説明

粒子の製造方法及びトナーの製造方法、並びにトナー、現像剤、及び画像形成方法

【課題】機械的振動手段を用いず高周波数領域にまで追随できる高い生産性を有し、材料選択の自由度の高さから作製した粒子の表面抵抗を十分に高くすることができる粒子の製造方法及びトナーの製造方法等の提供。
【解決手段】異なる原料流体を貯留する少なくとも2つの貯留部と、貫通孔とを少なくとも有する粒子製造装置を用い、貫通孔より放出される原料流体を滴化し造粒し、貫通孔が少なくとも2枚のノズルプレートの積層構造からなる2重の貫通孔であり、2重の貫通孔より放出される前記原料液体が、2つの貯留部からそれぞれ供給され、2重の貫通孔により内側の流体と外側の流体が異なる多重流体からなる液柱を形成し、多重流体からなる液柱に直流電圧を印加し、一定周期の交流静電界中を通過させ、周期と同期させることにより粒子を製造する粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品、化成品、電子材料、医薬品等に幅広く使用できる粒子の製造方法及びトナーの製造方法、並びに該トナーの製造方法により製造され、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するためのトナー、該トナーを用いた現像剤、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真、静電記録、静電印刷等において使用される現像剤は、現像工程において、例えば、静電荷像が形成されている静電潜像担持体に一旦付着され、次に転写工程において静電潜像担持体から記録媒体に転写された後、定着工程において記録媒体上に定着される。このような現像剤として、キャリアとトナーからなる二成分系現像剤と、キャリアを必要としない一成分系現像剤(磁性トナー、非磁性トナー)とが知られている。
【0003】
前記トナーとしては、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等のトナーバインダーを着色剤等と共に溶融混練し、微粉砕した、いわゆる粉砕型トナーが広く用いられている。
また、最近では、懸濁重合法、乳化重合凝集法によるトナー、いわゆる重合型トナーが検討されており、この他にも、ポリマー溶解懸濁法と呼ばれる体積収縮を伴う製造方法も検討されている(特許文献1参照)。この製造方法はトナー材料を低沸点有機溶媒等の揮発性溶剤に分散し、溶解させ、これを分散剤の存在する水系媒体中で乳化し、液滴化した後に揮発性溶剤を除去するものである。この製造方法は懸濁重合法、乳化重合凝集法と異なり、用いることのできる樹脂に汎用性が広く、透明性や定着後の画像部の平滑性が要求されるフルカラープロセスに有用なポリエステル樹脂を用いることができる点で優れている。しかし、前記重合型トナーは、水系媒体中で分散剤を使用することを前提としているため、トナーの帯電特性を損なう分散剤がトナー表面に残存して環境安定性が損なわれてしまうという不具合が発生する。この分散剤を除去するため、大量の洗浄水が必要となり、トナーの製造方法として必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
そこで、トナーの製造方法として、圧力パルスを液に加えて原料を貫通孔より吐出して微小液滴を形成し、これを乾燥し、固化してトナー化する方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、液室に熱エネルギーを与えて発生する気泡圧を利用して、微小液滴を形成し、これを乾燥固化してトナー化する方法が提案されている(特許文献3参照)。また、音響レンズを利用し、同様の処理をする方法が提案されている(特許文献4参照)。
【0005】
これらの方法では、いずれも圧電体にて圧力パルスを与える方法であるため、貯留部の体積を変化させることにより、貯留部から吐出部への吐出と貯留部への供給を行っている。吐出時は、貯留部内を加圧方向/体積減少方向で液体を吐出部から押し出し、吐出の際に液滴状にして吐出するためと、貯留部への新たなトナー材料液の供給のために、減圧方向/体積膨張方向圧力で貯留部内にトナー材料液を充填する。この際に吐出部で外気に触れたトナー材料液を再度貯留部に吸引することになるので、トナー材料液の乾燥(固形分濃度の変動)や、細孔である吐出部の目詰まりの要因となっており、十分な生産性と、トナーの品質(粒子間のばらつき)を達成することができなかった。また、振動子の圧力パルスが液室の局所に集中するため、10個以上の複数の貫通孔から一挙に液滴を形成することは困難である。生産性の増大のためには、貫通孔数の増大と同等の振動子数の増加が必要となり、制御が困難かつ構成が大変複雑になる。更に、貫通孔部における液の慣性を考慮すると、振動周波数を50kHz以上に増大することは困難であった。また、通常用いられる圧電素子は機械的な変位が小さいため、圧電素子を大型化又は積層化してこれに対応する必要があるため、貫通孔の集積化が困難であった。また、特許文献3に開示されているような、熱エネルギーによる気泡の発生圧を利用した液吐出方法では、瞬間的に熱源における温度は300℃程度になり、有機物の変質(コゲーション)が発生し、連続運転中の液滴サイズの経時的変化が認められ、液滴のサイズ制御が困難であった。
【0006】
また、トナーの製造方法ではないが、細孔より押し出した液滴を粒子状に形成する造粒方法及び造粒装置が提案されている(特許文献5及び6参照)。これらの提案では、トナーではなく、金属、ガラス等の単一組成物を造粒している。これらの提案の方法では、吐出部/オリフィスと、液体の貯留部と、加振部とを有しており、該加振部が貯留部内の液体と接することで振動を伝達し、この振動によりオリフィスから吐出する流体が、液滴に切れ、粒子を形成することができる。
【0007】
また、微小な粒子をトナーとして使用するためには、粒子を相当多数製造する必要があり、その生産性が大きな課題となる。生産性の観点からは、多数の細孔/オリフィスを形成することで生産性を向上させることが可能となるが、加振手段の数がコストに直接的に影響を及ぼす。したがって、トナーを生産する上で生産性を確保するためには、複数の細孔に対して1個の加振手段で均一な粒子を生産できる構成が必須となる。
また、トナーは、画像の繊細性、帯電性能の均一性を図る点から粒度分布がシャープなものが必要とされてきているが、従来の方法に比べて、オリフィスを用いた造粒では、シャープな粒度分布を達成できる可能性がある。
また、前記特許文献5及び6に記載の造粒方法では、流体に直接加振部が触れることを特徴としており、細孔と振動部の数が一致する場合にはシャープな粒径分布が得られるが、多数の細孔と1つの加振部の場合には、細孔の位置と加振部の位置関係によるその距離に応じて、細孔から吐出する液滴の大きさが変化するので、トナーが異なる複数のオリフィス間で異なった粒径の粒子を製造してしまうことが判明した。なお、振動する貫通孔から圧力により流体を押し出し、これを振動成分により分裂させるこれらの方法は、振動オリフィス法と呼ばれ、古くから一般に知られた技術である。
いずれにしても、前記液滴化原理は圧電体等の機械的伸縮を駆動力として利用するものであり、高周波領域での振動の追随性が悪く、トナーの製造に必要な生産性を確保できないという問題がある。また、ノズルプレートへ直接乃至間接に振動が加わることから耐久性に乏しく、長時間の連続生産ができないという問題もある。
【0008】
そこで、前記振動手段を用いずに電気的作用で液滴化する方法について提案されている(特許文献7参照)。この提案は、圧力により押し出し形成した導電性液体の液柱に、交流電場を作用させて液滴化する方法であり、振動手段を用いないで液滴化できるという点で画期的なものである。
しかし、この提案では、外部の交流静電界によってのみ液柱に括れを生じさせて、液滴化させているので、高導電性液体を多重液柱の外側に流す必要があり、作製した粒子の表面抵抗が低いものとなる。トナーでは、静電気により粒子を制御する必要があることから、粒子表面の電気抵抗が低くなりすぎると、帯電性が保持できなくなり、プロセスが成立しなくなってしまうという問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開平7−152202号公報
【特許文献2】特開2003−262976号公報
【特許文献3】特開2003−280236号公報
【特許文献4】特開2003−262977号公報
【特許文献5】特開2001−226706号公報
【特許文献6】特開2003−104744号公報
【特許文献7】特許第3176607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、機械的振動手段を用いず高周波数領域にまで追随できる高い粒子生産性を有し、材料選択の自由度の高さから作製した粒子の表面抵抗を十分に高くすることができる粒子の製造方法及びトナーの製造方法、並びに該トナーの製造方法により製造されたトナー、該トナーを用いた現像剤、及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 異なる原料流体を貯留する少なくとも2つの貯留部と、貫通孔とを少なくとも有する粒子製造装置を用い、前記貫通孔より放出される原料流体を滴化し造粒する粒子の製造方法であって、
前記貫通孔が、少なくとも2枚のノズルプレートの積層構造からなる2重の貫通孔であり、
前記2重の貫通孔より放出される前記原料液体が前記少なくとも2つの貯留部からそれぞれ供給され、
前記2重の貫通孔により内側の流体と外側の流体が異なる多重流体からなる液柱を形成し、
該多重流体からなる液柱に直流電圧を印加し、一定周期の交流静電界中を通過させ、該周期と同期させることにより粒子を製造することを特徴とする粒子の製造方法である。
<2> 貫通孔を有するノズルプレートが、複数の貫通孔を有する前記<1>に記載の粒子の製造方法である。
<3> 2重の貫通孔による多重流体からなる液柱の内側を流れる流体と、外側を流れる流体との少なくともいずれか一方が導電性流体である前記<1>から<2>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<4> 2重の貫通孔による多重流体からなる液柱の内側を流れる流体が導電性流体であり、外側を流れる流体が絶縁性流体であり、これらの流体が互いに相溶せず、粒子の内側と外側が異なる組成で構成される前記<1>から<3>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<5> 多重流体からなる液柱を形成する流体が少なくとも揮発性有機溶媒と樹脂とを含み、少なくとも内側を流れる流体が導電性付与剤を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<6> 2重の貫通孔の最大開口径が1.0μm〜40.0μmであり、少なくとも内側の流体を放出する貫通孔の最大開口径が、外側の流体を放出する最大開口径より小さい前記<1>から<5>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<7> 2枚のノズルプレートが、厚み5μm〜40μmの金属板から形成されている前記<1>から<6>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<8> 2重の貫通孔が、液入口孔面積が最大であり、漸次断面積が縮小し、液出口で最も小さくなる形状に形成されている前記<1>から<7>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<9> 2重の貫通孔の出口形状の円形度が90%以上である前記<1>から<8>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<10> 隣り合う貫通孔の間隔が、貫通孔出口の直径の平均値の3倍以上である前記<1>から<9>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<11> 交流静電界の交流周波数が、10kHz〜1MHzである前記<1>から<10>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<12> 多重流体に印加する直流電圧が500V〜5kVである前記<1>から<11>のいずれか記載の粒子の製造方法である。
<13> 原料流体に対し、貯留部と、原料流体を液滴化する液滴形成部との圧力差を発生させる加圧手段を有する前記<1>から<12>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<14> 貫通孔から連続的に放出される原料流体が、貫通孔から吐出した直後は連続的な柱状を形成している前記<1>から<13>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<15> 直流電圧を印加した液柱に交流静電界を作用させることにより、液柱に括れを形成する前記<1>から<14>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<16> 括れの周期λと、液柱の直径Djとが、次式、3.0×Dj<λ<8.0×Djを満たし、液柱先端を液滴に変化させる前記<15>に記載の粒子の製造方法である。
