説明

粉体輸送用バルク車のタンク内結露防止装置

【課題】粉体輸送用バルク車のタンクから小麦粉を排出するときに、タンクの内壁に結露が生じることを防止すること。
【解決手段】タンク内にバルク状の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車において、この粉体輸送用バルク車に積載され、粉体の排出時に作動して、タンクの内部に空気を供給するコンプレッサと、このコンプレッサとタンクとをつなぐ管路の途中に配置され、タンクの内部に供給する空気中の水分を除去する除湿装置とを有し、タンクから粉体を排出する際に、除湿装置で除湿した乾燥空気をタンク内に供給して、結露によってタンクの内壁に粉体が付着することを防止するようにした粉体輸送用バルク車のタンク内結露防止装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含み、この水分が結露することによってタンクの内壁に付着するバルク状の粉体、例えば、製粉された小麦粉などの食用の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車に関するものであり、より詳しくは、水分が結露することによって、前述の食用の粉体がタンクの内壁に付着することを防止するための粉体輸送用バルク車のタンク内結露防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製粉された小麦粉などのバルク状の粉体(以下、小麦粉を例にして説明する)を製粉工場から製パン工場等の顧客の加工工場に輸送する際には、従来は、25Kg詰めの袋などに小麦粉を袋詰めし、この袋詰めされた小麦粉をトラックなどで輸送していたが、近年では、大量に購入する顧客を中心に、袋詰めすることなく、小麦粉をバルク状の粉体のままでタンクローリの車載タンクに投入して積載し、この車載タンクに積載された小麦粉を輸送するケースが増えている。そして、このようなバルク状の粉体を車載タンクに投入して輸送するタンクローリをバルク車と称している。
【0003】
このバルク車による輸送によって、小麦粉を袋詰めすることなく輸送して、顧客の加工工場のサイロ(貯蔵タンク)に直接納入することが可能になり、一時に大量の小麦粉(8〜10トン)を輸送することができるとともに、製粉工場における袋詰め工程や顧客の加工工場における開袋工程などが不要になり、輸送に係わるコストを下げることができるとともに、ゴミなどの異物の混入の機会を減らすことも可能なことから、最近では、この輸送方法が大幅に増加している。
【0004】
このバルク状の小麦粉を輸送するバルク車は、例えば図7に示すようなバルク車50であって、このバルク車50の車載タンク(以下、単にタンクという)52に小麦粉を積載して輸送する。なお、この図には、バルク車50のタンク52に製粉工場で小麦粉を投入する方法と、顧客の工場で小麦粉を排出する方法も同じ図面の上に描かれている。
【0005】
すなわち、製粉工場でバルク車50に小麦粉を投入するときには、製粉された小麦粉を、例えば、積み込み場所である2階に搬送し、1階に駐車するバルク車50のタンク52に搬送チューブ54を介して自然落下させ、または空気輸送することによって、バルク車50のタンク52に小麦粉を投入して積み込む。この小麦粉の積み込み作業の際には、小麦粉は、2本の搬送チューブ54によって、バルク車50のタンク52の上面に設けられた両側の2個のハッチ56から投入される。なお、この際、中央のハッチ58を開放して、小麦粉とともに送られる空気の風抜きが行われる。
【0006】
また、顧客の工場において、サイロに小麦粉を排出するときには、後部の排出口60から搬送チューブ62を通して空気輸送で搬送することによって行われ、油圧シリンダ64でタンク52の前部を押し上げてタンク52を傾け、後部の排出口60からタンク52内の小麦粉を完全に排出できるようになっている。
【0007】
しかしながら、製粉された小麦粉などのように水分を含む粉体が、タンク52内に積載されてからしばらく経過すると、この粉体に含まれていた水分が蒸発して、タンク52内の空気の湿度と平衡する状態となる。この平衡状態は、外部の気温などによっても異なるが、通常は、相対湿度が約70%程度で平衡する状態となることが多い。
【0008】
この平衡状態における相対湿度は、タンク52内の温度や気圧の変化によって容易に変化するものであって、周知のように、絶対湿度が一定に維持されていても、温度が下がった場合、あるいは気圧が上昇した場合には相対湿度が上昇して、70%の相対湿度であったものが容易に100%以上まで上昇して結露が生じることになる。
【0009】
