粉体塗料及び塗装方法
【課題】低軟化点樹脂を熱変形させることなく粉体塗装することができる粉体塗料を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる結着樹脂中に着色剤及び赤外光吸収剤を含有し、
前記赤外吸収剤が赤外光を吸収して発熱し溶融する粉体塗料。結着樹脂として、フローテスタ軟化温度が50℃〜70℃の第1の熱可塑性樹脂と、フローテスタ軟化温度が80℃〜150℃の第2の熱可塑性樹脂との混合体とすることが好ましい。また、結着樹脂として、1万以下の分子量を有する成分の組成比Xが20wt%≦X≦80wt%であり、かつ、10万以上の分子量を有する成分の組成比Yが20wt%≦Y≦80wt%とすることが好ましい。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる結着樹脂中に着色剤及び赤外光吸収剤を含有し、
前記赤外吸収剤が赤外光を吸収して発熱し溶融する粉体塗料。結着樹脂として、フローテスタ軟化温度が50℃〜70℃の第1の熱可塑性樹脂と、フローテスタ軟化温度が80℃〜150℃の第2の熱可塑性樹脂との混合体とすることが好ましい。また、結着樹脂として、1万以下の分子量を有する成分の組成比Xが20wt%≦X≦80wt%であり、かつ、10万以上の分子量を有する成分の組成比Yが20wt%≦Y≦80wt%とすることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体塗料及び粉体塗料を用いた塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体塗料は、有機溶剤型塗料及び水性エマルジョン型塗料と異なり、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を含有しないので、環境負荷が少ない塗料として今後の普及が期待されている。
【0003】
粉体塗料を用いた塗装では、まず被塗物の表面に例えば静電塗装法により粉体塗料を付着させ、その後、加熱して被塗物表面に付着した粉体塗料を溶融して塗膜を形成する。このように粉体塗料を溶融し流動化することで、一様な塗膜厚と、被塗物表面への高い接着強度及び安定した色調とを有する塗膜が形成される。
【0004】
しかし、耐熱性が低い材料からなる被塗物、例えばABS樹脂のような低軟化点樹脂の成形体への塗装では、粉体塗料を加熱、溶融する際に被塗物が軟化し変形してしまう。このため、ABS樹脂のような低耐熱性材料からなる被塗物への粉体塗装では、付着させた粉体塗料を加熱溶融することができず、高接着力かつ安定した色調を有する塗膜を形成することは困難であった。
【0005】
なお、粉体塗料に赤外光を含む光の吸収率の高い着色剤を含有させて、赤外光照射による加熱、乾燥の効果を高めることができる。しかし、かかる赤外光吸収率の高い着色剤は、通常、黒色ないし濃色の顔料に制限されており、透明、淡色さらには高彩度の塗装に適用することはできない。
【0006】
他方、高耐熱性の材料、例えば紙の印刷媒体へ、赤外光吸収剤を含有するトナーを用いて印刷するカラー画像形成装置が知られている。このカラー画像形成装置では、トナーを付着した画像を印刷媒体上に形成したのち、赤外光を照射してトナーを加熱、溶融し、定着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−211078号公報
【特許文献2】特開2002−296950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、粉体塗料を用いる塗装では、接着強度が高く安定した色調を有する塗膜を形成するために、被塗物表面に付着した粉体塗料を加熱し溶融する必要がある。従来、かかる加熱処理には通常、オーブン内での加熱処理又は赤外光照射による加熱処理が用いられていた。
【0009】
しかし、オーブン内での加熱は、粉体塗料と同時に被塗物をも加熱するため、被塗物が低耐熱性材料、例えば軟化点が低い樹脂からなる場合、軟化して変形することがある。また、従来の粉体塗料の赤外光吸収率は被塗物と大きな違いがない。このため、赤外光照射による加熱処理の際に同時に被塗物も加熱されるので、低耐熱性材料からなる被塗物が軟化し変形することがある。このため、従来の粉体塗料を低耐熱性材料からなる被塗物の塗装に使用することは困難であった。
【0010】
他方、紙の印刷用トナーとして、赤外光吸収剤を含有するトナーが知られている。紙は、トナーよりも耐熱性が高く加えて赤外光吸収率が低いので、赤外光照射による加熱は少なく通常では赤外光加熱により変形することもない。従って、赤外光を照射して、トナーのみを加熱、溶融することができる。
【0011】
しかし、印刷ではトナーは紙面の一部を被覆するのみで、紙面の大部分はトナーに被覆されることなく露出している。仮に、印刷媒体を紙に代えて、トナーの主成分をなす接合樹脂よりも軟化温度が低い樹脂を印刷媒体として用いた場合、照射される赤外光は軟化温度が低い樹脂の露出面に吸収され、印刷媒体である軟化温度が低い樹脂が加熱されて変形してしまう。このため、軟化温度が低い樹脂への赤外光照射による定着は難しい。従って、トナーと同様に、低軟化点樹脂表面に付着した粉体塗料を赤外光照射により溶融する工程を有する粉体塗装に、かかる赤外光吸収剤を含むトナーを適用するには至らなかった。
【0012】
本発明は、赤外光を吸収する低耐熱性材料からなる被塗物表面に、十分な接着強度と良好な色調とを有する塗装膜を形成することができる粉体塗料及びその粉体塗料を用いた塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の第1の観点によれば、熱可塑性樹脂と、着色剤と、赤外光吸収剤と、を含有し、前記赤外吸収剤が赤外光を吸収して発熱し溶融することを特徴とする粉体塗料として提供される。
【0014】
また、本発明の第2の観点によれば、被塗物表面に、熱可塑性樹脂と、着色剤と、赤外光吸収剤とを含有する粉体塗料を付着する工程と、前記粉体塗料に赤外光を照射して、前記被塗物表面に付着した前記粉体塗料を溶融する工程とを有することを特徴とする塗装方法として提供される。
【0015】
さらに本発明の第3の観点によれば、少なくとも着色剤を含有する熱可塑性樹脂からなる樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面に担持された赤外光吸収剤を含有する赤外光吸収材粒子と、を有する粉体塗料とし提供される。
【0016】
また、本発明の第4の観点によれは、少なくとも着色剤を含有する熱可塑性樹脂からなる樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面に担持された赤外光吸収剤を含有する赤外光吸収材粒子とを有する粉体塗料を、被塗物表面に付着する工程と、前記粉体塗料に赤外光を照射して、前記被塗物表面に付着した前記粉体塗料を溶融する工程とを有することを特徴とする塗装方法として提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被塗物表面に付着させた粉体塗料を赤外光照射により溶融することで、低軟化点材料からなる被塗物を変形することなく、高い接着強度及び優れた色調を有する塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例における塗膜特性と塗膜形成工程との関連を説明する図
【図2】本発明の実施例で用いた静電塗装装置の断面図
【図3】本発明の実施例で用いた塗膜形成装置の断面図
【図4】本発明の実施例で用いられた赤外光のスペクトル
【図5】本発明の実施例における被塗物材料と塗膜形成工程との関連を説明するための図
【図6】本発明の実施例における塗膜特性と赤外光吸収剤含有量との関連を説明するための図
【図7】本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂組成との関連を説明するための図
【図8】本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂組成との関連を表す図
【図9】本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂分子量分布との関連を説明するための図
【図10】本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂分子量分布との関連を表す図
【図11】本発明の第2の粉体塗料の断面図
【図12】表面改質装置の断面図
【図13】本発明の第2の粉体塗料の実施例における塗膜特性と赤外光吸収剤含有量との関連を説明するための図
【図14】本発明の第2の粉体塗料の変形例の断面図
【図15】本発明の第2の粉体塗料の変形例における塗膜特性と樹脂被膜との関連を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の粉体塗料は、熱可塑性樹脂からなる結着樹脂中に、着色剤及び赤外光吸収剤を含有し、この赤外吸収剤が赤外光を吸収して発熱することで溶融する。
【0020】
本発明の第1の粉体塗料では、結着樹脂として熱可塑性樹脂が用いられる。この熱可塑性樹脂は、赤外光が照射されたとき赤外光吸収剤が赤外光を吸収して発熱し、その発熱により加熱されて溶融し、流動化して塗膜を形成することができる程度の軟化温度及び熱可塑性を有する樹脂からなる。
【0021】
上記熱可塑性樹脂として、通常の粉体塗料の結着樹脂に用いられる樹脂、例えはエポキシ、アクリル又はポリエステルの樹脂を用いることができる。さらに、加熱により溶融したのち硬化させることができる樹脂、例えば紫外線硬化型の樹脂を用いることもできる。また、被塗物の耐熱性が高い場合、溶融温度より高温に加熱されて硬化する熱硬化性の樹脂を用いることもできる。
【0022】
エポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば良く、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、ビフェニル型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ナフタレン型、複素環式、脂環式、各種変成等のエポキシ樹脂またはそこにハロゲンを導入したハロゲン化エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0023】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂として、例えば、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(いずれもシェルケミカル社の商品名)を用いることができる。
【0024】
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、さらには必要によりこれら以外のエチレン性不飽和結合(C=C)含有モノマー等を(共)重合したものを用いることもできる。
【0025】
(メタ)アクリル酸の誘導体は、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリロニトリル類を用いることができる。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル類は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソプチル(メタ)アクリレート、2−3エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート[ドデシル(メタ)アクリレート]、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、β−メタリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、エチル−α−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0027】
(メタ)アクリルアミド類は、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドを用いることができる。
【0028】
(メタ)アクリロニトリル類は、例えば、(メタ)アクリロニトリル、エチルシアノ(メタ)アクリロニトリルを用いることができる。
【0029】
かかるアクリル樹脂には、上記以外の他のモノマーが共重合されていてもよく、例えば他のモノマーとして、スチレン、酢酸ビニル、ビニルトルエン、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合(C=C)含有モノマーが共重合されていてものを用いることができる。
【0030】
本発明の第1の粉体塗料に用いられる結着樹脂は、軟化温度が異なる2種類の樹脂、例えば軟化温度が50℃〜70℃の低軟化点樹脂と、軟化温度が80℃〜150℃の高軟化点樹脂との混合体とすることが好ましい。このような混合体では、赤外光照射の際に先に低軟化点樹脂が溶融し、溶融した樹脂が粉体粒子間を埋め込み粉体粒子間の熱伝達を高める。このため、高軟化点樹脂を含めた結着樹脂全体が容易に溶解するので一様な塗膜が形成される。
【0031】
軟化温度は、フローテスタ(島津製作所製、島津フローテスタCFT−500)を用いて昇温フローテストを行い、プランジャーが4mm降下したときの温度とした。この昇温フローテストの条件は、以下の通りである。
【0032】
ダイ 1mm×1mmφ 昇温温度 6℃/分
サンプル 1.5g ペレット 荷重 20kgf
予熱温度 60℃
予熱時間 300秒
なお、低軟化点樹脂の軟化温度が50℃未満では、粉体塗料の保存安定性が劣り好ましくない。また、低軟化点樹脂の軟化温度が70℃を超えると低軟化点樹脂の溶融が遅れ、粉体粒子間の熱伝達が効果的にされなくなるので、高軟化点樹脂の溶融が困難になる。その結果、高軟化点樹脂の一部が溶融せずに残り、粉体塗料が一様に溶融しないので、良質な塗膜が形成されず好ましくない。
【0033】
高軟化点樹脂の軟化温度が80℃未満では、粉体塗料の保存安定性が劣り好ましくない。また、高軟化点樹脂の軟化温度が150℃を超えると高軟化点樹脂の溶融が困難になり、粉体塗料が一様に溶融しないので好ましくない。
【0034】
また、本発明の第1の粉体塗料に用いられる結着樹脂として、分子量が1万以下の成分を20wt%以上含みかつ分子量が10万以上の成分を20wt%以上含む熱可塑性樹脂を用いることができる。即ち、この結着樹脂は、分子量が1万以下の成分及び10万以上の成分のそれぞれの組成比をX及びYとして、20wt%≦X≦80wt%かつ20wt%Y≦80wt%(0wt%≦X+Y≦100wt%)の範囲の組成を有する。なお、上記成分比(wt%)は、結着樹脂を100wt%とした値である。
【0035】
分子量が1万以下の樹脂成分は軟化温度が低く、分子量が10万以上の樹脂成分は軟化温度が高いので、かかる分子量分布を有する結着樹脂樹脂は、上述した軟化温度が異なる2種類の樹脂の混合体と同様に、小さな分子量の成分が初めに溶融して粉体粒子間の熱伝達が高まり、粉体塗料が容易に一様に溶融する。
【0036】
1万以下の分子量の成分が20%未満又は10万以上の分子量の成分が80%を超えると、粉体塗料の一様な溶融が阻害される、あるいは溶融した粉体塗料の粘度が高く一様な膜厚の塗膜が形成されにくい。他方、1万以下の分子量の成分が80%をこえる又は10万以上の分子量の成分が20%未満の場合、形成される塗膜の接着強度が劣るので好ましくない。さらに、保存安定性が悪化する他、溶融した結着樹脂の粘度が低すぎて、凹凸のある塗布物表面に一様な膜厚の塗膜を形成することが難しい。
【0037】
なお、結着樹脂の分子量分布は、上述した分子量1万以下及び10万以上の成分がそれぞれ20%〜80%の範囲にあれば、単峰性分布でも双峰性(又は多峰性)分布でも差し支えない。
