説明

粒子ジェットボーリング方法およびシステム

【課題】
【解決手段】 本発明は、ボーリング中に坑井を調整する、および/または建設中に深部の地中坑井の傾斜および方位角を制御する機能を実施する流体および固体粒子衝撃子による円錐形切削ジェットを発生させる粒子噴射システムおよび流体増幅ジェットヘッドを含む、異成分から成る固体粒子衝撃子を含有する流体プロセス回路の形成、利用、処理、維持のための方法およびシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本発明は、2007年5月15日に出願された米国仮特許出願第60/930,403号の優先権を主張し、この内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、石油、ガス、地熱掘削産業に、限定的ではないがさらに詳しく述べると、粒子ジェットボーリングの方法およびシステムに関連する。
【背景技術】
【0003】
石油、ガス、地熱掘削産業では、入手が最も容易な資源は比較的浅い貯蔵箇所に位置しており、同産業は現在、残存する石油、ガス、そして高エネルギー密度の地熱埋蔵物を求めて、さらに深部の、費用のかかる坑井を、より高い割合で掘削できる見通しに直面している。回転機械式の掘削方法および設備を利用すると、深部の坑井の掘削コストは奥行に相関して指数関数的に上昇する。坑井の20%に当たる最深部を掘削するのに、坑井掘削コスト全体の70%を超えるコストを要するのが一般的である。掘進率(ROP)上昇方法による深部坑井の掘削コストの低下、関連の問題を緩和するための坑井の調整、直線および垂直の坑井の掘削は、石油、ガス、地熱掘削産業にとって商業的に重要である。坑井の掘削コストを低下させると、エネルギー開発業者の現在の探鉱および掘削開発予算額を最大にする可能性がある。
【0004】
粒子ジェット掘削(PJD)は、深部の大径坑井の掘削コストを低下させる可能性のある方法として、およそ過去45年にわたって研究されてきた。この期間を通して、石油、ガス、および/または地熱坑井の掘削時に、ROPを上昇させ、ダウンホール掘削設備に対するドリルビットの回転機械的磨耗を低下させ、できる限り垂直に近い坑井を掘削するのを補助するための手段として、PJD法の実用的かつ経済的な用途が追求されてきた。
【0005】
PJDシステム研究は、深部の大径坑井の掘削のためのROPを上昇させることを主な対象としてきた。この技術は、パイプストリングを通って坑井へ循環され、坑井内のパイプストリングの末端部で流体ノズルシステムにより加速されて、存在する材料および作動条件により変化する様々なエネルギー伝達機構により掘削される地中の累層に衝突してこれを崩壊させる掘削流体に混入された固体粒子を包含する異成分スラリーを使用するものであると説明するのが最も良い。
【0006】
PJD法および坑井掘削設備の研究は、二つの主要な研究カテゴリに分類されている。第一のカテゴリは、磨耗ジェット掘削(AJD)研究のため角張った比較的低密度の結晶構造磨耗粒子を使用することであり、これが最終的に、衝突ジェット掘削(IJD)のための比較的高密度の鉄固体材料衝撃子の使用という第二の研究領域に移行する。両方のプロセスが数十年にわたって研究されており、その研究に対して数百万ドルが投資されるようになってからは著しい発展が見られるが、PJDのプロセスは、深部の大径坑井の掘削において商業的に実践されてはいない。
【0007】
この研究の歴史は、初期のAJD掘削プロセスにおいて研磨剤として結晶砂粒子を使用することから始まっていることが分かる。スチールショットの形の比較的高密度の鉄固体粒子衝撃子の導入により、AJDプロセスはIJDプロセスに移行した。このプロセスは、表面掘削流体システムと、坑井内のドリルパイプシステムと、坑井の底部ホールに向けて掘削流体を加速するドリルストリングに装着されたドリルビットまたはノズルシステムとを包含する流体回路を設けることと、掘削された切削物および掘削流体を分離のため地表へ循環させることと、再利用のため掘削流体を処理することとを含む。
【0008】
衝撃子スラリーを生成するため、様々な手段により固体衝撃子が掘削流体に追加される。衝撃子スラリーは次に、パイプストリングを通ってドリルビットおよび/またはノズルシステムへポンプ供給され、底部ホールの累層に衝突してこれを変形させる。掘削後の切削物、衝撃子、掘削流体は坑井を通って地表設備へ循環され、ここで掘削後の切削物が分離される。掘削流体および衝撃子は、再循環および再利用のための様々な手段によって別々に処理される。衝撃子および地中累層の変形プロセスの物理的特性は、噴射される衝撃子の衝撃力が地中累層内の累層切削物の限界応力(CFCS)レベルを必ず超えるものである。1960年代から1970年代中ごろに行われた初期のPJD研究では、当時最新の掘削技術および設備の基本的な物理的特性および用途が充分に研究された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明によれば、従来のシステムおよび方法と関連する短所および問題をかなり解決または軽減する粒子ジェットボーリング方法およびシステムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の様々な実施形態では、高圧流体を流通させるのに適した高圧流路を設けること、高圧流路に結合されるとともに、複数の衝撃子を加速し加速衝撃子を流体に噴射し、衝撃子および流体が混入した衝撃子スラリーを形成するのに適した衝撃子噴射装置を設けること、高圧流路との流体連通状態にあるパイプストリングへ衝撃子スラリーを運搬すること、パイプストリングを通り、パイプストリングの末端部に接続されてパイプストリングとの流体連通状態にあるジェットヘッドへ衝撃子スラリーを運搬すること、ダウンホール方向および接線方向に衝撃子スラリーを加速させて衝撃子スラリーの渦流を発生させること、加速された衝撃子スラリーを坑井の累層に衝突させて累層から累層粒子を除去すること、衝撃子スラリーおよび累層粒子を地上分離装置へ運搬すること、液体サイクロン分離装置を用いて累層粒子の少なくとも一部分を衝撃子スラリーから分離すること、磁気分離装置を用いて衝撃子の少なくとも一部分を流体から分離することによる坑井のボーリングが検討される。
【0011】
様々な実施形態は、ジェットヘッドの周囲に径方向に配置されるとともに、衝撃子スラリーの少なくとも一部分を流通させて坑井の側面に衝突させるのに適した複数のノズルポートを設けることも含んでよい。さらに、複数のノズルポートの少なくとも一部分を用いてジェットヘッドに偏向スラストを発生させることも含んでよい。様々な実施形態はまた、以下、すなわち、衝撃子スラリーに混入する衝撃子の量、衝撃子スラリーに混入する衝撃子のサイズ混合状態、坑井累層の掘進率、衝撃子スラリーの密度、地表へ戻る衝撃子の数、衝撃子スラリーの圧力、底面におけるドリルストリングの重量のうち一つ以上を含む複数の条件を監視することも含んでよい。様々な実施形態はまた、複数の条件の一つ以上を調整して坑井直径と掘進率のうち少なくとも一方を調整することも含んでよい。様々な実施形態はまた、指向性ボーリングを可能にするジェットヘッドの角度位置を設ける屈曲サブを使用することも含んでよい。
