説明

粉末焼結積層造形装置及び粉末焼結積層造形方法

【課題】粉末材料の薄層の表面の温度が全造形領域にわたって均一になるようにすること、又は造形領域周辺部の粉末材料の薄層の温度低下を防止すること。
【解決手段】粉末材料の薄層を形成し、レーザ光を照射して粉末材料の薄層を焼結させ、複数の焼結薄層を積層して3次元造形物を作製する粉末焼結積層造形装置であって、第1の粉末材料容器14aと造形用容器13とをそれぞれの上端で連結する、上面が平面の第1の連結部17aと、造形用容器13と第2の粉末材料容器14bとをそれぞれの上端で連結する、上面が平面の第2の連結部17bと、第1の連結部17aに設けられた第2の熱源19aと、第2の連結部17に設けられた第3の熱源19bとを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末焼結積層造形装置及び粉末焼結積層造形方法に関し、造形テーブル上に複数の焼結薄層を積層して3次元造形物を作製する粉末焼結積層造形装置及び粉末焼結積層造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能試験用試作部品や少量多品種の製品に使用される部品等を造形することができる造形装置への要望が増えてきつつある。
【0003】
この要求を満たすものとして、光造形装置や粉末焼結積層造形装置などがある。なかでも、粉末焼結積層造形装置は、紫外線硬化性樹脂を使用した造形装置(以下「光造形装置」)と異なり、多種類かつ強靭な材料が使用できることが大きな特徴の一つであり、市場での認知度も増し、さまざまな用途で使用されはじめている。
【0004】
従来市販されている粉末焼結積層造形装置は、図9(a)、(b)はそれぞれ、従来市販されている粉末焼結積層造形装置の上面図、及びIII-III線に沿う断面図である。
【0005】
従来市販されている粉末焼結積層造形装置は、レーザ光出射部101Aと、造形部101Bと、図示しない制御装置とから構成されている。なお、上面図では、レーザ光出射部101Aが省略されている。
【0006】
レーザ光出射部101Aにおいては、レーザ光の光源とレーザ光の照射方向を制御するミラーとが設けられている。
【0007】
造形部101Bにおいては、図9(a)、(b)に示すように、中央部に設置された造形用容器1と、その両側に設置された粉末材料容器2a、2bと、造形用容器1及び粉末材料容器2a、2bの周囲に設けられ、それらの周囲に平坦な面を形成するフランジ4とを備えている。さらに、フランジ4は下枠7、7a、7bで補強されている。
【0008】
造形用容器1内では、レーザ光の照射により造形が行われて3次元造形物が作製される。造形用容器1に囲まれた部分の表面領域を造形領域1aと称する。粉末材料容器2a、2bは、粉末材料を収納する容器であり、粉末材料容器2a、2bに囲まれた部分の表面領域を粉末材料収納領域2c、2dと称する。フランジ4によって、造形用容器1と各粉末材料容器2a、2bとを連結する連結部4a、4bが形成されている。それらの連結部4a、4bは、造形領域1aと同じレベルの平面を形成し、造形領域1aと各粉末材料収納領域2c、2dとの間で粉末材料が移動する際に粉末材料が載る。
【0009】
また、造形用容器1内には造形用容器1内壁に沿って降下する造形テーブル5aが設置され、粉末材料容器2a、2b内には粉末材料容器2a、2b内壁に沿って上昇する粉末材料供給テーブル5b、5cが設置されている。
【0010】
制御装置は、造形テーブル5aを薄層一層分降下させ、粉末材料供給テーブル5b又は5cを上昇させて、リコータ6によって粉末材料供給テーブル5b又は5c上の粉末材料を運び出し、フランジ4a又は4b上面を移動させて造形テーブル5a上に粉末材料を運び入れ、かつ造形テーブル5a上で粉末材料の薄層を形成させる。制御装置は、次いで、レーザ光及び制御ミラーにより、作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき粉末材料の薄層を選択的に加熱して焼結させ、一層分の焼結薄層を形成する。さらに、これらの動作を繰り返させて多層の焼結薄層を積層させ、3次元造形物を形成させる。最後に、3次元造形物を冷却させる。
【0011】
このような粉末焼結積層造形装置では、造形用容器1内で、粉末材料の薄層を形成し、その粉末材料の薄層を選択的に加熱し、焼結して焼結薄層を形成し、これを繰り返して焼結薄層を積層し、3次元造形物を作製する。このため、焼結薄層と焼結されないで残った焼結薄層周囲の粉末材料とが造形用容器1内に収納されることとなる。この場合、熱応力に起因する造形物の反りを防止するために、および、造形に必要なレーザ出力を小さくするために、粉末材料容器2a、2bに設置された加熱手段により粉末材料容器2a、2b内の粉末材料の表面をその造形材料の融点から30〜60℃程度低い温度に予備加熱し、かつ造形用容器1などに設置された加熱手段により造形用容器1内の焼結直前の粉末材料の薄層の表面温度をその造形材料の融点から5〜15℃程度低い温度に予備加熱している。しかし、広い造形領域1a全体が均一な温度となるように加熱することは困難であり、一般的に、造形領域の中央部よりも周辺部で粉末材料の温度が低くなる傾向にある。
【0012】
そのため、造形領域1aの上方であって、造形領域1aの境界付近をより加熱する加熱手段を設置する場合がある(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特表平9−507882号公報(特許2847579)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このように改良された装置でも、造形領域1aの中央部に比べ境界付近が予想以上に低くなる傾向があり、造形領域1aの全領域の粉末材料の温度を均一にすることが難しい。
