説明

粉砕機

【課題】製造コストを低減し、清掃を容易に行うことができる粉砕機を提供する。
【解決手段】回転軸60の下側には、固定側壁2と2つの揺動側壁3、3との間に略楕円形状の連動板23、23を配置している。連動板23には、適長離隔して2つの孔を設けてあり、一方の孔には第1支点軸としてのピン21を挿着してあり、他方の孔には第2支点軸としての通し軸22を設けている。ピン21は、揺動側壁3の両側に配置された2つの固定側壁2それぞれに対向する両側面に個別に設けられている。すなわち、4個の連動板23に対応して4個のピン21を個別に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を粉砕することができる粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
環境汚染あるいは産業廃棄物の増加などの問題を解決するため、循環型社会の形成が益々重要になってきている。例えば、プラスチックに代表される合成樹脂を用いて成形品又は成形部品を製造する成形工場では、成形時に発生するスプルランナと称される不要部分あるいは成形不良品などを回収して樹脂素材の資源再利用率を向上させることが行われている。
【0003】
樹脂素材のリサイクルには、回収したスプルランナを粉砕機で所定の大きさの粉砕片にしてリサイクル原資としている。このような粉砕機は、投入ホッパーから投入されたスプルランナを粉砕刃に食い込み易くするため、まず粗砕刃で粗砕し、粗砕された材料を粉砕刃で所定の粒形状の粉砕片に粉砕している。粗砕刃と粉砕刃とを1つの回転軸に固定した1軸式の粉砕機は、回転軸を駆動する駆動部品が少なく構造もシンプルであるため、工場内リサイクルを目指す多くの事業所で利用されている。
【0004】
一方、粉砕する材料を変更する場合、異なる材料が混在しないように、材料が変更される都度、粉砕機に残留した粉砕片を清掃する必要がある。粉砕片は、刃先が複雑な形状をした粉砕刃の隙間、粗砕刃の周囲、粗砕刃で粗砕された材料が排出されることを防止する粗砕刃カバーの内側などの様々な箇所に残留するため、粉砕機の内部を清掃するためには、粗砕刃及び粉砕刃などを取り外して分解清掃する必要があり、清掃作業に時間を要するとともに清掃作業が困難であった。そこで、清掃時間を短縮するとともに、清掃作業を容易にするために、粗砕刃及び粉砕刃を覆うケーシング本体の一対の面を両開き構造にする粉砕機が製品化されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−55797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の従来の粉砕機にあっては、揺動側壁(開閉扉)を開く場合、刃先の回転径が大きい粗砕刃の停止位置によっては、粗砕刃の刃先と粗砕刃カバーとが干渉するため、粗砕刃を手で回しながら揺動側壁を開く必要があり、作業性が良くなかった。また、揺動側壁を開いた状態でも、粗砕刃の刃先と粗砕刃カバーとが干渉するため粗砕刃及び粉砕刃を360度回転して清掃することができず、さらに、回転軸の下側では粗砕刃及び粉砕刃と粗砕刃カバーとの隙間が小さいため、清掃が困難な箇所があった。
【0006】
また、2つの固定側壁(前壁及び後壁)の間には、2つのタイロッド軸に加えて、揺動側壁を揺動させるための支点軸を2つ備えているため、製造コストが高くなるという問題もあり、製造コストを低減するとともに、清掃を容易に行うことができる粉砕機が望まれていた。