説明

粒子の状態を分析するマイクロ流体装置、その作製方法、および分析方法

本発明は、生命体の状態を分析するデバイスを提供する。デバイスはベース基板、充填部材、および流路を備える。ベース基板の内部は、2つの対向側壁と1つの底壁によって区画形成される凹部を備える。充填部材の少なくとも一部分は、凹部を充填する。流路は、凹部を充填する充填部材の部分内に区画形成される。流路は、第1開口と第2開口を備える。第1開口は、充填部材の第1側壁に配置される。第2開口は、充填部材の第2側壁に配置される。第1側壁は、第2側壁に対して対向関係に配置される。第1側壁と第2側壁のうちの少なくとも一部分は、凹部を区画形成する対向側壁に対して、少なくとも実質的に垂直である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の状態を分析するマイクロ流体装置、その形成方法、およびその用途に関する。詳細には、たとえば生体細胞などの生命体の検出に使用し得るセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたる細胞膜における輸送活性に関する科学的研究は、パッチ・クランプ装置の使用を必要としていた。この技術は、バイアス電圧で膜電位を維持しながら、膜タンパク質を通るイオン電流を直接監視する。電流信号は、特に神経と筋肉生理学において重要なイオンチャネルの挙動に関する情報を含む。イオンチャネルの異常は、嚢胞性繊維症、癲癇、筋緊張症、および大理石骨症のような疾病に至る。そのような疾病の治療効果は通常、間接的アッセイを用いることによって標的イオンチャネルに対してスクリーニングされる。何故なら間接的アッセイは、別の優れたパッチ・クランプ法よりも高い処理能力を提供するからである。従ってたとえば放射性リガンド結合、イオンの蛍光測定、イオンの膜電位、または原子吸光測定などの他の技術は、標的としてイオンチャネルの薬剤開発における業界標準法として確立されている。それでもなお、これらのパッチ・クランプ装置を用いて行われる測定は、特に高い時間分解能、高い感度、および測定用構成の入手可能な選択肢のため、細胞挙動を監視する直接的および正確な方法を提供した。このため、パッチ・クランプ装置は不可欠なツールになったと共に、多くの領域において、特に医薬化合物のスクリーニングにおいて広範囲に用いられる。よって、医薬化合物のスクリーニングにおいて、細胞に及ぼす薬剤の作用を比較的正確に測定可能である。
【0003】
パッチ・クランプ試験において極めて微細なピペット(マイクロピペットとしても知られる)は、電気活性を記録すべく、細胞膜に対してしっかりと保持される。しかし計測器の装備における制限は、パッチ・クランプ装置の有効使用を妨げる幾つかの問題を示す。たとえば通常のパッチ・クランプ試験操作において人間オペレータは、光学顕微鏡下でピペットチップと生体細胞を視覚的に監視しながら、極微操作装置を用いる小さなガラスマイクロピペットを伴う精密な物理的技術を伴う操作を行う必要がある。マイクロピペットの操作と、マイクロピペット由来の測定の実施に関わる前記操作とは、特に何百もの薬剤を試験すべき場合、スクリーニング工程においてネックとなる熟練を要する繊細な操作である。従って処理能力を低下させる。
【0004】
従来式のパッチ・クランプ装置を実施する上で遭遇する別の主要な問題は、ガラスマイクロピペットと試料の間に安定なシールを得るのが困難なことである。理想的には安定なシールは、浴液(マイクロピペットの外側)に対してマイクロピペット液(マイクロピペットの内側)を完全に隔離し、試料とパッチ開口の間の界面におけるイオン漏洩を最小にする。特に約ギガオームの高い電気抵抗を得ることが可能なシールは、バックグランドのノイズ信号によって影響されることなく、パッチ試料を通るピコアンペア電流(イオン運動のため)を正確に記録可能である。
【0005】
在来型のマイクロピペット・パッチ・クランプ装置の欠点を克服するため、水平指向性の平面型パッチ・クランプが提案された。平面型パッチ・クランプ・チップは、絶縁隔壁を提供し、大部分は薄いダイアフラムであり、これによってパッチ開口が区画形成される。隔壁は、一側面の浴液を他方の側面のピペット液から分離し、その間パッチ開口によって適用される穏やかな吸引が試験すべき粒子を引付け、最終的に固定する。
【0006】
しかし、平面型パッチ・クランプは、幾つかの欠点を備える。たとえば平面型パッチ・クランプ装置のパッケージングは、デバイス基板の上方と底部の両方に位置する流体を隔
離するため多層整列とボンディングを必要とする。そのようなデバイスの製作は、特に配列が望まれる場合、困難を強いる。更に製作変更は、チップ基板全体が一般的にエッチング除去される必要があるので一層長くなり得る。パッチ開口は、直径が2ミクロン未満であるが、対応するダイアフラムを収容すべく普通1×1mm2のチップ領域がエッチングさ
れなければならない。この要件によって一層低密度の配列になる。
【0007】
別のパッチ・クランプ装置が、平面型パッチ・クランプにおいて遭遇する難点に応じて提案されてきた。この別のデバイスは、垂直壁内において、水平方向(lateral;横方向
)に延びるパッチ流路を配置することを備えることによって、パッチ開口は、壁の垂直面内に配置される。水平方向パッチ開口手段を提供することによって、流体構造は水平方向に配置可能であり、従って特に試験チャンバ配列を含めるべくデバイスが拡大される場合、流体分配が問題になる垂直組立構造に関連する難点を排除する。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0180965号明細書
【非特許文献1】ゼオ(Seo)ら、App.Phys.Lett.,2004年、第84巻、第11号、p.1973-1975
【非特許文献2】チェルクストラ(Tjerkstra)ら、第10回マイクロマシン技術に関する年次国際ワークショップ(Tenth Annual International Workshop on Micro Electro Mechanical Systems)、議事録、電気電子技術者協会(IEEE),1997年1月26-30日、p.147-152。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし水平方向パッチ開口の製作は、幾つかの問題を提示する。たとえば平面型パッチ開口に適用可能なマイクロマシニング技術は、平面リソグラフィに基づくので、外形が円形のパッチ開口を得る上で問題がある。この問題に対処すべく幾つかの試みがなされてきた。
【0009】
一体化された複合パッチ・クランプ配列チップが報告されている(たとえば非特許文献1参照)。チップは、吸引チャンバから細胞貯蔵器を分離する壁内に配置されたパッチ流路を備える水平方向細胞捕捉接合を活用する。前記吸引チャンバから試料液が引抜かれることによって、細胞をパッチ開口上に固定する吸引力を提供する。しかしチップは、ポリジメチルシロキサン・マイクロ成形から製作され、半円の開口しか生成されなかった。円形のパッチ開口を備えないパッチ・クランプ装置を用いて細胞をパッチ・クランプする1つの欠点は、ギガオームの範囲内のシール抵抗が得られないという点にある。従ってデバイスから取得された測定値は、実際の試験環境を正確にモデル化し得ない漏れ減算ソフトウエアの使用を必要とした。
【0010】
半導体製造技術を用いて製作されたマイクロピペットを備えるマイクロ流体装置が開示される(たとえば特許文献1参照)。パッチ・クランプ設定として使用に適したデバイスのマイクロピペットは、エッチングと蒸着(deposition;被着)の複合サイクルを用いることによって作り出される。生じた層を下層の別の層から最後に除去することによって、マイクロピペット様構造が生じる。
【0011】
非特許文献2は、乾式と湿式の異方性と等方性のシリコンエッチング工程の組合せの使用と、それに続く低圧化学蒸着(LPCVD)シーリングまたはガラスウエハ・ボンディングとを開示する。シリコンウエハ中の流路は、最初に真っ直ぐな凹部(異方性シリコンエッチング)を形成し、続いて円形凹部(等方性エッチング)を形成することによって実現される。ウエハの表面はその後、窒化ケイ素で覆われる。シーリング層は、窒化シリコン層上に蒸着される。トレンチ内の窒化シリコンは、続いて反応性イオンエッチング(RIE)を用いることによってエッチング除去し、後に流路を残す。
【0012】
本発明の目的は、先行技術デバイスの欠点の幾つかを克服するデバイスを提供することにある。具体的には、従来型のパッチ・クランプ適用に一層適したデバイスを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1特徴に従ってマイクロ流体装置が提供される。マイクロ流体装置は、内部に区画形成された凹部を備えるベース基板を含む。凹部は、2つ以上の対向側壁と1つの底壁によってベース基板において区画形成される。デバイスは更に、凹部を充填する少なくとも一部分を備える充填部材(filler member)を含む。デバイスは更に、流路を含む
。流路は、第1開口と第2開口、たとえば第1口と第2口を含む。第1開口は、充填部材の第1側壁に配置される。第2開口は、充填部材の第2側壁に配置される。更に第1側壁は、第2側壁に対して対向関係に配置される。第1側壁と第2側壁のうちの少なくとも一部分は、凹部を区画形成する一対の対向側壁に対して少なくとも実質的に垂直である。
【0014】
第2特徴において本発明は、マイクロ流体装置を提供する。マイクロ流体装置は、ベース基板を含む。ベース基板は、凹部を含む。凹部は、2つの対向側壁と1つの底壁を含む。マイクロ流体装置は更に、充填部材を含む。充填部材の一部分はベース基板の凹部内に含まれる。マイクロ流体装置は更に、凹部に含まれる充填部材の部分において区画形成される流路を含む。流路は、第1開口と第2開口を含む。第1開口は、第1側壁に配置される。第2開口は、第2側壁に配置される。更に第1側壁は、第2側壁に対して対向関係に配置される。第1側壁と第2側壁のうちの少なくとも一部分は、凹部を区画形成する一対の対向側壁に対して少なくとも実質的に垂直である。流路は、周縁壁によって区画形成される。流路の周縁壁は、第1開口と隣接する一部分を有する。この部分は、周縁壁のサイズが幅に関して第1開口に向かって減少するように長さ方向に延びる円錐形である。幾つかの実施形態に従ってこの部分は、先端を区画形成する。
【0015】
第3特徴において本発明は更に、別のマイクロ流体装置を提供する。マイクロ流体装置は、第1流体チャンバと第2流体チャンバを含む。第1流体チャンバは、試験すべき粒子を含有させるためである。第2流体チャンバは、区画部材を用いることによって第1流体チャンバから流体連通不能に区画される。区画部材は、上記のような装置に相当する。前記デバイスは、内部に区画形成される凹部を備えるベース基板を含む。前記デバイスは更に、一部分が凹部を充填する充填部材を含む。区画部材は更に、凹部を充填する充填部材の部分において区画形成される流路を含む。流路は、第1開口と第2開口を含む。第1開口は、充填部材の第1側壁に配置される。第2開口は、充填部材の第2側壁に配置される。第1側壁は、第2側壁に対して対向関係に配置される。第1側壁と第2側壁のうちの少なくとも一部分は、凹部を区画形成する一対の対向側壁に対して少なくとも実質的に垂直である。
【0016】
第4特徴に従って本発明は更に、別のマイクロ流体装置を提供する。マイクロ流体装置は、第1流体チャンバと第2流体チャンバを含む。第1流体チャンバは、試験すべき粒子を含めるためである。第2流体チャンバは、区画部材を用いることによって第1流体チャンバから流体連通不能に区画される。区画部材は、上記のようなデバイスに相当する。前記デバイスは、内部に区画形成される凹部を備えるベース基板を含む。区画部材は、更に、一部分が凹部を充填する充填部材を含む。前記デバイスは更に、凹部を充填する充填部材の部分において区画形成される流路を含む。流路は、第1開口と第2開口を含む。第1開口は、充填部材の第1側壁に配置される。第2開口は、充填部材の第2側壁に配置される。
【0017】
第1側壁は、第2側壁に対して対向関係に配置される。流路は、周縁壁によって区画形
成される。流路の周縁壁は、第1開口に隣接する一部分を備える。この部分は、周縁壁のサイズが幅に関して第1開口に向かって減少するように長さ方向に延びる円錐形である。幾つかの実施形態に従ってこの部分は、先端を区画形成する。
【0018】
第5特徴において本発明は、第1特徴〜第4特徴のうちの1つに従う本発明のデバイスを形成する方法に関する。方法は、デバイスを形成すべくベース基板を提供することを含む。凹部は、基板の表面に形成される。更に凹部は、充填材で部分的に充填される。充填材は、それを変形させる条件を受ける。従って流路が充填部材内に形成される。
【0019】
この方法は、具体的には、ベース基板の少なくとも一側面まで広がる開口凹部(オープンエンド凹部)内に流路を形成する実施形態を可能にする。そのような実施形態において形成される流路は、一部分が凹部の開口側面(オープンエンド側面)に隣接する周縁壁を備えることが可能である。この部分は、周縁壁のサイズが幅に関して凹部のオープンエンド側面に向かって減少するように長さ方向に延びる円錐形である。
【0020】
本発明の第6特徴に従って、第1特徴から第4特徴のうちの1つに従う本発明のデバイスを形成する更に別の方法が提供される。前記方法は、ベース基板を提供することを含む。方法は更に、ベース基板の表面に第1凹部を形成することを含む。方法は更に、ベース基板の表面に第2凹部を形成することを含む。このベース基板面は、第1凹部が形成される表面と異なる。方法は更に、第1凹部を充填材によって充填することを含む。更に方法は、充填材にそれを変形させる条件を受けさせることを含む。従って流路が第1凹部を充填する充填材の部分において形成される。
【0021】
この方法は、具体的には凹部がベース基板の少なくとも一側面まで広がるようにオープンエンドである凹部に流路を形成する実施形態を可能にする。そのような実施形態において形成された流路は、一部分が凹部のオープンエンド側面に隣接する周縁壁を備えることが可能である。この部分は、周縁壁のサイズが幅に関して凹部のオープンエンド側面に向かって減少するように長さ方向に延びる円錐形である。
【0022】
第7特徴において本発明は、第1特徴から第4特徴のうちの1つに従う本発明のデバイスを形成する方法に関する。前記方法は、ベース基板を提供することを含む。更に方法は、ベース基板の表面に凹部を形成することを含む。凹部は、ベース基板の少なくとも一側面内に広がるようにオープンエンドであるように形成される。方法は更に、ベース基板を充填材によって覆うことを含む。方法は更に、充填材にそれを変形させる条件を受けさせることを含む。従って流路が第2凹部を充填する充填材の部分において形成される。
【0023】
この方法は、具体的には凹部がベース基板の少なくとも一側面まで広がるようにオープンエンドである凹部に流路を形成する実施形態を可能にする。そのような実施形態において形成された流路は、一部分が凹部のオープンエンド側面に隣接する周縁壁を備えることが可能である。この部分は、周縁壁のサイズが幅に関して凹部のオープンエンド側面に向かって減少するように長さ方向に延びる円錐形である。
【0024】
本発明の第8特徴に従って生命体の状態を分析する方法が提供される。前記方法は、本発明の第4特徴に従うデバイスの第1流体チャンバ内に生命体を導入することを含む。生命体の第1状態に関連する第1(基準)電気信号が最初に得られる。次に生命体は、状態を変化させ得ると考えられる条件に暴露される。前記条件に暴露後、生命体の状態に関連する第2電気信号が取得され、次にたとえば第1電気信号に対して分析される。
【0025】
注目すべきことに本発明は、外形が少なくとも実質的に楕円形か少なくとも実質的に円形の水平方向方パッチ・クランプ開口とパッチ流路のうちの少なくとも一方を提供するの
に適する。実施形態によっては、各々の外形は、完全に円形である。パッチ・クランプ装置における丸いか円形の開口の利点は、試料生命体のパッチ・クランプがパッチ開口に作用する吸引によって働く場合、高いシール電気抵抗を獲得する可能性である。丸い開口は、約ギガオームのシール抵抗を提供できることが知られている。従って背景のノイズ信号を減らすので一層正確なパッチ・クランプ測定値を取得できるようにする。更に本発明が数ミクロンからミクロン以下のレベル範囲の寸法の開口を製作する能力を提供するので、デバイスは、たとえば細菌、ウイルス、タンパク質およびDNA分子などの細胞以外の多くの種類の生体試料を伴う適用で使用可能である。デバイス製作の観点から狭いエッチングだけが必要とされ、基板を貫通してエッチングしなくてもよいので、平面型パッチ・クランプ法と違って関連する段階が少数のため、簡単な変更になる。従って製作における時間を節約する。当業者には更に、本発明のデバイスが、キャッピング層を用いることによって、マイクロ流体の入口流路と出口流路およびポート、更に大規模平行試験に適した高密度配列を達成する拡張性を含むデバイスの便利なパッケージングを可能にすることは明白であろう。何故なら流路を含むデバイスの壁部分は、小スペースを取るべく形成可能であり、これらの壁部分に形成される流路の外形が、既存の平面型パッチ・クランプにおいて用いられるダイアフラムと違ってリソグラフィによって区画形成され得るからである。
【0026】
本発明は、数ミリメータから約1ミクロン未満までの範囲内のサイズを有する任意の種類の小粒子に適用可能である。これに関連して用語「粒子」は、無機粒子(たとえばシリカマイクロスフェアとガラスビーズなど)と有機粒子の両方を含む。用語「粒子」は更に、生命体を含み、これに関連して組織断片、精子、臓器または組織の個々の細胞および細胞内の細胞下構造;たとえば原生動物などの単一細胞有機体、細菌細胞とウイルスおよび複合細胞有機体含めて生物材料と呼ばれる。用語「生命体」は更に、たとえば「生物分子体」または「試料生命体」などの他の同等用語と同じ意味で用いられる。本発明を適用できる細胞は総じて、電圧感受性の任意の種類の細胞または、電位変化を受け得る細胞を包含する。前記細胞は、真核性細胞または原核性細胞の両方であり得る。適切な真核性細胞例には、植物細胞と動物細胞の両方が含まれる。適切な動物細胞例には、限定されないが、たとえば星状細胞、乏突起膠細胞、シュワン細胞などの神経系の細胞と、たとえばコリン作用性神経細胞、アドレナリン作用性神経細胞およびペプチド作用性神経細胞などの自律神経ニューロン細胞と、たとえば嗅神経細胞、聴細胞、光受容体などの感覚変換細胞と、たとえばソマトトロピン産生細胞、プロラクチン産生細胞、脳下垂体前葉由来の性腺刺激ホルモン産生細胞と副腎皮質刺激ホルモン分泌細胞、甲状腺細胞および副腎細胞などのホルモン分泌細胞と、たとえば乳腺細胞、涙腺細胞、耳導線細胞、エクリン汗腺細胞および皮脂腺細胞などの内分泌上皮細胞と、骨芽細胞、繊維芽細胞、分割球、肝細胞、神経細胞、卵母細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、たとえば赤血球、リンパ球か単核細胞などの血球、たとえば筋細胞などの筋肉細胞、たとえば胚幹細胞などの幹細胞を含む他の細胞とが含まれる。
【0027】
哺乳類細胞は、薬剤のスクリーニングにおいて当該分野においてよく用いられる例示的細胞例である。他の真核性細胞例には、酵母細胞と原虫が含まれる。植物細胞例には、分裂組織細胞、柔細胞、厚角細胞と厚壁細胞が含まれる。本発明において適用可能な原核性細胞には、たとえば古細菌細胞と細菌細胞が含まれる。用語「生命体」は更に、たとえば細胞小器官、中心体、細胞骨格構造、細胞膜、細胞質、細胞壁と断片、派生物と混合物のような細胞下(細胞内)構造体などの他の種類の生物材料を包含する。細胞小器官例には、限定されないが、核心(核小体を含めて)、小胞体、たとえばエンドソームかファゴソームなどの小胞、ゴルジ体、ミトコンドリア、リソソーム、ペルオキシソーム、液胞、葉緑体と断片、派生物および混合物が含まれる。
【0028】
本発明に従うマイクロ流体装置は、内部に区画形成される凹部を備えるベース基板を含む。凹部は、ベース基板内に含まれる。凹部は、2つ以上の対向側壁と1つの底壁によっ
て区画形成される。所望の構成に依存して凹部は、ベース基板の全長/全幅(すなわち一方の縁または、側面から別の縁または側面)におよび得る(たとえば水平方向、対角線上などに)。凹部は更に、ベース基板の1つの縁付近に、あるいは必要であればベース基板の中心付近に位置し得る。そのような凹部の位置は、凹部を含むベース基板の壁部分、一般的には表面に他の物質の蒸着を可能にする。たとえば凹部がベース基板の全面または全長(たとえば末端から末端)に及ぶことが望まれる特定の実施形態において、凹部は、一般的に対向関係にある一対の側壁によって限られる。実施形態によっては凹部の末端は、水平方向開口、たとえば水平方向口である。幾つかの実施形態において凹部は、ベース基板の縁に一端を含み、前記末端は開口を含み得るが、別の末端は、縁と異なるベース基板内の位置で終結する(たとえば中央部分で)。そのような実施形態において凹部は、一対の対向側壁、1つの底壁と、2つの対向側壁を接続する更に別の側壁とによって限られる。前記付加的側壁に対して対向関係に配置され得る凹部の各々の他端は、開口を含むか、開口を区画形成する。実施形態によっては凹部の末端は、ベース基板内に完全に含められる。そのような実施形態において凹部は、二対の対向側壁と1つの底壁を含み得る。幾つかの実施形態において凹部は、2つより多い末端を含む。そのような実施形態において凹部は、一般的に分枝を含む。
