説明

粒子充填層集塵装置

【課題】
内燃機関あるいは外燃機関の排ガス中に含まれるすす・粉塵あるいは飛灰等のサブミクロン級の粒径(1.0〜0.1μm)を持つ微粒子の捕集を可能にするための粒子充填層フィルターを有する粒子充填層集塵装置を提供すること。
【解決手段】
側壁が多孔質である同心軸上の2つの円筒管で形成される円環部に誘電体粒子を充填し、該内筒管中央の空間は該排ガスを通過させるための排ガス通過部とする粒子充填層フィルターにおいて、該排ガス通過部の排ガス流入口側に設置された放電電極によって粒子充填層内粒子に静電界を与え、かつ粒子充填層フィルターの排ガス流入部において排ガス中の微粒子に電荷を与えることにより、排ガス中のサブミクロン級微粒子の捕集が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関あるいは外燃機関から発生する排ガス中の粉塵、特に粒子径2.5μm以下の微粒子を効果的に捕集・除去する集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼル機関の排気ガス中のすす除去には無機質の多孔板フィルターが利用されているが、その微粒子捕集能力には限界があり、また目詰まり等による定期的な保守点検を行う必要がある等、メンテナンスが繁雑であるという問題点があった。また、大型ボイラーの燃焼排ガスの集塵には電気集塵器が広く採用されているが、1μm以下のサブミクロン級微粒子の捕集は困難であった。
【0003】
また、本発明に類するものとして、粒子充填層を移動層として集塵装置に適用したものもあるが、粒子充填層による集塵においてもサブミクロン級の粒子の集塵は困難であった。
【特許文献1】特開2001−129338号公報
【特許文献2】特許第3028466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術にあっては次のような問題点を有している。
ディーゼル機関の排ガス中のすす等の微粒子除去には、無機質の多孔板フィルターを用いたものが実用化されている。しかし、フィルターでは人間の心肺機能に弊害の大きい粒子径2.5μm以下の微粒子の捕集には効果が不充分であるうえ、フィルターにすす等の微粒子が堆積するため、定期的にフィルターを交換する必要がある。また、微粒子除去装置が設置されているものもあるが、保守上の繁雑さやコストが高い等の問題点があり、その普及を阻害している。
【0005】
ボイラーの場合、燃焼の際に発生する排ガスの集塵装置として電気集塵器が普及しているが、電気集塵器の集塵性能においてもサブミクロン級の集塵が困難であり、また、粒子充填層を移動層とすることにより集塵を行う集塵装置においても同様の問題点を有している。
【0006】
従来の技術が有する上記の様な問題点に鑑み、本発明の目的とするところは、内燃機関あるいは外燃機関の排ガス中に含まれるすす・粉塵あるいは飛灰等のサブミクロン級の微粒子の捕集を可能にするための粒子充填層フィルターを有する粒子充填層集塵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次記のようになるものである。
請求項1に係る粒子充填層集塵装置は、内燃機関あるいは外燃機関の排ガス中の未燃分すす及び灰分等の集塵装置として構成された粒子充填層集塵装置において、粒子充填層フィルターは排ガス流入面及び流出面が通気性を有する多孔板であって、各々の面に静電界を印加して粒子充填層内の粒子間に静電界を与え、さらに排ガス中の微粒子の集塵効果を向上させるために、該粒子充填層フィルター流入前の排ガス中の微粒子に単極性の電荷を与え、集塵された微粒子を焼却するため、粒子充填層内に電気ヒーターを設置し、放電電極で生成されるオゾンにより微粒子の燃焼性を向上させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る粒子充填層集塵装置は、請求項1において、前記粒子充填層内の粒子間に静電界を印加するための排ガス流入側の放電電極を電気ヒーターと併用することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る粒子充填層集塵装置は、請求項1又は2において、前記微粒子に単極性の電荷を与える方法として、排ガスが該粒子充填層フィルターに流入する前に、負極性の直流高電圧を重畳する交流バリヤ放電管によって該放電電極から高濃度の単極性イオンを効率的に放出させることにより、該排ガス中の微粒子に電荷を与えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る粒子充填層集塵装置は、請求項1乃至3において、前記粒子充填層上部に非粒子空間を設け、車輌走行時あるいは外部から振動が与えられる時に、充填した粒子が振動し得るものとして充填層粒子間に捕集された微粒子と粒子の固着を防止することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る粒子充填層集塵装置は、請求項1乃至4において、前記放電電極に替えて、前記粒子充填層の排ガス通過部の排ガス流入口側に電気集塵器が前置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粒子充填層集塵装置は、該粒子充填層フィルター内の粒子充填層に静電界を印加するとともに、該排ガス流入部に設置された微粒子荷電用の放電電極により該粒子充填層フィルター内に流入する排ガス中の微粒子が帯電するため、サブミクロン級の微粒子を90%以上捕集し得る性能を有する。また、該粒子充填層フィルターを車輌搭載した場合、車輌走行時の振動により粒子充填層フィルターの粒子が揺動し、粒子とすす等の微粒子同士が固着することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
