説明

粉粒体の供給装置

【課題】シート体に供給される粉粒体を一様の厚さにできるうえ、余剰の粉粒体を効率よく取り除くようにした。
【解決手段】粉粒体供給装置1は、一方向に移動するシート体2の上面に粉粒体3を一定の厚さで供給させ、粉粒体3をシート体2に落下させる供給ホッパー30と、供給ホッパー30よりシート体2の移動方向下流側にシート体2の上面と隙間Cをもって配置され、供給ホッパー30側の傾斜面40a、40aをシート体2の移動方向に対して斜め方向に配置させてなる厚さ調整部材40とを設けている。厚さ調整部材40によって粉粒体3をシート体2上に所定厚みに均すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば導電性シートや電磁波遮蔽シートなどの成形に関し、シート体に粉粒体を供給するための粉粒体の供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱臭、吸着、防音、保温、伝熱、電気伝導等の機能を有する材料が粉粒体である場合には、そのままでは扱いにくいため、紙、フィルム、シート、不織布、織布などのシート体に担持させて使用することが一般的である。そのシート体に粉粒体を担持させる方法として、シートの上に粉粒体を載せる場合、粉粒体を溶剤、分散剤或いはバインダー中に混合させ、液状或いはスラリーにして、周知の加熱ロールなどの塗工機を使用し、一定厚みに塗工し、乾燥、巻取りを行なうことが一般的である。
しかしながら、溶剤、バインダーなどで液状にして、粉粒体の特性が著しく劣化する場合には、公知の液体用コータを用いることができない。そこで、粘着剤を薄くシート表面に塗布し、その上に粉粒体を、スプレー噴射、フィーダー、振動篩いなどの供給手段を用いてシート体に非接触の状態で散布して供給する方法が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1は、回転ロール(供給手段)の表面に複数の小孔が形成され、これらの小孔の個々に回転する回転ロールの上方から粉粒体が供給されて個々の小孔に保持される。そして、回転ロールが回転すると、下部で粉粒体が回転ロールの表面から落下することで、回転ロールの下方を一定速度で移動する金属板(シート体)の接着剤を塗布した表面に粉粒体を散布(供給)するものである。
【特許文献1】特開平6−226202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1は、回転ロールに供給する粉粒体の量がシート体への供給量となることから、回転ロールに一定量の粉粒体を精度よく供給する必要がある。この場合、回転ロールの上方から粉粒体を撒くように供給する方法であり、回転中の回転ロールの複数の小孔の個々に対して粉粒体を供給するため回転ロールに一定量の粉粒体を供給することが難しく、シート体上に供給される粉粒体の厚さが一様にならないという問題があった。このように、シート体の上面に一定の厚さで精度よく供給できる好適な技術がなく必要とされていた。
【0004】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、シート体に供給される粉粒体を一様の厚さにできるうえ、余剰の粉粒体を効率よく取り除くようにした粉粒体の供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る粉粒体の供給装置では、一方向に移動するシート体の上面に粉粒体を一定の厚さで供給する粉粒体の供給装置であって、粉粒体をシート体に落下させる供給手段と、供給手段よりシート体の移動方向下流側にシート体の上面と隙間をもって配置され、供給手段側の端面をシート体の移動方向に対して斜め方向に配置させてなる厚さ調整部材とが設けられ、厚さ調整部材によって粉粒体をシート体上に所定厚みに均すように構成するようにしたものである。
