説明

粉供給装置

【課題】粉体が舞い上がって飛散することを抑制し、且つ粉体の供給速度を調整することができるようにする。
【解決手段】粉供給装置1は、ホッパー2と、振動器4と、多孔部材8と、シリンダ9とを備える。ホッパー2は、粉体を貯留して排出口2bから排出する。振動器4は、ホッパー2を振動させて、ホッパー2内の粉体を排出口2bへ移動させる。多孔部材8は、ホッパー2の排出口2bに対向して配置され、粉体を通過させる複数の貫通孔を有する。シリンダ9は、ホッパー2の排出口2bに沿って多孔部材8を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の供給速度で粉体を供給する粉供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工では、粉体を混合機へ供給し、肉類や魚類、調味料などと混合することがある。このような混合工程では、粉体を手作業で混合機へ供給していた。ところで、粉体の供給に要する時間を短くするために粉体の供給速度を高速化すると、供給した粉体に固まり(ダマ)が発生し易くなり、粉体が均一に混合されない。
【0003】
そこで、粉体を数回に分けて混合機へ供給し、1回に供給する粉体の量を少量にすることでダマの発生を抑制することが行われていた。ところが、粉体を手作業で数回に分けて供給することは、重労働であり、生産効率の低下を招く。また、1回に供給する粉体の量は、作業者によって異なる可能性が有り、ダマの発生の有無にバラツキが生じ易かった。
【0004】
粉体を供給する装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、一定の量の粉体を秤り取って袋詰めなどにするために使用される粉体秤量装置に関するものが記載されている。この特許文献1に記載された粉体秤量装置では、フルイの中に円筒状の攪拌子を配置し、フルイ内に発生するダマをつぶすとともに目詰まりを防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−151016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された粉体秤量装置では、フルイ全体を振動させることで粉体を通過させるようになっていた。そのため、フルイ全体を適当な範囲内で移動させなければ、粉体を通過させることができなかった。つまり、フルイの振動のみで粉体を通過させるためには、フルイ全体を適当な範囲内で移動させて、フルイ内の粉体を揺する必要があった。その結果、フルイ内の粉体が舞い上がってしまうという問題があった。また、作業者が飛散した粉体を吸引してしまうという健康上の問題もある
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、粉体が舞い上がって飛散することを抑制し、且つ粉体の供給速度を調整することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の粉供給装置は、ホッパーと、振動器と、多孔部材と、駆動部とを備える。ホッパーは、粉体を貯留し、下部に設けられた排出口から粉体を排出する。振動器は、ホッパー内の粉体を排出口へ落下させるためにホッパーを振動させる。多孔部材は、ホッパーの排出口に対向して配置され、粉体を通過させる複数の貫通孔を有する。駆動部は、ホッパーの排出口に沿って多孔部材を移動させる。
【0009】
本発明の粉供給装置では、振動器がホッパーを振動させて、ホッパー内の粉体を排出口へ落下させる。そして、駆動部が多孔部材をホッパーの排出口に沿って移動させて、多孔部材上に詰まった粉体を擦り切るようにする。これにより、粉体が多孔部材を通過して供給先へ供給される。したがって、ホッパー全体を適当な範囲内で移動させる必要が無く、ホッパー内の粉体が舞い上がって飛散することを抑制することができる。
【0010】
