説明

粉末圧延装置及び粉末圧延方法

【課題】基材のシート幅方向に作用する荷重が一方のロール軸端部に常に偏ることを防止しつつ、基材のシート幅方向の変位を抑制することによって、基材を変形させることなく粉末材料の無駄を抑制する。
【解決手段】前記基材の表面と直交する方向から見たときに、前記基材が前記圧延ロールの周方向に沿うように、前記基材の前記圧延ロール間への進入方向を調節する基材進入方向調節手段20と、圧延ロールの軸方向の端部に対して圧延ロール同士を近づける方向に掛ける荷重の大きさを制御することにより、圧延ロール間における基材の幅方向に対する変位を抑制する基材幅方向変位抑制手段30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末圧延装置及び粉末圧延方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、基材の表面に対してクラッド層が付着形成されたクラッドシートを製造する過程で用いられる装置として、基材に対して粉末材料を圧着する粉末圧延装置が提案されている。例えば、特許文献1には、このような粉末圧延装置が開示されている。
より詳細に説明すると、粉末圧延装置は、対向配置される一対の圧延ロールを備えており、圧延ロール間に供給される基材の表面に対して、圧延ロールと基材の間に粉末を供給して粉末材料を基材に圧着させることによって基材表面に粉末層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4211576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、粉末圧延装置では、できる限り粉末材料の無駄が発生しないように、粉末材料全量が基材に圧着するようにしたい。そのためには、圧延ロール間における粉末材料の供給範囲幅を帯状の基材幅に一致させることが好ましい。
【0005】
一方で、基材幅に一致するように粉末材料の供給範囲幅を設定した場合、基材の厚み分布が幅方向で不均一であったり、基材を巻回してなるコイルの巻き方が幅方向で不均一であったりすると、基材の幅方向張力分布が均一でなくなり、圧延ロールを通過する際の基材の通過位置が一定のところに留まらず蛇行する場合がある。
このように基材が蛇行する場合において、粉末材料の供給範囲幅を基材幅と一致させておくと、基材の圧延ロール通過位置が圧延ロール幅方向の粉末材料の供給範囲幅内に安定して留まっていないため、基材の一方の幅端部が粉末材料の供給範囲幅から外れる。そのため、基材に粉末材料が付着されずに粉末材料が無駄となってしまうと共に、基材の幅端部表面に粉末材料が圧着されない未着部領域が発生してしまう。このように基材の表面に粉末材料が圧着されない未着部領域の発生は、クラッドシートの品質低下に繋がる虞がある。
このため、従来の粉末圧延装置を用いてクラッドシートを生産する場合は、クラッドシートの品質低下を防止するために、粉末材料の無駄が発生することを承知の上で、常に基材幅の全域に粉末材料が圧着されるよう粉末材料の供給範囲幅を基材幅よりも広くせざるを得なかった。
【0006】
なお、粉末圧延装置では、基材への粉末材料の圧着において、圧延ロール軸の両端に圧延ロール同士を押し合うようにそれぞれ独立した荷重を掛けている。そして、これらの荷重のバランスを調節することによって、基材の圧延ロール通過位置を幅方向に移動させることができる。例えば、圧延ロール軸の一端側の荷重を、圧延ロール軸の他端側の荷重よりも高くすると、基材の圧延ロール通過位置は他端側に移動する。
このため、基材の幅方向変位を検出し、この検出結果に基づいて圧延ロールに掛ける荷重バランスを制御すれば、基材の幅方向変位を抑制できる。
【0007】
ところで、上述のように、基材の幅方向変位は、基材の厚さ分布の幅方向不均一性や、コイルの巻き方の幅方向不均一性を原因とする場合もある。そして、これらの不均一性が、幅方向の一方に偏っている場合、基材は常に幅方向の同一方向に移動しようとすることになる。この基材の幅方向の移動は、圧延ロールを通過するときだけでなく、基材コイルが巻戻機から引き出され、粉末圧延装置に到達する以前に、パスラインを通過している間にも発生する。