【0012】
いくつかの実施形態において坑井のボーリングは、高圧駆動流体流を提供することと、高圧駆動流体へのアクセスポートにベンチュリ流条件を確立することと、衝撃子スラリーを生成するため高圧駆動流体に混入させるのに適した複数の衝撃子を加速することと、ベンチュリ流条件により生成された低圧エリアに加速衝撃子を通過させることにより高圧駆動流体へ加速衝撃子を噴射することと、パイプストリングを通って、パイプストリングの末端部に接続されてパイプストリングとの流体連通状態にあるジェットヘッドへ衝撃子スラリーを運搬することであって、ジェットヘッドが衝撃子スラリーを流通させるのに適していることと、ジェットヘッドを流れる衝撃子スラリーを加速し、坑井の表面に衝撃子スラリーを衝突させて表面から累層粒子を除去することとを含んでよい。
【0013】
様々な実施形態は、ベンチュリ流条件の消滅を防止するのに充分な運動エネルギーで複数の衝撃子を加速することを含んでよい。また、複数の衝撃子を加速するのに、機械力、流体力、起電力のうち少なくとも一つが使用される。様々な実施形態は、アクセスポートに低圧領域を発生させるのに適した二重同心オリフィスを用いてベンチュリ流条件が確立されることも含んでよい。いくつかの実施形態では、同心オリフィスは駆動流体を旋回させるのに適している。いくつかの実施形態では、複数の衝撃子を加速するのにインペラホイールが使用される。
【0014】
いくつかの実施形態では、衝撃子の供給源を用意すること、衝撃子を流体に混入して衝撃子スラリーを形成すること、パイプストリングを通って、パイプストリングの末端部に接続されるとともにパイプストリングとの流体連通状態にあるジェットヘッドへ衝撃子スラリーを運搬すること、中を流れる衝撃子スラリーに渦流形態を付与するのに適したステータを中に有するジェットヘッドハウジングに、衝撃子スラリーを通過させること、軸方向と接線方向の両方に衝撃子スラリーを加速するのに適した渦流増強装置に衝撃子スラリーを通過させること、流出する衝撃子スラリーの速度を維持しながらジェットヘッドを集中および安定させるのに適した円錐形出口オリフィスに衝撃子スラリーを通過させること、坑井の表面に衝撃を与えて表面から累層粒子を除去することによる坑井のボーリングが検討されている。
【0015】
様々な実施形態はまた、衝撃子スラリーを調整して、衝突される坑井の直径を変化させることを含んでよい。累層粒子を衝撃子スラリーに混入させるための、表面をさらに研磨するのに適した内曲トロイダル流形態を形成することも含んでよい。いくつかの実施形態では、中を流れる衝撃子スラリーを加速するための収束円錐形区分をジェットヘッドハウジングが入口に有してもよい。いくつかの実施形態では、円錐形衝撃子スラリージェット形状を発生させるのに適した拡散円錐形区分をジェットヘッドハウジングが出口に有する。いくつかの実施形態では、内側円筒形ジェット領域と外側円錐形ジェット流領域とを包含する二重ジェット形状として衝撃子スラリーがジェットヘッドから流出し、衝撃子スラリーの大部分は外側円錐形ジェット流領域を流れる。いくつかの実施形態では、衝撃子は、直径が.025インチ程度の固体粒子である。固体粒子衝撃子などの衝撃子は、回路全体で処理される最大の個体粒子衝撃子から、掘削される地中累層について最小の限界累層切削応力を超えるのに必要な最小の質量‐運動量衝撃力を満たすことができる最小の固体粒子衝撃子までの範囲のサイズであってよい。いくつかの実施形態では、最低で毎秒1,200フィートの速度で衝撃子が坑井に衝突する。いくつかの実施形態では、衝撃子の質量よりも大きな質量を持つ累層粒子を除去するのに充分な速度で、衝撃子が坑井に衝突する。いくつかの実施形態では、衝撃子が坑井に衝突するたびに7粒の累層が除去される。いくつかの実施形態では、せん断力、圧縮力、磨耗/腐食力の組合せを用いて衝撃子が坑井に衝突する。いくつかの実施形態では、ステータの外面に沿って軸方向に延在して、流れる衝撃子スラリーに接線および径方向の力を付与するのに適した複数のステータ翼を、ステータが有する。いくつかの実施形態では、ステータはジェットヘッドからの取外しに適している。
【0016】
いくつかの実施形態ではジェットヘッドを回転させるが、いくつかではジェットヘッドを回転させない。いくつかの実施形態ではジェットヘッドをローラコーンドリルビットとともに利用するが、いくつかではジェットヘッドを固定カッタドリルビットとともに利用する。いくつかの実施形態では、掘削および下見作業中に低圧形成流体の損失を軽減し、累層の水和作用を最小にし、坑井への高圧流を最小にし、形成中の累層への流体の侵入を最小にし、その構造安定性を高め、機械的または熱的な破砕を軽減するため、坑井の変形に衝撃子を利用する。いくつかの実施形態では、他の逸循環改善方法との組合せで坑井壁を変形させるのに衝撃子を利用する。いくつかの実施形態では、坑井の表面の加工硬化および/またはケーシング接続部の形成に衝撃子を使用する。いくつかの実施形態では、噴出ロス、逸循環、および/またはフィルタケーキを防止または最小にして、切削状態の差を最小にしてもよい。
【0017】
別の部品サブシステムは、a)衝撃子加速運動のための流体増幅装置、b)ジェットヘッドの内部がジェットヘッドにより集中および安定して、直線か垂直または指向性ポイント・ドリル坑井を作り出すように底部ホールパターンが切削されるジェット形状、c)回路の変形により坑井の直径を力学的に制御して、衝撃子スラリー、衝撃子サイズ、衝撃子濃度を調整するジェット形状、d)ニュートラル横スラストまたは選択的偏向横スラストをジェットヘッドに発生させながら坑井壁を変形させるのに使用することができる垂直流ジェット、f)構成を変えるための、ケーブルまたは逆循環スラリー流圧を介したジェットヘッドの内部ステータシステムの回収、および/または、g)作業の実施に従来の管状パイプストリングを必要としないジェットヘッド、を含む特徴の一つまたはいくつかの組合せ、またはそのいずれでもないものを取り入れたジェットヘッドでもよい。様々な実施形態の他の面では、ジェットヘッドの動作と協調して、衝撃子スラリーの衝撃子サイズ、比率、濃度を連続的に発生および調整するという粒子噴射サブシステムの能力が得られてもよい。
【0018】