また、本発明の粉供給装置では、多孔部材上に詰まった粉体を多孔部材で擦り切るようにするため、粉体が多孔部材を確実に通過する。その結果、粉体がホッパー内に残って供給先へ供給されなくなることを防ぐと共に、粉体の供給速度を一定に保つことができる。また、多孔部材が移動する速度を変更することにより、粉体の供給速度を調整することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粉体が舞い上がって飛散することを抑制し、且つ粉体の供給速度を調整することができる。また、作業者が飛散した粉体を吸引してしまうという健康上の問題を防止或いは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の粉供給装置の一実施の形態の正面図である。
【図2】本発明の粉供給装置の一実施の形態の側面図である。
【図3】本発明の粉供給装置の一実施の形態に係る多孔部材及びその多孔部材を摺動可能に支持するベース枠を示す斜視図である。
【図4】図4(a)は本発明の粉供給装置の一実施の形態に係るシャッタ部材の斜視図、図4(b)は図4(a)に示すシャッタ部材の使用状態を示す断面図である。
【図5】本発明の粉供給装置の一実施の形態に係る振動器の駆動を停止させて粉体を供給した場合の説明図である。
【図6】本発明の粉供給装置の一実施の形態に係る固まり抑制部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の粉供給装置を実施するための形態について、図1〜図4を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0014】
[粉供給装置]
まず、本発明の粉供給装置の一実施の形態について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、粉供給装置の一実施の形態の正面図である。図2は、粉供給装置の一実施の形態の側面図である。
【0015】
以下の説明では、粉供給装置を正面側から見た状態で前後方向、上下方向、左右方向を示す。
粉供給装置1は、ホッパー2と、支持部材3と、振動器4と、昇降機構5と、台車6と、制御部7と、多孔部材8と、シリンダ9と、シャッタ部材10(図4参照)を備えている。
【0016】
ホッパー2は、粉体100(図4参照)を貯留する。このホッパー2は、上部側と下部側が四角形状に開口されており、上部側から下部側に向けて細くなるようなテーパー状に形成されている。ホッパー2の上部側の開口は、粉体100が投入される投入口2aになっており、下部側の開口は、粉体100が排出される排出口2bになっている。このホッパー2の上端には、左右方向に突出する2つのフランジ部12a,12bが設けられている。
【0017】
支持部材3は、ホッパー2を支持する。この支持部材3は、ベース枠14と、このベース枠14に固定される4つの支柱15a,15b,15c,15d(支柱15bは図3参照)と、これら4つの支柱に固定される取付片16a,16bからなっている。ベース枠14は、前後方向に長い長方形の枠体からなり、開口部がホッパー2の排出口2bに対向されている。このベース枠14については、後で詳しく説明する。
【0018】
支柱15a〜15dは、それぞれベース枠14の四隅に固定されている。支柱15a,15bは、ベース枠14の一方の長辺に沿って前後方向に対向しており、それぞれベース枠14に対して略垂直に延びている。支柱15c,15dは、ベース枠14の他方の長辺に沿って前後方向に対向しており、ベース枠14に対して斜め上方に延びている。また、支柱15dには、ミラー18を支持するミラー支持部19が取付けられている。ミラー18は、ホッパー2内を視認できるように、ホッパー2の上方に配置される。
【0019】
取付片16aは、支柱15a,15bの先端を連結し、取付片16bは、支柱15c,15dの先端を連結している。これら取付片16a,16bには、ホッパー2のフランジ部12a,12bを載置し、必要に応じて、固定ねじやクランプなどの固定方法によって固定される。つまり、ホッパー2は、支持部材3に対して着脱可能になっている。
【0020】
振動器4には、いわゆるエアーバイブレータを適用している。この振動器4は、支持部材3の支柱15a,15bの2ヶ所に取付けられており、支持部材3を介してホッパー2を振動させる。これにより、ホッパー2に貯留された粉体100が固まらないで排出口2bへ移動する。通常、振動器4の振動数は、7000vpm(1分間の振動数)程度で実施するが、粉の性状や供給量によっては、例えば、5000vpm〜10000vpmの間で適宜設定することが好ましい。
