説明

粉体塗装方法

【課題】粉体塗装において、被加熱物に結露を生じさせにくいようにする。
【解決手段】金属製の被加熱物を燃焼式熱風加熱炉で加熱し、その加熱した被加熱物の表面に粉体塗装を施す粉体塗装方法において、前記被加熱物を燃焼式熱風加熱炉で加熱する前に、燃料の燃焼を伴わない予備加熱手段により前記被加熱物を加熱し、その予備加熱手段による前記被加熱物の最大加熱温度を前記燃焼式熱風加熱炉による最大加熱温度よりも低く設定した。予備加熱において燃料の燃焼を伴っていないので、被加熱物に結露を生じさせにくい。また、この予備加熱によって被加熱物の温度が上昇するので、燃焼式熱風加熱炉内においても結露の発生が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋳鉄管等の金属製品に対して行う粉体塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水道水、ガスなど各種流体用の金属管、あるいはその他各種金属製品には、防食のための塗装等を施すことが一般的に行われている。その防食塗装の一つとして粉体塗装が挙げられる。
【0003】
特に、水道用のダクタイル鋳鉄管の場合、従来からセメントライニングで管内面を被覆するのが一般的であった。しかし、近年は、化学的安定性や、耐久性、施工性などの観点から粉体塗装を採用するケースが増えている。
【0004】
ダクタイル鋳鉄管の管内面に粉体塗装を施す際には、鋳鉄管の持つ熱容量が大きいことや、目標膜厚が比較的厚いことから、管体を加熱して塗装を行うことが多い。
管体が、200℃〜300℃程度に加熱されれば、粉体塗料はその熱によって溶融硬化して、管内面に所定の塗膜が定着する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、管体を、粉体塗装に必要な温度にまで加熱する手段として、加熱炉が用いられる場合が多い。
この加熱炉としては、様々な方式のものが使用されているが、仕上がり品質の安定性と低コスト化の観点から、天然ガス等を用いた燃焼式熱風循環加熱炉が多用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平9−276793号公報(第2頁段落0014,0015)
【特許文献2】特開平11−280986号公報(第3頁段落0013,0022)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この燃焼式熱風循環加熱炉内では、結露により、炉壁や鋳鉄管等の被加熱物に水分が付着することがある。これは、特に、温度が低くなる冬場において顕著であり、金属製の被加熱物の温度が低く、加熱炉内の温度が200℃〜300℃程度と高温であることが影響している。
【0008】
また、特に、燃焼式熱風循環加熱炉では、燃料として天然ガス等を燃焼しているので、その燃料に含まれる水分が結露に影響を及ぼしている。
【0009】
被加熱物に結露が生じると、錆が発生しやすくなるので好ましくない。また、燃焼ガスはCO,NOx,SOxなどの影響で酸性となるため、その燃焼ガスが結露水に溶解することによって酸性を帯びやすいという問題もある。結露水が酸性であると、さらに錆が発生しやすくなる。
【0010】
そこで、この発明は、粉体塗装において、被加熱物に結露を生じさせにくいようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明は、被加熱物を加熱炉内において粉体塗装に必要な温度に加熱する前に、燃焼を伴わない予備加熱手段によって被加熱物を予備加熱したのである。
予備加熱において燃料の燃焼を伴っていないので、被加熱物に結露を生じさせにくい。また、この予備加熱によって被加熱物の温度が上昇するので、燃焼式熱風加熱炉内においても結露の発生が抑制される。
【0012】
この発明の具体的な構成は、金属製の被加熱物を燃焼式熱風加熱炉で加熱し、その加熱した被加熱物の表面に粉体塗装を施す粉体塗装方法において、前記被加熱物を燃焼式熱風加熱炉で加熱する前に、燃料の燃焼を伴わない予備加熱手段により前記被加熱物を加熱し、その予備加熱手段による前記被加熱物の最大加熱温度を前記燃焼式熱風加熱炉による最大加熱温度よりも低く設定する構成である。
【0013】
この予備加熱手段は、前記被加熱物を40℃以上に加熱するものであることが好ましく、さらに好ましくは、60℃以上とすることができる。
【0014】
また、前記被加熱物は鋳鉄管であり、前記粉体塗装は、その鋳鉄管の管内面に施される場合において、これらの各粉体塗装方法を採用することができる。
鋳鉄管は、熱容量が大きいことから、温度が低下した際に発生した結露が長時間とどまる傾向がある。このため、鋳鉄管の粉体塗装において、これらの粉体塗装方法を採用する効果が高いといえる。
【0015】
前記予備加熱手段としては、例えば、被加熱物を加熱された液体に浸けることによりその液体から前記被加熱物へ熱伝導を生じさせる手法を採用することができる。この液体は、例えば、水であってもよい。このような温液体浴による手法を採用すれば、加熱が被加熱物全体に均等になりやすく、また、その液体による被加熱物の洗浄効果も期待できる。
【0016】
なお、液体として水を用いて、いわゆる温水浴による手法を採用した場合には、被加熱物が水に接触する時間(付着した水が蒸発する過程を含む)が比較的短いため、その水による錆発生の程度は無視できるレベルである。
【0017】