そのため、供給された粉粒体は移動しているシート体と共に一方向に移動し、厚さ調整部材の端面に粉粒体が当接し、一部は厚さ調整部材とシート体との隙間に引き込まれ、隙間を超える高さの粉粒体と同じ厚さとなるように均一に分散されて均される。こうして、厚さ調整部材を通過したシート体上には、その全面にわたって一様の厚さで粉粒体が供給される。しかも、厚さ調整部材を通過しない余剰の粉粒体が端面に沿って移動することから、その延長線上の所定位置で回収することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る粉粒体の供給装置では、供給された粉粒体は移動しているシート体と共に一方向に移動し、厚さ調整部材の端面に粉粒体が当接し、一部は厚さ調整部材とシート体との隙間に引き込まれ、隙間を超える高さの粉粒体を同じ厚さとなるように均一に分散されて均される。そして、厚さ調整部材を通過した後にシート体に供給される粉粒体をシート体全面にわたって一様の厚さにすることができる。そのうえ、厚さ調整部材を通過しない余剰の粉粒体が端面に沿って移動することから、その端面の延長線上において効率よく取り除くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
また、本発明に係る粉粒体の供給装置では、シート体上の所定厚みを超える粉粒体は、厚さ調整部材によってシート体の外方に落下させて回収することが好ましい。
これにより、厚さ調整部材とシート体との隙間を通過することなく所定厚みを超える粉粒体が厚さ調整部材の端面に沿ってシート体の幅方向外方に向かって移動するため、端面の延長線方向の所定位置に例えば回収容器を設けて所定厚みを超える粉粒体を回収することができる。
【実施例】
【0008】
以下、本発明の実施例による粉粒体の供給装置について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1は本発明の実施例による粉粒体供給装置の全体概要を示す斜視図、図2は粉粒体供給装置を示す平面図、図3は粉粒体供給装置を示す側面図、図4は厚さ調整部材で粉粒体の厚さを調整する状態を示す図であって、(a)はその平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【0009】
図1に示す本実施例による粉粒体供給装置1は、例えば電磁波遮蔽シートに使用される導電性シートを成形するための装置である。符号2はシート体であり、その長手方向に折り目のない不織布である。このシート体2の全面にわたって例えばカーボン、黒鉛、金属などの粉粒体3を一様の厚さに載せ、その状態で加熱及び加圧させることで粉粒体3がシート体2に溶着した成形シート体2Aを成形させるものである。
【0010】
粉粒体供給装置1は、上面を略水平に形成させた支持台10と、支持台10上でシート体2を一方向(矢印E方向)に移動させる移動手段20(図3参照)と、この移動するシート体2の上面に粉粒体3を落下させて供給する供給ホッパー30(供給手段)と、供給された粉粒体3をシート体2の全面にわたって一様の厚さに均す厚さ調整部材40と、厚さ調整部材40によって粉粒体3が厚さ調整されたシート体2を加熱及び加圧させる加圧ロール50とから概略構成されている。
ここで、図1に示すシート体2の移動方向Eの始点側を「始点」とし、移動方向の終点側を「終点」として、以下説明する。
【0011】
図2及び図3に示すように、支持台10は、シート体2を下方より支持する受け台11と、供給される粉粒体3の厚さを調整させる領域Rに配置されたゲージ板12と、加圧手段50で加熱成形されたシート体2A(後述する)を冷却させる冷却板13とからなる。ゲージ板12は、後述するように厚さ調整部材40による上方からの押圧によって撓まないような強度を有する。これによりシート体2の上面の粉粒体3の厚さを一定に保つことができる。そして、これら受け台11、ゲージ板12、冷却板13は、夫々の上面が面一となるように形成されている。
【0012】
図3に示すように、移動手段20は、支持台10の始点側でシート体2の一端2aを巻き付けてなる巻き出し部21と、支持台10の終点側でシート体2の他端2bを巻き取る巻き取り部22と、巻き出し部21と巻き取り部22との間でシート体2を上下から挟持させて移動方向Eに送り出す引張ローラー24、24とが設けられている。そして、引張ローラー24、24は、移動用駆動モータ25によって回転駆動される。
これにより、シート体2は、引張ローラー24によって引っ張られて移動し、巻き出し部21から送出されて支持台10の始点側端部近傍で案内ローラー23、23によって方向転換され、支持台10に乗り移って支持台10上を移動方向Eに移動し、引張ローラー24、24を介して巻き取り部22で巻き取られる。