粒子充填層に静電界を印加することより捕集性が向上することは特許文献2である特許第3028466号にも記載されているが、サブミクロン級粒子の捕集においては、その粒径が0.3〜0.5μm(代表粒径0.4μm)での捕集性能は排ガス中の微粒子の帯電の有無が捕集性能に支配的であることを検証した。
【0014】
図1は、その実測結果を静電界強度と捕集効率において微粒子の帯電量(q=39.7e 〜32.3e,q=0;eは電気素量で約1.6×10−19C)をパラメータとして示したものである。電界強度1kV/cm、層高6cm、充填粒子径3mm、帯電量q=39.7e〜32.3e、空塔速度0.5m/sの場合、捕集効率は微粒子の平均粒径0.4μmにおいて98〜88%であった。一方、帯電量(無)q=0の場合は22%であった。
【0015】
図2は、粒子充填層高と捕集効率を粒子帯電量をパラメータとして示したものであるが、図1と同様に帯電量q=39.7eとq=32.3eを比較すると、捕集効率では層高6cmにおいて、前者では97%、後者では88%と捕集性能に差を生ずる。
【0016】
以上の実測結果に基づき発明した本発明の実施例を以下に説明する。本発明による粒子充填層集塵装置をディーゼル機関の排気ガスすす除去装置に適用したものを図3に示す。図3(a)は本発明による粒子充填層集塵装置を円筒形にした場合の側断面図、(b)は(a)のA−A断面図を示すものである。ここでは本発明による粒子充填層集塵装置を円筒形状としているが、特に形状は限定されるものではなく、例えば平板状であってもよい。
円筒形ケース1内には、側面が多孔質で通気性を有する2つの円筒管である外筒管(通電性電極)2a及び内筒管(通気性円管)2bが同軸上に二重に設置され、両円筒管間に誘電体とする粒子を充填して粒子充填層2cを形成し、これらによって成る粒子充填層フィルター2が円筒形ケース1内に設置される。粒子充填層フィルター2の両端には絶縁支持部3があり、粒子充填層2cを密閉している。円筒形ケース1の左右両端には排ガス流入口7a及び排ガス流出口7bが設けられ、排ガス流入口7aは粒子充填層フィルター2の中心の空間に通じ、この空間が、排ガス流入口7aから流入した排ガスが粒子充填層フィルター2に進入するための排ガス通過部4を形成する。
【0017】
排ガス中の微粒子は、排ガス通過部4を通過して内筒管2b側の粒子充填層に堆積するため、内筒管2bの外周側に微粒子を焼却する電気ヒーター5が設置されている。また、粒子充填層2c内の粒子は外筒管2aに完全に拘束されないようにするため、粒子充填層2c上部に非粒子空間である粒子充填層空間6を有している。該粒子充填層フィルター2を車輌に搭載する場合、走行時の振動により粒子は揺動し得るものとして、粒子充填層2c内で粒子と微粒子とが固着することを防止できる。
【0018】
排ガスは排ガス流入口7a及び排ガス流出口7b間を矢印(→)の方向に流れる。該排ガス中の微粒子の集塵効率を向上させるために、排ガス中の微粒子を帯電させるために排ガス流入口7aに設置された放電電極8が、該粒子充填層2cに流入する前の排ガス中の微粒子に単極性電荷を付与し、帯電粒子とした後、高電圧発生器10より粒子充填層2cに電圧が供給され静電界が印加される。これにより、粒子充填層2cに流入した該帯電粒子は粒子充填層2c内に効率的に捕集される。
【0019】
粒子充填層2c内、特に内筒管2b側に堆積する微粒子は、電気ヒーター5によって焼却される。電気ヒーター5にはヒーター用電源11よりヒーター電源開閉器9を経由して電気が供給される。電気ヒーター5はほぼ接地電位にあるため、直流高電圧が重畳された放電電極8から単極性イオンを引き出すとともに、外筒管2aの対向電極として機能するため、粒子充填層2cに静電界をかけることができる。
【0020】
排ガス中の微粒子に単極性電荷を与えるために、該高電圧発生器10が絶縁体を介して負極性の直流高電圧を重畳する交流バリヤ放電管を用いる場合、該バリヤ放電管の電極が格子状のものを図4に、またコイル状のものを図5にそれぞれ示す。
【0021】
図4に示す第1の形式では、円筒絶縁管8aの外周部に格子状電極8bを金属蒸着し、円筒絶縁管8aの内面全体に円筒内電極8cを金属蒸着してバリヤ放電管8を形成する。この場合、万一、格子状電極8bの一部が断線しても導通が絶たれることがないため性能の低下が起こらない。
【0022】
また、図5に示す第2の形式では、円筒絶縁管8aの外周部にコイル状電極8dを取り付け、円筒絶縁管8aの内面全体に円筒内電極8cを金属蒸着してバリヤ放電管8を形成する。第1あるいは第2いずれの形式でも、その外周部電極に直流を重畳する交流バリヤ放電によりガス中に高濃度の単極性イオンを放出し、微粒子を帯電粒子として粒子充填層2cに供給する。また重畳する直流を負極性にすることにより、微粒子の燃焼を促進するオゾンを効果的に発生することができる。