そして、このような場合、圧延ロールを通過する前に、基材の幅方向位置が基準位置から一方向に変位していると、上述した圧延ロールに掛ける荷重バランスを調節して、圧延ロール通過の際の基材の幅方向位置を粉末材料の供給範囲幅内に合わせるよう制御できたとしても、既に、粉末圧延装置に到達する前段階で基材の幅方向位置が変位しているので、基材は、圧延ロール通過の際、ロール軸方向に対して直角に進入おらず、圧延ロール間でも常に幅方向の同一方向に移動しようとする。基材のこの幅方向変位を検出し、この検出結果に基づいて、変位を無くすように圧延ロールに掛ける荷重バランスを制御とすると、圧延ロール軸の片側の荷重を常に高く維持することになる。
このように、荷重バランスに大きく差をつけ、圧延ロール軸の片側の荷重が常に高い状態が続くと、基材の片側のみが常に強く圧下されることとなり、基材の片側の伸びが大きくなり、基材の長手方向の反り(いわゆる「L反り」)が発生したり、基材の幅方向の片側だけが波状に変形し、クラッドシートの形状不良を発生させる虞がある。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、粉末圧延装置及び粉末圧延方法において、基材の幅方向に作用する荷重が一方のロール軸端部に常に偏ることを防止しつつ、圧延ロールを通過する際の基材の幅方向変位を抑制することによって、クラッドシートの形状不良の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、粉末圧延装置であって、帯状の基材に対して粉末材料を圧着する少なくとも一対の圧延ロールと、前記基材の表面と直交する方向から見たときに、前記基材が前記圧延ロールの周方向に沿うように、前記基材の前記圧延ロール間への進入方向を調節する基材進入方向調節手段と、前記圧延ロールの軸方向の一端部に掛かる荷重を、前記圧延ロールの軸方向の他端部に掛かる荷重に対して相対的に増減させることにより、前記圧延ロール間における前記基材の幅方向に対する変位を抑制する基材幅方向変位抑制手段とを備えるという構成を採用する。
【0010】
例えば、基材を巻回したコイルの巻き方に偏りがある場合には、基材コイルを巻戻機から引き出す際に、幅方向に基材に作用する張力の偏りが生じる。このため、基材がコイルから引き出された後、基材はパスライン(基材が通る軌跡すなわち基材の通り道)の通過中に幅方向に移動を始め、圧延ロールの通過前に、圧延ロール間への基材の進入位置が粉末の供給範囲幅内に入るような幅方向基準位置から既に外れた状態、すなわち基材幅中央位置とロール幅中央位置がずれた状態になっている。そこで、このようなずれた状態を解消する対策として、圧延ロールに掛ける圧延荷重バランスを制御して、荷重バランスに大きく差をつけ、圧延ロール間で基材が常に幅方向の同一方向に移動することを抑制し、基材の位置を粉末の供給範囲幅内に保つようにすると、基材は、圧延ロールに対して直角に進入していない状態になるとともに、圧延ロール幅方向における片側の圧延荷重が常に高くなる。その結果、基材の幅方向における片側の伸びが大きくなって、基材の長手方向の反り(L反り)が発生したり、幅方向の片側だけが波状に変形し、クラッドシートの形状不良を発生させる虞がある。
これに対して、本発明によれば、基材進入方向調節手段によって、圧延ロール前で、基材幅中央位置とロール幅中央位置が合わせられる。このため、基材は、圧延ロールに対して直角に進入するようになり、基材が圧延ロール間で幅方向の同一方向に変位しようとする状態になることを防止できる。
また、本発明によれば、基材幅方向変位抑制手段によって、圧延ロールに掛ける荷重バランスを制御している。そのため、基材が圧延ロールを通過する際の、基材の幅方向の変位を抑制することができる。したがって、粉末材料の供給範囲内に基材の幅位置を合わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基材幅方向に作用する荷重が一方のロール軸端部に常に偏ることを防止しつつ、圧延ロール通過の際の基材の幅方向変位を抑制することによって、クラッドシートの形状不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態における粉末圧延装置の主要部を示す概略構成図であり、(a)が圧延ロール軸方向から見た模式図であり、(b)が(a)を上方から見た図である。