また、巻き取り部22にはこの巻き取り部22の巻き取り方向に回転させる手巻きハンドル26が設けられ、この手巻きハンドル26を使用して成形シート体2Aを手動で巻き取ることを可能にしている。
【0013】
図2及び図3に示すように、供給ホッパー30は、略すり鉢状に形成され、支持台10上方の所定の位置に固定され、その上部に開口されてなる投入口30bと、中央下部に図示しない開閉ゲートを備えた吐出口30aとが設けられている。粉粒体3は、投入口30bから供給ホッパー30に投入され、吐出口30aから適宜な供給量をもってシート体2の幅方向(シート体2の長手方向に直交する方向)の略中央位置に供給される。なお、吐出口30aの開閉ゲートは、その開度の調整することで粉粒体3の供給量を変えることができる。
【0014】
次に、供給ホッパー30からシート体2に供給された粉粒体3の厚みを一様にするための厚さ調整部材40について図面に基づいて説明する。
図4(a)および(b)に示すように、厚さ調整部材40は、所定の厚みを有した平板と平板とを平面視略V字型となるように合わせた形状をなし、頂部40bを供給ホッパー30側に向けて配置されている。すなわち、頂部40bからシート体2の移動方向Eに対して斜め終点側に向けた傾斜面40a、40a(端面)が形成されている。
ここで、厚さ調整部材40の傾斜面40a、40aの傾斜角度α、βは、夫々が90度未満に設定され、夫々を独立して設定できる。図4(a)に示すように、例えばシート体2の移動方向Eに直交する方向を基準線Lとしたとき、0度を超え60度以下に設定できる。さらに、好ましくは5度以上、45度以下が好適であり、より好ましくは5度以上、30度以下に設定できる(詳細は後述の試験例に記載する)。
なお、図1乃至図4に示す厚さ調整部材40は、上面に三角形状のカバー40dが設けられている。
【0015】
また、厚さ調整部材40の下端40c(図4(b)参照)とシート体2との間には、所定の高さ寸法Dを有する隙間Cが形成されている。
厚さ調整部材40の厚さ(シート体2の移動方向Eに略相当する長さ寸法)は、好ましくは10mm程度とする。さらに、より好ましくは、図示しないが厚さ調整部材40の下端部における傾斜面の反対側(終点側)の面を切り取った形状に形成して厚みを小さくして3〜6mm程度とする。厚さ調整部材40は、これらの厚さより小さい場合に剛性が小さくなるため隙間Cを通過する粉粒体3によって振れが生じる。また、これらの厚さより大きい場合に、粉粒体3と厚さ調整部材40の下部40cにおける摩擦抵抗が大きくなり、隙間Cで粉粒体3が詰まる原因になり得る。
図3に示すように、厚さ調整部材40は、その上方で厚さ調整手段41によって支持されている。この厚さ調整手段41は、シート体2の幅方向に長手方向を配した棒状部材をなし、その下方において図示しない連結部材を介して厚さ調整部材40を前記隙間Cの高さ寸法Dを調整するようにして固定させている。例えば、連結部材に上下方向に選択可能な複数の取付け箇所を形成しておき、所定の取付け箇所を適宜選択することで厚さ調整部材40の高さを調整することができる。
【0016】
次に、図1乃至図3に示すように、加圧手段50は、厚さ調整部材40の終点側に配置され、シート体2を上下から挟んで加圧させるものであり、上部に設けられる加熱ロール51と、下部に設けられる受けロール52とからなる。加熱ロール51と受けロール52は、断面視円形をなし、加圧ロール用駆動モータ53によって夫々が断面中心軸を中心にシート体2を移動方向Eに移動させるように回転する。これにより、シート体2は、両ロール51、52の間で加圧されながら移動することになる。また、加熱ロール51には、加熱ヒーター56が内挿(具体的には、加熱ロール51の内側に丸棒状のヒーターが嵌め込まれている)され、加圧ロール51の外周が高温になっている。
図3に示すように、加熱ロール51にはスクレーパ54が取り付けられていて、加熱ロール51に付着した粉粒体3を掻き落とすことができる。また、加熱ロール51には、その周囲を覆う安全用のカバー体55を設けておくことが好ましい。さらに、加熱ロール51には、その温度を管理しておくための温度センサ56が備えられている。
また、支持台10の終点側端部を外れた位置には、吸込み装置70が設けられている。この吸込み装置70は、加圧手段50によってシート体2に溶着されない不要な粉粒体3を吸引させることができる。
【0017】
次に、このような構成からなる粉粒体供給装置1の作用について図面に基づいて説明する。