【0023】
ディーゼル機関の排ガス中の微粒子除去に本発明による電界印加による粒子充填層フィルター2を適用する場合は、電界印加用の接地電極を電気ヒーター5としてすす焼却用にも併用し、また車輌搭載の場合、走行時の振動により粒子充填層2c内で粒子が揺動することにより、微粒子の固着防止を図ることができる。
【0024】
ボイラー燃焼の排ガス中に含まれる灰分の集塵に電気集塵器を使用する場合、電気集塵器では捕集し難い微粒子を捕集するために、本発明による粒子充填層フィルター2を電気集塵器の後段に設置して使用することができる。その場合は、排ガス中の微粒子は電気集塵器において帯電するため、排ガス流入口7aにおけるバリヤ放電管8を必要としない構成となる。
【0025】
また、ボイラー燃焼排ガスに含まれる不燃性微粒子の捕集に本発明を使用する場合には、電界印加により粒子充填層2c内の粒子が上部から下部へ移動する粒子移動層を形成して、集塵器の外部で分離器により堆積微粒子を除去するものとする。当該方式については、本発明者瀬戸弘の出願による特許第3028466号(平成12年2月4日登録)によるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】微粒子帯電量をパラメータとして粒子充填層の静電界強度と捕集効率の関係を示したグラフである。
【図2】微粒子帯電量をパラメータとして粒子充填層の粒子充填層高と捕集効率の関係を示したグラフである。
【図3】(a)は本発明による粒子充填層集塵装置側断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図4】(a)は本発明による排ガス中の微粒子帯電用放電電極の格子状電極側断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図5】(a)は本発明による排ガス中の微粒子帯電用放電電極のコイル状電極側断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 円筒形ケース
2 粒子充填層フィルター
2a 外筒管(通電性電極)
2b 内筒管(通気性円管)
2c 粒子充填層
3 絶縁支持部
4 排ガス通過部
5 電気ヒーター(接地電極兼用)
6 粒子充填層空間
7a 排ガス流入口
7b 排ガス流出口
8 放電電極
8a 円筒絶縁管
8b 格子状電極
8c 円筒内電極
8d コイル状電極
9 ヒーター電源開閉器
10 高電圧発生器
11 ヒーター用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関あるいは外燃機関の排ガス中の未燃分すす及び灰分等の集塵装置として構成された粒子充填層集塵装置において、粒子充填層フィルターは排ガス流入面及び流出面が通気性を有する多孔板であって、各々の面に静電界を印加して粒子充填層内の粒子間に静電界を与え、さらに排ガス中の微粒子の集塵効果を向上させるために、該粒子充填層フィルター流入前の排ガス中の微粒子に単極性の電荷を与え、集塵された微粒子を焼却するため、粒子充填層内に電気ヒーターを設置し、放電電極で生成されるオゾンにより微粒子の燃焼性を向上させることを特徴とする粒子充填型集塵装置。
【請求項2】
前記粒子充填層内の粒子間に静電界を印加するための排ガス流入側の放電電極を電気ヒーターと併用することを特徴とする請求項1に記載の粒子充填型集塵装置。
【請求項3】
前記微粒子に単極性の電荷を与える方法として、排ガスが該粒子充填層フィルターに流入する前に、負極性の直流高電圧を重畳する交流バリヤ放電管によって該放電電極から高濃度の単極性イオンを効率的に放出させることにより、該排ガス中の微粒子に電荷を与えることを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子充填型集塵装置。
【請求項4】
前記粒子充填層上部に非粒子空間を設け、車輌走行時あるいは外部から振動が与えられる時に、充填した粒子が振動し得るものとして充填層粒子間に捕集された微粒子と粒子の固着を防止することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の粒子充填層集塵装置。
【請求項5】
前記放電電極に替えて、前記粒子充填層の排ガス通過部の排ガス流入口側に電気集塵器が前置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の粒子充填層集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−21380(P2007−21380A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207691(P2005−207691)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(597118061)株式会社 セテック (5)
【Fターム(参考)】