同時に進行するため、第1の粉体塗料粒子が第2の粉体塗料粒子から押し出されにくくなり、2層構造の塗膜形成が困難になる場合がある。この硬化温度は、たとえば示差熱走査熱量計を使って、実際に粉体塗料粒子を加熱し、5℃/分の昇温速度で得られる発熱ピークの温度として求めることができる。
【0027】
この粉体塗料における第1および第2の粉体塗料粒子としては、上記要件を満たす限り特に制限はなく、公知の粉体塗料の中から適宜選択することができる。
【0028】
ここで、「粉体塗料」は、樹脂、着色剤、帯電制御剤、電気抵抗制御剤、界面活性剤等を含んでなる固体粒子の集合を意味する。使用される樹脂、着色剤、帯電制御剤、電気抵抗制御剤等には特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができる。
【0029】
使用される樹脂は、着色剤をつなぎ止める意味からバインダーと呼ばれる場合もある。使用される樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラニン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等の粉体塗料に通常用いられている樹脂を用いることができる。一つの粉体塗料が複数の樹脂を含んでいてもよい。
【0030】
ポリエステル樹脂は、主にジカルボン酸等の多塩基酸(又はメチルエステル)とジオール等の多価アルコールとのエステル化物である。
【0031】
ジオールとしては、炭素数2〜36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなど);炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);炭素数4〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);上記アルキレングリコールまたは脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(以下AOと略記する)〔エチレンオキサイド(以下EOと略記する)、プロピレンオキサイド(以下POと略記する)、ブチレンオキサイド(以下BOと略記する)など〕付加物(付加モル数1〜120);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)のAO(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2〜30);ポリラクトンジオール(ポリε−カプロラクトンジオールなど);およびポリブタジエンジオールなどが挙げられる。
【0032】
ジオールとしては、上記のヒドロキシル基以外の官能基を有しないジオール以外に、他の官能基を有するジオールを用いてもよい。
【0033】
他の官能基を有するジオールとしては、カルボキシル基を有するジオール等が挙げられる。
【0034】
カルボキシル基を有するジオールとしては、ジアルキロールアルカン酸[C6〜24のもの、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2−ジメチロールブタン酸、2 ,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸など]が挙げられる。
【0035】
3〜8価またはそれ以上のポリオールは架橋構造を導入するのに役立つ。3〜8価またはそれ以上のポリオールとしては、炭素数3〜36の3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(アルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、およびポリグリセリン;糖類およびその誘導体、例えばショ糖、およびメチルグルコシド);多価脂肪族アルコールのAO付加物(付加モル数2〜120);トリスフェノール類(トリスフェノールなど)のAO付加物(付加モル数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど)のAO付加物(付加モル数2〜30);アクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニルモノマーの共重合物など];などが挙げられる。
【0036】
ジカルボン酸としては、炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、デシルコハク酸など)およびアルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸など);炭素数6〜40の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕、炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸など);炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。
【0037】
3〜6価またはそれ以上のポリカルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。
【0038】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、さらには必要によりこれら以外のエチレン性不飽和結合(C=C)含有モノマーなどを(共)重合したものが挙げられ、熱硬化性タイプ、熱可塑性タイプの何れであってもよい。
【0039】