図2及び図3に示すように、準備段階として、供給ホッパー30に粉粒体3を投入すると共に、上述した厚さ調整手段41を用いて厚さ調整部材40の高さ寸法を調整して隙間Cを設定しておく。
【0018】
そして、加圧ロール用駆動モータ53及び移動用駆動モータ25を駆動させ、加圧ロール50及び引張ローラー24、24を回転させ、シート体2を移動方向Eに移動させる。続いて、図4(a)及び(b)に示すように、供給ホッパー30の開閉バルブ(図示省略)を開いてシート体2上に粉粒体3を適当量落下させて供給すると、その粉粒体3は移動しているシート体2と共に移動して厚さ調整部材40の頂部40bに当接する。そして、その粉粒体3の一部は厚さ調整部材40とシート体2との隙間Cに引き込まれ、隙間Cを超える高さの粉粒体と同じ厚さとなるように頂部40bを境に二方向に形成される傾斜面40a、40aに沿って均一に分散されて均される。このとき、傾斜面40a、40a側からも隙間Cに引き込まれる。なお、隙間Cに引き込まれた粉粒体3は、シート体2の移動方向Eのみならず、隙間Cの範囲内でシート体2の幅方向に分散するように広がっていく。
こうして、この厚さ調整部材40を通過したシート体2上の粉粒体3は、シート体2の全面にわたって一様の厚さで供給される。なお、厚さ調整部材40の隙間Cを通過しない粉粒体3の余剰分は、シート体2の幅方向外方で支持台10の両側下方に配置されている回収容器60内に落下して回収される。
ここで、厚さ調整部材40の傾斜面40a、40a全体にわたって粉粒体3の堆積量がほぼ同じ量になるように、供給ホッパー30の開閉ゲート(図示省略)の開閉量を調整するようにする。
【0019】
その後、上述した厚さ調整部材40を通過したシート体2が加圧ロール50の加熱ロール51と受けロール52との間に移動する。このとき、予め例えば265〜280℃に加熱した加熱ロール51の熱が熱伝導により粉粒体3を介してシート体2の樹脂を溶かし、これに粉粒体3が溶着する。それと同時に加熱ロール51と受けロール52とに挟まれて加圧されることでシート体2に粉粒体3が担持される。
続いて、加圧されたシート体2が冷却板13上を移動して冷却される。このとき、加圧ロール50によって溶着する粉粒体3は、シート体2の表面の粉粒体3のみである。このため、粉粒体3がシート体2と溶着していない余剰の粉粒体3は、巻き取り部22で巻き付けられる前に、吸込み装置70によって吸引して取り除かれる(図2、図3参照)。このようにして、成形シート体2Aが成形される。
【0020】
(試験例)
次に、上述した粉粒体供給装置1において、厚さ調整部材40の傾斜角度α、βを変化させた試験例について図1乃至図4、表1に基づいて説明する。
本試験例では、厚さ調整部材40の傾斜面40aに所定の傾斜角度α、βをもたせた本実施例による試験(実施例1〜10)と、厚さ調整部材40の端面(傾斜面40aに相当)に傾斜角度α、βの少なくともどちらか一方が0度をなす(つまり、シート体2の移動方向に対して直交する端面を有する)比較例による試験(比較例1〜3)とを実施したものである。
先ず、本試験例では、図1に示すシート体2として、例えば幅が300mmのPPS繊維不織布(厚さ60μm、目付30g/m、空隙率85%、軟化温度260℃)を使用する。また、粉粒体3には、黒鉛(平均粒子径は100μm)を使用する。
また、粉粒体供給装置1の条件は、厚さ調整部材40下方の隙間Cを2mmとし、シート体2の移動速度を3m/minとし、加熱ロール51の温度を265〜280℃、そして加熱ロール51と受けロール52とを通過する際にシート体2に負荷される圧力を5kgf/mとした。
そして、本試験例で目標とした粉粒体3を担持させる成形シート体2の性状は、下式に基づく。
黒鉛担持量=(黒鉛重量/(黒鉛重量+シート体の重量)×100)=88
【0021】
そして、上述した条件に基づき表1に示すように厚さ調整部材40の傾斜角度α、βを変化させ、実施例1〜10及び比較例1〜3の各々に対して、第1〜3評価項目毎に評価した結果について説明する。
ここで、第1評価項目は、シート体2に担持された粉粒体3の均一性を目測(一定面積当たりの粉粒体3の重量に相当)により評価するものである。第2評価項目は、粉粒体の供給状態、担持状態およびシート体2の移動状態を評価するものである。そして、第3評価項目は、厚さ調整部材40を通過しなかった余剰の粉粒体3が回収装置60で回収される状態を評価するものである。
