粉砕機
【課題】スロート通過流速の均一化を図り、圧力損失の低減、ハウジングや粉砕部の摩耗が抑制できる粉砕機を提供する。
【解決手段】ハウジング41と、ハウジング41の内側に設置された粉砕テーブル2と、粉砕テーブル2上に配置された複数の粉砕子3と、ハウジング41と粉砕テーブル2の隙間が周方向に配置された多数のスロートフィン30により区切られたスロート4と、スロート4の下部に設けられたウィンドボックス9を備え、粉砕テーブル2と粉砕子3のかみ込みにより生成した粉砕粒子を、ウィンドボックス9からスロートフィン30の間を通して粉砕テーブル2の外周部に噴出した空気51で上方へ搬送する粉砕機において、ウィンドボックス9内のスロート4の下方に、スロートの周方向に沿って整流板32を多数枚設けたことを特徴とする。
【解決手段】ハウジング41と、ハウジング41の内側に設置された粉砕テーブル2と、粉砕テーブル2上に配置された複数の粉砕子3と、ハウジング41と粉砕テーブル2の隙間が周方向に配置された多数のスロートフィン30により区切られたスロート4と、スロート4の下部に設けられたウィンドボックス9を備え、粉砕テーブル2と粉砕子3のかみ込みにより生成した粉砕粒子を、ウィンドボックス9からスロートフィン30の間を通して粉砕テーブル2の外周部に噴出した空気51で上方へ搬送する粉砕機において、ウィンドボックス9内のスロート4の下方に、スロートの周方向に沿って整流板32を多数枚設けたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭やセメントなどの固体を粉砕する竪型粉砕機に係り、特にウインドボックスの改良に係り、粉砕機内への空気噴出口であるスロートにおける円周方向での偏流を抑制した竪型粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料として微粉炭を燃焼させる火力発電用の石炭焚ボイラ装置において、燃料供給装置には竪型粉砕機が使用されている。
【0003】
図7は、竪型粉砕機の一例を示す概略構成図である。この竪型粉砕機は、粉砕テーブル2と粉砕ボール3又は粉砕ローラの粉砕子との噛み合いにより微粉炭の原料である石炭50を粉砕する粉砕部5と、その粉砕部5の上部に設置されて微粉炭を任意の粒度に分級する分級部6とから主に構成されている。
【0004】
次にこの竪型粉砕機の動作について説明する。給炭管1より供給された被粉砕物である石炭50は矢印で示すように、回転している粉砕テーブル2の中心部に落下した後、粉砕テーブル2の回転に伴う遠心力によって粉砕テーブル2上を渦巻き状の軌跡を描いて外周部へ移動して、粉砕テーブル2と粉砕ボール3の間に噛み込まれて粉砕される。
【0005】
一方、被粉砕物搬送用の高温空気51は空気ダクト8を通して、ウィンドボックス9に送られ、粉砕テーブル2の周囲に設けられたスロート(空気噴出口)4から粉砕部5に導入される。
【0006】
粉砕された粉体は前記スロート4の上部で高温空気51と混合し固気二相流52となり、乾燥されながら上方へ吹き上げられる。吹き上げられた粉体のうち、粒度の大きいものは分級部6へ搬送される途中で重力により落下し、粉砕部5に戻される(1次分級)。
【0007】
分級機6に到達した粒子群は、所定粒度以下の微粒子と所定粒度を超えた粗粒子とに分級され(2次分級)、粗粒子は粉砕部5に落下して再び粉砕される。一方、分級部6を出た微粒子は排出管7から石炭焚ボイラ装置のバーナ(図示せず)へ送られる。
【0008】
この例の場合前記分級部6は、固定式分級機構10と回転式分級機構20の2段構造になっている。固定式分級機構10は、固定フィン12と回収コーン11を有している。固定フィン12は天井壁40から下向きに吊り下げられ、かつ分級部6の中心軸方向に対して任意の角度で多数枚固定されている。回収コーン11は、固定フィン12の下側にすり鉢状に設けられている。
【0009】
回転式分級機構20は、回転軸22と、それに支持された回転フィン21と、回転軸22を回転駆動するモータ24を有している。回転フィン21は板の長手方向が分級部6の中心軸方向と平行に延び、かつ分級部6の中心軸方向に対して任意の角度で多数枚配置されている。図中の41は外周ハウジングである。
【0010】
従来の竪型粉砕機におけるスロート構造の一例を図8ないし図10に示す。この例では1次分級を強化する目的で、粉砕テーブル回転方向Xに対して角度αをもって傾斜したスロートフィン30(図9参照)を、粉砕テーブル2と外周ハウジング41の隙間(図8参照)に円周方向に多数枚設置して、噴出空気に旋回力を与えている。
【0011】
図8は、外周ハウジング41の内周側にスロートフィン30を固定した固定式の例を示している。前述のように空気ダクト8から送られて来た空気51はウインドボックス9に溜められ、スロートフィン30により旋回を与えながら、上方の分細部5へと噴出する。スロートフィン30の傾斜角度αは、一般的には30〜60度の範囲で設定されている。なお、スロートフィン30の傾斜方向が、図9とは逆のものもある。図10は、粉砕テーブル2の外周部にスロートフィン31を取り付けて、粉砕テーブル2と共に回転する回転式の例を示している。
【0012】
このスロート構造において、改善を図った従来技術として、以下のものがある。その一つは、スロートフィンの傾斜角度またはピッチのいずれか一方を、粉砕テーブルの周方向に対して不規則にする技術である(例えば、下記特許文献1参照)。
【0013】
これにより粉砕部に噴出する空気の方向が粉砕テーブルの周方向位置によって異なり、そのために粉砕部での粉体の流動形態が不規則な状態となり、各粉砕ボール(または粉砕ローラ)の動作の同期により生じていた激しい自励振動が抑止される。
【0014】
また、スロートフィンの下部にテ−パを付けて、垂直に伸延させることにより、各スロートの流速分布を均一化することを狙った技術がある(例えば、下記特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−226128号公報(図2,図3,図4)
【特許文献2】特開平6−343887号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
スロートにおける圧力損失の低減や粉砕部の摩耗の抑制、さらには被粉砕物のウィンドボックス内への落下防止には、スロートを通過する空気の流速を円周方向で均一化する必要がある。しかし、流動数値解析の結果、従来技術に係るスロート構造ではスロート通過流速に大幅な分布があることが判明した。
