説明

粒子分散物及びそれを用いたインク組成物

【課題】各種粒子を経時的に安定分散しうる分散安定性に優れた粒子分散物、及び、それを適用した、顔料の分散安定性に優れたインク組成物、なかでも、インクジェット記録方式に適用しても、顔料の沈降に起因するノズル詰まりの発生が抑制された吐出性に優れたインクジェット用インク組成物を提供する。
【解決手段】金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解物を用いて得られる縮合物よりなる分散剤で分散された粒子を含む粒子分散物。該分散剤には、粒子のチャージに応じて酸性基或いは塩基性基を有することが好ましい。分散粒子として白色顔料などの顔料を用いることで、顔料の分散安定性に優れたインク組成物を形成しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子分散物及びそれを用いたインク組成物に関するものであり、詳しくは、特定の分散剤を用いた、粒子の分散安定性に優れた粒子分散物、及び、該粒子として顔料を用いた顔料分散物を含むインク組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分散媒中に粒子を安定に分散させるために用いられる高分子分散剤は種々開発されており、これら分散剤は、分散物である粒子に強固に吸着し、その表面を改質することで分散媒中における粒子の沈降や凝集を防止する機能を有している。
しかしながら、分散剤の粒子に対する吸着はイオン性の吸着が主であり、分散物の保存時における環境変化や経時により分散剤の吸着能が低下し、分散性が低下するという問題があった。特に、金属顔料や無機顔料においては、比重が大きいこと、無機粒子に有機材料である高分子分散剤が吸着した状態では十分な相互作用が得られないため、経時により沈降した粒子が凝集してしまい、再分散が困難であるなどの問題があり、経時的な分散安定性、再分散性の維持を達成するのが困難であった。
【0003】
このような粒子分散物の応用例としてインク組成物が挙げられる。インク組成物においては、形成された画像の色相が変化しないという点で、着色材として各種の顔料が汎用されるが、この顔料の均一分散性がインク組成物の性能に大きく影響する。
インク組成物、なかでも、白色インク組成物には、高い隠蔽性と着色力が必須とされている。なぜなら、有色媒体への印刷では、隠蔽性が低いと印刷媒体の色が透け、色再現性が劣る結果となるためである。有色媒体に印刷を行おうとする場合には、まず白色インクが塗布され、その上に他の色彩のインクが塗布される。よって、白色インクの使用量は他色に比べて多く、確実に需要が増加している。白色インクの塗布方法としては、スクリーン印刷がよく用いられているが、平面印刷に限られること、微細な描写が困難であることなどの問題点がある。
【0004】
一方、インクジェット用インクは、従来の印刷方式に比べて簡便かつコンパクトであること、また非接触型印刷であることから、立体的な媒体への印刷が可能となり、更に利用が拡大している。
インクジェット方式による白色インクの付与により、従来のスクリーン印刷による問題点は解決され、立体媒体への印刷や微細な描写が可能となった。
しかしながら、インクジェット方式による印刷では、インク吐出性を確保するためインク粘度が低いこと必要であり、隠蔽性に優れた白色顔料の分散安定性が十分ではないと顔料の沈降が生じて、インクジェットノズルに詰まりが発生し、印刷画像に欠陥が生じたり、著しい場合には、インク吐出ができず、印刷されない事態となる。
【0005】
このため、白色顔料として有用であるが比重が大きいため沈降しやすい酸化チタン白色顔料の分散安定性を向上させる目的で新規な分散剤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、低粘度のインク組成物に適用するにはその分散性が十分とはいえなかった。
このため、酸化チタン顔料にシリカとアルミナを特定比率で使用して表面処理し、酸性基を有する高分子分散剤と組み合わせて分散安定化を図る技術も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この方法は、特定の表面性状を有する酸化チタン顔料のみに有効であり、広範な顔料に適用される分散技術とはいえない。また、顔料をカップリング剤で直接共有結合させ、顔料分散性をあげる技術も提案されている。しかし、表面処理の手間や、分散剤の併用が必要で、汎用性の点でまだ充分とは言えない。このため、低粘度の組成物であって、様々な顔料の分散安定性を達成しうる分散技術、また。それを応用した顔料の分散安定性に優れたインク組成物が待ち望まれているのが現状である。
【特許文献1】特開2002−347336公報