【図2】本発明の一実施形態における粉末圧延装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】(a)は、本発明の一実施形態における粉末圧延装置が備えるロール軸の角度が可変なスイングロールの平面模式図であり、(b)は、本発明の一実施形態における粉末圧延装置が備える、基材の幅端部位置を検出するエッジセンサの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る粉末圧延装置及び粉末圧延方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
本実施形態の粉末圧延装置1は、金属からなる帯状の基材の両面に対して例えばロウ材層として機能するクラッド層が付着形成されたクラッドシートを製造する過程が用いられるものである。粉末圧延装置1は、基材の両面に対してクラッド層の形成材料となる粉末材料を圧着させ、粉末層を形成する。
基材に形成された粉末層は、状況に応じ、後工程での加熱により、固相焼結若しくは液相焼結または溶融され、クラッド層となる。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態の粉末圧延装置1は、圧延ロール2と、駆動装置3と、粉末材料供給装置4(図1には不図示)と、予備圧下装置5と、スイングロール装置6と、第1エッジセンサ7(第1変位検出センサ)と、駆動側油圧装置8(油圧装置)と、従動側油圧装置9(油圧装置)と、第2エッジセンサ10(第2変位検出センサ)と、制御装置11とを備えている。
なお、図1及び図2に示されていないが、本実施形態の粉末圧延装置1は、基材が巻回されたコイルを支持すると共に当該基材を引き出す巻戻機や基材を搬送する搬送装置等を備えている。
【0016】
圧延ロール2は、粉末材料を基材と共に圧延して基材に対して圧着するものである。
本実施形態の粉末圧延装置1においては、図1に示すように、2本の圧延ロール2A,2Bが一対とされており、これら2本の圧延ロール2A,2Bが周面を向かい合わせて対向配置されている。また、図1に示すように、2本の圧延ロール2A,2Bは、回転軸が平行となり、かつ同じ高さとなるように配置されている。
そして、本実施形態の粉末圧延装置1においては、2本の圧延ロール2A,2B間に上方から下方に向けて基材Xが通過され、これらの2本の圧延ロール2A,2Bによって、粉末材料Yと基材Xとが共に加圧され、粉末材料Yを基材Xの表面に圧着する。
【0017】
圧延ロール2Aは、図1に示すように、両端の軸部2aが、軸受を含む軸箱12aによって支持されている。軸箱12aは、圧延機フレーム13に固定された油圧装置8,9のシリンダ8a,9aによって押され、その結果、圧延ロール2Aが圧延ロール2Bを押す。さらに、圧延ロール2Aによって押された圧延ロール2Bの両端軸部2bがもう片方の軸箱12bを介して圧延機フレーム13に押し当てられる。これにより、圧延ロール2A,2Bの各軸端に荷重が掛かる。
【0018】
駆動装置3は、圧延ロール2を回転駆動するものであり、圧延ロール2の一端側に接続されている。
より詳細には、駆動装置3は、圧延ロール2Aと圧延ロール2Bとの間(ロールギャップG)において挟まれた基材Xを上方から下方に搬送するように、圧延ロール2Aと圧延ロール2Bとをそれぞれ反対方向に回転駆動する(図1(a)参照)。
なお、以下の説明において、駆動装置3が配置される側を駆動側、駆動装置3と反対側と従動側と称する。
【0019】
粉末材料供給装置4は、圧延ロール2の周面に対して粉末材料Yを供給するものであり、圧延ロール2A,2BのロールギャップGに粉末材料Yが供給されるように、圧延ロール2の回転方向においてロールギャップGの上流側にて圧延ロール2の周面に対して粉末材料Yを供給する。