(メタ)アクリル酸の誘導体としては、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリロニトリル類などが挙げられる。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル類としては具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート[ドデシル(メタ)アクリレート]、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、β-メタクリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチル-α-ヒロドキシメチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリルアミド類としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリロニトリル類としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリロニトリル、エチルシアノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
このようなアクリル樹脂には、上記以外の「他のモノマー」が共重合されていてもよく、このような「他のモノマー」としては、具体的には、例えば、スチレン、酢酸ビニル、ビニルトルエン、マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合(C=C)含有モノマー等が挙げられる。
【0044】
エポキシ樹脂としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば任意のものを用いることができ、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ナフタレン型、複素環式、脂環式、各種変性等のエポキシ樹脂またはそこにハロゲンを導入したハロゲン化エポキシ樹脂などが用いられる。
【0045】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(いずれも商品名、シェルケミカル社製)が挙げられ、また適当な鎖延長剤を用いてこれらを鎖延長したものを用いることもできる。
【0046】
なお、上記のその他の樹脂を含め、これらの樹脂は、いずれも所望の温度で溶融状態とするため適宜変性したり、重合度を調節することができ、好ましい場合が多い。重合度の調節にはいわゆるオリゴマーの領域の分子量にすることも含まれる。
【0047】
これらの粉体塗料中の樹脂の主成分が熱硬化性樹脂の場合には、架橋反応を促進するための硬化剤を用いることが好ましい。
【0048】
このような硬化剤としては、例えば、アミン、アミド、ジシアンジアミド、カルボン酸、酸無水物、イソシアネート、ポリスルフィド、酸ジヒドラジド、イミダゾール等の粉体塗料に用いられている公知の硬化剤を、単独でまたは混合して用いることができる。
【0049】
着色剤としては、例えば、二酸化チタンや、ベン柄、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、キナクリドン系赤色顔料等の無機系又は有機系顔料等を挙げることができる。帯電制御剤としては、ニグロシン系の電子供与性染料、その他ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、四級アンモニウム塩、アルキルアミド、キレート、顔料、フッ素処理活性剤、電子受容性の有機錯体、銅フタロシアニンのスルホニルアミンなどが例示できる。電気抵抗制御剤としては、粒状酸化チタン、針状酸化チタン、鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉を例示することができる。
【0050】
第1の樹脂と第2の樹脂の組み合わせは、上記態様の趣旨に反しない限り、任意に選択することができるが、被塗装面との親和性の観点からは、第2の塗装粒子の被塗装面に対する親和性が、第1の塗装粒子の被塗装面に対する親和性より大きくなるように選択することが好ましい。なお、親和性は、ほとんど塗装粒子中の樹脂によって左右されるので、第2の樹脂の被塗装面に対する親和性が、第1の樹脂の被塗装面に対する親和性より大きくなるように選択することが好ましいと言いかえることができる。親和性は、親水性や親油性を表す物性値を用いて評価してもよいが、実際に、第1の樹脂と第2の樹脂とを混ぜ合わせ、どちらがより被塗装面に多く付着するかで判断してもよい。
【0051】
この場合、第2の樹脂は溶融状態だが、上記のように、自由表面側への移行前または移行中に第1の粉体塗料粒子が溶融するタイプと自由表面側への移行後に第1の粉体塗料粒子が溶融するタイプとがあり得ることに応じて、第1の樹脂については、溶融状態の場合と非溶融状態の場合とのいずれかを評価することになる。
【0052】
更に、熱硬化性樹脂を使用する場合には、第1の樹脂や第2の樹脂に硬化剤を共存させ、実際の塗装における溶融硬化挙動に類似した条件で評価することが必要になる場合も多い。
【0053】
この他、樹脂を選択する場合には、粘度も重要な因子であることが判明した。具体的には、第1の粉体塗料粒子が溶融している場合には、その粘度が、溶融状態の第2の粉体塗料粒子の粘度に比べて低い方が有利なようである。これは、より粘度の高い第2の粉体塗料粒子から第1の粉体塗料粒子が押し出されやすくなるためであろうと思われる。
【0054】
恐らくこの粘度との関係からであろうが、溶融した状態の第1の粉体塗料粒子の120℃における損失弾性率が、溶融した状態の第2の粉体塗料粒子の損失弾性率に対し小さいことが好ましいことも見出された。より具体的には、溶融した状態の第1の粉体塗料粒子の120℃における損失弾性率が、溶融した状態の第2の粉体塗料粒子の損失弾性率の9/10以下であることが好ましい。9/10より大きい場合、第2の粉体塗料粒子が硬化する際、第1の粉体塗料粒子の粘性が高く、第2の粉体塗料粒子から押し出されにくくなり、2層構造の塗膜形成が困難になる場合がある。
【0055】
損失弾性率は動的粘性に対応する物性値である。120℃は、第2の粉体塗料粒子を溶融する状態とするために任意的に選択した値である。第2の粉体塗料粒子が溶融、硬化する場合には、その硬化が起こる温度として考えることもできる。その場合には、損失弾性率が時間により変化するので、その初期温度を採用することが好ましい。
【0056】
ここで、損失弾性率はどのようにして求めてもよい。レオメトリックス社製レオメーターRDA−II型等の粘弾性測定装置を使用することが考えられる。
【0057】