【0021】
振動器4は、不図示の配線によって制御部7と電気的に接続されている。振動器4の他の例としては、例えば、電気式バイブレータや高周波バイブレータを挙げることができる。なお、振動器4は、ホッパー2に振動を伝えることができれば、支柱15a,15b以外の部材に取り付けてもよく、また、ホッパー2に直接取り付けてもよい。
【0022】
昇降機構5は、支持部材3を、上下方向に移動させる。この昇降機構5は、支持部材3が固定される移動部材21と、移動部材21を上下方向に案内するガイドレール22A,22Bと、モータ23と、ギア24と、無端状のチェーン(不図示)を備えている。
【0023】
移動部材21は、ガイドレール22Aに摺動可能に係合する摺動台25Aと、ガイドレール22Bに摺動可能に係合される摺動台25Bと、これら摺動台25A,25Bの上部に固定される支持テーブル26を備えている。摺動台25A,25Bは、前後方向に延びる角柱体からなり、一端がガイドレール22A,22Bにそれぞれ係合している。摺動台25Bは、後述するシュート部材46との干渉を避ける長さに設定されており、摺動台25Aよりも短くなっている(図2参照)。
【0024】
支持テーブル26は、長方形の枠体からなり、一方の長辺部が摺動台25Aに固定され、他方の長辺部が摺動台25Bに固定されている。この支持テーブル26の上面における先端側(前後方向の前側)には、支持部材3のベース枠14が固定されている。
【0025】
ガイドレール22A,22Bは、台車6に固定されており、上下方向に延びている。これらガイドレール22A,22Bは、左右方向に適当な間隔をあけて対向している。モータ23及びギア24は、ガイドレール22A,22Bの先端部に取付けられている。モータ23の回転は、減速ギア(不図示)を介してギア24に伝えられる。チェーンは、ギア24に係合されており、ギア24が回転することにより駆動する。移動部材21は、固定部材(不図示)を介してチェーンに固定されており、チェーンが駆動することにより上下方向に移動する。
【0026】
なお、昇降機構5には、リミッタスイッチ(不図示)が設けられている。このリミッタスイッチは、移動部材21が所定の位置まで上昇及び下降した場合にオンされる。リミッタスイッチがオンされると、制御部7がモータ23の駆動を停止させる。これにより、移動部材21の上下方向の移動が制限される。
【0027】
台車6は、ガイドレール22A,22Bが固定される台座31と、この台座31を床面に対して移動可能に支持する複数の車輪32からなっている。台座31は、ガイドレール22A,22Bと連結される台座基部31Aと、その台座基部31Aから延伸するとともに複数の車輪32を支持する3つの車輪台座31B,31C,31Dとを備えている。複数の車輪32は、粉供給装置1の重心を考慮して配置される。車輪台座31Cは、台座基部31Aの右端部から突出し、車輪台座31Dは、台座基部31Aの左端部から突出している。そして、車輪台座31Bは、台座基部31Aの中間部から突出し、車輪台座31C,31D間に配置されている。
【0028】
ここで、ホッパー2の配置について説明する。ホッパー2は、左右方向の右側(左側でもよい)、且つ、前後方向の前側(ガイドレール22A,22Bの反対側)に偏って配置されている。これにより、混合機などの供給先へホッパー2を容易に接近させることができる。
【0029】
本実施の形態では、車輪台座31Cの先端が排出口2bよりも後方に位置するようになっている。これにより、粉体100が供給される混合機(不図示)を排出口2bの下方に挿入させ易くすることができる。また、混合機の形状・大きさに応じて車輪台座31Cの先端の形状を適宜変更する(例えば、先端の角を切り落とす)ことにより、混合機を排出口2bの下方に挿入させ易くすることができる。
【0030】
なお、車輪台座31Cの先端を排出口2bよりも後方に位置させたことにより、粉供給装置1のバランス(重心)を調整する必要がある。そのため、車輪台座31Bは、台座基部31Aの中間部において、車輪台座31D側にずれた位置から突出し、その先端が排出口2bよりも前方に位置するようになっている。