【0016】
図3にその解析結果を示す。同図の横軸はスロートの円周方向の位置を示しており、縦軸はスロート平均流速に対する各円周方向位置でのスロート通過流速の相対値を示している。この図より明らかなように、点線で示す従来技術では、スロートの円周方向位置においてスロート通過流速が全体的に遅くなる領域Iと、全体的に速くなる領域IIとが存在し、最小流速と最大流速で約31%もの差があることが判明した。
【0017】
これについて図11〜13を用いて説明する。図11は、ウィンドボックス9内での空気51の流れを示す概略平面図である。同図に示すように、空気ダクト8から送入された空気51はウィンドボックス9に入り、粉砕テーブル2を中心にして領域Iへ向かう流れと領域IIに向かう流れに分かれる。
【0018】
図12は、領域Iにおける空気の流れの向きとスロートフィン30の傾斜の向きとの関係を示す図である。同図に示すように、ウィンドボックス9おける空気の流れの向き53と、スロートフィン30の間を通って粉砕部5へと噴出する空気の流れの向き54とが逆のため、動圧変化が大きく空気の流れが妨げられることから、スロート通過流速が低下する。
【0019】
一方、図13は、領域IIにおける空気の流れの向きとスロートフィン30の傾斜の向きとの関係を示す図である。同図に示すように、ウィンドボックス9おける空気の流れの向き53と、スロートフィン30の間を通って粉砕部5へと噴出する空気の流れの向き54とが同じため、動圧変化が小さく空気がスムーズに流れることから、スロート通過流速が増加する。このような空気の流れの違いが、図3に示すような最小流速と最大流速の大きな差となって直接現れる。
【0020】
一般にスロート通過流速の設定は、被粉砕物のウィンドボックス内への落下を防ぐために、最低流速を一定値以上にしなければならない。この値は被粉砕物の終末沈降速度に依存する。前述のように従来技術に係る構造では、スロート通過流速に大幅な偏差があるから、最低流速を一定値以上に保つためには、平均のスロート通過流速を高く設定しなければならない。そのため流速の2乗に比例する圧力損失は増大し、また粉砕部における被粉砕物の流動速度も増加し、ハウジングや内部の構造物の急激な摩耗を招いていた(粉体による摩耗は、粉体流動速度の3.5乗に比例すると言われている)。
【0021】
前記特許文献2記載の粉砕機は、回転式のスロートフィンの下端にテ−パを付けて、垂直に延伸させることにより、各スロートフィン間の流速分布を均一化することを目的としている。図14はその構造を示す図であり、回転式のスロートフィンは、上半分の傾斜部31aと、下半分の垂直部31bとで構成されている。この垂直部31bの下端にテ−パ31cが付けてあり、また垂直部31bに翼形状体31dが設けられている。しかしこの構造では、次に述べるような問題がある。
【0022】
スロート部の流速は、被粉砕物の落下を防ぐために、ウィンドボックス9よりも高く設定されている。竪型粉砕機では図8に示すウィンドボックス9の断面積S0とスロート断面積S1の比率S1/S0が0.1以下となるように設計されており、よってスロート部の流速はウィンドボックス9と比較して10倍以上である。
【0023】
従って特許文献2記載の粉砕機のように、スロート流速を均一化させるために図14に示すスロートフィンの垂直部31bの長さLsを長くしていくと、この部分での流速が高いために圧力損失が増大する。
【0024】
流動解析によりスロート通過流速の最大偏差と圧力損失の関係について調べた結果を図15に示す。同図の縦軸に示す圧力損失の相対値は、従来技術に係るスロート構造での圧力損失を基準とした。同図の点線で示すように、特許文献2記載の粉砕機でスロートフィンの垂直部31bの長さLsを長くすると、スロート通過流速の最大偏差は縮小するが、圧力損失は大幅に増加する。
【0025】
ここで、竪型粉砕機に空気を送り込むファンの吐出圧の制限により、圧力損失を従来構造の1.1倍以下に抑える必要があると想定した場合、スロート通過流速の最大偏差を18%程度にしか低減できず、スロート流速の均一化のために十分な垂直部長さLsを確保することができない。圧力損失の増大を抑制しながらスロート通過流速を均一化するには、スロート部ではなく、流速が比較的低いウィンドボックス内で行わなければならない。
【0026】
図16は、特許文献2に記載されているスロート部付近の断面図である。粉砕テーブル2の外周部に、前記スロートフィン31を設けたスロート4が取り付けられている。このスロート4の下部には、囲い板32a.32bが取り付けられている。この囲い板32a.32bは、スロート4の下部での角部や段差で生じる空気の再循環流を無くすために設けられている。
【0027】
しかしこのように囲い板32a.32bを取り付けても、周方向の流速分布の偏りの解消には寄与しない。
【0028】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、スロート通過流速の均一化を図りながら、圧力損失の低減、ならびにハウジングや粉砕部の摩耗が抑制できる粉砕機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、ハウジングと、そのハウジングの内側に回転可能に設置された粉砕テーブルと、その粉砕テーブルの上に配置された複数の例えば粉砕ボールや粉砕ローラなどの粉砕子と、前記ハウジングと粉砕テーブルとの隙間が周方向に配置された多数のスロートフィンによって区切られたスロートと、そのスロートの下部に設けられたウィンドボックスとを備え、
前記粉砕テーブルと粉砕子とのかみ込みによって原料を粉砕して粉砕粒子を生成し、前記ウィンドボックスに供給された空気を前記スロートフィンの間を通して粉砕テーブルの外周部に噴出して、前記粉砕粒子を上方へ搬送する粉砕機において、
前記ウィンドボックス内のスロートの下方に、そのスロートの周方向に沿って整流板を多数枚設けたことを特徴とするものである。
【0030】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記多数枚の整流板がスロートの下面に対してほぼ垂直に設けられていることを特徴とするものである。
【0031】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、前記多数枚の整流板が前記ハウジング側に固定されて、前記スロートの下方まで延びていることを特徴とするものである。
【0032】