【0029】
凹部は、たとえば立方形(たとえば長方形か正方形の)であるなど、任意の適切な形状を備え得る。その場合において凹部は、トレンチかまたは半球か任意の他の適当な異形の形をしている。形状にかかわらず、凹部は、幾つかの実施形態において少なくとも約5ミクロンの深さを備えるか、大きな開口径を有する幾つかの実施形態か特定の種類の充填材(下記参照)では、約50ミクロンを含む少なくとも約20ミクロンの深さを備え、たとえば約1ミクロン〜約50ミクロンの範囲内、約2ミクロン〜約20ミクロンの範囲内、または約6ミクロン〜8ミクロンの範囲内などである。ベース基板において半球形の凹部が形成される場合、凹部は、連続壁によって区画形成されることに留意すべきである。この場合において凹部の半球壁の何れか2つの直接向かい合う末端部分は、本発明に従う凹部の対向側壁であると考えられ得る。同じことが異形凹部に適用する。
【0030】
ベース基板は、1つの周縁壁または複数の側壁を備え得る。前記ベース基板は更に、1つの底壁と1つの上壁も備え得る。本発明のマイクロ流体装置は更に、充填部材を含む。充填部材は、これらの壁の何れかの任意の領域を覆い得る。一般的に充填部材は、1つの連続体を形成する。例示的実施例としてベース基板は、複数の側壁と1つの上壁を含み得る。凹部は、上面壁に含まれ得る。そのような実施形態のうちの幾つかにおいて充填部材は、上壁全体を含めて上壁の一部分を覆う。従って充填部材は、ベース基板の任意の表面部分または複数の表面部分を覆い得る。一実施形態において充填部材は、ベース基板の全面を区画形成する。
【0031】
充填部材は、そのうちの少なくとも一部分がベース基板に存在する凹部を充填するように配置される。実施形態によっては、充填部材は、凹部をただ充填するだけである。他の実施形態において充填部材の一部分のみが凹部に含まれる。従ってそのような実施形態において充填部材は、ベース基板の表面の一部分を覆うと共に、凹部内に連続して延びる。実施形態によっては、凹部を充填する充填部材の部分は、凹部をある程度まで単に充填するだけであるが、凹部の残る部分は、たとえばガスなどの流体で満たされる。
【0032】
凹部に含まれる充填部材の部分は、内部に区画形成される一または複数の表面下流路を備える。流路(複数の流路)は、第1開口と第2開口で集結し、第1開口は、たとえば入口として働き、第2開口は、出口として働き得る。第1開口と第2開口は、共に上記にようにベース基板の壁に含まれる。例示的実施例として第1開口と第2開口は、ベース基板の2つの異なる側壁に含まれ得る。別の例示的実施例として第1開口と第2開口は、ベース基板の周縁壁の2つの異なる壁部分に含まれ得る。従って第1開口と第2開口は、充填
部材の2つの側壁に含められ、前記側壁は、互いに対向関係に配置される。用語「対向関係」は、たとえば流路軸など凹部と流路のうちの少なくとも1つを通って流れ得る物質の方向を指す。従って第1開口と第2開口が同じ方を向かない限り、充填部材の2つの側壁は、互いに対して任意の角度で配置され得る。第1側壁と第2側壁は、たとえば互いに対して0°よりも大きく90°未満の範囲内の角度で傾斜され得る。
【0033】
幾つかの実施形態において第1側壁と第2側壁は、凹部を区画形成する一対の対向側壁に対して少なくとも実質的に垂直(用語「直交」と同じ意味で用いられる)であるべく方向付けられる。上記のように流路の水平方向開口は、充填部材の側壁内に含められる。例示的実施例としてトレンチ型の凹部は、立方形ベース基板の上壁内に含められ得る。そのような実施形態において充填部材の側壁に形成される少なくとも第1開口か、同様に第2開口の方位は、各々の開口面が少なくとも実質的に垂直であるようになっており、従って充填部材の側壁に水平方向開口を得る。用語「実質的に垂直な」によって、充填部材の対向側壁の面間の角度が凹部を区画形成する対向側壁面と必ずしも90°で配置され得ないことを意味する。開口の一部が水平にアクセス可能な限り、角度は、90°から逸れ得る。
【0034】
幾つかの実施形態において流路は、周縁壁によって区画形成される。一実施形態において流路の少なくとも一部分におけるこの周縁壁の断面は、少なくとも実質的に円形または、少なくとも実質的に楕円形の外形を有する。流路の断面に適用されるような用語「少なくとも実質的に円形」は、開口で360°の角度範囲にわたる任意の形態を含むので、完全に円形であり得るか、たとえば楕円形か卵形であり得ることを意味する。実質的に円形開口を得ることが望ましくなり得るので、下記のような流体チャンバは、流体チャンバ内に広がる円形開口が得られるように、流路のこの円形断面部分と一致すべく形成可能である。更に幾つかの実施形態において流路開口のうちの少なくとも1つは、少なくとも実質的に円形か楕円形の領域を区画形成する。少なくとも第1(入口)開口は、たとえば少なくとも実質的に円形か楕円形であり得る。他の実施形態において第1開口と第2(たとえば出口)開口は、共に少なくとも実質的に円形か楕円形であり得る。実施形態によっては第1開口が楕円形であるか、少なくとも実質的に楕円形であるのに対して、第2開口は円形か少なくとも実質的に円形である。幾つかの実施形態において第1開口と第2開口は円形であるか、少なくとも実質的に円形である。
【0035】
デバイスが意図される適用に依存して第1開口と第2開口の寸法は、変動され得る。たとえばパッチ・クランプ適用では、開口は、吸引力を適用することによって試料粒子か生命体の表面に有効なシールを得るべく十分小さくなるように構成され得る。試料生命体が直径約100ミクロンのヒト卵細胞である場合、パッチ・クランプを実行すべく用いられる開口は、たとえば約1ミクロン〜約3ミクロンの範囲内、または約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲内の直径を備えることが可能である。たとえば通常直径が約5ミクロンの赤血球などの比較的小さな細胞では、開口は必要であれば約0.1ミクロン〜約1ミクロンの一層小さな直径を具備可能である。第1開口と第2開口の直径は、同じか異なり得る。パッチ・クランプ適用において両開口が円形である必要はないが、入口開口だけは、有効なパッチ・クランプを達成するために円形でなければならない。従って出口として働く開口、たとえば第2開口は、パッチ・クランピングに用いられないので、任意の他の形状をとり得る。1つの開口だけが少なくとも実質的に円形か楕円形である場合、この開口は、たとえば第1流体チャンバなどの試料粒子を収容するため使用されるべき流体チャンバの方を向くように配置され得る(下記参照)。第1開口と対応する第2開口の両方が少なくとも実質的に円形か楕円形である実施形態において、何れかの開口が試料生命体をパッチ・クランプする入口として働き得る。
【0036】
第1開口を第2開口に接続する流路の外形は、たとえば円形、半円形、卵形、V字かU
字形、三角形、直方形、正方形、五角形、六角形、七角形、八角形か任意の他の多角形の任意の適切な断面形であり得る。実施形態によっては、流路の外形は、流路の全長にわたって同じ形状である。他の実施形態において流路の外形は、たとえば徐々に、または段階的に形状を変化させる。第1開口と第2開口は、同様に任意の形状であり得る領域を区画形成する。たとえば第1開口と第2開口などの流路の任意の開口は、たとえば円形、半円形、卵形、V字かU字形、三角形、直方形、正方形か任意の多角形の形状を備える領域を区画形成する。幾つかの実施形態において流路の第1開口と第2開口のうちの少なくとも1つは、少なくとも実質的に円形か少なくとも実質的に楕円形の領域を区画形成する。実施形態によっては、流路は、第1開口と第2開口のうちの1つか両方と同じ断面形を有する。幾つかの実施形態において第1開口か第2開口によって区画形成される領域は、流路の断面の外形と類似の寸法を備える。幾つかの実施形態において第1開口か第2開口によって区画形成される領域は、幅に関して、約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲内で選択される最大サイズからなる。実施形態によっては、第1開口と第2開口の両方によって区画形成される領域の幅の最大値は、約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲内にある。
【0037】
すでに上記したように、幾つかの実施形態において流路は、長さ方向に延びる変動する幅に関して最大サイズを備える。流路幅に関してそれぞれの最大サイズの変化は、流路中の何処においても設計され得ると共に、一または複数の段階での進行性変化または、連続変化を含み得る。そのような変化には、限定されないが、狭窄、拡張、突起または湾曲が含まれる。実施形態によっては、最大流路サイズは、幅に関して開口のすぐ近くで変化する。流路は、たとえば周縁壁によって区画形成され得る。そのような流路の周縁壁は、たとえば第1開口、第2開口または第1と第2両開口などの開口に隣接する一部分を備え得る。周縁壁のこの部分は、周縁壁のサイズが幅に関して各々の開口に向かって減少するように長さ方向に延びる円錐形であり得る。注目すべきことにそのような流路の周縁壁の一部分は、狭い口と広がる本体を備えるプル型従来式パッチ・クランプ・ピペットと似ている。そのような円錐形流路構成は、一般的に、幅に関して一定サイズの流路と比較したとき、「アクセス抵抗」を減らす。当業者には、そのような構成が低ノイズ記録において重要であることは明らかであろう。従って本発明のデバイスをパッチ・クランプに適用すべく各々の流路設計を選択することが望まれ得る。
【0038】
幾つかの実施形態において流路は、充填部材内、すなわちベース基板の水平面内に水平方向に配置される。これは、流路の部分が充填部材内を上方または下方に傾斜するように配置される可能性をなくさない。実施形態によっては流路は、幅に関する最大サイズ、たとえば約0.5ミクロン〜約10ミクロンなどの約0.5ミクロン〜約20ミクロンの直径を備える。幾つかの実施形態において流路は、幅に関してたとえば約5ミクロン〜約10ミクロンなど、約5ミクロン〜約20ミクロンの最大サイズを備える。流路の縦長か軸長は、凹部の長さか幅と整列するように方向付けられ得る。流路は、任意の所望の長さからなり得る。幾つかの実施形態において流路の長さは、たとえば約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲内、または約1ミクロン〜約50ミクロンの範囲内、または約1ミクロン〜約250ミクロンの範囲内にあり得る。
【0039】
ベース基板は、任意の所望材料を含み得るか、任意の所望材料からなり得る。実施例としてベース基板は、金属、半金属、セラミックス、金属酸化物、半金属酸化物または酸化物セラミックスを含み得る。適切な半金属例には、限定されないがシリコン、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモン、およびこれらの複合体が含まれる。適切な金属例には、限定されないが鉄(たとえば鋼鉄)、アルミニウム、金、銀、クロム、スズ、銅、チタン、亜鉛、アルミニウム、鉛、およびこれらの複合体が含まれる。これらの任意の半金属と金属のそれぞれの酸化物は、それぞれ半金属酸化物か金属酸化物として用いられ得る。例示的実施例としてベース基板は、石英かガラスからなり得る。本明細書において用いられるよう
な用語「ガラス」は、広く無結晶性固体材料を指す。熱力学に関する無結晶性固体材料は、サブクール液体に相当する。従ってガラスは、物質を溶融し、その後融点以下に急速冷却することによって得られる。そうすることによって結晶構造は形成されない。用語「ガラス」は、具体的には二酸化ケイ素、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、二酸化マンガンおよび固体化した金属酸化物の群から選択される溶融無機材料を指す。セラミックス例には限定されないが、ケイ酸物セラミックス、酸化物セラミックス、炭化物セラミックスまたは窒化物セラミックスが含まれる。
【0040】
幾つかの実施形態において区画部材として働き得るベース基板(下記参照)は、任意の様々なシリコン、ゲルマニウム、二酸化ケイ素(たとえば石英かガラスなど)、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、金属、およびこれらの複合体からなる群から選択される材料を含み得る。実施形態によってはベース基板は、限定されないがチョクラルスキー(CZ)ウエハ、浮遊帯(FZ)ウエハ、シリコンエピタキシャル(SE)ウエハとシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウエハを含む、シリコン鋳造工場から得られる従来型のシリコンウエハ/チップから生じる。幾つかの実施形態において充填部材は、たとえば絶縁体などの誘電体を含む。適切な誘電体例には、限定されないが、スピン・オン・ガラス(SOG)、リン・ケイ酸ガラス、ホウ素・リン・ケイ酸ガラス、ポリシリコン、炭化ケイ素、シリコンオキシカーバイド、窒化ケイ素、およびこれらの複合体が含まれる。
【0041】
上記に示したようにベース基板は、周縁壁か側壁を含み得る(上記参照)。幾つかの実施形態においてそのようなベース基板の壁の少なくとも一部分は、第1側壁によって区画形成される平面に少なくとも実質的に平行である。実施形態によっては、ベース基板の壁の各々の部分は、第1側壁の少なくとも一部分を含む。幾つかの実施形態においてベース基板は、たとえば2つの対向側面上に2つの側壁を含む。これらの2つの側壁の第1側壁の少なくとも一部分は、第1側壁によって区画形成される平面に少なくとも実質的に平行であり得る。これらの2つ側壁の第2側壁の少なくとも一部分は、第2側壁によって区画形成される平面に少なくとも実質的に平行であり得る。そのような2つの側壁を備える実施形態においてベース基板の第2側壁の一部分は、第2側壁の少なくとも一部分を含む。
【0042】
幾つかの実施形態において第1側壁は、ベース基板の壁部分を区画形成する。ベース基板の各々の壁部分は、たとえば周縁壁か側壁であり得る。実施形態によっては第2側壁は更に、ベース基板の壁部分を区画形成する。幾つかの実施形態において第1側壁によって区画形成される壁部分と第2側壁によって区画形成される壁部分は、ベース基板の異なる側壁に含められる。
【0043】
ベース基板の各々の壁部分は、任意の表面トポロジーからなり得る。前記壁部分は、たとえば湾曲壁、段付き壁か直線壁であり得る。幾つかの実施形態において前記壁部分は、たとえば少なくとも実質的に平坦か少なくとも実質的に一定角度で曲がった均一トポロジーからなり得る。そのような壁部分は更に、異なる表面トポロジーの領域を含み得る。例示的実施例として流路開口に隣接する領域は、側壁の残る表面と異なる三次元構造であり得る。幾つかの実施形態において各々の表面は、側壁の表面によって区画形成される平面に垂直な平面においてアーチ状である。前記表面は、たとえば凸面か凹面を区画形成し得る。各々の凸面か凹面の中心において流路開口が区画形成され得る(たとえば図7Cを参照)。
【0044】
幾つかの実施形態においてベース基板の壁の各々の部分は、ベース基板の水平凹部に含められる。実施形態によっては、充填部材の側壁によって区画形成されるベース基板の壁部分は、水平凹部を含む。そのような実施形態において水平凹部は、流路の第1開口か第2開口を含み得る。各々の水平凹部は、任意の所望深さであり得る。水平凹部の深さは、
たとえば約0.5ミクロン以上で、約15ミクロン以下、約50ミクロン以下、または約250ミクロン以下の範囲内にあり得る。たとえば水平凹部の深さは、約0ミクロンよりも大きく約25ミクロン以下の範囲内、または約0ミクロンよりも大きく約500ミクロン以下の範囲内、または約0ミクロンよりも大きく約250ミクロンあるいは約100ミクロン以下の範囲内にあり得る。
【0045】
典型的な実施形態においてベース基板の水平凹部は、充填部材の一部分を含む凹部に対して傾斜される。幾つかの実施形態において水平凹部は、少なくとも一部が充填部材によって充填される凹部に対して少なくとも実質的に垂直に配置される。例示的実施例としてベース基板は、1つの側壁と1つの上壁を備え得る。充填部材のある部分を少なくともある程度まで含む凹部は、たとえばベース基板の上壁に含められ得る。水平凹部は、ベース基板の側壁に含まれ得る。
【0046】
水平凹部は、周縁壁と入口(たとえば開口)を含み得る。従って流体チャンバを区画形成する。更に水平凹部は、底面も含み得る。幾つかの実施形態においてベース基板は、上記のように2つ以上の水平凹部を含み得る。これらの実施形態の幾つかにおいて1つの水平凹部は、第1開口を含むことが可能であり、別の水平凹部は、流路の第2開口を含み得る。ベース基板は、2つの少なくとも実質的に対向側面上にそのような2つの水平凹部、つまり第1水平凹部と第2水平凹部を含み得る。第1水平凹部は、第1側壁の少なくとも一部分を含むことが可能であり、第2水平凹部は、第2側壁の少なくとも一部分を含み得る。そのような実施形態において第1水平凹部は、たとえば第1流体チャンバを区画形成可能であり、第2水平凹部は、第2流体チャンバを区画形成し得る。第1流体チャンバは、流路を通じて第2流体チャンバに流体連通し得る。
【0047】
幾つかの実施形態において本発明に従うマイクロ流体装置は、複数の流路を含む。実施例としてベース基板の凹部を充填する充填部材の部分は、複数の流路を含み得る。各々のこれらの流路は、第1開口と第2開口を含み得る。第1開口は、充填部材の第1側壁部分に含められることが可能であり、第2開口は、充填部材の第2側壁部分に含められ得る。幾つかの実施形態において第1開口と第2開口のうちの少なくとも一方は、上記のようにマイクロ流体装置の側壁に含められ得る。実施形態によっては、複数の流路は、共通の凹部に含められる。幾つかの実施形態において複数流路のうちの幾つかまたは全ての流路は、それらの幅に関して同じ最大サイズを有する。実施形態によっては複数流路のうちの幾つかまたは、全ての流路は、それらの幅に関して同じ最大サイズの領域を区画形成する開口を備える。幾つかの実施形態において複数の流路のうちの一または複数の流路は、他の各々の流路よりそれらの幅に関して大きな最大サイズを有する。各々のマイクロ流体装置がパッチ・クランプ法に用いられる幾つかの実施形態において、そのような一層広い流路は、下記のように補助流路として使用され得る。
【0048】
幾つかの実施形態においてマイクロ流体装置は、一または複数の付加的補助流路を含む。一般的にそのような補助流路は、充填部材においてよりはむしろ、ベース基板において存在する。各々の補助流路は、第1開口と第2開口を含む。第1開口は、総じて上記のような流路、すなわち凹部を充填する充填部材の部分に存在する流路の第1開口と同じ側面のマイクロ流体装置に配置される。実施形態によっては、補助流路は、上記のような(充填部材に存在する)流路よりも幅に関して大きな最大サイズを備える。各々のマイクロ流体装置がパッチ・クランピングに用いられる幾つかの実施形態において、そのような補助流路は、上記のように(下記も参照)流路開口に生命体を配置する上で役立ち得る。そのような実施形態の実施例は、図14と図15において示す。
【0049】
幾つかの実施形態において補助流路の第1開口は、ベース基板の側壁部分に配置される。この側壁部分は、充填部材に存在する流路の第1開口を含み得る。補助流路の第1開口
は、ベース基板の側壁部分の凹部に配置され得る。そのような水平凹部は更に、充填部材に存在する流路の第1開口を含み得る。補助流路の第1開口は、幾つかの実施形態において充填部材に存在する流路の第1開口のすぐ近くに位置し得る。2つの流路の2つの開口は、たとえば互いに並び得る。
【0050】
幾つかの実施形態においてマイクロ流体装置は、複数の凹部と複数の流路を含む。そのような実施形態において充填部材は、複数の凹部の各々の凹部のうちの少なくとも一部分を充填するように配置される対応部分を提供し得る。複数の流路は、充填部材の各々の対応部分に含められるように配置され得る。実施形態によっては、幾つかの流路は、各々の1つの凹部に含められる。幾つかの実施形態において同数の流路が各々の凹部に含められる。例示的実施例として単一流路は、各々の凹部に含められ得る。これらの実施形態のうちの1つにおいて複数の流路のうちの各々の流路は、第1開口と第2開口を含む。第1開口は、充填部材の第1側壁部分に含められ得るが、第2開口は、充填部材の第2側壁部分に含められ得る。種々の凹部のうちの少なくとも一部分を充填する充填部材の各々の部分の側壁は、互いに対して同じか異なる整列と方位を備え得る。充填部材の異なる部分のこれらの側壁は、たとえば互いに対して傾斜され得るか、場合によっては、互いに平行であり得る異なる平面を区画形成し得る。複数の凹部に含まれる流路開口は、同様に互いに対して傾斜が付けられるか、異なる平面に配置される領域を区画形成し得る。一実施形態において各々の流路開口を含む充填部材の全第1側壁部分は、共通平面を区画形成できるように整列される。