【0031】
制御部7は、ガイドレール22A,22Bの背面に取付けられている。この制御部7の外装ケースには、操作部28が取り付けられている。操作部28には、振動器4、昇降機構5のモータ23及びシリンダ9を駆動させるためのON/OFFスイッチや、各種設定ボタンなどが設けられている。各種設定ボタンとしては、例えば、振動器4の振動数を設定する振動数設定ボタンや、シリンダ9の駆動速度を設定するシリンダ設定ボタンなどを挙げることができる。この操作部28は、不図示の配線によって制御部7と電気的に接続されている。制御部7は、操作部28から供給される信号に基づいて、振動器4、昇降機構5及びシリンダ9の駆動を制御する。
【0032】
[多孔部材及びベース枠]
次に、多孔部材8及び支持部材3のベース枠14について、図3を参照して説明する。
図3は、多孔部材8及びベース枠14を示す斜視図である。
【0033】
多孔部材8は、支持部材3のベース枠14上を前後方向(図2及び図3における矢印Aで示す方向)に摺動する。
まず、ベース枠14について説明する。ベース枠14は、左右方向に対向する側部片41a,41bと、前後方向に対向する前部片41c及び後部片41dと、前部片41cと後部片41dに連続して開口部を2つに仕切る仕切り片41eを有している。したがって、ベース枠14には、左右方向に並ぶ第1の開口部42A及び第2の開口部42Bが形成されている。第1の開口部42Aは、ホッパー2の排出口2b(図1参照)に対向する。
【0034】
側部片41a,41bには、それぞれの外側の長辺に連続して上下方向に突出する突条部43,44が設けられている。突条部43の両端部には、支持部材3の支柱15a,15bがそれぞれ固定されている。また、突条部44の両端部には、支持部材3の支柱15c,15dがそれぞれ固定されている。
【0035】
さらに、突条部44の中間部には、多孔部材8の後述するフック部53が摺動可能に係合される。つまり、ベース枠14の突条部44は、多孔部材8の移動を案内するガイド部としての役割を有している。
【0036】
仕切り片41eには、第1の開口部42Aに対向するシュート部材46が取付けられている。このシュート部材46は、ベース枠14の下側に配置されており、ホッパー2の排出口2bから排出されて多孔部材8を通過した粉体を、供給先へ案内する。シュート部材46は、前後方向に長い長方形の板体からなり、一方の長辺が仕切り片41eに固定されている。そして、他方の長辺が一方の長辺よりも下方に位置するように左右方向に傾斜されている。
【0037】
シュート部材46の長辺(前後方向の長さ)は、多孔部材8の移動範囲に対応する長さに設定されている。本実施の形態では、多孔部材8が前方に移動すると、多孔部材8の一側がベース枠14の前方へ突出するようになっている。そのため、シュート部材46の一側(一方の短辺側)は、ベース枠14よりも前方に突出している。なお、本発明に係るシュート部材としては、供給先の形態に応じて所望する位置或いは範囲に適した形態にしてもよい。
【0038】
次に、多孔部材8について説明する。多孔部材8は、ベース枠14上を前後方向(矢印Aで示す方向)に摺動することにより、ホッパー2の排出口2bに沿って移動する。この多孔部材8は、長方形の枠部51と、この枠部51の開口を覆う網部52を備えている。枠部51は、長辺を形成する摺動片51a,51bと、摺動片51a,51bを接続して短辺を形成する接続片51c,51dからなっている。
【0039】
摺動片51a,51bは、それぞれベース枠14の仕切り片41e及び側部片41b上を摺動する。これら摺動片51a,51bは、外側の辺が内側の辺よりも下方に位置するように傾斜している。そのため、摺動片51a,51bは、仕切り片41e及び側部片41bに線接触するようになっている。その結果、摺動片51a,51bと仕切り片41e及び側部片41bとの間に生じる摩擦抵抗を小さくすることができる。なお、摺動片51a,51bは、仕切り片41e及び側部片41bに線接触するように湾曲させてもよい。
【0040】