【0038】
本発明の第1の粉体塗料に含有される赤外光吸収剤は、粉体塗料を加熱溶融するために照射される赤外光の吸収率(吸収係数)が高く、かつ、塗膜の色調への影響を少なくするために波長400nm〜800nmの可視光域の光吸収が小さな物質が望ましい。赤外光の吸収率を高めるために、照射赤外光の波長と赤外光吸収剤の吸収ピーク波長との差が100nm以内であることが好ましい。とくに、赤外光による急速加熱に通常多用されているフラッシュランプ、例えば波長800nm〜1100nmの領域に発光ピーク波長を有するキセノンランプの発光ピーク波長の赤外光を強く吸収する赤外光吸収剤が好ましい。
【0039】
かかる赤外光吸収剤として、波長800nm〜1100nmの領域に吸収ピークを有するジイモニウム及びアミニウムの化合物を用いることができる。とくにジイモニウム化合物は、赤外光吸収率がアミニウム化合物より高いのでより好ましい。他方、ジイモニウム及びアミニウムの化合物は波長400nm〜800nmの可視光域の光吸収が小さく、色調への影響が少なく好ましい。他に、塗膜の色調への影響が許容されるならば,赤外光吸収剤として、例えば酸化錫、酸化イッテルピウム、燐酸イッテルピウム、ニッケル錯体をもちいることができる。
【0040】
ジイモニウム系化合物として、一般式(1)
【0041】
【化1】
【0042】
で表される化合物を用いることができる。
【0043】
また、アミニウム系化合物として、一般式(2)
【0044】
【化2】
【0045】
で表される化合物を用いることができる。この一般式(1)及び(2)中、R1〜R8はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表し、Aはp−フェニレン基又はp−ビフェニレン基を表し、及び、X- は陰イオンを表している。
【0046】
これらの赤外光吸収剤の粉体塗料に対する含有比は、例えば上記ジイモニウム系及びアミニウム系の化合物では、0.1wt%〜3wt%とすることが好ましい。赤外光吸収剤の含有比が0.1wt%未満では赤外光吸収率が小さく、粉体塗料を一様に溶融することが難しい。一方、赤外光吸収剤の含有比が3wt%を超えると、赤外光吸収剤の可視光領域での吸収の影響が大きくなり、塗膜の色調が損なわれる。
【0047】
本発明の第1の粉体塗料に含有される着色剤は、通常の粉体塗料に使用される顔料を用いることができる。例えば、二酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、キナクリドン系赤色顔料等の無機系又は有機系の顔料を用いることができる。これらの顔料の粉体塗料に対する含有比は、1wt%〜10wt%であることが好ましい。含有比が1wt%未満では鮮やかな色調が得られず、他方、10wt%を超えると塗膜の強度が低下する。
【0048】
本発明の第1の粉体塗料は、さらに必要に応じて各種添加剤、例えば粉体塗料の帯電性を制御するための帯電制御剤、粉体塗料の導電性及び帯電性を制御するための針状酸化チタン、結着樹脂を硬化するための硬化剤を含むことができる。
(実施例1〜15)
以下、実施例に基づき本発明の第1の粉体塗料及びその粉体塗料を用いた塗装方法を詳細に説明する。
(実施例1〜3、比較例1〜3)
本発明の実施例1、2及び比較例1〜3は、塗膜形成工程の違いによる塗膜特性の違いを調べた実験に関する。
【0049】
図1は本発明の実施例における塗膜特性と塗膜形成工程との関連を説明する図であり、異なる塗膜形成工程により形成された塗膜の強度、色差及び保存安定性の評価結果を表している。なお、実施例3として、赤外光吸収剤をアミニウムとした実施例を表示した。
【0050】
実施例1、2及び比較例1〜3は、全て同一組成からなり、かつ以下の実施例1で説明する粉体試料製造工程により製造された粉体塗料を用いた。
【0051】
実施例1の粉体塗料の原料は、まず、結合樹脂として、分子量が1万以下の成分を25wt%、分子量が10万以上の成分を25wt%、残部として分子量が1万を超え10万未満の成分を50%wt含有するポリエステル樹脂を用いた。なお、このポリエステル樹脂の分子量分布は単峰性であった。この実施例1で用いた結合樹脂を、図1中の結合樹脂の欄にポリエステル樹脂No1として表記した。
【0052】
また、赤外光吸収剤として、ジイモニウム塩化合物(帝国化学産業(株)製の商品名NIR−IM1)を、着色剤として、赤顔料(DIC(株)製の商品名KET Red 338)を用いた。
【0053】
さらに、帯電制御剤としてカリックスアレン化合物を、帯電制御及び導電性制御のために針状酸化チタン(石原テクノ(株)製の商品名FT−1000)を用いた。
【0054】
上記原料から、結合樹脂を89重量部、赤外光吸収剤を0.5重量部、着色剤を5重量部、カリックスアレン化合物を2重量部及び針状酸化チタンを3重量部を調合し、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製の商品名FM−75型)に投入し、2000rpmで1分間回転し混合した。
【0055】
次いで、混合された原料を100℃に加熱されたニーダ((株)井上製作所製の商品名KH−3−S)に投入し、30分間、溶融混練し予備混練物を作製した。その後冷却した予備混練物をハンマーミルで粉砕したのち、さらに気流式の粉砕分級機を用いて粉砕・分級し、体積平均粒径が20μmの粉体塗料を製造し、実施例1の粉体塗料とした。
【0056】
次いで、上記工程により製造された粉体塗料を被塗物表面に付着する。
【0057】
この粉体塗料の付着には、以下に説明する静電塗装法を用いた。もちろん、他の方法により粉体塗料を付着しても差し支えない。
【0058】
図2は本発明の実施例で用いた静電塗装装置の断面図であり、静電塗装装置の主要な構成を表している。
【0059】
図2を参照して、本発明の実施例に用いた静電塗装装置100は、出願番号特願2009−070864(P2009−070864)の特許出願に開示されている粉体塗料の塗装方法で用いられている静電塗装装置と同様に、被塗物1に電圧が印加されたファーブラシ4を接触させて被塗物1を帯電させ、逆電位に帯電した粉体試料2を吹きつけて被塗物1表面に粉体塗料2を静電付着させ、被塗物1表面を被覆する粉体塗料からなる塗布膜3を形成する。
【0060】
より具体的には、被塗物1として、厚さ5mm、100mm×100mmの正方形板状のエポキシ板を用い、この被塗物1を板面が垂直になるように支持する。次いで、被塗物1の裏面(塗膜形成面の反対側の板面であり、図2では右側の板面)にファーブラシ4を接触させる。
【0061】
ファーブラシ4は、直径5mmのステンレス製の回転軸4aの外周面に、導電性繊維4bが植設されたもので、回転軸4aには電源6から正電位の帯電電圧が印加されている。この導電性繊維4bは、回転軸4aの外周面に導電性繊維4bを織り込んだパイル織物を巻き付け、回転軸4aの外周面にプラシ状に起毛する導電性繊維4bの切毛の長さを6mmに切り揃えた後、導電性繊維4bの先端を回転軸4aの回転方向に沿って倒伏するように成形して作製した。その結果、直径15mmの円筒形状のファーブラシ4が作製された。
【0062】
被塗物1とファーブラシ4との接触は、導電性繊維4bの先端を被塗物1裏面に接触させることでなされる。この接触により、回転軸4aから導電性繊維4bを介して帯電電圧が被塗物1に印加され、被塗物1は正電位に帯電する。なお、被塗物1裏面に接触する導電性繊維4bの先端の長さを1mm、ファーブラシ4の回転速度を500rpm、帯電電圧を1kVとした。
【0063】
次いで、被塗物1の表面側(図2中の左側)から負電位に帯電した粉体塗料2を吹きつけ、粉体塗料2を被塗物1表面に静電吸着させて粉体塗料2からなる厚さ80μm〜100μmの塗布膜3を形成した。粉体塗料2の吹きつけには、通常の粉体静電塗装で用いられる市販のコロナ帯電方式のスプレーガンを用いることができる。
【0064】
上述のファーブラシ4は、被塗物1裏面を摺動するように上下に移動可能に設けられる。これにより、絶縁性の被塗物1の全体を一様に帯電することができる。さらに、静電吸着をする間に負電位に帯電した粉体粒子2が付着することにより失われる被塗物1の帯電量が補充されるので、塗布膜3を厚く形成することができる。
【0065】
上記工程により被塗物1表面に静電吸着した粉体塗料2からなる塗布膜3を形成した後、以下に説明する塗膜形成装置110を用いて塗布膜3を溶融し冷却して、被塗物1表面に塗膜を形成する。
【0066】
図3は本発明の実施例で用いた塗膜形成装置の断面図であり、フラッシュランプの照射により粉体塗料粒子からなる塗布膜を加熱溶融して塗膜を形成する塗膜形成装置110の主要な構成を表している。
【0067】
上面に塗布膜3が形成された被塗物1は、オーブン11内を通過するベルトコンベア12上に載置され、オーブン11内に搬送される。オーブン11内は、予熱温度、例えば60℃に保持されており、オーブン11入口11aからオーブン11内に搬送された被塗物1及び塗布膜3は、この予熱温度に予備加熱される。なお、予熱温度は、被塗物1の変形を避けるため、被塗物1の軟化温度未満とする。
【0068】
オーブン11内のオーブン11出口11b近くに、赤外光照射器13が設けられている。赤外光照射装置13は、内径10.5mm、アーク長200mmの管状のキセノンフラッシュランプ13aが、管中心間距離を36mmにして互いに平行に配置され、さらにキセノンフラッシュランプ13aの側方及び上方を覆う反射板13bを備える。反射板13bに囲まれた赤外光照射装置13の下面は、赤外光を透過する窓13cとなる。この窓13cは、キセノンフラッシュランプ13aの管中心より25mm下方に位置し、窓13c位置での赤外光照射器13の発光エネルギー密度は4.5J/cm2 であった。また、キセノンフラッシュランプ13aの発光時間は1個の被塗物1当たり1000μ秒とした。
【0069】
被塗物1は、赤外光照射器13の下を通過する際に、キセノンフラッシュランプ13aが発光する赤外光により照射される。
【0070】
図4は本発明の実施例で用いられた赤外光のスペクトルであり、キセノンフラッシュランプ13aの発光スペクトルを表している。図3を参照して、キセノンフラッシュランプ13aは、800nm〜1000nmの波長領域に強い発光ピークを有する。
【0071】
赤外光吸収剤として用いられたジイモニウム塩化合物は、波長800nm〜1100nmの領域に吸収ピークを有するので、キセノンフラッシュランプ13aの発光赤外線を強く吸収して発熱し、その周辺の結着樹脂を加熱する。そのため、赤外光吸収剤に接する結着樹脂に含まれる低軟化点樹脂が初めに溶融してゲル状になり、未だ溶融していない高軟化点樹脂及び粉体塗料粒子の周囲を充填する。溶融した樹脂は固体の樹脂に比べて熱伝達が非常に大きいため、発熱する赤外光吸収剤の熱は結着樹脂全体へ一様に伝熱される。従って、粉体塗料からなる塗布膜3は、赤外光照射により全体が容易に一様かつ迅速に溶融する。このため、一様な塗膜5が形成される。
【0072】
他方、被塗物1の上面は照射される赤外光を強く吸収する粉体塗料(塗布膜3)で被覆されているため、被塗物1表面に到達する赤外光強度は小さく、被塗物1が変形するほど加熱されない。従って、キセノンフラッシュランプ13aを光源とする赤外光加熱により、被塗物1の変形を回避しつつ被塗物1表面に、粉体塗料の溶融・冷却により形成される強い接着強度、一様な優れた色調を有する塗膜5が形成される。
【0073】
再び図3を参照して、赤外光照射により表面に塗膜5塗膜が形成された被塗物1は、オーブン11の搬出口11bを通りオーブン11から搬出され、室温まで冷却される。上述した粉体塗料の製造工程、粉体塗料の静電塗装工程及び塗膜形成工程を経て、実施例1の被塗物1表面を被覆する塗膜5が形成される。
【0074】
次いで、形成された塗膜5の塗膜強度及び色彩を調べた。塗膜5の塗膜強度は、被塗物1表面に形成された塗膜5を、幅5mmの間隔で縦横に10個×10個の枡目状にカットし、その上面にセロハンテープを貼付して引き剥がしたときに、100個の枡目のうち塗膜5が被塗物1表面に残留している枡目の数Nに基づき以下の通り判定した。
【0075】
塗膜5が残留する枡目の数Nが90以上の場合を優(◎)、
塗膜5が残存する枡目の数Nが70以上かつ90未満の場合を良(○)
塗膜5が残存する枡目の数Nが70未満の場合を不良(×)、
と判定した。ここで()内は図1中で塗膜強度を表示するために用いた記号である。
【0076】
塗膜5の色彩は、以下に説明する色調標準試料を基準とし、この色調標準試料との色差ΔEに基づき以下の通り判定した。
【0077】
色差ΔEが10未満のものを優(◎)、
色差ΔEが10以上かつ15未満のものを良(○)、
色差ΔEが15以上のものを不良(×)、
と判定した。ここで()内は図1中で色差を表示するために用いた記号である。
【0078】
色調標準試料の塗膜は、赤外光吸収剤を含有しないことを除き、上述した実施例1で用いられた粉体塗料2と同一組成の標準試料用粉体塗料を用いて形成した。塗膜形成工程は、被塗物1であるエポキシ板上面に実施例1と同様の工程で標準試料用粉体塗料を静電塗布し、その後、オーブン11内で100℃で30分間加熱して標準試料用粉体塗料を溶融し、冷却して塗膜5を形成した。この色調標準試料の塗膜は、赤外光吸収剤を含まず、かつ、その加熱溶融工程では粉体塗料が完全に溶融するに十分な加熱温度と時間とを費やして形成される。従って、赤外光吸収剤に起因する色調への影響、および粉体塗料の溶融不良に起因する色調への影響が回避されて、塗膜本来の色調が実現されるので、色調標準試料として用いるに適している。
【0079】
色差ΔEは、上記色調標準試料を基準とし、各実施例及び各比較例との色差を色差計(X−Rite社の商品名色差計938Spectrodentittometer(測定光源CIE−D65))を用いて測定した。
【0080】
図1には、上記塗膜強度および色差の他、さらに粉体塗料の保存安定性を示した。この保存安定性は、粉体試料を40℃の環境中に30日間放置したとき、放置前後で体積平均粒径の変化が10%以下のものを良(○)、体積平均粒径が10%を超えて変化するものを不良(×)とした。
【0081】
図1に、粉体塗料および被塗物材料が同一で、塗膜形成工程(塗布膜3の溶融工程)のみが異なる実施例1〜2及び比較例1〜3について、塗膜の評価結果を示した。
【0082】
図1を参照して、60℃で予熱後、フラッシュ光照射(キセノンフラッシュランプ13aによる赤外光照射)により形成された実施例1の塗膜5は、優れた塗膜強度(剥離強度)と良好な保存安定性とを有する。また、色調標準試料との色差ΔEは、10<=ΔE<15であり良と評価された。かかる色差が生ずるのは、赤外光吸収剤が僅かに可視光を吸収するため、塗膜の彩度が劣化するからである。
【0083】
実施例2は、実施例1と予熱工程がないことのみが異なる。この実施例2では、実施例1と比べて塗膜強度がやや劣り、良と評価されている。このことは、予熱工程が塗膜強度を向上させることを明らかにしている。これは、予熱することにより、フラッシュ光照射時により完全に塗布膜3が溶融するためと推測している。
【0084】
比較例1は、フラッシュ光照射の工程が除去されている他は実施例1と同じである。この比較例1では、塗布膜3が完全に溶融せず、良質の塗膜3が形成されない。従って、実施例1と比べて塗膜強度及び色差は著しく劣る。これに対して、実施例1及び実施例2ではフラッシュ光照射により塗布膜3が完全に溶融し、良好な塗膜が形成されることを示している。
【0085】
比較例2は、実施例1のフラッシュ光照射に代えて、塗布膜3を100℃に加熱し溶融したものである。他は、実施例1と同様である。この比較例2では、塗布膜3が完全に溶融して、高い塗膜強度と良好な色調(色差が小さい)を有する塗膜5が形成された。しかし、100℃の高温に加熱するため、ABS樹脂のような低軟化点材料は軟化し変形する。このため、低軟化点材料を含む被塗物1には塗膜5を形成することができない。