本発明の様々な実施形態では、上に挙げた利点のうち一つまたはいくつかが提供されてもよいし、そのいずれも提供されなくてもよい。記載した面により例示的実施形態が得られ、本発明の趣旨および原理に含まれる多様な実施形態が存在し、上に挙げた実施形態の説明を、本発明の趣旨および原理を取り入れた唯一の実施形態であると解釈すべきでないことに言及しておく。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明およびその長所をより完全に理解するため、類似の参照番号が類似の特徴を指す添付図面とともに、以下の説明を参照する。
【図1】いくつかの回路部品の概略を示す回路の流れ図を示す。
【図2】回路の実施形態の物理的構成要素を示す。
【図3A】図2の噴射装置をさらに示す。
【図3B】図2の噴射装置をさらに示す。
【図4A】パイプストリング、ジェットヘッドを示す。
【図4B】パイプストリングを示す。
【図4C】様々な累層タイプ、ジェットヘッドを示す。
【図5A】ジェットヘッドの実施形態の図を示す。
【図5B】ジェットヘッドの実施形態の図を示す。
【図5C】ジェットヘッドの実施形態の図を示す。
【図5D】ジェットヘッドの実施形態の図を示す。
【図5E】ジェットヘッドの実施形態の図を示す。
【図5F】ジェットヘッドの実施形態の図を示す。
【図6A】坑井およびジェットヘッドの図を示す。
【図6B】坑井およびジェットヘッドの図を示す。
【図6C】坑井およびジェットヘッドの図を示す。
【図6D】坑井およびジェットヘッドの図を示す。
【図7A】ジェットヘッドの図を示す。
【図7B】ジェットヘッドの図を示す。
【図7C】ジェットヘッドの図を示す。
【図7D】ジェットヘッドの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、様々な実施形態による深部の大径坑井のボーリングで実行される様々なステップの概略が挙げられている。プロセス100はステップ102から始まり、衝撃子、例えばスチールショット粒子などの固体材料衝撃子がこのプロセスのために供給される。次にステップ104では、掘削リグに近接していてもよい携帯用衝撃子処理保管システムに、衝撃子が保管される。ステップ106では、掘削リグのスラリーポンプにより単独でポンプ供給される高圧掘削流体としてステップ108で吐出されるのに充分に加圧された少量で高濃度の衝撃子スラリーを生成するため、粒子噴射システムで衝撃子が流体化されるか、又は処理される。いくつかの実施形態では、スラリー濃度の調整にも使用することができる高濃度で少量の高圧衝撃子スラリーを、粒子噴射装置が発生させる。粒子噴射装置およびその機能については、後でより詳細に説明する。
【0021】
リグの高圧流体流路へ高濃度の衝撃子スラリーを追加すると、異成分から成る衝撃子スラリー作動流体が形成される。次に衝撃子スラリーは、リグの高圧流路システムおよびパイプストリング内を、坑井内に懸架されていてもよいジェットヘッドが装着することができるパイプストリングの末端部まで流れる。ここで使用される際に、ドリル、掘削、ドリルパイプ、掘削リグ、掘削流体の語、ドリル(掘削)という語の他の使用は、ホールのボーリング全般に関する装置、器具、システム、方法を広く意味するものであって、ドリルビットを必要とする機械的掘削および/またはドリルビットの回転に関する装置、器具、システム、方法に限定されるものではない。ステップ110では、様々な機能を実施するため希釈された衝撃子スラリーがジェットヘッドに送られる。ジェットヘッドは様々な構成を持ってよく、ボーリングの最適化、坑井ホールの調整、坑井の方向および傾斜という機能を実施するため、様々な表面動作パラメータが変更されてもよい。流体回路およびジェットヘッドについてのいくつかの実施形態では、衝撃子スラリーが連続的に供給される。ジェットヘッドおよびその機能については、以下でより詳細に説明する。
【0022】
ステップ112では、掘削、累層の調整、坑井の指向性動作情報が監視される。ステップ114では、ステップ112からの情報が使用されて、ジェットヘッド機能の実施が最適かどうかを判断する。監視データは、掘削作業を監視するための地表命令・制御手段および/または地中手段から得られてもよい。ジェットヘッドの動作が最適でない場合には、ステップ118においてある種の動作パラメータが地表で変更されてもよく、あるいは、ステータハウジングなど、ジェットヘッドの内部部品がケーブルの使用によって回収されてもよく、ジェットヘッドの内部部品が地表へ運ばれてステップ116でその構成が物理的に変更され、パイプストリングで内部部品を降ろしてジェットヘッドに再び嵌着させることによりジェットヘッドへ戻して、ボーリング、坑井の調整、および/または坑井の傾斜および方位角の制御といった機能のため、ステップ120でジェットヘッドの動作の最適化が行われてもよい。
【0023】
ジェットヘッドに衝撃子スラリーを通過させると、累層粒子などの累層切削物その他を発生させる。ステップ122では、衝撃子スラリーおよび累層切削物が、パイプストリングの外側と坑井壁の内部との間の環状領域を通って、地表設備へ循環される。ステップ124で振動分離装置、液体サイクロン分離装置、磁気分離装置などの分離装置によって流体から分離される点まで、衝撃子スラリーおよび累層切削物は、掘削リグの地表設備を循環し続ける。累層粒子は廃棄される。衝撃子はステップ126で運搬されてから、ステップ130で分離装置により累層切削物から分離される。当該技術の熟練者には明らかであるように、ここで説明する分離の各々は、一つの分離装置または複数の分離装置で実施されてもよく、多様な順序で実施されてもよい。次に衝撃子はステップ134で分離装置へ運搬され、ステップ136で衝撃子は質量に応じて水圧運搬流体から分離され、保管タンクに吐出され、ここで衝撃子は質量およびサイズが一定になるようにステップ138でさらに処理される、および/またはステップ104で再利用のため携帯用衝撃子処理・保管システムの衝撃子保管タンクに保管される。ステップ128では、衝撃子および累層切削物から分離された流体は、掘削リグの流体処理、調整、保管システムへ移動する。処理および保管後の流体は続いて、ステップ132で掘削リグのポンプにより掘削リグの高圧流路システムへポンプ供給され、ステップ108で流体が再び高濃度衝撃子ストリームと混合されて、衝撃子スラリーが生成される。この加圧衝撃子スラリーは、新品のものと、使用後に回収されてジェットヘッドへの運搬のため高圧流体へ再噴射されたものの両方である衝撃子を包含してもよい。
【0024】
さて図2を参照すると、システムの実施形態が図示されている。リグの流体処理・調整・保管システム240は、調整後の流体245を保持している。保管タンク240とポンプ230の両方に、掘削リグポンプ吸引路235が接続されている。保管された流体245は掘削リグポンプ230により、掘削リグ地表高圧流路220へ吸引および供給される。高圧流路455は掘削リグの高圧流路220に接続され、この高圧流路において、噴射装置300からの高濃度衝撃子吐出流が、掘削リグポンプ230により発生された掘削流体流と混合されて衝撃子スラリーを形成する。