【0022】
【表1】

【0023】
先ず、第1評価項目に関して、比較例1〜3では、いずれもシート体2の端部に粉粒体3が担持されない場合があり、すなわちシート体2の幅方向全体にわたって粉粒体3が均一に担持されないことが確認された。とくに調整部材40の傾斜角度α、βが0度、すなわちシート体2の移動方向Eに対して直交方向をなしている端面(傾斜面40aに相当)で粉粒体3の担持状態が不均一であることが確認された。また、実施例1〜10では、全実施例においてシート体2に均一に粉粒体3が担持されていることが確認されたことから、良好であると評価できる。
【0024】
また、第2評価項目に関して、比較例1では、厚さ調整部材40の幅方向中央部(頂部40bに相当)付近で粉粒体3が隙間Cで目詰まりが起こり、シート体2の破損やシートの移動で脈動がみられた。比較例2、3についても傾斜角度が0度をなす端面(傾斜面40aに相当)において比較例1と同様の現象が起こり、さらにシート体2の移動において蛇行が発生する場合があった。これに対し、実施例1〜10では、全実施例において粉粒体3の供給、担持、シート体2の移動状態がとくに滞ることなく進行されたことから、良好であると評価できる。
また、第3評価項目に関して、比較例1〜3の場合、粉粒体3が回収容器60に回収されずシート体2の上部に溜まるといった現象が発生していた。これに対し、実施例1〜10では、全実施例において余剰の粉粒体3が回収容器60に回収されたことが確認されたことから、良好であると評価できる。
【0025】
上述したような評価結果により、厚さ調整部材40の傾斜面40aは、その幅方向全体にわたって傾斜角度α、βが0度を超えるように傾斜角度をもたせて配置させることで、上述した第1〜3評価項目において良好な状態とすることができ、均一に粉粒体3が担持された成形シート体2Aを製造できることが確認された。
なお、傾斜角度α、βが大きくなると、本粉粒体供給装置1の粉粒体供給領域(つまり、厚さ調整部材40下方の隙間Cの領域)が、シート体2の長手方向に大きくなることから、装置の大型化によりコストが大きくなり、さらに厚さ調整部材40についても材料コストが増加することになる。
これらのことから、厚さ調整部材40の傾斜角度α、βについては、0度を超え60度以下に設定できる。さらに、好ましくは5度以上、45度以下が好適であり、より好ましくは5度以上、30度以下に設定できる。
【0026】
本実施例の粉粒体の供給装置によれば、供給ホッパー30によって供給された粉粒体3は移動しているシート体2と共に一方向に移動し、厚さ調整部材40の傾斜面40aに粉粒体3が当接し、一部の粉粒体は厚さ調整部材40とシート体2との隙間Cに引き込まれ、隙間Cを超える高さの粉粒体を同じ厚さとなるように均一に分散されて均される。そして、厚さ調整部材40を通過した後にシート体2に供給される粉粒体3をシート体2全面にわたって一様の厚さにすることができる。そのうえ、厚さ調整部材40を通過しない余剰の粉粒体3が傾斜面40aに沿って移動することから、その傾斜面40aの延長線上において効率よく取り除くことができる。
【0027】
次に、実施例の第一及び第二の変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の実施例と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施例と異なる構成について説明する。
図5は実施例の第一の変形例による粉粒体供給装置の概略を示す斜視図であり、図1に対応する図、図6は第一の変形例の粉粒体供給装置の平面図、図7は実施例の第二の変形例による粉粒体供給装置の平面図である。
図5及び図6に示すように、本第一の変形例は、図1に示した実施例の厚さ調整部材40に代えて平板形状の第二の厚さ調整部材80が移動方向Eに対して斜めに向けて設けられている。また、第二の供給ホッパー31は、シート体2の幅方向全体に開口した吐出口を有していて、シート体2の幅方向にわたって粉粒体3を供給することができる。そして、第二の供給ホッパー31の一方の側部31aと、第二の厚さ調整部材80の始点側の一端部80bとの間を塞ぐようにして平板状の端板81が設けられている。端板81が設けられることにより、第二の供給ホッパー31より供給された粉粒体3は、傾斜面80a(端面)に沿って一方(他端部80c)のみに広がる。