【特許文献2】特開2004−59857公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、各種粒子を経時的に安定分散しうる分散安定性に優れた粒子分散物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、そのような粒子分散物を適用した、顔料の分散安定性に優れたインク組成物、なかでも、インクジェット記録方式に適用しても、顔料の沈降に起因するノズル詰まりの発生が抑制された吐出性に優れたインクジェット用インク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、金属アルコキシドを応用した分散剤が顔料に対する吸着安定性に優れ、各種粒子、なかでも、無機顔料粒子の分散安定性を向上し、沈降を抑制しうること、さらには、分散剤の末端に酸性基を導入し、粒子への分散剤の吸着効率を高めることで分散安定性のさらなる向上を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
<1> 金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解物を用いて得られる縮合物よりなる分散剤で分散された粒子を含む粒子分散物。
<2> さらに、酸性化合物及び塩基性化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含有する<1>に記載の粒子分散物。
<3> 金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解物を用いて得られる縮合物よりなる分散剤で分散された顔料を含有するインク組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各種粒子に吸着して高い相互作用を与えることで、経時的に安定分散しうる分散安定性に優れた粒子分散物を提供することができる。また、前記本発明の粒子分散物を適用することで、顔料の分散安定性に優れたインク組成物、なかでも、インクジェット記録方式に適用しても、顔料の沈降に起因するノズル詰まりの発生が抑制された吐出性に優れたインクジェット用インク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の詳細について説明する。
本発明の粒子分散物は、金属アルコキシド化合物および/またはその部分加水分解物を用いて得られる縮合物よりなる分散剤で分散された粒子を含むことを特徴とする。
まず、本発明の特徴的な成分である分散剤について説明する。
〔金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解物を用いて得られる縮合物よりなる分散剤〕
粒子の長期にわたる分散安定性を維持するためには、粒子に効率よく吸着するととともに、吸着力が強く、安定して高い相互作用を与える分散剤が好ましい。粒子に対する吸着性に劣る分散剤は、吸着効率が悪く、吸着力も弱くなり、経時的に分散性が低下したり、或いは、安定な吸着を確保するために必要な分散剤の量が多くなり、系の高粘度化などの弊害をもたらすため好ましくない。
【0011】
本発明においては、金属アルコキシド化合物、金属アルコキシド化合物の部分加水分解物から選択される化合物を用いて得られる縮合物を分散剤として用いることを特徴とする。以下、このような分散剤を適宜、特定分散剤と称する。
本発明の特定分散剤は、具体的には、以下に詳述する高分子構造を有する高分子分散剤の分子内、好ましくは該高分子構造の片末端に金属アルコキシド基を導入することで得ることができる。
【0012】
本発明における特定分散剤において、重合体を構成する構造単位はとしては、ウレタン結合を有する構造単位、ビニル結合を有する構造単位、エステル結合を有する構造単位などから選ばれる構造単位を含む共重合体が挙げられる。
このような共重合体(高分子化合物)に粒子との吸着基を導入するのに用いられる金属アルコキシド化合物としては、以下に示すような化合物が挙げられる。下記構造式中、Rは、炭素原子数17以上のアルキル基を表す。
【0013】
【化1】

【0014】
また、吸着基を導入するのに用いられる金属アルコキシド化合物或いは金属アルコキシド化合物の部分加水分解物を用いて得られる縮合物としては、以下の如き化合物が挙げられる。下記構造式中、Rは、炭素原子数17以上のアルキル基を表し、nは1〜10の範囲である。
【0015】
【化2】

【0016】
このような吸着部位が導入される高分子化合物としては、以下に挙げる如きポリマー、オリゴマーが挙げられる。下記式中、Yは、前記した吸着部位が結合する結合位置を示すものである。
【0017】
【化3】

【0018】
前記式中、(1)及び(2)で示される化合物はオリゴマーである。(3)及び(4)で示される化合物は、重量平均分子量が500〜50,000程度の高分子化合物であり、nは、記載された構造単位の重合数を示し、これらは上記分子量に応じて選択される。