【0014】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて創作されたものであり、粉末材料の薄層の表面の温度が全造形領域にわたって均一になるようにすること、又は造形領域周辺部の粉末材料の薄層の温度低下を防止することができる粉末焼結積層造形装置及び粉末焼結積層造形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、第1の発明は、粉末焼結積層造形装置に係り、粉末材料の薄層を形成し、レーザ光を照射して前記粉末材料の薄層を焼結させ、複数の焼結薄層を積層して3次元造形物を作製する粉末焼結積層造形装置であって、底板が上下に移動する造形用容器と、前記造形用容器の上部に接触する機構部と、前記造形用容器に隣接するように前記機構部に設けられた熱源とを備えたことを特徴とし、
第2の発明は、粉末焼結積層造形装置に係り、粉末材料の薄層を形成し、レーザ光を照射して前記粉末材料の薄層を焼結させ、複数の焼結薄層を積層して3次元造形物を作製する粉末焼結積層造形装置であって、底板が上下に移動する第1の粉末材料容器と、底板が上下に移動する第2の粉末材料容器と、前記第1の粉末材料容器と第2の粉末材料容器の間に配置され、底板が上下に移動する造形用容器と、前記第1の粉末材料容器と前記造形用容器とをそれぞれの上端で連結する、上面が平面の第1の連結部と、前記造形用容器と前記第2の粉末材料容器とをそれぞれの上端で連結する、上面が平面の第2の連結部と、前記第1の粉末材料容器から第1の連結部を介して造形用容器に、さらに前記造形用容器から第2の連結部を介して前記第2粉末材料容器に前記粉末材料を運搬する粉末材料運搬手段と、前記造形用容器の上方に設けられた第1の熱源と、前記第1の連結部に設けられた第2の熱源と、前記第2の連結部に設けられた第3の熱源とを備えたことを特徴とし、
第3の発明は、第2の発明の粉末焼結積層造形装置に係り、前記造形用容器の開口及び前記粉末材料容器の開口は、四角い平面形状を有することを特徴とし、
第4の発明は、第2又は第3の発明の何れか一の粉末焼結積層造形装置に係り、前記造形用容器から前記第2の熱源に至る領域、前記造形用容器から前記第3の熱源に至る領域にそれぞれ温度センサが設けられていることを特徴とし、
第5の発明は、第2乃至第4の発明の何れか一の粉末焼結積層造形装置に係り、前記第1乃至第3の熱源は、それぞれ独立に発熱量の調整ができるようになっていることを特徴とし、
第6の発明は、第2乃至第5の発明の何れか一の粉末焼結積層造形装置に係り、前記造形用容器には、前記粉末材料運搬手段の移動方向の両側部に当たる領域にそれぞれフランジが設けられていることを特徴とし、
第7の発明は、第6の発明の粉末焼結積層造形装置に係り、前記それぞれのフランジの下に第4及び第5の熱源が設けられていることを特徴とし、
第8の発明は、第7の発明の粉末焼結積層造形装置に係り、前記造形用容器から前記第4の熱源に至る領域、前記造形用容器から前記第5の熱源に至る領域にそれぞれ温度センサが設けられていることを特徴とし、
第9の発明は、第7乃至第8の発明の何れか一の粉末焼結積層造形装置に係り、前記第1乃至第5の熱源は、それぞれ独立に発熱量の調整ができるようになっていることを特徴とし、
第10の発明は、粉末焼結積層造形方法に係り、第2乃至第9の発明の何れか一の粉末焼結積層造形装置を用いた粉末焼結積層造形方法であって、前記第1又は第2の粉末材料容器から前記造形用容器内に前記粉末材料を運搬し、前記造形用容器内に前記粉末材料の薄層を形成し、前記粉末材料の薄層を焼結する工程を有し、少なくとも前記粉末材料を前記造形用容器内に運び入れてから前記粉末材料の薄層の焼結が終わるまで、前記第2乃至第5の熱源のうち少なくとも何れか一の発熱量を調整して前記造形用容器の境界付近の温度を調整し、前記造形用容器の境界付近での温度低下を防止することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粉末焼結積層造形装置は、粉末材料の薄層を形成し、レーザ光を照射して粉末材料の薄層を焼結させ、複数の焼結薄層を積層して3次元造形物を作製するものであり、造形用容器の上部に接触する機構部と、造形用容器に隣接するように機構部に設けられた熱源とを備えている。
【0017】
ところで、このような装置では、造形用容器内の粉末材料の薄層が第1の熱源により予備加熱されるが、機構部が高い熱伝導率を有する場合、造形用容器内から機構部への伝熱、さらに機構部表面からの放熱などにより、造形用容器の境界付近で予想以上の温度低下が起こる。
【0018】
本発明によれば、機構部に設けられた熱源によって機構部を加熱することにより機構部表面からの放熱などを補い、熱源付近の機構部表面の温度が低下するのを防止することができる。このため、造形用容器の境界付近の温度、特に、造形用容器の造形領域周辺部での温度の低下を防止することができる。
【0019】
また、本発明の別の粉末焼結積層造形装置は、造形用容器と第1及び第2の粉末材料容器とをそれぞれの上端で連結する、上面が平面の第1及び第2の連結部(機構部)に第2及び第3の熱源が設けられている。
【0020】
第1及び第2の連結部に設けられた第2及び第3の熱源によって第1及び第2の連結部を加熱することにより第1及び第2の連結部表面からの放熱などを補い、第2及び第3の熱源付近の第1及び第2の連結部表面の温度が低下するのを防止することができる。このため、造形用容器の境界付近の温度、特に、粉末材料を運び入れる側の造形用容器の境界付近の温度の低下を防止することができる。
【0021】
或いは、それらに加えて、造形用容器の、粉末材料運搬手段の移動方向の両側部に当たる領域にそれぞれ設けられたフランジの下にも第4及び第5の熱源を設けている。したがって、第4及び第5の熱源から発熱させることによってフランジからの放熱を補うことができるため、造形用容器の機構部と接触するすべての境界付近の温度の低下を防止することができる。
【0022】
これにより、造形用容器内の粉末材料の薄層を焼結する際に、粉末材料の薄層の中央部と周辺部の温度差を小さくすることができるため、粉末材料の薄層全体をより均一な温度に保持できる。このため、粉末材料の薄層の何れの選択領域でも均一に焼結させることができる。