なお、図1(a)に示すように、粉末材料Yの供給位置は、圧延ロール2の回転方向において、予備圧下装置5よりも上流側とされている。
【0020】
予備圧下装置5は、粉末材料供給装置4から圧延ロール2上に供給された粉末材料YをロールギャップGに到達する前に予備的に圧下することで、粉末材料Yが圧延ロール2の周面から滑り落ちることを抑止するとともに、基材Xに圧着される粉末層の厚さを調整するためのものである。
【0021】
スイングロール装置6は、基材Xの進行方向において、圧延ロール2よりも上流側に配置されており、基材Xが廻し掛けられるスイングロール6a,6bを有している。
そして、このスイングロール6a,6bは、回転軸が水平となるように配置されており、制御装置11の制御の下、図3(a)に示すように、回転軸が水平面内において回動されることによって基材Xの幅方向位置を変更可能とされている。
【0022】
第1エッジセンサ7は、スイングロール装置6の直後に位置されており、基材Xの幅方向の変位を検出するものである。
図3(b)に示すように、第1エッジセンサ7は、U字形状を有しており、基材Xの幅端部が一対の素子の間に位置するように配置されている。第1エッジセンサ7は、基材Xの端X1の位置を検出することによって基材Xの幅方向の変位を検出するものである。
この第1エッジセンサ7としては、幅端部位置を検出できるセンサであれば、光学式センサや磁気式センサなど種々のセンサを用いることができる。
【0023】
なお、本実施形態の粉末圧延装置1においては、図2に示すように、スイングロール装置6と、第1エッジセンサ7と、制御装置11とによって、基材進入方向調節装置20(基材進入方向調節手段)が構成されている。
この基材進入方向調節装置20は、制御装置11の制御の下、第1エッジセンサ7の検出結果に基づいてスイングロール6a,6bを基材Xの進行方向に対して傾斜させることによって、基材Xの圧延ロール2A,2B間への進入方向を調節する。
より詳細には、進入方向調節装置20は、基材Xが圧延ロール2A,2B間へ進入する手前で、基材Xの表面と直交する方向から見た基材Xの圧延ロール2A,2B間への進入方向を、圧延ロール2A,2Bの周方向に沿うように(本実施形態では、圧延ロール2A,2Bのロール軸に対して直角に進入する方向に合わせるように)、調節する。
なお、ここで、基材Xの圧延ロール2A,2B間への進入方向を圧延ロール2A,2Bのロール軸に対して直角に進入する方向に合わせるとは、基材Xの圧延ロール2A,2B間への進入方向を圧延ロール2A,2Bのロール軸に対して直角に進入する方向に完全一致させる場合は勿論、予め定められた許容範囲に納める場合も含む意味である。
【0024】
駆動側油圧装置8は、圧延ロール2Aの駆動側の一端に配置される油圧装置である。駆動側油圧装置8は、図1(b)に示すように、油圧シリンダ8aを伸長することによって、軸箱12aを押す。
そして、油圧シリンダ8aによって軸箱12aが圧延ロール2B側に押し付けられると、圧延ロール2A及び圧延ロール2Bの駆動側の端部に対して、圧延ロール2同士を押し合うよう荷重が掛かる。
なお、当該駆動側油圧装置8によって付加される油圧シリンダ8aの押圧力は、制御装置11の制御の下、第2エッジセンサ10の検出結果に基づいて制御される。
【0025】
従動側油圧装置9は、圧延ロール2Aの従動側の一端に配置される油圧装置である。従動側油圧装置9は、図1(b)に示すように、油圧シリンダ9aを伸長することによって、軸箱12aを押す。
そして、油圧シリンダ9aによって軸箱12aが圧延ロール2B側に押し付けられると、圧延ロール2A及び圧延ロール2Bの従動側の端部に対して、圧延ロール2同士を押し合うよう荷重が掛かる。
なお、当該従動側油圧装置9によって付加される油圧シリンダ9aの押圧力は、制御装置11の制御の下、第2エッジセンサ10の検出結果に基づいて制御される。
【0026】
