説明

粉末製剤

【課題】
本発明は、保存安定性に優れた粉末製剤の提供を目的とする。
【解決手段】
粉末製剤を調製する際の賦形剤としてマルトトリオースを使用して粉末化することにより、香料成分をはじめとする各種油溶性成分を含む粉末製剤の調製時及び粉末製剤調製後の保存時においても、乳化粒子の劣化、粉末製剤の固化による流動性の劣化や油の酸化劣化による品質の低下を抑制することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れた油溶性成分を粉末化した粉末製剤に関する。より詳細には、賦形剤としてマルトトリオースを使用し、油溶性の香料や油脂を粉末化した粉末製剤を調製することにより、粉末化後の状態、油溶性成分の保存安定性及び香味成分の発現に優れた粉末製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品には、賦香を目的とした香味成分やビタミン類等の油溶性成分が食品に添加されており、その大半は油溶性であり、使用目的により乳化されて用いられたり、あるいは水溶性のものが適宜選択されて使用されている。そして、保存性、安定性や即溶性を、油溶性成分を含有する製剤に付与し、油溶性成分含有製品の利便性向上のため様々な方法により粉末・造粒化が行われている。
【0003】
例えば油溶性の香料成分を粉末化して得られた粉末香料製剤は、保存性や安定性に優れており、取り扱いも容易であるため、粉末系食品類への利用が容易であるとの特徴を有している。例えば、粉末ジュース、粉末スープやインスタント食品、スナック菓子、農畜水産食品等への賦香に用いられている。或いは、油溶性のビタミン類、ドコサヘキサエン酸等の油溶性成分を粉末化し、食品のみならず医薬品、医薬部外品へ利用されている。
【0004】
油溶性成分を乳化して粉末化する方法には様々な方法がある。例えば、香料成分を用いた粉末製剤を調製する方法として、香料成分を糖類、セルロース、デキストリンなどの賦形剤と混合し、その表面に香料成分を吸着分散させた吸着型粉末香料;ショ糖、乳糖等の糖類を加熱溶解し、香料を添加して攪拌し乾燥させて糖マトリックス内に香料を封じ込めるロッキング型粉末香料;デキストリン、澱粉類、アラビアガム等の天然ガム質、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質等の水溶液に油溶性の香料を混合・乳化し、O/W型エマルションを調製後、スプレードライヤーで乾燥粉末化する噴霧乾燥型粉末香料;サイクロデキストリンにより包接した包接型粉末香料;香料成分を皮膜剤で包んだマイクロカプセル型粉末香料等が例示できる。これらの製法により得られた粉末香料は、香料成分を液状のまま取り扱うよりも、保存性、耐熱性、残存性が向上しており、食品への賦香において非常に重要な役割を担っている(非特許文献1)。
【0005】
上述のように、粉末香料は主に香味成分である精油を乳化し、噴霧乾燥することにより得られるが、噴霧乾燥時の物理的要因(加圧、加熱等)により、乳化が壊れたり、或いは乳化が壊れず粉末化できたとしても、保存時に油がしみ出し、粉末の流動性が失われ固着したり、油が酸化・劣化し粉末香料としての品質を損ねる場合があり問題であった。このような問題は、上述のビタミン類をはじめとして油溶性成分全てに該当するものであった。
【0006】
係る問題を解決すべく、油溶性成分を粉末化した粉末製剤、例えば粉末香料の保存性を改善する方法として、トレハロースを含む含む炭水化物混合物と可塑剤とを加熱溶融し、該溶融物に芯物質を添加混合して得る粉末組成物(特許文献1)、微粉末状の再生蛋白質又は基体含量含有再生蛋白質よりなる微粉末(特許文献2)、芯物質としての糖類粉状体(例:細目グラニュー糖)と、融点が常温よりも高い粉末油脂(例:水添牛脂粉末)とを均一に混合、次いで混合物を加熱して粉末油脂を融解させ融解油脂によって糖類粉状体の表面に脂質層を形成させる方法(特許文献3)、加熱凝固性不可逆蛋白源を用いた香辛料油乳化調味料(特許文献4)、マルトース等の単糖及び二糖を含む炭水化物マトリクスにカプセル化された芳香成分をスプレー乾燥させた香料(特許文献5)等が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載のトレハロースを使用した場合、粉末の保存安定性は良いがその配合量が多くなると固化する傾向がある。また、マルトースを使用した特許文献5の技術では、マルトースを30%以上配合すると賦形性がなくなり、生産性の低下が生じるため好ましくない。その他の技術を持ってしても、製造後、固化することなく粉末状態を良好に保ち、保存性に優れ、かつ香味の良い粉末香料を得ることは困難であった。
【0007】
【非特許文献1】特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第1部 香料一般 平成11(1999).1.29.発行