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、製造コストを低減するとともに清掃を容易に行うことができる粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る粉砕機は、横向きに配置された回転軸の両端側に設けられた固定側壁と、該固定側壁の間であって前記回転軸の両側に対設され、前記回転軸の下側にある軸回りに揺動開閉可能な揺動側壁とを備え、前記回転軸に設けられた回転刃と前記揺動側壁の内側に設けられた固定刃との協働により被処理物を粉砕する粉砕機において、適長離隔して設けられた2つの孔を有し、前記回転軸の下側であって前記揺動側壁と前記固定側壁との間に配された支持部材と、前記揺動側壁の前記固定側壁に対向する両側面にそれぞれ個別に設けられ、前記支持部材の一方の孔に挿着された第1支点軸と、前記固定側壁に設けられ、前記支持部材の他方の孔に挿着された第2支点軸とを備え、前記揺動側壁を閉じた状態で、前記第1支点軸が前記第2支点軸よりも内側に配置してあり、前記支持部材は、前記第1支点軸及び前記第2支点軸を介して前記揺動側壁の揺動に連動するようにしてあることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る粉砕機は、第1発明において、前記第1支点軸は、ピンであり、前記揺動側壁は、前記ピンの一端側を挿入する挿入穴を設けてあり、前記ピンの他端側は、前記固定側壁に当接するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る粉砕機は、第1発明又は第2発明において、前記固定側壁毎に前記第2支点軸をそれぞれ個別に設けてあることを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る粉砕機は、第3発明において、前記第2支点軸は、ボルトであり、前記固定側壁は、前記ボルトを挿通する挿通孔を設けてあり、前記挿通孔及び前記支持部材の他方の孔に挿通された前記ボルトにナットを螺嵌してあることを特徴とする。
【0012】
第1発明にあっては、適長離隔して設けられた2つの孔を有し、回転軸の下側であって揺動側壁と固定側壁との間に配された支持部材と、揺動側壁の固定側壁に対向する両側面にそれぞれ個別に設けられ、支持部材の一方の孔に挿着された第1支点軸と、固定側壁に設けられ、支持部材の他方の孔に挿着された第2支点軸とを備え、揺動側壁を閉じた状態で、第1支点軸が第2支点軸よりも内側に配置されている。そして、支持部材は、第1支点軸及び第2支点軸を介して揺動側壁の揺動に連動する。揺動側壁を閉じた状態から開く場合、揺動側壁は、回転軸の下方に配置された支持部材の第1支点軸の軸回りに回転する。第1支点軸が回転軸の下方に配置されているため、揺動側壁の回転刃との近接部分は、第1支点軸を中心として円弧状に移動する際、揺動側壁の回転に伴って、回転刃から離れるように移動し、回転刃と干渉することなく揺動側壁を開くことができる。揺動側壁を開く途中で支持部材が第2支点軸の回りに回転し始め、第1支点軸は第2支点軸回りに回転する。これにより、揺動側壁は、支持部材の第1支点軸及び第2支点軸を介して、第2支点軸の回りに回転する。揺動側壁が第1支点軸よりも外側に配置された第2支点軸の回りに回転することで、揺動側壁を回転刃からさらに離隔して開き、揺動側壁の開口部を広くすることができる。また、第1支点軸を揺動側壁の固定側壁に対向する両側面にそれぞれ個別に設けているので、支点軸が2つの固定側壁の間を架け渡された場合に比べて製造コストを低減することができる。
【0013】
第2発明にあっては、第1支点軸は、ピンであり、揺動側壁は、ピンの一端側を挿入する挿入穴を設けてあり、ピンの他端側は、固定側壁に当接するようにしてある。揺動側壁と固定側壁との間に配置された支持部材は、一の孔に装着したピンの一端側を揺動側壁の挿入穴に挿入することで、揺動側壁をピンの回りに揺動させることができる。また、ピンの他端側は固定側壁に当接しているので、ピンが抜けることがない。これにより、簡単な構造で揺動側壁を揺動させることができ、製造コストを低減することができる。
【0014】