第2エッジセンサ10は、基材Xの進行方向において基材進入方向調節装置20の下流側であり、圧延ロール2A,2Bの上流側に配置されると共に基材Xの幅方向の変位を検出するものである。
図3(b)に示すように、第2エッジセンサ10は、第1エッジセンサ7と同様に、U字形状を有しており、基材Xの幅端部が一対の素子の間に位置するように配置されている。第2エッジセンサ10は、基材Xの端X1の位置を検出することによって基材Xの幅方向の変位を検出するものである。
この第2エッジセンサ10としては、幅端部位置を検出できるセンサであれば、光学式センサや磁気式センサなど種々のセンサを用いることができる。
【0027】
なお、本実施形態の粉末圧延装置1においては、図2に示すように、駆動側油圧装置8と、従動側油圧装置9と、第2エッジセンサ10と、制御装置11とによって、基材幅方向変位抑制装置30が構成されている。
つまり、本実施形態において基材幅方向変位抑制装置30は、基材Xの進行方向において基材進入方向調節装置20の下流側に配置されると共に基材Xの幅方向の変位を検出する第2エッジセンサ10と、圧延ロール2の軸方向の両端の各々に設けられると共に第2エッジセンサ10の検出結果に基づいて作動される油圧装置(駆動側油圧装置8及び従動側油圧装置9)とを備えている。
このような基材幅方向変位抑制装置30は、制御装置11の制御の下、圧延ロール2の軸方向の両端に対して圧延ロール2同士を押し合う方向に掛ける荷重のバランスを制御することにより圧延ロール2A,2B間における基材Xの幅方向に対する変位を抑制する。
【0028】
制御装置11は、本実施形態の粉末圧延装置1の動作全体を制御するものであり、図2に示すように、駆動装置3と、粉末材料供給装置4と、予備圧下装置5と、スイングロール装置6と、第1エッジセンサ7と、駆動側油圧装置8と、従動側油圧装置9と、第2エッジセンサ10とに電気的に接続されている。
【0029】
なお、図1(a)に示すように、第1エッジセンサ7と、第2エッジセンサ10との間には、圧延ロール2A,2BのロールギャップGの直上に案内ロール14が配置されている。
そして、スイングロール装置6を通過した基材Xは、案内ロール14によって鉛直方向に案内され、圧延ロール2A,2BのロールギャップGに上方から進行するように案内される。
【0030】
次に、このように構成された本実施形態の粉末圧延装置1の動作(粉末圧延方法)について説明する。
【0031】
まず、不図示の巻戻機によってコイルから引き出された基材Xは、基材進入方向調節装置20のスイングロール装置6に搬送される。
ここで、基材Xは、第1エッジセンサ7のところで、圧延ロール2A,2B間への進入位置を予め設定した幅方向基準位置に一致するように制御される。
【0032】
より詳細には、基材進入方向調節装置20は、第1エッジセンサ7の検出結果から、図3(a)における左側に基材Xが変位していると判断した場合には、スイングロール6a,6bを図3(a)において左回転させることによって、基材Xのライン進行方向に対する幅方向位置を図3(a)における右側に寄せる。これによって、基材Xの圧延ロール2A,2B間への進入位置が、圧延ロール2A,2Bの予め設定した幅方向基準位置に一致するように、進行方向に対する基材Xの幅方向位置が調節される。
【0033】
一方、基材進入方向調節装置20は、第1エッジセンサ7の検出結果から、図3(a)における右側に基材Xが変位していると判断した場合には、スイングロール6a,6bを図3(a)において右回転させることによって、基材Xのライン進行方向に対する幅方向位置を図3(a)における左側に寄せる。これによって、基材Xの圧延ロール2A,2B間への進入位置が、圧延ロール2A,2Bの予め設定した幅方向基準位置に一致するように、進行方向に対する基材Xの幅方向位置が調節される。
【0034】
基材進入方向調節装置20のスイングロール装置6を通過した基材Xは、案内ロール14に案内されて圧延ロール2A,2BのロールギャップGに上方から進入する。
基材Xがロール2A,2B間を通過する際、基材Xは、基材幅方向変位抑制装置30によって、幅方向の変位が抑制される。
【0035】