<17> 2重の貫通孔から原料流体を放出する下流部に、乾燥手段及び固化手段の少なくともいずれかを有し、液滴を固体粒子に変化させる前記<1>から<16>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<18> 固体粒子への変化が、脱溶媒である前記<17>に記載の粒子の製造方法である。
<19> 液滴吐出方向と同方向に乾燥気体を流すことにより気流を発生させ、該気流により、液滴を溶媒除去設備内に搬送すると共に、搬送中に前記液滴中の溶媒を除去することにより、固体粒子を形成する前記<18>に記載の粒子の製造方法である。
<20> 乾燥気体が、空気及び窒素ガスのいずれかである前記<19>に記載の粒子の製造方法である。
<21> 乾燥気体の温度が、40℃〜200℃である前記<19>から<20>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<22> 異なる原料流体を貯留する少なくとも2つの貯留部と、貫通孔とを少なくとも有するトナー製造装置を用い、前記貫通孔より放出される原料流体を滴化し造粒するトナーの製造方法であって、
前記貫通孔が、少なくとも2枚のノズルプレートの積層構造からなる2重の貫通孔であり、
前記2重の貫通孔より放出される前記原料液体が前記少なくとも2つの貯留部からそれぞれ供給され、
前記2重の貫通孔により内側の流体と外側の流体が異なる多重流体からなる液柱を形成し、
該多重流体からなる液柱に直流電圧を印加し、一定周期の交流静電界中を通過させ、該周期と同期させることによりトナーを製造することを特徴とするトナーの製造方法である。
<23> 原料流体が、少なくとも樹脂、及び着色剤を含有する前記<22>に記載のトナーの製造方法である。
<24> 前記<22>から<23>のいずれかに記載のトナーの製造方法により製造されることを特徴とするトナーである。
<25> 体積平均粒径が1μm〜10μmであり、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が1.00〜1.10である前記<24>に記載のトナーである。
<26> 前記<24>から<25>のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤である。
<27> 前記<24>から<25>のいずれかに記載のトナーが容器に収容されていることを特徴とするトナー入り容器である。
<28> 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に前記<24>から<25>のいずれかに記載のトナーで静電潜像を現像して可視像を形成する現像手段を少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
<29> 静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を前記<24>から<25>のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着する定着工程とを少なくとも含むことを特徴とする画像形成方法である。
<30> 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を前記<24>から<25>のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着する定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置である。
【0012】
本発明の粒子の製造方法においては、粒子を単純な構成で、効率よく生産することができ、耐久性が高いことからメンテナンス不要であり、貫通孔の閉塞を起こすことなく、安定的に稼動できる粒子の製造方法を提供する。該粒子の製造方法を利用することにより、これまでにない粒度の単一分散性を有した粒子が得られることにある。例えばトナーに利用する場合においては、流動性及び帯電特性といったトナーに求められる多くの特性値において、これまでの製造方法にはみられない非常に優れた特性を有するトナーを提供できる。
【0013】
具体的には、これまでの粉砕型トナーやケミカルトナーにおける製造方法でみられた粒子のバラツキによる変動幅が全くないか、あっても殆ど無視できる程度に極端に変動が少ないという優れた特徴を有する。この特徴から、静電潜像担持体に形成された潜像に殆ど忠実な画像を形成することが可能となる。また同様の特徴から長期間に亘ってその効果が持続することを可能となる。即ち、粒度分布の均一性、形状の均一性、表面状態の均一性の達成により、電子写真プロセス上設定されたトナー帯電量に達するために必要な機械的ストレスが非常に少なく、かつ無駄がなくなり、トナー寿命が飛躍的に伸びたことによるものと推察される。その結果、高画質画像を長期間に亘って得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、貫通孔部の閉塞による低生産性、不安定性といった、従来の諸問題を解決でき、粒子を効率よく生産することができ、これまでにない粒度の単一分散性を有した粒子が得られ、粉体特性や帯電特性といった特性値において、これまでの粒子の製造方法による変動の幅が全くないか、非常に少ない粒子の製造方法及びトナーの製造方法、並びに該トナーの製造方法により製造された、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するためのトナー、該トナーを用いた現像剤、及び画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(粒子の製造方法及びトナーの製造方法)
本発明の粒子の製造方法は、異なる原料流体を貯留する少なくとも2つの貯留部と、貫通孔とを少なくとも有する粒子製造装置を用い、前記貫通孔より放出される原料流体を滴化し造粒し、
前記貫通孔が、少なくとも2枚のノズルプレートの積層構造からなる2重の貫通孔であり、
前記2重の貫通孔より放出される前記原料液体が前記少なくとも2つの貯留部からそれぞれ供給され、
前記2重の貫通孔により内側の流体と外側の流体が異なる多重流体からなる液柱を形成し、
該多重流体からなる液柱に直流電圧を印加し、一定周期の交流静電界中を通過させ、該周期と同期させることにより粒子を製造する。
本発明のトナーの製造方法は、異なる原料流体を貯留する少なくとも2つの貯留部と、貫通孔とを少なくとも有するトナー製造装置を用い、前記貫通孔より放出される原料流体を滴化し造粒し、
前記貫通孔が、少なくとも2枚のノズルプレートの積層構造からなる2重の貫通孔であり、
前記2重の貫通孔より放出される前記原料液体が前記少なくとも2つの貯留部からそれぞれ供給され、
前記2重の貫通孔により内側の流体と外側の流体が異なる多重流体からなる液柱を形成し、
該多重流体からなる液柱に直流電圧を印加し、一定周期の交流静電界中を通過させ、該周期と同期させることによりトナーを製造する。
以下、本発明の粒子の製造方法及びトナーの製造方法について、詳細に説明する。
【0016】
本発明においては、多数の貫通孔を有するノズルプレートと、異なる原料流体を貯留する2つ以上の貯留部とを少なくとも有する粒子製造装置(トナー製造装置)は、2枚のノズルプレートの積層構造である2重の貫通孔に、原料液体が異なる貯留部からそれぞれ供給される。
2重の貫通孔にそれぞれ異なる流体を流すことにより、液柱内側の流体と外側の流体が異なる多重液柱を形成することができる。このようないわゆる二段ノズル(2重ノズル)による多重液柱の形成は一般的によく知られている方法である。
【0017】
例えば特許第3176607号公報(特許文献7)では、この多重液柱の外側に高導電性の流体を流すことで、交流静電界を通過する際に液滴化させることが提案されている。その実施例では、外側の高導電性液体にはイオン交換水を利用しており、内側の低導電性液体には灯油を利用している。本発明者らは、高導電性液体にはイオン交換水を、低導電性液体としてトルエンを用いて同様の実験を実施し、交流電界による液滴化を確認した。高導電性液体は水以外でも、少量の水を含有するアルコールでもよく、絶縁性の高い有機溶媒でも塩化リチウムのような溶媒に可溶な導電性付与剤を添加することで同様の液滴化が起きる。
しかし、前記特許第3176607号公報に開示されている方法では、高導電性液体が多重液柱の外側である場合にしか液滴化することができず、試みに外側流体にトルエン、内側流体にイオン交換水にした場合、交流電界内での液滴化は全く起きなかった。
粒子の用途によっては、粒子表面に導電性物質を含有させたくないものもあり、例えば電子写真用トナーを考えた場合、トナーは静電気により粒子の動きを制御する必要があることから、粒子表面に導電性物質が残り電気抵抗が低くなりすぎると、帯電が保持できなくなり、電子写真プロセスが成立しないことになる。
そこで、高導電性液体が多重液柱の内側にあっても液滴化させることが可能となる方法を鋭意検討した結果、内側の高導電性液体に直流電圧を印加させることで、多重液柱の先端部に電荷を集中させることができ、これに一定周期の交流静電界中を通過させれば、交流周期と同期した液滴が形成することを知見した。これにより、導電性物質を内部に閉じこめた粒子を得ることが可能となる。この方法を用いれば、外側流体と内側流体に使用する溶媒及び媒質の種類を適宜変えることにより、外側と内側の組成が異なるマイクロカプセル粒子を得ることも簡単に可能となる。例えば、多重液柱の外側を流れる流体には、トルエン樹脂溶液を用い、内側を流れる流体にはイオン交換水を用いると、粒子の内部にイオン交換水を内包する樹脂粒子が作製できる。
【0018】
また、トナーに利用する場合は、外側を流れる流体としてトルエン樹脂溶液、内側を流れる流体にはアルコール樹脂溶液に着色剤を分散させた液、又はそれに塩化リチウムを少量加えることで達成される。トルエン樹脂溶液は比較的高分子量の樹脂を用いて、内側のアルコール溶液には低分子量の樹脂を用いれば、コアシェル構造を作製することも可能となり、低温定着性を実現することもできる。
次に、粒子の液柱の液滴化現象について説明する。
【0019】
−液滴化現象−
液柱の均一液滴化現象は、「Rayleigh, Lord"On the Instability of Jets"Proc.London Math.Soc.110:4[1878]」に説明されるように、液柱が最も不安定になる波長条件λは、液柱直径d(jet)を用いて、下記式(1)で表される。
λ=4.5d(jet)・・・式(1)
ここで、発生する擾乱現象の周波数(交流静電界の周波数)fは、液柱の速度をvとした場合、下記式(2)で表すことができる。
f=v/λ ・・・式(2)
また、「Schneider J.M.,C.D.Hendricks,Rev.Instrum.35(10),1349-50 [1964]」に説明されるように、実験的に安定に均一粒子を形成する条件を導いた結果、下記の式(3)の条件において、安定的に均一粒子を形成することが可能である。
3.5<λ/d(jet)<7.0 ・・・式(3)
また、「Lindblad N.R.andJ.M.Schneider,J.Sci.Instrum.42,635[1965]」に説明されるように、エネルギー保存法則を基に、貫通孔より排出される液が、液柱を形成する最小ジェットV(min)速度は、下記の式(4)のように表現される。
V(min)=(8σ/ρd(jet))1/2 ・・・式(4)
ただし、前記式(4)中、σは液の表面張力、ρは液密度、d(jet)は液柱の直径を表す。
【0020】
前記式(1)から前記式(4)の条件式は、このような現象を再現するための条件を推定するために有用であるが、これらの条件式は、液物質の種類、混合物、分散物等によって変動し得るが、上記のような擾乱によって液滴化する現象は様々な液体において成立することを確認した。
このような液柱に定期的な擾乱を生じさせる方法としては、従来は圧電体の伸縮による振動を利用しているが、本発明においては、直流電圧を多重液柱の内側に通じる液室に導通し高導電性液体に電圧をかけ、これを2重の貫通孔を有するノズルプレートの下流に絶縁して配置した電極に交流電界をかけることにより、交流電界に同期した擾乱を生じさせ、液柱に括れを設けこれを分裂させることにより液滴を形成する。ここで、液柱に印加する直流電圧により液柱先端部に電荷が集中することから、先端部では交流電界の影響を著しく受け易くなり、液柱が容易に括れを生じることになる。
【0021】
本発明においては、前記2重の貫通孔による多重流体からなる液柱の内側を流れる流体と、外側を流れる流体との少なくともどちらか一方が導電性流体であることが好まし、前記2重の貫通孔による多重流体からなる液柱の内側を流れる流体が導電性流体であり、外側を流れる流体が絶縁性流体であり、これらの流体が互いに相溶せず、粒子の内側と外側が異なる組成で構成されることがより好ましい。