本発明の第4の手段は前記第1または第2の手段において、前記多数枚の整流板が前記粉砕テーブルの外周部側に固定されて、前記スロートの下方まで延びており、粉砕テーブルと共に回転することを特徴とするものである。
【0033】
本発明の第5の手段は前記第1ないし第4の手段において、前記ウィンドボックスの高さLwに対する整流板の高さLpの比率(Lp/Lw)が0.15以上であることを特徴とするものである。
【0034】
本発明の第6の手段は前記第5の手段において、前記比率(Lp/Lw)が0.2〜0.4の範囲に規制されていることを特徴とするものである。
【0035】
本発明の第7の手段は前記第1ないし第6の手段において、前記整流板の設置枚数が前記スロートフィンの設置枚数の1/3以上であることを特徴とするものである。
【0036】
本発明の第8の手段は前記第7の手段において、前記整流板の設置枚数が前記スロートフィンの設置枚数の1/2以上であることを特徴とするものである。
【0037】
本発明の第9の手段は前記第7の手段において、前記整流板の設置枚数が前記スロートフィンの設置枚数と同数であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明は前述のような構成になっており、スロート通過流速の均一化を図りながら、圧力損失の低減、ならびにハウジングや粉砕部の摩耗が抑制できる粉砕機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に本発明の実施形態を図とともに説明する。図1は第1実施形態に係る粉砕機のスロート部付近の要部断面図、図2はその粉砕機におけるスロートフィンと整流板との対応関係を示す展開図である。
【0040】
粉砕機の全体的な構成ならびに機能は図7に示したものと同様であるので、それらの説明は省略する。図1に示すようにハウジング41の内側に取り付けられた固定式のスロート4の内側には、図2に示すように粉砕テーブル2の回転方向Xに対して一定角度(本実施形態では30〜60度の範囲で設定)で傾斜したスロートフィン30が多数枚、等間隔に設置されている。
【0041】
図2に示すようにスロートフィン30の下には、スロート4の下面4aに対してほぼ垂直方向に延びる整流板32が円周方向にスロートフィン30と対応して同じ枚数、スロートフィン30に近接して設けられている。スロート4の下面4aと各整流板32の上端との隙間Gは、例えば5mm以上に保持されている。要はスロートフィン30に接触しなければよい。従って例えば1mm,2mmのように数mm以上あればよい。隙間Gの上限は特にないが、後述のLp/Lwの適正値に合わせて適宜決めればよい。各整流板32は図1に示すようにハウジング41の内壁側に接続固定され、スロート4の下方を横切り、各整流板32の側端部32aが粉砕テーブル2の近くまで延びている。
【0042】
図2に示すよう、ウィンドボックス9内で粉砕テーブル2の周囲を旋回する空気の流れの向きが53aと53bのように位置によって異なる場合でも、整流板32によって同じように上向きの流れに変えて、整流してからスロートフィン30へと流入するから、従来技術で問題であった動圧差に起因する偏流の原因が解消され、スロート通過流速の均一化が図れる。
【0043】
この構造での流動解析の結果を図3において実線で示す。従来技術では約31%もあったスロート流速の偏差が、本発明により約10%まで、すなわち約1/3低減されることが確認された。
【0044】
本実施形態では整流板32を垂直に配置した場合を説明したが、整流板32を斜めに配置することも可能である。この場合は、スロートフィン30に対して整流板32を逆向きにしないこと、寝かせ過ぎないことが大切である。
【0045】
本実施形態では、ハウジング41にスロート4を固定した場合を説明したが、粉砕テーブル2の外周部にスロート4を取り付ける回転式の場合でも同様の効果を奏することができる。
【0046】
図4は、第2実施形態に係る粉砕機のスロート付近の要部断面図である。本実施形態の場合、各整流板32が粉砕テーブル2の下端外周部に取り付けられて、スロートフィン30の下方を横切り、その側端部32aがハウジング41の近くまで延びており、粉砕テーブル2と共に回転する。そのため整流板32の間を通過する空気の流れは上向きに粉砕テーブル2の回転方向が加わるが、スロートフィン30の傾斜方向に対する流れの向きは円周方向で一定となり、動圧は同じとなるので、ストローク流速の均一化が図れる。
【0047】
本実施形態では、ハウジング41にスロートフィン30を固定した場合を説明したが、粉砕テーブル2の外周部にスロートフィン30を取り付ける回転式の場合にも適用可能である。
【0048】
図5は、ウィンドボックス9の高さLwに対する整流板32の高さLp(ともに図1参照)の比(Lp/Lw)と、スロート通過流速の最大偏差との関係を示す特性図である。この図から明らかなように、Lp/Lwが0.1以下になるとスロート通過流速の最大偏差は急激に大きくなり、整流板32の効果が十分に発揮されないが、Lp/Lwが0.15以上、好ましくは0.2以上になるとスロート通過流速の最大偏差は10%程度に抑えられ、整流板32の効果が十分に発揮される。
【0049】
Lp/Lwの上限値は、整流板32の下部空間での空気の整流化が阻害されるから、0.5以下が望ましく、従ってLp/Lwの範囲は、0.15〜0.5、好ましくは0.2〜0.4である。
【0050】
本実施形態では固定式の整流板について説明しているが、回転式の整流板の場合でもLp/Lwは前述の範囲で構わない。
【0051】
図6は、スロートフィンに対する整流板の枚数の割合とスロート通過流速の最大偏差との関係を示す特性図である。この図から明らかなように、整流板を設置しない従来技術ではスロート通過流速の最大偏差は31%であるが、スロートフィンに対する整流板の枚数の割合が1/3になると最大偏差は24%となり偏差を従来技術よりも7%軽減することができ、スロートフィンに対する整流板の枚数の割合が1/2になると最大偏差は14%となり偏差を半減することができ、さらにスロートフィンに対する整流板の枚数の割合が1になると最大偏差は11%となり偏差を1/3にすることができる。
【0052】
スロートフィンに対する整流板の枚数の割合を2にしてもその効果は1の場合と略同じであり、整流板の数が増えるだけ設置作業が余分にかかりコストが高くなるので、スロートフィンに対する整流板の枚数の割合の上限は1が適当である。
【0053】