摺動片51bの上面には、ベース枠14の突条部44に摺動可能に係合されるフック部53が設けられている。このフック部53をベース枠14の突条部44に係合させることにより、多孔部材8を前後方向へ安定して摺動させることができる。
【0041】
接続片51dの上面には、多孔部材8をシリンダ9の後述するロッド60に連結するための連結部54が設けられている。この連結部54は、接続片51dの上面から略垂直に突出する立上り片54aと、この立上り片54aに連続して接続片51dの外側に折り曲げられた係合片54bからなっている。連結部54の係合片54bには、連結用孔54cが設けられている。
【0042】
網部52は、ホッパー2の排出口2bに対向しており、その排出口2bよりも大きな長方形に形成されている。つまり、多孔部材8がホッパー2の排出口2bに沿って前後方向に移動しても、網部52が常に排出口2bに対向するようになっている。
【0043】
網部52は、ホッパー2の排出口2bから排出される粉体100の重量が加わっても撓まないように、適当な直径(例えば、2mm)の線材によって形成されている。また、網部52の貫通孔(網目)は、粉体の粒子の大きさや、粉体の性質(付着性、凝集性、吸湿性など)によって適宜設定する。なお、本発明に係る多孔部材としては、網部52を用いることに限定されるものではなく、例えば、複数の孔部を有する板体を適用してもよい。
【0044】
シリンダ9は、支持台59(図2参照)を介して移動部材21に支持されている。このシリンダ9は、前後方向に往復移動するロッド60を有している。ロッド60の駆動速度は、制御部7から供給される制御信号に基づいて変更されるようになっている。このロッド60は、連結部材61を介して多孔部材8に連結される。
【0045】
連結部材61は、ロッド60に固定される固定部61aと、この固定部61aに連続するフランジ部61bと、フランジ部61bに設けられた連結軸61cからなっている。この連結部材61の連結軸61cを、多孔部材8に設けた連結部54の連結用孔54cに貫通させることにより、ロッド60が多孔部材8に連結される。
【0046】
シリンダ9のロッド60が前方へ最も繰り出されたとき、多孔部材8の接続片51cがベース枠14の前方に突出し、接続片51dがベース枠14の後部片41d上に位置する。一方、ロッド60が後方に最も繰り込まれたとき、多孔部材8の接続片51dがベース枠14の後方に突出し、接続片51cがベース枠14の前部片41c上に位置する。
【0047】
[シャッタ部材]
次に、シャッタ部材10について、図4を参照して説明する。
図4(a)は、シャッタ部材10の斜視図である。図4(b)は、シャッタ部材10の使用状態を示す断面図である。
【0048】
シャッタ部材10は、ホッパー2の排出口2bと多孔部材8との間に挿脱可能に介在される。このシャッタ部材10は、ホッパー2の排出口2bを覆うことが可能な長方形の板体からなり、一方の長辺に取っ手63が設けられている。
【0049】
図4(b)に示すように、ホッパー2の排出口2bと多孔部材8との間にシャッタ部材10を介在させることにより、ホッパー2の排出口2bが塞がれる。このように排出口2bを塞ぐ場合としては、例えば、ホッパー2に貯留された粉体100の供給を停止又は中断する場合や、ホッパー2に粉体100を投入する場合が挙げられる。なお、ホッパー2に貯留された粉体100を供給する場合には、シャッタ部材10を排出口2bと多孔部材8との間から外す。
【0050】
[粉供給装置の使用方法]
次に、粉供給装置1の使用方法について説明する。
粉供給装置1によって混合機(不図示)などの供給先へ粉体100を供給する場合は、まず、シャッタ部材10によってホッパー2の排出口2bを塞ぐ(図4(b)参照)。これにより、ホッパー2に粉体100を投入しても、その粉体100の一部が排出口2bから排出されることを防ぐことができる。
【0051】
次に、昇降機構5(図1及び図2参照)を駆動させて支持部材3に支持されたホッパー2を下降させる。そして、ホッパー2に粉体100を投入する(図4(b)参照)。このとき、前の工程でホッパー2を下降させたことにより、ホッパー2に対する粉体100の投入作業を容易に行うことができる。
【0052】