この場合、前記多重液柱を形成する流体が少なくとも揮発性有機溶媒と樹脂とを含み、少なくとも内側を流れる流体が導電性付与剤を含有することが好ましい。
【0022】
前記交流静電界の交流周波数は、10kHz〜1MHzが好ましい。
前記多重流体に印加する直流電圧は、500V〜5kVが好ましい。
前記原料流体に対し、貯留部と、原料流体を液滴化する液滴形成部との圧力差を発生させる加圧手段を有することが好ましい。
【0023】
前記貫通孔から連続的に放出される原料流体は、貫通孔から吐出した直後は連続的な柱状を形成していることが好ましい。
前記直流電圧を印加した液柱に交流静電界を作用させることにより、液柱に括れを形成することが好ましい。
括れの周期λと、液柱の直径Djとが、次式、3.0×Dj<λ<8.0×Djを満たし、液柱先端を液滴に変化させることが好ましい。
【0024】
前記2重の貫通孔から原料流体を放出した下流部に、乾燥手段及び固化手段の少なくともいずれかを有し、液滴を固体粒子に変化させることが好ましい。
造粒空間での固体粒子への変化が、脱溶媒であることが好ましい。
液滴吐出方向と同方向に乾燥気体を流すことにより気流を発生させ、該気流により、液滴を溶媒除去設備内に搬送すると共に、搬送中に前記液滴中の溶媒を除去することにより、固体粒子を形成することが好ましい。
前記乾燥気体が、空気及び窒素ガスのいずれかであることが好ましい。
前記乾燥気体の温度は、40℃〜200℃が好ましく、50℃〜150℃がより好ましい。
【0025】
−粒子製造装置(トナーの製造装置)−
本発明の粒子の製造方法に使用される粒子装置(本発明のトナーの製造方法に使用されるトナーの製造装置)としては、本発明の粒子の製造方法により、粒子を製造可能な装置であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記粒子製造装置は、異なる原料流体を貯留する少なくとも2つの貯留部と、貫通孔とを少なくとも有し、前記貫通孔より放出される原料流体を滴化し、造粒するものが好適に用いられる。
前記貫通孔が、少なくとも2枚のノズルプレートの積層構造からなる2重の貫通孔であり、
前記2重の貫通孔より放出される前記原料液体が、異なる2つの貯留部からそれぞれ供給され、
前記2重の貫通孔により内側の流体と外側の流体が異なる多重流体からなる液柱を形成し、
該多重流体からなる液柱に直流電圧を印加し、一定周期の交流静電界中を通過させ、該周期と同期させることにより粒子を製造する。
【0026】
前記粒子製造装置は、多段液柱の内側液体に印加する直流電圧印加手段と、多重液柱に交流静電界を印加する手段と、前記貫通孔より放出される前記原料流体が貯留部へ定量的に供給され、前記2重の貫通孔より定量的に放出される。
前記ノズルプレートには、2重の貫通孔が多数配置されており、第1ノズルプレートと第2ノズルプレートと、絶縁プレートにより絶縁された交流静電界印加用の電極プレートとからなる。
また、該液滴中に含まれる溶媒を除去することにより前記液滴を乾燥させて、粒子を形成する粒子形成手段を有する粒子製造装置によるものが好ましい。
【0027】
具体的には、前記粒子製造装置(トナーの製造装置)としては、図2に示すように、液供給手段と、貫通孔を有するノズルプレートと、粒子形成手段とを少なくとも備えている。
前記液供給手段は、異なる原料流体を貯留する第1貯留部535と定量ポンプ534、第2貯留部536と定量ポンプ537、液供給管529とからなる。
前記貫通孔を有するノズルプレートは、図1に示すような、第1供給口501と、第2供給口502と、液流路503と、第1排出口504と、第2排出口505と、絶縁性プレート506と、交流静電界印加用電極プレート507と、第1ノズルプレート509と、第2ノズルプレート510とからなり、第1貯留部553及び第2貯留部536から定量的に供給された原料流体を2重の貫通孔より、多重液柱508を定量的に放出する。
前記粒子形成手段は、溶媒除去設備523と、除電器524と、粒子捕集部525とを備え、作製された粒子を渦流527により粒子貯蔵器532内に貯蔵する。
【0028】
以下、前記粒子製造装置について、各部材毎に説明する。
−第1貯留部及び第2貯蔵部−
第1貯留部及び第2貯蔵部貯留部は、少なくとも、異なる原料流体を加圧された状態において保持される必要があるため、SUS、アルミニウム等の金属などの部材からなり、10MPa程度の耐圧性があることが好ましいが、これに限るものではない。貯留部内の圧力調整を行ったり、内部の気泡を除去するための開放弁を設けることが、液柱の安定形成を行う上で好ましい。
【0029】
−貫通孔−
前記貫通孔は、1個のみ設けても粒子生産は可能であるが、極めて均一な粒子径を有する微小液滴を効率よく発生させる観点から、複数個設け、各貫通孔から吐出される液滴を、一の溶媒除去設備、図2では、溶媒除去設備523で乾燥させるのが好ましい。
生産性の向上の観点から、前記液滴化手段を有する貯留部も複数設けることがより好ましい。この際、トナーの生産性は、単位時間あたりに発生する液滴の個数(周波数)と、液滴化手段の数、1つの液滴化手段により作用する貫通孔の数の積で決定されるが、操作性の観点から、可能な限り1つの液滴化手段により作用する貫通孔の数、つまり1つの貯留部の有する貫通孔の数が多ければよいが、無制限に多いと、粒子径の均一性を保てない。従って、前記一個の液滴化手段により発生させる一個の貯留部に付随する貫通孔の個数としては、生産性と制御性の観点から、10〜10,000が好ましい。極めて均一な粒子径を有する微小液滴をより確実に発生させるため、10〜1,000がより好ましい。
【0030】
前記貫通孔は、原料流体を、液柱として吐出させる部材である。前記貫通孔の材質及び形状としては、特に制限はなく、適宜選択した形状とすることができるが、例えば、貫通孔は、2枚のノズルプレートの積層構造からなり、プレート間距離は1μm〜100μmが好ましい。前記2枚のノズルプレートは、厚み5μm〜40μmの金属板で形成されることが好ましい。該金属板としては、例えばニッケルプレート、などが挙げられる。また、少なくとも内側の流体を放出する貫通孔の最大径が、外側の流体を放出する最大径より小さいことが好ましい。
【0031】
前記2重の貫通孔の形状は、液入口孔面積が最大であり、漸次断面積が縮小し、液出口で最も小さくなる形状であることが好ましい。
前記2重の貫通孔の出口形状の円形度は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
前記貫通孔の最大開口径は、1μm〜40μmが好ましく、5μm〜30μmがより好ましい。
なお、前記貫通孔の最大開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円であれば短径を意味する。
【0032】
前記隣り合う貫通孔の間隔は、貫通孔出口の直径の平均値の3倍以上であることが好ましい。
【0033】
−絶縁手段−
前記2枚のノズルプレートと、交流静電界を発生させる電極プレートは、絶縁性基板で隔てられているが、該絶縁基板の材質としては、絶縁性が高ければ制限は受けないが、有機溶媒の使用に耐えられるものが好ましく、かつ貫通孔を加工しやすい材質としてテフロン(登録商標)などの樹脂、セラミックスなどが特に好ましい。
【0034】
−送液供給及び加圧手段−
前記共通液室へ液を供給する手段としては、例えばチューブポンプ、ギアポンプ、ロータリーポンプ、シリンジポンプなどの定量ポンプであることが好ましい。また、圧縮空気などによって加圧し送液するタイプのポンプであってもよい。これら液供給手段で前記共通液室は前記トナー組成物原料流体で満たされ、更に液滴化可能な圧力まで昇圧することが可能である。液圧力はポンプ付属の圧力ゲージ又は専用の圧力センサにて測定が可能である。
【0035】
−溶媒除去設備−
前記溶媒除去設備としては、液滴の溶媒を除去することができれば特に制限はないが、液滴の飛翔方向と同方向に乾燥気体を流すことにより気流を発生させ、該気流により、液滴を溶媒除去設備内で搬送させると共に、該搬送中に前記液滴中の溶媒を除去させることにより、粒子を形成するのが好ましい。なお、ここで、「乾燥気体」とは、大気圧下の露点温度が−10℃以下の状態の気体を意味する。前記乾燥気体としては、液滴を乾燥可能な気体であれば特に制限はなく、例えば、空気、窒素ガス、などが好適に挙げられる。
【0036】
−捕集部−
前記捕集部は、粒子を効率的に捕集し、搬送する観点から、粒子製造装置の底部に設けられた部材である。
前記捕集部の構造としては、粒子を捕集できれば特に制限はなく、適宜選択することができるが、上述の観点から、図示の例のように、開口径が漸次縮小するテーパー面を有してなり、該開口径が入口部より縮小した出口部から、粒子を、乾燥気体を用い、該乾燥気体の流れを形成し、該乾燥気体の流れにより、粒子を粒子貯蔵容器に移送させるのが好ましい。
前記移送の方法としては、乾燥気体により、粒子を粒子貯蔵容器に圧送してもよいし、粒子貯蔵容器側から粒子を吸い込んでもよい。
前記乾燥気体の流れとしては、特に制限はないが、遠心力を発生させて確実に粒子を移送できる観点から、渦流であることが好ましい。
更に、該粒子の搬送をより効率的に行う観点から、粒子捕集部、及び粒子捕集容器が、導電性の材料で形成され、かつ、これらがアースに接続されているのがより好ましい。また、前記粒子製造装置は、防曝仕様であることが好ましい。
【0037】
以上説明した本発明の粒子の製造方法(本発明のトナーの製造方法)によれば、1貫通孔から発生する液滴の粒子数は、1秒当たり数万乃至数百万個と、非常に多く、貫通孔の閉塞も起こりづらい。このため、非常に均一な液滴径が得られ、充分な生産性を有する観点からも、トナーを生産するのに最も好適な方法である。
なお、従来の粒子の製造方法では、使用する材料によって粒度が大きく変化することが多いが、本発明の粒子の製造方法では、吐出する際の液滴径と、固形分濃度とを管理することにより、設定した通りの粒径を有する粒子を連続して製造することが可能になる。
【0038】
また、本発明の粒子の製造方法により製造された粒子は極めて均一な粒子径を有することから、流動性が非常に高い。そのため、粒子製造装置等への付着力低下を目的として外添剤を加える場合においても、極めて少量でその効果を発揮することができる。また、ストレスによる外添剤の劣化や微粒子の人体への安全性を考えると、このような外添剤を極力使用しないことが好ましいので、この点も本発明の利点の一つであるといえる。
【0039】
本発明の粒子の製造方法により製造された粒子は、上述した優れた特性を有しており、化粧品、化成品、電子材料、医薬品等に幅広く使用できるが、特に、以下に説明する電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するためのトナーとして好適に用いられる。
【0040】
(トナー)
本発明のトナーは、本発明の粒子の製造方法により製造されたトナーである。
該トナーは、前記トナー製造方法により、粒度分布が単分散なものが得られる。
前記トナーの粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)は、1.00〜1.10が好ましい。
前記トナーの体積平均粒径は、1μm〜10μmが好ましく、3μm〜8μmがより好ましい。
ここで、前記体積平均粒径、及び、前記体積平均粒径と個数平均粒子径との比(Dv/Dn)は、例えば、ベックマン・コールター社製の粒度測定器「マルチサイザーII」を用いて測定することができる。
【0041】
本発明で使用できるトナー材料は、従来の電子写真用トナーと全く同じ物が使用できる。即ち、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂、等のトナーバインダーを各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散、かつ、離型剤を分散又は溶解し、これを前記粒子の製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナーを作製することが可能である。また、上記トナー材料を溶融混練して得られた混練物を各種溶媒に一度溶解乃至分散した液を、前記粒子の製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的のトナーを得ることも可能である。
【0042】
<トナー材料>
前記トナー材料としては、少なくとも樹脂及び着色剤を含有し、更に必要に応じて、ワックス等のその他の成分を含有する。
【0043】
−樹脂−
前記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
【0044】
前記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体、などが挙げられる。
前記アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類、などが挙げられる。