従ってスロートフィンに対する整流板の枚数の割合を1/3(スロートフィン2枚おきに1枚の整流板を設置)以上、好ましくは割合を1/2(スロートフィン1枚おきに1枚の整流板を設置)以上、更に好ましくは割合を1(スロートフィン1枚に対して1枚の整流板を設置)にすれば、スロート通過流速の最大偏差を軽減することができる。
【0054】
図15は、スロート通過流速の最大偏差と圧力損失との関係を示す特性図である。この図から明らかなように、本発明に係るスロート構造では実線で示すように、スロート通過流速の最大偏差を縮小させるために整流板高さLpを大きくしても、ウィンドボックス内の空気流速は遅いため、圧力損失はほとんど変化せず、低い値を保持している。スロート通過流速の最大偏差を10%まで縮小しても、圧力損失の増加分は1.03倍程度で、低い値を保持することができる。
【0055】
本発明によれば、スロート通過流速の均一化が図れ、ウィンドボックスへの被粉砕物の落下を防止するために高く設定していたスロート通過流速を下げることができる。スロート通過流速を下げることにより、スロート内での圧力損失が低減する。圧力損失は速度の2乗に比例するから、少しでもスロート平均流速を下げることができれば、圧力損失の低減に大きな効果が得られる。本実施形態の場合を試算した結果、従来技術に対して圧力損失を80%程度抑えることができる。
【0056】
また、スロート通過流速を下げることができれば、粉砕部における被粉砕物の流動速度を下げることができ、ハウジングや内部構造物の摩耗速度を遅くすることができる。一般に摩耗速度は粒子速度の3.5乗に比例すると言われており、本実施形態の場合を試算した結果、従来技術に対して摩耗速度を66%程度に減少することができた。このように、ハウジングや内部構造物の摩耗速度を遅くすることができると、材料寿命が長くなり、メンテナンス費用の削減に寄与する。
【0057】
前記実施形態では側面形状がフラット(垂直)な整流板を用いた場合について説明したが、整流板の下部部分は垂直にして整流効果を発揮し、整流板の上部部分はスロートの周方向に沿って傾斜させることも可能である。このようにすれば、整流板の下部部分の左右から入ってくる空気の整流を行い、さらに整流板の上部部分で旋回力を予め付けてスロートに投入することができる。
【0058】
なおこの場合、整流板の下部部分から上部部分に切り替わる個所に曲率を持たせることにより、流体剥離が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係る竪型粉砕機のスロート部付近の要部断面図である。
【図2】その粉砕機におけるスロートフィンと整流板との対応関係を示す展開図である。
【図3】スロート周方向の位置とスロート流速との関係を示す特性図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る竪型粉砕機のスロート部付近の要部断面図である。
【図5】整流板の高さの割合とスロート通過流速の最大偏差との関係を示す特性図である。
【図6】スロートフィンに対する整流板の枚数の割合とスロート通過流速の最大偏差との関係を示す特性図である。
【図7】竪型粉砕機の概略構成図である。
【図8】従来の竪型粉砕機の一部断面図である。
【図9】その粉砕機におけるスロートフィンの展開図である。
【図10】従来の他の竪型粉砕機の一部断面図である。
【図11】ダクト内での空気の流れ状態を示す図である。
【図12】スロート内での空気の流れ状態を示す図である。
【図13】スロート内での空気の流れ状態を示す図である。
【図14】従来提案された粉砕機のスロート構造を説明するための展開図である。
【図15】スロート通過流速の最大偏差と圧力損失との関係を示す特性図である。
【図16】従来提案された粉砕機のスロート付近の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1:給炭管、2:粉砕テーブル、3:粉砕ボール、4:スロート、4a:スロートの下面、5:粉砕部、6:分級部、7:排出管、8:ダクト、9:ウィンドボックス、10:固定式分級機、11:回収コーン、12:固定フィン、20:回転式分級機、21:回転フィン、22:回転軸、24:モータ、32:整流板、32a:整流板の側端部、40:上面板、41:ハウジング、50:原料、51:空気、52:固気二相流、53a,53b:ウィンドボックス内における空気の流れの向き、54:粉砕部へ噴出する空気の向き、X:粉砕テーブルの回転方向、Lw:ウィンドボックスの高さ,Lp:整流板の高さ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭やセメントなどの固体を粉砕する竪型粉砕機に係り、特にウインドボックスの改良に係り、粉砕機内への空気噴出口であるスロートにおける円周方向での偏流を抑制した竪型粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料として微粉炭を燃焼させる火力発電用の石炭焚ボイラ装置において、燃料供給装置には竪型粉砕機が使用されている。
【0003】
図7は、竪型粉砕機の一例を示す概略構成図である。この竪型粉砕機は、粉砕テーブル2と粉砕ボール3又は粉砕ローラの粉砕子との噛み合いにより微粉炭の原料である石炭50を粉砕する粉砕部5と、その粉砕部5の上部に設置されて微粉炭を任意の粒度に分級する分級部6とから主に構成されている。
【0004】
次にこの竪型粉砕機の動作について説明する。給炭管1より供給された被粉砕物である石炭50は矢印で示すように、回転している粉砕テーブル2の中心部に落下した後、粉砕テーブル2の回転に伴う遠心力によって粉砕テーブル2上を渦巻き状の軌跡を描いて外周部へ移動して、粉砕テーブル2と粉砕ボール3の間に噛み込まれて粉砕される。
【0005】
一方、被粉砕物搬送用の高温空気51は空気ダクト8を通して、ウィンドボックス9に送られ、粉砕テーブル2の周囲に設けられたスロート(空気噴出口)4から粉砕部5に導入される。
【0006】
粉砕された粉体は前記スロート4の上部で高温空気51と混合し固気二相流52となり、乾燥されながら上方へ吹き上げられる。吹き上げられた粉体のうち、粒度の大きいものは分級部6へ搬送される途中で重力により落下し、粉砕部5に戻される(1次分級)。
【0007】
分級機6に到達した粒子群は、所定粒度以下の微粒子と所定粒度を超えた粗粒子とに分級され(2次分級)、粗粒子は粉砕部5に落下して再び粉砕される。一方、分級部6を出た微粒子は排出管7から石炭焚ボイラ装置のバーナ(図示せず)へ送られる。