【0086】
比較例3は、実施例1のフラッシュ光照射(キセノンフラッシュランプ13aによる赤外光照射)に代えて、ハロゲンランプを光源として光照射したものである。他は、実施例1と同様である。この比較例5では、塗布膜3が十分に溶融せず、塗膜が形成されなかった。このため、塗膜強度は低くかつ色差も大きい。これは、赤外光吸収剤の吸収波長とハロゲンランプの発光ピーク波長とが大きくずれているため、光が赤外光吸収剤に吸収されず塗布膜3が加熱されないことを示唆している。さらに、赤外光吸収剤を含有しない粉体塗料では、フラッシュ光照射により加熱することができず、良好な塗膜5が形成されないことを示している。
【0087】
上述の実施例1、2に見られるように、フラッシュ光の発光ピーク波長近くに吸収ピークを有する赤外光吸収剤を接合樹脂に含有させた粉体塗料を用い、フラッシュ光照射により粉体塗料を溶融することで塗膜強度、色調の優れた塗膜を、被塗物1を変形することなく形成することができる。
【0088】
他方、比較例1、3に見るように、フラッシュ光の発光ピーク波長を吸収できない粉体塗料を用いた場合は粉体塗料を十分に溶融することができず、良質な塗膜が形成されない。なお、比較例2のように、フラッシュ光照射をせず、単に加熱により粉体塗料を溶融して塗膜を形成するのでは、低軟化点材料を構成要素に含む被塗物に対して、被塗物を変形することなく塗膜を形成することは難しい。
【0089】
図1を参照して、実施例3は、実施例1の粉体塗料に赤外吸収吸収剤として0.5wt%含まれるジイモニウム塩に代えて、赤外吸収吸収剤として0.5wt%のアミニウム塩を含有させたものである。赤外吸収吸収剤の他は実施例1と同様である。なお、アミニウム塩として、帝国化学産業(株)の製品名NIR−AM1)を用いた。
【0090】
実施例3では、実施例1の塗膜よりやや塗膜強度が劣る(良と評価された。)が、塗膜の色差は実施例1と同等であった。実施例3の塗膜強度が劣るのは、アミニウム塩の単位重量当たりの赤外光吸収がジイモニウム塩より小さいため、フラッシュ光照射による塗布膜3の温度上昇が小さいためと推測している。なお、アミニウム塩及びジイモニウム塩は樹脂に淡緑色を加味するが、それが色彩に与える影響は両者で大差がない。従って、塗膜の色差が小さく、かつ、塗膜強度の高い塗膜を形成するためには、アミニウム塩よりもジイモニウム塩を用いることが好ましい。
(実施例4、比較例4)
本発明の実施例4及び比較例4は、低耐熱性材料からなる塗布物上へ塗膜を形成したとき、塗膜形成工程の違いによる違いを調べた実験に関する。
【0091】
図5は本発明の実施例における被塗物材料と塗膜形成工程との関連を説明するための図であり、実施例4及び比較例4の塗膜の評価結果を表している。
【0092】
実施例4及び比較例4では、被塗物1として厚さ5mm、100mm×100mmの正方形板状形状を有するポリカABS樹脂(ABS樹脂とポリカーボネートのポリマーアロイ)を用いた。即ち、実施例4及び比較例4は、被塗物1材料としてエポキシ樹脂より軟化温度が低いポリカABS樹脂を用いる点で実施例1と異なる。
【0093】
実施例4は、上記被塗物1材料が異なる他は実施例1と同じ粉体塗料及び同じ工程を用いて塗膜5を形成した。これに対して、比較例4は、被塗物1材料が異なる他、さらにフラッシュ光照射工程に代えてオーブン11内で100℃に加熱する加熱工程により粉体試料を溶融した点で異なる。この2点を除き、他は実施例1と同様である。
【0094】
図5を参照して、実施例4及び比較例4とも、塗膜強度が高くかつ色差の小さな優れた塗膜5が形成された。さらに、本発明の実施例1と同様にフラッシュ光照射により塗膜を形成した実施例4では、低軟化点材料であるポリカABD樹脂からなる被塗物1を熱変形させることなく塗膜が形成された。これに対して、オーブン11内での加熱工程により塗膜を形成した比較例4の場合では、ポリカABS樹脂からなる被塗物1は熱変形した。
【0095】
このように、加熱工程により粉体塗料を溶融し塗膜を形成する従来の塗膜形成方法では、被塗物が変形することから、低軟化点材料上への粉体塗装は困難とされていた。しかし、赤外光吸収剤を含む本発明の第1の粉体塗料を用い,かつ赤外光のフラッシュ照射により粉体塗料を溶融し塗膜を形成する本発明の塗膜形成方法では、被塗物を変形することなく、低軟化点材料の被塗物上に優れた塗膜強度及び色調を有する塗膜5を形成することができる。
(実施例5〜6、比較例5〜7)
本発明の実施例5〜6及び比較例5〜6は、赤外吸収剤の含有量と塗膜特性との関連を調べた実験に関する。なお、比較例7は、赤外吸収剤としてナフタロシアニンを用いたものを比較例として示したものである。
【0096】
図6は本発明の実施例における塗膜特性と赤外光吸収剤含有量との関連を説明するための図であり、本発明の実施例5〜6及び比較例5〜6の塗膜の評価結果を表している。なお、図1中に示した実施例1の結果を、理解を容易にするために再度図6中に表示した。
【0097】
図6を参照して、比較例5、実施例5、実施例1、実施例6及び比較例6は、赤外光吸収剤として用いたジイモニウム塩の含有量を、それぞれ0.05wt%、0.1wt%、0.5wt%、3wt%及び4wt%としたものである。その他は粉体塗料(赤外光吸収剤の含有量を除く)及び塗膜形成工程とも第1実施例1と同様である。
【0098】
ジイモニウム塩含有量が0.05wt%と少ない比較例5では、塗膜強度及び色差ともに不良と評価された。これは、粉体塗料からなる塗布膜3の溶融が不十分で、一様な塗膜5が形成されないためである。
【0099】
ジイモニウム塩含有量が0.1wt%〜3wt%の実施例5、実施例1及び実施例6では、塗膜強度及び色差とも良好な塗膜5が形成された。これらの実施例のなかで、ジイモニウム塩含有量が0.1wt%と少ない実施例5の塗膜5は、0.5wt%及び3wt%とと含有量が多い実施例1及び実施例6と比べて、色差が少なく優れた色調を呈する一方、塗膜強度がやや低い。
【0100】
この色差の相違は、ジイモニウム塩は可視光領域に吸収帯を有するため、その含有量が多い実施例1及び実施例6の塗膜5は彩度が劣化するのに対し、ジイモニウム塩の含有量が少ない実施例5の塗膜では彩度の劣化が少ないからである。
【0101】
また、塗膜強度は、赤外光吸収剤(ジイモニウム塩)が多いほど大きい。これは、赤外光吸収剤が多いほど、赤外光照射(フラッシュ照射)による加熱が速く、粉体塗料が確実に溶融されることを示している。
【0102】
比較例6を参照して、ジイモニウム塩含有量が4wt%に増量すると、色差が大きくなり優れた色調の塗膜5が形成されない。これは、ジイモニウム塩の可視光領域の吸収が大きくなり、塗膜の彩度が劣化するためである。
【0103】
上述の実施例5、1及び6及び比較例5、6の結果からみて、ジイモニウム塩含有量は、0.1wt%〜3wt%とすることが好ましい。0.1wt%未満では、塗膜強度及び色調とも劣る塗膜5が形成され、3wt%以上では、色調が劣化した塗膜5が形成される。
【0104】
比較例7は赤外光吸収剤としてナフタロシアニンを用いた他は実施例1と同様である。なお、比較例7と実施例1とは、赤色吸収剤の重量含有量も同一である。
比較例7は、実施例1と比べて、塗膜強度は同等であるが色差が大きく色調が劣る。これは、ナフタロシアニンは赤外光領域の他、ジイモニウム塩及びアミニウム塩と比較して可視光をも強く吸収するため、塗膜の彩度が劣化するからである。従って、赤外光吸収剤は可視光領域の吸収が少ない物質、例えばジイモニウム塩及びアミニウム塩とすることが好ましい。
【0105】
(実施例7〜10、比較例8〜12)
実施例7〜10及び比較例8〜12は、軟化温度が異なる2つの樹脂の混合体を接合樹脂として用いた粉体塗料に関する。
【0106】
図7は本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂組成との関連を説明するための図であり、混合された2つの樹脂の軟化温度と塗膜特性との関連を表している。なお、図7の結合樹脂成分の軟化温度の欄に、実施例7〜10及び比較例8〜12に用いられた低軟化点樹脂及び高軟化点樹脂の軟化温度を示した。軟化温度は、既述のフローテスタを用いて測定した。
【0107】
図7を参照して、実施例7〜10及び比較例8〜12では、軟化温度が低い低軟化点樹脂と軟化温度が高い高軟化点樹脂の混合体を結合樹脂とする粉体塗料を用いた。
【0108】
これら低軟化点樹脂及び高軟化点樹脂としてともにポリエステル樹脂を用い、これらの樹脂を重量比で等量づつ配合された樹脂混合体を形成し、これを接合樹脂とした。さらに、この接合樹脂に赤外光吸収剤及び他の添加剤を加え、実施例1と同様にして粉体塗料を形成した。実施例7〜10及び比較例8〜12では、この結合樹脂組成を除き、粉体塗料の他の成分及び粉体塗料の製造工程から塗膜の形成工程に至るまで実施例1と同様である。
【0109】
図8は本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂組成との関連を表す図であり、図7中に示す結果を2つの樹脂の軟化温度をそれぞれ横軸及び縦軸に採った図で表している。なお、図8中、◎は塗膜強度が優れかつ色差が良と評価された塗膜を、○は塗膜強度が良でかつ色差が良と評価された塗膜を、及び、×は塗膜強度、色差が不良と評価された塗膜を表している。なお、◎又は○に、×を重ねて標記したものは、それぞれ塗膜強度が優又は良でかつ色差が良と評価されたが、粉体塗料の保存安定性が不良と評価されたものである。
【0110】
図7及び図8を参照して、低軟化点樹脂の軟化温度が70℃以下、かつ、高軟化点樹脂の軟化温度が150℃以下の場合(実施例7〜10、及び比較例9、11)は、塗膜強度が優又は良、色差は良と評価され、良好な塗膜が形成された。
【0111】
これらの中で、塗膜特性は良好であっても、低軟化点樹脂の軟化温度が45℃と低い比較例9では、粉体塗料の保存安定が劣り実用上好ましくない。また、高軟化点樹脂の軟化温度が75℃と低い比較例11も同様に、粉体塗料の保存安定が劣り好ましくない。従って、粉体塗料の保存安定性の観点から、低軟化点樹脂の軟化温度を50℃以上かつ高軟化点樹脂の軟化温度を80℃以上とすることが好ましい。
【0112】
低軟化点樹脂の軟化温度が70℃を超える場合(比較例8、10)、又は、高軟化点樹脂の軟化温度が150℃を超える場合(比較例12)は、塗膜強度及び色差が共に不良と評価され、良好な塗膜が形成されされない。これは、粉体塗料が赤外光照射時に十分に溶融しないからである。
【0113】
低軟化点樹脂の軟化温度がそれぞれ75℃及び80℃の比較例8、10では、赤外光吸収剤の発熱により溶融すべき低軟化点樹脂の溶融速度が遅いため、粉体塗料全体(塗布膜3)に熱が拡散せず、一様に溶融しないため、良好な塗膜が形成されなかったと推測される。また、高軟化点樹脂の軟化温度が155℃である比較例12では、低軟化点樹脂が溶融しても高軟化点樹脂の溶融が遅れて粉体塗料全体が一様に溶融しないため、同様に良好な塗膜が形成されなかったと推測される。従って、良好な塗膜特性を有する塗膜を形成するという観点からは、低軟化点樹脂の軟化温度を70℃以下、かつ、高軟化点樹脂の軟化温度を150℃以下とすることが好ましい。
【0114】
上述の実施例7〜10、及び比較例8〜12の結果から、低軟化点樹脂と高軟化点樹脂のとの混合体を本発明の第1の粉体塗料の結合樹脂として用いる場合、低軟化点樹脂の軟化温度を50℃以上70℃以下とし、かつ、高融点樹脂の軟化温度を80℃以上150℃以下(図8中のハッチングされた領域)とすることが、塗膜特性及び粉体塗料の保存安定性の観点から好ましい。
(実施例11〜15、比較例13〜15)
実施例11〜15及び比較例13〜15は、接合樹脂として分子量分布が異なる樹脂を用いた粉体塗料に関する。
【0115】
実施例11〜15及び比較例13〜15は、実施例1の結合樹脂に代えて、分子量分布が異なる樹脂を結合樹脂として用いた他は、実施例1と同様である。なお、これらの結合樹脂の分子量分布は単峰性である。
【0116】
図9は本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂分子量分布との関連を説明するための図であり、結合樹脂中の分子量分布と塗膜特性との関連を表している。図10は本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂分子量分布との関連を表す図であり、図9の結果を分子量の大きさが異なる3つの分子量成分の割合との関係により表している。
【0117】
図9を参照して、実施例11は、分子量が1万以下の成分を20wt%及び分子量が10万以上の成分を20wt%含有し、残部が分子量1万を超え10万未満の成分からなるポリエステル樹脂を結合樹脂とし、この結合樹脂から実施例1と同様の方法で粉体塗料を製造した。そしてこの粉体塗料を用いて、実施例1と同様の工程でエポキシ板からなる被塗物1上に塗膜5を形成し、塗膜特性を調べた。
【0118】
同様に、実施例12、13、14及び15は、1万以下の分子量成分をそれぞれ25wt%、50wt%、20wt%、及び40wt%含み、10万以上の分子量成分をそれぞれ20wt%、20wt%、50wt%、及び40wt%含む樹脂を結合樹脂とし、実施例1と同様にして形成された塗膜5の塗膜特性を調べた。
【0119】
図10を参照して、これら実施例11〜実施例14は、いずれも結合樹脂に対する1万以下の分子量を有する成分の組成比Xが20wt%≦X≦80wt%、かつ、10万以上の分子量を有する成分の組成比Yが20wt%≦Y≦80wt%の範囲(図10中のハンチングされた領域)にある。組成比X、Yが、この範囲内にある場合は、図9を参照して、接着強度及び色差とも良と評価される良好な塗膜5が形成された。なお、組成比X、Yが採り得る範囲は、組成比としての性質上、0wt%≦X+Y≦100wt%である。
【0120】
他方、比較例13〜比較例15は、いずれも図10中のハッチングされた領域の外側に位置する組成比X、Yを有する樹脂を結合樹脂として使用したものである。即ち、比較例14では組成比X=15wt%、組成比Y=15wt%であり、比較例14では組成比X=15wt%、組成比Y=15wt%である。また、比較例13では組成比X=15wt%、組成比Y=50wt%である。これらの比較例13、14、15は、いずれも一様な塗膜が形成されず、塗膜強度及び色差とも不良と評価された。このことは、組成比Xが20wt%未満の場合、あるいは、組成比Yが20wt%未満の場合は、赤外光照射(フラッシュ光照射)によるの粉体塗料の溶融が不完全で、一様な塗膜が形成されないことを示している。
【0121】
従って、良好な塗膜が形成される結合樹脂の組成比X、Yは、図10中のハッチングされた領域(20wt%≦X≦80wt%、20wt%≦Y≦80wt%の範囲)であり、より確実には、このハッチングされた領域のうち、さらに実施例11〜実施例15を含む組成範囲、即ち図10中に示した点線より分子量1万超10万未満の成分が多い領域(20wt%≦X+Y)とすることが好ましい。
【0122】
次に、本発明の第2の粉体塗料について説明する。
【0123】
上述した本発明の第1の粉体塗料では、赤外光吸収剤が粉体塗料の粒子中に均一に分散している。このため、照射した赤外光は主に粉体塗料粒子の外殻で吸収され、吸収に寄与しない赤外光吸収剤が粉体塗料粒子の内部に多く存在する。赤外光吸収剤は可視光域にも吸収帯を有するから、このような赤外光吸収に寄与しない赤外光吸収剤の存在は、無用に塗膜の色調を劣化させるので好ましくない。また、赤外光吸収剤は高価であるから、コスト低減のためにも赤外光吸収に寄与しない無用な赤外光吸収剤を少なくすることが望ましい。本発明の第2の粉体塗料は、かかる本発明の第1の粉体塗料の欠点を改善し、より色調の優れた塗膜を形成することができる粉体塗料に関する。
【0124】
図11は本発明の第2の粉体塗料の断面図であり、赤外光吸収剤粒子22を表面に担持した樹脂粒子21を表している。