第3発明にあっては、固定側壁毎に第2支点軸をそれぞれ個別に設けてある。すなわち、2つの固定側壁のそれぞれに別個の第2支点軸を設けている。これにより、支点軸が2つの固定側壁の間を架け渡されたような通し軸を用いる場合に比べて、製造コストを低減することができる。
【0015】
第4発明にあっては、第2支点軸は、ボルトであり、固定側壁は、ボルトを挿通する挿通孔を設けてあり、挿通孔及び支持部材の他方の孔に挿通されたボルトにナットを螺嵌してある。揺動側壁と固定側壁との間に配置された支持部材の他の孔に装着したボルトを固定側壁の挿通孔に挿通してナットを螺嵌する。これにより、簡単な構造で固定側壁の第2支点軸の回りに支持部材を揺動させることができ、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
第1発明によれば、揺動側壁が第1支点軸よりも外側に配置された第2支点軸の回りに回転するので、揺動側壁を回転刃からさらに離隔して開き、揺動側壁の開口部を広くすることができる。また、第1支点軸を揺動側壁の固定側壁に対向する両側面にそれぞれ個別に設けているので、支点軸が2つの固定側壁の間を架け渡された場合に比べて製造コストを低減することができる。
【0017】
第2発明によれば、第1支点軸としてピンを用いることにより、簡単な構造で揺動側壁を揺動させることができ、製造コストを低減することができる。
【0018】
第3発明によれば、2つの固定側壁のそれぞれに別個の第2支点軸を設けているので、支点軸が2つの固定側壁の間を架け渡されたような通し軸を用いる場合に比べて、製造コストを低減することができる。
【0019】
第4発明によれば、第2支点軸としてボルトを用いることにより、簡単な構造で固定側壁の第2支点軸の回りに支持部材を揺動させることができ、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
実施の形態1
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る粉砕機の上面から見た要部模式図である。図中、1は中央部が開口した金属製の支持台である。支持台1の上面には、適長離隔した1対の金属製の固定側壁2、2を対設してあり、固定側壁2、2の両側部には、1対の金属製の揺動側壁3、3が固定側壁2、2で挟まれるように配置してあり、固定側壁2、2、及び揺動側壁3、3によりケーシングを構成している。なお、各固定側壁2は、ボルトで支持台1に固定されている。
【0021】
一方の固定側壁2の略中央部には、軸受10が取り付けられてあり、他方の固定側壁2には、減速機を有する電動モータ11が取り付けられてあり、電動モータ11のモータ軸に連動する回転軸(不図示)が固定側壁2、2の間に軸架されている。
【0022】
固定側壁2、2、及び揺動側壁3、3で囲まれる空間には、回転軸(不図示)に嵌装された粗砕刃4、4、粉砕刃6、6、6が収容される。粗砕刃4、4は回転方向に向かって先端部(刃先)が湾曲したアーム状をなし回転軸の軸方向に適長離隔して配置されている。粉砕刃6、6、6は、固定側壁2と粗砕刃4との間、及び粗砕刃4、4の間に配置され、回転軸方向に所定の間隔で環状溝が形成され、隣接する環状溝間の環状突起部の外周面を鋸歯状に形成している。
【0023】
揺動側壁3、3は、後述するように回転軸に平行な支点軸(第1支点軸及び第2支点軸)の回りに揺動可能であり、揺動側壁3、3を開くことにより、ケーシングは上向きに開口される。一方の揺動側壁3の内側には、各粗砕刃4、及び各粉砕刃6との協働により被処理物(スプルランナ)を粉砕するための矩形の板状の第1固定刃7a、…、及び第2固定刃7bで構成される固定刃7が、内側に向かって下方向に傾斜するように固定されている。
【0024】
第1固定刃7aは、長手方向の寸法が粉砕刃6の軸方向の寸法と略同一であり、長辺側の一方の縁部は、粉砕刃6の刃先と噛み合うように凹凸状に形成された歯部を有し、ボルト9、…で揺動側壁3の内側に固定されている。また、第1固定刃7aの短辺側であって粗砕刃4と近接する縁部には、粗砕刃4との協働により被処理物を粉砕する歯部を形成している。