これらの総合的検討の結果、第1の樹脂と第2の樹脂の実際の組み合わせについては、第1の樹脂がアクリル系樹脂であり、かつ、前記第2の樹脂がエポキシ系樹脂であることが好ましいことが判明した。アクリル樹脂は硬度が高く、エポキシ樹脂は、塗装基材との密着性に優れる利点がある。
【0058】
粉体粒子の形状については、特に制限はないが、粉体塗料全体としての平均粒径が10〜100μmの間にあることが好ましい。平均粒径が10μm未満では、、個々の粒子に含まれる第1の粉体塗料粒子と第2の粉体塗料粒子との混合割合が大きく異なり易くなり、この結果、粉体塗料の帯電分布が広くなり、塗装されない粉体塗料が多く発生する傾向を生じやすくなる。100μmを超えると、粒子が大きすぎるため、噴霧による安定した塗装が困難になる場合が多い。
【0059】
さらに、粉体塗料は、平均粒径が5μm以下のものの割合が5重量%以下であることが好ましい。平均粒径が5μm以下のものの割合が5重量%を超えると、個々の粒子の帯電性が高くなり、塗装が困難になることが多い。第2の粉体塗料粒子の平均粒径については、上記粉体塗料全体についての要件をそのまま適用することができる。
【0060】
なお、本明細書における平均粒径は公知の任意の方法によって求めることができる。ここで、平均粒径とは体積平均粒径を意味する。
【0061】
第1の粉体塗料粒子の平均粒径については、第2の粉体塗料粒子の平均粒径の1/10〜2/5の範囲にあることが好ましい。1/10未満や2/5を超える場合には、自由表面へ移行する速度が不十分になる場合が多い。
【0062】
上記態様における吸着性多孔体は、多孔体であって、何らかの物質を吸着し得るものであればどのような物でもよい。ケイ素、アルミニウム、炭素等の元素を含む多孔体を例示することができる。
【0063】
吸着性多孔体としては、具体的には活性炭素系粉末が好ましい。活性炭素系粉末とは炭素を含む粉末であって、何らかの物質を吸着し得る物質を指す。より具体的には、活性炭、木炭粉末、竹炭粉末、備長炭粉末、白竹炭粉末、これらの表面改質物、これらと他の材料との複合体およびこれらの混合物を挙げることができる。これらは、臭いを発生する物質等の諸物質を吸着除去するのに有用である。なお、表面改質物としては親水性や親油性を付与した物や、凝集を防止するための処理をした物を例示できる。
【0064】
吸着性多孔体については、その平均粒径が0.1〜0.5μmの範囲にあることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満では脱臭効果を発揮しにくい場合が多く、0.5μmを超えると被表面積が小さくなり、脱臭効果が落ちる傾向が顕著になる場合がある。
【0065】
粉体塗料中における各成分の割合としては、吸着性多孔体の含有量については、粉体塗料の全重量に対して0.5〜5.0重量%の範囲にあることが好ましい。0.5重量%未満では、吸着効果、たとえば消臭効果が不十分となり得る。5.0重量%を超えると、塗膜表面に凹凸等の影響を及ぼす場合があり得る。
【0066】
第1の粉体塗料粒子の含有割合としては、粉体塗料全体に対し、重量比で1/10〜2/5の間にあることが好ましい。1/10未満では、塗膜全体の厚さによっては、第1の粉体塗料粒子から生成する塗膜層が一様にならず、切れ切れになる場合が生じ得る。また、第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層の厚さが薄く、所望量の吸着性多孔体を保持し得ない場合があり得る。2/5を超えても、吸着性多孔体の効果の特段の改良が見込めない場合がある。また、塗膜全体の厚さによっては、第2の粉体塗料粒子から形成される塗膜層からの第1の粉体塗料粒子の移行・分離が困難になる場合がある。
【0067】
上記粉体塗料は、外観的には一種類の粉体塗料を使用することにより、吸着性多孔体を、塗膜中の自由表面側にある塗膜層中に存在させ、より好ましくは偏在させることができるため、吸着性多孔体の添加量を低減させる効果や、たとえば充分な脱臭性を発揮しえるのに十分な吸着性多孔体を塗膜中に保持しつつ、被塗装面と塗膜との密着性を確保することができたりする効果のいずれかまたは全てを実現することができる。なお、ここで「偏在」とは自由表面側にのみ存在することのほか、自由表面側における濃度がより高い場合も含まれる。
【0068】
上記粉体塗料を製造するには、任意の方法を採用することができる。たとえば次のようにすることができる。
(1)予め第1の樹脂の候補を、機械式または気流式の粉砕機を用いて粉砕した後、分級し第1の樹脂の粉体を得る。
(2)次いで、第1の樹脂の溶融する条件で、第1の樹脂中に吸着性多孔体を混練し、冷却、粉砕、分級等を経て、吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子を得る。なお、その他の成分をどのタイミングで混合するかは任意的に選択できる。
(3)別途用意した第2の粉体塗料粒子が溶融する条件で、第1の粉体塗料粒子を第2の粉体塗料粒子中に混練し、冷却、粉砕、分級等を経て、第1の粉体塗料粒子を含有した第2の粉体塗料粒子を得る。この混練条件は、第1の粉体塗料粒子が溶融する条件であってもよいが、その場合には、第1の粉体塗料粒子同士が付着合体しないように注意を払う必要がある。
【0069】
混練は、例えば、ミキサーまたはブレンダー等を用いて乾式混合した後、ニーダーにより溶融混練する方式が一般的に好ましい。
【0070】
このようにして得られた粉体塗料は、噴射ノズルから、被塗装面に対し、粉体塗料を噴射して塗膜を得、次いで塗膜を加熱処理する粉体塗装方法によって塗装に供することができる。
【0071】
この塗装方法は一般的に粉体塗装と呼ばれる。図6に粉体塗装のやり方を例示する。図6は、粉体塗料61を噴射ノズル62から、被塗装面に対し噴射して塗装を行う様子を示している。被塗装面63は接地されており、印加電圧により帯電した粉体塗料61は、同伴するガス(たとえば空気)により噴射ノズル62の先端から被塗装面63に向けて噴射され、被塗装面63に付着する。ガイド64は粉体塗料の噴射方向を変えるためのものである。
【0072】