(5)乃至(9)で示される化合物は、記載された構造単位を併記された重量比で含む共重合体であり、その重量平均分子量は1000〜50,000程度である。このように、吸着部位は末端のみならず、側鎖に存在してもよい。
(10)で示される化合物中、mは記載された構造単位の重合数を示し、13〜15の範囲である。
このように、本発明の高分子分散剤は、(1)乃至(10)におけるYの位置に、先に記載した吸着性基が導入された構造を有するものである。
【0019】
分散剤を構成する高分子構造中には、エチレンオキシド構造単位、プロピレンオキシド構造単位の如きアルキレンオキシド構造を含むことが、分散媒との親和性を調製し、分散安定性の向上をはかれるという観点からより好ましい。アルキレンオキシド基の好ましい導入量は、特定分散剤一分子中に5〜2000個程度であることが好ましく、10〜1500個の範囲であることがより好ましい。
【0020】
本発明に係る特定分散剤は、金属アルコキシド化合物および/または金属アルコキシド化合物の部分加水分解物を用いて得られる縮合物よりなるものであるが、ここで、原料として用いられる金属アルコキシド化合物としては、Si、Ti、Al、Zrなどから選ばれる元素のアルコキシド化合物が挙げられ、これを高分子分散剤の分子内に導入するためには、例えば、シリコン、チタネート、アルミニウム、ジルコニウムなどから選択される元素の市販のカップリング剤を適宜選択して用いることができる。
【0021】
金属アルコキシド化合物として、例えば、テトラi-プロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラオクトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン、テトラステアロキシチタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジヒドロキシ・ビス(ラクタト)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクレングリコレート、チタニウムステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、チタニウムラクテート、などのチタンアルコキシ化合物や、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ―クロロプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ジルコニウムラクテート、ステアリン酸ジルコニウムブチレートなどのジルコニウム系化合物などが使用可能である。
これらを用いることで、金属アルコキシド基を分子内に有する分散剤が得られる。この分散剤は粒子への吸着性に優れ、後述するように分散しうる粒子の種類には特に制限はないが、なかでも、金属系粒子への吸着性が高いことが特徴である。
【0022】
金属アルコキシド化合物は、自己縮合可能であり、自己縮合により、顔料吸着基(具体的には金属アルコキシ基)を分散剤分子内で顔料表面に密集させることができる。
一般に、金属アルコキシ基は高分子化合物の主鎖末端或いは高分子主鎖内に数個存在するものであるが、本発明の高分子分散剤においては、先に例示した化合物における如き、顔料吸着基を側鎖に有する構造単位と、それを有しない共重合成分(他の構造単位)とのブロック構造を有する分散剤をつくることも可能となり、得られた分散剤は分子内に多くの粒子との吸着部位を有するため、強固で安定した吸着が可能となる。ここで導入される吸着基は同一のものであっても、例えば、複数の異なるものであってもよく、目的に応じて、任意の種類、数の吸着基を高分子分散剤に導入することができる。
特定分散剤の形成に用いる金属アルコキシド化合物の種類は、金属系粒子との関連において選択されることが効果の観点から好ましく、そのような観点からは、例えば、酸化チタンを含む粒子の分散に用いる分散剤としては、チタンカップリング剤を用いて得られた、分子内にチタンアルコキシド基を有する分散剤が好適である。
【0023】
(分散剤の製造方法)
このような分散剤は、例えば、エチレングリコールなどの水酸基を有する化合物にチタンカップリング剤を加えて反応させ、得られた中間体や縮合物に、イソシアネート系化合物とポリカプロラクタムジオールとを反応させて得られた末端NCOウレタンを、加圧下で反応させてウレタン化を行うことで得ることができる。
【0024】
本発明に係る分散剤は、金属アルコキシド基に加え、その近傍に酸基または塩基性基を有する態様が好ましい。この酸性基或いは塩基性基によって粒子へのさらなる高効率吸着が可能となる。即ち、粒子の表面がプラスのチャージを有する場合には、酸性基を導入することで金属アルコキシド基に起因する相互作用に加えてイオン的な相互作用の形成により一層の吸着安定性を図ることができ、粒子表面がマイナスのチャージを有する場合には、塩基性基を導入することで吸着安定性を向上させることができる。