【0125】
図11を参照して、本発明の第2の粉体塗料20は、樹脂粒子21と、その樹脂粒子21の表面に担持された赤外光吸収剤粒子22とを有する。
【0126】
赤外光吸収剤粒子22は、赤外光吸収剤からなる粒子又は赤外光吸収剤を含有する物質、例えば樹脂からなる粒子であり、樹脂粒子21の表面に固着されている。そして、第1の粉体塗料を用いた塗膜形成工程と同様に、第2の粉体塗料20を被塗物に静電塗布(図2参照)したのち、赤外光照射を含む塗膜形成工程(図3参照)により塗膜を形成することができる。この塗膜形成工程中で、赤外光吸収剤粒子22は照射された赤外光を吸収して発熱し、赤外光吸収剤粒子22が固接する樹脂粒子21を溶融する。このように、被塗物に静電塗布された第2の粉体塗料20は溶融して被膜を形成するから、第1の粉体塗料と同様に良好かつ一様な色調の塗膜が形成される。
【0127】
この本発明の第2の粉体塗料20では、樹脂粒子21中には赤外光吸収剤を含まないか又は低濃度とされる。他方、赤外光吸収剤粒子22が樹脂粒子21の表面に担持されるので、赤外光吸収剤は主として樹脂粒子21の表面上近傍の小さな領域(即ち赤外光吸収剤粒子22中)にのみ高濃度に分布する。このため、照射された赤外光は、樹脂粒子21ではあまり吸収されず、主に樹脂粒子21の表面に固着した赤外光吸収剤粒子22中に吸収される。このように、赤外光吸収剤を樹脂粒子21の表面上近傍にのみ高濃度に分布させる第2の粉体塗料20では、第1の粉体塗料のように粉体塗料粒子内に赤外光の吸収に寄与しない赤外光吸収剤が多く含まれるということがない。このため、赤外光吸収剤が粉体塗料の粒子中に均一に分布する本発明の第1の粉体塗料と比較して、第2の粉体塗料20では、赤外光吸収剤の含有量(粉体塗料20中の濃度)が少なくても第2の粉体塗料20を十分に溶融することができる。従って、第2の粉体塗料20を用いることで、赤外光吸収剤を少なくして色差が小さな優れた色調の塗膜を形成することができる。
【0128】
第2の粉体塗料20の赤外光吸収剤として、第1の粉体塗料が含有する赤外光吸収剤、例えばジイモニウム系化合物又はアミニウム系化合物を用いることができ、とくに色調の観点からは着色が少ないジイモニウム系化合物を用いることが好ましい。
【0129】
樹脂粒子21は、結着樹脂として用いられる熱可塑性樹脂を主成分とし、着色剤及び必要に応じて各種添加剤、例えは、粉体塗料の帯電性を制御するための帯電制御剤、粉体試料の導電性及び帯電性を制御するための針状酸化チタン、結着樹脂を硬化するための硬化剤を含むことができる。なお、樹脂粒子21を構成する結着樹脂は、後述するように、赤外光吸収剤を含まないことが望ましく、少なくとも既述の第1の粉体塗料で用いられた結合樹脂よりも低い赤外光吸収剤含有量とすることが好ましい。
【0130】
第2の粉体塗料20の熱可塑性樹脂として、例えば第1の粉体塗料と同一の熱可塑性樹脂、例えば実施例1〜15で説明した熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。かかる軟化点の低い成分を含む熱可塑性樹脂を用いると、樹脂粒子21に接触する近傍の樹脂粒子21中の低軟化温度成分の樹脂が初めに溶融し、熱可塑性樹脂内の熱伝達が良好になる。その結果、少量の赤外光照射量でも容易に樹脂粒子21を溶融することができる。
【0131】
樹脂粒子21に含まれる着色剤は、第1の粉体塗料に含まれる着色剤と同様の着色剤を用いることがてきる。また、必要に応じて添付される各種添加剤も第1の粉体塗料と同様にしてよい。即ち、本発明の第2の粉体塗料20を構成する樹脂粒子21は、赤外光吸収剤の含有の有無又は含有量(濃度)を除き、他は既述の第1の粉体塗料と同一組成とすることができる。
【0132】
上述した本発明の第2の粉体塗料20は、表面改質装置((株)奈良機械製作所の商品名ハイブリダイゼーションシステムNHS−1)を用いて以下の工程で製造することができる。
【0133】
本発明の第2の粉体塗料20の製造工程では、まず、着色剤、必要な添加剤及び熱可塑性樹脂をヘンシルミキサーに投入し、2000rpmで1分間回転し混合した。この着色剤、必要な添加剤及び熱可塑性樹脂の材料及び混合比は、赤外吸収剤を含有しないことを除き、他は実施例1のポリエステル樹脂No1と同様とした。
【0134】
次いで、この混合物を100℃に加熱したニーダに投入し、30分間溶融混練し樹脂混練物を作成した。その後、この樹脂混練物を冷却し、ハンマーミルで粉砕して体積平均粒径が20μmの粉末状の樹脂粒子21を形成した。
【0135】
上記樹脂粒子21の形成とは別に、体積平均粒径1μmの赤外光吸収剤粉末を準備し、この赤外光吸収剤粉末と樹脂粒子21とを表面改質装置120に投入し、図11に示すような球状の樹脂粒子21の表面に赤外光吸収剤粒子22が固着した第2の粉体塗料20を製造した。なお、赤外光吸収剤粒子22は、樹脂粒子21の表面に固着した赤外光吸収剤粉末である。
【0136】
図12は表面改質装置の断面図であり、ハイブリダイゼーションシステムを用いた表面改質装置120の主要構造を表している。
【0137】
表面改質装置120は、円筒状の衝突リング124内で回転軸121廻りに高速回転する円板状のローター123と、ローター123板面にに放射状に突出して設けられた衝撃ピン125とを備える。さらに、気流を回転軸121近傍から吹き込み衝突リング124に設けられた開口から流出する閉回路を形成する循環回路が設けられている。
【0138】
赤外光吸収剤粉末及び樹脂粒子21は、気流と共にこの巡回回路を介して、回転軸121近くから表面改質装置120内に吹き込まれる。表面改質装置120内に吹き込まれた赤外光吸収剤粉末及び樹脂粒子21は、高速回転するローター123と衝撃ピン125とが引き起こす高速気流に運ばれ、互いにあるいは衝撃ピン125及び衝撃リング124と激しく衝突する。この衝突により、樹脂粒子21は球形に成形され、一方、赤外光吸収剤粉末は樹脂粒子21の表面に埋め込まれて又は溶着して固着される。この結果、図11に示すように、平均粒径20μmの球形の樹脂粒子21の表面に体積平均粒径1μmの赤外光吸収剤粒子22(赤外光吸収剤粉末)が固着した第2の粉体塗料20が製造される。
【0139】
次いで、第2の粉体塗料20を被塗物の表面に第1実施例と同様の静電塗装法を用いて塗布した後、赤外光照射により粉体塗料20を加熱し溶融する第1実施例と同様の塗膜形成工程を用いて被塗物の表面に塗膜を形成した。以下、第2の粉体塗料20を用いて形成された塗膜の塗膜特性について説明する。
(実施例16〜18、比較例16〜17)
図13は本発明の第2の粉体塗料の実施例における塗膜特性と赤外光吸収剤含有量との関連を説明するための図であり、赤外光吸収剤の含有量と塗膜特性との関連を表している。なお、実施例16〜18及び比較例16〜17で用いた第2の粉体塗料20は、赤外光吸収剤のジイモニウムの含有量が異なる他は、全て同一である。また、比較例5は、粉体状の塗料粒子の内部に赤外光吸収剤を含有する第1の粉体塗料を用いて形成された塗膜の特性を表している。
【0140】
図13の実施例16〜18を参照して、赤外光吸収剤であるジイモニウムの含有量が粉体塗料の重量に対して0.01wt%〜3wt%の範囲にある場合、塗膜強度及び色差とも優(◎)又は可(○)と判定される良質の塗膜が形成された。このことは、第2の粉体塗料20においては、0.01wt%〜3wt%の赤外吸収剤含有量の範囲で、赤外光照射により粉体塗料が十分に溶融し、均一な特性の塗膜が形成されることを示している。
【0141】
ジイモニウムは可視光域にも光吸収を有するため、ジイモニウムを含有する樹脂は淡い色彩を呈する。そのため、ジイモニウムの含有量が多いと塗膜の色差が大きくなり、色調が劣化する。従って、色調の観点からはジイモニウムの含有量は少ないことが好ましい。
【0142】
ジイモニウムの含有量が0.01wt%と少ない実施例16では、色差が小さく色調は優れる。これに対して、ジイモニウムの含有量がこれより多い0.05wt%の実施例17では、色差が実施例16よりやや劣り良と判定されるものの通常の使用条件では良好とされる。さらにジイモニウム含有量が3wt%と高い実施例18では、色差がさらに大きく実用上も使用条件によっては支障をきたすこともある。そして、ジイモニウム含有量が4wt%の比較例17では、色差が大きく良好な色調を呈する塗膜が形成されない。従って、色調の観点から、赤外光吸収剤、例えばジイモニウムの含有量は3wt%以下が好ましく、より好ましくは0.05wt%以下である。
【0143】
一方、比較例16を参照して、ジイモニウムの含有量が少な過ぎる場合、例えば0.005wt%では、塗膜が形成されず、皮膜強度及び色差ともに不良とされた。これは、赤外光照射の際の赤外光吸収量が少なく、被塗物に塗布された第2の粉体塗料20を溶融することができないからである。従って、赤外光吸収剤、例えばジイモニウムの含有量は0.01wt%以上とすることが好ましい。
【0144】
図13中の比較例5を参照して、0.05wt%の赤外光吸収剤を含有する本発明の第1の粉体塗料を用いて形成した塗膜では、第1の粉体塗料が赤外光照射で溶融しないため良質な塗膜が形成されず、塗膜強度及び色差ともに不良とされた。これに対して、実施例17を参照して、比較例5と同一の0.05wt%の赤外光吸収剤を含有する本発明の第2の粉体塗料20を用いて形成された塗膜では、第2の粉体塗料20が赤外光照射により確実に溶融して、良質な塗膜が形成される。このように、本発明の第2の粉体塗料20を用いると、塗膜中の赤外光吸収剤濃度が同じならば、本発明の第1の粉体塗料を用いるよりも良質の塗膜を形成することができる。
【0145】
また、上述したように、図13中の第2の粉体塗料20に関する実施例16〜18を参照して、第2の粉体塗料20では、赤外光吸収剤含有量が0.01wt%〜3wt%の範囲で良質な塗膜が形成される。これに対して、図6中の第1の粉体塗料に関する実施例5、1及び6とを参照して、第1の粉体塗料20では、良質な塗膜が形成される赤外光吸収剤含有量の範囲が0.1wt%〜3wt%であり、第2の粉体塗料20を用いた場合、とくに赤外光吸収剤含有量を低くしても良質な塗膜が形成されることを示している。このように、第2の粉体塗料20を用いると、赤外光吸収剤の濃度を低くして優れた色調を有する塗膜を形成することができる。
【0146】
図14は本発明の第2の粉体塗料の変形例の断面図である。図14を参照して、本発明の第2の粉体塗料の変形例の粉体塗料23は、樹脂粒子21の表面に赤外光吸収剤粒子22を担持する第2の粉体塗料20の表出面を被覆する樹脂皮膜24、即ち樹脂粒子21及び赤外光吸収剤粒子22を被覆する樹脂皮膜24を備える。
【0147】
この樹脂皮膜24は、樹脂粒子21と同一の樹脂あるいはより軟化温度が低い樹脂を用いることができる。この第2の粉体塗料の変形例の粉体塗料23では、赤外光吸収剤粒子22の表面を被覆する樹脂皮膜24がまず溶融して液化し赤外光吸収剤粒子22及び樹脂粒子21の表面を浸すので、赤外光吸収剤粒子22と樹脂粒子21との間の熱伝達が高くなり、樹脂粒子21の溶融がより確実になされる。このため、良質の塗膜をより確実に形成することができる。
【0148】
かかる樹脂皮膜24を備える粉体塗料23は、上述した第2の粉体塗料20の製造工程において、赤外光吸収剤粉末と樹脂粒子21とを表面改質装置120に投入する際に、同時に樹脂粉末を投入することで形成することができる。樹脂粉末量は、樹脂粉末が溶融して樹脂粒子の全表面を覆うように、例えば粉体塗料23の0.5wt%とした。
【0149】
図15は本発明の第2の粉体塗料の変形例における塗膜特性と樹脂被膜との関連を説明するための図であり、樹脂皮膜24の有無による塗膜特性の違いを表している。なお、図15中の実施例19は、樹脂皮膜24を備える本発明の第2の粉体塗料23の変形例に関し、実施例16は図13中に示した樹脂皮膜24を有しない本発明の第2の粉体塗料20に関する。
【0150】
図15中の実施例19を参照して、本発明の第2の粉体塗料の変形例にかかる樹脂皮膜24を備え、かつジイモニウムを0.01wt%含有する粉体塗料23を用いて形成した塗膜は、塗膜強度が優れるのみならず色差も小さく色調は優と判定された。これに対して、樹脂皮膜24が無い点を除き、他は同一の樹脂粒子21及び赤外光吸収剤粒子22からなる本発明の第2の粉体塗料20(従って、ジイモニウムをほぼ同量の0.01wt%含有する)を用いて形成した塗膜では、色差は小さく色調は優と判定されたものの、塗膜強度はやや劣り良と判定された。この結果は、樹脂皮膜24を設けることで、塗膜強度が向上することを明らかにしている。
【0151】
このように、本発明の第2の粉体塗料の変形例にかかる粉体塗料23を用いることで、本発明の第2の粉体塗料20を用いるよりもより塗膜強度の高い塗膜を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明に係る粉体塗料を、ABS樹脂のように軟化温度が低い樹脂を被塗物とする塗装に適用することで、被塗物の変形を回避しつつ良質の塗膜を形成することができる。
【符号の説明】
【0153】
1 被塗物
2 粉体塗料
3 塗布膜
4 ファーブラシ
4a 回転軸
4b 導電性繊維
5 塗膜
6 電源
11 オーブン
11a 入口
11b 出口
12 ベルトコンベア
13 赤外光照射器
13a フラッシュランプ
13b 反射板
13c 窓
20、23 粉体塗料
21 樹脂粒子
22 赤外光吸収剤粒子
24 樹脂被膜
100 静電塗装装置
110 塗膜形成装置
120 表面改質装置
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体塗料及び粉体塗料を用いた塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体塗料は、有機溶剤型塗料及び水性エマルジョン型塗料と異なり、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を含有しないので、環境負荷が少ない塗料として今後の普及が期待されている。
【0003】
粉体塗料を用いた塗装では、まず被塗物の表面に例えば静電塗装法により粉体塗料を付着させ、その後、加熱して被塗物表面に付着した粉体塗料を溶融して塗膜を形成する。このように粉体塗料を溶融し流動化することで、一様な塗膜厚と、被塗物表面への高い接着強度及び安定した色調とを有する塗膜が形成される。
【0004】
しかし、耐熱性が低い材料からなる被塗物、例えばABS樹脂のような低軟化点樹脂の成形体への塗装では、粉体塗料を加熱、溶融する際に被塗物が軟化し変形してしまう。このため、ABS樹脂のような低耐熱性材料からなる被塗物への粉体塗装では、付着させた粉体塗料を加熱溶融することができず、高接着力かつ安定した色調を有する塗膜を形成することは困難であった。
【0005】
なお、粉体塗料に赤外光を含む光の吸収率の高い着色剤を含有させて、赤外光照射による加熱、乾燥の効果を高めることができる。しかし、かかる赤外光吸収率の高い着色剤は、通常、黒色ないし濃色の顔料に制限されており、透明、淡色さらには高彩度の塗装に適用することはできない。
【0006】
他方、高耐熱性の材料、例えば紙の印刷媒体へ、赤外光吸収剤を含有するトナーを用いて印刷するカラー画像形成装置が知られている。このカラー画像形成装置では、トナーを付着した画像を印刷媒体上に形成したのち、赤外光を照射してトナーを加熱、溶融し、定着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−211078号公報
【特許文献2】特開2002−296950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、粉体塗料を用いる塗装では、接着強度が高く安定した色調を有する塗膜を形成するために、被塗物表面に付着した粉体塗料を加熱し溶融する必要がある。従来、かかる加熱処理には通常、オーブン内での加熱処理又は赤外光照射による加熱処理が用いられていた。