続いて、昇降機構5を駆動させ、ホッパー2を上昇させる。次に、粉供給装置1を移動させて、混合機などの供給先(不図示)の上方にホッパー2を配置させる。そして、シャッタ部材10を取り外して、ホッパー2の排出口2bを開放する。このとき、粉体100の一部が多孔部材8を通過して混合機へ供給されるが、粉体100は、その自重により圧縮され、多孔部材8(網部52)の複数の貫通孔に詰まった状態になる。
【0053】
その後、振動器4及びシリンダ9を駆動させる。振動器4が駆動することにより、ホッパー2が振動し、その振動がホッパー2に貯留された粉体100に伝わる。その結果、粉体100がホッパー2内で固まらないようにして、粉体100を排出口2bへ移動(落下)させることができる。なお、粉体100が固まった状態については、後で詳しく説明する。
【0054】
一方、多孔部材8は、ホッパー2の排出口2bに沿って前後方向に往復移動し、網部52上に詰まった粉体100を擦り切るようにして通過(落下)させる。多孔部材8を通過した粉体100は、シュート部材46(図3参照)に案内されて混合機に供給される。
【0055】
上述したように、多孔部材8は、粉体100を擦り切るようにして通過させる。そのため、多孔部材8の網部52上にある粉体100を確実に通過させることができ、粉体の供給速度を一定に保つことができる。その結果、ホッパー内に粉体100が残留しないようにすることができる。また、シリンダ9によるロッド60の駆動速度を変えて、多孔部材8が移動する速度を変更することにより、粉体の供給速度を調整することができる。
【0056】
本実施の形態の粉供給装置1によれば、振動器4によって粉体100が排出口2bへ移動する程度の振幅でホッパーを振動させる。そして、多孔部材8がホッパー2の排出口2bに沿って前後方向に往復移動し、網部52上に詰まった粉体100を擦り切るようにして貫通過(落下)させる。したがって、排出口2bから粉体100が排出されるようにホッパー2全体を移動させることはない。その結果、ホッパー2に貯留された粉体100が舞い上がって飛散することを抑制することができる。しかも、作業者が飛散した粉体を吸引してしまうという健康上の問題を防止或いは抑制することができる。
【0057】
本実施の形態の粉供給装置1によれば、粉体100の供給速度を一定に保つことができるため、粉体100の安定した供給を行うことができる。例えば、供給先が混合機である場合に、その混合機の能力に応じた供給速度で粉体100を供給すれば、混合機が供給された粉体100を混合しきれなくなってダマ(粉体のかたまり)が生じることを抑制することができる。
【0058】
本実施の形態の粉供給装置1によれば、台車6を備えるため、粉体100をホッパー2に投入する場所から粉体100の供給先まで本装置を移動させることができ、1台で複数の供給先へ順々に粉体100を供給することができる。また、本実施の形態の粉供給装置1によれば、シャッタ部材10を備えるため、粉体100の供給を中断または停止することができる。
【0059】
本実施の形態の粉供給装置1によれば、シュート部材46を備えるため、多孔部材8を通過した粉体100を、所望の位置へ案内することができる。また、本実施の形態の粉供給装置1によれば、ミラー18がホッパー2の上方に配置されるため、昇降機構によってホッパー2を上昇させても、ホッパー2内を視認することができる。
【0060】
[実験]
次に、振動器4の駆動または多孔部材8の往復移動の一方を停止した実験について、図5を参照して説明する。
図5は、振動器4の駆動を停止して多孔部材8の往復移動のみを行って粉体100を供給した場合の説明図である。
【0061】
まず、実験1では、振動器4の駆動を停止し、多孔部材8の往復移動のみを行って粉体100の供給動作を行った。また、実験1では、粉体100として凝集性を有する粉末状植物性たん白を用いた。多孔部材8の網部52に設けられた網目は、一辺が10mmの四角形に形成した。そして、多孔部材8は、シリンダ9のロッド60によって前後方向に100mmの範囲で往復させるようにした。
【0062】