前記メタクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類、などが挙げられる。
【0045】
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)〜(18)が挙げられる。(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステル等の不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸等のα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物、又はこれらのモノエステル等のカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレンなどのヒドロキシ基を有するモノマー。
【0046】
前記結着樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、などが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、などが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、又は以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部用いることが好ましく、0.03質量部〜5質量部用いることがより好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好適に挙げられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0047】
本発明のビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエ−ト、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート、などが挙げられる。
【0048】
前記結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50%〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
前記結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gが更に好ましい。
【0049】
前記ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール、などが挙げられる。
【0050】
ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。
前記3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などが挙げられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60%〜100%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
【0051】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価は、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gが更に好ましい。
前記結着樹脂の分子量分布は、例えばTHFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
前記結着樹脂としては、前記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれか中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
前記ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
【0052】
ここで、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求めることができ、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150mlを加え溶解する。
(3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をSmlとし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をBmlとし、以下の式(1)で算出する。ただし、fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W ・・・(1)
【0053】
前記トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35℃〜80℃が好ましく、40℃〜75℃がより好ましい。前記ガラス転移温度(Tg)が35℃未満であると、高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。一方、前記ガラス転移温度(Tg)が80℃を超えると、定着性が低下することがある。
【0054】
−磁性体−
本発明で使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金、(3)及びこれらの混合物、などが用いられる。
前記磁性体としては、例えばFe4、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe12O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末が特に好ましい。
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
前記異種元素は、前記磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、前記磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0055】
前記磁性体の添加量としては、前記結着樹脂100質量部に対して、前記磁性体10質量部〜200質量部が好ましく、20質量部〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒径としては、0.1μm〜2μmが好ましく、0.1μm〜0.5μmがより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
また、前記磁性体の磁気特性としては、10kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20エルステッド〜150エルステッド、飽和磁化50emu/g〜200emu/g、残留磁化2emu/g〜20emu/gが好ましい。
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0056】
−着色剤−
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物、などが挙げられる。
前記着色剤の含有量としては、トナーに対して1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。
【0057】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得ることができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウェットケーキをそのまま用いる事ができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましい。
【0058】
また、前記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100であり、着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50で、着色剤を分散させて使用することがより好ましい。酸価が30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。なお、酸価はJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0059】
また、分散剤は、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(いずれも味の素ファインテクノ株式会社製);「Disperbyk−2001」(ビックケミー株式会社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
前記分散剤は、トナー中に、着色剤に対して0.1質量%〜10質量%の割合で配合することが好ましい。配合割合が、0.1質量%未満であると、顔料分散性が不十分となることがあり、10質量%より多いと、高湿下での帯電性が低下することがある。
前記分散剤の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算質量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100,000が好ましく、顔料分散性の観点から、3,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000が更に好ましく、5,000〜30,000が特に好ましい。前記分子量が、500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、分子量が100,000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
前記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1質量部〜50質量部であることが好ましく、5質量部〜30質量部であることがより好ましい。前記添加量が、1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、50質量部を超えると、帯電性が低下することがある。
【0060】
−その他の成分−
本発明のトナーでは、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有させることもできる。
前記ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができるが、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの、などが挙げられる。
【0061】
前記ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸、プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール、ソルビトール等の多価アルコール、リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
より好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0062】
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70℃〜140℃が好ましく、70℃〜120℃がより好ましい。前記融点が70℃未満であると、耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると、耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。
可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば、融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のもの、などが挙げられる。
離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ、などが挙げられる。
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10℃〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。前記融点の差が、10℃未満であると、機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超えると、相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70℃〜120℃が好ましく、70℃〜100℃がより好ましい。
【0063】