【特許文献1】特開2003−325127号公報
【特許文献2】特開平8−217630号公報
【特許文献3】特開平3−277237号公報
【特許文献4】特許第2755957号公報
【特許文献5】特開平6−220485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、保存安定性に優れた粉末製剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、粉末製剤を調製する際の賦形剤としてマルトトリオースを使用することにより、粉末製剤の調製時及び調製後の保存時においても、乳化粒子の劣化や固化による流動性の劣化や油の酸化劣化による品質の低下を抑制する効果があるとの知見を得て、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、賦形剤としてマルトトリオースを使用した、香料成分、油溶性成分の粉末製剤及びその調製方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
賦形剤としてマルトトリオースを使用することにより、油溶性成分を乳化し乾燥して得られる粉末製剤の調製時及び調製後の保存時においても、粉末製剤の固化による流動性の劣化や油の酸化劣化による品質の低下を抑制する効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、賦形剤として油溶性成分、マルトトリオース、乳化剤及び水を含む乳化混合物を乾燥して得る粉末製剤であり、また、該粉末製剤の調製方法である。
まず、本発明に係る油溶性成分の粉末製剤について説明する。
【0013】
本発明における粉末製剤は、前述の通り、香料成分等の各種油溶性成分を、マルトトリオースを賦形剤として粉末化した製剤を指すものである(以下、これらを総称して「粉末製剤」と称する)。
【0014】
ここで香料成分を用いた粉末製剤、即ち粉末香料製剤は、前述の通り飲食品、香粧品、医薬品、医薬部外品等に幅広く利用されているものを指し、一般的には、天然香料、合成香料、調合香料などの保存性、安定性、即溶性の付与など製品への混和性の向上といった様々な目的のため、粉末・造粒化したものを挙げることができる。粉末香料といっても、粉末化の方法により様々なタイプが存在する。例えば、粉砕型粉末香料、吸着型粉末香料、ロッキング型粉末香料、噴霧乾燥(スプレードライ)型粉末香料、包接型粉末香料、マイクロカプセル型粉末香料、固化粉砕型粉末香料、凍結型粉末乾燥、二重被覆型粉末香料等が、例示できるが、本発明では特に制限無く何れのタイプのものであっても利用することができる。
【0015】
本発明の粉末香料製剤に使用する香料は、天然香料、合成香料、調合香料のいずれであってもよく、液状物であれば親水性、疎水性および両親媒性の別を問わない。好ましくは油溶性の香料である。
【0016】
ここで香料としては、食品に適用可能なものを任意で使用することができる。具体的には、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、マンダリン、タンジェリンなどのシトラス系香料;アップル、バナナ、チェリー、グレープ、メロン、ピーチ、パイナップル、プラム、ラズベリー、ストロベリーなどのフルーツ系香料;バニラ、コーヒー、ココア、チョコレートなどのビーンズ系フレーバー;ペパーミント、スペアミントなどのミント系香料;オールスパイス、シナモン、ナツメグなどのスパイス系香料;アーモンド、ピーナッツ、ウォルナッツなどのナッツ系香料、カニ、エビ、魚介類などの水産物系香料、その他野菜、穀物、海草などの各種香料を例示することができる。なお本発明で用いる香料は組成物であっても単体であってもよい。例えば単体としてはバニリン、エチルバニリン、桂皮酸、ピペロナール、d−ボルネオール、マルトール、エチルマルトール、カンフル、アントラニル酸メチル、桂皮酸メチル、シンナミックアルコール、N−メチルアントラニル酸メチル、メチルβ−ナフチルケトン、リモネン、リナロール、メントール、メントン、イソチオシアン酸アリル等を例示することができる。なお、上記に掲げる各種の香料成分は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0017】