特に、顧客の工場において、バルク車50のタンク52から顧客のサイロに小麦粉を排出するときには、サイロに小麦粉を空気輸送するために、タンク52内に空気を送り込むのでタンク52内の気圧が上昇し、容易に相対湿度が100以上%まで上昇してタンク52の内壁に結露が生じ、この結露によってタンク52の内壁面に小麦粉が付着する。そして、このタンク52の内壁に付着した小麦粉は、乾燥すると剥離することが困難であり、小麦粉を搬送した後のタンク52内の清掃に大変な労力を要していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上述の従来技術の問題点を解消して、バルク車50のタンク52から小麦粉を排出するときに、タンク52の内壁に結露が生じることを防止可能な、安価で取扱いの容易な粉体輸送用バルク車のタンク内結露防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る粉体輸送用バルク車のタンク内結露防止装置は、タンク内にバルク状の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車において、この粉体輸送用バルク車に積載され、前記粉体の排出時に作動して、前記タンクの内部に空気を供給するコンプレッサと、このコンプレッサと前記タンクとをつなぐ管路の途中に配置され、前記タンクの内部に供給される空気中の水分を除去する除湿装置とを有し、これらにより、前記タンクから前記粉体を排出する際に、前記除湿装置で除湿された乾燥空気を前記タンク内に供給して、結露によって前記タンクの内壁に粉体が付着することを防止することを特徴とするものである。
【0012】
ここで、前記除湿装置は、セラミックス製であり、ハニカム構造に形成された基体にシリカゲルがコーティングされた除湿ユニットを有することが好ましく、さらに、前記除湿ユニットは、前記除湿装置の本体から容易に取り外し可能であることが好ましい。なお、前記除湿ユニットは、再生装置により簡単に再生可能なものであることも好ましい。
【0013】
さらには、前記コンプレッサと前記除湿ユニットとの間に、前記コンプレッサで圧縮されて高温になった空気を冷却する空気冷却ユニットを配置することが好ましい。そして、前記空気冷却ユニットは、積層フィンからなる伝熱体を有するものであることが好ましく、さらに、前記空気冷却ユニットの前記積層フィンがアルミニウム製であることが好ましい。また、前記空気冷却ユニットの前記積層フィンの形状は、その空気流に沿った長さが、これと直交する方向の幅の2倍以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る粉体輸送用バルク車のタンク内結露防止装置は、以上のように構成されているので、粉体輸送用バルク車のタンクから顧客のサイロに粉体(小麦粉)を排出する際に、除湿装置で除湿された乾燥空気をタンク内に供給することによって、タンク内の空気の湿度を下げ、結露によってタンクの内壁に粉体が付着することを防止することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の粉体輸送用バルク車のタンク内結露防止装置における実施の形態を、実施例を示す図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施例に係るタンク内結露防止装置を備えた粉体輸送用バルク車を示す正面図であり、図2は本発明のタンク内結露防止装置の管路図、図3は除湿装置の一部を破断した正面図、図4は除湿ユニットの断面形状を示すA−A線断面図、図5は空気冷却ユニットの断面形状の一実施例を示すB−B線断面図、図6は空気冷却ユニットの積層フィンの構成を説明する斜視図である。
【0016】
図1に示すように、本実施例に係る粉体輸送用バルク車2は、車載タンク4(以下、単にタンク4という)に小麦粉を積載して輸送するものであって、従来技術の粉体輸送用バルク車50(図7参照)と同様に、製粉された小麦粉を積み込む際に、バルク車2のタンク4に搬送チューブ(図示されていない)を接続する両側のハッチ6と、開放して風抜きに使用する中央のハッチ8、並びに、顧客の工場においてサイロに小麦粉を排出する際に、空気輸送で搬送するために後部に配置された排出口10と、タンク4の前部を押し上げてタンク4を傾ける油圧シリンダ12などを有している。
【0017】
さらに、本実施例に係るタンク内結露防止装置が、この粉体輸送用バルク車2に積載されている。このタンク内結露防止装置は、図1〜図3に示すように、除湿ユニット14と空気冷却ユニット16とからなる除湿装置18を主たる構成とするものであって、この除湿装置18に空気を供給するコンプレッサ20(通常、車載されているエンジン駆動のルーツブロワが用いられる)、上記コンプレッサ20の上流側に設けられたフィルタ24a、およびこれらの構成部材を相互に連結する管路などから構成されている。
【0018】