【0025】
衝撃子スラリーは、掘削リングのスイベル210と、坑井700内でジェットヘッド800に接続されたパイプストリング200とを通って運搬される。衝撃子および切削物スラリー255は最初に、パイプストリング200と坑井システム700との間の環状領域を通り、続いてパイプストリング200と段階的に坑井ヘッド100との間の環状領域、ケーシング110で示された坑井圧力制御設備(不図示)、ベルニップル120、最終的に流路130と、衝撃子および累層切削物255が流体245から分離される分離装置250へと循環される。流体245は、処理・調整・保管システム240で処理、調整、保管される。
【0026】
いくつかの実施形態では、衝撃子は金属製であってもよく磁性を有してもよい。衝撃子および累層切削スラリー255は、攪拌装置250などの分離装置により流体245から分離され、磁気分離システム600へ吐出される。磁気分離システム600の磁気ドラム610は、衝撃子335を磁気的に保持する一方で、重力により累層切削物259を累層切削物吐出パイル260へ分離する。続いて衝撃子335は磁気ドラム610の作用により衝撃子収集装置620へ放出され、衝撃子は、排出装置630を通る流路465から流路470へポンプ供給されて、回収後の衝撃子を液体サイクロン分離器450を通って運搬する駆動流体により駆動される液体排出装置630へ送られ、回収後の衝撃子は、駆動流体から分離されて保持タンク408へ吐出される。分離後の衝撃子は、液体サイクロン分離装置450の底流オリフィスを通って衝撃子保管タンク402へ吐出される。流体245は、低圧流路460を通って垂直インペラポンプ505により、携帯用衝撃子処理・保持タンクスキッドアセンブリ400内の流体保持タンク408へ移送される。タンク408からの流体410は、インペラポンプ435の吸入部へ重力で送られ、排出装置440,630へ吐出される。排出装置440は循環して、衝撃子が噴射システム300へ自由に流入するように、タンク402内の衝撃子を周期的に循環させる。排出システム440は保持タンク402から衝撃子を受け取ってこれを液体サイクロン分離装置445へ循環させ、ここで衝撃子は駆動流体410から分離されてタンク402へ吐出される。駆動流体410は液体サイクロン分離装置445内を循環され、タンク408へ吐出される。流体保持タンク408は、流体保持タンク407との流体連通状態にある。流体410は保持タンク407へ均等に分配され、ここで遠心チャージポンプ420のための流体供給流体405として保管される。チャージポンプ420は、高圧低流量のプランジャポンプ425をプリチャージする。プランジャポンプ425は、衝撃子噴射アセンブリ300を作動させる駆動流体を提供する。噴射アセンブリ300は、衝撃子保管タンク402からの衝撃子と、ポンプ425からの高圧・低流量流体との供給を調整して、高圧・低流量・高濃度の衝撃子スラリーを発生させて高圧流路455へ吐出するのに必要な条件を整える。
【0027】
図3bは、供給・計量部品345と衝撃子加速ポンプ部品320と液体混入ベンチュリ部品350と流体増幅部品370とを包含する噴射アセンブリ300の一実施形態を示す。噴射アセンブリ300の部品は、順次協働して、大気条件からシステムへ衝撃子を通過させるとともに、高圧スラリーの形で衝撃子を吐出する。衝撃子335は、図2のタンク402から、導管332を通り、スクリュタイプのオーガー(不図示)を含む導管331へ重力で供給され、ハウジング330を通って粒子インペラポンプ320へ送られる。スクリュオーガー(不図示)は回転し、その速度は電動モータ333の調整速度によって制御され、ハウジング330を通って部品320への衝撃子335の流れを計量する。
【0028】
水圧ベンチュリシステムは、圧力を速度に変換して圧力を回収するのに使用されてもよい。プロセス中、ベンチュリシステムは、固体粒子を混入するのに使用できる高速ジェットの周囲に部分的真空状態を発生させる。水圧システムは、流体システムまで加速されなければならない固体粒子を受け取る定常状態を持つ。このプロセスでは、水圧システムが崩れる点である一定の閾値に達するまで、水圧エネルギーを吸収する。ベンチュリをベースとする排出装置へ固体粒子をかなりの割合で混入するには、水圧排出装置に対してエネルギーが中立であるかエネルギーがプラスになる関係を確立するように固体粒子の速度を最初に上げることが望ましいだろう。
【0029】
図3aには、ハウジング322と、明確化のため取り外された図3bのカバープレート325との間に保持されるインペラホイール323が示されている。インペラホイール323は、図3bの電動モータ326の作用によって方向327に回転する。回転するインペラホイール翼324は、ハウジング330を流れる衝撃子335を収集して、衝撃子335を高速まで加速し、管329を流れるようにハウジング322の接線方向開口部328へ送る。流管329はベンチュリハウジング352まで通じて、ベンチュリハウジング352の内部に周方向オリフィス353を形成する。密封・調節プレート351は、内部に高圧を含む圧力シールとなり、周方向オリフィス353の離間距離を制御するための調節機構として機能する。高圧流体は、図2の流体ポンプ425によって流路426を通り、ベンチュリハウジング352の内部キャビティ334へ供給される。高圧流体は、周方向オリフィス353を通過して、流管329の末端部の前に低圧領域を発生させるように機能するベンチュリジェット作用を起こす。ベンチュリを流れる流体は、流管329を通ってスロート354へ流れる高速の衝撃子を混入し、こうして衝撃子と流体とのスラリーを形成するようにも機能する。スラリーは、ベンチュリスロート354を通って、流体増幅部品370の内部チャンバーへ流れる。流体増幅装置370は、図3bの上部キャップ378と本体371と底部キャップ376と吐出流路455とを包含する。流路354からのスラリーは内部チャンバー372へ接線方向に流れて渦流動作で流れ、角運動量保存則に従って、スラリーがチャンバー372からチャンバー374へ流れる際に中央オリフィス373では非常に高い回転速度が生じる。スラリーがオリフィス373を通ってチャンバー374へ流れると、角運動量保存則に従って運動するスラリーは、チャンバー374の最外径部を通る際にかなり減速し、チャンバー374の最外径部に接線方向に接続された吐出流路455へスラリーが流れる。流体増幅装置370の両方の端部キャップは、チャンバー372,374における渦流動作を安定化させるスタビライザ377,379を包含する中央渦流スタビライザを有する。
【0030】