また、油溶性成分を用いた粉末製剤としては、上記粉末香料製剤における香料成分の代わりに、飲食品、香粧品、医薬品、医薬部外品等に幅広く利用されている各種油溶性成分を用いて、上記粉末香料製剤と同様の調製方法により得ることができる。使用できる油溶性成分として、具体的には、コーン油、ナタネ油、綿実油、大豆油、サフラワー油、ヒマワリ油、ゴマ油、小麦胚芽油、オリーブ油、月見草油、椿油、茶実油、アボガド油、ひまし油、コーヒー油、カシューナッツ油、カカオビーンズ油、落花生油、魚油、パーム油、豚脂、牛脂、鶏脂などの動植物油脂やこれらの動植物油脂の部分水素添加油脂または完全水素添加油脂、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸およびそのエステルまたはその不飽和アルコール、油溶性ビタミン類、各種脂肪酸類等を例示することができ、これらの1種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0018】
なお、本発明に係る粉末製剤には、上記香料成分等の各種油溶性成分に加えて、本発明の効果を妨げない範囲において、着色料(色素)、甘味料(糖類を含む)、矯味剤、乳化剤、分散剤、酸化防止剤などを配合することもできる。
【0019】
ここで、着色料(色素)には、天然色素として紫サツマイモ色素、赤キャベツ色素、エルダーベリー色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、紫トウモロコシ色素、アカダイコン色素、シソ色素、赤米色素、カウベリー色素、グースベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、スィムブルーベリー色素、ストロベリー色素、ダークスィートチェリー色素、チェリー色素、ハイビスカス色素、ハクルベリー色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、ブルーベリー色素、プラム色素、ホワートルベリー色素、ボイセンベリー色素、マルベリー色素、紫ヤマイモ色素、ラズベリー色素、レッドカーラント色素、及びローガンベリー色素等のアントシアニン系色素;コチニール色素、シコン色素、アカネ色素、及びラック色素等のキノン系色素;カカオ色素、クーロー色素、コウリャン色素、シタン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、カキ色素、カロブ色素、カンゾウ色素、スオウ色素、ピーナッツ色素、ペカンナッツ色素、ベニバナ赤色素及びベニバナ黄色素等のフラボノイド系色素;ベニコウジ色素、ベニコウジ黄色素、カラメル、ウコン色素、クサギ色素、クチナシ青色素、クチナシ黄色素、クチナシ赤色素、クロロフィン、クロロフィル、スピルリナ青色素等が、また合成系のタール系色素として食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号、食用青色2号、及び食用緑色3号等が、天然色素誘導体として、ノルビキシンナトリウム、ノルビキシンカリウム、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム及び鉄クロロフィリンナトリウム等が、合成天然色素としてβ−カロテン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル及びリボフラビン5‘−リン酸エステルナトリウム等が含まれる。このうち、好ましくはβ−カロテン、カロチノイド色素、パプリカ色素、アナトー色素、アカネ色素、オレンジ色素、クチナシ色素、クロロフィル、シコン色素、エリスロシン、タートラジン、タマネギ色素、トマト色素、マリーゴールド色素、ルテイン等を例示することができる。これらの色素は1種単独で使用されても2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0020】
また甘味料(糖類を含む)の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、高甘味度甘味料を挙げることができる。具体的には、アラビノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、ソルボース、フルクトース、ラムノース、リボース、異性化糖、N−アセチルグルコサミン等の単糖類;イソトレハロース、スクロース、メリビオース、ラクチュロース、ラクトース等の二糖類;α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、イソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース等)、オリゴ−N−アセチルグルコサミン、ガラクトシルスクロース、ガラクトシルラクトース、ガラクトピラノシル(β1−3)ガラクトピラノシル(β1−4)グルコピラノース、ガラクトピラノシル(β1−3)ガラクトピラノシル(β1−6)グルコピラノース、ガラクトピラノシル(β1−6)ガラクトピラノシル(β1−4)グルコピラノース、ガラクトピラノシル(β1−6)グルコピラノース、キシリオリゴ糖(キシリトリオース、キシロビオース等)、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース等)、スタキオース、テアンデオリゴ糖(ニゲロース等)、パラチノースオリゴ糖、パラチノースシロップ、フコース、フラクトオリゴ糖(ケストース、ニストース等)、フラクトフラノシルニストース、ポリデキストロース、マルトシル