【0023】
また、造形用容器から第2及び第3の熱源に至る領域に、即ち粉末材料を運び入れる側の造形用容器の境界付近にそれぞれ温度センサを有している。この温度センサにより、造形用容器のその境界付近の温度を計測して粉末材料の薄層の周辺部の温度を監視することができる。これにより、粉末材料を運び入れる側の造形用容器の境界付近を加熱する第2及び第3の熱源の発熱量をどの程度調整すればよいかが容易に把握できる。
【0024】
或いは、それらに加えて、造形用容器から第4及び第5の熱源に至る領域に、それぞれ温度センサを設けることにより、造形用容器のより多くの境界付近の温度を計測して粉末材料の薄層の周辺部の温度を監視することができる。
【0025】
従って、種々の造形条件に関わらず、精度のよい温度調整が可能である。
【0026】
これにより、造形用容器内の粉末材料の薄層全体の温度をより一層均一化することができるため、焼結をより一層均一に行うことができる。
【0027】
以上のように、本発明によれば、粉末材料の薄層の焼結時に、粉末材料の薄層全体の焼結をより均一に行うことができるので、造形領域の境界付近で焼結した焼結薄層の部分と中央部で焼結した焼結薄層の部分とを比較しても熱応力の差は小さい。これにより、作製された3次元造形物の反りを抑制し、精度の高い3次元造形物を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0029】
(粉末焼結積層造形装置の説明)
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る粉末焼結積層造形装置の構成を示す上面図であり、同図(b)はI−I線に沿う断面図である。この装置では、造形領域の前側周辺部及び後側周辺部の上方にそれぞれ熱源を設置している。
【0030】
図2は、図1の造形領域を前後に横切るII−II線に沿う断面図である。
【0031】
図3は、図1の造形領域を左右に横切るI−I線に沿う断面図である。
【0032】
(a)全体の装置構成
この粉末焼結造形装置111は、図1(a)、(b)に示すように、レーザ光出射部111Aと、造形部111Bと、制御装置111Cとから構成されている。造形部111Bの粉末材料が飛び散って行かないように、造形部111Bの周囲は図示しない仕切り壁で囲まれている。そして、造形部111Bの前側には、作製された3次元造形物を取り出すための図示しない開閉扉などが設けられている。レーザ光出射部111Aもこの仕切り壁内に収納されている。
【0033】
(b)レーザ光出射部111Aの構成
図1(b)に示すレーザ光出射部111Aにおいては、レーザ光の光源とレーザ光の照射方向を制御するミラーとが設けられている。光源から出射したレーザ光はコンピュータによるミラー制御により、造形部111Bのパートテーブル(造形テーブル)15上に形成される粉末材料の薄層に選択的に照射されるようになっている。例えば、作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき、コンピュータによるミラー制御が行われる。レーザ光の光源とミラーとが加熱焼結手段を構成する。
【0034】
(c)造形部111Bの構成
造形部111Bにおいては、図1(a)、(b)に示すように、造形用容器13と、その両側に設けられた第1及び第2の粉末材料容器14a、14bとを備えている。造形用容器1は、線対称を有する、例えば平面形状が正方形の筒状を有し、容器内でレーザ光の照射により造形が行われて3次元造形物が作製される。また、第1及び第2の粉末材料容器14a、14bは、線対称を有する、例えば平面形状が長方形の筒状を有し、容器内に粉末材料が収納される。造形用容器13の内壁に囲まれた部分の表面領域を造形領域13aと称し、第1及び第2の粉末材料容器14a、14bの内壁に囲まれた部分の表面領域を第1及び第2の粉末材料収納領域14c、14dと称する。造形領域13aと第1及び第2の粉末材料収納領域14c、14dの対向する境界の長さは相互に等しくなっている。この理由は、造形領域13aに粉末材料の供給むらが生じないように粉末材料を供給するため、及び粉末材料を無駄なく造形領域13aに供給するためである。
【0035】
造形用容器13内には、3次元造形物となる積層された焼結薄層を載せて、容器内壁に沿って昇降可能なパートテーブル(底板)15aが設置されている。パートテーブル15a上で、順次粉末材料の薄層が形成され、粉末材料の薄層ごとに加熱されて焼結される。また、第1及び第2の粉末材料容器14a、14b内には、粉末材料を載せて容器内壁に沿って昇降し、粉末材料を供給したり、粉末材料の薄層を形成した後の残余の粉末材料を収納する第1及び第2のフィードテーブル(底板)15b、15cがそれぞれ設置されている。
【0036】
各テーブル15a、15b、15cをそれぞれ容器13、14a、14b内にセットしたときに、テーブル15a、15b、15cと容器13、14a、14b内壁との間で隙間が生じて粉末材料が漏れることがないように、テーブル15a、15b、15cと容器13、14a、14b内壁との間の密着性を保つためテーブル15a、15b、15cの側面全体にわたってパッキング用のゴムなどが取り付けられている。
【0037】
造形用容器13と第1の粉末材料容器14aの間には第1の連結部(機構部)17aが設けられ、造形用容器13と第2の粉末材料容器14bの間には第2の連結部(機構部)17bが設けられている。第1及び第2の連結部17a、17bとして、例えば、鉄板や、樹脂板を鉄板でサンドイッチしたような構造のものを用いる。
【0038】
第1及び第2の連結部17a、17bの上面はそれぞれ造形領域1aと同じレベルの平面を形成し、造形領域13aと第1及び第2の粉末材料収納領域14c、14dとの間で粉末材料が運搬されるときに、第1及び第2の連結部17a、17bの上面を粉末材料が移動する。また、造形用容器13、第1及び第2の粉末材料容器14a、14bには、後に説明するリコータ(粉末材料運搬手段)16の移動方向の両側部にあたる領域にフランジ(機構部)17が設けられている。フランジ17は、リコータ16により運搬中の粉末材料が装置からこぼれ落ちないように横幅を拡張するものである。さらに、第1及び第2の粉末材料容器14a、14bの左右両端部にも第1及び第2の粉末材料収納領域14c、14dに隣接してフランジ17が設けられている。フランジ17として、例えば、鉄板や、樹脂板を鉄板でサンドイッチしたような構造のものを用いる。