【0051】
更に複数の凹部の様々な凹部を充填する充填部材の側壁部分は、共通凹部か幾つかの凹部に位置するように配置され得る。一実施形態において充填部材の各々の水平方向壁部分のうちの各々1つは、別個の凹部に含まれる。実施形態によっては充填部材の複数の第1側壁部分は、ベース基板の壁部分を区画形成する。ベース基板のこの前記壁部分は、ベース基板の水平凹部に含められ得る(同様に上記を参照)。幾つかの実施形態において充填部材の複数の第1側壁部分は、ベース基板の複数の壁部分を区画形成する。複数の壁部分のうちの各々の壁部分は、ベース基板の水平凹部に含められ得る。従ってベース基板の複数の水平凹部を区画形成する。
【0052】
水平方向パッチ・クランプ装置に関して見ると本発明のマイクロ流体装置の前述実施形態は、水平方向開口を備える側部流路を備えると共に水平方向パッチ・クランプ装置において2つの流体チャンバを区画すべく用いられる区画部材(以後、用語「分配壁」と同じ意味で用いられる)を対象とする。この区画部材が最初に製作され、その後水平方向パッチ・クランプ装置を得るべく別個の流体チャンバ部材内に組立てられ得る。他の実施形態において本発明のデバイスは、区画部材によって第2流体チャンバから区画される第1流体チャンバを含み得る。前記第1流体チャンバは、充填部材において存在する流路を通じて第2流体チャンバに流体連通する。たとえば第1流体チャンバと第2流体チャンバは、ベース基板において流路のそれぞれ入口開口と出口開口に一体となって区画形成され得る。このようにして充填部材において流路を通じて接続される2つの流体チャンバを備える水平方向パッチ・クランプが実現される。
【0053】
幾つかの実施形態において第1流体チャンバと第2流体チャンバの両チャンバは、形状、寸法および/または外形が同様(同一)であり得る。また第1流体チャンバと第2流体チャンバは、形状、寸法および/または外形が異なり得る。試料生命体を含有させるべく用いられる第1流体チャンバは、他の流体流路か供給チャンバに流体連通可能に接続される閉鎖/隔離チャンバか開放チャンバであり得る。一実施形態において第1流体チャンバは、試料を供給する供給源に流体連通可能に接続される流体流路に流体連通可能に接続される。第2流体チャンバは、第1流体チャンバから流体を受容すると共に試料を廃棄する排液流路に流体連通可能に接続され得る。
【0054】
電極は、固定化粒子か生命体の上流点と下流点の間で電気測定を行う目的で第1流体チャンバと第2流体チャンバに配置され得る。取得可能な電気測定には、たとえば電流(固定化粒子、たとえば卵母細胞の細胞壁を通過するイオン流による)および電位差が含まれる。パッチ・クランプ法の適用に関して固定化粒子の上流側に配置される電極は、基準電極と呼ばれ、固定化粒子の下流側に配置される電極は、検出電極と呼ばれ得る。1つ以上の基準電極と1つの検出電極が流路内、たとえば固定化粒子の近くに配置可能であり、検出目的か、固定化粒子を刺激/感電死または移動させるためか、流体チャンバにおける条件を変化させるためかの何れかのために機能する。電気刺激に対する試料生命体反応の観察が望まれるなら、更に別の電極を区画部材上に、たとえば試料生命体に対して整然と配置可能である。従って試料生命体を電気的に刺激する。デバイス内に一体化されるか外部測定システムによって提供されるかの何れかの補助回路システム(たとえば電気物理学的測定回路システム)は、これらの電極に接続され得る。
【0055】
電極が本発明のデバイス内に組み込まれない場合、そのような電極は、外部測定システムによって提供されると共にアクセスポートを通じて流体チャンバ内に挿入されるべく配置され得る。デバイスは更に、他の目的、特に粒子をろ過する目的を果たし得る。ろ過は、動電学的捕捉に基づく試料粒子を含む溶液の補助濃縮など、様々な目的に役立つことが可能である(ワン(Wang)ら、Anal.Chem.(2005)vol.77,p.4293-4299を参照する)。ろ過適用の他の実施例には、たとえばDNA篩いかウイルス試料の単離が含まれる。篩うべき粒子を含む試料を第1流体チャンバ内に設置することによってろ過を行うことが可能である。充填部材に存在する流路において吸引力を適用することによって、流路の最狭断面の直径よりも小さな粒子が流路内に入り、第2流体チャンバ内に排出されることになる。この直径より大きな粒子は捕捉され、第1流体チャンバ内に残る。
【0056】
本発明のデバイスは、大量の同じ試料か異なる試料を同時に処理すべく規模を拡大可能である。このためにデバイスは、充填部材に区画形成される複数の流路を含み得る。前記流路は、全て単一凹部を充填する充填部材の部分において配置される。別の実施形態においてベース基板に区画形成される複数の凹部が存在可能であり、充填部材は、対応部分が各々の凹部に配置される。凹部を充填する充填部材のうちの各々の部分は、内部に区画形成される流路を有し得る。複数の流路を含む区画部材を用いることによって、複数の第1流体チャンバと第2流体チャンバのうちの少なくとも一方を区画し得る。各々の前記流体チャンバを用いることによって複数の粒子を同時に分析する。
【0057】
一実施形態においてデバイスは、1つの共通第1流体チャンバと、区画部材における複数の流路を通じて第1流体チャンバに流体連通可能に接続された複数の第2流体チャンバとを含む。別の実施形態において複数の第1開口は、区画部材の第1表面に形成され、複数の第2開口は、基板の第2表面に形成される。複数の第1開口のうちの各々の第1開口は、異なる試料を同時に処理すべくそれぞれ個々の第1流体チャンバ内に設置できるように、基板内に形成された流路を通じて複数の前記第2開口のうちの対応第2開口に流体連通可能に接続される。両実施形態において第2流体チャンバは、互いに隔離されることによって、独自に電気記録を取得できるようにする。この配置を得るため区画部材は、複数の第1開口のうちの各々の第1開口が複数の前記第1チャンバのうちのそれぞれ個々の第1チャンバと整列するように、マルチ・ウエル配列に結合され得る。更に別の実施形態において本発明のデバイスは、複数の区画部材を含み得る。各々の前記区画部材は、マルチ・ウエル配列を構成する各々の第1流体チャンバに接続される。
【0058】
望ましい場合、マイクロ流体装置は、濃度勾配を形成する一または複数の構成要素を含み得る。そのような構成要素は、たとえばフィル(Phile)ら(Anal.Chem.(2005)vol.77,p.3897-3903)によって記載されるような複数の貯蔵器と流体連通可能に連通する相互接続
流路のシステムを含み得る。試験すべき化合物の濃度勾配の形成はたとえば、マイクロ流体装置がパッチ・クランプ装置として使用されるべき実施形態において望まれ得る。そのような実施形態において濃度勾配の生成は、用量反応曲線の記録、たとえば各々の化合物のIC50値を含むKかK値の測定に役立ち得る。
【0059】
本発明に従うマイクロ流体装置は更に、別の任意の構成要素を含み得る。例示的実施例としてマイクロ流体装置は、温度制御要素を含み得る。更に別の例示的実施例としてマイクロ流体装置は、デバイスの水平凹部を覆うカバー部材を含み得る。各々の水平凹部が流体チャンバを区画形成する場合、取外可能であり得るカバー部材は、周囲環境から凹部をシールするのに役立ち得る。流体チャンバを区画形成する各々の凹部のシールは、たとえば下記のように流路開口上に生命体を固定する際の吸引力の生成を助けるために望まれ得る。
【0060】
本発明は更に、上記のようなマイクロ流体装置を形成する方法を提供する。例示的実施例として各々の方法はたとえば、少なくとも実質的に円形であると共に円形断面の直径がミクロンからナノメータの範囲内であるパッチ開口を備える水平方向パッチ・クランプ開口を形成する方法であり得る。前記方法は、ベース基板の提供を含む。望ましい場合、ベース基板の表面の粗度を変更し得る。例示的実施例として金属酸化物表面か半金属酸化物表面、たとえば酸化ケイ素表面は、紙ヤスリを用いることによって研磨され得る(フェラーリ(Ferrari),M.,ら、Applied Physics Letters(2006)vol.88,p.203125-1-203125-3
)。更に別の例示的実施例として表面は、たとえばNaOHと、KOHと、HF,HNOおよびエタノールの混合物と、NHFを含有する「緩衝化」HF溶液とを用いることによって、あるいは反応性イオンエッチングを用いるイオン衝撃によってエッチングされ得る(たとえばカオ(Cao),M.ら、J.Phys.Chem.B(2006)vol.110,no.26,p.13072-13075を参照)。
【0061】
方法は更に、ベース基板の表面に凹部を形成することを含む。凹部は、たとえば湿式エッチングか乾式エッチングなどの任意の従来式手段によって形成可能である。凹部の寸法は、分析すべき粒子サイズに従って変化させることが可能である。一実施形態において凹部の幅は、約0.1ミクロン〜約20ミクロンの範囲内である。凹部の長さは、約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲内である。実施形態によっては凹部は、ベース基板の少なくとも一側面まで広がるようにオープンエンドである。
【0062】
幾つかの実施形態において下地層は、凹部に形成される。各々の下地層の形成は、たとえば任意の所望蒸着方法を用いることによって行い得る。各々の下地層は更に、たとえばウエハ製造において一般的に用いられる熱酸化などの凹部の壁の表面処理によって形成され得る。下地層は、たとえば凹部の底壁上と2つの対向側壁上に薄膜を形成し得る。一実施形態において下地層は、たとえば酸化ケイ素か任意の他の酸化物か窒化物のような金属酸化物か半金属酸化物であり得る熱酸化物などの絶縁物質を含む。一実施形態において下地層は、たとえばポリシリコンなどの構造層である。各々の下地層は、総じて充填部材が変形される条件下で変形しない(下記参照)。凹部の所望外形とアスペクト比のうちの少なくとも一方を有意に変化させないか妥協しない方法で下地層の形成を行うことが望まれ得る。当該分野において利用可能な種々の蒸着および酸化方法が存在するので、当業者は、必要に応じて下地層を形成する最適な方法を容易に選ぶことが可能である。
【0063】
凹部は、誘電体を含み得る変形可能な充填材で満たされる。下地層が凹部に形成される実施形態において(上記参照)、それぞれの充填材による凹部の充填は通常、そのような下地層の形成後に行われる。変形可能な任意の充填材は、この目的に適する。一実施形態において充填材は、様々な種類のドープ酸化物とドープケイ酸ガラスのうちの少なくとも一方を含み、典型的には比較的低温で変形をおこすべく、十分に低いガラス転移材料を備
える。充填は、たとえば成長工程を含む蒸着工程を用いることによって実施され得る。実施形態によっては凹部の充填は、ベース基板を充填材によって覆うことによって達成される。従って凹部が同時に充填される。適切な蒸着工程例には、限定されないがプラズマ化学気相成長法、誘導結合プラズマ化学気相成長法(ICP−CVD)、低温化学蒸着、火炎加水分解蒸着(FHC)、物理蒸着(スパッタリング)、エピタキシか被覆が含まれる。適切な被覆工程例には、限定されないが回転被覆か浸漬被覆が含まれる。
【0064】
上記のように充填部材を提供することになる充填材は、充填材内に空洞を閉込められるような方法で凹部内に蒸着される。具体的には空洞は、ベース基板における凹部を充填する充填材の部分に閉込められるべきである。すなわち充填材による凹部の充填は、凹部の開口端を充填材によって狭窄するような方法で、凹部内に充填材を蒸着することを含む。従って充填材に空洞を形成するか閉込める。空洞は、たとえば凹部の一端から凹部の対向端に充填部材を通って水平方向に延び得る。空洞は、たとえば工程/蒸着ガスか空気などのガスを含み、前記ガス中で蒸着が行われる。
【0065】
上記のように幾つかの実施形態において凹部は、ベース基板の少なくとも一側面まで広がるようにオープンエンドである。各々の凹部が充填材によって充填されるとき、これは、凹部のオープンエンド側面に隣接する末端を有する空洞を生み出し得る。空洞は、たとえば凹部の一端から凹部の対向端に充填部材を通って延びることによって、凹部のオープンエンド側面のすぐ近くで終結する。
【0066】
本発明の方法の幾つかの実施形態において提供されるデバイスは、たとえばホール、凹部または流路などの更に別の構造を含み得る。状況によっては充填材による各々の構造の充填を回避すべく測定を行う必要があり得る。パッチ・クランプ法を行うべく細胞を配置する補助流路としての使用が意図される更に別の流路をデバイスが含む場合(図16を参照)、これらの流路は、通常、パッチ・クランプ法に使用が意図される流路よりも広いことが望まれ得る。従ってデバイスの任意のそのような補助流路か他の構造は、幾つかの実施形態において充填材による充填を阻止する幅であるように選択され得る。他の実施形態において充填材の特性か蒸着条件は、たとえば補助流路などの各々の構造の充填を阻止すべく選択され得る。
【0067】
充填材の蒸着(成長を含む)が完了し、充填部材内に空隙が形成されるか閉込められた後、充填材は、それを変形させ得る条件を受けることによって、充填材内に流路を形成する。一般的に凹部において空隙を形成する変形手順は、たとえば凹部の幅対深さ比、凹部の外形、充填材の蒸着圧などの様々な因子に依存する。たとえば凹部への充填材の非共形蒸着によって空隙を形成可能である。空隙は、円形流路がトレンチにおいて実現されるように円形構造に再形成可能である。これは充填材をリフローすることによって行われ得る。
【0068】
一実施形態において充填材リフローは、熱サイクルによって達成される。各々の材料は、異なるガラス転移温度を有するのによって充填材をリフローさせるべく異なる温度サイクルが必要とされることによって、閉込められた空隙を圧迫する。熱サイクルは更に、空隙の初期サイズと必要な流路の最終寸法に依存する。初期空隙が大きいほど、あるいは最終所望流路断面が小さいほど、温度が高くなるか、必要な熱サイクルの期間が長くなるかの少なくとも1つである。加熱期間は、数分から数時間まで変動可能である。少なくとも実質的に円形か少なくとも実質的に楕円形の外形の断面を備える流路(少なくとも実質的に円形か少なくとも実質的に楕円形の領域を区画形成する開口を含む)を得るべく充填材を十分変形させるため、充填材の加熱に必要な時間は、従って可変であると共に初期空隙寸法、蒸着条件、加熱温度、加熱圧および開口の最終寸法に依存する。
【0069】
一実施形態において充填材は、ガラス転移温度より高く加熱されるが、充填材の変形をもたらすため、融点以下に加熱される。ドープケイ酸ガラスが充填材として用いられる場合、加熱が行われる温度範囲は、約800°C〜約1,200°Cであり、期間は、約1か2分からを含む約30秒から、たとえば最大約3時間までか最大約1時間までなどの数時間までであり得る。幾つかの実施形態において期間は、約30秒から最大約10分間までなど、約30分間まで、たとえば約240秒間である。加熱が起こる圧力は、加熱温度に依存して大気下圧から大気圧(約101.33kPa=760Torr)であり得る。圧力は、たとえば約0.40kPa(3Torr)〜約6.67kPa(50Torr)か約0.40kPa(3Torr)〜約26.66kPa(200Torr)の範囲内など、たとえば約6.67kPa(50Torr)〜約101.33kPa(760Torr)か約26.66kPa(200Torr)〜約101.33kPa(760Torr)などの約0.40kPa(3Torr)〜約101.33kPa(760Torr)の範囲内において選択され得る。
【0070】
凹部がオープンエンドの実施形態において凹部のオープンエンド側面に隣接する末端を備える空隙が形成され得る(上記参照)。充填材は、それを変形させる条件を受けることによって、周縁壁を備える流路が空隙から形成できるようになり得る。本発明の方法を使用すると、具体的には、凹部のオープンエンド側面に隣接する一部分で集結する流路の形成が可能になり得る。流路のこの部分は、長さ方向に延びる周縁壁のサイズが幅に関して凹部のオープンエンド側面に向かって減少するように円錐形である。
【0071】
流体チャンバ、マイクロ流体流路、ポートなどの補助構造が流路周囲に形成可能であり、電気回路システムは、デバイスに一体化され得る。そのような構造の形成は、熟練者の知識の範囲内であり、たとえばエッチングと蒸着手法を組合せることによって実施され得る。
【0072】
本発明の方法は更に、ベース基板の更に別の水平凹部を形成することを含み得る。既に上記したように、そのような凹部は、該凹部を充填する充填部材の一部の側壁のうちの一部分を含み得る。更に別の水平凹部の形成は、前記凹部を充填する充填部材の部分において区画形成される流路開口の形成を含み得る。ベース基板の各々の水平凹部の形成は、任意の従来式リトグラフ技術か、乾式エッチングか湿式エッチングなどのエッチング技術によって、あるいは、機械的手段によって達成され得る。
【0073】
幾つかの実施形態において凹部は、ベース基板の一または複数側面内に広がるようにオープンエンドに形成されるように、ベース基板の表面に形成される。凹部は、たとえばベース基板の上壁など、壁全体におよび得る。次に凹部の形成とベース基板の被覆が上記のように実施される。幾つかの実施例においてベース基板は、オープンエンド凹部が広がる壁の一部分が充填材で覆われるような方法で被覆される。この壁部分を被覆する充填材は、凹部内に含められる充填材の部分を含む連続充填部材を形成し得る。従って本発明の方法のこの具現化の間にまさに区画部材の一側面で終結する流路が形成可能である。この実施形態において流路開口形成は、ベース基板自体の任意の物質を除去する必要無しに各々の側壁を被覆する充填部材の一部分を単に除去するだけでよい。
【0074】
本発明のマイクロ流体装置、従って本発明の方法に従って形成されるデバイスの幾つかの実施形態において、ベース基板は、たとえば高温と減圧のうちの少なくとも1つの条件下によって充填部材の材料より変形されにくい材料からなる(上記参照)。そのような実施形態においてベース基板の一部分よりは、むしろ充填部材の一部分、たとえば表面層の一部分を除去するだけでよい条件が一層緩やかな工程を採用可能である。例示的実施例として乾式エッチングは、ベース基板の一部分を除去すべく必要とされ得るが、低刺激性の湿式エッチングは、充填部材の一部分を除去するために十分であり得る。乾式エッチングは、かなり粗い表面を生成し得る。そのようなエッチング工程を回避することによって極
めて平滑な充填部材(たとえばガラス)表面が形成可能である。平滑面は、特定の適用、具体的には繊細な細胞膜が機械的に損傷する危険性を最小限にするパッチ・クランプ法に望ましくあり得る。平滑表面は更に、細胞膜によって堅いシールを形成するのに有益である。湿式エッチングは、たとえば金属水酸化物などのブレンステッド塩基かブレンステッド酸を用いることによって実施され得る。例示的実施例として充填材がチタン酸化物である場合、硝酸/フッ化水素酸混合物、塩酸または濃硫酸を用いることによって前記チタン酸化物を除去し得る。適切な金属水酸化物例には、限定されないが、水酸化ナトリウム、NaOH、水酸化カリウム、KOH、水酸化リチウム、LiOHおよび水酸化カルシウム、Ca(OH)が含まれる。湿式エッチングを用いることによって充填部材の一部分を正確に除去することは、たとえばエッチング溶液中に基板表面を浸漬し、更に数秒内にそれを除去することによって達成可能である。
【0075】
本発明のこれらの実施形態のうちの幾つかにおいて、方法は、たとえば隆起、窪み、出っ張り、突起、段差と任意の組合せなどの凸面型か凹面型の三次元表面を生み出す。各々の凸面は、ピペットの先端のようであり得る。これらの実施形態のうちの幾つかにおいて方法は、幅が上記のように開口に向かって減少するように円錐形である開口に隣接する流路の一部分を生み出す(上記とたとえば図6B、図7Bか図7Cを参照)。当業者には、たとえばパッチ・クランプ適用にとってそのような三次元表面が細胞膜を適切に保持するのに適した接触面を提供することは明白であろう。具体的には前記三次元表面は、細胞膜と堅いシールを形成する上で役立つ。これに関して既に流路を含んだパッチ・オン・ア・チップ装置に非ドープ二酸化ケイ素を蒸着することによってアワーグラス型の流路が生じることを観察した専門家もいる(ソルデル(Sordel),T.ら、Journal of Biotechnology(2006)vol.125,p.142-154)。粗い表面を得るにもかかわらず、これらの著者は、得られたチップを用いることによってパッチ・クランプ実験においてシールが改善されることを認めた(同上)。
【0076】