振動器4の駆動を停止して多孔部材8の往復移動のみを行うと、粉体100の供給量が徐々に減少し、その後、ホッパー2内に粉体100が残った状態で粉体100の供給が停止した。これは、ホッパー2に貯留された粉体100がその自重によって圧縮され、図5に示すように、ホッパー2内でブリッジ状に固まってしまうからである。
【0063】
粉体100がブリッジ状に固まった場合、振動器4を駆動してホッパー2内の粉体100を振動させると、粉体100の自重による圧縮が緩和され、粉体100をホッパー2の排出口2bへ移動(落下)させることができる。その結果、粉体100がホッパー2内で固まることを防ぎ、粉体100を排出口2bへ移動させることができた。また、粉体100がホッパー2内に溜まることもなく、また飛散することなくシュート部材46を経由して一定の速度で全量が混合機へ供給された。
【0064】
次に、実験2では、多孔部材8の往復移動を停止し、振動器4のみを駆動して粉体100の供給動作を行った。この実験2においても、実験1と同様に、粉体100として凝集性を有する粉末状植物性たん白を用いた。
【0065】
多孔部材8の往復移動を停止して振動器4のみを駆動すると、粉体100の一部が多孔部材8を通過して供給先へ供給されたが、その後、ホッパー2内に粉体100が残った状態で粉体100の供給が停止した。これは、ホッパー2に貯留された粉体100がその自重により圧縮され、多孔部材8(網部52)の複数の貫通孔に詰まったからである。そして、粉体100の詰まりは、粉体100を振動させるだけでは解消されなかった。
【0066】
この際、多孔部材8の往復移動を行うと、多孔部材8が網部52上に詰まった粉体100を擦り切るようにして通過(落下)させる。その結果、排出口2bへ移動した粉体100が多孔部材8の複数の貫通孔に詰まって供給先へ供給されなくなることを防ぐことができ、粉体100の供給速度を一定に保つことができた。
【0067】
このような実験1及び2の結果から、粉体100の供給速度を一定に保つためには、振動器4の駆動と、多孔部材8の往復移動が必要であることがわかった。また、粉体100の供給速度は、多孔部材8が往復移動する速度に比例する。そのため、多孔部材8が往復移動する速度(周期)を変更することにより、粉体100の供給速度を調整することができる。
【0068】
[変形例]
以上、本発明の粉供給装置の実施の形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の粉供給装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0069】
上述の実施の形態では、支持部材3のベース枠14によって多孔部材8を移動可能に支持する構成とした。しかしながら、本発明の粉供給装置としては、シリンダ9のロッド60によって多孔部材8を支持する構成としてもよい。
【0070】
上述の実施の形態では、シリンダ9によって多孔部材8を前後方向に往復移動させる構成にしたが、多孔部材8を左右方向に往復移動させる構成としてもよい。また、本発明に係る多孔部材8の移動は、往復移動に限定されるものではなく、例えば、ホッパー2の排出口2bに沿って円周方向に移動させるようにしてもよい。
【0071】
上述の実施の形態では、振動器4によって支持部材3及びホッパー2を振動させる構成とした。しかしながら、本発明の粉供給装置としては、多孔部材にも振動器の振動が伝わるような構成にしてもよい。
【0072】
上述の実施の形態では、昇降機構5にモータ23、ギア24及びチェーンを用いる構成としたが、本発明に係る昇降機構としては、例えば、油圧式、送りねじ式等その他の送り機構を適用することもできる。
【0073】
また、本発明の粉供給装置としては、ホッパー2内に固まり抑制部材を配置する構成としてもよい。この固まり抑制部材について、図6を参照して説明する。
図6は、固まり抑制部材71の斜視図である。
【0074】
固まり抑制部材71は、枠部72と、枠部72に取り付けられた仕切り板部73及びフック部74からなっている。枠部72は、ホッパー2の排出口2b(図4(b)参照)よりも小さい長方形に形成されている。この枠部72は、長辺を形成する2つの長板片72a,72bと、短辺を形成する短板片72c,72dからなっている。
【0075】