上記荷電圧の印加方法はどのようなものであってもよい。いわゆるコロナ帯電型塗装ガンと呼ばれるものは、そのような機能を持っているので、それを利用することができる。コロナ帯電型塗装ガンでは通常30〜100kVの荷電圧が採用される。
【0073】
塗装後塗装面を加熱処理して塗膜を形成する。この加熱処理装置については特に制限はなく、公知の加熱処理装置を使用することができる。加熱方法、加熱温度、加熱時間、冷却方法、冷却時間等についても同様、特に制限はない。
【0074】
ただし、加熱処理における加熱温度と加熱時間とを調節することにより、第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層の形成状態や、吸着性多孔体が当該塗膜中の自由表面側に偏在する割合が変化し得るので、この加熱温度と加熱時間との少なくともいずれか一方を調節することは有用である。
【0075】
このようにして形成される塗膜は、吸着性多孔体を有効利用できる、経済的である、被塗装面との密着性を阻害されないあるいは阻害されにくいといった種々の利益をもたらす。塗膜中の自由表面側に、第1の粉体塗料粒子から形成された塗膜層が存在する場合や、吸着性多孔体が塗膜中の自由表面側に偏在している場合が特に好ましい。
【0076】
塗膜全体の厚さについては特に制限はないが、10〜50μmの範囲にあることが好ましい場合が多い。10μm未満では、脱臭性等の効果がが不十分である場合があり、50μmを超えてもその効果は特段に改良されない場合が多い。
【0077】
この塗膜を用いる具体的な用途については特に制限はない。電子機器筐体等に好適に応用することができる。
【0078】
これらの電子機器筐体には、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタンス(PDA)、携帯電話、カーナビゲーションシステム等の電子機器筐体が含まれる。
【0079】
図7は、上記電子機器筐体の一例を示すノート型パーソナルコンピュータ用筐体の正面図である。図7の筐体の表面には、上記脱臭性塗料が塗装されている。
【0080】
なお、上記に開示した、第1の粉体塗料粒子が、前記第2の粉体塗料粒子中に、独立した相をなして存在する粉体塗料では、第1の粉体塗料粒子から形成された塗膜層が認められない場合でも、単に吸着性多孔体を粉体塗料中に混合した場合に比べて、吸着性多孔体の効果の向上が認められる場合があることも見出された。これらの場合は、恐らく、第1の粉体塗料粒子から形成された塗膜層が認められなくても、その前期的状態にあり、吸着性多孔体が自由表面側においてより高濃度で存在することになるためではないかと思われるが、詳細は不明である。
【実施例】
【0081】
次に本発明の実施例および比較例を詳述する。各実施例および比較例について、表1,2に示す評価を実施した。表1,2には、主要条件も示してある。
【0082】
なお、下記の評価方法を採用した。表1,2中の「混合状態」とは、サンプル中に粒子が海島状に分散しているかどうかを評価したものである。表1,2中、「第1粒子」とは、第1の粉体塗装粒子を表す。
【0083】
(混合状態,海島状に分散している島粒子の平均粒径)
サンプルをエポキシ樹脂に包埋し、ミクロトーム(LEICA社製 ULTRACUT UCT)にて、約100nmに超薄切片化した測定サンプルを用意した。
【0084】
これを電子顕微鏡(日立製作所社製 H−7650)を用いて加速電圧100kVにしてTEM写真を1000倍にて複数個撮影し、海島状態が生じているかを観察した。
【0085】
また、その画像情報を画像処理解析装置(王子製紙社製、ドットアナライザーDA−5000S)にて画像データに変換した。海島状に分散している粒子について、0.05μm以上の粒径を有する粒子について無作為にしたサンプリングが300回を超えるまで測定を繰り返し、体積平均粒径の分布を求めた。
【0086】
具体的には、個々の粒子投影画像について、水平線と垂直線とを決め、水平から反時計回りを正の角度として、8箇所の角度(0度、22.5度、45度、67.5度、90度、−22.5度、−45度、−67.5度)における直線が粒子投影画像によって切り取られる寸法を測定し、それらの寸法の平均をその粒子の粒径(フィレ粒径)とした。
【0087】
(平均粒径)
粉末測定にはコールターマルチサイザー(日科機社製)を使用して測定した。体積平均粒径を採用した。固体中に粒子が分散しているときの粒子測定には上記の「海島状に分散している島粒子の平均粒径」のようにTEMを使用して測定した。
【0088】
(2層形成状態の確認)
塗膜表面の断面のSEM観察を行って確認した。
【0089】
(硬化温度)
示差熱走査熱量計(セイコー電子社製、SSC/5520)を使って粉体塗料粒子を加熱し、5℃/分の昇温速度で得られる発熱ピークの温度として求めた。
【0090】
(損失弾性率)
下記のようにして求めた。
【0091】
・装置:レオメトリックス社製レオメーターRDA−II型
・測定治具:直径25mmのパラレルプレート
・測定サンプル:樹脂を直径25mm、高さ3mmの円盤状に圧縮成形して使用
・測定温度条件:80〜190℃まで毎分2℃で昇温し、120℃の溶融状態における損失弾性率の数値を読み取る。
【0092】
・測定周波数:6.28rad/秒
・測定歪の設定:自動測定モード(初期値を0.1%に設定)
(塗膜厚)
塗膜表面の断面のSEM観察により求めた。
【0093】
(脱臭性)
焼付け後の上記塗装試験片を24時間室温に放置後、以下に示す条件でアンモニア吸着試験(検知管法)により脱臭の程度を評価した。
【0094】
1リットルの真空瓶(A)に、マイクロシリンジを用いてアンモニア水を注入した。次いで、フッ化ビニル樹脂製テトラバック(B)に窒素ガスを80リットル導入した後、ガスタイトシリンジを用いて上記アンモニアが注入された1リットル真空瓶(A)からアンモニアガスを注入し、上記フッ化ビニル樹脂製テトラバック(B)内のアンモニアガスの初期濃度を30重量ppmになるように検知管で確認しながら調整した。
【0095】