幾つかの実施形態において、まさにベース基板の一側面で終結する流路開口は、レーザ光線によって形成され得る。レーザ光線は、たとえば米国特許出願公開第2006/0003145号において記載されるようにデバイス表面の各々の領域に集束され得る。レーザ光線の用途は、たとえば流路の幅と比較したとき、小さな領域を区画形成する開口が形成されるべき実施形態において望まれ得る。更に別の実施例として充填材が石英か、たとえばホウ素ケイ酸ガラスなどのガラスのような酸化ケイ素性材料を含む場合、開口は、フェアティヒ(Fertig)ら(Receptors & Channels(2003)vol.9,no.1,p.29-40;Appl.Phys.Lett.(2002)vol.81,no.25,p.4865-4867)によって記載されるように単一イオン・トラック・エッチングによって形成され得る。この方法は、フッ化水素酸を用いると、イオン・トラックがフッ化水素酸で広がるので、開口に隣接するテーパ流路部分を生成することが認められる。従って開口に向かって広がる開口に隣接する流路部分、すなわち開口に向かって幅に関して増加する周縁壁が形成され得る。
【0077】
ベース基板の一側面まで広がる凹部を形成することによって、流路開口を得るため内部に更に別の、たとえば水平凹部を続いて形成する必要がなくなる。それでも特定の適用には、各々の凹部が望まれ得る。これに関して本発明の方法のうちの幾つかの実施形態において第1凹部と第2凹部の2つの凹部がベース基板において形成される。第1凹部と第2凹部が形成される2つの表面または表面部分は、互いに異なる。幾つかの実施形態において2つの表面か表面部分は、ベース基板の異なる壁に含められる。第1凹部が形成される表面は、たとえば上壁の表面であり得る。第2凹部は、たとえばベース基板の側壁の表面に形成され得る。幾つかの実施形態において第2凹部が形成される表面または表面部分のうちの少なくとも一部分は、第1凹部が形成される表面に対して少なくとも実質的に垂直である。
【0078】
第1凹部と第2凹部は、任意の所望順に形成され得る。実施形態によっては第1凹部は、第2凹部の前に形成される。幾つかの実施形態において本発明に用いられる他の工程が第1凹部と第2凹部の形成の間に実施される。たとえば第1凹部は、第2凹部が形成される前に充填材によって充填され得る(上記参照)。更に別の例として付加的構造層(たとえば上記のような下地層など)が充填材を蒸着する前にベース基板上に形成され得る。そのような構造層は通常、凹部の形成前に形成される。次に第2凹部がそのような付加的構造層内に形成され得る。他の実施形態において第1凹部と第2凹部が同時を含めて一緒に形成される。一実施形態において第1凹部は、ベース基板内に形成される。その後ベース基板の全表面を含むベース基板の一部分が充填材か付加的構造層によって被覆される。続いて第2凹部が充填材/付加的構造層内に形成される。充填材を使用する場合、これはたとえば流路が第1凹部に形成された後に実施され得る。そのような第2凹部は、ベース基板上に蒸着された充填材か付加的構造層内に全体を含めるべく何れかに形成され得るか、あるいは凹部は、充填材/付加的構造層を通過し、ベース基板内に入り込むことが可能である。充填材/付加的構造層がベース基板上に蒸着された後、既に上記した方法に従って各々の第2凹部を形成し得る。そのような実施形態において第2凹部を形成すべく適用される条件下で容易に変形しない充填材か付加的構造層用材料をそれぞれ用いることが望ましくなり得る。そのような層は、シリコン、ポリシリコンまたはベース基板の派生物であり得る。
【0079】
第1凹部に戻ると第1凹部は、上記のようにベース基板表面のうちの1つ上に形成される。これはベース基板表面のエッチングを含み得る。凹部は、ベース基板の少なくとも一側面まで広がるようにオープンエンドに形成され得る。前記凹部は更に、ベース基板の2つ以上(たとえば凹部が分枝される場合)の側面に広がり得る。第1凹部は、実施形態によっては、第2凹部が形成される前に形成される。一実施形態において第1凹部は、第2凹部の形成後に充填材によって充填される。この実施形態において、ベース基板は、従って任意の充填材が上に蒸着される前に補助構築される。例示的実施例としてベース基板は、最初に上面に第1凹部を形成することによって補助形成され得る。その後、水平凹部であり得る一または複数の第2凹部を形成することによって補助形成が継続され得る。
【0080】
充填材による第1凹部の充填は、この場合も、上記のように充填材によってベース基板を覆うことによって実施され得る。従って第1凹部は、充填材によって少なくとも部分的に充填され得る(上記参照)。同時に第2凹部表面の少なくとも一部分は、充填材で覆われ得る。
【0081】
第2凹部は、リソグラフ技術かエッチング技術(同様に上記参照)を含む任意の所望プロトコルに従ってか、機械的手段によって形成され得る。第2凹部は、第1凹部が内部に流れ出るように形成され得る。第2凹部は、幾つかの実施形態において充填材によって部分的にのみ充填され得る。そのような実施形態において第2凹部は、たとえば、充填部材がベース基板上に配置された後に流体チャンバを区画形成し得る。第2凹部が第1凹部内に流れ出るように形成される実施形態において、第2凹部は、前記第1凹部の各々の表面か表面の部分内に流れ出得る。前記表面か表面部分は、充填材で被覆される。この表面部分は、連続部分であり得る。この壁部分を被覆する充填部分は次に、第2凹部内に含められる充填材と共に連続部分を形成し得る。
【0082】
本発明の方法のこの実施形態は更に、流路の末端が下に配置される表面部分を被覆する充填材を除去することを含む。充填材は、流路の末端が暴露され、更に流路開口が形成されるまで除去され得る。この表面部分は、形成されるマイクロ流体装置の側壁に含められ得る。幾つかの実施形態において本方法のこの側面は、第2凹部表面か表面の部分を被覆する充填材を少なくとも実質的に除去することを含む。充填材の除去は、たとえば湿式エッチングか乾式エッチングなどのエッチングを用いることによって実施され得る。上記の
ように本発明の方法のこの実施形態は、充填材だけが除去されるのでベース基板の材料として用いられ得る様々な物質の湿式エッチングを可能にする。これは各々平滑流路開口を備える平滑面の形成を可能にする。
【0083】
本方法の側面が可能にする充填材の除去工程の別の例示的実施例は、略語「CMP」によっても当該分野において公知の化学機械的研磨であり、具体的には半導体とマイクロ電子装置の製造において表面の平坦化工程として広く用いられている。一般的に化学機械的研磨は、回転ディスクを使用する。ディスク上にたとえばポリウレタン製の研磨パッドが取り付けられる。研磨パッドに研磨剤を含有するスラリか水性懸濁液が供給される。水性懸濁液は、たとえばポリビニルピロリドン、酸化剤、たとえばスルホン酸アルキルベンゼンなどの保護膜形成剤、および欧州特許出願公開第EP1757665号において記載されるような研磨粒が含まれ得る。望ましい場合、界面活性剤も添加され得る。ステンレス鋼リング(Fe)、サファイア(Al)と炭酸バリウム(BaCO)もまた軟研磨剤として首尾よく用いられている(たとえばチェン(Chen),C.−C.A.ら、Journal of Materials Processing Technology(2003)vol.140,p.373-378)。この技術は、当該分野において周知である。例示的実施例として米国特許出願公開第2007/0049183号は、CMP装置と方法および研磨パッド調整法を記載する。技術に関する詳細な概説は、たとえばザンティ(Zantye)ら(Materials Science and Engineering(2004)vol.R45,p.89-220)によって与えられる。この複合研磨システムの基礎をなす機構は、たと
えば研磨作用、腐食、電気化学的工程と動力学などの幾つかの因子を伴うと考えられる。
【0084】
一または複数の水平凹部を備える補助構造化ベース基板の形成は、上記のように一または複数の流体チャンバと、各々の開口に隣接するテーパ部分を備える一または複数の流路との両方を含むデバイスの形成を可能にする。そのような方法はたとえば、具体的にはスクリーニングに関してパッチ・クランピング目的に使用が意図される本発明に従うデバイスの形成に望まれ得る。上記のように本発明のこの実施形態は、ベース基板を乾式エッチングする何れの要件も不要にする。そのような要件(この実施例によって不要とされる)は同時に、たとえば厚いガラス層であり得る充填部材の乾式エッチングを含むだろう。この工程は、一般的に時間を要し、ベース基板上だけではなく、充填部材(たとえばガラス表面)上も粗い表面を生じさせ得る。従って本発明のこの実施形態は、特に平滑な表面の形成を可能にする。同時にたとえばガラスの厚い層などの凹部を包囲する少なくとも部分に十分な厚さを備える充填部材は、開口が塞がれる危険性または心配無しに容量結合を最小化するために蒸着可能である。
【0085】
区画部材は、独立して製作され、次いで完成デバイスを形成すべく他の要素と共に組立てられることが可能である。たとえば区画部材は、シリコンウエハで製作可能であり、分配要素を包囲するシリコンは、区画部材だけ後に残すべく完全にエッチング除去される。続いて区画部材は、対応サイズの流体チャンバ内に組立てられ、陽極接合、接着剤接合、UV接合などのような種々の接合方法によってしっかりと取り付けられる。区画部材は、流体チャンバを2つの部分に区画すべく方向付けられる。流路は、1つの部分を他の部分に流体連通可能に接続する。また第1流体チャンバと第2流体チャンバは凹部と、2つの流体チャンバの間に配置される充填部材とを備えるベース基板内に一体となって形成され得る。
【0086】
当業者には、本発明の方法を用いることによって流路断面寸法が予測できると共に、充填部材の形成に使用される充填材を変形させるパラメータを慎重に選択することによって制御できることは、よくわかるであろう。更に工程は、CMOS適合性があるので電極、貯蔵器などのような他のデバイス要素を実現すべく他のシリコン技術と一体化可能である。流路製作費は、電子ビーム・リソグラフィ、ウエハ・ボンディングまたはレーザ切断のような特殊なツール/工程が必要とされないので低い。望ましければ区画部材表面上に形
成される凹部の寸法を変化させることによって、異なる寸法の流路を単一デバイス内で得ることが可能である。従って単一デバイスは、異なるサイズの細胞/生体分子を分析すべく用いることが可能である。更に流路は、製作中に自己整合する流路の能力のため区画部材において容易に形成可能である。平滑な酸化物表面が保持されるので、側壁の粗さが減り、ウエハ・ボンディングが容易に実施されることができる。
【0087】
本発明の第3特徴と第4特徴に従うマイクロ流体装置は、試験すべき試料を含有する第1流体チャンバと、本発明の更に別のマイクロ流体装置として既に上記したような区画部材によって第1流体チャンバから区画される第2流体チャンバとを含む。区画部材における流路は、第1開口が第1流体チャンバの方を向き、第2開口が第2流体チャンバの方を向くように方向付けられることによって、第1流体チャンバを第2流体チャンバに流体連通可能に接続する。
【0088】
本発明の第3特徴と第4特徴に従うこのデバイスは、分析用試料を集めるべくエンドユーザーレベルで展開され得る完全なマイクロ流体チップの一般形態を示す。この実施形態は、先に述べたような幾つかの方法、たとえば、区画部材を別々に製作した後、区画部材をたとえば接合によって流体チャンバ構成部分内に組立てることによるか、または、凹部を備えたベース基板内に第1流体チャンバと第2流体チャンバを一体となって形成し、2つの流体チャンバの間に充填部材が配置されるようにすることによって得られ得る。
【0089】
物理的な操作や輸送にチップを一層耐久性のあるものにすべく、種々の改変を実行可能である。たとえばデバイスは、ガラス蓋か、たとえばポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネートまたはポリ(メト)アクリレートなどのポリマー蓋を提供することによって充填部材とベース基板の上部を覆い、同様にシール目的で流体チャンバの上部を被覆し得る。チップは更に、第1流体チャンバ内に粒子試料を導入するための送達針を受容できるポートを組み込み得る。流体チャンバ配列は更に、実施すべき大量の平行試験を可能にするため複数の流路を通じて接続され得る(たとえばスクリーニングは、粒子型の細胞に及ぼす多くの物質の作用を測定すべく同時に行われることが可能である)。商業用に有用な実装においてデバイスから読み取ると共に更に電気検出回路システム、吸引力制御、たとえば生命体から記録される時間と周波数ドメイン信号の保存と試験結果を解釈する統計学的解析用のコンピュータのデータ収集手段を提供する測定システムと併せてデバイスを使用し得る。前記デバイスは更に、アド・オン光学的キャラクタリゼーション用の光学モジュールを含むことが可能である。
【0090】
一実施形態において電気測定装置は、試験粒子の一または複数の電気特性を測定すべく、第1流体チャンバと第2流体チャンバに接続される。電気測定装置は、電流か電圧測定器に接続された一対の電極を含み得る。前記電極は、各々、アクセスポートから第1流体チャンバと第2流体チャンバ内に挿入され得る。
【0091】
本発明の更に別の側面は、たとえば典型的なパッチ・クランプ試験において実施されるような生命体の状態を分析する本発明のデバイスの用途を対象とする。一般的に本発明の生物センサは、たとえば細胞などの生命体の電気生理学的測定を必要とする任意の適用において用いられ得る。そのような適用は通常、評価される生命体と、たとえばトランジスタなどの電流感受性センサか、従来型のマイクロピペット・パッチ・クランプか第1流体チャンバと第2流体チャンバ内に設置される検出電極との間に接触が必要である。生物センサの一般的な適用には、薬剤のスクリーニング(たとえば細胞膜におけるイオンチャネル、重要なクラスの治療薬標的に及ぼす化合物活性の電気生理学的測定が試験される)と細胞の特性に関する研究(マイクロ電極電気穿孔の機構に関する研究)が含まれる。
【0092】
方法は、本発明の任意の適切な実施形態に従って、すなわち本発明の第3特徴と第4特
徴に従って、あるいは本発明の他の側面に従うと共に流体チャンバを含む実施形態に従ってデバイスの第1流体チャンバ内に生命体を導入することを含む。
【0093】
方法は、通常更に、各々のデバイスの流体チャンバ内に流体を導入することを含む。使用される流体の選択は、用いられる生命体に依存することになる。流体は、たとえば水溶液などの液体であることが多くなる。幾つかの実施形態において流体には、乳液、懸濁液、小胞、コロイド状物質か複合材料が含まれる。典型的な実施形態において流体チャンバ内への流体の導入は、流体チャンバ間に流体連通を提供する少なくとも1つの流路を各々の流体によって充填することを含む。幾つかの実施形態においてマイクロ流体装置のうちの各々の流路(既存の一流路または複数の流路を含めて)は、流体で満たされる。
【0094】
生命体の第1状態に関連する第1(基準)電気信号は、デバイスに一体化されるか、外部測定器によって提供されかの何れかの検出電極を介して記録される。その後生命体は、状態を変化させ得ると考えられる条件か刺激に暴露される。そのような条件への暴露には、限定されないが、生命体での有効性について評価される化学化合物、具体的には生命体に及ぼすイオンチャネル挙動を変調でき得ると考えられる化学化合物で生命体を包囲することが含まれる。前記用語は更に、生物体を電気刺激することを含む。実施形態によっては、第1電気信号は、連続信号である。各々の連続信号は、任意の所望期間、連続的に記録され得る。
【0095】
前記条件に暴露後、条件に暴露後の生命体の状態に関連する第2電気信号が測定される。幾つかの実施形態において第2電気信号は、連続信号である。条件に暴露する前後の第1電気信号と第2電気信号の測定は、連続して実施され得る。すなわち条件に暴露する前から生命体に及ぼす条件の作用を生命体が完全に示すまで電気信号が連続して監視され得る。
【0096】
細胞膜試験において生命体を通って流れるイオン電流を測定するため、生命体の上流と下流の環境の電気信号の第1測定を行うことによって、たとえば膜分極を特性化する試験かポア形成の膜貫通閾値電位を測定する試験を行なうことが可能である。続いて細胞状態を変化させ得ると考えられる条件に生命体を暴露させた後、イオン電流の第2測定が行われ、第1測定値と比較される。第1測定値と第2測定値の間の差を既存の文献と比較することによって、生命体の状態が条件への暴露前か暴露後かを判定可能である。たとえば第2電気信号は、変化状態に対応することが分かっている既知の電気信号に対して比較され得る。また第1電気信号と第2電気信号の間の差の大きさは、閾値電気信号値(所定閾値電気信号値)と比較し得る。第1電気信号と第2電気信号の間の差が閾値電気信号値の大きさより大きい場合、生命体が暴露される条件が生命体の状態を変化させ得ると判定される。幾つかの実施形態において複数の第2電気信号が連続測定中に検出される。そのような実施形態において任意数の第2電気信号は、第1電気信号と比較され得る。複数の第2信号は更に、第1電気信号と比較されるとき、最大強度信号についてスクリーニングされ得る。
【0097】
第1電気信号と第2電気信号のうちの少なくとも一方の測定は、たとえば吸引力が適用される細胞などの生命体の領域内に位置するか、前記領域から隔離された任意の種類の輸送構造を通過する電流の測定値を含み得る。そのような目的には、当該分野において公知の何れかの技術とプロトコルのうちの少なくとも一方が本発明の方法において採用され得る。例示的実施例としてパッチ・クランプ測定は、膜貫通電圧を測定すべく行われ得る。そのような測定には、たとえば所望構造のランプ状で保持電圧または指令電位を設定することを含み得る。従来式パッチ・クランプ技術に従って測定は、たとえば細胞全体か細胞接着法を用いることによって無傷細胞で行うか、インサイドアウトとアウトサイドアウト法を用いることによって細胞のフラグメントで実施し得る。このためたとえば細胞の生命
体は、本発明に従う方法において破断され得る。従って内部に含まれる輸送構造の電気特性にアクセス可能になり得る。これに関して細胞中の輸送構造例には、限定されないが細胞膜に位置する以下構造:陰イオンチャネル、陽イオンチャネル、陰イオン輸送体(陰イオン交換輸送体を含む)、陽イオン輸送体(陽イオン交換輸送体を含む)、受容体タンパク質と結合タンパク質の何れかが含まれる。第1電気信号の測定は、生命体を含有する試料溶液の基準電位を測定することを含み得る。前記電位は、生物センサの上面に存在する基準電極から測定される。前記基準電極は、試料溶液と接触する。例示的実施例として細胞のイオンチャネル、細胞膜部分、細胞小器官、細胞小器官部分または精子を通過する電流が検出および定量され得る。更に別の例示的実施例として細胞由来の小胞開口分泌は、たとえばデルニック(Dernick)らによって開示されるプロトコル(Nature Methods(2005)vol.2,no.9,p.699-708)と類似のパッチ電流測定を用いることによって測定され得る。
【0098】
本発明の方法は、たとえば静水圧の適用によってか、流体チャンバと流路のうちの少なくとも一方に含まれる流体の流動によって上記のように流路開口に生命体を配置することを含み得る。流路は、マイクロ流体装置の区画部材に含められる。生命体は、各々の流路開口上か各々の流路の内側に配置され得る。本発明の方法は更に、生命体を固定することを含み得る。総じて生命体の固定によって、生命体を通過するイオンの拡散または他の運動(流動を含む)を阻止するために各々の流路がシールされる。従って第1チャンバと第2チャンバ間のイオンの自由運動が制限される。
【0099】
一実施形態において生物センサ上への生命体の配置と固定は、上記のように流路の第1開口または補助流路の開口(たとえば図15)で生じる吸引力およびたとえば誘電泳動などの他の適切な任意の種類の力を用いることによって実施される。吸引力は、たとえば各々の付加的補助流路の開口を通じて作動し得る。上記のようにこの付加的補助流路の開口は、上記のような流路(すなわち区画部材の充填部材の一部分に設けられる流路)の第1開口に並び得る。マイクロ流体装置内の所望部位に生命体の固定することは通常、生命体が固定されるべき流路開口、開口内または開口上で各々の流路によって生じる吸引力を用いることによって行われ得る。試料液が第1流体チャンバ内に置かれると、たとえば各々の流路によって適用される任意の吸引力によって流体が流路に引込まれる。その結果、流体は第1開口に入り、続いてたとえば第2開口などの流路の下流の開口から流出する。幾つかの実施形態において十分に強い吸引力を適用することによって粒子は、上記のように凹部に含まれる流路の第1開口に向かって引寄せられる。更に上記のように凹部に含まれる流路を通じて吸引力を適用することによって、最終的に粒子は、第1開口上にパッチされることになり、開口の縁上にシールを形成することによって、流路を通る流体とイオンの自由流動を制限する。この配置によって開口上に電気抵抗の高いシールが確立される。この吸引力は、たとえばシリンジを用いることによって第2流体チャンバから流体を引抜くことによって生じることが可能である。吸引力は更に、生命体を含有する試料溶液をポンプ駆動式による吸引を行うことによって生じることが可能である。