【0025】
分散剤に導入可能な酸性基としては、リン酸、スルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸などに由来する酸性基が挙げられ、なかでも酸性度の高い、リン酸基、スルホン酸基などの酸基が優れた効果を発揮する。これら酸基は1種のみを導入してもよく、2種以上、例えば、スルホン酸とホスホン酸などを導入することもできる。
酸性基の導入量としては、例えば、リン酸基を例とした場合、金属アルコキシド基に対するリン酸基の量は、20:0〜1:20(個数)の範囲のいずれの値もとりうるが、金属アルコキシド基1に対してリン酸基が5以下であることが好ましく、さらには、両者の比が、1:1〜1:2の範囲であることが好ましい。スルホン酸基などの他の酸基の場合も、導入量が同様の範囲であることが好ましい。
【0026】
このように分散剤中に、金属アルコキシド基と酸性基が存在すると、粒子への多点吸着できるため、両方存在することが好ましく、より双方が近傍に存在することがよりよい。金属アルコキシド基に対して酸性基がある程度多い場合でも問題はないが、酸性基が多くなりすぎると分散媒への相互作用力が小さくなり、分散剤としての機能が低下することから、上限は金属アルコキシド基に対して20倍量を限度とすることが好ましいものと考えている。
【0027】
塩基性基としては、一般の塩基性基、例えば、1級乃至4級アミン類、ピリジンなどを使用することが可能である。また、金属アルコキシド基に対する、塩基性基の量は、前記リン酸基の場合と同様で、20:0〜1:20(個数)の範囲のいずれの値もとりうるが、金属アルコキシド基1に対して1乃至2がもっとも好ましく、金属アルコキシドと塩基性基とがより近傍に存在することが好ましい。
【0028】
酸性基や塩基性基を分散剤中に導入する方法としては、分散剤の原料となる金属アルコキシド材料中に当初から酸性基や塩基性基を有するものを用いる方法が挙げられ、この方法としては、例えば、リン酸基をその構造中に有するチタンカップリング剤であるプレンアクトKR238S(商品名:味の素ファインテクノ社製)、アミンをその構造中に有するチタンカップリング剤であるプレンアクトKR44(商品名:味の素ファインテクノ社製)などを使用する方法、また、金属アルコキシド基を有する分散剤を含有する粒子分散物中に酸性化合物、塩基性化合物を添加、共存させる方法などが挙げられ、いずれの方法を適用してもかまわない。
金属アルコキシド化合物とポリリン酸の縮合物を分散剤中に含有するとよりよい効果を発揮する。
【0029】
後者の方法で使用される酸性化合物、塩基性化合物としては、分散物の分散媒に溶解或いは均一分散するものを選択することが好ましい。使用する前記化合物の分散媒に対する溶解性や分散性に乏しい場合には、顔料への吸着が不十分となり、目的とする分散安定性が得られない場合がある。このような化合物が完全に溶解しない場合においても、90度散乱光度法で測定した場合、これら化合物を分散媒に2質量%溶解、分散させた時の透過光T%が、20%以上であれば良好であると判断することができる。
本発明に用いうる酸性化合物としては、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、スルファミン酸、カルボン酸、ホウ酸または、それら酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられ、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸が好ましく、塩基性化合物としては、1級、2級、または3級アミノ基、ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素へテロ環等を持つ化合物が挙げられる。
また、顔料誘導体型化合物に上記酸基、塩基性基を組み込んだシナジスト系分散剤も併用できる。
酸性化合物及び/又は塩基性化合物の添加量は、分散物全固形分中、0.1〜50質量%の範囲が好ましく、0.5〜25質量%の範囲であることが好ましい。
【0030】
このようにして得られた金属アルコキシド基を有する分散剤の具体例としては、先に例示した(1)乃至(10)で表される化合物のYの部位に、例示したアルコキシド化合物或いは、該アルコキシド化合物を用いて得られた縮合物が導入されてなる化合物が好ましく挙げられる。
高分子分散剤は目的に応じて2種以上を併用することもできる。