別途用意した10リットルのフッ化ビニル樹脂製テトラバック(C)に塗装試験片を封入し、上記でアンモニアガス濃度が30重量ppmに調整されたフッ化ビニル樹脂製テトラバック(B)と上記10リットルのフッ化ビニル樹脂製テトラバック(C)とを接続し、上記フッ化ビニル樹脂製テトラバック(B)内の調整されたアンモニアガスをポンプを用いて毎分1リットルの割合で10リットルを塗装試験片が封入されている上記フッ化ビニル樹脂製テトラバック(C)に導入し、その後試験を開始した。
【0096】
試験開始から100時間後の上記フッ化ビニル樹脂製テトラバック(C)内のアンモニアガス濃度をガス検知管で測定した。塗装試験片を封入せずに上記操作を行ったものを空試験として補正した。なお、試験に供した温度は25℃とした。1枚の塗装試験片での評価を各3回行い、バラツキを含めて評価した。
【0097】
なお、評価は以下の5段階で示した。
【0098】
5…0重量ppm以上、5重量ppm未満4…5重量ppm以上、10重量ppm未満3…10重量ppm以上、15重量ppm未満2…15重量ppm以上、20重量ppm未満1…20重量ppm以上
[実施例1]
<吸着性多孔体を含有する第1の粉体塗料粒子の調製>
下記3種類の材料を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機社製)に投入し、2,000rpmで1分間混合した。
【0099】
(1)第1の樹脂:アクリル樹脂{数平均分子量(Mn):8,000、重量平均分子量(Mw):40,000、ガラス転移点(Tg):70℃}:75重量部
(2)硬化剤:ドデカン二酸:15重量部
(3)吸着性多孔体:竹炭粉末(平均粒径:0.3μm):10重量部
その後、100℃に加熱したニーダ(KH−3−S、井上製作所製)を用い、30分間溶融混練したこの予備混練物を冷却した後、ハンマーミルで粉砕し、その後、気流式の粉砕器により、粉砕分級を行い、体積平均粒径で2μmの、吸着性多孔体含有アクリル樹脂粉体塗料粒子(以下「アクリル塗料粒子」と略称する)を得た。このアクリル塗料粒子の硬化温度は140℃であった。
【0100】
<着色剤を含有した第2の粉体塗料粒子の調製>
次に、下記の3種類材料を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機社製)に投入し、2,000rpmで1分間混合した。
【0101】
(1)第2の樹脂:エポキシ樹脂(数平均分子量(Mn):4,000、重量平均分子量(Mw):15,000、Tg:60℃):92重量部
(2)硬化剤:ジシアンジアミド:3重量部
(3)着色剤:カーボンブラック(MA−100,三菱化学社製):5重量部
その後、100℃に加熱したニーダ(KH−3−S、井上製作所製)を用い、30分間溶融混練したこの予備混練物を冷却した後、ハンマーミルで粉砕し、その後、気流式の粉砕器により、粉砕分級を行い、体積平均粒径で20μmの着色剤含有エポキシ樹脂粉体塗料粒子(以下「エポキシ塗料粒子」と略称する)を得た。このエポキシ塗料粒子の硬化温度は130℃であった。
【0102】
なお、前記試作したアクリル塗料粒子の120℃の溶融状態における損失弾性率と、前記試作したエポキシ塗料粒子の120℃の溶融状態における損失弾性率とを比較すると、前記アクリル塗料粒子の120℃の溶融状態における損失弾性率は、前記エポキシ塗料粒子の120℃の溶融状態における損失弾性率に対して10%であった。
【0103】
<粉体塗料の調製>
前記調製されたアクリル塗料粒子20重量部と、前記調製されたエポキシ塗料粒子80重量部とをヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機社製)に投入し、2,000rpmで1分間混合した。
【0104】
その後、100℃に加熱したニーダ(KH−3−S、井上製作所製)を用い、30分間溶融混練した混練物を冷却した後、ハンマーミルで粉砕後、気流式の粉砕器により、粉砕分級を行い、体積平均粒径が20μmであり、5μm以下の粉体が2重量%であり、吸着性多孔体含有アクリル樹脂が粒子状で着色剤含有エポキシ樹脂中に分散した粉体塗料を得た。
【0105】
また、前記粉体塗料において、エポキシ塗料粒子中に分散するアクリル塗料粒子の平均粒径は2μmであった。
【0106】
<試験片の作製>
得られた粉体塗料を市販のコロナ帯電方式のスプレーガンを用いて、マグネシウム合金の試験片(50×50×2mm)上に粉体塗料を焼付膜厚が30μmになるように静電塗装した。負荷された電圧は60kVで粒子は負に荷電された。次に、180℃で30分間焼き付けて試験片とした。乾燥後の塗膜の膜厚は20μmであった。
【0107】
[比較例1]
実施例1の「着色剤を含有した第2の粉体塗料粒子の調製」で用いたエポキシ樹脂を、スチレンアクリル樹脂(数平均分子量(Mn):3000、重量平均分子量(Mw):18,000、Tg:60℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0108】
[実施例2]
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で得られた体積平均粒径2μmのアクリル塗料粒子を、体積平均粒径1μmのアクリル塗料粒子に変更した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。なお、体積平均粒径1μmのアクリル塗料粒子は、実施例1における分級の条件を変更することによって得た。
【0109】
[実施例3]
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で得られた体積平均粒径2μmのアクリル塗料粒子を、体積平均粒径10μmのアクリル塗料粒子に変更した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。なお、体積平均粒径10μmのアクリル塗料粒子は、実施例1における分級の条件を変更することによって得た。
【0110】
[実施例4]
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で得られた体積平均粒径2μmのアクリル塗料粒子を、体積平均粒径0.5μmのアクリル塗料粒子に変更した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。なお、体積平均粒径0.5μmのアクリル塗料粒子は、実施例1における分級の条件を変更することによって得た。