前記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャートロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70℃〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70℃〜110℃の領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
前記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2質量部〜20質量部が好ましく、0.5質量部〜10質量部がより好ましい。
本発明では、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
ここで、前記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させて前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0064】
本発明のトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。該流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
前記流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナ、などが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
前記流動性向上剤の粒径としては、平均一次粒径として、0.001μm〜2μmが好ましく、0.002μm〜0.2μmがより好ましい。
【0065】
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル株式会社製、商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社製、商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIEGMBH社製、商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社製、商品名):Franso1(Fransi1社製、商品名)、などが挙げられる。
更には、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30%〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
【0066】
前記有機ケイ素化合物としては、例えばヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2〜12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
前記流動性向上剤の個数平均粒径としては、5nm〜100nmが好ましく、5nm〜50nmがより好ましい。
BET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30m/g以上が好ましく、60m/g〜400m/gがより好ましい。表面処理された微粉体としては、20m/g以上が好ましく、40m/g〜300m/gがより好ましい。
これらの微粉体の適用量としては、トナー100質量部に対して0.03質量部〜8質量部が好ましい。
【0067】
本発明のトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体及びキャリアの保護、クリーニング性の向上、熱特性、電気特性、物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナーと逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0068】
また、トナーの流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中又は漸次外添剤を加えていけばよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。
使用できる混合機の例としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、などが挙げられる。
得られたトナーの形状を更に調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、結着樹脂、着色剤からなるトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法、などが挙げられる。
【0069】
前記外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、などを挙げることができる。
前記無機微粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。
前記BET法による比表面積は、20m/g〜500m/gが好ましい。
前記無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01質量%〜5.0質量%が好ましく、0.01質量%〜2.0質量%がより好ましい。
この他、高分子系微粒子、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような外添剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。
【0070】
前記表面処理剤としては、例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが好適に挙げられる。
前記無機微粒子の一次粒子径としては、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。また、BET法による比表面積としては、20m/g〜500m/gが好ましい。前記無機微粒子の添加割合としては、トナーの0.01質量%〜5質量%であることが好ましく、0.01質量%〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0071】
静電潜像担持体や一次転写媒体に残存する転写後のトナーを除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子、などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01μm〜1μmのものが好ましい。
【0072】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明の前記トナーを少なくとも含有してなり、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有してなる。該現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
【0073】
本発明の前記トナーを用いた前記一成分現像剤の場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、本発明の前記トナーを用いた前記二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0074】
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50emu/g〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料等が好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75emu/g〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30emu〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
前記芯材の粒径としては、体積平均粒径で、10μm〜150μmが好ましく、20μm〜80μmがより好ましい。
前記平均粒径(体積平均粒径(D50))が、10μm未満であると、キャリア粒子の分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0075】
前記樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記アミノ系樹脂としては、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる前記ポリビニル系樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。前記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等が挙げられる。前記ハロゲン化オレフィン樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0077】
前記樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、該導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、等が挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。前記平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
前記樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、該塗布溶液を前記芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。前記塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、等が挙げられる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブチルアセテート、等が挙げられる。
前記焼付としては、特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法、などが挙げられる。
【0078】
前記樹脂層の前記キャリアにおける量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましい。前記量が、0.01質量%未満であると、前記芯材の表面に均一な前記樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、前記樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
前記現像剤が前記二成分現像剤である場合、前記キャリアの該二成分現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90質量%〜98質量%が好ましく、93質量%〜97質量%がより好ましい。
【0079】
<トナー入り容器>
本発明で用いられるトナー入り容器は、本発明の前記トナー乃至前記現像剤を容器中に収容してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、トナー入り容器本体とキャップとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
前記トナー入り容器本体としては、その大きさ、形状、構造、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、円筒状などが好ましく、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより内容物であるトナーが排出口側に移行可能であり、かつ該スパイラル部の一部又は全部が蛇腹機能を有しているもの、などが特に好ましい。
前記トナー入り容器本体の材質としては、特に制限はなく、寸法精度がよいものが好ましく、例えば、樹脂が好適に挙げられ、その中でも、例えば、ポリエステル樹脂,ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、などが好適に挙げられる。
前記トナー入り容器は、保存、搬送等が容易であり、取扱性に優れ、後述するプロセスカートリッジ、画像形成装置等に、着脱可能に取り付けてトナーの補給に好適に使用することができる。
【0080】
<プロセスカートリッジ>
本発明で用いるプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、トナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを、少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