【0008】
この例の場合前記分級部6は、固定式分級機構10と回転式分級機構20の2段構造になっている。固定式分級機構10は、固定フィン12と回収コーン11を有している。固定フィン12は天井壁40から下向きに吊り下げられ、かつ分級部6の中心軸方向に対して任意の角度で多数枚固定されている。回収コーン11は、固定フィン12の下側にすり鉢状に設けられている。
【0009】
回転式分級機構20は、回転軸22と、それに支持された回転フィン21と、回転軸22を回転駆動するモータ24を有している。回転フィン21は板の長手方向が分級部6の中心軸方向と平行に延び、かつ分級部6の中心軸方向に対して任意の角度で多数枚配置されている。図中の41は外周ハウジングである。
【0010】
従来の竪型粉砕機におけるスロート構造の一例を図8ないし図10に示す。この例では1次分級を強化する目的で、粉砕テーブル回転方向Xに対して角度αをもって傾斜したスロートフィン30(図9参照)を、粉砕テーブル2と外周ハウジング41の隙間(図8参照)に円周方向に多数枚設置して、噴出空気に旋回力を与えている。
【0011】
図8は、外周ハウジング41の内周側にスロートフィン30を固定した固定式の例を示している。前述のように空気ダクト8から送られて来た空気51はウインドボックス9に溜められ、スロートフィン30により旋回を与えながら、上方の分細部5へと噴出する。スロートフィン30の傾斜角度αは、一般的には30〜60度の範囲で設定されている。なお、スロートフィン30の傾斜方向が、図9とは逆のものもある。図10は、粉砕テーブル2の外周部にスロートフィン31を取り付けて、粉砕テーブル2と共に回転する回転式の例を示している。
【0012】
このスロート構造において、改善を図った従来技術として、以下のものがある。その一つは、スロートフィンの傾斜角度またはピッチのいずれか一方を、粉砕テーブルの周方向に対して不規則にする技術である(例えば、下記特許文献1参照)。
【0013】
これにより粉砕部に噴出する空気の方向が粉砕テーブルの周方向位置によって異なり、そのために粉砕部での粉体の流動形態が不規則な状態となり、各粉砕ボール(または粉砕ローラ)の動作の同期により生じていた激しい自励振動が抑止される。
【0014】
また、スロートフィンの下部にテ−パを付けて、垂直に伸延させることにより、各スロートの流速分布を均一化することを狙った技術がある(例えば、下記特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−226128号公報(図2,図3,図4)
【特許文献2】特開平6−343887号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
スロートにおける圧力損失の低減や粉砕部の摩耗の抑制、さらには被粉砕物のウィンドボックス内への落下防止には、スロートを通過する空気の流速を円周方向で均一化する必要がある。しかし、流動数値解析の結果、従来技術に係るスロート構造ではスロート通過流速に大幅な分布があることが判明した。
【0016】
図3にその解析結果を示す。同図の横軸はスロートの円周方向の位置を示しており、縦軸はスロート平均流速に対する各円周方向位置でのスロート通過流速の相対値を示している。この図より明らかなように、点線で示す従来技術では、スロートの円周方向位置においてスロート通過流速が全体的に遅くなる領域Iと、全体的に速くなる領域IIとが存在し、最小流速と最大流速で約31%もの差があることが判明した。
【0017】
これについて図11〜13を用いて説明する。図11は、ウィンドボックス9内での空気51の流れを示す概略平面図である。同図に示すように、空気ダクト8から送入された空気51はウィンドボックス9に入り、粉砕テーブル2を中心にして領域Iへ向かう流れと領域IIに向かう流れに分かれる。
【0018】
図12は、領域Iにおける空気の流れの向きとスロートフィン30の傾斜の向きとの関係を示す図である。同図に示すように、ウィンドボックス9おける空気の流れの向き53と、スロートフィン30の間を通って粉砕部5へと噴出する空気の流れの向き54とが逆のため、動圧変化が大きく空気の流れが妨げられることから、スロート通過流速が低下する。
【0019】
一方、図13は、領域IIにおける空気の流れの向きとスロートフィン30の傾斜の向きとの関係を示す図である。同図に示すように、ウィンドボックス9おける空気の流れの向き53と、スロートフィン30の間を通って粉砕部5へと噴出する空気の流れの向き54とが同じため、動圧変化が小さく空気がスムーズに流れることから、スロート通過流速が増加する。このような空気の流れの違いが、図3に示すような最小流速と最大流速の大きな差となって直接現れる。
【0020】
一般にスロート通過流速の設定は、被粉砕物のウィンドボックス内への落下を防ぐために、最低流速を一定値以上にしなければならない。この値は被粉砕物の終末沈降速度に依存する。前述のように従来技術に係る構造では、スロート通過流速に大幅な偏差があるから、最低流速を一定値以上に保つためには、平均のスロート通過流速を高く設定しなければならない。そのため流速の2乗に比例する圧力損失は増大し、また粉砕部における被粉砕物の流動速度も増加し、ハウジングや内部の構造物の急激な摩耗を招いていた(粉体による摩耗は、粉体流動速度の3.5乗に比例すると言われている)。
【0021】
前記特許文献2記載の粉砕機は、回転式のスロートフィンの下端にテ−パを付けて、垂直に延伸させることにより、各スロートフィン間の流速分布を均一化することを目的としている。図14はその構造を示す図であり、回転式のスロートフィンは、上半分の傾斜部31aと、下半分の垂直部31bとで構成されている。この垂直部31bの下端にテ−パ31cが付けてあり、また垂直部31bに翼形状体31dが設けられている。しかしこの構造では、次に述べるような問題がある。
【0022】
スロート部の流速は、被粉砕物の落下を防ぐために、ウィンドボックス9よりも高く設定されている。竪型粉砕機では図8に示すウィンドボックス9の断面積S0とスロート断面積S1の比率S1/S0が0.1以下となるように設計されており、よってスロート部の流速はウィンドボックス9と比較して10倍以上である。
【0023】
従って特許文献2記載の粉砕機のように、スロート流速を均一化させるために図14に示すスロートフィンの垂直部31bの長さLsを長くしていくと、この部分での流速が高いために圧力損失が増大する。
【0024】