【0111】
[実施例5]
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で得られた体積平均粒径2μmのアクリル塗料粒子を、体積平均粒径15μmのアクリル塗料粒子に変更した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。なお、体積平均粒径15μmのアクリル塗料粒子は、実施例1における分級の条件を変更することによって得た。
【0112】
[実施例6]
実施例1の「粉体塗料の調製」において、前記アクリル塗料粒子20重量部と、前記エポキシ塗料粒子80重量部とを混合する代わりに、前記アクリル塗料粒子10重量部と、前記エポキシ塗料粒子90重量部とを混合したこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0113】
[実施例7]
実施例1の「粉体塗料の調製」において、前記アクリル塗料粒子20重量部と、前記エポキシ塗料粒子80重量部とを混合する代わりに、前記アクリル塗料粒子40重量部と、前記エポキシ塗料粒子60重量部とを混合したこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0114】
[実施例8]
実施例1の「粉体塗料の調製」において、前記アクリル塗料粒子20重量部と、前記エポキシ塗料粒子80重量部とを混合する代わりに、前記アクリル塗料粒子5重量部と、前記エポキシ塗料粒子95重量部とを混合したこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0115】
[実施例9]
実施例1の「粉体塗料の調製」において、前記アクリル塗料粒子20重量部と、前記エポキシ塗料粒子80重量部とを混合する代わりに、前記アクリル塗料粒子50重量部と、前記エポキシ塗料粒子50重量部とを混合したこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0116】
[実施例10]
実施例1の「着色剤を含有した第2の粉体塗料粒子の調製」で用いたエポキシ樹脂を高分子量のエポキシ樹脂(数平均分子量(Mn):6,000あ、重量平均分子量(Mw):25,000、Tg:65℃)に変更した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。実施例10において、アクリル塗料粒子の120℃の溶融状態における損失弾性率は、着色剤含有の高分子量エポキシ塗料粒子の120℃の溶融状態における損失弾性率に対して90%であった。硬化温度は変わらなかった。
【0117】
[実施例11]
実施例1の「着色剤を含有した第2の粉体塗料粒子の調製」で用いたエポキシ樹脂を、高分子量のエポキシ樹脂(数平均分子量(Mn):4,500、重量平均分子量(Mw):30,000、Tg:65℃)に変更した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。実施例11において、アクリル塗料粒子の120℃の溶融状態における損失弾性率は、着色剤含有の高分子量エポキシ塗料粒子の120℃の溶融状態における損失弾性率に対して同等であった。硬化温度は変わらなかった。
【0118】
[実施例12]
実施例1の「着色剤を含有した第2の粉体塗料粒子の調製」で用いたエポキシ樹脂を、高分子量のエポキシ樹脂(数平均分子量(Mn):4,100、重量平均分子量(Mw):24,000、Tg:65℃)に変更した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。実施例12において、エポキシ塗料粒子の硬化温度は135℃となり、アクリル塗料粒子との硬化温度の差は5℃であった。
【0119】
[実施例13]
実施例1の「着色剤を含有した第2の粉体塗料粒子の調製」で用いたエポキシ樹脂を、高分子量のエポキシ樹脂(数平均分子量(Mn):4,500、重量平均分子量(Mw):31,000、Tg:67℃)に変更した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。実施例13において、エポキシ塗料粒子の硬化温度は139℃となり、アクリル塗料粒子との硬化温度の差は1℃であった。
【0120】
[実施例14]
実施例1の「粉体塗料の調製」で得られた体積平均粒径が20μmの粉体塗料を、体積平均粒径が10μmの粉体塗料に変更した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。なお、体積平均粒径が10μmの粉体塗料は、実施例1における分級の条件を変更することによって得られる。
【0121】
[実施例15]
実施例1の「粉体塗料の調製」で得られた体積平均粒径が20μmの粉体塗料を、体積平均粒径が100μmの粉体塗料に変更した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。なお、体積平均粒径が100μmの粉体塗料は、実施例1における分級の条件を変更することによって得られる。
【0122】
[実施例16]
実施例1の「粉体塗料の調製」で得られた体積平均粒径が20μmの粉体塗料を、体積平均粒径が5μmの粉体塗料に変更した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。なお、体積平均粒径が5μmの粉体塗料は、実施例1における分級の条件を変更することによって得られる。
【0123】
[実施例17]
実施例1の「粉体塗料の調製」で得られた体積平均粒径が20μmの粉体塗料を、体積平均粒径が150μmの粉体塗料に変更した以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。なお、体積平均粒径が150μmの粉体塗料は、実施例1における分級の条件を変更することによって得られる。
【0124】
[実施例18](吸着性多孔体:0.5重量%)