【0039】
さらに、フランジ17、第1及び第2の連結部17a、17bは下枠18、18a、18bで補強されている。下枠18、18a、18bは、第1の粉末材料容器14a、造形用容器13、及び第2の粉末材料容器14bを囲むように設けられた周囲の下枠18と、造形用容器13と第1及び第2の粉末材料容器14a、14bとの間の各領域に周囲の枠18を橋渡しするように設けられた梁状の下枠18a、18bとで構成される。周囲の下枠18は下方向に長く、床と接して造形部111B全体を支えている。梁状の下枠18a、18bは下方向に短く、床と接していない。
【0040】
更に、リコータ(粉末材料運搬手段)16が設けられ、リコータ16は、左端のフランジ17、左側の第1の粉末材料収納領域14c、左側の第1の連結部17a、造形領域13a、右側の第2の連結部17b、右側の第2の粉末材料収納領域14d及び右端のフランジ17の全領域に渡って移動する。リコータ16は、左右方向に移動することにより、第1又は第2のフィードテーブル15b、15c上に収納された粉末材料をパートテーブル15a上に供給し、かつ粉末材料の表面を均してパートテーブル15a上に粉末材料の薄層を形成する機能を有する。さらに必要であれば、粉末材料の薄層を形成した後に残る粉末材料を、供給側と反対側の第2又は第1のフィードテーブル15c、15b上に収納することもできる。
【0041】
以上のように、粉末材料の供給量は第1又は第2のフィードテーブル15b、15cの上昇量で決まり、粉末材料の薄層の厚さはパートテーブル15aの降下量で決まる。
【0042】
粉末材料として、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、及びポリカプロラクトンよりなる群から選ばれた少なくとも1種、または、金属粉末などを用いることができる。
【0043】
(d)粉末材料の加熱手段及び温度計測手段の構成
この粉末焼結積層造形装置においては、図1(a)、(b)に示すように、造形用容器13の周囲の梁状の下枠18a、18bには両側壁に沿ってそれぞれ補助ヒータ(第2乃至第3の熱源)19a、19bが設けられている。補助ヒータ19a、19bは造形用容器13に接触させて設けられていてもよいし、造形用容器13から離して設けられていてもよい。補助ヒータ19a、19bとして、厚さが薄く、狭い場所でも取り付けが容易ないわゆるスペースヒータなどを用いることができる。また、補助ヒータ19a、19bは、それぞれ独立に発熱量が調整できるようになっている。
【0044】
また、正方形状の造形領域13aの4つの各境界付近の中央部で、造形領域13aの外側に、それぞれ、温度センサ20a〜20dが設けられている。
【0045】
さらに、図1(b)に示す造形用容器13の周囲に胴巻き状に図示しないヒータが設けられている。
【0046】
また、造形領域13a上方であって、線対称を有する造形領域13aの対称軸に関して略対称な位置に、熱源としての細長い形状を有する赤外線ヒータ21a乃至21dが設置されている。
【0047】
さらに、第1又は第2の粉末材料容器14a、14bの周囲に胴巻き状に図示しないヒータが設けられている。
【0048】
また、粉末材料収納領域14c、14d上方であって、線対称を有する粉末材料収納領域14c、14dの対称軸に関して略対称な位置に熱源としての細長い形状を有する赤外線ヒータ21e乃至21hが設置されている。
【0049】
次に、赤外線ヒータ21a乃至21hのさらに詳細な配置について、図1(a)、(b)、図2、図3を参照して、以下に説明する。
【0050】
図1(a)に示すように、造形領域13a上方において、細長い形状の赤外線ヒータ21a乃至21dは、その長手方向が第1及び第2の粉末材料容器14a、14bの方を向くように、即ち造形領域13aの前後の縁にほぼ平行となるように設置されている。また、細長い形状の赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)は、図2に示すように、造形領域13aの周縁に到達し得るレーザ光の通過領域の境界よりも外側の領域であって、対向する2箇所(前側及び後側)にそれぞれ、レーザ光の通過領域の境界に沿って高さ方向に2つずつ設置されている。
【0051】
また、図1(a)に示すように、第1及び第2の粉末材料容器14a、14bそれぞれの上方に熱源としての細長い形状を有する赤外線ヒータ(21e、21f)、(21g、21h)が設置されている。その長手方向は、造形領域13aの上方の赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)の長手方向に交差する方向を向くように設置されている。
【0052】
上記した赤外線ヒータ21a乃至21h、及び補助ヒータ19a、19bの配置により、造形領域13a、第1及び第2の粉末材料収納領域14c、14dにおいて、領域の中央部での温度上昇を抑制し、同じく周辺部での温度低下を抑制しつつ、粉末材料の薄層及び収納された粉末材料を予め融点付近まで昇温させておくことができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、上記のようなヒータの配置によってのみならず、下記するように、複数の赤外線ヒータ21a乃至21h及び補助ヒータ19a、19bの発熱量の調整によっても造形領域13a、第1及び第2の粉末材料収納領域14c、14dでの温度の均一化を図ることができる。
【0054】
(e)粉末材料の加熱手段及び温度計測手段による粉末材料の加熱方法
次に、粉末材料の加熱手段及び温度計測手段による粉末材料の加熱方法及びその効果について図4(a)、(b)を参照して、以下に説明する。