流動解析によりスロート通過流速の最大偏差と圧力損失の関係について調べた結果を図15に示す。同図の縦軸に示す圧力損失の相対値は、従来技術に係るスロート構造での圧力損失を基準とした。同図の点線で示すように、特許文献2記載の粉砕機でスロートフィンの垂直部31bの長さLsを長くすると、スロート通過流速の最大偏差は縮小するが、圧力損失は大幅に増加する。
【0025】
ここで、竪型粉砕機に空気を送り込むファンの吐出圧の制限により、圧力損失を従来構造の1.1倍以下に抑える必要があると想定した場合、スロート通過流速の最大偏差を18%程度にしか低減できず、スロート流速の均一化のために十分な垂直部長さLsを確保することができない。圧力損失の増大を抑制しながらスロート通過流速を均一化するには、スロート部ではなく、流速が比較的低いウィンドボックス内で行わなければならない。
【0026】
図16は、特許文献2に記載されているスロート部付近の断面図である。粉砕テーブル2の外周部に、前記スロートフィン31を設けたスロート4が取り付けられている。このスロート4の下部には、囲い板32a.32bが取り付けられている。この囲い板32a.32bは、スロート4の下部での角部や段差で生じる空気の再循環流を無くすために設けられている。
【0027】
しかしこのように囲い板32a.32bを取り付けても、周方向の流速分布の偏りの解消には寄与しない。
【0028】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、スロート通過流速の均一化を図りながら、圧力損失の低減、ならびにハウジングや粉砕部の摩耗が抑制できる粉砕機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、ハウジングと、そのハウジングの内側に回転可能に設置された粉砕テーブルと、その粉砕テーブルの上に配置された複数の例えば粉砕ボールや粉砕ローラなどの粉砕子と、前記ハウジングと粉砕テーブルとの隙間が周方向に配置された多数のスロートフィンによって区切られたスロートと、そのスロートの下部に設けられたウィンドボックスとを備え、
前記粉砕テーブルと粉砕子とのかみ込みによって原料を粉砕して粉砕粒子を生成し、前記ウィンドボックスに供給された空気を前記スロートフィンの間を通して粉砕テーブルの外周部に噴出して、前記粉砕粒子を上方へ搬送する粉砕機において、
前記ウィンドボックス内のスロートの下方に、そのスロートの周方向に沿って整流板を多数枚設けたことを特徴とするものである。
【0030】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記多数枚の整流板がスロートの下面に対してほぼ垂直に設けられていることを特徴とするものである。
【0031】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、前記多数枚の整流板が前記ハウジング側に固定されて、前記スロートの下方まで延びていることを特徴とするものである。
【0032】
本発明の第4の手段は前記第1または第2の手段において、前記多数枚の整流板が前記粉砕テーブルの外周部側に固定されて、前記スロートの下方まで延びており、粉砕テーブルと共に回転することを特徴とするものである。
【0033】
本発明の第5の手段は前記第1ないし第4の手段において、前記ウィンドボックスの高さLwに対する整流板の高さLpの比率(Lp/Lw)が0.15以上であることを特徴とするものである。
【0034】
本発明の第6の手段は前記第5の手段において、前記比率(Lp/Lw)が0.2〜0.4の範囲に規制されていることを特徴とするものである。
【0035】
本発明の第7の手段は前記第1ないし第6の手段において、前記整流板の設置枚数が前記スロートフィンの設置枚数の1/3以上であることを特徴とするものである。
【0036】
本発明の第8の手段は前記第7の手段において、前記整流板の設置枚数が前記スロートフィンの設置枚数の1/2以上であることを特徴とするものである。
【0037】
本発明の第9の手段は前記第7の手段において、前記整流板の設置枚数が前記スロートフィンの設置枚数と同数であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明は前述のような構成になっており、スロート通過流速の均一化を図りながら、圧力損失の低減、ならびにハウジングや粉砕部の摩耗が抑制できる粉砕機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に本発明の実施形態を図とともに説明する。図1は第1実施形態に係る粉砕機のスロート部付近の要部断面図、図2はその粉砕機におけるスロートフィンと整流板との対応関係を示す展開図である。
【0040】
粉砕機の全体的な構成ならびに機能は図7に示したものと同様であるので、それらの説明は省略する。図1に示すようにハウジング41の内側に取り付けられた固定式のスロート4の内側には、図2に示すように粉砕テーブル2の回転方向Xに対して一定角度(本実施形態では30〜60度の範囲で設定)で傾斜したスロートフィン30が多数枚、等間隔に設置されている。
【0041】
図2に示すようにスロートフィン30の下には、スロート4の下面4aに対してほぼ垂直方向に延びる整流板32が円周方向にスロートフィン30と対応して同じ枚数、スロートフィン30に近接して設けられている。スロート4の下面4aと各整流板32の上端との隙間Gは、例えば5mm以上に保持されている。要はスロートフィン30に接触しなければよい。従って例えば1mm,2mmのように数mm以上あればよい。隙間Gの上限は特にないが、後述のLp/Lwの適正値に合わせて適宜決めればよい。各整流板32は図1に示すようにハウジング41の内壁側に接続固定され、スロート4の下方を横切り、各整流板32の側端部32aが粉砕テーブル2の近くまで延びている。
【0042】
図2に示すよう、ウィンドボックス9内で粉砕テーブル2の周囲を旋回する空気の流れの向きが53aと53bのように位置によって異なる場合でも、整流板32によって同じように上向きの流れに変えて、整流してからスロートフィン30へと流入するから、従来技術で問題であった動圧差に起因する偏流の原因が解消され、スロート通過流速の均一化が図れる。
【0043】
この構造での流動解析の結果を図3において実線で示す。従来技術では約31%もあったスロート流速の偏差が、本発明により約10%まで、すなわち約1/3低減されることが確認された。
【0044】