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で用いた「10重量部の竹炭粉末」を「2.5重量部の竹炭粉末」にし、実施例1よりもアクリル樹脂を7.5重量部増加したこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0125】
[実施例19](吸着性多孔体:5.0重量%)
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で用いた「10重量部の竹炭粉末」を「25重量部の竹炭粉末」にし、実施例1よりもアクリル樹脂を15重量部減少したこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0126】
[実施例20](吸着性多孔体:0.2重量%)
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で用いた「10重量部の竹炭粉末」を「1.0重量部の竹炭粉末」にし、実施例1よりもアクリル樹脂を15重量部増加したこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0127】
[実施例21](吸着性多孔体:8.0重量%)
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で用いた「10重量部の竹炭粉末」を「40重量部の竹炭粉末」にし、実施例1よりもアクリル樹脂を30重量部減少したこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0128】
[実施例22](竹炭粉末:0.1μm)
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で用いた「竹炭粉末の平均粒径を」を0.3μmから0.1μmにしたこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0129】
[実施例23](竹炭粉末:0.5μm)
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で用いた「竹炭粉末の平均粒径を」を0.3μmから0.5μmにしたこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0130】
[実施例24](竹炭粉末:0.05μm)
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で用いた「竹炭粉末の平均粒径を」を0.3μmから0.05μmにしたこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0131】
[実施例25](竹炭粉末:1.0μm)
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で用いた「竹炭粉末の平均粒径を」を0.3μmから1.0μmにしたこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0132】
[実施例26](木炭粉末)
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で用いた「竹炭粉末(平均粒径:0.3μm)」を「木炭粉末(平均粒径:0.3μm)」にしたこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0133】
[実施例27](備長炭粉末)
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で用いた「竹炭粉末(平均粒径:0.3μm)」を「備長炭粉末(平均粒径:0.3μm)」にしたこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0134】
[実施例28](白竹炭粉末)
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」で用いた「竹炭粉末(平均粒径:0.3μm)」を「白竹炭粉末(平均粒径:0.3μm)」にしたこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。
【0135】
[実施例29](白竹炭粉末+白色顔料)
着色剤をカーボンブラックから白色顔料:ルチル型酸化チタン(R−960,デュポン社製)にしたこと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。白色塗料が得られた。
【0136】
[実施例30]
実施例1の「試験片の作製」において、「粉体塗料を焼付膜厚が30μmになるように静電塗装する」代わりに、「粉体塗料を焼付膜厚が10μmになるように静電塗装した」こと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。なお、乾燥後の塗膜の膜厚は10μmであった。
【0137】
[実施例31]
実施例1の「試験片の作製」において、「粉体塗料を焼付膜厚が30μmになるように静電塗装する」代わりに、「粉体塗料を焼付膜厚が50μmになるように静電塗装した」こと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。なお、乾燥後の塗膜の膜厚は50μmであった。
【0138】
[実施例32]
実施例1の「試験片の作製」において、「粉体塗料を焼付膜厚が30μmになるように静電塗装する」代わりに、「粉体塗料を焼付膜厚が5μmになるように静電塗装した」こと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。なお、乾燥後の塗膜の膜厚は5μmであった。
【0139】
[実施例33]
実施例1の「試験片の作製」において、「粉体塗料を焼付膜厚が30μmになるように静電塗装する」代わりに、「粉体塗料を焼付膜厚が60μmになるように静電塗装した」こと以外は、実施例1と同様に粉体塗料を調製し、試験片を作製した。なお、乾燥後の塗膜の膜厚は60μmであった。
【0140】
表1,2に示すごとく、実施例1〜33では、いずれも、比較例1に対し、消臭性を改善することができた。
【0141】
[実施例34]