【0100】
従って本発明の方法の幾つかの実施形態において、たとえば細胞などの生命体は、上記のようにマイクロ流体装置の流路開口に配置および固定される。生命体の配置は、幾つかの実施形態において生命体の正確な位置を区画形成できる更に別の検出手段、たとえば顕微鏡のような光学手段を用いることによって実施され得る。このため、生命体のサイズと開口寸法は総じて、各々の流路開口によって区画形成される領域が、生命体の開口通過を阻止する形状であるように選択されるべきである。一般的に流路開口によって区画形成される領域は、そのような実施形態において生命体の少なくとも一方位における生命体の幅に関する最小サイズよりも幅に関して小さなサイズからなる。
【0101】
幾つかの実施形態において各々の流路開口は、第1流体チャンバを区画形成するマイクロ流体装置の側面壁に含められる。前記第1流体チャンバ内に生命体を含む試料溶液が導
入される。例示的実施例として開口は、第1流体チャンバの方を向く第1開口であり得る(上記参照)。第1開口が凹面に含まれる実施形態において(上記参照)、凹面は、生命体の配置に役立ち得る。第1開口が凸面に含まれる実施形態において生命体の配置と固定は、マイクロピペットを用いる従来式のパッチ・クランプ法のようであり得る(図7C参照)。
【0102】
更に別の実施例として開口は、第2流体チャンバに面する第2開口(上記参照)であり得る。一般的にそのような実施形態において流路は、流路幅が幅に関して流路長に沿って減少するように外形が変化する一部分を含む。例示的実施例として流路は、たとえば区画部材内部のある点に位置する収縮を含み得る。更に別の実施例として流路は、第2開口に隣接する円錐形(テーパ)部分を含み得る。この円錐部の幅は、第2開口に向かって徐々に、たとえば連続して減少する(たとえば図7Bと図7Cを参照)。そのような実施形態の何れかにおいて生命体は、収縮かテーパ部分に至るまで各々の流路内に方向付けられ得る。従ってそのような実施形態において生命体は、各々の流路内に含められ、収縮かテーパ部分の前か、内部に配置される。生命体は更に、収縮かテーパ部分の前か、内部に固定され得る。流路が第2開口に隣接するテーパ末端部分を含む幾つかの実施形態において、生命体は、第2流路開口の前に配置および固定され得る。例示的実施例として図8Bは、幅が約2ミクロンの流路と幅が約1ミクロンの開口を図示する。1つのテーパ開口だけを備える流路(同様に実施例において下記参照)を形成することによって、幅が約2ミクロンの1つの開口と幅が約1ミクロンの1つの開口を備える各々の流路が提供可能である。そのような流路寸法は、直径が1ミクロン未満の原核細胞とたとえば小胞とミトコンドリアなどの特定の細胞小器官の取り込みに適する。直径が約12ミクロン〜15ミクロンの単球か直径が約8ミクロンの範囲内の真核細胞核などの他の生命体では、一層大きな流路幅が必要とされる(同様に実施例において下記参照)。1つのテーパ末端部分だけを備える流路を提供する本発明の方法のそのような実施形態は、レップル−ヴィーンヒューズ(Lepple-Wienhues)とフェルリンツ(Ferlinz)によって記載されるパッチ・クランプ技術(Receptors & Channels(2003)vol.9,no.1,p.13-17)と似ている。これらの著者は、マイクロピペット内に細胞を固定することによって極めて安定なギガシールが高クランプ品質を備えた高率で得られることを前に示した(同上)。しかし本発明の方法は、以前に直面したガラス毛細管内への生命体の導入に関する課題を解決する。
【0103】
生命体について従来式パッチ・クランプ測定を実施すべくデバイスを用いる場合、流体チャンバ内の検出電極は、たとえば各々の流体チャンバ内の電流(電流クランプ)か電位差(電圧クランプ)の制御と、生命体を横切るイオン電流か膜電位、あるいはたとえば細胞の細胞膜の膜電位など、生体分子の膜の膜電位の測定との両方に用いられ得る。第1電気信号の測定は、吸引力が適用される細胞の領域内で隔離される少なくとも1つのイオンチャネルを通過する電流を測定することを含み得る。
【0104】
望ましければ電気測定分析を補強すべく光学的分析を実施可能である。たとえば可視化物質を第1流体チャンバに添加することによって、人間オペレータが第1開口上を覆う生命体によって形成されたシールの状態を視覚的に測定するのに役立つことが可能である。可視化物質は、たとえば臭化エチジウムかフルオレッセイン二ナトリウムなどの着色色素であることが可能である。色素が第2流体チャンバ内に移動するのが認められるなら、シールは、効率的に形成されていないので、開口の上方に生命体を固定すべく他の試みが行われなければならない。
【0105】
パッチ・クランプ適用は別として、本発明のデバイスは更に、たとえば毛管電気泳動かDNA篩いなどの様々な他の適用において用いることも可能である。デバイスは更に、充填部材上に位置する水平方向に配置された開口の上方に任意の種類の小粒子を固定またはろ過すべく、用いられることも可能である。たとえばデバイスは、たとえばウイルスおよ
び病原体などの特定の種類の生命体をろ過および捕捉すべく用いられることが可能である。ろ過適用では、入口開口の直径は、サブミクロン範囲内であることが可能である。吸引力の適用によって、開口径より小さな生命体が開口に入り、その後流路を通って第2流体チャンバ内に移動するが、大きな粒子は、第1流体チャンバ内に捕捉されたままである。
【0106】
複数の流路を備えるデバイスが用いられる実施形態において複数の独立した分析、ろ過または、たとえばパッチ・クランプ測定の他の方法が同時を含めて平行して実施され得る。例示的実施例として異なるパッチ・クランプ・プロトコルは、同時に実施され得る。更に別の実施例として複数の流路は、複数の流体チャンバ内に流れ出得る。そのような実施形態においてたとえば一または一層高い選択数の生命体が流路開口内、開口後方か開口上方の各々の流体チャンバ内にそれぞれ配置され得る。たとえば選択数の各々のチャンバ内に存在する化合物か化合物の濃度など、異なる条件を提供することによって、目的の様々なパラメータを平行して分析し得る。
【0107】
本発明の方法か何れかの部分は、手動式か自動化方法の両方で実施され得る。本発明に従うデバイスは、幾つかの実施形態において、たとえばイオンチャネル創薬における自動化電気生理学的スクリーニング用装置に一体化され得る。本発明の方法は、そのような実施形態においてイオンチャネル・モジュレータの一次スクリーニング、並びに二次スクリーニングと安全性スクリーニングにおいて用いられ得る。たとえば一次化合物スクリーニング、ヒット・バリデーションおよび最適化合物の誘導の他に本発明は更に、標的の発見、ターゲット・バリデーションおよびアッセイ開発において単独および他の確立方法と組合せて使用され得る。従って各々の段階をそれぞれ短縮する。そのような更に別の方法の例示的実施例は、膜電位変化か細胞内イオン濃度の検出におけるFLIPR(蛍光イメージング・プレート・リーダ)の使用である。
【0108】
任意の各々の方法は、パッチ・クランプ・ロボットの使用を含み得る。前記ロボットは、細胞の選択と配置、ギガシール形成、細胞全体か穿孔細胞構造の獲得、薬剤適用およびデータ獲得を含むパッチ・クランプ記録を部分的か完全に自動化し得る。本発明の方法の実施形態は更に、たとえば「ポピュレーション・パッチ・クランプ(PPC)」などの技術を含み得る。PPCにおいて単一電圧クランプ増幅器は、多細胞の細胞全体電流を一度に合算する。各々の細胞は、上記のようにデバイスにおける個別の開口にシールされる。たとえばミュー(Miu)らによって示される高処理量スクリーニングにおけるヒト・エー
テル・ア・ゴー・ゴー・チャネル(hERG)を測定する計算方法(ミュー(Miu),P.,ら.J.A.L.A.(2006)vol.11,no.4,p.195-202)などの任意の自動化データ解析手法が採用され
得る。自動化データ分析手法の更に適した実施例は、アスミルド(Asmild)らによって簡潔に示される(Receptors and Channels(2003)vol.9,no.1,p.49-58)。
【0109】
望ましい場合、本発明のデバイスと方法は、植物(藻などの水性植物を含む)か、たとえば線虫、水性無脊椎動物か甲殻類などの動物を含む生命体の状態をインビボで分析するように設計され得る。各々のインビボ方法は、たとえば二光子励起蛍光レーザ走査顕微鏡(適切な実験手法については、コマイ(Komai),S.ら、Nature Protocols(2006)vol.1,no.2,p.648-653を参照)を用いることによってなど、位置決めに役立つ蛍光標識および蛍
光検出の使用を含み得る。
【0110】
たとえばPatchXpress(登録商標)(モレキュラーデバイセス社(Molecular Devices Corp.)Sunnyvale,CA,U.S.A.)などの特定の市販自動化電気生理学的装置では、幾つかの特に強力な化合物が間違って低IC50値に割り当てられ得ることが報告されている(クオ(Guo),L.& ガスリー(Guthrie),H.,J.Pharmacol.Toxicol.Meth.(2005)vol.52,p.123-135)。これは自動化装置に対して選択された物質と疎水性化合物の非
特異的結合のためだけではなく、使用され得るチャンバのサイズが小さいためでもあり得
る(同上)。従って状況によっては、これらの著者(同上)によって記載されるように本発明に従うデバイスに基づく自動化装置で採用される任意のプロトコルの性能を評価および最適化することが望ましくなり得る。
【0111】
本発明を容易に理解でき、実務上の効果が得られるようにするため、次に特定の実施形態を以下の非制限的実施例を通して記載することになる。
本発明は、非限定的実施例と添付の図面と併せて考慮されると、詳細な説明に準拠して一層よく理解されるだろう。
【0112】
本発明に従う方法と反応物質、更に用いられ得る工程の模範的実施形態が添付の図において示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0113】
図1A〜図1Cは、本発明の第1実施形態に従うマイクロ流体装置10(一層全般的な意味において区画部材とも呼ばれる)の断面図を示す。デバイスとしてのマイクロ流体装置10は、上面に形成される凹部14を備えるベース基板12を含む。充填部材16は、ベース基板12の上面の少なくとも一部を覆うべく配置されると共に凹部14を充填する。図1Aに示すマイクロ流体装置において充填部材16は、上面の一部分だけを覆うが、図1B(と同様に図1Dにおいて、下記参照)に図示するマイクロ流体装置は、デバイスの全上面を覆う充填部材16を含む。図1Cに示すデバイスにおいて充填部材は、マイクロ流体装置の全表面を覆う。ベース基板のたとえば上面などの表面の一部分を覆う充填部材の何れかの部分は、必要に応じてエッチングか他の何れかの適した手段によって除去可能である。
【0114】
流路18は、凹部14に位置する充填部材16の部分内に存在するように配置される。第1開口と第2開口を含む流路の終端は、充填部材16の第1側壁と第2側壁に配置される。図示した実施形態の流路は、直線流路である。従って図示した断面図において流路の外形は、充填部材の側壁から見られる。流路18は、凹部14内に配置され、流路の長さは、凹部の長さに沿って位置するように方向付けられる。その方位を前提として、流路18は、マイクロ流体装置10において水平方向に配置される。凹部14は、2つの対向側壁と1つの底壁によって区画形成される。図1A(と同様に図1Dにおいて、下記参照)に示す凹部は、真っ直ぐな平面流路壁を含む。図1Bと図1Cにおいて示されるマイクロ流体装置において流路の底壁は、凹面を提供するように丸い外形からなる。図1Cに示すマイクロ流体装置において更に2つの対向側壁は、傾斜部分を含む。
【0115】
図1Dは、本発明の一実施形態のマイクロ流体装置(区画部材)の斜視図を示す。図1Dの右下の矢印記号19は、デバイスに対する水平方向を示す。1つの開口(入口か出口の何れかであり得る)は、マイクロ流体装置の第1側面(見る人の方を向く)に形成される。別の開口は、第1側壁に対して対向関係に配列される側面(見る人から背を向ける)上に形成される。図2B〜図2Dにおいて示されるように充填部材の異なる表面トポグラフィもまた、製作後、マイクロ流体装置において存在し得る。
【0116】
図1Eは、本発明に従うマイクロ流体装置の流路口の走査電子顕微鏡写真を示す。図において見ることができるように実質的に円形の開口は通常、本発明の方法を用いることによって得られる。図1Fは、本発明のデバイスの更に別の実施形態を断面図で示す。図1Cに示されるデバイスと類似して充填部材16は、デバイスの全表面を実質的に覆う。流路18が位置する凹部14は、2つの対向側壁と1つの底壁によって区画形成される。対向側壁のうちの1つと底壁は、凹面形の表面を有するが、第2対向壁は、凸面形の表面を備える。図1Gは、本発明のマイクロ流体装置の更に別の実施形態を斜視図で示す。図1Gの底部の矢印19は、デバイスに対する水平方向を示す。充填部材16は、マイクロ流
体装置の全表面を覆う。流路18が位置する白色で図示される凹部14は、デバイスの一側面上に配置され、右方に示された方位にある。充填部材16の第1側壁は、ベース基板12の、同様に白色で図示される壁部分(27)を区画形成する。
【0117】
図1H〜図1oは、マイクロ流体装置(区画部材)の実施形態を平面図で示す。各々のマイクロ流体装置は、凹部14を含む。凹部14は、第1対向側壁23、第2対向側壁24、および底壁(見る人から背を向ける)によって区画形成される。凹部14は、充填部材16(点部分)の少なくとも一部分を含む。充填部材16の第1側壁21と第2側壁22は、互いに対向関係に配置される。第1側壁21は、流路18の第1開口を含む。第2側壁22は、流路18の第2開口を含む。図1L、図1Mと図1Nに示すマイクロ流体装置は更に、第1水平凹部28を含む。図1oに示すマイクロ流体装置は、第1水平凹部28と第2水平凹部29を含む。
【0118】
図1Kに示すマイクロ流体装置の凹部14と同様に流路18は、弓形である。図1Iと図1Kに示すマイクロ流体装置の流路18は、流路開口と隣接する円錐部71を備える。円錐部71は、開口に向かって広がる。同様に図1Lに示すマイクロ流体装置の流路18は、流路開口に隣接する円錐部9を有する。円錐部9の幅は、開口に向かって減少する。更に図1Iに図示するマイクロ流体装置の流路18は、隆起72を有し、前記隆起において流路の幅が広がっている。図1Mに図示するマイクロ流体装置は、充填部材16によって全体的に覆われる。
【0119】
図2は、本発明に従う図1に例示されるようなマイクロ流体装置を形成する模範的方法を例示する。断面が少なくとも実質的に円形か少なくとも実質的に楕円形の外形の周縁壁を備える流路を形成する方法は、シリコンウエハ上に凹部14をエッチングすること(図2A)から始まり、続いて充填材としてドープ酸化ケイ素(たとえばPSGなど)で凹部14を部分的に充填する(図2B)。従って充填部材16を形成する。スルーチャネル型の空隙19が充填後にドープ二酸化ケイ素中に残されるように凹部14を不完全に充填することを指す。部分充填は、凹部の側壁上にドープ酸化ケイ素を同時に蒸着することによって実施される。充填材を変形または、リフローすることによって空隙19の断面形は、徐々に円形に近づき、従って凹部内に外形が円形の流路を実現する。このため充填材のガラス転移温度を超える加熱処理が行われる。
【0120】
加熱処理後、ドープ酸化ケイ素は、変形および収縮し(図2C)、凹部の開放部で共に狭窄することによって狭窄部分を形成し、狭窄部分の下方に空隙を閉込める。空隙19が閉込められた後、次にリフローできるように更なる加熱処理がドープ酸化ケイ素を更に変形させることによって、空隙19を外形が少なくとも実質的に円形か少なくとも実質的に楕円形の断面をもつ周縁壁を備えた流路に徐々に成形する(図2D)。図2Eは、マイクロ流体装置60の平面図を示す。マイクロ流体装置60は、第1流体チャンバ62、第2流体チャンバ64、および流路68を含み完成した。流路68は、区画部材中において点線領域で示す。
【0121】
温度と圧力の工程パラメータは、円形流路の形成を成し遂げるべく変化させた。充填材としてホウ素・リン・ケイ酸ガラス(BPSG)とリン・ケイ酸ガラス(PSG)を用いることによって充填部材を形成すべく使用された六つの条件を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
図3Aは、本発明の完成したマイクロ流体装置60の斜視図を示す走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。マイクロ流体装置60は、第1流体チャンバ62、第2流体チャンバ64、および区画部材66を有する。区画部材66は、内部に埋込まれた流路68を備える。図3B〜図3Dは、少なくとも実質的に円形の領域を区画形成すると認められる流路68の開口のSEM拡大図を示す。図3Bと図3Cは、幅が2ミクロンの凹部における本発明のデバイスの流路68の開口を示すが、図3Dは、幅が3ミクロンの凹部における本発明のデバイスの流路68の開口を示す。開口の外形は、主として凹部のアスペクト比(幅/深さ)、PSG層の厚さおよびアニーリング条件に依存する。図4Aに関する下記の工程パラメータでは、幅が2ミクロンと3ミクロンの凹部は、それぞれ1.2ミクロンと0.2ミクロンのマイクロ流路径を形成した。注目すべきことにマイクロ流路径は総じて、凹部の幅と逆に変動することが観察された。マイクロ流路の長さは、10ミクロン、20ミクロンと50ミクロンにリソグラフ法により設定された。各々のデバイスは、同様に貯蔵器と流体相互コネクタを含有したレプリカ成形PDMS層に手動で整列および結合された。
【0124】
図4Aと図4Bは、マイクロ流体装置(区画部材)を形成する本発明の方法の2つの実施形態(第1作製方法と第2作製方法)の図式的概観を示す。第1方法A(左方)において立方形のベース基板12が提供される。第2方法B(右方)において第1水平凹部28と第2水平凹部29を備える立方形のベース基板12が提供される。凹部14は、ベース基板(I)の上壁に形成される。第2方法Bにおいて凹部14は、第1水平凹部28と第2水平凹部29のそれぞれまで広がるようにオープンエンドである。充填材は、ベース基板の上面に蒸着されるか(A)、全ベース基板上に蒸着または被覆される(B)ことによって、凹部内に空隙19を備える充填部材16を形成する(II)。充填材を変形またはリフローすることによって、少なくとも実質的に円形か少なくとも実質的に楕円形に形状が近づくまで、断面における空隙の外形が徐々に変化する。従って外形が少なくとも実質的に円形か少なくとも実質的に楕円形の断面を備える周縁壁を有する流路18が形成される(III)。第1方法Aにおいて第1水平凹部28と第2水平凹部29は、それぞれ乾式エッチングによってデバイス内に形成される。従って凹部14は、第1水平凹部28と第2水平凹部29のそれぞれまで広がるようにオープンエンドになる。同時に流路開口35が形成される(IV)。第1方法Aにおいて第1水平凹部28と第2水平凹部29の各々を充填する充填部材のうちの各々の少なくとも一部分は、流路開口35が形成されるように除去される(IV)。
【0125】
簡単に説明すると図4Aの一般的図式の模範的方法において深紫外線(DUV)リソグラフィを用い、続いてシリコンの反応性イオンエッチング(RIE)によってp型シリコン上に凹部が形成された[(I)]。従って幅が2ミクロン、深さが3.5ミクロンの凹部が区画形成された。凹部は、プラズマ化学気相成長(PFCVD)システムにおいて約8%リンを含有するリン・ケイ酸ガラス(PSG)で部分的に充填された(トレンチ中に空隙を実現するため)[(II)]。当然のことながら望ましい場合、8%以外の%のリンを使用し得る。他の厚さを同じように使用し得るが、リン・ケイ酸ガラス厚は、4ミクロンに設定された。非共形段階被覆のため、トレンチを完全に充填する前にPSG層は、トレンチの入口で狭窄したので、閉込められた空隙を内側に残した。
【0126】
空隙は、1150°Cで30分間PSGのリフローと呼ばれる加熱処理によって強制的に円筒形にされた[(III)]。リフロー温度は、望み通りに調整され得る。アニーリング温度と期間を減らすと楕円断面の外形が形成されたが、それらを増やすと円筒形の直径が僅かに減少した。過剰量のPSGは、化学機械的研磨によって基板から除去された。第2リソグラフィとエッチング段階を適用することによって、流体チャンバを作り出すと共に埋め込みマイクロ流路の各々の側で両端を切開した[(IV)]。
【0127】
深さ約20ミクロンのチャンバは、最初にSiO(上記の段階IIにおいて蒸着されるような4ミクロン)を第1エッチングし、次いでシリコンエッチングすることによってシリコンベース基板において作り出された。開放流路サイズを増やすため、任意に室温で約1分間、緩衝化酸化物エッチ(BOE)(1:6比)でPSGの湿式エッチングが行われ得る。場合によっては、1150°Cで15分間、酸素中で最終アニーリングが行われ、厚さ350ナノメータの熱SiOを成長させることによって開口縁の角取りと暴露シリコンの絶縁を促進した。