【0025】
第2固定刃7bは、長手方向の寸法が揺動側壁3の軸方向の寸法と略同一であり、長辺側の一方の縁部であって、粗砕刃4と近接する箇所には、粗砕刃4との協働により被処理物を粉砕する歯部を形成している。第2固定刃7bは、ボルト(不図示)により第1固定刃7a、…の長辺側の他方の縁部に当接するように揺動側壁3の内側に固定されている。
【0026】
揺動側壁3の内側であって固定刃7の下側には、粗砕刃4、4で粗砕され、所定の大きさに粉砕されていない被処理物が排出されることを防止するため、後述する粗砕刃カバーが設けられている。粗砕刃カバーは、粗砕刃4、4の回転軌道を覆うように内側に円弧状の溝加工が施されている。
【0027】
他方の揺動側壁3の内側には、粉砕刃6、6、6で所定の大きさ(粒形状)に粉砕された粉砕片を掻き落とし、ケーシングの下側の排出口(不図示)へ排出するための略矩形の板状のスクレーパ5が、ボルト8、8、8により内側に向かって下方向に傾斜するように固定されている。
【0028】
スクレーパ5は、粗砕刃4、4が回転する部分に矩形状の切り込みを形成してあり、長辺側の一方の縁部であって、粉砕刃6、6、6と近接する箇所には、粉砕刃6の刃先と噛み合うように凹凸状に形成された掻き落とし部を形成している。
【0029】
揺動側壁3の内側であってスクレーパ5の下側には、粗砕刃4、4で粗砕され、未だ所定の大きさに粉砕されていない被処理物が排出されることを防止するため、粗砕刃カバーが設けられている。粗砕刃カバーは、粗砕刃4、4の回転軌道を覆うように内側に円弧状の溝加工が施されている。両方の揺動側壁3、3を閉じた場合、各粗砕刃カバーは、一端部でお互いに当接して、粗砕刃4、4の回転軌道を覆う空間を形成し、未粉砕の被処理物が排出されることを防止する。
【0030】
各固定側壁2、及び各揺動側壁3で構成されるケーシンングの4隅には、揺動側壁3、3を固定側壁2、2に固定するため一面がテーパ状のロック部材13、…が取り付けられるようになっており、テーパ状の一面で固定側壁2、揺動側壁3の端部を挟み込み、ロック部材13に螺合したレバー12を締め付けることにより、揺動側壁3、3を固定側壁2、2に固定する。各揺動側壁3は、揺動側壁3に固定されたハンドル14を持って開閉することができる。
【0031】
被処理物を粉砕する場合、レバー12を締め付けることにより、揺動側壁3、3を固定側壁2、2に固定する。ケーシングの上部に配置された投入ホッパー(不図示)に被処理物を投入し、電動モータ11の電源をオンにすると、回転軸が所定の回転数で回転し、粗砕刃4、粉砕刃6が回転する。回転方向は、粗砕刃4、及び粉砕刃6が上側から下側に向かって固定刃7と噛み合うとともに、下側から上側に向かってスクレーパ5と噛み合う方向である。
【0032】
これにより、被処理物は、まず粗砕刃4と固定刃7との協働により粗砕され、粉砕刃6に食い込み易い大きさに細断される。粗砕された被処理物は、粉砕刃6と第1固定刃7aとの協働により所定の大きさの粉砕片に粉砕され、粉砕刃6の回転に伴ってケーシングの下側に送られ、排出口(不図示)から排出される。また、所定の大きさに粉砕された粉砕片のうち、静電気で粉砕刃6の側面に付着したものは、粉砕刃6とスクレーパ5との協働によりスクレーパ5の下面で掻き落とされ、排出口(不図示)から排出される。
【0033】
粗砕刃4により粗砕された被処理物の一部は、粗砕刃4の回転により固定刃7の下側に送られるが、後述する粗砕刃カバーで受け止められ、再び各粉砕刃6の上側に送られるとともに、排出口から誤って排出されることを防止する。
【0034】
また、被処理物を粉砕した後には、粉砕片の一部が各粗砕刃4、各粉砕刃6、固定刃7などの周り又は刃先、スクレーパ5の周り、粗砕刃カバーの内側、固定側壁2、2の内部、揺動側壁3、3の内部などに残留する。
【0035】