高圧液体への衝撃子の混入では、流体圧力を流体速度に変換してから、排出装置の下流拡散区分で流体が減速速度で膨張する際に最初の流体圧力の一部を回収するというベンチュリの原理で作動する水圧駆動排出装置が利用されてもよい。排出システムは、システムの高速軸流駆動流体ジェットの周囲付近に、部分的な真空状態を発生させてもよい。この低圧領域は、ジェットストリームが膨張する際に、粒子材料がベンチュリスロート内の環状領域および排出装置の拡散壁領域を搬送されると、ジェットストリームの周囲に粒子材料を吸入し、材料を駆動流体に混入する。
【0031】
掘削リグの流路圧力の圧力に抗して渦流チャンバー部品システムを作動させるのに必要なベンチュリ流条件を最初に確立することにより、噴射装置が作動してもよい。定常状態の流条件が確立されて掘削リグの高圧流路圧力と釣り合うと、インペラポンプが起動して、ベンチュリ区分の同軸ジェット流の中心へ衝撃子を流入させ始める。目標の混入比が得られるように、インペラにより衝撃子に付与される速度とベンチュリ流の量との均衡が保たれる。インペラホイールから出る衝撃子の運動エネルギーは、ベンチュリジェットの連続作動を維持しながら高い衝撃子混入比が得られるように計画され、ベンチュリジェットの運動エネルギーと等しいかこれを超えてもよい。こうして、衝撃子の運動エネルギーが、安定流条件下でベンチュリジェットを駆動するのに必要な運動エネルギーと等しいか、これより高い場合に、ベンチュリジェットは、衝撃子の混入比を上昇させながら動作の効率を維持するか上昇させることができる。或る条件では、噴射装置のベンチュリおよび渦流チャンバー区分を、非常に高い比で衝撃子を駆動液体に混入させる機構とするのに必要な大量の運動エネルギーを供給して、多様なサイズ、混合状態、量の衝撃子の混入を調整して高濃度・高圧の衝撃子スラリー流を発生させるという粒子噴射装置の目標を達成することにより、衝撃子の質量流量はベンチュリスロートでの質量流量の大部分を占めてもよい。60%以上の程度の衝撃子混入比が達成可能である。高濃度の衝撃子を混入させて、大径坑井のボーリング、調整、方向制御というジェットヘッドのダウンホール特徴の設計および動作を建設中に最適化する噴射システムの柔軟性を得るのに、非常に低い水圧馬力システムを利用できることが分かる。
【0032】
図4cは、ジェットヘッドアセンブリ800が配置される大径の坑井700の断面を含む実施形態を示す。地表下累層702乃至708が、地表701の下に位置する。この累層の各々は、ボーリングの際の難題となる独自の特徴を有する。累層702はシルト岩累層として例示され、累層703は含水砂岩累層として例示され、累層704は頁岩累層として例示され、累層705は石炭累層として例示され、累層706は第2頁岩累層として例示され、累層707は石灰岩累層として例示され、累層708は天然ガス発生の砂岩累層として例示されている。パイプストリング200が坑井725内に懸架され、ジェットヘッドアセンブリ800に装着されている。地表ケーシング714が配置され、累層702にセメント715で固定されている。含水累層703を隔離する手段として、ケーシング716が累層704に配置され、セメント718で固定されている。石炭累層705を隔離する手段として、ケーシング718が累層706に配置され、セメント719で固定されている。石灰岩累層707を隔離する手段として、ケーシング720が累層708に配置されてセメント721で固定されている。石灰岩累層707は、図のように天然の割れ目709,710を有してもよい。砂岩累層708は、図のように天然の割れ目711,712,713を有してもよい。
【0033】
図4aは、図4cの坑井の下方区分の拡大図を示す。パイプストリング200は、ジェットヘッドアセンブリ800に装着された状態で示されている。ジェットヘッドアセンブリ800から突出する円錐形端部ジェット830と側面ジェット830とが図示されている。図4bは、ジェットヘッドハウジング801から突出する側面ジェット860および円錐形端部ジェット830を備える、ジェットヘッドハウジング801に装着されたパイプストリング200の等角図を示す。
【0034】
図4a〜4cのジェットヘッドサブシステムのいくつかの実施形態では、衝撃子の加速を最大にする円錐形液体ジェット形状を発生させて衝撃子粒子の数、サイズ、混合状態を最適化するのに、渦流流体増幅装置を利用する。回路のジェットヘッドサブシステムのいくつかの実施形態は、高いROPを維持するのに充分な衝撃子の速度を増大させ、坑井の掘削直径を変更するためスラリー特性により調整できる切削ジェットを形成し、ジェットヘッドとホール底部との間の相互作用を通してジェットヘッドを集中させ、ジェットヘッドとホール底部との間の相互作用を通してジェットヘッドを安定化し、ジェットヘッドのジェット作用を通して坑井壁を変形し、ジェットヘッドの様々なジェット作用を変化させることでジェットヘッドの方法を制御するという機能を同時に実施するように設計されている。
【0035】
図5fは、ジェットヘッドアセンブリ800の一実施形態の等角図を示す。図5aは、ジェットヘッドアセンブリ800の部品の分解図を示す。ジェットヘッドハウジング801は、ステータ803を収容するステータハウジング802を収容する。ステータ803の外面に沿って軸方向に延在するステータ溝部820が、ステータに形成されている。渦流集中スタビライザ814が、ステータ803の末端部から延出する。ステータ803のステムは、取外しのため回収ツール(不図示)をステータアセンブリに係止するための凹状プロフィール813を持つ構造である。ステータ803は、ステータハウジング802に永久接着されている。ステータハウジング802は、ジェットヘッドハウジング801に着脱可能に係止されている(ラッチは不図示)。標準的なポート804,805は、ステータアセンブリの内部からジェットヘッドハウジング801の対応する標準的なポート806,807を通って流体が循環されるよう、ステータハウジング802に設けている。ノズル809およびノズルリテーナ808は、流体ポート806,807を標準例とする径方向に離間した流体ポートのための標準的なノズルおよびリテーナであり、図5bには嵌着位置で示されている。
【0036】
図5bは、図5eの断面線A‐Aにおける断面図を示す。ノズル809およびノズルリテーナ808を典型例とするノズルが、ジェットヘッドハウジング801内の所定箇所に描かれている。ステータ803およびステータハウジング802は、ジェットヘッドハウジング801内の所定箇所にある。表面814および810は、ステータアセンブリのこの区分を通過する流体に渦流動作を付与する第1内側キャビティを形成する。表面812および814は、渦流スラリーの塊を安定させるための第2内側円筒形渦流キャビティを形成する。ステータハウジング802の内面は出口オリフィス811を形成し、円筒形渦流安定チャンバーを通過する流体が出口オリフィス811から吐出される。出口オリフィス811の領域は、渦流スラリーの塊の遠心力が直線状の接線上で開放されて、拡散円錐ジェット形状を形成する領域となる。図5cは、ジェットヘッド801とパイプストリング200とを側面図で示す。図5dは、ジェットヘッド801の端面図を示す。図5eは、断面線AAが見えるジェットヘッド801の端面図を示す。