前記現像手段としては、本発明の前記現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容された現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなり、更に、担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。
前記プロセスカートリッジは、各種電子写真方式の画像形成装置に着脱可能に備えさせることができ、後述する本発明で用いる画像形成装置に着脱可能に備えさせるのが好ましい。
【0081】
ここで、前記プロセスカートリッジは、例えば、図6に示すように、静電潜像担持体101を内蔵し、帯電手段102、現像手段104、転写手段108、クリーニング手段107を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図6中、103は露光手段による露光、105は記録媒体をそれぞれ示す。
次に、図6に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、静電潜像担持体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段104で現像され、得られた可視像は転写手段108により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の静電潜像担持体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【0082】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
本発明で用いる画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
【0083】
前記静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
前記静電潜像担持体(「電子写真感光体」、「感光体」、「像担持体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)、などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
【0084】
前記静電潜像の形成は、例えば前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。
前記静電潜像形成手段は、例えば前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0085】
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
また、前記帯電器としては、静電潜像担持体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
また、前記帯電器が、静電潜像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、該帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
【0086】
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0087】
−現像工程及び現像手段−
前記現像工程は、前記静電潜像を、本発明の前記現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を本発明の前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、本発明の前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、本発明の前記現像剤を収容し、前記静電潜像に該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられ、本発明の前記現像剤入り容器を備えた現像器などがより好ましい。
【0088】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0089】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体(感光体)の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0090】
−転写工程及び転写手段−
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0091】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記静電潜像担持体(感光体)上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0092】
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着手段を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ、などが挙げられる。
前記定着装置が、発熱体を具備する加熱体と、該加熱体と接触するフィルムと、該フィルムを介して前記加熱体と圧接する加圧部材とを有し、前記フィルムと前記加圧部材の間に未定着画像を形成させた記録媒体を通過させて加熱定着する手段であることが好ましい。前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0093】
前記除電工程は、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0094】
前記クリーニング工程は、前記静電潜像担持体上に残留する前記トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0095】
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0096】
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0097】
前記画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する一の態様について、図7を参照しながら説明する。図7に示す画像形成装置100は、前記静電潜像担持体としての感光体ドラム10(以下「感光体10」という)と、前記帯電手段としての帯電ローラ20と、前記露光手段としての露光装置30と、前記現像手段としての現像装置40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有する前記クリーニング手段としてのクリーニング装置60と、前記除電手段としての除電ランプ70とを備える。
【0098】
中間転写体50は無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、図中矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50には、その近傍に中間転写体用クリーニングブレード90が配置されており、また、記録媒体95に可視像(トナー像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、この中間転写体50上の可視像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、該中間転写体50の回転方向において、静電潜像担持体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と記録媒体95との接触部との間に配置されている。
【0099】
現像装置40は、現像剤担持体としての現像ベルト41と、この現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M、及びシアン現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラにより回転可能に張架され、一部が静電潜像担持体10と接触している。
【0100】
図7に示す画像形成装置100において、例えば、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光ドラム10上に形成された静電潜像を、現像装置40からトナーを供給して現像して可視像(トナー像)を形成する。該可視像(トナー像)が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、感光体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
【0101】
前記画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する他の態様について、図8を参照しながら説明する。図8に示す画像形成装置100は、図7に示す画像形成装置100において、現像ベルト41を備えてなく、感光体10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されていること以外は、図7に示す画像形成装置100と同様の構成を有し、同様の作用効果を示す。なお、図8においては、図7におけるものと同じものは同符号で示した。
【0102】
本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する他の態様について、図9を参照しながら説明する。図9に示すタンデム画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置である。このタンデム画像形成装置は、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、図9中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、露光装置21が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される記録媒体(転写紙)と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。
なお、タンデム画像形成装置においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために該転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
【0103】
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0104】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動し、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
【0105】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達され、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。即ち、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、図10に示すように、それぞれ、静電潜像担持体10(ブラック用静電潜像担持体10K、イエロー用静電潜像担持体10Y、マゼンタ用静電潜像担持体10M、及びシアン用静電潜像担持体10C)と、該静電潜像担持体10を一様に帯電させる帯電装置160と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に前記静電潜像担持体を露光(図10中、L)し、該静電潜像担持体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する現像装置61と、該トナー画像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置63と、除電器64とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成された該ブラック画像、該イエロー画像、該マゼンタ画像及び該シアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用静電潜像担持体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用静電潜像担持体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用静電潜像担持体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用静電潜像担持体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0106】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該シート(記録紙)上に転写(二次転写)することにより、該シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0107】