図2は本発明に係る粉砕機の側面から見た要部模式図である。なお、図2は揺動側壁3、3を閉じた状態を示す。また、図では要部のみを示す。図に示すように、固定側壁2の略中央部に回転軸60が軸架されてあり、回転軸60には、粗砕刃4、粉砕刃6が所定の位置で嵌装されている。固定側壁2は、ボルトで支持台に固定されている。なお、粗砕刃4、粉砕刃6は複数嵌装されているが、図では1つのみ示している。一方の揺動側壁3の内側上面には、回転軸60の方向に向かって下方向に傾斜して固定刃7(第1固定刃7a、第2固定刃7b)が固定されてあり、固定刃7の下側であって粗砕刃4の回転軌道には、粗砕刃カバー31を設けている。
【0036】
他方の揺動側壁3の内側上面には、回転軸60の方向に向かって下方向に傾斜してスクレーパ5が固定されてあり、スクレーパ5の下側であって粗砕刃4の回転軌道には、粗砕刃カバー31を設けている。
【0037】
各粗砕刃カバー31は、所定の厚みを有する劣弧状の円環形状をなし、内側は粗砕刃4の回転軌道に沿って溝加工が施された空間を形成してある。揺動側壁3、3が閉じられた状態では、粗砕刃カバー31の一端部同士が当接し、粗砕刃4の回転に伴って固定刃7及びスクレーパ5の下側に回りこんだ未処理の粉砕片を受け止める。
【0038】
回転軸60の下側には、固定側壁2と2つの揺動側壁3、3との間に支持部材としての略楕円形状の連動板23、23を配置している。支持部材としての連動板23は、固定側壁2に対して、通し軸22及びピン21を介して揺動側壁3を間接的に支持している。なお、図2には図示していないが、他方の固定側壁2と2つの揺動側壁3、3との間にも連動板23、23を配置している。従って、連動板23は、4個使用されている。また、連動板23の位置は、図2の例に限定されるものではない。
【0039】
連動板23には、適長離隔して2つの孔を設けてあり、一方の孔には第1支点軸としてのピン21を挿着してあり、他方の孔には第2支点軸としての通し軸22を設けている。図2に示すように、ピン21は、回転軸60の略鉛直下に配置してあり、通し軸22は、同一連結板23のピン21よりも外側であってピン21と略同一高さの位置に配置している。すなわち、揺動側壁3を閉じた状態でピン21は通し軸22よりも内側に配置されている。なお、ピン21と通し軸22の位置関係は、図2の例に限定されるものではない。また、連動板23の形状は、板状に限定されるものではなく、両端側に孔を形成したものであれば、棒状の形状も含むものとする。また、2つの孔の間の形状が直線状であってもよく、あるいは湾曲又は屈曲した形状であってもよい。
【0040】
第1支点軸としては、ピンの他にボルト、ネジあるいはリベットなどで構成することができる。揺動側壁3の両側に配置された2つの固定側壁2それぞれに対向する両側面に個別に設けられている。すなわち、4個の連動板23に対応して4個のピン21を個別に設けている。これにより、支点軸が揺動側壁3に沿って回転軸60と平行に対向する固定側壁2、2間を架け渡された場合に比べて製造コストを低減することができる。
【0041】
通し軸22は、揺動側壁3に沿って回転軸60と平行に対向する固定側壁2、2間を架け渡されている。なお、ピン21、通し軸22の詳細は後述する。
【0042】
揺動側壁3の連動板23の上方には、外側から内側に向かって下方向に傾斜した切欠面32を形成している。なお、切欠面32は、揺動側壁3を開く場合に、連動板23の上側側面に当接することにより、揺動側壁3と連動板23とを係止させ、ピン21の回りに回転する揺動側壁3を通し軸22の回りにも回転させるとともに、揺動側壁3の回転に連動して連動板23を通し軸22の回りに回転させるためのものである。なお、切欠面32は、面に限定されるものではなく、係止することができる形状であれば、湾曲した面、凹凸状の形状など適宜設定することができる。
【0043】