本実施例に係るタンク内結露防止装置は、粉体輸送用バルク車2に積載されているものであって、その要点は、例えばルーツブロアのようなコンプレッサ20で除湿装置18に空気を送り込み、除湿装置18で乾燥した空気を粉体輸送用バルク車2のタンク4の内部に供給するものである。なお、上述の空気の水分を除去し、乾燥空気にしてタンク4の内部に供給する除湿装置18は、除湿ユニット14と空気冷却ユニット16からなっており、コンプレッサ20とタンク4とをつなぐ管路26,28の途中に配置されている。
【0019】
より詳細には、上記除湿装置18は、管路26,28の間に、3個のバルブ27a,27b,27cにより形成されるバイパス経路を設けるように配設されており、また、除湿ユニット14から前記タンク4内に乾燥空気を送り込む管路28には、たとえば、上記バルブ27aの前段に、異物除去用のフィルタ24bが配設されている。この異物除去用のフィルタ24bとしては、目の細かい金網で構成されるもの等が用いられる。
【0020】
本実施例に係るタンク内結露防止装置は、顧客の工場で小麦粉を排出する際には、コンプレッサ20により、タンク4の内部に除湿装置18(除湿ユニット14と空気冷却ユニット16)で除湿した乾燥空気を供給するものである。これにより、タンク内の空気の湿度が下げられ、結露によって前記タンク4の内壁に小麦粉が付着することが防止される。一方、コンプレッサ20で加圧された一部の空気は、分岐した管路32を通って小麦粉の排出口10に供給されて、従来と同様に、前記タンク4内からの小麦粉の排出を行うものである。
【0021】
除湿装置18の除湿ユニット14としては、ハニカム構造に形成されたセラミックス製の基体30に、除湿性の非常の高いシリカゲルをコーティングしたものを使用することが望ましい。このような構造の除湿ユニット14を採用することによって、除湿ユニット14を加熱して乾燥させることにより除湿ユニット14を簡単に再生することができるので、ランニングコストの低い除湿装置18とすることができる。
【0022】
また、この除湿ユニット14を除湿装置18から容易に取り外し可能にすることによって、必要なときに、水分を吸収した除湿ユニット14を除湿装置18から外部に取り出して、加熱乾燥して除湿ユニット14として再生することが容易にできるようになる。
なお、取り出し時等における除湿ユニット14内のハニカム構造体の損傷を防止するために、例えば、その両端面に金網またはパンチングメタル等で形成したガード部材を設けることが好ましい。
【0023】
また、コンプレッサ20と除湿ユニット14との間には、コンプレッサ20で圧縮されて高温になった空気を冷却する空気冷却ユニット16を配置することが望ましい。本実施例では、この空気冷却ユニット16と空気中の水分を吸収する除湿ユニット14とを一体にして、除湿装置18とした構造となっている。そして、除湿装置18で除湿された空気は、管路28によってタンク4の内部に供給される。
【0024】
この空気冷却ユニット16としては、図5および図6に示すような、積層フィンによって内部を通過する空気を冷却する空気冷却ユニットを採用することが望ましく、特に、空気を通過させるチューブ34の内部に形成された積層フィン36からなる伝熱体によってチューブ34内を通過する圧縮された空気の熱を吸収する構造のものが望ましい。
図5および図6に示した例では、積層フィン36の各フィンは、ステー38およびナット38bにより、所定の間隙を保つようにスペーサ38aを介して保持されている。ここで、フィンは熱伝導性の高いアルミニウム板製等とするのがよい。
【0025】
また、空気冷却ユニット16全体として、顧客のサイロに小麦粉を排出する際に使用する空気の有する総熱量を吸収できる容量を有するように構成することによって、ランニングコストの不要な安価な空気冷却ユニット16とすることができる。このためには、積層フィン36の熱容量を所定の大きさにする、すなわち、各フィンの厚み,フィンの枚数等を所定の値にすることが必要である。ここでは、一例として、チューブ34の内径を300mm、各フィンの厚みを3mm、各フィン間の間隙を2mmとしている。
【0026】
また、チューブ34の内部を通過する空気を充分に冷却するためには、積層フィン36の熱容量を最大限に生かすことが重要であり、ここでは、そのために、空気冷却ユニット16のチューブ34内部の積層フィン36の寸法を、空気流に沿った長さ(図中では、紙面に垂直な方向)が、これと直交する方向(図中では、紙面に沿った上下方向)の幅の2倍以上としている。
【0027】
本実施例に係る粉体輸送用バルク車のタンク内結露防止装置は、上述のように構成されているので、フィルタ24aを通過して清浄になった空気をルーツブロアなどのコンプレッサ20で圧縮し、断熱圧縮されて高温になった空気を空気冷却ユニット16で常温(外気温)まで冷却し、除湿可能温度となった空気を除湿ユニット14で除湿して乾燥させることができる。これにより、乾燥した空気を、タンク4の内部に供給することができる。