【0055】
図4(a)は、造形部111Bの上面図であり、図4(b)は、赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)及び補助ヒータ19a,19bの発熱量の調整の効果を説明する造形領域の左右方向の温度分布を示すグラフである。
【0056】
造形領域13a上方の赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)の発熱量は印加する電力により調整可能である。そして、複数の赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)の発熱量を、例えば、以下のように調整する。
【0057】
一つの方法では、赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)の各設置箇所において、高さ方向に設置された赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)の発熱量を独立に調整する。例えば、高さ方向に設置された2つの赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)に、大きさの異なる電力を印加する。具体的には、上側の赤外線ヒータ21b、21cへの印加電力を大きく、下側の赤外線ヒータ21a、21dへの印加電力を小さくすることで、中央部と周辺部での温度分布をより均一化することができる。
【0058】
他の一つの方法では、造形領域13aの前側周辺部及び後側周辺部の上方にそれぞれ設置された赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)に対して独立に発熱量を調整する。例えば、対向する2つずつの赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)のうち、対向する上側の赤外線ヒータ21b、21cにはともに同じ電力を印加し、対向する下側の赤外線ヒータ21a、21cには、大きさの異なる電力を印加する。具体的には、前側の赤外線ヒータ21aへの印加電力を大きく、後ろ側の赤外線ヒータ21dへの印加電力を小さくする。
【0059】
一方で、上記のようにしても、フランジ17、第1及び第2の連結部17a、17bの熱伝導率が高く、またフランジ17、第1及び第2の連結部17a、17bから放熱が生じるような場合、造形領域13aから周辺のフランジ17、第1及び第2の連結部17a、17bに多くの熱が逃げる。このため、造形領域13aの境界付近の温度が低下する恐れがある。特に、造形領域13aの左右から粉末材料が供給されるため、この領域での温度低下(図4(b)の点線で示す温度分布)は供給される粉末材料の温度の低下を招く。このような粉末材料を造形領域13aに供給すると、供給された粉末材料との接触によりすでに作成した焼結薄層の部分的な温度低下を生じ、焼結薄層において歪の原因となる。また、このような粉末材料を焼結すると不均一な焼結を招き、これもまた焼結薄層において歪の原因となる。
【0060】
このような場合、補助ヒータ19aにより、第1の連結部17aを加熱し、造形領域13aと第1の粉末材料収納領域14cの間のいずれかの箇所の温度を、第1の粉末材料収納領域14cの温度(例えば、130℃)より高く、かつ造形領域13aの中央付近の温度(例えば、170℃)よりも低い一定の温度(例えば、温度センサ20aの設置箇所で160℃)に固定しておく。さらに、補助ヒータ19bにより、第2の連結部17bを加熱し、造形領域13aと第2の粉末材料収納領域14dの間のいずれかの箇所の温度を、第2の粉末材料収納領域14dの温度(例えば、130℃)より高く、かつ造形領域13aの中央付近の温度よりも低い一定の温度(例えば、温度センサ20bの設置箇所で160℃)に固定しておく。これにより、第1及び第2の連結部17a、17bの熱伝導率が高い場合に造形領域13aの熱が急激に放出されるのを抑制して、造形領域13aの境界付近の温度低下を抑制することができる。
【0061】
この場合、造形領域13aから補助ヒータ19a、19bに至る領域、即ち造形領域13aの左右の境界の外側に温度センサ20a、20bを設けることにより、造形領域13aの境界付近の温度を計測し、造形領域13aの境界付近の温度を監視することができる。この場合、造形領域13aの中央部の温度は赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)の印加電力により予測できるので、造形領域13aの中央部と周辺部の温度差を監視することができる。
【0062】
これにより、造形領域13aの境界付近を下方から加熱する補助ヒータ19a、19bの発熱量をどの程度調整すればよいかが容易に把握できる。従って、種々の造形条件に関わらず、精度のよい温度調整が可能である。
【0063】
なお、正方形状の造形領域13aの前後の境界付近に設けられた、上記以外の温度センサ20c、20dにより計測された温度は、造形領域13aの前後の境界付近の温度データであり、造形領域13a上方の赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)の発熱量を調整するために用いられる。
【0064】
以上のように、補助ヒータ19a、19bの発熱量を調整することで、図4(b)に示すように、造形領域13aの周辺部、特に左右周辺部での温度低下を抑制しつつ、造形領域13aの左右周辺部と中央部での温度分布をより一層均一化することができる。
【0065】
なお、粉末材料収納領域14c、14dにおいても、造形領域13aにおける場合と同様にして、赤外線ヒータ(21e、21f)、(21g、21h)の発熱量を調整し、粉末材料の温度分布を均一化することができる。
【0066】
これにより、粉末材料容器14a、14bから造形用容器13に粉末材料22を供給後、造形領域13aでの粉末材料の薄層22aなどの温度を迅速に上昇させて、温度の均一化を迅速に行うことができる。このため、粉末材料の薄層22aを均一に焼結させることができる。