より詳細には、基材幅方向変位抑制装置30は、第2エッジセンサ10の検出結果から、図1(b)における駆動側に基材Xが変位していると判断した場合には、駆動側油圧装置8の油圧シリンダ8aの押圧力に対し、従動側油圧装置9の油圧シリンダ9aの押圧力を相対的に低下させるように、圧延ロール2の軸方向の両端に対して圧延ロール2同士を押し合う方向に掛ける荷重のバランスを制御する。これによって、基材Xを従動側に変位させることができ、基材Xの幅方向の変位が抑制される。
【0036】
一方、基材幅方向変位抑制装置30は、第2エッジセンサ10の検出結果から、図1(b)における従動側に基材Xが変位していると判断した場合には、駆動側油圧装置8の油圧シリンダ8aの押圧力に対し、従動側油圧装置9の油圧シリンダ9aの押圧力を相対的に増加させるように、圧延ロール2の軸方向の両端に対して圧延ロール2同士を押し合う方向に掛ける荷重のバランスを制御する。これによって、基材Xを駆動側に変位させることができ、基材Xの幅方向の変位が抑制される。
【0037】
そして、本実施形態の粉末圧延装置1では、基材Xの幅方向の変位が抑制された状態で、上述のように、基材Xの圧延ロール2へ進入する前の進入位置と、圧延ロール2の予め設定した幅方向基準位置とが一致する。また、本実施形態の粉末圧延装置1では、圧延ロール2を通過する際の幅方向に対する変位が抑制された基材Xに対して、圧延ロール2によって、基材Xの幅と粉末材料Yの粉末供給範囲幅とが一致する。これにより、本実施形態の粉末圧延装置1では、クラッドシートの品質低下を生じることなく、基材Xに粉末材料Yが圧着される。
【0038】
以上のような本実施形態の粉末圧延装置1及び粉末圧延方法によれば、基材進入方向調節装置20によって、基材Xの圧延ロール2へ進入する前の進入位置と、圧延ロール2の予め設定した幅方向基準位とを一致させている。このため、基材Xが幅方向の同一方向に変位しようとすることを防止することができる。
また、本実施形態の粉末圧延装置1及び粉末圧延方法によれば、基材幅方向変位抑制装置30によって、圧延ロール2に掛ける荷重バランスを制御し、圧延ロール2によって、基材Xの幅と粉末材料Yの粉末供給範囲幅とを一致させている。したがって、基材Xの幅方向の変位を抑制することができ、粉末材料Yの無駄を削減することができる。
したがって、本実施形態の粉末圧延装置1及び粉末圧延方法によれば、基材Xの幅方向に掛かる荷重が一方のロール軸端部に常に偏ることを防止しつつ、圧延ロール2を通過する際の基材Xの幅方向の変位を抑制することができる。その結果、基材Xの片側だけが波状に変形するようなクラッドシートの形状不良を発生させることなく、粉末材料Yの無駄を削減することができる。
【0039】
また、本実施形態の粉末圧延装置1においては、基材進入方向調節装置20が第1エッジセンサ7とスイングロール装置6とを備えている。
このような構成を採用することによって、第1エッジセンサ7によって検出される基材Xの端部の位置に基づいて、基材Xの圧延ロール2に対する進入角度を計測することなく、基材Xの圧延ロール2に対する進入方向を調節することが可能となる。
【0040】
また、基材幅方向変位抑制装置30が第2エッジセンサ10と駆動側油圧装置8と従動側油圧装置9とを備えている。
このため、本実施形態の粉末圧延装置1によれば、簡易な構成で基材Xの進行方向に対する幅方向位置を制御することが可能となる。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態においては、第1エッジセンサ7をスイングロール装置6の下流側に配置する構成を採用した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、第1エッジセンサ7をスイングロール装置6の上流側に配置する構成を採用することも可能である。
【0043】
また、上記実施形態においては、第2エッジセンサ10を圧延ロール2の上流側に配置する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、第2エッジセンサ10を圧延ロール2の下流側に配置する構成を採用することも可能である。