次に揺動側壁3の開閉時の状態について説明する。図3乃至図5は揺動側壁3の開閉動作時の粉砕機の側面から見た要部模式図である。図3に示すように、揺動側壁3を開いた初期の段階では、揺動側壁3は、ピン21の回りに回転し、揺動側壁3に形成された切欠面32が連動板23の上側側面に当接するまで回転する。
【0044】
この場合、揺動側壁3の回転中心が回転軸60の略鉛直下のピン21であるため、揺動側壁3の内部に設けられた粗砕刃カバー31の粗砕刃4又は粉砕刃6との近接部分である端部あるいは縁部は、ピン21を中心として円弧状に移動する。これにより、粗砕刃カバー31の端部あるいは縁部は、揺動側壁3の回転に伴って、粗砕刃4又は粉砕刃6から離れるように移動するため、揺動側壁3の内部(特に、粗砕刃カバー31)が粗砕刃4又は粉砕刃6と干渉することなく揺動側壁3を開くことができる。
【0045】
図4に示すように、揺動側壁3に形成された切欠面32が連動板23の上側側面に当接した状態で、さらに揺動側壁3を開いた場合、連動板23は、揺動側壁3の回転に連動して通し軸22の回りに回転する。すなわち、揺動側壁3を開く途中で揺動側壁3は、ピン21の回りに回転する状態から、通し軸22の回りに回転する状態に移行する。揺動側壁3が、ピン21よりも外側に配置された通し軸22の回りに回転することにより、揺動側壁3を粗砕刃4、粉砕刃6からさらに離隔して開き、揺動側壁3の開口部を広くする。
【0046】
また、揺動側壁3が通し軸22の回りで回転する際に、連動板23のピン21は、通し軸22の回りに円弧状に回転する。これにより、揺動側壁3は、通し軸22の回りに回転するとともに、ピン21が通し軸22の回りに円弧状に移動するため、ピン21が揺動側壁3の回転の途中で固定されてしまうことがなく、揺動側壁3の回転を滑らかに移行させることができるとともに、揺動側壁3を水平方向にスライドさせる必要もなく、回転動作のみで揺動側壁3を開くことができる。
【0047】
また、揺動側壁を開く場合に、粗砕刃、粉砕刃との干渉を避けるために、揺動側壁を外側に向かって水平方向に所定の距離だけスライド(平行移動)させ、その後、揺動側壁を回転して開口部を広くすることも考えられるが、揺動側壁自体の重量は重く、粉砕機の出力が大きくなるにつれて揺動側壁も大きくなり重量が一層重くなる。このため、揺動側壁を平行移動して引き出す構造の場合、作業者は、かなり力を入れて引き出す必要がある。一方で、揺動側壁の固定側壁との隙間、あるいは揺動側壁の下面には、微粉材が残留するため、これが摩擦力を高める原因となって一層作業性が悪くなり、力任せに引き出した場合、思わぬ怪我をする恐れもある。
【0048】
また、揺動側壁は両固定側壁に挟まれるように配置されるとともに、揺動側壁と固定側壁との間の摺動面は近接しているため、揺動側壁を平行移動させる際に揺動側壁の荷重中心が揺動側壁の中央部から左右方向あるいは上下方向にずれた場合、揺動側壁に偏荷重が加わり、揺動側壁を固定側壁に対して平行に移動することができず、揺動側壁の摺動面の一部が固定側壁に着接してしまい、揺動側壁を移動させることができなくなるという問題もある。さらに、揺動側壁を水平移動した後に回転移動させる場合、揺動側壁の操作荷重の方向が揺動側壁の移動の途中で水平方向から回転方向へ大きく変化するため、揺動側壁の移動方向を注意深く確認する必要があり作業性がよくない。
【0049】
本実施の形態の場合には、揺動側壁3の開閉動作を回転移動のみで行えるため、揺動側壁3を滑らかに開閉することができる。また、平行移動する場合に比べて摩擦による影響、偏荷重の影響がなく、装置が大型化して揺動側壁3の重量が増加した場合でも、作業者が大きな力をかけることなく容易に揺動側壁3の開閉を行うことができ、揺動側壁を平行移動する場合の上述の問題を解決することができる。
【0050】