カラー画像が転写され形成された前記シート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。その後、該シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされ、あるいは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0109】
(実施例1)
−着色剤分散液の調製−
まず、着色剤としてのカーボンブラック分散液を以下のようにして調製した。
カーボンブラック(Regal400、Cabot社製)15質量部、及び顔料分散剤(アジスパーPB821、味の素ファインテクノ株式会社製)3質量部を、酢酸エチル82質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して、一次分散させて一次分散液を調製した。次に、得られた一次分散液を、ダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。次いで、0.45μmの細孔を有するPTFE製フィルターを通過させて、サブミクロン領域まで分散させた着色剤分散液を調製した。
【0110】
−樹脂及びワックスを添加した分散液(A)の調製−
次に、結着樹脂としての樹脂、及びワックスを添加した下記組成からなる分散液を調製した。
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100質量部、前記着色剤分散液30質量部、カルナバワックス5質量部を、塩化リチウム0.5質量部、酢酸エチル1,000質量部に、着色剤分散液調製時と同じく、攪拌羽を有するミキサーを使用して、10分間攪拌を行い、分散させた。溶媒希釈によるショックで顔料などが凝集することを完全に防止することができた。この段階の分散液を、着色剤分散液調製時と同様に、0.45μmのPTFE製フィルターで濾過したが、目詰まりの発生はなく、全て通過することを確認した。なお、この分散液(A)の電解伝導率は65×10mS/mであった。
【0111】
−樹脂を溶解した溶液(B)の調製−
次に、結着樹脂としての樹脂を溶解した下記組成からなる分散液を調製した。
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100質量部、トルエン1,000質量部を、攪拌羽を有するミキサーを使用して、10分間攪拌を行い溶解させた。この樹脂溶液(B)の電解伝導率は6nS/mであった。
【0112】
−トナーの作製−
得られた分散液(A)の固形分が6.0質量%になるよう酢酸エチルを用いて希釈し、この希釈液を図2に示す粒子製造装置の第1貯留容器535に供給した。このときの希釈分散液の電解伝導率は180×10mS/mであった。また、この第1貯留容器535には直流電圧3kVを印加した。
また同様に、樹脂溶液液(B)を図2に示す粒子製造装置の第2貯留容器536に供給した。このときの希釈分散液の電解伝導率は180×10mS/mであった。
【0113】
使用した2段ノズルプレートは、図1に示すように、それぞれ厚み20μmのニッケルプレートに、真円形状(円形度100%)の出口直径6.0μm及び10.0μmであり、液入口孔面積が最大であり、漸次断面積が縮小し、液出口で最も小さくなる形状の2重の貫通孔となるように、フェムト秒レーザによるマスク縮小投影法による除去加工(レーザアブレーション)により同心円上に10個作製した。それぞれ10個の貫通孔の中心が2枚のノズルプレートで一致するよう位置決めした。2重の貫通孔の存在する部分は、一辺0.5mmの正方形の範囲であった。
【0114】
分散液調製後、以下のようなトナー作製条件で、2段ノズルプレートから多段液柱を発生させ、これを下記に示す交流静電界を作用させることにより、約19μmの液滴径を有する液滴を形成させた。該液滴を乾燥し、固化することにより、トナーを作製した。図3に、液柱の液滴化現象を撮影した様子を示す。
〔トナー作製条件〕
・分散液固形分 :6.0%
・分散液(A)流量 :20ml/hr
・樹脂溶液(B)流量 :20ml/hr
・乾燥空気流量 :シース2.0L/分、装置内エアー 30.0L/分
装置内温度 :60℃
露点温度 :−20℃
交流周波数 :200kHz
直流印加電圧 :3kV
【0115】
次に、乾燥固化したトナーは、サイクロンで捕集したところ、トナーが1時間の製造で2.6g得られた。得られたトナーについて、以下のようにして、体積平均粒径及び粒度分布を測定した。結果を表1に示す。
【0116】
<体積平均粒径及び粒度分布>
トナーの体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)は、粒度測定器(マルチサイザーIII、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer 3 Version3.51)にて解析を行った。
具体的には、ガラス製100mlビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)を0.5ml添加し、各トナーを0.5g添加してミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水を80ml添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理した。前記分散液について、前記マルチサイザーIIIにより、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行った。該測定は、装置が示す濃度が8%±2%になるように前記トナーサンプル分散液を滴下することにより行った。本測定法は、粒径の測定再現性の点から前記濃度を8%±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とした。
トナー粒子又はトナーの体積及び個数を測定後、体積分布と個数分布を算出した。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)を求めた。粒度分布の指標としては、トナーの体積平均粒径(Dv)を個数平均粒径(Dn)で除したDv/Dnを用いた。完全に単分散であれば1となり、数値が大きいほど分布が広いことを意味する。
【0117】
−キャリアの作製−
トルエン100質量部に、シリコーン樹脂(「オルガノストレートシリコーン」)100質量部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、及びカーボンブラック10質量部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、コート層形成液を調製した。該コート層形成液を、流動床型コーティング装置を用いて、粒径50μmの球状フェライト粒子1,000質量部の表面にコーティングして、樹脂膜厚み0.2μmの磁性キャリアを作製した。
【0118】
−現像剤の作製−
次に、トナー5質量部と前記キャリア95質量部とをボールミルで混合し、二成分現像剤を製造した。
【0119】
<帯電量>
吸引式の帯電量測定装置により測定した。具体的には、トナーを捕集できるフィルターを具備したファラデーケージにトナーを200mg〜250mgの範囲で吸引し、これにエレクトロメーターを接続し、吸引したトナーの総電荷量を測定した。この際、予め測定したフィルター質量からの増加質量をフィルター上のトナー質量として5桁精度の化学天秤で計量した。総電荷量を捕集したトナー質量で除し、単位質量当たりの帯電量(q/m)を求めた。なお、同様の測定原理の帯電量測定装置で市販されているものとしてトレックジャパン株式会社製の「モデル210HS−2A」があるが、同様の構成である自作測定装置を使用した。トナーを捕集するフィルターとしては、直径21mmのガラスマイクロファイバー(Whatman社製)を使用した。吸引する時間による測定差は殆どないが、ここでは吸引時間を30秒間以内に規定した。
【0120】
<帯電量分布>
トナーの帯電量分布は帯電量分布測定装置(ホソカワミクロン株式会社製、E−SpartアナライザーEST−2型)により測定した。具体的には、トナーを直接測定機のトナー吸入口に、フィーダーで1分間に500個〜600個の粒子を測定できるように導入し、帯電量分布を測定した。帯電量の分布を示す指標としては、最頻値(ピーク値)[q/d]、及び最頻度の2分の1の高さの位置での分布の幅(半値幅)で表した。トナーの特性としては、帯電量が高くかつ帯電量分布がよりシャープであることが好ましいが、一般的に帯電量が高くなるほど帯電量分布を示す半値幅も大きくなる傾向がある。最頻値が0.25fC/μm以上で、かつ帯電量分布の半値幅が0.2以下であれば帯電量分布は優れていると判断した。
【0121】
<細線再現性>
各現像剤を、市販の複写機(イマジオネオ271、株式会社リコー製)の現像器部分を改良した改造機に入れ、画像占有率7%の印字率で株式会社リコー製6000ペーパーを用いてランニングを実施した。負帯電極性のトナーの場合には、有機静電潜像担持体を使用し、正帯電極性のトナーの場合は非晶質シリコン静電潜像担持体を使用した。その時の初期10枚目の画像と3万枚目の画像の細線部を原稿と比較し、光学顕微鏡により100倍で拡大観察し、ラインの抜けの状態を段階見本と比較しながら、下記の4段階の評価基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:極めて良好
○:良好
△:やや劣る
×:不良
なお、◎>○>△>×の順に画像品質が高い。特に×の評価は製品として採用できないレベルである。
【0122】
(実施例2)
二段ノズルプレートの2重の貫通孔が、実施例1と同じ加工法によって作製した図4に示すような千鳥格子状に100個が一辺0.5mmの正方形の範囲に存在するものを用いた。
また、液流量を400ml/hrとした以外は、実施例1と同様にして、トナーを作製した。
乾燥固化したトナーは、サイクロンで捕集したところ、トナー母体粒子が、1時間の製造で25.0g得られた。
得られたトナーについて、実施例1と同様の評価を行った、結果を表1に示す。
【0123】
(実施例3)
二段ノズルプレートの2重の貫通孔が、実施例1と同じ加工法によって作製した千鳥格子状に1024個が一辺4.0mmの正方形の範囲に存在するものを用いた。また、液流量を4,000ml/hrとした以外は、実施例1と同様にして、トナーを作製した。
乾燥固化したトナーは、サイクロンで捕集したところ、トナー母体粒子が1時間の製造で280g得られた。
得られたトナーについて、実施例1と同様の評価を行った、結果を表1に示す。
【0124】
(実施例4)
実施例3の交流周波数を400kHzとし、液流量を2,800ml/hrとした以外は、実施例3と同様にして、トナーを作製した。
乾燥固化したトナーは、サイクロンで捕集したところ、トナー母体粒子が、1時間の製造で180g得られた。
得られたトナーについて、実施例1と同様の評価を行った、結果を表1に示す。
【0125】
(実施例5)
二段ノズルプレートの2重の貫通孔が、実施例1と同じ加工法によって作製した千鳥格子状に1,024個が一辺4.0mmの正方形の範囲に存在するものを用いた。また、1つの液滴化手段を有する貯留部を10個配列し、1つの貯留部へ送液する液流量を4,016ml/hrとした以外は、実施例1と同様にして、トナーを作製した。
乾燥固化したトナーは、サイクロンで捕集したところ、トナー母体粒子が、1時間の製造で2,600g得られた。
得られたトナーについて、実施例1と同様の評価を行った、結果を表1に示す。
【0126】
(比較例1)
−分散液の調製−
着色剤の分散液、樹脂及びワックスを添加した分散液を、実施例1と同様の条件で調製した。
−トナーの作製−
実施例1で用いた粒子製造装置の代わりに、分散液を貯留する貯留部と、この貯留部に圧電体の伸縮により圧力パルスを与え、これにより液物質を液滴としてノズルから吐出することが可能なヘッド部とを設けた装置に変え、以下のようなトナー作製条件で、液滴を吐出させた後、該液滴を乾燥固化することにより、トナーを作製した。なお、実施例1の粒子製造装置は、貯留部内を加圧して内部の液を貫通孔より吐出して液柱を形成し、振動により前記液柱に擾乱を誘起して液滴化する構造である。これに対し、比較例1の粒子製造装置は、分散液貯留部に圧電素子により圧力パルスが加えられ、この圧力パルスのエネルギーによって液滴を吐出している点が大きな違いである。また、比較例1で用いた液滴吐出部の数は1個であった。
〔トナー作製条件〕
・分散液比重 :ρ=1.1888g/cm