【0128】
簡単に説明すると図4Bの一般的図式の模範的方法においてシリコンの二段階リソグラフ的パターニングが深紫外線(DUV)リソグラフィ、次いでシリコンの反応性イオンエッチング(RIE)を用いることによって実施された[(I)]。従って深さ3.5ミクロンの方形第1凹部が作り出された。第2リソグラフィ段階後、深さ約20ミクロン〜25ミクロンの貯蔵器型の第2水平凹部が、DUVリソグラフィ、次いでシリコンの反応性イオンエッチングを用いることによってトレンチ形の第1凹部の両側に作り出された。
【0129】
続いて約8%のリンを含有する厚さ約4ミクロン〜6ミクロンのリン・ケイ酸ガラス(PSG)層がプラズマ化学気相成長(PECVD)システムで基板上に蒸着された。従って閉込められた空隙がトレンチの内部に形成された[(II)]。そのような空隙形成は、トレンチが完全に充填される前にトレンチ入口で狭窄するPSG層の非共形段階被覆のために生じる。被覆デバイスは、アニーリング前に小さな開口を開くべく室温で1分間、緩衝化酸化物エッチング液[BOE(1:6)]の湿式エッチングを受けた。必要な時間は、要求される開口サイズに依存する。
【0130】
空隙は、アニーリング段階[(III)]において、PSG層をリフローすることによって意図的に円筒形に押込まれた[(III)]。一般的にリフローは、1150°Cで30分間行われたが、リフロー温度と期間は、要望通りに変化させることが可能である。任意にリフローされたデバイスは、ホールの必要サイズに依存して室温で1分間、更に緩衝化酸化物エッチング液[BOE(1:6)]湿式エッチングを受けることが可能である。
【0131】
図4Aと図4Bに示す方法の2つの実施形態は、ベース基板に1つの水平凹部を提供することによって組合わせ得る。凹部は、ベース基板の上壁に形成され得る。前記凹部は、
上壁の一側面にわたると共に水平凹部まで広がる。ベース基板上に充填材を蒸着することによって、空隙を備えた充填部材が形成される。充填材を変形または、リフローすることによって形成された流路は、ベース基板の一側面で水平凹部まで達する。この水平凹部を充填する充填部材の各々一部分を除去することによって、流路の第1開口が形成される。他方側面で水平凹部が乾式エッチングを手段としてマイクロ流体装置に形成される。従って流路の第2開口が形成される。得られたマイクロ流体装置は、第1開口に隣接するテーパ部分を備えた流路を含み得る。テーパ部分は、周縁壁のサイズが幅に関して減少することによって長さ方向に延びる円錐形であり得る。そのようなデバイスは、たとえばテーパ部分に、あるいはテーパ部分内など、流路内に生命体を配置および固定すべく用いられ得る。
【0132】
図5A〜図5Cは、パッチ・クランプ・レコーディング設定の概略図を示す。図5Aは、ガラスマイクロピペットとしてのピペット51と、ペトリ皿(42)とを用いる古典的設定を示す。細胞27は、試料溶液(30)中に提供される。ベース基板(22)の底部に接着される細胞27がパッチされる。細胞27は、ベース基板(22)中の試料溶液(30)をピペット51の内部(32)の試料溶液から分離する。検出電極(28)は、電気測定を実施すべくパッチ・クランプ増幅器(24)に接続される。
【0133】
図5Bは、平面型パッチ設定の略図を示す。試料溶液(30)中の細胞27は、開口78を覆うようにチップ(52)の表面に置かれる。従って細胞は、試料溶液(30)を、開口78下の空洞(32)中の試料溶液から分離する。この試みは、ベース基板(22)上の平面型パッチ開口において、懸濁細胞としての細胞27を自己誘導および捕捉する。よって顕微鏡、マイクロマニピュレータ、および熟練オペレータを必要としない。
【0134】
図5Cは、水平方向型パッチ・クランプ設定の横断面図の簡略化略図を示す。図中、区画部材26は、細胞27を含有する試料溶液を含む第1流体チャンバ30と、第1流体チャンバ30から排出された試料溶液と混合される電解質を含む第2流体チャンバ32との間のベース基板(22)に配置され、両流体チャンバは、ベース基板において一体となって区画形成される。細胞27は、吸引(吸引装置は図示略)によって区画部材26の下位部に存在する流路18の開口に固定される。流体チャンバ内に配置される検出電極(28)は、たとえば細胞27を通って移動するイオン電流か細胞27を横切る電位差などの電気測定を行うべくパッチ・クランプ増幅器(24)に接続される。パッチ・クランプ設定は更に、細胞に適用される吸引を支援すべく第1流体チャンバ30と第2流体チャンバ32をシールする上で、役立ち得るキャッピング層(図示略)を含み得る。
【0135】
図6は、図4Bに示す方法を用いることによって得られる流路開口のSEM拡大画像を示す。両開口は、少なくとも実質的に円形の領域を区画形成する。白色点線は、開口に隣接する部分を含む図6Aの各々のマイクロ流体装置の流路が円筒形であることを示す。それと対照的に図6Bの各々のマイクロ流体装置の流路は、開口に隣接するテーパ部分を備える。この末端部分において周縁壁のサイズは、幅、たとえば直径か最大径に関して開口に向かって減少する。白色点線は、各々の円錐形周縁壁を示す。従って流路のこの部分は、狭い口と広い本体を備えたプル型の従来式パッチ・クランプ・ピペットの内部に似ている。そのような円錐形の流路構成は、円筒形流路と比較して、低ノイズ記録において重要な「アクセス抵抗」を減らす。
【0136】
図7は、パッチ・クランプ法用のプル型の従来式マイクロピペットの先端(図7A)と、本発明に従うマイクロ流体装置の2つの切抜き図(図7Bと図7C)との比較を示す。図7Bと図7Cに示す両マイクロ流体装置は、流路開口35に隣接する円錐部9を含む流路18を備え、流路の幅は、流路開口35に向かって徐々に減少する。従って流路の各々の円錐部9は、プル型の従来式パッチ・クランプ用ピペットに似ている。図7Bに示す流
路開口35は、充填部材の側壁によって区画形成される各々のマイクロ流体装置の側壁部分としての第1側壁21内に含められる。第1側壁21は、少なくとも実質的に平面である。図7Cに示すデバイスにおいて流路開口35は、三次元的に構築されるマイクロ流体装置の第1側壁21に含められる。流路開口35に隣接する第1側壁21の表面は、流路開口35を取り囲む突起部33を区画形成するように皿形である。従って流路開口35は、第1側壁21によって区画形成される平面とは、異なる平面に位置する。
【0137】
図8は、線A−A’に沿って切取られた、収束イオンビーム(FIB)前後の図4Bに示す方法に従がって製造されたマイクロ流体装置のSEM画像を示す。図8Aは、線A−A’の下に位置する流路を含む充填部材の部分を含むマイクロ流体装置の一部分の斜視拡大図である。図8Bは、流路の切断周縁壁の長さを示す斜視図である。流路の第1開口と第2開口は、各々円によって印される。図に示すように流路の末端部分の幅は、開口に向かって徐々に減少する。図8Aは、更に線A−A’の下方に位置する流路開口のすぐ近くにある開口を備える2つの補助流路69を図示する(下記参照)。
【0138】
図9Aは、パッチ・クランプ・チップとして図2E(または図4)に示すようなデバイスの使用を示す。左のデバイス(I)は、シリコンから製造されるが、右のデバイス(II,III)は、ガラスから製造される。デバイスは、図2Eに示すようなチャンバを含んだ。標準プロトコルがパッチ・クランプ測定に用いられた。図9Aの(I)に示される測定の一例としてチャンバは、伝導度(σ)が1.8S/mの電解質と以下の組成物(mM)
:150NaCl,2.8KCl,10CaCl,1MgCl,10HEPESおよび2mg/mlのブドウ糖、pH7.2(310mOsm)で下塗りされた。他の溶液は、第1流体
チャンバと第2流体チャンバ(標準パッチ・クランプ法の「バス溶液」と「ピペット溶液」に対応する)において従来式パッチ・クランプ測定と同じ方法で首尾よく使用された。電気抵抗(Ropen)は、パッチ・クランプ増幅器(EPC10,HEKA)に接続されたAg/AgCl電極を介して2つのチャンバにわたって測定された。図4Aに示すように得られたマイクロ流体装置では、測定値は、マイクロ流路配列に基づくRopen=L/σπrとよく一致した(Lは長さ、rは半径)。
【0139】
図4Bに示すように得られたマイクロ流体装置では、これはこれまでのところ推定値に基づき確認可能である。デバイスのシール形成能力は、公知のプロトコル(ハーン(Hahn),S.J.,ら、Eur.J.Pharmacol.(1999)367,113)に従って培養されたラットP
C12細胞で試験された。細胞は、5μg/mlのカルセイン−AM(インビトロゲン(Invitrogen))の蛍光色素と37°Cで15分間インキュベートされた。その後トリプシン処理され、遠沈され(4°Cで5分間1000rpm)、浴チャンバ内に導入する
前に電解質に再懸濁された。細胞がパッチ開口の及ぶ範囲の50μm内に認められたとき
、細胞は、手動式シリンジによって記録チャンバに約25kPaの吸引を適用することによって、再配置および捕捉された。吸引圧がマイクロ流体装置の製作方法(用いられる材料を含めて)に依存して変化し得ることを留意する。
【0140】
これに関しては図4Bに示すように得られたマイクロ流体装置を用いる場合、一層低い吸引圧が要求される。具体的にはそのような実施形態において一層大きな補助流路を使用可能であり、従って必要な吸引圧を下げる。負電圧バイアスは、本実施例においてシール形成を促すべく維持された。そのような負バイアス電圧は、使用できるかどうかわからない。電流トレースは、一般的に電解質とシリコンの間の電荷結合から生じる容量スパイクの何れの補償も伴わなかった。当然のことながら、そのようなスパイクは、図9Cから理解され得るように、図4Bに示すように得られたマイクロ流体装置を用いる場合、無視でき得るか少なくとも明らかではない。CHO細胞とRBL−1細胞を用いる測定は、類似のプロトコルで実施された。蛍光色素は、常時使用されなかったが、上記のように含められたであろう。当然のことながら遠沈パラメータは、細胞型と細胞培養条件で変動する。
【0141】
低い容量結合が観察されると共に透過率対反射というモデルで細胞の画像化が一層容易になり得るのでガラスの使用が望まれ得る。
図9Bと図9Cは、図4A(図9B)および図4B(図9C)(容量補償無し)に示すような工程に基づき製作されたデバイスからのマイクロ流体装置の典型的なSEM画像と典型的な電気的記録を示す。デバイスは、シリコンか(図9B)図4Aに示される最終段階中に成長した薄いSiO絶縁体(約0.35ミクロン)を備えたシリコンからなるベース基板から形成された。特に電流の大きさ(同じ電圧刺激下で)は、容量スパイクのため有意に異なる。そのような大きな容量スパイクは、電解質とシリコン基板の間の電荷結合から生じる。分布容量の推定が困難なため、容量スパイクを電子的に除去することは失敗した。極厚の誘電体層を蒸着することによって容量結合が排除されるが、パッチ開口を詰まらせる。他方では高温は、ガラスをリフローさせることによって、パッチ開口を変形させるので、酸化物層を熱的に成長させる試みはうまくいかない。
【0142】
図4Bに示す方法は、パッチ開口の望ましい外観を保持しながら厚い誘電体層の蒸着を可能にする。従って容量スパイクは、電子的に除去可能な程度まで最小化される(図9C)。図9Cは、更に2つの補助流路69を図示する(同様に図8Aと下記参照)。
【0143】
図10Aは、図4Aに示される方法によって得られたデバイスの電気データの要約を示す。前記デバイスは、パッチ・クランプ・チップとして試験された。図10Bは、図4Bに示す方法によって得られたデバイスの各々の電気データの要約を示す。9試験がラット好塩基球性白血病(RBL−1)細胞を用いて実施された。注目すべきことにギガシールは、4測定において達成されることができた。2つの模範的写真は、細胞捕獲前(I)と細胞捕獲後(II)のデバイスと設定を示す。
【0144】
図11Aは、本発明のマイクロ流体装置(たとえば図2に示されるようなデバイスにおいて区画部材として働く)の実施形態の斜視図を示す。前記デバイスは、単一凹部を充填する充填部材36内に複数の流路34を含む。図11Aの右下の矢印記号19は、デバイスに対して水平方向を示す。図11Bは、充填部材が複数の凹部14を充填する実際の区画部材の電子顕微鏡写真を示す。1つの流路が各々の凹部内に配置される。複数の流路を用いることによって、必要であれば複数の試料を平行して処理可能である。
【0145】
図12Aに示すような更に別の実施形態において区画部材42は、第1流体チャンバ配列44と、各々の第2流体チャンバ配列46との間のデバイス40内に配置される。各々の第1流体チャンバは、同じ配列における隣接する第1流体チャンバから区画される。各々の流路48は、各々の第1流体チャンバを各々の第2流体チャンバに流体連通可能に接続する。この構成においてたとえば大量の薬剤を有効性について同時に個々にスクリーニング可能である。このため個々セットの検出電極が各々の第1流体チャンバと第2流体チャンバの各々のセットにおいて実験測定値を測定すべく存在し得る。
【0146】
またデバイス50において単一(共通)第1流体チャンバ54は、単一型の細胞を含有し得る試料を受容すべくデバイス50中に存在し得る(図12B参照)。複数の流路58を備えると共に図12Aに示されるものと同じ構造を有する区画部材52が使用され得る。第1流体チャンバ54は、個々に区画した第2流体チャンバ56配列に流体連通可能に接続される。この構成においてただ1つの共通接地電極が第1流体チャンバにおいて設置される必要があり、第2流体チャンバ数と同じ多さの独立した検出電極が各々隔離された第2流体チャンバ内に配置される。
【0147】
幅が0.2ミクロン〜3ミクロンの範囲内、深さが0.5ミクロン〜7ミクロンの範囲内の凹部が、上記の工程に従って製作された。異なる流路寸法を得るためには、上記の実
験で得られるものよりも小さいか大きな寸法の凹部が必要となり得ることが指摘されるべきである。プラズマ化学気相成長法(PECVD)を用いることによってトレンチ内に低圧(0.33kPa(2.5Torr))でドープ二酸化ケイ素(PSG)を充填した(図13A)。次にウエハは、必要な流路の最終断面に依存して異なるタイミングで1100°C〜1200°Cの範囲内の加熱処理を受けた(図13B)。ウエハ表面は、次に化学機械的平坦化(CMP)によって平坦化されるか、ウエハ表面上の過剰PSGをエッチングし、次いで貯蔵器をマスキングおよびエッチングすることによって平坦化される(図13C)。そのような流路は更に、たとえば電極、相互コネクトおよび貯蔵器のような他のデバイス構成要素を製作するための始動ウエハとしても用いることが可能である。本発明は更に、複数の垂直に自己整列した流路を製作することも可能である。たとえば第1流路の構築後、一番上の酸化物を部分的に除去でき得るので第2流路が上方に製作される。
【0148】
図14は、円錐部(隣接部)9を有する流路18を備える本発明のデバイスを用いることによって、細胞53の全体を固定する実施形態を示す。円錐部9は、周縁壁の幅が流路開口35に向かって減少するように長さ方向に延びる円錐形であり、流路開口35に隣接する流路18の一部分である。流路18の開口としての流路開口35は、第1側壁21内に含められる。図14Aと図14Bは、図7Bにおいて切抜図で示すデバイスに対応する。図14Cと図14Dは、図7Cにおいて切抜図で示すデバイスに対応する。細胞53は、矢印によって示される吸引力と圧力(従来式のパッチ・クランプ法に類似)のうちの少なくとも1つを手段として固定され得る。図14Aと図14Cにおいて細胞53は、両図において第1側壁21の右方に位置すると共に壁部分(21)を含む流体チャンバ(図示略)内に含められる。細胞は、開口上に固定されることによって、流体チャンバから流路内に、およびその逆のイオンの自由運動を制限する(従って任意の他のチャンバ、貯蔵器、流路か、流路と流体接続する他のスペースからの出入り)。また第2流体チャンバから第1流体チャンバ内へのイオンの自由運動も制限する。
【0149】
図14Bと図14Dにおいて細胞53は、流路18内に含まれる。この場合も細胞は、流路(および任意のこのような他のチャンバ、貯蔵器、流路か、流路に流体連通する他のスペース)と、第1側壁21(および壁部分)を含む)の右方に位置し得る流体チャンバとの間のイオンの自由運動を制限する。幾つかの実施形態において固定前に細胞53を配置し易くすべく、および同様に固定後に細胞の位置の安定性を一層高くすべく図14Bと図14Dに示すような流路内側に細胞53を固定することが望まれ得る。
【0150】
図15は、周縁壁(68)を備える流路に加えて、補助側部流路としての補助流路69を含む本発明に従うデバイスの拡大画像を示す(本実施例においてパッチ開口として用いられる)。補助側部流路は、周縁壁を備える流路の周囲に構築され、別個の開口を含む。これらの流路は、たとえば容器、ポンプなどの個々のデバイスに流体連通するように配置可能である。これは、低圧を使用して吸引を適用できるようにする。従って個々の細胞は、周縁壁を備えた流路開口近くまで運ばれ、そこに配置可能である。同時に細胞は、不都合な細胞をこれらの流路内か、または周縁壁を備えた流路開口から遠ざけるかのうちの少なくとも一方に向けることによって選択可能である。
【0151】
図16は、補助側部流路によって制御吸引を適用することによって周縁壁を備えた流路開口で個々の細胞(矢印によって印される)を捕獲することを示す連続フレームを示す。補助側部流路によって適用された制御吸引は、すぐ近くの細胞をパッチ開口に引付ける。フレームT5において細胞は、各々の開口に配置される。補助流路無しに、周縁壁を備える流路によって適用されるそのような吸引自体によって、前記細胞を引付ける有効な流量は、生じ得ないだろう。
【0152】
状態I(AかB)として図4に示す状態において、補助流路は、たとえば既に提供され
得る。従って一般的にそのような側部流路の幅は、デバイスの製作中にたとえば充填材などの物質の蒸着がそれらを充填できないように十分に大きく設計される。更にこれらの側部流路の最終断面は総じて、適用吸引が効果的になるべく、周縁壁を備える流路の断面(本実施例においてパッチ開口として使用される)より大きい。50ミクロンの距離は、上限よりはむしろ実施例を示すことに留意する。具体的には図4Bに示すように得られたマイクロ流体装置が使用される場合、50ミクロンよりずっと遠くにある細胞を引付けることが可能である。
【0153】
ミクロ/ナノ流路断面寸法の数学的モデリングは、以下のように実施される。非共形酸化シリコンがトレンチ内に初期温度Ti、初期圧力Piによって充填されるとする。これは断面領域Aを備えるトレンチ内の空隙になる。凹部(トレンチ)内に生じた空隙は、大気圧以下の圧力にあるので、酸化ケイ素が軟化されるなら、空隙は縮小する傾向がある。軟化条件に依存して空隙の最終寸法Afを予測可能である。軟化が最終温度Tf、最終圧力Pfで行われるなら、理想気体の法則から
(Pi・Vi)/Ti=(Pf・Vf)/Tf…(式1)
式1は、空隙の初期容積Viと、空隙の最終容積Vfを含む。
【0154】
しかし空隙(トレンチ)の長さは不変なので、ViとVfは式(1)においてそれぞれAiとAfと置き換えることによって、式2
(Pi・Ai)/Ti=(Pf・Af)/Tf…(式2)
または式3
Af=(Pi/Pf)・(Tf/Ti)・Ai…(式3)
に至る。
【0155】
たとえば典型的な場合においてBPSGは、400°C、6.67kPa(50Torr)の圧力で蒸着される。BPSGは、幅2ミクロン、深さ約7.7ミクロンの凹部において約6平方ミクロン(6.0ミクロン×1.0ミクロン)の断面積の空隙を生じることが観察される。この空隙は、減圧か大気圧下での加熱に暴露後、円形断面に変形させることが可能である。この方法によって得られる流路の種々の実施例を表2に要約する。
【0156】
【表2】

【0157】
要約すると本発明は、最小表面/摩擦抵抗と一層優れた電気シーリングを提供する円形か楕円形の断面を備える側部流路を形成することができる。本発明は更に、ミクロンからナノメータの範囲の断面径を備える流路を形成することも可能であるが、現行法は、マイクロ流路かナノ流路の何れかの製造にのみ優れる。流路の断面寸法は、予測できると共に製作条件を変化させることによって正確に制御可能である。製作工程は、完全にCMOS
適合性であるので既存のシリコン鋳物工場で実行可能である。流路製作費は、電子ビーム・リソグラフィ、ウエハ・ボンディング、レーザ光源、ポリマーなどのような特殊ではないツール/工程が使用されるので低い。本発明は更に、複数の自己整合流路を水平方向と縦方向の両方に製作すべく用いることも可能である。
【0158】
本明細書において先に公開された文書の列挙や考察は、必ずしも文書が最先端の一部であるか、普通の一般的知識であるという認識としてとらえるべきではない。列挙された全文書は本明細書において全体を参照文献によって盛り込まれる。本発明は、本明細書において広範囲かつ全般的に述べられている。包括的開示に含まれる各々の下位種や亜族分類もまた本発明の一部を形成する。これには、削除物質が本明細書において具体的に挙げられようとなかろうと、属から任意の対象を除去する条件付きか消極的な限定付きで本発明の一般的記述が含まれる。