【0067】
(f)制御装置111Cの機能
以上のような粉末焼結積層造形装置は、制御装置111Cによって、パートテーブル15aを薄層一層分降下させて、リコータ16によって第1又は第2の粉末材料容器14a、14bからパートテーブル15a上に粉末材料22を供給させ、かつパートテーブル15a上で粉末材料の薄層22aを形成させ、次いで、レーザ光及び制御ミラー(加熱焼結手段)によって作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき粉末材料の薄層22aを選択的に加熱して焼結させ、これらの動作を繰り返して、複数の焼結薄層22bを積層させ、3次元造形物を作製させる。この場合、制御装置111Cに赤外線ヒータ21a乃至21h及び補助ヒータ19a、19bの発熱量の調整を行わせてもよいし、調整を行わず発熱量を固定してもよい。
【0068】
なお、図1(b)において、制御装置111Cから装置の各構成要素に繋がる線はその構成要素が制御装置111Cに信号を送り、或いは制御装置111Cにより制御され、又は制御装置111Cに信号を送るとともに制御装置111Cにより制御されることを示している。
【0069】
以上のように、本発明の実施の形態の粉末焼結積層造形装置によれば、造形領域13aを予備加熱し、かつ造形領域13aの中央部と周辺部、特に、左右の周辺部とで更なる温度の均一化を図ることができるので、より一層小さなレーザ出力で造形を可能にしつつ、より一層反りを抑制した3次元造形物を作製することができる。
【0070】
(粉末焼結積層造形方法の説明)
次に、図5(a)、(b)乃至図7(a)、(b)を参照しながら上記造形装置を用いて造形を行う方法について説明する。
【0071】
図5(a)、(b)乃至図7(a)、(b)は、図1(b)に対応する装置断面図である。
【0072】
まず、図5(a)に示すように、造形用容器13の内壁に沿って上下移動可能なように造形用容器13にパートテーブル15aを取り付け、造形用容器13の左右の第1及び第2の粉末材料容器14a、14bの内壁に沿って上下移動可能なように、第1及び第2の粉末材料容器14a、14bにそれぞれ第1及び第2のフィードテーブル15b、15cを取り付ける。
【0073】
次いで、造形部111Bにおいて、第1及び第2のフィードテーブル15b、15cを降下させ、第1及び第2のフィードテーブル15b、15c上に粉末材料22を供給し、十分な量の粉末材料22を貯めておく。このとき、第1及び第2の粉末材料容器14a、14bの周囲に胴巻き状に設けられたヒータにより粉末材料22を加熱するほか、第1及び第2の粉末材料収納領域14c、14dの上方に設置された赤外線ヒータ21e乃至21f、21g乃至21hにより、粉末材料22の表面を、粉末材料22の融点よりも25〜45℃程度低い温度(例えば、130℃)に予備加熱する。この場合、第1及び第2の粉末材料収納領域14c、14d上の赤外線ヒータ21e乃至21f、21g乃至21hの各設置箇所において独立に発熱量の調整を行い、第1及び第2の粉末材料収納領域14c、14dにおける粉末材料22の温度をより均一化させることもできる。
【0074】
次いで、図5(b)に示すように、パートテーブル15aを薄層一層分に相当する量だけ降下させる。また、右側の第2のフィードテーブル15cを上昇させて粉末材料22が容器上端面から上に出てくるようにする。この場合、薄層一層分に相当する量よりも多めの量を供給できるようにする。一方、左側の第1のフィードテーブル15bを、粉末材料22の供給量から粉末材料の薄層の形成に要した量を引いた残量が十分に取り込めるより少し多めに下降させておく。
【0075】
次いで、図6(a)に示すように、リコータ16を移動させて右側の第2のフィードテーブル15c上、容器上端面から上に出ている粉末材料22を掻き取りつつ造形用容器13内のパートテーブル15a上に移動させる。さらに、リコータ16を移動させて造形領域13a上を均す。これにより、パートテーブル15a上に一層分の粉末材料の薄層22aが形成される。
【0076】
このとき、造形用容器13の周囲に胴巻き状に設けられたヒータで加熱するほか、造形領域13aの上方に設置された赤外線ヒータ21a乃至21dにより、粉末材料の薄層22aの表面を粉末材料の融点よりも5〜15℃程度低い温度(例えば、170℃)に予備加熱する。
【0077】
この場合、さらに第1及び第2の連結部17a、17bの下に設けられた補助ヒータ19a、19bの発熱量を調整することにより、造形領域13aの中央部と周辺部とで温度がより一層均一化するように温度調整を行う。例えば、温度センサ20a、20bの設置箇所で160℃になるように保持する。また、造形領域13aの前側周辺部及び後側周辺部にそれぞれ設置された赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)の発熱量を調整することにより、さらにより一層精密に温度調整を行う。
【0078】
この場合、粉末材料収納領域14c、14dにおいて粉末材料22が既に予備加熱されているので、造形領域13a内に形成された粉末材料の薄層22aを所定の温度まで迅速に昇温することができる。
【0079】
続いて、さらにリコータ16を左に移動させて残余の粉末材料22を左側のフィードテーブル15b上に運び込む。
【0080】
次に、図6(b)に示すように、レーザ光出射部111Aの光源からレーザ光を出射させるとともに、作製すべき3次元造形物のスライスデータに基づき、コンピュータによりミラーを制御して、粉末材料の薄層22aに選択的にレーザ光を照射する。これにより、粉末材料の薄層22bが加熱されて焼結する。
【0081】
次に、図7(a)に示すように、パートテーブル15aを薄層一層分降下させるとともに、左側の第1のフィードテーブル15bを上昇させる。さらに、右側の第2のフィードテーブル15cを降下させる。
【0082】