図5に示すように、さらに揺動側壁3を開いた場合、揺動側壁3は通し軸22の回りに回転し、連動板23の通し軸22側の端部に設けられた係止面23aが支持台の上面に当接することにより、揺動側壁3が、それ以上回転しないように規制される。なお、揺動側壁3の回転を規制するための係止部材は、図示した例に限定されるものではなく、他の構成を用いることもできる。また、揺動側壁3を閉める場合には、上述と逆の動作が行われるので説明は省略する。
【0051】
図5に示すように、揺動側壁3を開いた状態では、揺動側壁3の内部が従来よりも広く開口する。特に、粗砕刃カバー31の端面31aは、粗砕刃4、粉砕刃6から離れて外側に位置しているため、従来のように粗砕刃カバーを着脱方式にする必要がなく、簡便な構成で揺動側壁3の開口部を広くすることができる。これにより、粉砕片の清掃を容易にし、清掃時間を短縮するとともに、粉砕片の残留を防止する。特に、成形工場において、成形工程、粉砕工程、リサイクル工程等を一貫体制で行っている場合において、多品種少量生産を行う時には、生産する部品が変更される都度、粉砕機に残留した粉砕片を完全に除去する必要があり、残留した粉砕片を短時間に完全に清掃することができる本実施の形態は、生産工程全体の生産能力を高めることができ、優れた効果を奏するものである。さらに、着脱方式の粗砕刃カバーが不要になることで、粗砕刃カバーを支持するためのクランプカムが不要となり、部品点数を削減することができる。また、装置が大型化した場合であっても、重量の重い粗砕刃カバーを取り外す作業が不要になり、作業性が向上する。
【0052】
次に、第1支点軸としてのピン21及び第2支点軸としての通し軸22について説明する。図6は本発明に係る粉砕機の正面から見た要部模式図である。図6に示すように、固定側壁2と揺動側壁3との間には連動板23が挟みこまれるように配置してあり、連動板23に設けられた孔23b(他方の孔)及び固定側壁2に設けられた軸孔22bには、固定側壁2、2の間に渡し止められた通し軸22を挿通してある。通し軸22は、両端部にねじ山を形成してある。そして、固定側壁2、2の外側で通し軸22には、例えば、ナット22aを螺嵌している。なお、固定側壁2は、ボルトで支持台に固定されている。
【0053】
また、連動板23に設けられた孔23a(一方の孔)及び揺動側壁3に設けられた挿入穴3aには、ピン21の一端21aを挿入してあり、ピン21の他端21bは、固定側壁2に当接するようにしてある。揺動側壁3と固定側壁2との間に配置された連動板23は、孔23aに装着したピン21の一端21aを揺動側壁3の挿入穴3aに挿入することで、揺動側壁3をピン21の回りに揺動させることができる。また、ピン21の他端21bは固定側壁2に当接しているので、ピン21が抜けることがない。これにより、簡単な構造で揺動側壁3を揺動させることができ、製造コストを低減することができる。
【0054】
上述の実施の形態では、第1支点軸としてピン21を用いる構成であったが、ピンに限定されるものではなく、例えば、ボルトとナットなどを用いる構成でもよい。また、連動板23は略楕円形の板状であったが、連動板23の形状は、これに限定されるものではなく、棒体、複数の部材を組み合わせたものなど、各支点軸を連係することができる形状であれば、どのようなものであってもよい。特に、固定側壁2、揺動側壁3の形状に応じて適宜形状を決定することができる。
【0055】
実施の形態2
図7は実施の形態2の粉砕機の正面から見た要部模式図である。実施の形態1との違いは、固定側壁2、2間を通す通し軸に代えて、ボルトを用いる点である。図7に示すように、固定側壁2、2間を渡し止めるのではなく、固定側壁2毎にそれぞれ個別にボルト24を第2支点軸として設けている。すなわち、2つの固定側壁2、2のそれぞれに別個のボルト24を設けている。固定側壁2は、ボルト24を挿通する挿通孔22cを設けてあり、挿通孔22c及び連動板23の孔23b(他の孔)に挿通されたボルト24にナット22aを螺嵌してある。揺動側壁3と固定側壁2との間に配置された連動板23の孔23bに装着したボルト24を固定側壁2の挿通孔22cに挿通してナット22aを螺嵌する。これにより、支点軸が2つの固定側壁の間を架け渡されたような通し軸を用いる場合に比べて、製造コストをさらに低減することができる。また、簡単な構造で固定側壁2の第2支点軸の回りに連動板23を揺動させることができる。