実施例1の「試験片の作製」において、「マグネシウム合金の試験片」の代わりに、「アルミニウムの試験片」を用いた以外は、実施例1と同様に試験片を作製した。
【0142】
その結果、実施例1でマグネシウム合金の試験片に塗装されたものと同等の結果が得られた。
【0143】
【表1】

【0144】
【表2】

【0145】
[比較例2]
実施例1の「吸着性多孔体を含有した第1の粉体塗料粒子の調製」と同様に、体積平均粒径が2μmのアクリル塗料粒子を調製し、実施例1の「着色剤を含有した第2の粉体塗料粒子の調製」と同様に、体積平均粒径が20μmの白色顔料含有のエポキシ塗料粒子を調製した。前記調製されたアクリル塗料粒子20重量部と、前記調製された白色顔料含有のエポキシ塗料粒子80重量部とをヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機社製)に投入し、2,000rpmで1分間混合し、粉体塗料を得た。前記得られた粉体塗料は、2種類の塗料粒子が混合された状態になっている。
【0146】
次に、実施例1と同様に、前記得られた粉体塗料を市販のコロナ帯電方式のスプレーガンを用いて、マグネシウム合金の試験片(50×50×2mm)上に粉体塗料を焼付膜厚が30μmになるように静電塗装した。負荷された電圧は60kVで粒子は負に荷電された。次に、180℃で30分間焼き付けて、試験片とした。
【0147】
塗装前の粉体塗料ではアクリル塗料粒子とエポキシ塗料粒子は重量比で2:8の割合で混合されていたが、アクリル塗料粒子の方が粒径が小さいため、帯電性が高くなっており、塗膜での粉体の割合は重量比で2:8ではなく、アクリル塗料粒子が塗装前の混合割合よりも多く塗装されており、2種類の塗料粒子を塗装前の混合割合で塗装できないため、所望の塗装色が実現できないという問題が発生した。また、塗装に寄与せず、廃棄されるアクリル塗料粒子が多く発生した。試験片の脱臭性の効果はほとんど見られなかった。なお、当然ながら断面には二層構造は見出されなかった。
【0148】
以上のように、上記粉体塗料を用いて家電・電子機器筐体を塗装することにより、脱臭性に優れ、少ない工程および低コストにて、優れた脱臭性を長期にわたり付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】吸着性多孔体を含む第1の粉体塗料粒子が、第2の粉体塗料粒子中に、独立した相をなして存在する様子を示す、模式的断面図である。
【図2】図1に示した粉体塗料を被塗装面上に付着させた後加熱により、第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層が形成されていく段階を模式的に表す図である。
【図3】図1に示した粉体塗料を被塗装面上に付着させた後加熱により、第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層が形成されていく段階を模式的に表す図である。
【図4】図1に示した粉体塗料を被塗装面上に付着させた後加熱により、第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層が形成されていく段階を模式的に表す図である。
【図5】図1に示した粉体塗料を被塗装面上に付着させた後加熱により、第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層が形成されていく段階を模式的に表す図である。
【図6】粉体塗装のやり方を示す模式図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る電子機器筐体の一例を示すノート型パーソナルコンピュータ用筐体の正面図である。
【符号の説明】
【0150】
1 第1の粉体塗料粒子
2 第2の粉体塗料粒子
3 吸着性多孔体
4 被塗装面
5 塗膜
6 自由表面
7 第1の粉体塗料粒子から形成される塗膜層
8 第2の粉体塗料粒子から形成される塗膜層
9 塗膜
61 粉体塗料
62 噴射ノズル
63 被塗装面
64 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂を含む第1の粉体塗料粒子と、第2の樹脂を含む第2の粉体塗料粒子と、吸着性多孔体とを含む粉体塗料であって、
前記第1の粉体塗料粒子が、前記第2の粉体塗料粒子中に、独立した相をなして存在し、
前記吸着性多孔体は、少なくとも前記第1の粉体塗料粒子中に含まれている、
粉体塗料。
【請求項2】
前記吸着性多孔体は活性炭素系粉末である、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項3】
溶融状態における前記第1の粉体塗料粒子の120℃における損失弾性率が、溶融状態における前記第2の粉体塗料粒子の損失弾性率に対し9/10以下である、請求項1または2に記載の粉体塗料。
【請求項4】
前記第1の粉体塗料粒子の硬化温度が、前記第2の粉体塗料粒子の硬化温度に比べ高い、請求項1〜3のいずれかに記載の粉体塗料。
【請求項5】
前記第1の樹脂がアクリル系樹脂であり、かつ、前記第2の樹脂がエポキシ系樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載の粉体塗料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の粉体塗料を用いて塗装された、電子機器筐体。
【請求項7】
噴射ノズルから、被塗装面に対し、請求項1〜5のいずれかに記載の粉体塗料を噴射して塗膜を得、次いで当該塗膜を加熱処理するに際して、当該加熱処理における加熱温度と加熱時間との少なくともいずれかを調節することにより、前記吸着性多孔体が当該塗膜中の自由表面側に偏在するようになす、粉体塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−242659(P2009−242659A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92292(P2008−92292)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】