【0044】
また、上記実施形態においては、粉末圧延装置1は、金属からなる帯状の基材の両面に対して、例えばロウ材層として機能する粉末層が付着形成され、その後、当該ロウ材層が固相焼結若しくは液相焼結または溶融されることでクラッド層となるクラッドシートを製造する過程について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、基材の片面にのみに粉末層が付着形成されクラッド層となるクラッドシートを製造する過程を採用することも可能である。また、ロウ材層に限らず、ロウ材以外の素材をクラッド層とすることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1……粉末圧延装置、2,2A,2B……圧延ロール、6……スイングロール装置、6a,6b……スイングロール、7……第1エッジセンサ(第1変位検出センサ)、8……駆動側油圧装置(油圧装置)、9……従動側油圧装置(油圧装置)、10……第2エッジセンサ(第2変位検出センサ)、11……制御装置、12a,12b・・・軸箱、13・・・圧延機フレーム、20……基材進入方向調節装置(基材進入位置調節手段)、30……基材幅方向変位抑制装置(基材幅方向変位抑制手段)、G……ロールギャップ、X……基材、Y……粉末材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材に対して粉末材料を圧着する少なくとも一対の圧延ロールと、
前記基材の表面と直交する方向から見たときに、前記基材が前記圧延ロールの周方向に沿うように、前記基材の前記圧延ロール間への進入方向を調節する基材進入方向調節手段と、
前記圧延ロールの軸方向の一端部に掛かる荷重を、前記圧延ロールの軸方向の他端部に掛かる荷重に対して相対的に増減させることにより、前記圧延ロール間における前記基材の幅方向に対する変位を抑制する基材幅方向変位抑制手段とを備えることを特徴とする粉末圧延装置。
【請求項2】
前記基材進入方向調節手段は、
前記基材の進行方向において前記基材幅方向変位抑制手段の上流側に配置されると共にパスライン上での前記基材の幅方向の変位を検出する第1変位検出センサと、
前記基材が掛け渡されると共に前記第1変位検出センサの検出結果に基づいて傾斜されるスイングロールを有するスイングロール装置とを備えることを特徴とする請求項1記載の粉末圧延装置。
【請求項3】
前記基材幅方向変位抑制手段は、
前記基材の進行方向において前記基材進入位置調節手段の下流側に配置されると共にパスライン上での前記基材の幅方向の変位を検出する第2変位検出センサと、
前記圧延ロールの軸方向の端部に設けられると共に前記第2変位検出センサの検出結果に基づいて作動される油圧圧下装置とを備えることを特徴とする請求項1記載の粉末圧延装置。
【請求項4】
一対の圧延ロールの少なくとも一方の周面に粉末材料を供給する工程と、
前記基材の表面と直交する方向から見たときに、前記基材が前記圧延ロールの周方向に沿うように、前記基材の前記圧延ロール間への進入方向を調節する工程と、
前記圧延ロールの軸方向の一端部に掛かる荷重を、前記圧延ロールの軸方向の他端部に掛かる荷重に対して相対的に増減させることにより、前記圧延ロール間における前記基材の幅方向に対する変位を抑制する工程と、
前記基材に対し前記粉末材料を圧着する工程とを含むことを特徴とする粉末圧延方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−214854(P2012−214854A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81723(P2011−81723)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【特許番号】特許第4952854号(P4952854)
【特許公報発行日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】