【0009】
しかし、オーブン内での加熱は、粉体塗料と同時に被塗物をも加熱するため、被塗物が低耐熱性材料、例えば軟化点が低い樹脂からなる場合、軟化して変形することがある。また、従来の粉体塗料の赤外光吸収率は被塗物と大きな違いがない。このため、赤外光照射による加熱処理の際に同時に被塗物も加熱されるので、低耐熱性材料からなる被塗物が軟化し変形することがある。このため、従来の粉体塗料を低耐熱性材料からなる被塗物の塗装に使用することは困難であった。
【0010】
他方、紙の印刷用トナーとして、赤外光吸収剤を含有するトナーが知られている。紙は、トナーよりも耐熱性が高く加えて赤外光吸収率が低いので、赤外光照射による加熱は少なく通常では赤外光加熱により変形することもない。従って、赤外光を照射して、トナーのみを加熱、溶融することができる。
【0011】
しかし、印刷ではトナーは紙面の一部を被覆するのみで、紙面の大部分はトナーに被覆されることなく露出している。仮に、印刷媒体を紙に代えて、トナーの主成分をなす接合樹脂よりも軟化温度が低い樹脂を印刷媒体として用いた場合、照射される赤外光は軟化温度が低い樹脂の露出面に吸収され、印刷媒体である軟化温度が低い樹脂が加熱されて変形してしまう。このため、軟化温度が低い樹脂への赤外光照射による定着は難しい。従って、トナーと同様に、低軟化点樹脂表面に付着した粉体塗料を赤外光照射により溶融する工程を有する粉体塗装に、かかる赤外光吸収剤を含むトナーを適用するには至らなかった。
【0012】
本発明は、赤外光を吸収する低耐熱性材料からなる被塗物表面に、十分な接着強度と良好な色調とを有する塗装膜を形成することができる粉体塗料及びその粉体塗料を用いた塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の第1の観点によれば、熱可塑性樹脂と、着色剤と、赤外光吸収剤と、を含有し、前記赤外吸収剤が赤外光を吸収して発熱し溶融することを特徴とする粉体塗料として提供される。
【0014】
また、本発明の第2の観点によれば、被塗物表面に、熱可塑性樹脂と、着色剤と、赤外光吸収剤とを含有する粉体塗料を付着する工程と、前記粉体塗料に赤外光を照射して、前記被塗物表面に付着した前記粉体塗料を溶融する工程とを有することを特徴とする塗装方法として提供される。
【0015】
さらに本発明の第3の観点によれば、少なくとも着色剤を含有する熱可塑性樹脂からなる樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面に担持された赤外光吸収剤を含有する赤外光吸収材粒子と、を有する粉体塗料とし提供される。
【0016】
また、本発明の第4の観点によれは、少なくとも着色剤を含有する熱可塑性樹脂からなる樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面に担持された赤外光吸収剤を含有する赤外光吸収材粒子とを有する粉体塗料を、被塗物表面に付着する工程と、前記粉体塗料に赤外光を照射して、前記被塗物表面に付着した前記粉体塗料を溶融する工程とを有することを特徴とする塗装方法として提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被塗物表面に付着させた粉体塗料を赤外光照射により溶融することで、低軟化点材料からなる被塗物を変形することなく、高い接着強度及び優れた色調を有する塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例における塗膜特性と塗膜形成工程との関連を説明する図
【図2】本発明の実施例で用いた静電塗装装置の断面図
【図3】本発明の実施例で用いた塗膜形成装置の断面図
【図4】本発明の実施例で用いられた赤外光のスペクトル
【図5】本発明の実施例における被塗物材料と塗膜形成工程との関連を説明するための図
【図6】本発明の実施例における塗膜特性と赤外光吸収剤含有量との関連を説明するための図
【図7】本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂組成との関連を説明するための図
【図8】本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂組成との関連を表す図
【図9】本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂分子量分布との関連を説明するための図
【図10】本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂分子量分布との関連を表す図
【図11】本発明の第2の粉体塗料の断面図
【図12】表面改質装置の断面図
【図13】本発明の第2の粉体塗料の実施例における塗膜特性と赤外光吸収剤含有量との関連を説明するための図
【図14】本発明の第2の粉体塗料の変形例の断面図
【図15】本発明の第2の粉体塗料の変形例における塗膜特性と樹脂被膜との関連を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の粉体塗料は、熱可塑性樹脂からなる結着樹脂中に、着色剤及び赤外光吸収剤を含有し、この赤外吸収剤が赤外光を吸収して発熱することで溶融する。
【0020】
本発明の第1の粉体塗料では、結着樹脂として熱可塑性樹脂が用いられる。この熱可塑性樹脂は、赤外光が照射されたとき赤外光吸収剤が赤外光を吸収して発熱し、その発熱により加熱されて溶融し、流動化して塗膜を形成することができる程度の軟化温度及び熱可塑性を有する樹脂からなる。
【0021】
上記熱可塑性樹脂として、通常の粉体塗料の結着樹脂に用いられる樹脂、例えはエポキシ、アクリル又はポリエステルの樹脂を用いることができる。さらに、加熱により溶融したのち硬化させることができる樹脂、例えば紫外線硬化型の樹脂を用いることもできる。また、被塗物の耐熱性が高い場合、溶融温度より高温に加熱されて硬化する熱硬化性の樹脂を用いることもできる。
【0022】
エポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば良く、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、ビフェニル型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ナフタレン型、複素環式、脂環式、各種変成等のエポキシ樹脂またはそこにハロゲンを導入したハロゲン化エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0023】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂として、例えば、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(いずれもシェルケミカル社の商品名)を用いることができる。
【0024】
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、さらには必要によりこれら以外のエチレン性不飽和結合(C=C)含有モノマー等を(共)重合したものを用いることもできる。
【0025】
(メタ)アクリル酸の誘導体は、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリロニトリル類を用いることができる。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル類は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソプチル(メタ)アクリレート、2−3エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート[ドデシル(メタ)アクリレート]、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、β−メタリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、エチル−α−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0027】
(メタ)アクリルアミド類は、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドを用いることができる。
【0028】
(メタ)アクリロニトリル類は、例えば、(メタ)アクリロニトリル、エチルシアノ(メタ)アクリロニトリルを用いることができる。
【0029】
かかるアクリル樹脂には、上記以外の他のモノマーが共重合されていてもよく、例えば他のモノマーとして、スチレン、酢酸ビニル、ビニルトルエン、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合(C=C)含有モノマーが共重合されていてものを用いることができる。
【0030】
本発明の第1の粉体塗料に用いられる結着樹脂は、軟化温度が異なる2種類の樹脂、例えば軟化温度が50℃〜70℃の低軟化点樹脂と、軟化温度が80℃〜150℃の高軟化点樹脂との混合体とすることが好ましい。このような混合体では、赤外光照射の際に先に低軟化点樹脂が溶融し、溶融した樹脂が粉体粒子間を埋め込み粉体粒子間の熱伝達を高める。このため、高軟化点樹脂を含めた結着樹脂全体が容易に溶解するので一様な塗膜が形成される。
【0031】
軟化温度は、フローテスタ(島津製作所製、島津フローテスタCFT−500)を用いて昇温フローテストを行い、プランジャーが4mm降下したときの温度とした。この昇温フローテストの条件は、以下の通りである。
【0032】
ダイ 1mm×1mmφ 昇温温度 6℃/分
サンプル 1.5g ペレット 荷重 20kgf
予熱温度 60℃
予熱時間 300秒
なお、低軟化点樹脂の軟化温度が50℃未満では、粉体塗料の保存安定性が劣り好ましくない。また、低軟化点樹脂の軟化温度が70℃を超えると低軟化点樹脂の溶融が遅れ、粉体粒子間の熱伝達が効果的にされなくなるので、高軟化点樹脂の溶融が困難になる。その結果、高軟化点樹脂の一部が溶融せずに残り、粉体塗料が一様に溶融しないので、良質な塗膜が形成されず好ましくない。
【0033】
高軟化点樹脂の軟化温度が80℃未満では、粉体塗料の保存安定性が劣り好ましくない。また、高軟化点樹脂の軟化温度が150℃を超えると高軟化点樹脂の溶融が困難になり、粉体塗料が一様に溶融しないので好ましくない。
【0034】
また、本発明の第1の粉体塗料に用いられる結着樹脂として、分子量が1万以下の成分を20wt%以上含みかつ分子量が10万以上の成分を20wt%以上含む熱可塑性樹脂を用いることができる。即ち、この結着樹脂は、分子量が1万以下の成分及び10万以上の成分のそれぞれの組成比をX及びYとして、20wt%≦X≦80wt%かつ20wt%Y≦80wt%(0wt%≦X+Y≦100wt%)の範囲の組成を有する。なお、上記成分比(wt%)は、結着樹脂を100wt%とした値である。
【0035】
分子量が1万以下の樹脂成分は軟化温度が低く、分子量が10万以上の樹脂成分は軟化温度が高いので、かかる分子量分布を有する結着樹脂樹脂は、上述した軟化温度が異なる2種類の樹脂の混合体と同様に、小さな分子量の成分が初めに溶融して粉体粒子間の熱伝達が高まり、粉体塗料が容易に一様に溶融する。
【0036】
1万以下の分子量の成分が20%未満又は10万以上の分子量の成分が80%を超えると、粉体塗料の一様な溶融が阻害される、あるいは溶融した粉体塗料の粘度が高く一様な膜厚の塗膜が形成されにくい。他方、1万以下の分子量の成分が80%をこえる又は10万以上の分子量の成分が20%未満の場合、形成される塗膜の接着強度が劣るので好ましくない。さらに、保存安定性が悪化する他、溶融した結着樹脂の粘度が低すぎて、凹凸のある塗布物表面に一様な膜厚の塗膜を形成することが難しい。
【0037】
なお、結着樹脂の分子量分布は、上述した分子量1万以下及び10万以上の成分がそれぞれ20%〜80%の範囲にあれば、単峰性分布でも双峰性(又は多峰性)分布でも差し支えない。
【0038】
本発明の第1の粉体塗料に含有される赤外光吸収剤は、粉体塗料を加熱溶融するために照射される赤外光の吸収率(吸収係数)が高く、かつ、塗膜の色調への影響を少なくするために波長400nm〜800nmの可視光域の光吸収が小さな物質が望ましい。赤外光の吸収率を高めるために、照射赤外光の波長と赤外光吸収剤の吸収ピーク波長との差が100nm以内であることが好ましい。とくに、赤外光による急速加熱に通常多用されているフラッシュランプ、例えば波長800nm〜1100nmの領域に発光ピーク波長を有するキセノンランプの発光ピーク波長の赤外光を強く吸収する赤外光吸収剤が好ましい。
【0039】
かかる赤外光吸収剤として、波長800nm〜1100nmの領域に吸収ピークを有するジイモニウム及びアミニウムの化合物を用いることができる。とくにジイモニウム化合物は、赤外光吸収率がアミニウム化合物より高いのでより好ましい。他方、ジイモニウム及びアミニウムの化合物は波長400nm〜800nmの可視光域の光吸収が小さく、色調への影響が少なく好ましい。他に、塗膜の色調への影響が許容されるならば,赤外光吸収剤として、例えば酸化錫、酸化イッテルピウム、燐酸イッテルピウム、ニッケル錯体をもちいることができる。
【0040】
ジイモニウム系化合物として、一般式(1)
【0041】
【化1】
【0042】
で表される化合物を用いることができる。
【0043】
また、アミニウム系化合物として、一般式(2)
【0044】
【化2】
【0045】
で表される化合物を用いることができる。この一般式(1)及び(2)中、R1〜R8はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表し、Aはp−フェニレン基又はp−ビフェニレン基を表し、及び、X- は陰イオンを表している。
【0046】
これらの赤外光吸収剤の粉体塗料に対する含有比は、例えば上記ジイモニウム系及びアミニウム系の化合物では、0.1wt%〜3wt%とすることが好ましい。赤外光吸収剤の含有比が0.1wt%未満では赤外光吸収率が小さく、粉体塗料を一様に溶融することが難しい。一方、赤外光吸収剤の含有比が3wt%を超えると、赤外光吸収剤の可視光領域での吸収の影響が大きくなり、塗膜の色調が損なわれる。
【0047】
本発明の第1の粉体塗料に含有される着色剤は、通常の粉体塗料に使用される顔料を用いることができる。例えば、二酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、キナクリドン系赤色顔料等の無機系又は有機系の顔料を用いることができる。これらの顔料の粉体塗料に対する含有比は、1wt%〜10wt%であることが好ましい。含有比が1wt%未満では鮮やかな色調が得られず、他方、10wt%を超えると塗膜の強度が低下する。
【0048】
本発明の第1の粉体塗料は、さらに必要に応じて各種添加剤、例えば粉体塗料の帯電性を制御するための帯電制御剤、粉体塗料の導電性及び帯電性を制御するための針状酸化チタン、結着樹脂を硬化するための硬化剤を含むことができる。
(実施例1〜15)
以下、実施例に基づき本発明の第1の粉体塗料及びその粉体塗料を用いた塗装方法を詳細に説明する。
(実施例1〜3、比較例1〜3)
本発明の実施例1、2及び比較例1〜3は、塗膜形成工程の違いによる塗膜特性の違いを調べた実験に関する。
【0049】
図1は本発明の実施例における塗膜特性と塗膜形成工程との関連を説明する図であり、異なる塗膜形成工程により形成された塗膜の強度、色差及び保存安定性の評価結果を表している。なお、実施例3として、赤外光吸収剤をアミニウムとした実施例を表示した。
【0050】