【0159】
本明細書において例示的記載される本発明は、本明細書において具体的に開示されない任意の構成要素または複数の構成要素、限定または複数の限定無しに適切に実践され得る。従ってたとえば用語「備える」、「含む」、「含有する」などは、拡張的かつ限定無しに読まれるべきである。更に本明細書において用いられる用語と表現は、限定の用語ではなく説明用語として使用されるので、図示および説明される形状構成か部分の任意の等価物を排除するようにそのような用語と表現を使用する意図はないが、種々の改変は、特許請求の範囲内で可能であると認識される。本発明の更に別の目的、利点および形状構成は、前記の実施例と添付の請求項を試験することによって当業者には明らかになるだろう。従って当然のことながら本発明は、模範的実施形態と任意の形状構成によって具体的に開示されるが、開示され本明細書において中で具現化される本発明の改変と変更は、当業者によって再分類可能であり、そのような改変と変更は、本発明の範囲内にあると考えられる。更に本発明の形状構成または側面がマーカッシュ(Markush)群の観点から記載される場合、当業者も本発明が従って任意の個々数か亜群数のマーカッシュ群の観点から記載されることを認識するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1A】本発明の実施形態に従うマイクロ流体装置の断面図。
【図1B】マイクロ流体装置の断面図。
【図1C】別のマイクロ流体装置の断面図。
【図1D】単一流路を備える区画部材の斜視図。右下の矢印は、側部流路が区画部材において延びる水平方向を示す。
【図1E】単一流路の断面の、走査電子顕微鏡写真。
【図1F】本発明のマイクロ流体装置の、別例の断面図。
【図1G】本発明のマイクロ流体装置の、更なる別例の斜視図。
【図1H】マイクロ流体装置の、更なる別例の平面図。
【図1I】マイクロ流体装置の、更なる別例の平面図。
【図1J】マイクロ流体装置の、更なる別例の平面図。
【図1K】マイクロ流体装置の、更なる別例の平面図。
【図1L】マイクロ流体装置の、更なる別例の平面図。
【図1M】マイクロ流体装置の、更なる別例の平面図。
【図1N】マイクロ流体装置の、更なる別例の平面図。
【図1o】マイクロ流体装置の、更なる別例の平面図。
【図2A】本発明のマイクロ流体装置の、製作方法の簡略した正面図。
【図2B】マイクロ流体装置の、製作方法の簡略した正面図。
【図2C】マイクロ流体装置の、製作方法の簡略した正面図。
【図2D】マイクロ流体装置の、製作方法の簡略した正面図。
【図2E】マイクロ流体装置の、製作方法の簡略した平面図。
【図3A】本発明の更に別例のマイクロ流体装置の、走査電子顕微鏡画像。図3Aの実施形態は、図1に示すマイクロ流体装置を含む。図3Aに示すマイクロ流体装置において、後部は区画部材である。
【図3B】図3Aの区画部材の、流路開口の拡大斜視図。
【図3C】図3Bの区画部材の、流路開口の拡大正面図。
【図3D】図3Aの区画部材の、流路開口の正面図。
【図4A】マイクロ流体装置(図3に示す区画部材)を形成する、本発明の第1作製方法の斜視図。
【図4B】本発明の第2作製方法の斜視図。
【図5A】従来のパッチ・クランプ・レコーディング設定の略図であり、ガラスマイクロピペットを用いる正面図。
【図5B】平面型パッチ設定の正面図。
【図5C】水平方向パッチ・クランプ設定の正面図。
【図6A】図4Bの第2作製方法によって得られる、流路開口の拡大画像。
【図6B】図4Bの第2作製方法によって得られる、テーパ末端を備える流路開口の拡大画像。
【図7A】プル型の、従来のパッチ・クランプ・ピペットの先端の斜視図。
【図7B】開口に隣接する円錐部を含む、流路の実施形態の斜視図。
【図7C】別の円錐部を含む流路の、斜視図。
【図8A】収束イオンビーム前の、図4Bの第2作製方法によって形成されるマイクロ流体装置の走査電子顕微鏡画像。
【図8B】図8Aの線A−A’に沿って切取った、収束イオンビーム後のマイクロ流体装置の走査電子顕微鏡画像。
【図9A】実験結果のグラフと、図4Aの第1作製方法によって作製したマイクロ流体装置のパッチ・クランプ・チップとしての用途の画像。
【図9B】実験結果のグラフと、図4Aの第1作製方法によって作製したマイクロ流体装置のパッチ・クランプ・チップとしての用途の画像。
【図9C】実験結果のグラフと、図4Bの第2作製方法によって作製したマイクロ流体装置のパッチ・クランプ・チップとしての用途の画像。
【図10A】パッチ・クランプ・チップとして試験した、図4Aの第1作製方法によって得られるマイクロ流体装置の電気データの要約の表。
【図10B】パッチ・クランプ・チップとして試験した、図4Bの第2作製方法によって得られるマイクロ流体装置の電気データの要約の表と、画像。
【図11A】複数の流路を備える区画部材の斜視図。
【図11B】複数の流路の断面の、電子顕微鏡写真。
【図12A】複数の第1流体チャンバが、それぞれ流路を通じて複数の第2隔離流体チャンバのうちの対応するものに接続される平面図。
【図12B】単一の第1流体チャンバが、複数の流路を通じて複数の第2隔離流体チャンバに接続される平面図。
【図13A】本発明の製作方法において、変形を受ける充填部材の種々の段階の顕微鏡写真。
【図13B】本発明の製作方法において、変形を受ける充填部材の種々の段階の顕微鏡写真。
【図13C】本発明の製作方法において、変形を受ける充填部材の種々の段階の顕微鏡写真。
【図14A】本発明のマイクロ流体装置によって細胞を、流体チャンバ内において流路開口上に固定可能な方法の、実施例の斜視図。
【図14B】細胞を、流路内部に固定可能な方法の斜視図。
【図14C】細胞を流体チャンバにおいて、流路開口上に固定可能な方法の斜視図。
【図14D】細胞を、流路内部に固定可能な方法の斜視図。
【図15】付加的補助側部流路を含む、本発明のマイクロ流体装置の拡大画像。
【図16】付加的補助側部流路によって制御された吸引によって、流路開口において単離細胞を捕獲する、一連の画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板、充填部材、および流路を備えるマイクロ流体装置であって、
前記ベース基板の内部は、少なくとも2つの対向側壁と1つの底壁によって区画形成される凹部を備え、
前記充填部材の少なくとも一部は、前記凹部を充填する充填部を有し、
前記流路は、前記充填部内に形成され
前記流路は第1開口と第2開口を備え、
前記第1開口は、前記充填部材の第1側壁に配置され、
前記第2開口は、前記充填部材の第2側壁に配置され、
前記第1側壁は、前記第2側壁に対して対向関係に配置され、
前記第1側壁と前記第2側壁のうちの少なくとも一部分は、前記対向側壁に対して少なくとも実質的に垂直である、マイクロ流体装置。
【請求項2】
前記流路は周縁壁によって区画形成され、
前記流路の少なくとも一部分における前記周縁壁の断面は、少なくとも実質的に円形、または少なくとも実質的に楕円形の外形を備える、請求項1記載のマイクロ流体装置。
【請求項3】
前記第1開口と前記第2開口のうちの少なくとも一方は、少なくとも実質的に円形、または楕円形の領域を区画形成する、請求項1または2記載のマイクロ流体装置。
【請求項4】
前記流路の周縁壁は、前記第1開口に隣接する円錐部を有し、
前記円錐部は長さ方向に延び、前記円錐部において前記周縁壁の幅は前記第1開口に向かって減少する、請求項2または3記載のマイクロ流体装置。
【請求項5】
前記第1開口と前記第2開口のうちの少なくとも一方によって区画形成される領域の幅の最大値は、約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲内にある、請求項1〜4何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項6】
前記凹部の深さは、約1ミクロン〜約50ミクロンの範囲内にある、請求項1〜5何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項7】
前記深さは、約2ミクロン〜約20ミクロンの範囲内にある、請求項6記載のマイクロ流体装置。
【請求項8】
前記流路の幅の最大値は、約0.5ミクロン〜10ミクロンの範囲内にある、請求項1〜7何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項9】
前記流路の長さは、約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲内にある、請求項1〜8何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項10】
前記流路は、前記充填部材内において水平方向に延びる、請求項1〜9何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項11】
前記流路の長さ方向は、前記第1側壁と前記第2側壁のうちの少なくとも一方に対して、少なくとも実質的に垂直である、請求項1〜10何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項12】
前記第1側壁は、前記ベース基板の壁部分を区画形成する、請求項1〜11何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項13】
前記ベース基板の前記壁部分は、前記ベース基板の側壁に設けられる、請求項12記載のマイクロ流体装置。
【請求項14】
前記ベース基板の前記壁部分は、前記ベース基板の水平凹部内に設けられる、請求項12または13記載のマイクロ流体装置。
【請求項15】
前記ベース基板の前記壁部分は、水平凹部を備える、請求項12または13記載のマイクロ流体装置。
【請求項16】
前記水平凹部は、前記第1開口を備える、請求項15記載のマイクロ流体装置。
【請求項17】
前記充填部材によって充填される前記凹部を主凹部と称し、
前記水平凹部の少なくとも一部分は、前記主凹部に対して少なくとも実質的に垂直に延びる、請求項14〜16何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項18】
前記水平凹部の深さは、0ミクロンよりも大きく約500ミクロン以下の範囲内にある、請求項14〜17何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項19】
前記水平凹部の前記深さは、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲内にある、請求項18記載のマイクロ流体装置。
【請求項20】
前記水平凹部は周縁壁と入口を備えることによって、流体チャンバを区画形成する、請求項14〜19何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項21】
前記マイクロ流体装置は、前記ベース基板の少なくとも実質的に互いに対向する2つの側面上に第1水平凹部と第2水平凹部を備え、
前記第1水平凹部は、前記第1側壁の少なくとも一部を備え、
前記第2水平凹部は、前記第2側壁の少なくとも一部を備え、
前記第1水平凹部は、第1流体チャンバを区画形成し、
前記第2水平凹部は、第2流体チャンバを区画形成し、
前記第1流体チャンバは、前記流路を通じて前記第2流体チャンバに流体連通する、請求項14〜20何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項22】
前記ベース基板は、前記第1流体チャンバと前記第2流体チャンバを一体的に区画形成する、請求項21記載のマイクロ流体装置。
【請求項23】
前記マイクロ流体装置は更に、
前記第1流体チャンバに配置される検出電極と、
前記第2流体チャンバに配置される基準電極と
を備える、請求項21または22記載のマイクロ流体装置。
【請求項24】
前記マイクロ流体装置は更に、
前記検出電極と前記基準電極にそれぞれ通信する電気生理学測定回路システムを備える、請求項23記載のマイクロ流体装置。
【請求項25】
前記充填部材は、前記ベース基板の全表面を区画形成する、請求項1〜24何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項26】
前記ベース基板は金属、半金属、セラミック、金属酸化物、半金属酸化物、および酸化物セラミックからなる群から選択される材料を備える、請求項1〜25何れか一項記載の
マイクロ流体装置。
【請求項27】
前記ベース基板は、ガラスを備える、請求項1〜26何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項28】
前記半金属は、シリコン、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモニイ、およびこれらの複合体からなる群から選択される、請求項26記載のマイクロ流体装置。
【請求項29】
前記金属酸化物は、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、およびこれらの複合体からなる群から選択される、請求項26記載のマイクロ流体装置。
【請求項30】
前記ベース基板は、前記充填部材の材料よりも変形しにくい材料からなる、請求項1〜29何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項31】
前記ベース基板の前記材料は、高温と減圧のうちの少なくとも一方の条件下で、前記充填部材の前記材料よりも変形しにくい、請求項30記載のマイクロ流体装置。
【請求項32】
前記充填部材は、誘電体を備える、請求項1〜31何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項33】
前記誘電体は、リン・ケイ酸ガラス、ホウ素・リン・ケイ酸ガラス、スピン・オン・ガラス(SOG)、ポリシリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、およびこれらの複合体からなる群から選択される、請求項32記載のマイクロ流体装置。
【請求項34】
前記第1開口を第1主開口と称し、前記第2開口を第2主開口と称し、
前記マイクロ流体装置は更に補助流路を備え、
前記補助流路は第1補助開口と第2補助開口を備え、
前記第1補助開口は前記第1側壁に配置される、請求項1〜33何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項35】
前記第1補助開口は、前記ベース基板の側壁部分に配置され、
前記ベース基板の前記側壁部分は、前記第1主開口を備える、請求項34記載のマイクロ流体装置。
【請求項36】
前記第1補助開口は、前記ベース基板の前記側壁部分の凹部に配置され、
前記凹部は、前記第1主開口を備える、請求項34または35記載のマイクロ流体装置。
【請求項37】
前記第1補助開口は、前記第1主開口に並ぶ、請求項34〜36何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項38】
前記充填部は複数の流路を備え、
各々の前記流路は、
前記第1側壁に設けられる第1開口と、
前記第2側壁に設けられる第2開口と
を備える、請求項1〜37何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項39】
前記マイクロ流体装置は更に、
前記ベース基板内に区画形成される複数の凹部であって、前記充填部材は各々の凹部のうちの少なくとも一部分を充填する充填部をそれぞれ有することと;
各々の前記充填部内にそれぞれ対応するように配置される複数の流路であって、各々の前記流路は、前記第1側壁に設けられる第1開口と、前記第2側壁に設けられる第2開口とを有することと
を備える、請求項1〜38何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項40】
前記第1側壁のそれぞれ前記第1開口に対応する部分は、共通平面を区画形成すべく整列される、請求項39記載のマイクロ流体装置。
【請求項41】
前記第1側壁のそれぞれ前記第1開口に対応する部分、前記ベース基板の壁部分を区画形成し、
前記ベース基板の前記壁部分は、前記ベース基板の水平凹部内に設けられる、請求項40記載のマイクロ流体装置。
【請求項42】
前記第1側壁のそれぞれ前記第1開口に対応する部分は、前記ベース基板の複数の壁部分を区画形成し、
複数の前記壁部分は、それぞれ水平凹部内に設けられるように、複数の水平凹部を区画形成する、請求項40記載のマイクロ流体装置。
【請求項43】
ベース基板、充填部材、および流路を備えるマイクロ流体装置であって、
前記ベース基板は凹部を備え、前記凹部は2つの対向側壁と1つの底壁を備え、
前記充填部材の一部は、前記凹部内に設けられる充填部を有し、
前記流路は、前記充填部内に区画形成され、
前記流路は、第1開口と第2開口を備え、
前記第1開口は、前記充填部材の第1側壁に配置され、
前記第2開口は、前記充填部材の第2側壁に配置され、
前記第1側壁は、前記第2側壁に対して対向関係に配置され、
前記流路は、周縁壁によって区画形成され、
前記周縁壁は、前記第1開口に隣接する円錐部を備え、
前記円錐部は長さ方向に延び、前記円錐部において前記周縁壁の幅は前記第1開口に向かって減少する、マイクロ流体装置。
【請求項44】
前記第1側壁と前記第2側壁のうちの少なくとも一部分は、前記対向側壁に対して少なくとも実質的に垂直である、請求項43記載のマイクロ流体装置。
【請求項45】
前記第1側壁は、前記ベース基板の壁部分を区画形成する、請求項43または44記載のマイクロ流体装置。
【請求項46】
前記ベース基板の前記壁部分は、前記ベース基板の側壁内に設けられる、請求項43〜45何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項47】
前記ベース基板の前記壁部分は、前記ベース基板の水平凹部内に設けられる、請求項43〜46何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項48】
前記ベース基板の前記壁部分は、水平凹部を備える、請求項43〜47何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項49】
前記水平凹部は、前記第1開口を備える、請求項48記載のマイクロ流体装置。
【請求項50】
前記水平凹部の深さは、0ミクロンよりも大きく約500ミクロン以下の範囲内にある、請求項46〜49何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項51】
前記水平凹部の前記深さは、約0.5ミクロン〜約50ミクロンの範囲内にある、請求項50記載のマイクロ流体装置。
【請求項52】
前記水平凹部は周縁壁、入口、および底部を備えることによって、流体チャンバを区画形成する、請求項46〜51何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項53】
前記充填部材は、前記ベース基板の全表面を区画形成する、請求項46〜52何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項54】
前記充填部材は、誘電体を備える、請求項46〜53何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項55】
第1流体チャンバと第2流体チャンバを有するマイクロ流体装置であって、
前記第1流体チャンバは、試験されるべき粒子を含有し、
前記第2流体チャンバは、区画部材によって前記第1流体チャンバから流体連通不能に区画され、
前記区画部材はベース基板、充填部材、および流路を備え、
前記ベース基板の内部は、凹部を備え、
前記充填部材は、前記凹部を充填する充填部を有し、
前記流路は、前記充填部に区画形成され
前記流路は第1開口と第2開口を備え、
前記第1開口は、前記充填部材の第1側壁に配置され、
前記第2開口は、前記充填部材の第2側壁に配置され、
前記第1側壁は、前記第2側壁に対して対向関係に配置され、
前記第1側壁と前記第2側壁のうちの少なくとも一部分は、前記凹部を区画形成する一対の対向側壁に対して少なくとも実質的に垂直である、マイクロ流体装置。
【請求項56】
前記流路の前記周縁壁は、前記第1開口に隣接する円錐部を有し、
前記円錐部は長さ方向に延び、前記円錐部において前記周縁壁の幅は前記第1開口に向かって減少する、請求項55記載のマイクロ流体装置。
【請求項57】
前記第1側壁は、前記ベース基板の壁部分を区画形成し、
前記壁部分は、前記第1流体チャンバ内に設けられる、請求項55または56記載のマイクロ流体装置。
【請求項58】
前記流路は、周縁壁によって区画形成され、