本実施形態では整流板32を垂直に配置した場合を説明したが、整流板32を斜めに配置することも可能である。この場合は、スロートフィン30に対して整流板32を逆向きにしないこと、寝かせ過ぎないことが大切である。
【0045】
本実施形態では、ハウジング41にスロート4を固定した場合を説明したが、粉砕テーブル2の外周部にスロート4を取り付ける回転式の場合でも同様の効果を奏することができる。
【0046】
図4は、第2実施形態に係る粉砕機のスロート付近の要部断面図である。本実施形態の場合、各整流板32が粉砕テーブル2の下端外周部に取り付けられて、スロートフィン30の下方を横切り、その側端部32aがハウジング41の近くまで延びており、粉砕テーブル2と共に回転する。そのため整流板32の間を通過する空気の流れは上向きに粉砕テーブル2の回転方向が加わるが、スロートフィン30の傾斜方向に対する流れの向きは円周方向で一定となり、動圧は同じとなるので、ストローク流速の均一化が図れる。
【0047】
本実施形態では、ハウジング41にスロートフィン30を固定した場合を説明したが、粉砕テーブル2の外周部にスロートフィン30を取り付ける回転式の場合にも適用可能である。
【0048】
図5は、ウィンドボックス9の高さLwに対する整流板32の高さLp(ともに図1参照)の比(Lp/Lw)と、スロート通過流速の最大偏差との関係を示す特性図である。この図から明らかなように、Lp/Lwが0.1以下になるとスロート通過流速の最大偏差は急激に大きくなり、整流板32の効果が十分に発揮されないが、Lp/Lwが0.15以上、好ましくは0.2以上になるとスロート通過流速の最大偏差は10%程度に抑えられ、整流板32の効果が十分に発揮される。
【0049】
Lp/Lwの上限値は、整流板32の下部空間での空気の整流化が阻害されるから、0.5以下が望ましく、従ってLp/Lwの範囲は、0.15〜0.5、好ましくは0.2〜0.4である。
【0050】
本実施形態では固定式の整流板について説明しているが、回転式の整流板の場合でもLp/Lwは前述の範囲で構わない。
【0051】
図6は、スロートフィンに対する整流板の枚数の割合とスロート通過流速の最大偏差との関係を示す特性図である。この図から明らかなように、整流板を設置しない従来技術ではスロート通過流速の最大偏差は31%であるが、スロートフィンに対する整流板の枚数の割合が1/3になると最大偏差は24%となり偏差を従来技術よりも7%軽減することができ、スロートフィンに対する整流板の枚数の割合が1/2になると最大偏差は14%となり偏差を半減することができ、さらにスロートフィンに対する整流板の枚数の割合が1になると最大偏差は11%となり偏差を1/3にすることができる。
【0052】
スロートフィンに対する整流板の枚数の割合を2にしてもその効果は1の場合と略同じであり、整流板の数が増えるだけ設置作業が余分にかかりコストが高くなるので、スロートフィンに対する整流板の枚数の割合の上限は1が適当である。
【0053】
従ってスロートフィンに対する整流板の枚数の割合を1/3(スロートフィン2枚おきに1枚の整流板を設置)以上、好ましくは割合を1/2(スロートフィン1枚おきに1枚の整流板を設置)以上、更に好ましくは割合を1(スロートフィン1枚に対して1枚の整流板を設置)にすれば、スロート通過流速の最大偏差を軽減することができる。
【0054】
図15は、スロート通過流速の最大偏差と圧力損失との関係を示す特性図である。この図から明らかなように、本発明に係るスロート構造では実線で示すように、スロート通過流速の最大偏差を縮小させるために整流板高さLpを大きくしても、ウィンドボックス内の空気流速は遅いため、圧力損失はほとんど変化せず、低い値を保持している。スロート通過流速の最大偏差を10%まで縮小しても、圧力損失の増加分は1.03倍程度で、低い値を保持することができる。
【0055】
本発明によれば、スロート通過流速の均一化が図れ、ウィンドボックスへの被粉砕物の落下を防止するために高く設定していたスロート通過流速を下げることができる。スロート通過流速を下げることにより、スロート内での圧力損失が低減する。圧力損失は速度の2乗に比例するから、少しでもスロート平均流速を下げることができれば、圧力損失の低減に大きな効果が得られる。本実施形態の場合を試算した結果、従来技術に対して圧力損失を80%程度抑えることができる。
【0056】
また、スロート通過流速を下げることができれば、粉砕部における被粉砕物の流動速度を下げることができ、ハウジングや内部構造物の摩耗速度を遅くすることができる。一般に摩耗速度は粒子速度の3.5乗に比例すると言われており、本実施形態の場合を試算した結果、従来技術に対して摩耗速度を66%程度に減少することができた。このように、ハウジングや内部構造物の摩耗速度を遅くすることができると、材料寿命が長くなり、メンテナンス費用の削減に寄与する。
【0057】
前記実施形態では側面形状がフラット(垂直)な整流板を用いた場合について説明したが、整流板の下部部分は垂直にして整流効果を発揮し、整流板の上部部分はスロートの周方向に沿って傾斜させることも可能である。このようにすれば、整流板の下部部分の左右から入ってくる空気の整流を行い、さらに整流板の上部部分で旋回力を予め付けてスロートに投入することができる。
【0058】
なおこの場合、整流板の下部部分から上部部分に切り替わる個所に曲率を持たせることにより、流体剥離が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係る竪型粉砕機のスロート部付近の要部断面図である。
【図2】その粉砕機におけるスロートフィンと整流板との対応関係を示す展開図である。
【図3】スロート周方向の位置とスロート流速との関係を示す特性図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る竪型粉砕機のスロート部付近の要部断面図である。
【図5】整流板の高さの割合とスロート通過流速の最大偏差との関係を示す特性図である。
【図6】スロートフィンに対する整流板の枚数の割合とスロート通過流速の最大偏差との関係を示す特性図である。
【図7】竪型粉砕機の概略構成図である。
【図8】従来の竪型粉砕機の一部断面図である。
【図9】その粉砕機におけるスロートフィンの展開図である。
【図10】従来の他の竪型粉砕機の一部断面図である。
【図11】ダクト内での空気の流れ状態を示す図である。
【図12】スロート内での空気の流れ状態を示す図である。
【図13】スロート内での空気の流れ状態を示す図である。