β−サイクロデキストリン、マルトオリゴ糖(マルトトリオース、テトラオース、ペンタオース、ヘキサオース、ヘプタオース等)、ラフィノース、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)、大豆オリゴ糖、転化糖、水飴等のオリゴ糖類;イソマルチトール、エリスリトール、キシリトール、グリセロール、ソルビトール、パラチニット、マルチトール、マルトテトライトール、マルトトリイトール、マンニトール、ラクチトール、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴等の糖アルコール;α−グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、アリテーム、甘草抽出物(グリチルリチン)、グリチルリチン酸三アンモニウム、グリチルリチン酸三カリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、クルクリン、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメート、スクラロース、ステビア抽出物、ステビア末、ズルチン、タウマチン(ソーマチン)、テンリョウチャ抽出物、ナイゼリアベリー抽出物、ネオテーム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、フラクトシルトランスフェラーゼ処理ステビア、ブラジルカンゾウ抽出物、ミラクルフルーツ抽出物、ラカンカ抽出物、酵素処理カンゾウ、酵素分解カンゾウ等の高甘味度甘味料;その他蜂蜜、果汁、果汁濃縮物等を例示することができる。これらの甘味料は1種単独で使用されても2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0021】
また酸化防止剤としては、抽出トコフェロール、dl−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、ヤマモモ抽出物、エンジュ抽出物、ルチン酵素分解物、酵素処理クエルシトリン、チャ抽出物及びトコトリエノールを例示することができる。これらの酸化防止剤は1種単独で使用されても2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0022】
本発明において賦形剤として利用するマルトトリオースとは、デンプンの加水分解物のうち、α−1,4グルコシド結合で直鎖状に連結したグルコースの重合度が3のものをいう。工業的にはプルランをプルラナーゼで加水分解するか、あるいはデンプンに、例えばStreptomyces griseusのような菌の産生するアミラーゼを作用させるか、酸によって化学的分解することによって得られるが、さらに高純度とするために、副成するグルコースの重合度が2のマルトースを酵母で分解することもある。一般に市販されているマルトトリオースとして、三和澱粉工業株式会社よりオリゴトース、日研化成株式会社のオリゴトース、日本食品化工株式会社よりフジオリゴ#350、フジオリゴ#360などを利用するのが簡便である。
【0023】
マルトトリオースの添加量は、粉末製剤100重量部に対し1〜99重量部、好ましくは10〜90重量部の範囲で添加することができる。粉末製剤へのマルトトリオースの添加量が10重量部より少なくなると、粉末化する油溶性成分にもよるが、十分な保存安定性を得ることが困難となる。
【0024】
次に、本発明に係る粉末製剤の調製方法について説明する。
【0025】
本発明に係る粉末製剤は、上述のようにマルトトリオース、各種油溶性成分、乳化剤及び水を含む乳化混合物を乾燥して得られるものであり、さらに任意で粉末製剤化の際に利用される各種添加物を用いて調製し得られるものである。本発明に係る粉末製剤の調製方法は、従来公知の粉末製剤の調整方法を利用することができ、調製する粉末製剤の素材(賦形剤)としてマルトトリオースを使用するだけでよく、特殊な製造装置や条件を必要とせず既存の製造設備を利用するだけで実施することが可能であるため、工業的にも有利である。
【0026】
以下、本発明の内容を以下の試験例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記に記載する処方の単位は特に言及しない限り、部は重量部を意味するものとする。
【実施例】
【0027】
実験例1 試料の調製