以下、上記説明した方法と同様にして、新たな粉末材料22をパートテーブル15a上に供給し、焼結した薄層22b上に新たな粉末材料の薄層を形成する(図7(b))。次いで、加熱焼結→粉末材料の薄層の形成→加熱焼結→・・を繰り返す。この間、赤外線ヒータ21a乃至21h、及び補助ヒータ19a、19bにより、造形領域13a、第1及び第2の粉末材料収納領域14c、14d、及び第1及び第2の連結部17a、17bを加熱する。
【0083】
このようにして、3次元造形物が完成する。そして、最後に予備加熱を止めて自然冷却を行い、常温付近になったら、造形用容器13から粉末材料22aに埋もれた3次元造形物を取り出す。
【0084】
以上のように、本発明の実施の形態の粉末焼結積層造形方法によれば、赤外線ヒータ21a乃至21d及び補助ヒータ19a、19bにより、造形領域13aの粉末材料の薄層22aの表面を、粉末材料22の融点よりも5〜15℃程度低い温度に予備加熱し、かつ図4(b)に示すように、造形領域13aの中央部と左右周辺部での温度分布を均一化しつつ、造形領域13a全域にわたり温度分布を均一化することができる。
【0085】
これにより、より一層小さなレーザ出力での造形を可能にしつつ、より一層反りを抑制した3次元造形物を作製することができる。
【0086】
(本発明の他の実施の形態の説明)
以上、実施の形態によりこの発明を詳細に説明したが、この発明の範囲は上記実施の形態に具体的に示した例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の上記実施の形態の変更はこの発明の範囲に含まれる。
【0087】
例えば、この実施の形態の粉末焼結造形装置においては、図1に示すように、造形用容器13の左右に、粉末材料供給部としての第1及び第2の粉末材料容器14a、14bが設けられているが、粉末材料供給部を造形用容器から離して造形用容器の上方などに設置する装置構成がある。このような装置構成では、熱伝導率の高い装置の機構部、例えば造形用容器の支持機構部などが造形用容器と接触する場合がある。このような場合、その機構部から放熱が起こり、特に、造形用容器内の造形領域の近くに機構部が接触した場合、造形用容器内に形成された粉末材料の薄層の周辺部で温度低下が起こる恐れがある。
【0088】
したがって、そのような装置構成では、造形用容器の近くのその機構部に熱源を設けることができる。熱源は造形用容器に接触させてもよいし、離して設けてもよい。これにより、熱源からの発熱により機構部からの放熱を補うことができるため、上記したと同様に、造形用容器内に形成された粉末材料の薄層の周辺部での温度低下を防止することができる。
【0089】
また、図1に示すように、補助ヒータ19aを造形用容器13と第1の粉末材料容器14aの間の第1の連結部17aの下に設け、補助ヒータ19bを造形用容器13と第2の粉末材料容器14bの間の第2の連結部17bの下に設けているが、それに加えて、図8に示すように、フランジ17の下の造形領域13aに隣接する箇所に第4及び第5の熱源19c、19dを設けてもよい。これにより、造形領域13aの前後の周辺部の温度低下を防止することができ、従って、造形領域13aに形成された粉末材料の薄層の温度をより一層均一化することができる。
【0090】
また、赤外線ヒータ(21a、21b)、(21c、21d)が造形領域13aの前側周辺部及び後側周辺部の上方に設置されているが、場合により造形領域13aの前側周辺部及び後側周辺部の何れか一の上方に、或いは第1及び第2の粉末材料容器14a、14bに隣接する造形領域13aの左側周辺部及び右側周辺部の少なくとも何れか一の上方に(造形領域の左右の縁にほぼ平行となるように)設置されてもよい。
【0091】
また、造形用容器13、第1及び第2の粉末材料容器14a、14bの平面形状は、四角であるが、これに限られない。線対称であれば、円形や楕円、その他の曲線で囲まれた平面形状でもよく、また、四角以外の多角形でもよい。
【0092】
また、熱源として、細長い形状の赤外線ヒータ21a乃至21hを用いているが、赤外線を発する他のヒータその他を用いてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態では、粉末材料、及び粉末材料の薄層の予備加熱温度に関し、特に、粉末材料としてポリアミド(ナイロン)を用いた場合について具体的に記載されているが、これに限定されない。他の種類の粉末材料を用いたときには予備加熱温度は通常異なるものである。
【0094】
また、温度センサ20a〜20dは、四角い造形領域13aの一辺あたり一つずつ設けられているが、一辺あたり1以上ずつ設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置の構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)の造形領域を左右に横切るI−I線に沿う断面図である。
【図2】赤外線ヒータの詳細な配置について示す、図1の造形領域を前後に横切るII−II線に沿う断面図である。
【図3】赤外線ヒータの詳細な配置について示す、図1の造形領域を左右に横切るI−I線に沿う断面図である。
【図4】(a)は、本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置の造形部の上面図であり、(b)は、(a)の粉末焼結積層造形装置において赤外線ヒータ及び補助ヒータの発熱量の調整の効果を説明する造形領域の左右方向の温度分布を示すグラフである。
【図5】(a)、(b)は、本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置を用いて3次元造形物を造形する方法について示す断面図(その1)である。
【図6】(a)、(b)は、本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置を用いて3次元造形物を造形する方法について示す断面図(その2)である。
【図7】(a)、(b)は、本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置を用いて3次元造形物を造形する方法について示す断面図(その3)である。