実施例1、2及び比較例1〜3は、全て同一組成からなり、かつ以下の実施例1で説明する粉体試料製造工程により製造された粉体塗料を用いた。
【0051】
実施例1の粉体塗料の原料は、まず、結合樹脂として、分子量が1万以下の成分を25wt%、分子量が10万以上の成分を25wt%、残部として分子量が1万を超え10万未満の成分を50%wt含有するポリエステル樹脂を用いた。なお、このポリエステル樹脂の分子量分布は単峰性であった。この実施例1で用いた結合樹脂を、図1中の結合樹脂の欄にポリエステル樹脂No1として表記した。
【0052】
また、赤外光吸収剤として、ジイモニウム塩化合物(帝国化学産業(株)製の商品名NIR−IM1)を、着色剤として、赤顔料(DIC(株)製の商品名KET Red 338)を用いた。
【0053】
さらに、帯電制御剤としてカリックスアレン化合物を、帯電制御及び導電性制御のために針状酸化チタン(石原テクノ(株)製の商品名FT−1000)を用いた。
【0054】
上記原料から、結合樹脂を89重量部、赤外光吸収剤を0.5重量部、着色剤を5重量部、カリックスアレン化合物を2重量部及び針状酸化チタンを3重量部を調合し、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製の商品名FM−75型)に投入し、2000rpmで1分間回転し混合した。
【0055】
次いで、混合された原料を100℃に加熱されたニーダ((株)井上製作所製の商品名KH−3−S)に投入し、30分間、溶融混練し予備混練物を作製した。その後冷却した予備混練物をハンマーミルで粉砕したのち、さらに気流式の粉砕分級機を用いて粉砕・分級し、体積平均粒径が20μmの粉体塗料を製造し、実施例1の粉体塗料とした。
【0056】
次いで、上記工程により製造された粉体塗料を被塗物表面に付着する。
【0057】
この粉体塗料の付着には、以下に説明する静電塗装法を用いた。もちろん、他の方法により粉体塗料を付着しても差し支えない。
【0058】
図2は本発明の実施例で用いた静電塗装装置の断面図であり、静電塗装装置の主要な構成を表している。
【0059】
図2を参照して、本発明の実施例に用いた静電塗装装置100は、出願番号特願2009−070864(P2009−070864)の特許出願に開示されている粉体塗料の塗装方法で用いられている静電塗装装置と同様に、被塗物1に電圧が印加されたファーブラシ4を接触させて被塗物1を帯電させ、逆電位に帯電した粉体試料2を吹きつけて被塗物1表面に粉体塗料2を静電付着させ、被塗物1表面を被覆する粉体塗料からなる塗布膜3を形成する。
【0060】
より具体的には、被塗物1として、厚さ5mm、100mm×100mmの正方形板状のエポキシ板を用い、この被塗物1を板面が垂直になるように支持する。次いで、被塗物1の裏面(塗膜形成面の反対側の板面であり、図2では右側の板面)にファーブラシ4を接触させる。
【0061】
ファーブラシ4は、直径5mmのステンレス製の回転軸4aの外周面に、導電性繊維4bが植設されたもので、回転軸4aには電源6から正電位の帯電電圧が印加されている。この導電性繊維4bは、回転軸4aの外周面に導電性繊維4bを織り込んだパイル織物を巻き付け、回転軸4aの外周面にプラシ状に起毛する導電性繊維4bの切毛の長さを6mmに切り揃えた後、導電性繊維4bの先端を回転軸4aの回転方向に沿って倒伏するように成形して作製した。その結果、直径15mmの円筒形状のファーブラシ4が作製された。
【0062】
被塗物1とファーブラシ4との接触は、導電性繊維4bの先端を被塗物1裏面に接触させることでなされる。この接触により、回転軸4aから導電性繊維4bを介して帯電電圧が被塗物1に印加され、被塗物1は正電位に帯電する。なお、被塗物1裏面に接触する導電性繊維4bの先端の長さを1mm、ファーブラシ4の回転速度を500rpm、帯電電圧を1kVとした。
【0063】
次いで、被塗物1の表面側(図2中の左側)から負電位に帯電した粉体塗料2を吹きつけ、粉体塗料2を被塗物1表面に静電吸着させて粉体塗料2からなる厚さ80μm〜100μmの塗布膜3を形成した。粉体塗料2の吹きつけには、通常の粉体静電塗装で用いられる市販のコロナ帯電方式のスプレーガンを用いることができる。
【0064】
上述のファーブラシ4は、被塗物1裏面を摺動するように上下に移動可能に設けられる。これにより、絶縁性の被塗物1の全体を一様に帯電することができる。さらに、静電吸着をする間に負電位に帯電した粉体粒子2が付着することにより失われる被塗物1の帯電量が補充されるので、塗布膜3を厚く形成することができる。
【0065】
上記工程により被塗物1表面に静電吸着した粉体塗料2からなる塗布膜3を形成した後、以下に説明する塗膜形成装置110を用いて塗布膜3を溶融し冷却して、被塗物1表面に塗膜を形成する。
【0066】
図3は本発明の実施例で用いた塗膜形成装置の断面図であり、フラッシュランプの照射により粉体塗料粒子からなる塗布膜を加熱溶融して塗膜を形成する塗膜形成装置110の主要な構成を表している。
【0067】
上面に塗布膜3が形成された被塗物1は、オーブン11内を通過するベルトコンベア12上に載置され、オーブン11内に搬送される。オーブン11内は、予熱温度、例えば60℃に保持されており、オーブン11入口11aからオーブン11内に搬送された被塗物1及び塗布膜3は、この予熱温度に予備加熱される。なお、予熱温度は、被塗物1の変形を避けるため、被塗物1の軟化温度未満とする。
【0068】
オーブン11内のオーブン11出口11b近くに、赤外光照射器13が設けられている。赤外光照射装置13は、内径10.5mm、アーク長200mmの管状のキセノンフラッシュランプ13aが、管中心間距離を36mmにして互いに平行に配置され、さらにキセノンフラッシュランプ13aの側方及び上方を覆う反射板13bを備える。反射板13bに囲まれた赤外光照射装置13の下面は、赤外光を透過する窓13cとなる。この窓13cは、キセノンフラッシュランプ13aの管中心より25mm下方に位置し、窓13c位置での赤外光照射器13の発光エネルギー密度は4.5J/cm2 であった。また、キセノンフラッシュランプ13aの発光時間は1個の被塗物1当たり1000μ秒とした。
【0069】
被塗物1は、赤外光照射器13の下を通過する際に、キセノンフラッシュランプ13aが発光する赤外光により照射される。
【0070】
図4は本発明の実施例で用いられた赤外光のスペクトルであり、キセノンフラッシュランプ13aの発光スペクトルを表している。図3を参照して、キセノンフラッシュランプ13aは、800nm〜1000nmの波長領域に強い発光ピークを有する。
【0071】
赤外光吸収剤として用いられたジイモニウム塩化合物は、波長800nm〜1100nmの領域に吸収ピークを有するので、キセノンフラッシュランプ13aの発光赤外線を強く吸収して発熱し、その周辺の結着樹脂を加熱する。そのため、赤外光吸収剤に接する結着樹脂に含まれる低軟化点樹脂が初めに溶融してゲル状になり、未だ溶融していない高軟化点樹脂及び粉体塗料粒子の周囲を充填する。溶融した樹脂は固体の樹脂に比べて熱伝達が非常に大きいため、発熱する赤外光吸収剤の熱は結着樹脂全体へ一様に伝熱される。従って、粉体塗料からなる塗布膜3は、赤外光照射により全体が容易に一様かつ迅速に溶融する。このため、一様な塗膜5が形成される。
【0072】
他方、被塗物1の上面は照射される赤外光を強く吸収する粉体塗料(塗布膜3)で被覆されているため、被塗物1表面に到達する赤外光強度は小さく、被塗物1が変形するほど加熱されない。従って、キセノンフラッシュランプ13aを光源とする赤外光加熱により、被塗物1の変形を回避しつつ被塗物1表面に、粉体塗料の溶融・冷却により形成される強い接着強度、一様な優れた色調を有する塗膜5が形成される。
【0073】
再び図3を参照して、赤外光照射により表面に塗膜5塗膜が形成された被塗物1は、オーブン11の搬出口11bを通りオーブン11から搬出され、室温まで冷却される。上述した粉体塗料の製造工程、粉体塗料の静電塗装工程及び塗膜形成工程を経て、実施例1の被塗物1表面を被覆する塗膜5が形成される。
【0074】
次いで、形成された塗膜5の塗膜強度及び色彩を調べた。塗膜5の塗膜強度は、被塗物1表面に形成された塗膜5を、幅5mmの間隔で縦横に10個×10個の枡目状にカットし、その上面にセロハンテープを貼付して引き剥がしたときに、100個の枡目のうち塗膜5が被塗物1表面に残留している枡目の数Nに基づき以下の通り判定した。
【0075】
塗膜5が残留する枡目の数Nが90以上の場合を優(◎)、
塗膜5が残存する枡目の数Nが70以上かつ90未満の場合を良(○)
塗膜5が残存する枡目の数Nが70未満の場合を不良(×)、
と判定した。ここで()内は図1中で塗膜強度を表示するために用いた記号である。
【0076】
塗膜5の色彩は、以下に説明する色調標準試料を基準とし、この色調標準試料との色差ΔEに基づき以下の通り判定した。
【0077】
色差ΔEが10未満のものを優(◎)、
色差ΔEが10以上かつ15未満のものを良(○)、
色差ΔEが15以上のものを不良(×)、
と判定した。ここで()内は図1中で色差を表示するために用いた記号である。
【0078】
色調標準試料の塗膜は、赤外光吸収剤を含有しないことを除き、上述した実施例1で用いられた粉体塗料2と同一組成の標準試料用粉体塗料を用いて形成した。塗膜形成工程は、被塗物1であるエポキシ板上面に実施例1と同様の工程で標準試料用粉体塗料を静電塗布し、その後、オーブン11内で100℃で30分間加熱して標準試料用粉体塗料を溶融し、冷却して塗膜5を形成した。この色調標準試料の塗膜は、赤外光吸収剤を含まず、かつ、その加熱溶融工程では粉体塗料が完全に溶融するに十分な加熱温度と時間とを費やして形成される。従って、赤外光吸収剤に起因する色調への影響、および粉体塗料の溶融不良に起因する色調への影響が回避されて、塗膜本来の色調が実現されるので、色調標準試料として用いるに適している。
【0079】
色差ΔEは、上記色調標準試料を基準とし、各実施例及び各比較例との色差を色差計(X−Rite社の商品名色差計938Spectrodentittometer(測定光源CIE−D65))を用いて測定した。
【0080】
図1には、上記塗膜強度および色差の他、さらに粉体塗料の保存安定性を示した。この保存安定性は、粉体試料を40℃の環境中に30日間放置したとき、放置前後で体積平均粒径の変化が10%以下のものを良(○)、体積平均粒径が10%を超えて変化するものを不良(×)とした。
【0081】
図1に、粉体塗料および被塗物材料が同一で、塗膜形成工程(塗布膜3の溶融工程)のみが異なる実施例1〜2及び比較例1〜3について、塗膜の評価結果を示した。
【0082】
図1を参照して、60℃で予熱後、フラッシュ光照射(キセノンフラッシュランプ13aによる赤外光照射)により形成された実施例1の塗膜5は、優れた塗膜強度(剥離強度)と良好な保存安定性とを有する。また、色調標準試料との色差ΔEは、10<=ΔE<15であり良と評価された。かかる色差が生ずるのは、赤外光吸収剤が僅かに可視光を吸収するため、塗膜の彩度が劣化するからである。
【0083】
実施例2は、実施例1と予熱工程がないことのみが異なる。この実施例2では、実施例1と比べて塗膜強度がやや劣り、良と評価されている。このことは、予熱工程が塗膜強度を向上させることを明らかにしている。これは、予熱することにより、フラッシュ光照射時により完全に塗布膜3が溶融するためと推測している。
【0084】
比較例1は、フラッシュ光照射の工程が除去されている他は実施例1と同じである。この比較例1では、塗布膜3が完全に溶融せず、良質の塗膜3が形成されない。従って、実施例1と比べて塗膜強度及び色差は著しく劣る。これに対して、実施例1及び実施例2ではフラッシュ光照射により塗布膜3が完全に溶融し、良好な塗膜が形成されることを示している。
【0085】
比較例2は、実施例1のフラッシュ光照射に代えて、塗布膜3を100℃に加熱し溶融したものである。他は、実施例1と同様である。この比較例2では、塗布膜3が完全に溶融して、高い塗膜強度と良好な色調(色差が小さい)を有する塗膜5が形成された。しかし、100℃の高温に加熱するため、ABS樹脂のような低軟化点材料は軟化し変形する。このため、低軟化点材料を含む被塗物1には塗膜5を形成することができない。
【0086】
比較例3は、実施例1のフラッシュ光照射(キセノンフラッシュランプ13aによる赤外光照射)に代えて、ハロゲンランプを光源として光照射したものである。他は、実施例1と同様である。この比較例5では、塗布膜3が十分に溶融せず、塗膜が形成されなかった。このため、塗膜強度は低くかつ色差も大きい。これは、赤外光吸収剤の吸収波長とハロゲンランプの発光ピーク波長とが大きくずれているため、光が赤外光吸収剤に吸収されず塗布膜3が加熱されないことを示唆している。さらに、赤外光吸収剤を含有しない粉体塗料では、フラッシュ光照射により加熱することができず、良好な塗膜5が形成されないことを示している。
【0087】
上述の実施例1、2に見られるように、フラッシュ光の発光ピーク波長近くに吸収ピークを有する赤外光吸収剤を接合樹脂に含有させた粉体塗料を用い、フラッシュ光照射により粉体塗料を溶融することで塗膜強度、色調の優れた塗膜を、被塗物1を変形することなく形成することができる。
【0088】
他方、比較例1、3に見るように、フラッシュ光の発光ピーク波長を吸収できない粉体塗料を用いた場合は粉体塗料を十分に溶融することができず、良質な塗膜が形成されない。なお、比較例2のように、フラッシュ光照射をせず、単に加熱により粉体塗料を溶融して塗膜を形成するのでは、低軟化点材料を構成要素に含む被塗物に対して、被塗物を変形することなく塗膜を形成することは難しい。
【0089】
図1を参照して、実施例3は、実施例1の粉体塗料に赤外吸収吸収剤として0.5wt%含まれるジイモニウム塩に代えて、赤外吸収吸収剤として0.5wt%のアミニウム塩を含有させたものである。赤外吸収吸収剤の他は実施例1と同様である。なお、アミニウム塩として、帝国化学産業(株)の製品名NIR−AM1)を用いた。
【0090】
実施例3では、実施例1の塗膜よりやや塗膜強度が劣る(良と評価された。)が、塗膜の色差は実施例1と同等であった。実施例3の塗膜強度が劣るのは、アミニウム塩の単位重量当たりの赤外光吸収がジイモニウム塩より小さいため、フラッシュ光照射による塗布膜3の温度上昇が小さいためと推測している。なお、アミニウム塩及びジイモニウム塩は樹脂に淡緑色を加味するが、それが色彩に与える影響は両者で大差がない。従って、塗膜の色差が小さく、かつ、塗膜強度の高い塗膜を形成するためには、アミニウム塩よりもジイモニウム塩を用いることが好ましい。
(実施例4、比較例4)
本発明の実施例4及び比較例4は、低耐熱性材料からなる塗布物上へ塗膜を形成したとき、塗膜形成工程の違いによる違いを調べた実験に関する。
【0091】
図5は本発明の実施例における被塗物材料と塗膜形成工程との関連を説明するための図であり、実施例4及び比較例4の塗膜の評価結果を表している。
【0092】
実施例4及び比較例4では、被塗物1として厚さ5mm、100mm×100mmの正方形板状形状を有するポリカABS樹脂(ABS樹脂とポリカーボネートのポリマーアロイ)を用いた。即ち、実施例4及び比較例4は、被塗物1材料としてエポキシ樹脂より軟化温度が低いポリカABS樹脂を用いる点で実施例1と異なる。
【0093】
実施例4は、上記被塗物1材料が異なる他は実施例1と同じ粉体塗料及び同じ工程を用いて塗膜5を形成した。これに対して、比較例4は、被塗物1材料が異なる他、さらにフラッシュ光照射工程に代えてオーブン11内で100℃に加熱する加熱工程により粉体試料を溶融した点で異なる。この2点を除き、他は実施例1と同様である。
【0094】
図5を参照して、実施例4及び比較例4とも、塗膜強度が高くかつ色差の小さな優れた塗膜5が形成された。さらに、本発明の実施例1と同様にフラッシュ光照射により塗膜を形成した実施例4では、低軟化点材料であるポリカABD樹脂からなる被塗物1を熱変形させることなく塗膜が形成された。これに対して、オーブン11内での加熱工程により塗膜を形成した比較例4の場合では、ポリカABS樹脂からなる被塗物1は熱変形した。