【0037】
ジェットヘッドの様々な実施形態は、着脱可能なステータアセンブリを収容するのに適したハウジングと、ジェットヘッドの周囲に径方向に配設されたノズルポートのアレイとを包含する。ステータハウジングは、ステータリブが面に接合された第1円筒形内側通路を有する。この円筒形区分は収束円錐形区分につながり、円錐形区分は小径円筒チャンバーにつながり、このチャンバーが、収束円錐形区分と小径円筒形区分の両方がステータアセンブリの渦流チャンバーを形成する。ステータアセンブリの渦流チャンバー区分は、拡散円錐形の出口オリフィス区分につながっている。ステータアセンブリ流路、チャンバー、オリフィスの相対的な寸法は、スラリー組成および流条件を変更することにより調整される動作特徴範囲を設けるように最適化されてもよい。
【0038】
動作時に、ステータリブおよびステータハウジングにより形成される通路を通って、スラリーがパイプストリングからポンプ供給され、こうして角度を持つ渦流動作をスラリーに付与する。スラリー渦流動作の角度および初速は、出口角度およびステータリブの総流面積によって調節される。スラリーは、ステータ溝部から、軸流速度成分をスラリー渦流に付与する機能を行う渦流チャンバーの収束円錐形区分と、直径が常に減少する円の形でスラリーが流れる際にスラリー渦流の流速をかなり高い回転速度まで加速するためのチャンバーへ、そして最終的に渦流チャンバーの円筒形流安定区分へ流れる。渦流チャンバーで渦流となるスラリーは、渦流チャンバー最大直径部から円筒形渦流チャンバー区分の最小直径部までスラリー渦流が前進する際に角運動量保存則に従って作動し、スラリー回転流は最大速度で安定し、ステータハウジングの出口オリフィス領域へ通過する前に、衝撃子の速度を最高にする。スラリー加速中におけるスラリーの掘削流体成分は、衝撃子よりも高い速度の渦流となる。渦流チャンバーの流安定区分でのスラリー滞留時間により、掘削流体が衝撃子に作用して、スラリー流がステータハウジングの出口オリフィスへ移行する際の渦流形態変化の前に、衝撃子へのエネルギー伝達を最大化する。
【0039】
高速のスラリー渦流は、渦流チャンバーの流安定区分から移行し、ステータの出口オリフィス領域へ流入する。接線方向の放出流体の運動により、スラリー流は、運動量の比較的高い衝撃子と高速の掘削流体流とを包含する径方向切削ジェット流を形成する。高速スラリーは、径方向に拡散する円錐形切削ジェットを出口オリフィスの範囲内に形成してから、出口オリフィスよりも延出して円錐形切削ジェットを形成し、切削ジェットは最終的に、現在作動条件下では坑井の直径をそれ以上増大させられないレベルまで衝突衝撃子のエネルギーが低下すると、内曲トロイダル流ジェット形状に移行する。
【0040】
垂直動作ジェットヘッドは、掘削される累層のさらに深部へ移動できるので、円錐形切削ジェットは垂直動作ジェットヘッドにより坑井の底部に押圧される。出口オリフィスの凹状円錐面は、ジェットヘッドのジェット作用により切削される適合形状の地中累層底ホールプロフィールに近接する。出口オリフィスの凹状円錐形状は、出口オリフィス壁とジェットヘッドの垂直動作により掘削される累層との間でさらに制限される高速のスラリー切削ジェットの水圧動作と同時に、スラリージェットの切削動作により発生する底部ホールプロフィールとともにジェットヘッドを物理的に集中および安定させる傾向がある。掘削プロセス中にはジェットヘッドシステムの動作によりジェットヘッドに作用する横力は存在しないので、ジェットヘッドシステムの動作の集中および安定の特徴により、ジェットヘッドは自然に、直線ホールを垂直方向に掘削する。これは、深部の坑井の掘削コストを軽減するために非常に重要な、坑井の構造の様相である。
【0041】
ステータアセンブリの渦流チャンバー区分で発生するスラリー速度の利点の作用によって発生する切削ジェット内の衝撃子運動量は、スラリー切削ジェット内に含有される掘削流体よりも長い作用距離にわたって、衝撃子速度を維持し、ゆえに運動エネルギーを維持する。ステータアセンブリの出口オリフィス領域に形成される拡散円錐形切削ジェットは、最終的に、スラリー流が水圧により開放されて坑井内で上方へ流れて、混入された衝撃子および累層切削物を坑井の外へ搬送する前に、内曲トロイダル流形態を形成する。ジェットヘッドの流体増幅装置のスラリー切削ジェット速度による、てこ作用の特徴は、ジェットヘッドで得られるスラリー流の供給圧力に、てこ作用を及ぼして、累層切削目的のCFCS要件を満たしながら非常に細かい衝撃子の使用を可能にする。スラリー衝撃子動作がCFCSを超えると、単位時間当たりの衝撃子衝突数を調整することにより、目標とする坑井直径およびROPが確立される。回路の噴射装置は、スラリーの衝撃子サイズ、混合状態、量を調整することにより、目標とする坑井直径、そして目標のROPを確立するための力学的要件に応じてスラリーの組成を調整する。
【0042】
衝撃子速度を上昇させる能力は、深部の坑井建設において従来の掘削リグで得られる既存の掘削流体の作動圧力の使用とともに、単位量あたりの衝撃子衝突数を増加させる小型衝撃子の選択および使用を可能にする。12GPMの流量での様々な実施形態で使用されるとCFCFを満たす0.025インチの公称直径を持つ米国ふるいサイズ25の小型衝撃子を例えば使用すると、毎分およそ2億7500万の衝撃を発生することができる。
【0043】
衝撃子の作用により取り除かれる地中の累層粒サイズに衝撃子の寸法が近いほど、地中累層の除去が効率的となるので、小型衝撃子の使用によって累層除去効率が得られる。これは、切削奥行と衝撃子の直径との間の近似のため、小型衝撃子がせん断時に累層に衝突するとともに地中累層に高い衝撃力を付与することによるものである。衝撃子と粒サイズの不一致のため大きな衝突入射角を発生させる大型衝撃子粒子が使用される時には、圧縮力よりもせん断力により累層が効率的に除去される。ゆえに、累層粒よりも大きな直径の衝撃子を使用すると、単位スラリー流当たりに発生する衝撃が少なくなり、衝突入射角により、累層へ伝達される衝撃子衝撃エネルギーははるかに弱くなる。さらに、混入、流体回路の高圧流路内での循環、坑井の外への循環、低圧流路回路内での循環、そして既存のダウンホール工具での循環がより容易であるという観点からは、実用的な最小の衝撃子を利用することが望ましい。
【0044】