<粉末香料製剤の調製>
アラビアガム20部、マルトトリオース(三和澱粉工業株式会社 オリゴトース(粉末))60部を水に溶解した溶液230g(乾燥固形分30%)を65℃に加熱し、これに香料成分としてレモンオイル20部を添加して3分間攪拌混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度120℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥し、粉末香料製剤90gを得た(実施品1)。
【0028】
これに対し上記調製工程におけるマルトトリオースをトレハロース(林原生物研究所 トレハ)に置き換え、同様の方法で調製した比較品1(90g)、同じくマルトトリオースをマルトース(林原商事社製 サンマルト(ミドリ))に置き換えて調製した比較品2(60g)、同じくマルトトリオースをデキストリン(松谷化学工業社製 パインデックスNO.1)に置き換えて調製した比較品3(90g)を得た。
【0029】
実験例2 粉末香料製剤の保存安定性試験
上記実験例1で得られた各試料20gをポリ袋に入れ、1kgの重りをして60℃で5日間保存し、保存前後の物性及び香味の変化を比較した。その結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
調製直後の粉末香料製剤の状態は、マルトースを賦形剤として使用したものは賦形性が低く収量が低いという結果が得られた。また、トレハロースを使用した比較品1では、保存後粉末香料製剤が固化し、流動性が失われていた。さらに、保存後の香味では、デキストリンを利用した比較例3では酸化臭を生じており、粉末香料としての品質が失われていた。
【0032】
以上の結果より、調製直後及び保存後も良好な粉末状態を維持し、かつ、良好な香味を有していたのは本発明に係るトリオースを使用した粉末香料製剤のみであった。
【0033】
実験例3 試料の調製
<粉末油脂製剤の調製>
ショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬 DK−エステルSS)10部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社 リョートーポリグリエステルSWA−15D)2部、マルトトリオース(日本食品化工株式会社 フジオリゴ#360)48部を水に溶解した溶液250g(乾燥固形分20%)を65℃に加熱し、これに油溶性成分として植物油脂(日清製油株式会社 サンクリスタル)50部を添加して3分間攪拌混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度120℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥し、粉末香料85gを得た(実施品2)。
【0034】
上記調製工程におけるマルトトリオースをトレハロース(林原生物研究所 トレハ)に置き換え、同様の方法で調製した比較品4(85g)、同じくマルトトリオースをマルトースに置き換えて調製した比較品5(50g)、同じくマルトトリオースをデキストリンに置き換えて調製した比較品6(80g)を得た。
【0035】
実験例4 粉末油脂製剤の保存安定性試験
上記実験例3で得られた各試料20gをポリ袋に入れ、1kgの重りをして60℃で5日間保存し、保存前後の物性及び香味の変化を比較した。その結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
調製直後の粉末油脂製剤の状態は、マルトースを賦形剤として使用したものは賦形性が低く収量が低いという結果が得られた。また、トレハロースを使用した比較品4では、保存後粉末油脂製剤が固化し、流動性が失われていた。さらに、デキストリンを利用した比較例6では乳化状態に粒子劣化が認められ、油の染み出しが起こり、流動性が悪かった。
【0038】
以上の結果より、調製直後及び保存後も良好な粉末状態を維持していたのは本発明に係るマルトトリオースを使用した粉末製剤のみであった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
油溶性成分と、乳化剤、マルトトリオース及び水を含む乳化混合物を乾燥することを特徴とする粉末製剤の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする粉末製剤。


【公開番号】特開2006−87(P2006−87A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182688(P2004−182688)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】