【0095】
このように、加熱工程により粉体塗料を溶融し塗膜を形成する従来の塗膜形成方法では、被塗物が変形することから、低軟化点材料上への粉体塗装は困難とされていた。しかし、赤外光吸収剤を含む本発明の第1の粉体塗料を用い,かつ赤外光のフラッシュ照射により粉体塗料を溶融し塗膜を形成する本発明の塗膜形成方法では、被塗物を変形することなく、低軟化点材料の被塗物上に優れた塗膜強度及び色調を有する塗膜5を形成することができる。
(実施例5〜6、比較例5〜7)
本発明の実施例5〜6及び比較例5〜6は、赤外吸収剤の含有量と塗膜特性との関連を調べた実験に関する。なお、比較例7は、赤外吸収剤としてナフタロシアニンを用いたものを比較例として示したものである。
【0096】
図6は本発明の実施例における塗膜特性と赤外光吸収剤含有量との関連を説明するための図であり、本発明の実施例5〜6及び比較例5〜6の塗膜の評価結果を表している。なお、図1中に示した実施例1の結果を、理解を容易にするために再度図6中に表示した。
【0097】
図6を参照して、比較例5、実施例5、実施例1、実施例6及び比較例6は、赤外光吸収剤として用いたジイモニウム塩の含有量を、それぞれ0.05wt%、0.1wt%、0.5wt%、3wt%及び4wt%としたものである。その他は粉体塗料(赤外光吸収剤の含有量を除く)及び塗膜形成工程とも第1実施例1と同様である。
【0098】
ジイモニウム塩含有量が0.05wt%と少ない比較例5では、塗膜強度及び色差ともに不良と評価された。これは、粉体塗料からなる塗布膜3の溶融が不十分で、一様な塗膜5が形成されないためである。
【0099】
ジイモニウム塩含有量が0.1wt%〜3wt%の実施例5、実施例1及び実施例6では、塗膜強度及び色差とも良好な塗膜5が形成された。これらの実施例のなかで、ジイモニウム塩含有量が0.1wt%と少ない実施例5の塗膜5は、0.5wt%及び3wt%とと含有量が多い実施例1及び実施例6と比べて、色差が少なく優れた色調を呈する一方、塗膜強度がやや低い。
【0100】
この色差の相違は、ジイモニウム塩は可視光領域に吸収帯を有するため、その含有量が多い実施例1及び実施例6の塗膜5は彩度が劣化するのに対し、ジイモニウム塩の含有量が少ない実施例5の塗膜では彩度の劣化が少ないからである。
【0101】
また、塗膜強度は、赤外光吸収剤(ジイモニウム塩)が多いほど大きい。これは、赤外光吸収剤が多いほど、赤外光照射(フラッシュ照射)による加熱が速く、粉体塗料が確実に溶融されることを示している。
【0102】
比較例6を参照して、ジイモニウム塩含有量が4wt%に増量すると、色差が大きくなり優れた色調の塗膜5が形成されない。これは、ジイモニウム塩の可視光領域の吸収が大きくなり、塗膜の彩度が劣化するためである。
【0103】
上述の実施例5、1及び6及び比較例5、6の結果からみて、ジイモニウム塩含有量は、0.1wt%〜3wt%とすることが好ましい。0.1wt%未満では、塗膜強度及び色調とも劣る塗膜5が形成され、3wt%以上では、色調が劣化した塗膜5が形成される。
【0104】
比較例7は赤外光吸収剤としてナフタロシアニンを用いた他は実施例1と同様である。なお、比較例7と実施例1とは、赤色吸収剤の重量含有量も同一である。
比較例7は、実施例1と比べて、塗膜強度は同等であるが色差が大きく色調が劣る。これは、ナフタロシアニンは赤外光領域の他、ジイモニウム塩及びアミニウム塩と比較して可視光をも強く吸収するため、塗膜の彩度が劣化するからである。従って、赤外光吸収剤は可視光領域の吸収が少ない物質、例えばジイモニウム塩及びアミニウム塩とすることが好ましい。
【0105】
(実施例7〜10、比較例8〜12)
実施例7〜10及び比較例8〜12は、軟化温度が異なる2つの樹脂の混合体を接合樹脂として用いた粉体塗料に関する。
【0106】
図7は本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂組成との関連を説明するための図であり、混合された2つの樹脂の軟化温度と塗膜特性との関連を表している。なお、図7の結合樹脂成分の軟化温度の欄に、実施例7〜10及び比較例8〜12に用いられた低軟化点樹脂及び高軟化点樹脂の軟化温度を示した。軟化温度は、既述のフローテスタを用いて測定した。
【0107】
図7を参照して、実施例7〜10及び比較例8〜12では、軟化温度が低い低軟化点樹脂と軟化温度が高い高軟化点樹脂の混合体を結合樹脂とする粉体塗料を用いた。
【0108】
これら低軟化点樹脂及び高軟化点樹脂としてともにポリエステル樹脂を用い、これらの樹脂を重量比で等量づつ配合された樹脂混合体を形成し、これを接合樹脂とした。さらに、この接合樹脂に赤外光吸収剤及び他の添加剤を加え、実施例1と同様にして粉体塗料を形成した。実施例7〜10及び比較例8〜12では、この結合樹脂組成を除き、粉体塗料の他の成分及び粉体塗料の製造工程から塗膜の形成工程に至るまで実施例1と同様である。
【0109】
図8は本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂組成との関連を表す図であり、図7中に示す結果を2つの樹脂の軟化温度をそれぞれ横軸及び縦軸に採った図で表している。なお、図8中、◎は塗膜強度が優れかつ色差が良と評価された塗膜を、○は塗膜強度が良でかつ色差が良と評価された塗膜を、及び、×は塗膜強度、色差が不良と評価された塗膜を表している。なお、◎又は○に、×を重ねて標記したものは、それぞれ塗膜強度が優又は良でかつ色差が良と評価されたが、粉体塗料の保存安定性が不良と評価されたものである。
【0110】
図7及び図8を参照して、低軟化点樹脂の軟化温度が70℃以下、かつ、高軟化点樹脂の軟化温度が150℃以下の場合(実施例7〜10、及び比較例9、11)は、塗膜強度が優又は良、色差は良と評価され、良好な塗膜が形成された。
【0111】
これらの中で、塗膜特性は良好であっても、低軟化点樹脂の軟化温度が45℃と低い比較例9では、粉体塗料の保存安定が劣り実用上好ましくない。また、高軟化点樹脂の軟化温度が75℃と低い比較例11も同様に、粉体塗料の保存安定が劣り好ましくない。従って、粉体塗料の保存安定性の観点から、低軟化点樹脂の軟化温度を50℃以上かつ高軟化点樹脂の軟化温度を80℃以上とすることが好ましい。
【0112】
低軟化点樹脂の軟化温度が70℃を超える場合(比較例8、10)、又は、高軟化点樹脂の軟化温度が150℃を超える場合(比較例12)は、塗膜強度及び色差が共に不良と評価され、良好な塗膜が形成されされない。これは、粉体塗料が赤外光照射時に十分に溶融しないからである。
【0113】
低軟化点樹脂の軟化温度がそれぞれ75℃及び80℃の比較例8、10では、赤外光吸収剤の発熱により溶融すべき低軟化点樹脂の溶融速度が遅いため、粉体塗料全体(塗布膜3)に熱が拡散せず、一様に溶融しないため、良好な塗膜が形成されなかったと推測される。また、高軟化点樹脂の軟化温度が155℃である比較例12では、低軟化点樹脂が溶融しても高軟化点樹脂の溶融が遅れて粉体塗料全体が一様に溶融しないため、同様に良好な塗膜が形成されなかったと推測される。従って、良好な塗膜特性を有する塗膜を形成するという観点からは、低軟化点樹脂の軟化温度を70℃以下、かつ、高軟化点樹脂の軟化温度を150℃以下とすることが好ましい。
【0114】
上述の実施例7〜10、及び比較例8〜12の結果から、低軟化点樹脂と高軟化点樹脂のとの混合体を本発明の第1の粉体塗料の結合樹脂として用いる場合、低軟化点樹脂の軟化温度を50℃以上70℃以下とし、かつ、高融点樹脂の軟化温度を80℃以上150℃以下(図8中のハッチングされた領域)とすることが、塗膜特性及び粉体塗料の保存安定性の観点から好ましい。
(実施例11〜15、比較例13〜15)
実施例11〜15及び比較例13〜15は、接合樹脂として分子量分布が異なる樹脂を用いた粉体塗料に関する。
【0115】
実施例11〜15及び比較例13〜15は、実施例1の結合樹脂に代えて、分子量分布が異なる樹脂を結合樹脂として用いた他は、実施例1と同様である。なお、これらの結合樹脂の分子量分布は単峰性である。
【0116】
図9は本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂分子量分布との関連を説明するための図であり、結合樹脂中の分子量分布と塗膜特性との関連を表している。図10は本発明の実施例における塗膜特性と結合樹脂分子量分布との関連を表す図であり、図9の結果を分子量の大きさが異なる3つの分子量成分の割合との関係により表している。
【0117】
図9を参照して、実施例11は、分子量が1万以下の成分を20wt%及び分子量が10万以上の成分を20wt%含有し、残部が分子量1万を超え10万未満の成分からなるポリエステル樹脂を結合樹脂とし、この結合樹脂から実施例1と同様の方法で粉体塗料を製造した。そしてこの粉体塗料を用いて、実施例1と同様の工程でエポキシ板からなる被塗物1上に塗膜5を形成し、塗膜特性を調べた。
【0118】
同様に、実施例12、13、14及び15は、1万以下の分子量成分をそれぞれ25wt%、50wt%、20wt%、及び40wt%含み、10万以上の分子量成分をそれぞれ20wt%、20wt%、50wt%、及び40wt%含む樹脂を結合樹脂とし、実施例1と同様にして形成された塗膜5の塗膜特性を調べた。
【0119】
図10を参照して、これら実施例11〜実施例14は、いずれも結合樹脂に対する1万以下の分子量を有する成分の組成比Xが20wt%≦X≦80wt%、かつ、10万以上の分子量を有する成分の組成比Yが20wt%≦Y≦80wt%の範囲(図10中のハンチングされた領域)にある。組成比X、Yが、この範囲内にある場合は、図9を参照して、接着強度及び色差とも良と評価される良好な塗膜5が形成された。なお、組成比X、Yが採り得る範囲は、組成比としての性質上、0wt%≦X+Y≦100wt%である。
【0120】
他方、比較例13〜比較例15は、いずれも図10中のハッチングされた領域の外側に位置する組成比X、Yを有する樹脂を結合樹脂として使用したものである。即ち、比較例14では組成比X=15wt%、組成比Y=15wt%であり、比較例14では組成比X=15wt%、組成比Y=15wt%である。また、比較例13では組成比X=15wt%、組成比Y=50wt%である。これらの比較例13、14、15は、いずれも一様な塗膜が形成されず、塗膜強度及び色差とも不良と評価された。このことは、組成比Xが20wt%未満の場合、あるいは、組成比Yが20wt%未満の場合は、赤外光照射(フラッシュ光照射)によるの粉体塗料の溶融が不完全で、一様な塗膜が形成されないことを示している。
【0121】
従って、良好な塗膜が形成される結合樹脂の組成比X、Yは、図10中のハッチングされた領域(20wt%≦X≦80wt%、20wt%≦Y≦80wt%の範囲)であり、より確実には、このハッチングされた領域のうち、さらに実施例11〜実施例15を含む組成範囲、即ち図10中に示した点線より分子量1万超10万未満の成分が多い領域(20wt%≦X+Y)とすることが好ましい。
【0122】
次に、本発明の第2の粉体塗料について説明する。
【0123】
上述した本発明の第1の粉体塗料では、赤外光吸収剤が粉体塗料の粒子中に均一に分散している。このため、照射した赤外光は主に粉体塗料粒子の外殻で吸収され、吸収に寄与しない赤外光吸収剤が粉体塗料粒子の内部に多く存在する。赤外光吸収剤は可視光域にも吸収帯を有するから、このような赤外光吸収に寄与しない赤外光吸収剤の存在は、無用に塗膜の色調を劣化させるので好ましくない。また、赤外光吸収剤は高価であるから、コスト低減のためにも赤外光吸収に寄与しない無用な赤外光吸収剤を少なくすることが望ましい。本発明の第2の粉体塗料は、かかる本発明の第1の粉体塗料の欠点を改善し、より色調の優れた塗膜を形成することができる粉体塗料に関する。
【0124】
図11は本発明の第2の粉体塗料の断面図であり、赤外光吸収剤粒子22を表面に担持した樹脂粒子21を表している。
【0125】
図11を参照して、本発明の第2の粉体塗料20は、樹脂粒子21と、その樹脂粒子21の表面に担持された赤外光吸収剤粒子22とを有する。
【0126】
赤外光吸収剤粒子22は、赤外光吸収剤からなる粒子又は赤外光吸収剤を含有する物質、例えば樹脂からなる粒子であり、樹脂粒子21の表面に固着されている。そして、第1の粉体塗料を用いた塗膜形成工程と同様に、第2の粉体塗料20を被塗物に静電塗布(図2参照)したのち、赤外光照射を含む塗膜形成工程(図3参照)により塗膜を形成することができる。この塗膜形成工程中で、赤外光吸収剤粒子22は照射された赤外光を吸収して発熱し、赤外光吸収剤粒子22が固接する樹脂粒子21を溶融する。このように、被塗物に静電塗布された第2の粉体塗料20は溶融して被膜を形成するから、第1の粉体塗料と同様に良好かつ一様な色調の塗膜が形成される。
【0127】
この本発明の第2の粉体塗料20では、樹脂粒子21中には赤外光吸収剤を含まないか又は低濃度とされる。他方、赤外光吸収剤粒子22が樹脂粒子21の表面に担持されるので、赤外光吸収剤は主として樹脂粒子21の表面上近傍の小さな領域(即ち赤外光吸収剤粒子22中)にのみ高濃度に分布する。このため、照射された赤外光は、樹脂粒子21ではあまり吸収されず、主に樹脂粒子21の表面に固着した赤外光吸収剤粒子22中に吸収される。このように、赤外光吸収剤を樹脂粒子21の表面上近傍にのみ高濃度に分布させる第2の粉体塗料20では、第1の粉体塗料のように粉体塗料粒子内に赤外光の吸収に寄与しない赤外光吸収剤が多く含まれるということがない。このため、赤外光吸収剤が粉体塗料の粒子中に均一に分布する本発明の第1の粉体塗料と比較して、第2の粉体塗料20では、赤外光吸収剤の含有量(粉体塗料20中の濃度)が少なくても第2の粉体塗料20を十分に溶融することができる。従って、第2の粉体塗料20を用いることで、赤外光吸収剤を少なくして色差が小さな優れた色調の塗膜を形成することができる。
【0128】
第2の粉体塗料20の赤外光吸収剤として、第1の粉体塗料が含有する赤外光吸収剤、例えばジイモニウム系化合物又はアミニウム系化合物を用いることができ、とくに色調の観点からは着色が少ないジイモニウム系化合物を用いることが好ましい。
【0129】
樹脂粒子21は、結着樹脂として用いられる熱可塑性樹脂を主成分とし、着色剤及び必要に応じて各種添加剤、例えは、粉体塗料の帯電性を制御するための帯電制御剤、粉体試料の導電性及び帯電性を制御するための針状酸化チタン、結着樹脂を硬化するための硬化剤を含むことができる。なお、樹脂粒子21を構成する結着樹脂は、後述するように、赤外光吸収剤を含まないことが望ましく、少なくとも既述の第1の粉体塗料で用いられた結合樹脂よりも低い赤外光吸収剤含有量とすることが好ましい。
【0130】
第2の粉体塗料20の熱可塑性樹脂として、例えば第1の粉体塗料と同一の熱可塑性樹脂、例えば実施例1〜15で説明した熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。かかる軟化点の低い成分を含む熱可塑性樹脂を用いると、樹脂粒子21に接触する近傍の樹脂粒子21中の低軟化温度成分の樹脂が初めに溶融し、熱可塑性樹脂内の熱伝達が良好になる。その結果、少量の赤外光照射量でも容易に樹脂粒子21を溶融することができる。
【0131】
樹脂粒子21に含まれる着色剤は、第1の粉体塗料に含まれる着色剤と同様の着色剤を用いることがてきる。また、必要に応じて添付される各種添加剤も第1の粉体塗料と同様にしてよい。即ち、本発明の第2の粉体塗料20を構成する樹脂粒子21は、赤外光吸収剤の含有の有無又は含有量(濃度)を除き、他は既述の第1の粉体塗料と同一組成とすることができる。
【0132】
上述した本発明の第2の粉体塗料20は、表面改質装置((株)奈良機械製作所の商品名ハイブリダイゼーションシステムNHS−1)を用いて以下の工程で製造することができる。