ジェットヘッド内で設けられる周方向ジェットの選択的動作を採用した結果として発生する偏向スラストなど、ジェットヘッドに採用する横力を意図的に導入すると、坑井を建設する時にポイント・ドリル方向制御機構を設けるのに役立つ。本発明の動作にはドリルビットでの重量または回転トルクの必要性はないので、坑井環状領域内での流れおよび圧力の特性とともに、管形ストリング内で循環されるスラリーの寄生的圧力損失を低下させるのに、管形ケーシングまたは管材料などあまり高価でない非規格パイプストリングが利用できる。ジェットヘッドの物理的な外側寸法よりも大きな坑井直径を設けられるというジェットヘッドの能力のため、固体拡張式ケーシング方法および/または公差の狭い入れ子式ケーシングの慣行を用いた単一ボアの坑井形状の使用により達成される坑井の建設費を節約するため、坑井の掘削および/または下方拡張を高速で行って経済的にボアを用意するのに、ジェットヘッドが使用できる。
【0045】
図6dは、セメントシース721により累層708にセメント固定された坑井ケーシング720の一実施形態を示す、坑井の下方区分の断面図を示す。変形された坑井壁面871は、累層708の未加工の累層870の隣に示されている。切削ジェット830の切削作用により形成される坑井壁874が示されている。変形坑井871の隣に、天然の割れ目711が示されている。パイプストリング200およびジェットヘッドアセンブリ800の一部分の断面図が示されている。パイプストリング200の内部と、加圧掘削流体380に渦流動作が付与されるステータ翼820とを流れる、衝撃子335を含有する加圧掘削流体380の循環が示されている。下方ステータハウジング802、続いて図5bの出口オリフィス811を流れる加圧掘削流体380が示されている。図5bの出口オリフィス811において、加圧掘削流体380は拡散円錐形の切削ジェット830を形成し、その切削作用が累層708を切削して底部ホールパターン732を形成する。円錐形ジェット830の切削作用は累層面730を切削して累層切削物259を発生させ、ジェットヘッドボデー802と外側パイプストリング200と坑井壁874とケーシング720の内壁722との間の環状スペースへの運搬のため、回収掘削流体スラリー255として、この切削物が掘削流体に混入される。衝撃子および累層切削物を含有する回収掘削流体スラリー255は、明瞭化のため坑井環状体の片面のみを流れるものとして断面図で示されている。
【0046】
図6aは、内曲トロイダル形状の流形態832に流れこむ拡散円錐形切削ジェット830の作用の影響を示す。衝撃子335を含有する流体ジェット830は、図6dの累層面730を切削し、累層切削物259を内曲トロイダル流832へ搬送して、ここで掘削流体と衝撃子335と累層切削物259,733とが累層形成面832の切削を続ける。累層切削物259と衝撃子335とはトロイダル流832の中を循環して累層の切削を続け、最終的には、トロイダル流832から出て、坑井環状体の中で上方に循環し、処理のため掘削リグの地表設備へと送られる。
【0047】
図6bは、坑井壁874に衝突する円形の側面ジェット861を示し、坑井壁に衝突する衝撃子のジェット作用によって坑井壁874が変形されている。変形された坑井壁871は、高密度の累層材料872の薄層を包含する新たな坑井壁を形成する。累層領域870は、累層708の付近の未加工の坑井領域である。
【0048】
図6cは、側面ジェット861の作用により密封されている天然の累層割れ目711と、割れ目711の内側経路を坑井から隔離する変形累層材料872と、坑井708内の掘削流体255とを示す。
【0049】
図7dは、水平断面線EE,HH,IIを含むジェットヘッド801の正面図を示す。図7aは、ジェットヘッド801内の4個の側面ジェットポートを示す水平断面線EEにおける断面を示し、2個のジェットポートは、ノズルポートプラグ866,867により封止されている。図6dの加圧掘削流体380を提供して、累層708に垂直に衝突する水平ジェット862,863を形成する円形オリフィスを備えるノズルが、2個のポートに含まれる。図7bは、ジェットヘッド801内の4個の側面ジェットポートを示す水平断面線HHにおける断面を示し、2個のジェットポートは、ノズルポートプラグ864,865によって封止されている。累層708に垂直に衝突する水平ジェット861,860を形成する図6dの加圧掘削流体380を提供する円形ノズルオリフィスが、2個のポートに含まれる。図7cは、ジェットヘッド801に位置する8本のジェットの重複状態を示す水平断面線IIにおける断面を示す。この場合には、4本のジェットが選択的に封止866,864,865,867されている。4本のジェットには、オリフィス862,860,863,861を備えるノズルが装着されている。このジェット構成により、スラストベクトル820に沿って偏向された最終的なスラスト力が発生される。
【0050】
本発明の方法およびシステムについての様々な実施形態を添付図面に図示し、上記の詳細な説明に記載したが、本発明は開示された実施形態に限定されず、提示された本発明の趣旨から逸脱することなく多数の再構成、変形、置換が可能であることは言うまでもないだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坑井のボーリング方法であって、
高圧流体を流通させるのに適した高圧流路を設けることと、
複数の衝撃子を加速し、加速された前記衝撃子を前記高圧流路へ噴射し、混入された衝撃子および高圧流体による衝撃子スラリーを形成するように前記高圧流路に結合された衝撃子噴射システムを設けることと、
前記高圧流路との流体連通状態にあるパイプストリングを通って、前記パイプストリングの末端部との流体連通状態にあるジェットヘッドへ前記衝撃子スラリーを運搬することと、
ダウンホール方向および接線方向に前記衝撃子スラリーを加速し衝撃子スラリーの渦流を発生させることと、
累層粒子を除去するため、加速された前記衝撃子スラリーを坑井の累層に衝突させることと、
前記衝撃子スラリーと前記累層粒子とを分離システムへ運搬することと、
前記分離システムの磁気分離装置を使用して前記衝撃子の少なくとも一部分を前記累層粒子から分離することと、
前記分離システムの液体サイクロン分離装置を使用して前記衝撃子の少なくとも一部分を前記高圧流体から分離することと、
を包含する方法。
【請求項2】
前記ジェットヘッドの周囲に径方向に配置され、前記衝撃子スラリーの少なくとも一部分を流通させて前記坑井の側面に衝突させるのに適した複数のノズルポートを設けること、
をさらに包含する請求項1の方法。
【請求項3】
前記複数のノズルポートの少なくとも一部分を使用して前記ジェットヘッドに偏向スラストを発生させること、
をさらに包含する請求項3の方法。
【請求項4】
以下、すなわち、
前記衝撃子スラリーに混入される衝撃子の量と、
前記衝撃子スラリーに混入される衝撃子のサイズ混合状態と、
前記坑井累層での掘進率と、
前記衝撃子スラリーの密度と、
前記表面へ戻る衝撃子の数と、
前記衝撃子スラリーの圧力と、
底面におけるドリルストリングの重量と、
のうち一つ以上を含む複数の条件を監視すること、