・乾燥空気流量 :装置内エアー 3.0L/分
・装置内温度 :27℃〜28℃
・乾燥空気(露点温度):−20℃
・圧電パルス周波数 :20kHz
【0127】
乾燥し、固化したトナーは、1μmの細孔を有するフィルターで吸引捕集したところ、トナー母体粒子の1時間あたりの生産量は0.86gであった。
得られたトナーについて、実施例1と同様の評価を行った、結果を表1に示す。
【0128】
(比較例2)
−分散液の調製−
着色剤の分散液、樹脂及びワックスを添加した分散液を、実施例1と同様の条件で調製した。
−トナーの作製−
実施例1で用いた粒子製造装置の代わりに、分散液を貯留する貯留部と、この貯留部に圧電体の伸縮で発生した圧力パルスを、更に音響レンズにより収束して得た圧力パルスで、液滴をノズルから吐出することが可能なヘッド部とを設けた比較例2の粒子製造装置に変え、比較例1と同条件でトナーを作製した。なお、実施例1の粒子製造装置は、貯留部内を加圧して内部の液を貫通孔より吐出して液柱を形成し、振動により前記液柱に擾乱を誘起して液滴化する構造である。これに対し、比較例2の粒子製造装置は、分散液貯留部に圧電素子により圧力パルスが加えられ、この圧力パルスのエネルギーによって液滴を吐出している点が大きな違いである。また、比較例2で用いた液滴吐出部の数は1個であった。
乾燥し、固化したトナーは、1μmの細孔を有するフィルターで吸引捕集したところ、トナー母体粒子の1時間あたりの生産量は0.86gであった。
得られたトナーについて、実施例1と同様の評価を行った、結果を表1に示す。
【0129】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の粒子の製造方法により製造される粒子は、化粧品、化成品、電子材料、医薬品に使用できる。また、本発明のトナーの製造方法により製造されたトナーは、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するための現像剤として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、液滴化手段の原理説明図である。
【図2】図2は、多数のノズル板を有する粒子製造装置の概略図である。
【図3】図3は、液滴化をストロボ撮影した写真である。
【図4】図4は、多数の貫通孔を有するノズルプレートの写真である。
【図5】図5は、実施例1において作製されたトナー母体の走査電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略説明図である。
【図7】図7は、本発明の画像形成方法に用いる画像形成装置一の例を示す概略説明図である。
【図8】図8は、本発明の画像形成方法に用いる画像形成装置の他の例を示す概略説明図である。
【図9】図9は、本発明の画像形成方法に用いる画像形成装置(タンデム型カラー画像形成装置)の一例を示す概略説明図である。
【図10】図10は、図9に示す画像形成装置における一部拡大概略説明図である。
【符号の説明】
【0132】
10 感光体(感光体ドラム)
10K ブラック用静電潜像担持体
10Y イエロー用静電潜像担持体
10M マゼンタ用静電潜像担持体
10C シアン用静電潜像担持体
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写クリーニング装置
18 画像形成手段
20 帯電ローラ
21 露光装置
22 二次転写装置
23 ローラ
24 二次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 シート反転装置
30 露光装置
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
40 現像装置
41 現像ベルト
42K 現像剤収容部
42Y 現像剤収容部
42M 現像剤収容部
42C 現像剤収容部
43K 現像剤供給ローラ
43Y 現像剤供給ローラ
43M 現像剤供給ローラ
43C 現像剤供給ローラ
44K 現像ローラ
44Y 現像ローラ
44M 現像ローラ
44C 現像ローラ
45K ブラック用現像器
45Y イエロー用現像器
45M マゼンタ用現像器
45C シアン用現像器
49 レジストローラ
50 中間転写体
51 ローラ
52 コロナ帯電器
53 定電流源
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排出トレイ
58 分離ローラ
60 クリーニング装置
61 現像器
62 転写帯電器
63 感光体クリーニング装置
64 除電器
70 除電ランプ
80 転写ローラ
90 クリーニング装置
95 転写紙
100 画像形成装置
120 タンデム型現像器
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
150 複写装置本体
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
501 第1供給口
502 第2供給口
503 液流路
504 第1排出口
505 第2排出口
506 絶縁性プレート
507 交流静電界印加用電極プレート
508 多重液柱
509 第1ノズルプレート
510 第2ノズルプレート
521 2段ノズルプレート
522 電極
523 溶媒除去設備
524 除電器
525 粒子捕集部
526 粒子
527 渦流
528 電界カーテン
529 液供給管
530 乾燥容器
531 液滴
532 粒子貯蔵容器
533 乾燥気体供給管
534 定量ポンプ
535 第1貯留容器
536 第2貯留容器
537 定量ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる原料流体を貯留する少なくとも2つの貯留部と、貫通孔とを少なくとも有する粒子製造装置を用い、前記貫通孔より放出される原料流体を滴化し造粒する粒子の製造方法であって、
前記貫通孔が、少なくとも2枚のノズルプレートの積層構造からなる2重の貫通孔であり、
前記2重の貫通孔より放出される前記原料液体が前記少なくとも2つの貯留部からそれぞれ供給され、
前記2重の貫通孔により内側の流体と外側の流体が異なる多重流体からなる液柱を形成し、
該多重流体からなる液柱に直流電圧を印加し、一定周期の交流静電界中を通過させ、該周期と同期させることにより粒子を製造することを特徴とする粒子の製造方法。
【請求項2】
貫通孔を有するノズルプレートが、複数の貫通孔を有する請求項1に記載の粒子の製造方法。
【請求項3】
2重の貫通孔による多重流体からなる液柱の内側を流れる流体と、外側を流れる流体との少なくともいずれか一方が導電性流体である請求項1から2のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項4】
2重の貫通孔による多重流体からなる液柱の内側を流れる流体が導電性流体であり、外側を流れる流体が絶縁性流体であり、これらの流体が互いに相溶せず、粒子の内側と外側が異なる組成で構成される請求項1から3のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項5】
多重流体からなる液柱を形成する流体が少なくとも揮発性有機溶媒と樹脂とを含み、少なくとも内側を流れる流体が導電性付与剤を含有する請求項1から4のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項6】
2重の貫通孔の最大開口径が1.0μm〜40.0μmであり、少なくとも内側の流体を放出する貫通孔の最大開口径が、外側の流体を放出する最大開口径より小さい請求項1から5のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項7】
2枚のノズルプレートが、厚み5μm〜40μmの金属板から形成されている請求項1から6のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項8】
2重の貫通孔が、液入口孔面積が最大であり、漸次断面積が縮小し、液出口で最も小さくなる形状に形成されている請求項1から7のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項9】
2重の貫通孔の出口形状の円形度が90%以上である請求項1から8のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項10】
隣り合う貫通孔の間隔が、貫通孔出口の直径の平均値の3倍以上である請求項1から9のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項11】
交流静電界の交流周波数が、10kHz〜1MHzである請求項1から10のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項12】
多重流体に印加する直流電圧が500V〜5kVである請求項1から11のいずれか記載の粒子の製造方法。
【請求項13】
原料流体に対し、貯留部と、原料流体を液滴化する液滴形成部との圧力差を発生させる加圧手段を有する請求項1から12のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項14】
貫通孔から連続的に放出される原料流体が、貫通孔から吐出した直後は連続的な柱状を形成している請求項1から13のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項15】
直流電圧を印加した液柱に交流静電界を作用させることにより、液柱に括れを形成する請求項1から14のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項16】
括れの周期λと、液柱の直径Djとが、次式、3.0×Dj<λ<8.0×Djを満たし、液柱先端を液滴に変化させる請求項15に記載の粒子の製造方法。
【請求項17】
2重の貫通孔から原料流体を放出する下流部に、乾燥手段及び固化手段の少なくともいずれかを有し、液滴を固体粒子に変化させる請求項1から16のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項18】
固体粒子への変化が、脱溶媒である請求項17に記載の粒子の製造方法。
【請求項19】
液滴吐出方向と同方向に乾燥気体を流すことにより気流を発生させ、該気流により、液滴を溶媒除去設備内に搬送すると共に、搬送中に前記液滴中の溶媒を除去することにより、固体粒子を形成する請求項18に記載の粒子の製造方法。
【請求項20】
乾燥気体が、空気及び窒素ガスのいずれかである請求項19に記載の粒子の製造方法。
【請求項21】
乾燥気体の温度が、40℃〜200℃である請求項19から20のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項22】
異なる原料流体を貯留する少なくとも2つの貯留部と、貫通孔とを少なくとも有するトナー製造装置を用い、前記貫通孔より放出される原料流体を滴化し造粒するトナーの製造方法であって、
前記貫通孔が、少なくとも2枚のノズルプレートの積層構造からなる2重の貫通孔であり、
前記2重の貫通孔より放出される前記原料液体が前記少なくとも2つの貯留部からそれぞれ供給され、
前記2重の貫通孔により内側の流体と外側の流体が異なる多重流体からなる液柱を形成し、
該多重流体からなる液柱に直流電圧を印加し、一定周期の交流静電界中を通過させ、該周期と同期させることによりトナーを製造することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項23】
原料流体が、少なくとも樹脂、及び着色剤を含有する請求項22に記載のトナーの製造方法。
【請求項24】
請求項22から23のいずれかに記載のトナーの製造方法により製造されることを特徴とするトナー。
【請求項25】
体積平均粒径が1μm〜10μmであり、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が1.00〜1.10である請求項24に記載のトナー。
【請求項26】
請求項24から25のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
【請求項27】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を請求項24から25のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着する定着工程とを少なくとも含むことを特徴とする画像形成方法。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−229462(P2008−229462A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71592(P2007−71592)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】