仕切り板部73は、略長方形の板体からなり、両端が長板片72a,72bの互いに対向する面(内側の面)にそれぞれ連結されている。したがって、枠部72の開口は、仕切り板部73によって2つに仕切られている。なお、本発明に係る固まり抑制部材としては、2つ以上の仕切り板部を有する構成にすることもできる。2つ以上の仕切り板部を設ける場合は、各仕切り板部間に適当な間隔をあける。
【0076】
本実施の形態では、短板片72c,72dにそれぞれ2つのフック部74が固定されている。このフック部74は、上下方向に延びており、一端が短板片72c,72dの外面に固定されている。フック部74の他端は、ホッパー2の投入口2aを形成する縁部に引っ掛かるようにコ字状に折り曲げ加工されている。つまり、固まり抑制部材71は、ホッパー2に着脱可能に構成されている。
【0077】
フック部74の上下方向の長さは、枠部72及び仕切り板部73をホッパー2の排出口2bに近接させる長さに設定されている。したがって、固まり抑制部材71がホッパー2に取り付けられると、仕切り板部73がホッパー2の排出口2bを2つに仕切るようになっている。これにより、粉体100が万一排出口2b付近で固まった(例えば、ブリッジ状)場合でも、その固まりが仕切り板部73によって崩れる。その結果、ホッパー2に投入された全ての粉体100をより確実に排出口2bから排出させることができる。
【符号の説明】
【0078】
1…粉供給装置、2…ホッパー、 2a…投入口、 2b…排出口、 3…支持部材、 4…振動器、 5…昇降機構、 6…台車、 7…制御部、 8…多孔部材、 9…シリンダ、 10…シャッタ部材、14…ベース枠、 18…ミラー、 21…移動部材、 22A,22B…ガイドレール、 23…モータ、 24…ギア、 28…操作部、 31…台座、 32…車輪、41a,41b…側部片、 41c…前部片 41d…後部片、 41e…仕切り片、 42A…第1の開口部、 42B…第2の開口部、 44…突条部(ガイド部)、 46…シュート部材、 51…枠部、 52…網部、 53…フック部、 54…連結部、 60…ロッド、 61…連結部材、 100…粉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を貯留し、下部に設けられた排出口から前記粉体を排出するホッパーと、
前記ホッパー内の粉体を前記排出口へ落下させるために前記ホッパーを振動させる振動器と、
前記ホッパーの排出口に対向して配置され、前記粉体を通過させる複数の貫通孔を有する多孔部材と、
前記ホッパーの排出口に沿って前記多孔部材を移動させる駆動部と、
を備える粉供給装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記多孔部材を往復移動させる
請求項1記載の粉供給装置。
【請求項3】
前記ホッパーを支持する支持部材と、
前記支持部材を上下方向に移動させる昇降機構と、を備える
請求項1または2記載の粉供給装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記多孔部材を摺動可能に支持する
請求項3記載の粉供給装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記多孔部材の移動を案内するガイド部を有する
請求項3または4記載の粉供給装置。
【請求項6】
前記ホッパーの排出口と前記多孔部材との間に挿脱可能に介在されるシャッタ部材を有する
請求項1〜5のいずれかに記載の粉供給装置。
【請求項7】
前記多孔部材の下方に配置され、前記多孔部材を通過した粉体を所望の位置に案内するシュート部材を有する
請求項1〜6のいずれかに記載の粉供給装置。
【請求項8】
前記ホッパーの上方に配置され、前記ホッパー内を視認可能なミラーを有する
請求項1〜7のいずれかに記載の粉供給装置。
【請求項9】
前記ホッパー内に配置され、前記排出口を2つ以上に仕切る固まり抑制部材を有する
請求項1〜8のいずれかに記載の粉供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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