また、前記予備加熱手段としては、その他にも、高周波加熱による手法、赤外線加熱による手法などを採用することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、粉体塗装において、被加熱物を粉体塗装に必要な温度に加熱する前に、燃焼を伴わない加熱手段によって被加熱物を予備加熱したので、被加熱物に結露を生じさせにくいようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、図1に示す燃焼式熱風加熱炉1を用い、ダクタイル鋳鉄管10(以下、単に「管体10」という)を200℃〜300℃程度に加熱した後、その加熱した管体1を管軸周りに回転させながら、管内面に粉体塗装を施すものである。
【0020】
燃焼式熱風加熱炉1は、図1で示す燃焼式熱風発生装置2において、天然ガス等の燃焼により熱風が生じるようになっている。その熱風は、流路3を通じて炉内空間5に送り込まれる。炉内空間5では、台座4上に管体10が載置されており、その管体10に熱風が当てられることにより、管体10が所定の温度に加熱される。
【0021】
粉体塗料を管内面に吹き付ける際の手順については説明を省略し、以下、燃焼式熱風加熱炉1による加熱の前段で行う予備加熱について説明する。
【0022】
図2(a)は、この実施形態の予備加熱手段である。予備加熱手段は、天然ガスや石油、その他燃料の燃焼を伴わない手段であればよいが、この実施形態では、管体10を温水wを満たした水槽(温液体浴槽)12の中に浸すことにより、熱伝導により管体10を加熱する手法を採用している。
【0023】
水槽12内において、管体10は台座11上に載置されて、所定の時間が経過するまでその状態で維持される。なお、その温水wに代えて、他の液体を採用してもよい。
【0024】
この予備加熱手段により、管体10を40℃以上に予備加熱すれば、燃焼式熱風加熱炉1での加熱の際に結露が抑制されることが確認できた。
また、60℃以上に予備加熱すれば、さらに良好な結果が確認できている。
【0025】
すなわち、この予備加熱手段による管体10の最大加熱温度は、前記燃焼式熱風加熱炉1による最大加熱温度よりも低くなっていればよく、好ましくは40℃以上、さらに好ましくは60℃以上とすればよい。
【0026】
なお、予備加熱手段としては、他の実施形態として、例えば、図2(b)に示すように、管体10の側方に設けられる加熱装置15と、管体10を支える回転ローラ13とを備えた予備加熱手段を採用することができる。
【0027】
図2(b)は、加熱装置15として高周波コイル14を採用している。回転ローラ13が駆動力によって回転することにより、管体10が図中矢印のように管軸周りに回転し、その回転によって、加熱装置15による管体10の加熱が、全体に均等にいきわたるようになっている。
【0028】
また、前記予備加熱手段の加熱装置15としては、前記高周波コイル14に代えて、周知の赤外線ヒータや電気ヒータなどを採用してもよい。
【0029】
また、この予備加熱を伴う粉体塗装方法は、ダクタイル鋳鉄管10のみならず、他の素材からなる金属製管体や、その他各種金属部材の粉体塗装方法として採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】粉体塗装に用いる燃焼式熱風循環加熱炉の説明図
【図2】(a)一実施形態の予備加熱手段の説明図、(b)他の実施形態の予備加熱手段の説明図
【符号の説明】
【0031】
1 燃焼式熱風加熱炉
2 燃焼式熱風発生装置
3 流路
4,11 台座
5 炉内空間
10 ダクタイル鋳鉄管(管体)
12 水槽
13 回転ローラ
14 高周波コイル
15 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の被加熱物を燃焼式熱風加熱炉で加熱し、その加熱した被加熱物の表面に粉体塗装を施す粉体塗装方法において、
前記被加熱物を燃焼式熱風加熱炉で加熱する前に、燃料の燃焼を伴わない予備加熱手段により前記被加熱物を加熱し、その予備加熱手段による前記被加熱物の最大加熱温度を前記燃焼式熱風加熱炉による最大加熱温度よりも低く設定することを特徴とする粉体塗装方法。
【請求項2】
前記予備加熱手段は、前記被加熱物を40℃以上に加熱するものであることを特徴とする請求項1に記載の粉体塗装方法。
【請求項3】
前記被加熱物は鋳鉄管であり、前記粉体塗装は、その鋳鉄管の管内面に施されることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体塗装方法。
【請求項4】
前記予備加熱手段は、被加熱物を加熱された液体に浸けることによりその液体から前記被加熱物へ熱伝導を生じさせるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の粉体塗装方法。
【請求項5】
前記液体は水であることを特徴とする請求項4に記載の粉体塗装方法。
【請求項6】
前記予備加熱手段は、高周波加熱によるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の粉体塗装方法。
【請求項7】
前記予備加熱手段は、赤外線加熱によるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の粉体塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−279556(P2009−279556A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136423(P2008−136423)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】