【図14】従来提案された粉砕機のスロート構造を説明するための展開図である。
【図15】スロート通過流速の最大偏差と圧力損失との関係を示す特性図である。
【図16】従来提案された粉砕機のスロート付近の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1:給炭管、2:粉砕テーブル、3:粉砕ボール、4:スロート、4a:スロートの下面、5:粉砕部、6:分級部、7:排出管、8:ダクト、9:ウィンドボックス、10:固定式分級機、11:回収コーン、12:固定フィン、20:回転式分級機、21:回転フィン、22:回転軸、24:モータ、32:整流板、32a:整流板の側端部、40:上面板、41:ハウジング、50:原料、51:空気、52:固気二相流、53a,53b:ウィンドボックス内における空気の流れの向き、54:粉砕部へ噴出する空気の向き、X:粉砕テーブルの回転方向、Lw:ウィンドボックスの高さ,Lp:整流板の高さ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、そのハウジングの内側に回転可能に設置された粉砕テーブルと、その粉砕テーブルの上に配置された複数の粉砕子と、前記ハウジングと粉砕テーブルとの隙間が周方向に配置された多数のスロートフィンによって区切られたスロートと、そのスロートの下部に設けられたウィンドボックスとを備え、
前記粉砕テーブルと粉砕子とのかみ込みによって原料を粉砕して粉砕粒子を生成し、前記ウィンドボックスに供給された空気を前記スロートフィンの間を通して粉砕テーブルの外周部に噴出して、前記粉砕粒子を上方へ搬送する粉砕機において、
前記ウィンドボックス内のスロートの下方に、そのスロートの周方向に沿って整流板を多数枚設けたことを特徴とする粉砕機。
【請求項2】
請求項1記載の粉砕機において、前記多数枚の整流板がスロートの下面に対してほぼ垂直に設けられていることを特徴とする粉砕機。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の粉砕機において、前記多数枚の整流板が前記ハウジング側に固定されて、前記スロートの下方まで延びていることを特徴とする粉砕機。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の粉砕機において、前記多数枚の整流板が前記粉砕テーブルの外周部側に固定されて、前記スロートの下方まで延びており、粉砕テーブルと共に回転することを特徴とする粉砕機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の粉砕機において、前記ウィンドボックスの高さLwに対する整流板の高さLpの比率(Lp/Lw)が0.15以上であることを特徴とする粉砕機。
【請求項6】
請求項5記載の粉砕機において、前記比率(Lp/Lw)が0.2〜0.4の範囲に規制されていることを特徴とする粉砕機。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の粉砕機において、前記整流板の設置枚数が前記スロートフィンの設置枚数の1/3以上であることを特徴とする粉砕機。
【請求項8】
請求項7記載の粉砕機において、前記整流板の設置枚数が前記スロートフィンの設置枚数の1/2以上であることを特徴とする粉砕機。
【請求項9】
請求項7記載の粉砕機において、前記整流板の設置枚数が前記スロートフィンの設置枚数と同数であることを特徴とする粉砕機。
【請求項1】
ハウジングと、そのハウジングの内側に回転可能に設置された粉砕テーブルと、その粉砕テーブルの上に配置された複数の粉砕子と、前記ハウジングと粉砕テーブルとの隙間が周方向に配置された多数のスロートフィンによって区切られたスロートと、そのスロートの下部に設けられたウィンドボックスとを備え、
前記粉砕テーブルと粉砕子とのかみ込みによって原料を粉砕して粉砕粒子を生成し、前記ウィンドボックスに供給された空気を前記スロートフィンの間を通して粉砕テーブルの外周部に噴出して、前記粉砕粒子を上方へ搬送する粉砕機において、
前記ウィンドボックス内のスロートの下方に、そのスロートの周方向に沿って整流板を多数枚設けたことを特徴とする粉砕機。
【請求項2】
請求項1記載の粉砕機において、前記多数枚の整流板がスロートの下面に対してほぼ垂直に設けられていることを特徴とする粉砕機。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の粉砕機において、前記多数枚の整流板が前記ハウジング側に固定されて、前記スロートの下方まで延びていることを特徴とする粉砕機。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の粉砕機において、前記多数枚の整流板が前記粉砕テーブルの外周部側に固定されて、前記スロートの下方まで延びており、粉砕テーブルと共に回転することを特徴とする粉砕機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の粉砕機において、前記ウィンドボックスの高さLwに対する整流板の高さLpの比率(Lp/Lw)が0.15以上であることを特徴とする粉砕機。
【請求項6】
請求項5記載の粉砕機において、前記比率(Lp/Lw)が0.2〜0.4の範囲に規制されていることを特徴とする粉砕機。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の粉砕機において、前記整流板の設置枚数が前記スロートフィンの設置枚数の1/3以上であることを特徴とする粉砕機。
【請求項8】
請求項7記載の粉砕機において、前記整流板の設置枚数が前記スロートフィンの設置枚数の1/2以上であることを特徴とする粉砕機。
【請求項9】
請求項7記載の粉砕機において、前記整流板の設置枚数が前記スロートフィンの設置枚数と同数であることを特徴とする粉砕機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−231112(P2006−231112A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45590(P2005−45590)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】
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