【0028】
そして、このように、乾燥した空気をタンク4の内部に供給することによって、小麦粉を排出する際に、空気輸送で搬送するための空気をタンク4内に送り込み、タンク4内部の気圧が上昇しても、タンク4内の相対湿度が100%まで上昇することはないので、タンク4の内壁に結露が生じることはなくなり、この結露によってタンク4の内壁面に小麦粉が付着するという問題も発生しなくなる。
【0029】
また、本実施例に係るタンク内結露防止装置は、粉体輸送用バルク車に積載されているので、バルク車とともに移動可能であり、任意の顧客に小麦粉を輸送して排出する際に、任意の場所で使用できるものである。さらに、除湿ユニット14を除湿装置18から外部に取り出すことが可能になっているので、1回の小麦粉の輸送毎に除湿ユニット14を取り出して外部で加熱乾燥して再生することができる。
【0030】
前述の除湿ユニット14の再生手段は、粉体輸送用バルク車2の基地(通常は、小麦粉を出荷する側のメーカーの出荷基地)に設けておくのがよいが、他の適宜の場所にも設けてもよい。これにより、必要に応じて、除湿ユニット14を適宜再生させることが可能であり、粉体輸送用バルク車2に、必要なときに乾燥済みの除湿ユニット14を供給することが可能になる。
【0031】
上述のように、本実施例に係るタンク内結露防止装置は、原則的に、粉体輸送用バルク車2に、いわゆるバッチ処理型の除湿装置18を設置すれば足りるものであり、さらに、空気冷却ユニット16をもバッチ処理型とし、その冷却源を外気とすることによって、取扱いが容易でより安価な装置(ないしは、再生装置をも含めたシステム)とすることができる。
【0032】
なお、上記実施例は本発明の一例を示したものであり、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、各種の変更・改良等を行ってもよいことはいうまでもない。
例えば、空気冷却ユニット16のチューブ34の外部に放熱フィン等が形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のタンク内結露防止装置を備えた粉体輸送用バルク車を示す正面図である。
【図2】本発明のタンク内結露防止装置の管路図である。
【図3】除湿装置の一部を断面にした正面図である。
【図4】除湿ユニットの断面形状を示すA−A線断面図である。
【図5】空気冷却ユニットの断面形状の一実施例を示すB−B線断面図である。
【図6】空気冷却ユニットの積層フィンの構成を示す斜視図である。
【図7】従来技術の粉体輸送用バルク車を示す正面図である。
【符号の説明】
【0034】
2 粉体輸送用バルク車
4 タンク
6,8 ハッチ
10 排出口
12 油圧シリンダ
14 除湿ユニット
16 空気冷却ユニット
18 除湿装置
20 コンプレッサ
24a,24b フィルタ
26,28,32 管路
27a,27b,27c バルブ
30 基体
34 チューブ
36 積層フィン
38 フィン固定用ステー
38a フィン固定用スペーサ
38b フィン固定用ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内にバルク状の粉体を積載して輸送する粉体輸送用バルク車に用いるタンク内結露防止装置であって、
前記粉体輸送用バルク車に積載され、前記粉体の排出時に作動して、前記タンクの内部に空気を供給するコンプレッサと、
このコンプレッサと前記タンクとをつなぐ管路の途中に配置され、前記タンクの内部に供給される空気中の水分を除去する除湿装置とを有する
ことを特徴とする粉体輸送用バルク車のタンク内結露防止装置。
【請求項2】
前記除湿装置が、セラミックス製であり、ハニカム構造に形成された基体にシリカゲルがコーティングされた除湿ユニットを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の粉体輸送用バルク車のタンク内結露防止装置。
【請求項3】
前記コンプレッサと前記除湿ユニットとの間に、前記コンプレッサで圧縮されて高温になった空気を冷却する空気冷却ユニットを配置する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の粉体輸送用バルク車のタンク内結露防止装置。
【請求項4】
前記空気冷却ユニットが、積層フィンからなる伝熱体を有し、
前記積層フィンの形状は、その空気流に沿った長さが、これに直交する方向の幅の2倍以上である
ことを特徴とする請求項3に記載の粉体輸送用バルク車のタンク内結露防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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