【0133】
本発明の第2の粉体塗料20の製造工程では、まず、着色剤、必要な添加剤及び熱可塑性樹脂をヘンシルミキサーに投入し、2000rpmで1分間回転し混合した。この着色剤、必要な添加剤及び熱可塑性樹脂の材料及び混合比は、赤外吸収剤を含有しないことを除き、他は実施例1のポリエステル樹脂No1と同様とした。
【0134】
次いで、この混合物を100℃に加熱したニーダに投入し、30分間溶融混練し樹脂混練物を作成した。その後、この樹脂混練物を冷却し、ハンマーミルで粉砕して体積平均粒径が20μmの粉末状の樹脂粒子21を形成した。
【0135】
上記樹脂粒子21の形成とは別に、体積平均粒径1μmの赤外光吸収剤粉末を準備し、この赤外光吸収剤粉末と樹脂粒子21とを表面改質装置120に投入し、図11に示すような球状の樹脂粒子21の表面に赤外光吸収剤粒子22が固着した第2の粉体塗料20を製造した。なお、赤外光吸収剤粒子22は、樹脂粒子21の表面に固着した赤外光吸収剤粉末である。
【0136】
図12は表面改質装置の断面図であり、ハイブリダイゼーションシステムを用いた表面改質装置120の主要構造を表している。
【0137】
表面改質装置120は、円筒状の衝突リング124内で回転軸121廻りに高速回転する円板状のローター123と、ローター123板面にに放射状に突出して設けられた衝撃ピン125とを備える。さらに、気流を回転軸121近傍から吹き込み衝突リング124に設けられた開口から流出する閉回路を形成する循環回路が設けられている。
【0138】
赤外光吸収剤粉末及び樹脂粒子21は、気流と共にこの巡回回路を介して、回転軸121近くから表面改質装置120内に吹き込まれる。表面改質装置120内に吹き込まれた赤外光吸収剤粉末及び樹脂粒子21は、高速回転するローター123と衝撃ピン125とが引き起こす高速気流に運ばれ、互いにあるいは衝撃ピン125及び衝撃リング124と激しく衝突する。この衝突により、樹脂粒子21は球形に成形され、一方、赤外光吸収剤粉末は樹脂粒子21の表面に埋め込まれて又は溶着して固着される。この結果、図11に示すように、平均粒径20μmの球形の樹脂粒子21の表面に体積平均粒径1μmの赤外光吸収剤粒子22(赤外光吸収剤粉末)が固着した第2の粉体塗料20が製造される。
【0139】
次いで、第2の粉体塗料20を被塗物の表面に第1実施例と同様の静電塗装法を用いて塗布した後、赤外光照射により粉体塗料20を加熱し溶融する第1実施例と同様の塗膜形成工程を用いて被塗物の表面に塗膜を形成した。以下、第2の粉体塗料20を用いて形成された塗膜の塗膜特性について説明する。
(実施例16〜18、比較例16〜17)
図13は本発明の第2の粉体塗料の実施例における塗膜特性と赤外光吸収剤含有量との関連を説明するための図であり、赤外光吸収剤の含有量と塗膜特性との関連を表している。なお、実施例16〜18及び比較例16〜17で用いた第2の粉体塗料20は、赤外光吸収剤のジイモニウムの含有量が異なる他は、全て同一である。また、比較例5は、粉体状の塗料粒子の内部に赤外光吸収剤を含有する第1の粉体塗料を用いて形成された塗膜の特性を表している。
【0140】
図13の実施例16〜18を参照して、赤外光吸収剤であるジイモニウムの含有量が粉体塗料の重量に対して0.01wt%〜3wt%の範囲にある場合、塗膜強度及び色差とも優(◎)又は可(○)と判定される良質の塗膜が形成された。このことは、第2の粉体塗料20においては、0.01wt%〜3wt%の赤外吸収剤含有量の範囲で、赤外光照射により粉体塗料が十分に溶融し、均一な特性の塗膜が形成されることを示している。
【0141】
ジイモニウムは可視光域にも光吸収を有するため、ジイモニウムを含有する樹脂は淡い色彩を呈する。そのため、ジイモニウムの含有量が多いと塗膜の色差が大きくなり、色調が劣化する。従って、色調の観点からはジイモニウムの含有量は少ないことが好ましい。
【0142】
ジイモニウムの含有量が0.01wt%と少ない実施例16では、色差が小さく色調は優れる。これに対して、ジイモニウムの含有量がこれより多い0.05wt%の実施例17では、色差が実施例16よりやや劣り良と判定されるものの通常の使用条件では良好とされる。さらにジイモニウム含有量が3wt%と高い実施例18では、色差がさらに大きく実用上も使用条件によっては支障をきたすこともある。そして、ジイモニウム含有量が4wt%の比較例17では、色差が大きく良好な色調を呈する塗膜が形成されない。従って、色調の観点から、赤外光吸収剤、例えばジイモニウムの含有量は3wt%以下が好ましく、より好ましくは0.05wt%以下である。
【0143】
一方、比較例16を参照して、ジイモニウムの含有量が少な過ぎる場合、例えば0.005wt%では、塗膜が形成されず、皮膜強度及び色差ともに不良とされた。これは、赤外光照射の際の赤外光吸収量が少なく、被塗物に塗布された第2の粉体塗料20を溶融することができないからである。従って、赤外光吸収剤、例えばジイモニウムの含有量は0.01wt%以上とすることが好ましい。
【0144】
図13中の比較例5を参照して、0.05wt%の赤外光吸収剤を含有する本発明の第1の粉体塗料を用いて形成した塗膜では、第1の粉体塗料が赤外光照射で溶融しないため良質な塗膜が形成されず、塗膜強度及び色差ともに不良とされた。これに対して、実施例17を参照して、比較例5と同一の0.05wt%の赤外光吸収剤を含有する本発明の第2の粉体塗料20を用いて形成された塗膜では、第2の粉体塗料20が赤外光照射により確実に溶融して、良質な塗膜が形成される。このように、本発明の第2の粉体塗料20を用いると、塗膜中の赤外光吸収剤濃度が同じならば、本発明の第1の粉体塗料を用いるよりも良質の塗膜を形成することができる。
【0145】
また、上述したように、図13中の第2の粉体塗料20に関する実施例16〜18を参照して、第2の粉体塗料20では、赤外光吸収剤含有量が0.01wt%〜3wt%の範囲で良質な塗膜が形成される。これに対して、図6中の第1の粉体塗料に関する実施例5、1及び6とを参照して、第1の粉体塗料20では、良質な塗膜が形成される赤外光吸収剤含有量の範囲が0.1wt%〜3wt%であり、第2の粉体塗料20を用いた場合、とくに赤外光吸収剤含有量を低くしても良質な塗膜が形成されることを示している。このように、第2の粉体塗料20を用いると、赤外光吸収剤の濃度を低くして優れた色調を有する塗膜を形成することができる。
【0146】
図14は本発明の第2の粉体塗料の変形例の断面図である。図14を参照して、本発明の第2の粉体塗料の変形例の粉体塗料23は、樹脂粒子21の表面に赤外光吸収剤粒子22を担持する第2の粉体塗料20の表出面を被覆する樹脂皮膜24、即ち樹脂粒子21及び赤外光吸収剤粒子22を被覆する樹脂皮膜24を備える。
【0147】
この樹脂皮膜24は、樹脂粒子21と同一の樹脂あるいはより軟化温度が低い樹脂を用いることができる。この第2の粉体塗料の変形例の粉体塗料23では、赤外光吸収剤粒子22の表面を被覆する樹脂皮膜24がまず溶融して液化し赤外光吸収剤粒子22及び樹脂粒子21の表面を浸すので、赤外光吸収剤粒子22と樹脂粒子21との間の熱伝達が高くなり、樹脂粒子21の溶融がより確実になされる。このため、良質の塗膜をより確実に形成することができる。
【0148】
かかる樹脂皮膜24を備える粉体塗料23は、上述した第2の粉体塗料20の製造工程において、赤外光吸収剤粉末と樹脂粒子21とを表面改質装置120に投入する際に、同時に樹脂粉末を投入することで形成することができる。樹脂粉末量は、樹脂粉末が溶融して樹脂粒子の全表面を覆うように、例えば粉体塗料23の0.5wt%とした。
【0149】
図15は本発明の第2の粉体塗料の変形例における塗膜特性と樹脂被膜との関連を説明するための図であり、樹脂皮膜24の有無による塗膜特性の違いを表している。なお、図15中の実施例19は、樹脂皮膜24を備える本発明の第2の粉体塗料23の変形例に関し、実施例16は図13中に示した樹脂皮膜24を有しない本発明の第2の粉体塗料20に関する。
【0150】
図15中の実施例19を参照して、本発明の第2の粉体塗料の変形例にかかる樹脂皮膜24を備え、かつジイモニウムを0.01wt%含有する粉体塗料23を用いて形成した塗膜は、塗膜強度が優れるのみならず色差も小さく色調は優と判定された。これに対して、樹脂皮膜24が無い点を除き、他は同一の樹脂粒子21及び赤外光吸収剤粒子22からなる本発明の第2の粉体塗料20(従って、ジイモニウムをほぼ同量の0.01wt%含有する)を用いて形成した塗膜では、色差は小さく色調は優と判定されたものの、塗膜強度はやや劣り良と判定された。この結果は、樹脂皮膜24を設けることで、塗膜強度が向上することを明らかにしている。
【0151】
このように、本発明の第2の粉体塗料の変形例にかかる粉体塗料23を用いることで、本発明の第2の粉体塗料20を用いるよりもより塗膜強度の高い塗膜を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明に係る粉体塗料を、ABS樹脂のように軟化温度が低い樹脂を被塗物とする塗装に適用することで、被塗物の変形を回避しつつ良質の塗膜を形成することができる。
【符号の説明】
【0153】
1 被塗物
2 粉体塗料
3 塗布膜
4 ファーブラシ
4a 回転軸
4b 導電性繊維
5 塗膜
6 電源
11 オーブン
11a 入口
11b 出口
12 ベルトコンベア
13 赤外光照射器
13a フラッシュランプ
13b 反射板
13c 窓
20、23 粉体塗料
21 樹脂粒子
22 赤外光吸収剤粒子
24 樹脂被膜
100 静電塗装装置
110 塗膜形成装置
120 表面改質装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、着色剤と、赤外光吸収剤と、を含有し、
前記赤外吸収剤が赤外光を吸収して発熱し溶融することを特徴とする粉体塗料。
【請求項2】
少なくとも着色剤を含有する熱可塑性樹脂からなる樹脂粒子と、
前記樹脂粒子の表面に担持された赤外光吸収剤を含有する赤外光吸収剤粒子と、
を有する粉体塗料。
【請求項3】
前記樹脂粒子及び前記赤外光吸収剤粒子の表出面を被覆する樹脂被膜をさらに有することを特徴とする請求項2記載の粉体塗料。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、フローテスタ軟化温度が50℃〜70℃の第1の熱可塑性樹脂と、フローテスタ軟化温度が80℃〜150℃の第2の熱可塑性樹脂とを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の粉体塗料。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂は、1万以下の分子量を有する成分の組成比Xが20wt%≦X≦80wt%であり、かつ、10万以上の分子量を有する成分の組成比Yが20wt%≦Y≦80wt%である(0wt%≦X+Y≦100wt%)ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の粉体塗料。
【請求項6】
前記赤外光吸収剤は、下記一般式(1)で表されるジイモニウム系化合物、又は、下記一般式(2)で表されるアミニウム系化合物であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の粉体塗料。
【化1】
【化2】
(上記一般式中、R1〜R8は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表しそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Aはp−フェニレン基又はp−ビフェニレン基を表し、及び、X- は陰イオンを表す。)
【請求項7】
被塗物表面に、熱可塑性樹脂と、着色剤と、赤外光吸収剤と、を含有する粉体塗料を付着する工程と、
前記粉体塗料に赤外光を照射して、前記被塗物表面に付着した前記粉体塗料を溶融する工程とを有することを特徴とする塗装方法。
【請求項8】
少なくとも着色剤を含有する熱可塑性樹脂からなる樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面に担持された赤外光吸収剤を含有する赤外光吸収剤粒子とを有する粉体塗料を、被塗物表面に付着する工程と、
前記粉体塗料に赤外光を照射して、前記被塗物表面に付着した前記粉体塗料を溶融する工程とを有することを特徴とする塗装方法。
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、着色剤と、赤外光吸収剤と、を含有し、
前記赤外吸収剤が赤外光を吸収して発熱し溶融することを特徴とする粉体塗料。
【請求項2】
少なくとも着色剤を含有する熱可塑性樹脂からなる樹脂粒子と、
前記樹脂粒子の表面に担持された赤外光吸収剤を含有する赤外光吸収剤粒子と、
を有する粉体塗料。
【請求項3】
前記樹脂粒子及び前記赤外光吸収剤粒子の表出面を被覆する樹脂被膜をさらに有することを特徴とする請求項2記載の粉体塗料。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、フローテスタ軟化温度が50℃〜70℃の第1の熱可塑性樹脂と、フローテスタ軟化温度が80℃〜150℃の第2の熱可塑性樹脂とを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の粉体塗料。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂は、1万以下の分子量を有する成分の組成比Xが20wt%≦X≦80wt%であり、かつ、10万以上の分子量を有する成分の組成比Yが20wt%≦Y≦80wt%である(0wt%≦X+Y≦100wt%)ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の粉体塗料。
【請求項6】
前記赤外光吸収剤は、下記一般式(1)で表されるジイモニウム系化合物、又は、下記一般式(2)で表されるアミニウム系化合物であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の粉体塗料。
【化1】
【化2】
(上記一般式中、R1〜R8は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表しそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Aはp−フェニレン基又はp−ビフェニレン基を表し、及び、X- は陰イオンを表す。)
【請求項7】
被塗物表面に、熱可塑性樹脂と、着色剤と、赤外光吸収剤と、を含有する粉体塗料を付着する工程と、
前記粉体塗料に赤外光を照射して、前記被塗物表面に付着した前記粉体塗料を溶融する工程とを有することを特徴とする塗装方法。
【請求項8】
少なくとも着色剤を含有する熱可塑性樹脂からなる樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面に担持された赤外光吸収剤を含有する赤外光吸収剤粒子とを有する粉体塗料を、被塗物表面に付着する工程と、
前記粉体塗料に赤外光を照射して、前記被塗物表面に付着した前記粉体塗料を溶融する工程とを有することを特徴とする塗装方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−148966(P2011−148966A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119868(P2010−119868)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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