をさらに包含する請求項1の方法。
【請求項5】
前記複数の条件のうち一つ以上を調整して坑井直径と前記掘進率のうち少なくとも一方を調整すること、
をさらに包含する請求項4の方法。
【請求項6】
屈曲サブを使用して、指向性ボーリングを可能にする前記ジェットヘッドの角度位置を発生させること、
をさらに包含する、請求項1の方法。
【請求項7】
坑井のボーリング方法であって、
高圧流体流を設けることと、
複数の衝撃子を加速することと、
駆動流体へのアクセスポートにおいてベンチュリ流条件を確立することと、
前記ベンチュリ流条件により形成される低圧エリアに加速された前記衝撃子を通過させることにより、加速された前記衝撃子を前記駆動流体へ噴射することと、
前記衝撃子と駆動流体とを前記高圧流体流に混入して衝撃子スラリーを生成することと、
パイプストリングを通って、前記パイプストリングの末端部に接続されるとともに前記パイプストリングとの流体連通状態にあるジェットヘッドへ前記衝撃子スラリーを運搬することであって、前記ジェットヘッドが前記衝撃子スラリーを流通させるのに適していることと、
前記ジェットヘッドを流れる前記衝撃子スラリーを加速し、前記衝撃子スラリーを坑井の表面に衝突させて表面から累層粒子を除去することと、
を包含する方法。
【請求項8】
前記複数の衝撃子の加速が、前記ベンチュリ流条件の消滅を防止するのに充分な運動エネルギーを前記衝撃子に付与することである、請求項7の方法。
【請求項9】
前記複数の衝撃子を加速するのに、機械力、流体力、起電力のうち少なくとも一つが使用される、請求項7の方法。
【請求項10】
前記アクセスポートに低圧領域を発生させるのに適した二重同心オリフィスを使用して前記ベンチュリ流条件が確立される、請求項7の方法。
【請求項11】
前記二重同心オリフィスの同心オリフィスが、前記駆動流体を旋回させるのに適している、請求項10の方法。
【請求項12】
前記複数の衝撃子を加速するのにインペラホイールが使用される、請求項7の方法。
【請求項13】
坑井のボーリング方法であって、
衝撃子の供給源を設けることと、
前記衝撃子を流体に混入して衝撃子スラリーを形成することと、
パイプストリングを通って、前記パイプストリングの末端部に接続されるとともに前記パイプストリングとの流体連通状態にあるジェットヘッドへ前記衝撃子スラリーを運搬することと、
前記衝撃子スラリーにジェットヘッドハウジングを通過させることであって、前記ジェットヘッドハウジングが、通過する前記衝撃子スラリーに渦流形態を付与するのに適したステータを有することと、
軸方向と接線方向の両方で前記衝撃子スラリーを加速するのに適した渦流増強装置に前記衝撃子スラリーを通過させることと、
中を流れる前記衝撃子スラリーの速度を維持しながら前記ジェットヘッドを集中および安定させるのに適した円錐形出口オリフィスに前記衝撃子スラリーを通過させることと、
前記衝撃子スラリーの少なくとも一部分を坑井の表面に衝突させて累層粒子を除去することと、
を包含する方法。
【請求項14】
前記衝撃子スラリーを調整して、衝突される前記坑井の直径を変化させること、
をさらに包含する、請求項13の方法。
【請求項15】
前記累層粒子を前記衝撃子スラリーに混入するための、前記表面をさらに研磨するのに適した内曲トロイダル流形態を形成することと、
をさらに包含する、請求項13の方法。
【請求項16】
中を流れる前記衝撃子スラリーを加速するため、前記ジェットヘッドハウジングが収束円錐形区分を入口に有する、請求項13の方法。
【請求項17】
円錐形の衝撃子スラリージェット形状を生成するのに適した拡散円錐形区分を前記ジェットヘッドハウジングが出口に有する、請求項13の方法。
【請求項18】
前記衝撃子が.025インチの直径を有する、請求項13の方法。
【請求項19】
少なくとも毎秒1,200フィートの速度で前記衝撃子が前記坑井に衝突する、請求項13の方法。
【請求項20】
前記衝撃子の質量より大きな質量を有する累層粒子を除去するのに充分な速度で前記衝撃子が前記坑井に衝突する、請求項13の方法。
【請求項21】
せん断力と圧縮力と磨耗/侵食力との組合せを用いて前記衝撃子が前記坑井に衝突する、請求項13の方法。
【請求項22】
前記ステータの外面において軸方向に延在して、流れる前記衝撃子スラリーに接線方向‐径方向力を付与するのに適した複数のステータ翼を前記ステータが有する、請求項13の方法。
【請求項23】
坑井のボーリングシステムであって、
高圧流体を流通させるのに適した高圧流路と、
前記高圧流路に結合されるとともに、駆動流体へのアクセスポートに低圧エリアを生成するのに適したベンチュリシステムと、
前記ベンチュリシステムに結合されるとともに、前記低圧エリアを経て前記駆動流体へ複数の衝撃子を連続的に加速するのに適した衝撃子噴射装置と、
前記駆動流体と前記衝撃子とを前記高圧流路に噴射して衝撃子スラリーを形成するのに適した増幅装置と、
前記高圧流路との流体連通状態にあって、前記高圧流路から坑井の領域へ前記衝撃子スラリーを運搬するのに適したパイプストリングと、
前記パイプストリングの末端部との流体連通状態にあって、累層粒子を除去するために加速される前記衝撃子スラリーを坑井の累層に衝突させるようにダウンホール方向および接線方向に前記衝撃子スラリーを加速して衝撃子スラリーの渦流を形成するのに適したジェットヘッドと、
を包含するシステム。
【請求項24】
前記衝撃子噴射装置がインペラホイールである、請求項23のシステム。
【請求項25】
前記累層粒子の少なくとも一部分を前記衝撃子スラリーから分離するのに適した第1分離装置をさらに包含する、請求項23のシステム。
【請求項26】
前記衝撃子の少なくとも一部分を前記高圧流体から分離するのに適した第2分離装置をさらに包含する、請求項23のシステム。
【請求項27】
前記ジェットヘッドが、衝撃子スラリーの円錐形ジェット流を出口で付与するのに適している、請求項23のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【公表番号】特表2010−527418(P2010−527418A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508466(P2010−508466)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/055895
【国際公開番号】WO2008/144096
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509058069)テラワット ホールディングス コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】TERRAWATT HOLDINGS CORPORATION
【Fターム(参考)】