前記流路の少なくとも一部分における前記周縁壁の断面は、少なくとも実質的に円形、または少なくとも実質的に楕円形の外形を備える、請求項55〜57何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項59】
前記第1開口と前記第2開口のうちの少なくとも一方は、少なくとも実質的に円形、または少なくとも実質的に楕円形の領域を区画形成する、請求項55〜58何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項60】
前記充填部材は、前記区画部材の全表面を区画形成する、請求項55〜59何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項61】
前記充填部材は、誘電体を備える、請求項55〜60何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項62】
前記第1開口を第1主開口と称し、前記第2開口を第2主開口と称し、
前記区画部材は更に、第1補助開口と第2補助開口を備える補助流路を備え、
前記第1補助開口は、前記第1側壁に配置される、請求項55〜61何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項63】
前記第1補助開口は、前記区画部材の側壁部分に配置され、
前記側壁部分は、前記第1主開口を備える、請求項62記載のマイクロ流体装置。
【請求項64】
前記第1補助開口は前記凹部内に配置され、
前記凹部は前記第1主開口を備える、請求項62または63記載のマイクロ流体装置。
【請求項65】
前記第1補助開口は、前記第1主開口に並ぶ、請求項62〜64何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項66】
前記マイクロ流体装置は更に、前記充填部材に配置される複数の流路を備える、請求項55〜65何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項67】
前記マイクロ流体装置は更に、複数の第1流体チャンバと複数の第2流体チャンバのうちの少なくとも一方を備え、
各々の第1流体チャンバは、複数の前記流路のうちの1つの流路を通じて、対応する前記第2流体チャンバに流体連通可能に接続される、請求項55〜65何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項68】
電気測定装置は、前記第1流体チャンバ内に置かれる粒子の電気特性を測定すべく、前記第1流体チャンバと前記第2流体チャンバに接続される、請求項55〜67何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項69】
第1流体チャンバと第2流体チャンバを備えるマイクロ流体装置であって、
前記第1流体チャンバは、試験されるべき粒子を含有し、
前記第2流体チャンバは、区画部材を用いることによって前記第1流体チャンバから流体連通不能に区画され、
前記区画部材はベース基板、充填部材、および流路を備え、
前記ベース基板の内部は、区画形成される凹部を備え、
前記充填部材の一部は、前記凹部を充填する充填部を有し、
前記流路は、前記充填部内に区画形成され
前記流路は第1開口と第2開口を備え、
前記第1開口は、前記充填部材の第1側壁に配置され、
前記第2開口は、前記充填部材の第2側壁に配置され、
前記第1側壁は、前記第2側壁に対して対向関係に配置され、
前記流路は、周縁壁によって区画形成され、
前記周縁壁は、前記第1開口に隣接する円錐部を備え、
前記円錐部は長さ方向に延び、前記円錐部において前記周縁壁の幅は前記第1開口に向かって減少する、マイクロ流体装置。
【請求項70】
前記第1側壁と前記第2側壁のうちの少なくとも一部分は、前記凹部を区画形成する一対の対向側壁に対して、少なくとも実質的に垂直である、請求項69記載のマイクロ流体装置。
【請求項71】
前記第1側壁は、前記ベース基板の壁部分を区画形成する、請求項69または70記載
のマイクロ流体装置。
【請求項72】
前記充填部材は、前記区画部材の全表面を区画形成する、請求項69〜71何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項73】
前記充填部材は、誘電体を備える、請求項69〜72何れか一項記載のマイクロ流体装置。
【請求項74】
マイクロ流体装置の作製方法であって、前記作製方法は、
ベース基板を提供することと;
前記ベース基板の表面に凹部を形成することと;
前記凹部を充填材によって充填することであって、前記充填材は前記凹部を充填する充填部を有することと;
前記充填材に前記充填材の変形条件を作用させることによって、前記充填部内に流路を形成することと
を備える、作製方法。
【請求項75】
前記凹部の形成は、前記ベース基板の前記表面をエッチングすることを備える、請求項74記載の作製方法。
【請求項76】
前記凹部は、前記ベース基板の少なくとも一側面まで広がるように開口する、請求項74または75記載の作製方法。
【請求項77】
前記凹部の充填は、前記充填材によって前記ベース基板を覆うことによって達成される、請求項74〜76何れか一項記載の作製方法。
【請求項78】
前記充填材による前記凹部の充填は、蒸着工程によって実施される、請求項74〜77何れか一項記載の作製方法。
【請求項79】
前記蒸着工程は、プラズマ化学気相成長法、低圧化学蒸着、物理蒸着、エピタキシ、および被覆のうちの1つである、請求項78記載の作製方法。
【請求項80】
前記被覆は、回転被覆または浸漬被覆である、請求項79記載の作製方法。
【請求項81】
前記充填材は、ドープケイ酸ガラスを備える、請求項74〜80何れか一項記載の作製方法。
【請求項82】
前記作製方法は更に、空隙が前記凹部に沿って延びるように配置されるように、前記充填部内に前記空隙を形成することを備える、請求項74〜81何れか一項記載の作製方法。
【請求項83】
充填材による前記凹部の充填は、前記凹部の開口端を前記充填材によって狭窄するように、前記凹部内に前記充填材を蒸着することによって、前記充填部内に空隙を形成することを備える、請求項74〜81何れか一項記載の作製方法。
【請求項84】
前記凹部は、前記空隙が前記凹部の開口側面に隣接する末端を備えるように、前記ベース基板の少なくとも一側面まで広がるように開口し、
前記充填材に前記変形条件を作用させることは、前記空隙によって前記流路を形成できるようにすることを備え、
前記流路は、前記開口側面に隣接する円錐部を備える周縁壁を有し、
前記円錐部は長さ方向に延び、前記円錐部において前記周縁壁の幅は前記開口側面に向かって減少する、請求項82または83記載の作製方法。
【請求項85】
前記変形条件は、前記ベース基板を減圧下で加熱することを備える、請求項74〜84何れか一項記載の作製方法。
【請求項86】
前記加熱は、約800°C〜約1200°Cの温度で行われる、請求項85記載の作製方法。
【請求項87】
前記加熱は、約30秒〜約3時間の期間行われる、請求項85または86記載の作製方法。
【請求項88】
マイクロ流体装置の作製方法であって、前記作製方法は、
ベース基板を提供することと;
前記ベース基板の第1表面に第1凹部を形成することと;
前記ベース基板の第2表面に第2凹部を形成することであって、前記第2表面は前記第1表面とは異なることと;
前記第1凹部を前記充填材によって充填することであって、前記第1凹部を充填する前記充填材の部分を充填部と称することと;
前記充填材に前記充填材の変形条件を作用させることによって、前記充填部に流路を形成することと
を備える、作製方法。
【請求項89】
前記第1凹部は、前記第2凹部の形成前に形成される、請求項88記載の作製方法。
【請求項90】
前記第1凹部は、前記第2凹部の形成後に前記充填材によって充填される、請求項88または89記載の作製方法。
【請求項91】
前記第1凹部の形成は、前記ベース基板の表面をエッチングすることを備える、請求項88〜90何れか一項記載の作製方法。
【請求項92】
前記充填材による前記第1凹部の充填は、前記ベース基板を充填材によって覆うことによって行われ、その結果、
前記第1凹部を前記充填材によって充填し、
前記第2凹部の表面の少なくとも一部分を、前記充填材によって覆う、請求項88〜91何れか一項記載の作製方法。
【請求項93】
前記第2凹部は、前記充填材による前記第1凹部の充填後に形成される、請求項88または89何れか一項記載の作製方法。
【請求項94】
前記充填材による前記第1凹部の充填は、前記ベース基板を充填材によって覆うことによって行われ、
前記第2凹部は、前記充填材に形成される、請求項93記載の作製方法。
【請求項95】
充填材による前記ベース基板の被覆は、蒸着工程によって実施される、請求項92または94記載の作製方法。
【請求項96】
前記蒸着工程は、プラズマ化学気相成長法、低圧化学蒸着、物理蒸着、エピタキシ、および被覆のうちの1つである、請求項95記載の作製方法。
【請求項97】
前記被覆は、回転被覆または浸漬被覆である、請求項96記載の作製方法。
【請求項98】
前記充填材は、誘電体を備える、請求項88〜97何れか一項記載の作製方法。
【請求項99】
前記第2表面の少なくとも一部分は、前記第1表面に対して少なくとも実質的に垂直である、請求項88〜98何れか一項記載の作製方法。
【請求項100】
前記第1凹部は、前記ベース基板の少なくとも一側面まで広がるように開口するように形成される、請求項88〜99何れか一項記載の作製方法。
【請求項101】
前記第1凹部は、前記第2凹部に流体流込可能に形成される、請求項100記載の作製方法。
【請求項102】
前記第2凹部の表面の少なくとも一部分は、前記充填材によって覆われる被覆部であり、
前記被覆部は連続部分であり、前記被覆部には流体流込可能に前記第1凹部が形成される、請求項101記載の作製方法。
【請求項103】
前記作製方法は更に、空隙が前記第1凹部に沿って延びるように配置されるように、前記充填部内に前記空隙を形成することを備える、請求項88〜102何れか一項記載の作製方法。
【請求項104】
充填材による前記第1凹部の充填は、前記充填材を前記第1凹部の開口端において狭窄するように、前記充填材を前記第1凹部内に蒸着することによって、前記充填部内に空隙を形成することを備える、請求項88〜103何れか一項記載の作製方法。
【請求項105】
前記第1凹部は、前記空隙が前記凹部の開口側面に隣接する末端を備えるように、前記ベース基板の少なくとも一側面まで広がるように開口し、
前記充填材に前記変形条件を作用させることは、流路を前記空隙から形成することを備え、
前記流路は周縁壁を有し、
前記流路は、前記開口側面に隣接する円錐部において終結し、
前記円錐部は長さ方向に延び、前記円錐部において前記周縁壁の幅は前記開口側面に向かって減少する、請求項103または104記載の作製方法。
【請求項106】
前記変化条件は、前記ベース基板を減圧下で加熱することを備える、請求項88〜105何れか一項記載の作製方法。
【請求項107】
前記加熱は、約800°C〜約1200°Cの温度で行われる、請求項106記載の作製方法。
【請求項108】
前記加熱は、約30秒間〜約3時間の期間行われる、請求項106または107記載の作製方法。
【請求項109】
前記充填材は、前記第1凹部の前記表面の少なくとも一部を覆うコーティング部を有し、
前記作製方法は更に、少なくとも前記コーティング部を実質的に除去することを備える、請求項88〜108何れか一項記載の作製方法。
【請求項110】
前記充填材の除去は、エッチングまたは化学機械的研磨を用いることによって行われる
、請求項109記載の作製方法。
【請求項111】
前記エッチングは、湿式エッチングである、請求項110記載の作製方法。
【請求項112】
マイクロ流体装置の作製方法であって、前記作製方法は、
ベース基板を提供することと;
凹部が前記ベース基板の少なくとも一側面内まで広がり且つ開口するように、前記ベース基板の表面に前記凹部を形成することと;
前記ベース基板を充填材によって覆うことであって、前記凹部を充填する前記充填材の部分を充填部と称することと;
前記充填材に前記充填材の変形条件を作用させることによって、前記充填部内に流路を形成することと
を備える、作製方法。
【請求項113】
前記凹部の形成は、前記ベース基板の前記表面をエッチングすることを備える、請求項112記載の作製方法。
【請求項114】
充填材による前記ベース基板の被覆は、蒸着工程によって行われる、請求項112または113記載の作製方法。
【請求項115】
前記蒸着工程は、プラズマ化学気相成長法、低圧化学蒸着、物理蒸着、エピタキシ、および被覆のうちの1つである、請求項114記載の作製方法。
【請求項116】
前記充填材は、誘電体を備える、請求項112〜115何れか一項記載の作製方法。
【請求項117】
前記作製方法は更に、空隙が前記凹部に沿って広がるべく配置されるように、前記充填部内に前記空隙を形成することを備える、請求項112〜116何れか一項記載の作製方法。
【請求項118】
前記充填材による前記凹部の充填は、
前記充填材によって前記凹部の開口端を狭窄するような方法で、前記凹部内に前記充填材を蒸着することによって、前記充填部内に空隙を形成することを備える、請求項112〜117何れか一項記載の作製方法。
【請求項119】
前記空隙は、前記凹部の開口側面に隣接する末端を備えるように形成され、
前記充填材に前記変形条件を作用させることは、前記空隙によって前記流路を形成することを備え、
前記流路は周縁壁を備え、
前記流路は、前記開口側面に隣接する円錐部において終結し、
前記円錐部は長さ方向に延び、前記円錐部において前記周縁壁の幅は前記開口側面に向かって減少する、請求項117または118記載の作製方法。
【請求項120】
前記変形条件は、前記ベース基板を減圧下で加熱することを備える、請求項112〜119何れか一項記載の作製方法。
【請求項121】
前記加熱は、約800°C〜約1200°Cの範囲内の温度で行われる、請求項120記載の作製方法。
【請求項122】
前記加熱は、約30秒間〜約3時間の範囲内の期間にわたって行われる、請求項120または121記載の作製方法。
【請求項123】
前記ベース基板は更に、水平凹部を備える、請求項112〜122何れか一項記載の作製方法。
【請求項124】
前記充填材は、前記凹部が広がる前記ベース基板の前記側面の少なくとも一部を覆うコーティング部を有し、
前記作製方法は更に、少なくとも前記コーティング部を実質的に除去することを備える、請求項112〜123何れか一項記載の作製方法。
【請求項125】
前記コーティング部は、側方凹部に設けられる、請求項124記載の作製方法。
【請求項126】
前記充填材の除去は、エッチングまたは化学機械的研磨によって行われる、請求項124または125記載の作製方法。
【請求項127】
前記エッチングは、湿式エッチングである、請求項126記載の作製方法。
【請求項128】
生命体の状態の分析方法であって、前記分析方法は、
請求項55〜68何れか一項の前記第1流体チャンバ内に前記生命体を導入することと;
前記生命体の第1状態に関連する第1電気信号を測定することであって、前記第1電気信号は基準電気信号であることと;
前記生命体を状態変化条件に暴露することであって、前記状態変化条件は前記生命体の状態を変化させる能力があると考えられる条件であることと;
前記生命体を前記状態変化条件に暴露後、前記生命体の状態に関連する第2電気信号を測定することと
を備える、分析方法。
【請求項129】
生命体の状態の分析方法であって、前記分析方法は、
請求項69〜73何れか一項の前記第1流体チャンバ内に前記生命体を導入することと;
前記生命体の第1状態に関連する第1電気信号を測定することであって、前記第1電気信号は基準電気信号であることと;
前記生命体を状態変化条件に暴露することであって、前記状態変化条件は前記生命体の前記状態を変化させる能力があると考えられる条件であることと;
前記生命体を前記状態変化条件に暴露後、前記生命体の前記状態に関連する第2電気信号を測定することと
を備える、分析方法。
【請求項130】
前記分析方法は更に、前記生命体の前記状態の変化の発現を検出すべく、閾値電気信号値を、前記第1電気信号と前記第2電気信号の両方と比較することを備える、請求項128または129記載の分析方法。
【請求項131】
前記第1電気信号の測定は、連続する第1電気信号の連続測定であり、
前記第2電気信号の測定は、連続する第2電気信号の連続測定である、請求項130記載の分析方法。
【請求項132】
前記第1電気信号と前記第2電気信号の間の差の絶対値は、前記閾値電気信号値と比較される、請求項130または131記載の分析方法。
【請求項133】
前記差の絶対値が前記閾値電気信号値の大きさよりも大きい場合、前記状態変化条件は
、前記生命体の前記状態を変化させる能力があると評価される、請求項132記載の分析方法。
【請求項134】
前記分析方法は更に、前記第1開口に前記生命体を配置することを備える、請求項128〜133何れか一項記載の分析方法。
【請求項135】
前記生命体は、前記流路によってか、または、
前記ベース基板に設けられる付加的補助流路によって生じる吸引力を用いることによって配置される、請求項134記載の分析方法。
【請求項136】
前記吸引力は、前記付加的補助流路の開口を通じて作動し、
前記付加的補助流路の前記開口は、前記第1開口に並ぶ、請求項135記載の分析方法。
【請求項137】
前記生命体は、前記第1流体チャンバ内において、前記第1開口の上方に配置される、請求項134〜136何れか一項記載の分析方法。
【請求項138】
前記第1開口を有する前記流路を主流路と称し、
前記生命体は、前記主流路内において、前記第2開口の前に配置される、請求項134〜136何れか一項記載の分析方法。
【請求項139】
前記第1開口を有する前記流路を主流路と称し、
前記分析方法は更に、前記主流路によって生じる吸引力を用いることによって、前記第1開口に前記生命体を固定することを備える、請求項128〜138何れか一項記載の分析方法。
【請求項140】
前記生命体は、前記第1開口の上方にシールを形成することによって、前記第1流体チャンバと前記第2流体チャンバの間のイオンの自由運動を制限する、請求項139記載の分析方法。
【請求項141】
前記分析方法は更に、前記生命体によって形成されるシールの状態を判定すべく、前記第1流体チャンバに可視化色素を添加することを備える、請求項139または140記載の分析方法。
【請求項142】
前記生命体は、細胞または細胞小器官を備え、
前記細胞または前記細胞小器官は、電位変化を受ける能力を有する、請求項128〜141何れか一項記載の分析方法。
【請求項143】
前記細胞は、真核性細胞または原核性細胞である、請求項142記載の分析方法。
【請求項144】
前記真核性細胞は、哺乳類細胞または酵母細胞である、請求項143記載の分析方法。
【請求項145】
前記哺乳類細胞は、神経細胞、卵母細胞、リンパ球、単球、筋細胞、および幹細胞からなる群から選択される、請求項144記載の分析方法。
【請求項146】
前記第1電気信号と第2電気信号のうちの少なくとも一方の測定は、吸引力が適用される前記細胞の領域内に位置するか、前記領域から隔離した輸送構造を通過する電流を測定することを備える、請求項128〜145何れか一項記載の分析方法。
【請求項147】
前記輸送構造は、陰イオンチャネル、陽イオンチャネル、陰イオン輸送体、陽イオン輸
送体、受容体タンパク質、結合タンパク質、およびイオンチャネル型受容体を備える、請求項146記載の分析方法。
【請求項148】
前記分析方法は更に、前記生命体の表面を破裂させることによって、前記輸送構造の電気特性にアクセス可能にすることを備える、請求項146または147記載の分析方法。
【請求項149】
前記電気特性の測定値は、
前記第1流体チャンバ内に位置する検出電極と、
前記第2流体チャンバ内に位置する基準電極と
によって測定される、請求項148記載の分析方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図1M】
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【図1N】
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【図1O】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−530638(P2009−530638A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501390(P2009−501390)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/SG2007/000080
【国際公開番号】WO2007/108779
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】