また、実施例や第一の変形例のような平面視直線をなす傾斜面40a、80aだけでなく、図7に示す第二の変形例のように、端面90aが湾曲した形状をなす第三の厚さ調整部材90であってもかまわない。第三の厚さ調整部材90は、端面90aをなす円弧面を始点側に向け、平面視略半円状に形成されている。
本第一及び第二の変形例では、供給された粉粒体3が傾斜面80a、端面90aに沿って移動して広がるため、実施例と同様の効果を得ることができる。
【0028】
以上、本発明による粉粒体の供給装置の実施例および第一及び第二の変形例について説明したが、本発明は上記の実施例および第一及び第二の変形例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施例及び第一及び第二の変形例では成形シート体2Aは導電性シートや電磁波遮蔽シートを対象としているが、具体的にはシート体2Aを積層し加熱・冷却プレス等を用いて一体化すれば導電性のプレートが得られ、燃料電池に使用されるセパレータなどに使用することができる。また、このような成形シート体2Aに限らず、このほかに、例えば、粉粒体に砥粒を使用して成形する紙やすり(砥粒、粉粒体)、粉粒体に活性炭を使用して成形する臭い除去用のシートなどに適用できる。
なお、本実施例では、厚さ調整部材40の傾斜角度α、βを60度以下としているが、試験例で示した実施例10で確認できるように、60度を超えた傾斜角度であっても粉粒体3がシート体2に均一に担持され、本発明の効果が得られることは言うまでもない。
また、本実施例及び第一及び第二の変形例では、粉粒体3をシート体2に加熱溶着する方法としているが、例えば粘着性のシート体を用い、このシート体の幅方向全体にわたって粉粒体3を供給し、厚さ調整部材を通過させて成形シート体を形成させる構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例による粉粒体供給装置の全体概要を示す斜視図である。
【図2】粉粒体供給装置を示す平面図である。
【図3】粉粒体供給装置を示す側面図である。
【図4】厚さ調整部材で粉粒体の厚さを調整する状態を示す図であって、(a)はその平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図5】実施例の第一の変形例による粉粒体供給装置の概略を示す斜視図であり、図1に対応する図である。
【図6】第一の変形例による粉粒体供給装置の平面図である。
【図7】第二の変形例による粉粒体供給装置の平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1、4、5 粉粒体供給装置
2 シート体
2A 成形シート体
3 粉粒体
10 支持台
20 移動手段
30 供給ホッパー(供給手段)
40 厚さ調整部材
40a 傾斜面
40b 頂部
50 加圧ロール
51 加熱ロール
52 受けロール
60 回収容器
70 吸込み装置
80 第二の厚さ調整部材
90 第三の厚さ調整部材
C 隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に移動するシート体の上面に粉粒体を一定の厚さで供給する粉粒体の供給装置であって、
前記粉粒体を前記シート体に落下させる供給手段と、
前記供給手段より前記シート体の移動方向下流側に前記シート体の上面と隙間をもって配置され、前記供給手段側の端面を前記シート体の移動方向に対して斜め方向に配置させてなる厚さ調整部材と、
が設けられ、
前記厚さ調整部材によって前記粉粒体を前記シート体上に所定厚みに均すようにしたことを特徴とする粉粒体の供給装置。
【請求項2】
前記シート体上の所定厚みを超える粉粒体は、前記厚さ調整部材によって前記シート体の外方に落下させて回収するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の粉粒体の供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−204184(P2007−204184A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22884(P2006−22884)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】