【図8】本発明の他の実施の形態である粉末焼結積層造形装置の構成を示す上面図である。
【図9】従来例の粉末焼結積層造形装置の構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)の造形領域を左右に横切るIII−III線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0096】
13 造形用容器
13a 造形領域
14a 第1の粉末材料容器
14b 第2の粉末材料容器
14c 第1の粉末材料収納領域
14d 第2の粉末材料収納領域
15a パートテーブル
15b 第1のフィードテーブル
15c 第2のフィードテーブル
16 リコータ
17 フランジ
17a 第1の連結部
17b 第2の連結部
18 周囲の下枠
18a、18b 梁状の下枠
19a 補助ヒータ(第2の熱源)
19b 補助ヒータ(第3の熱源)
19c 補助ヒータ(第4の熱源)
19d 補助ヒータ(第5の熱源)
20a乃至20d 温度センサ
21a乃至21d 赤外線ヒータ(第1の熱源)
21e乃至21h 赤外線ヒータ(熱源)
22 粉末材料
22a 粉末材料の薄層
22b 焼結薄層
111A レーザ光出射部
111B 造形部
111C 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料の薄層を形成し、レーザ光を照射して前記粉末材料の薄層を焼結させ、複数の焼結薄層を積層して3次元造形物を作製する粉末焼結積層造形装置であって、
底板が上下に移動する造形用容器と、
前記造形用容器の上部に接触する機構部と、
前記造形用容器に隣接するように前記機構部に設けられた熱源と
を備えたことを特徴とする粉末焼結積層造形装置。
【請求項2】
粉末材料の薄層を形成し、レーザ光を照射して前記粉末材料の薄層を焼結させ、複数の焼結薄層を積層して3次元造形物を作製する粉末焼結積層造形装置であって、
底板が上下に移動する第1の粉末材料容器と、
底板が上下に移動する第2の粉末材料容器と、
前記第1の粉末材料容器と第2の粉末材料容器の間に配置され、底板が上下に移動する造形用容器と、
前記第1の粉末材料容器と前記造形用容器とをそれぞれの上端で連結する、上面が平面の第1の連結部と、
前記造形用容器と前記第2の粉末材料容器とをそれぞれの上端で連結する、上面が平面の第2の連結部と、
前記第1の粉末材料容器から第1の連結部を介して造形用容器に、さらに前記造形用容器から第2の連結部を介して前記第2粉末材料容器に前記粉末材料を運搬する粉末材料運搬手段と、
前記造形用容器の上方に設けられた第1の熱源と、
前記第1の連結部に設けられた第2の熱源と、
前記第2の連結部に設けられた第3の熱源と
を備えたことを特徴とする粉末焼結積層造形装置。
【請求項3】
前記造形用容器の開口及び前記粉末材料容器の開口は、四角い平面形状を有することを特徴とする請求項2記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項4】
前記造形用容器から前記第2の熱源に至る領域、前記造形用容器から前記第3の熱源に至る領域にそれぞれ温度センサが設けられていることを特徴とする請求項2又は3の何れか一に記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項5】
前記第1乃至第3の熱源は、それぞれ独立に発熱量の調整ができるようになっていることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一に記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項6】
前記造形用容器には、前記粉末材料運搬手段の移動方向の両側部に当たる領域にそれぞれフランジが設けられていることを特徴とする請求項2乃至5の何れか一に記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項7】
前記それぞれのフランジの下に第4及び第5の熱源が設けられていることを特徴とする請求項6記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項8】
前記造形用容器から前記第4の熱源に至る領域、前記造形用容器から前記第5の熱源に至る領域にそれぞれ温度センサが設けられていることを特徴とする請求項7記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項9】
前記第1乃至第5の熱源は、それぞれ独立に発熱量の調整ができるようになっていることを特徴とする請求項7乃至8の何れか一に記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項10】
請求項2乃至9の何れか一に記載の粉末焼結積層造形装置を用いた粉末焼結積層造形方法であって、
前記第1又は第2の粉末材料容器から前記造形用容器内に前記粉末材料を運搬し、前記造形用容器内に前記粉末材料の薄層を形成し、前記粉末材料の薄層を焼結する工程を有し、
少なくとも前記粉末材料を前記造形用容器内に運び入れてから前記粉末材料の薄層の焼結が終わるまで、前記第2乃至第5の熱源のうち少なくとも何れか一の発熱量を調整して前記造形用容器の境界付近の温度を調整し、前記造形用容器の境界付近での温度低下を防止することを特徴とする粉末焼結積層造形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−37024(P2008−37024A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216357(P2006−216357)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(398018962)株式会社アスペクト (12)
【Fターム(参考)】