【0056】
以上説明したように、本発明によれば、揺動側壁が第1支点軸よりも外側に配置された第2支点軸の回りに回転するので、揺動側壁を回転刃からさらに離隔して開き、揺動側壁の開口部を広くすることができる。また、第1支点軸を揺動側壁の固定側壁に対向する両側面にそれぞれ個別に設けているので、支点軸が2つの固定側壁の間を架け渡された場合に比べて製造コストを低減することができる。
【0057】
上述の実施の形態において、第1支点軸として、2つの固定側壁間に渡し架けられた通し軸を用い、第2支点軸としてピンやボルトを別個に3箇所設ける構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る粉砕機の上面から見た要部模式図である。
【図2】本発明に係る粉砕機の側面から見た要部模式図である。
【図3】揺動側壁の開閉動作時の粉砕機の側面から見た要部模式図である。
【図4】揺動側壁の開閉動作時の粉砕機の側面から見た要部模式図である。
【図5】揺動側壁の開閉動作時の粉砕機の側面から見た要部模式図である。
【図6】本発明に係る粉砕機の正面から見た要部模式図である。
【図7】実施の形態2の粉砕機の正面から見た要部模式図である。
【符号の説明】
【0059】
2 固定側壁
3 揺動側壁
3a 挿入穴
4 粗砕刃
5 スクレーパ
6 粉砕刃
7 固定刃
7a 第1固定刃
7b 第2固定刃
21 ピン(第1支点軸)
22 通し軸(第2支点軸)
22a ナット
22c 挿通孔
23 連動板(支持部材)
23a 孔(一方の孔)
23b 孔(他方の孔)
24 ボルト(第2支点軸)
31 粗砕刃カバー
31a 端面
32 切欠面
60 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横向きに配置された回転軸の両端側に設けられた固定側壁と、該固定側壁の間であって前記回転軸の両側に対設され、前記回転軸の下側にある軸回りに揺動開閉可能な揺動側壁とを備え、前記回転軸に設けられた回転刃と前記揺動側壁の内側に設けられた固定刃との協働により被処理物を粉砕する粉砕機において、
適長離隔して設けられた2つの孔を有し、前記回転軸の下側であって前記揺動側壁と前記固定側壁との間に配された支持部材と、
前記揺動側壁の前記固定側壁に対向する両側面にそれぞれ個別に設けられ、前記支持部材の一方の孔に挿着された第1支点軸と、
前記固定側壁に設けられ、前記支持部材の他方の孔に挿着された第2支点軸と
を備え、
前記揺動側壁を閉じた状態で、前記第1支点軸が前記第2支点軸よりも内側に配置してあり、
前記支持部材は、
前記第1支点軸及び前記第2支点軸を介して前記揺動側壁の揺動に連動するようにしてあることを特徴とする粉砕機。
【請求項2】
前記第1支点軸は、ピンであり、
前記揺動側壁は、前記ピンの一端側を挿入する挿入穴を設けてあり、
前記ピンの他端側は、前記固定側壁に当接するようにしてあることを特徴とする請求項1に記載の粉砕機。
【請求項3】
前記固定側壁毎に前記第2支点軸をそれぞれ個別に設けてあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉砕機。
【請求項4】
前記第2支点軸は、ボルトであり、
前記固定側壁は、前記ボルトを挿通する挿通孔を設けてあり、
前記挿通孔及び前記支持部材の他方の孔に挿通された前記ボルトにナットを螺嵌してあることを特徴とする請求項3に記載の粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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