この高分子分散剤の重量平均分子量(Mw)は、300〜2,000,000の範囲であることが好ましく、1,000〜100,000の範囲であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明の分散物の調製に用いられる分散剤は、分散媒に溶解或いは均一分散するものを選択することが好ましい。使用する高分子分散剤の分散媒に対する溶解性や分散性に乏しい場合には、顔料への吸着が不十分となり、目的とする分散安定性が得られない場合がある。このような化合物が完全に溶解しない場合においても、90度散乱光度法で測定した場合、これら化合物を分散媒に2質量%溶解、分散させた時の透過光T%が、20%以上であれば良好であると判断することができる。
本発明において粒子分散物に使用する前記特定分散剤の添加量は、粒子の総量に対して1〜10質量%の範囲が好ましく、特に1〜4質量%の範囲が好ましい。この添加量の範囲において、粒子への十分な吸着性、その安定性が達成され、粒子の安定な分散性を達成した分散物が得られる。
【0032】
(粒子)
本発明の分散物における粒子には特に制限はなく、金属粒子、金属酸化物粒子、セラミック系粒子、無機顔料などの無機物粒子、高分子樹脂粒子、有機顔料などの有機物粒子のいずれにも使用することができるが、金属アルコキシド基との相互作用形成性の観点からは、金属粒子が好適であり、なかでも、分散剤の調整に使用される金属アルコキシドにおける金属と同種の金属を含む金属系粒子が好適であり、例えば、チタンアルコキシド基を有する分散剤と酸化チタン粒子、アルミニウムアルコキシド基を有する分散剤と酸化アルミニウム粒子、シランアルコキシド基を有する分散剤とシリカ粒子などの組合せが好ましいものとして挙げられる。
【0033】
(分散媒)
本発明の粒子分散物に用いられる分散媒には特に制限はなく、分散物の使用目的に応じて適宜選択されるが、環境の観点からは、特段の溶剤を添加することなく、重合性化合物自体を分散媒として使用することが好ましい。
分散媒の添加量は、分散物全固形分中、50〜99質量%の範囲が好ましく、60〜97質量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
(その他の化合物)
本発明の粒子分散物には、分散安定性向上、その他の目的で公知の添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、表面張力調整剤、粘度調整剤などが挙げられ、これらの化合物は分散物全固形分中、0.005〜5質量%の範囲で含有することができる。
(粒子分散物の調製)
本発明の粒子分散物は、以下のようにして調整することができる。
例えば、まず、顔料などの粒子と本発明の高分子分散剤を少量の分散媒を用いて混錬し、安定な1次粒子に粉砕する。その後、少しずつ分散媒を添加し、凝集を抑えつつ塗工、或いは、吐出適性など、分散物の使用適性を考慮した希釈を行う方法が挙げられる。また、分散媒に高分子分散剤を溶解、分散させておいてから、粒子を添加する方法をとることもできる。
【0035】
〔インク組成物〕
本発明の粒子分散物は、粒子の分散安定性に優れるので、種々の分野に応用することができるが、なかでも、酸化チタン粒子などの金属系粒子を安定に分散することを要するインク組成物、なかでも、白色インク組成物に適用することでその効果が著しいといえる。
本発明のインク組成物は、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解物を用いて得られる縮合物よりなる分散剤で分散された顔料を含有することを特徴とする。ここで用いる分散剤は、先に粒子分散物において説明した金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解物を用いて得られる縮合物よりなる分散剤と同様のものを用いればよい。
【0036】
本発明のインク組成物は、前記特定分散剤により分散された着色材である顔料を含むことを特徴とするものであり、紫外線硬化型インクジェット記録用として好適に使用しうる。本発明のインク組成物には、さらに、紫外線硬化性を発現させるため、硬化性化合物と重合開始剤とを含有する。
【0037】
ここで、前記分散剤は、分散媒である硬化性化合物に溶解するものを選択することが好ましい。使用する高分子分散剤の硬化性化合物に対する溶解性が低い場合や不溶の場合には、顔料への吸着が不十分となり、目的とする分散安定性が得られない場合がある。
【0038】
本発明のインク組成物において使用する前記特定分散剤の添加量は、顔料の総量に対して1〜10質量%の範囲が好ましく、特に1〜4%質量%の範囲が好ましい。この添加量の範囲において、顔料への十分な吸着性が達成され、且つ、インク組成物の高粘度化や高分子分散剤に起因する界面活性剤作用によりインク組成物の表面張力が低下し、インクジェットによる吐出性を低下させる懸念がない。
【0039】
以下、本発明のインク組成物に用いられる特定分散剤以外の各成分について説明する。
〔顔料〕
本発明に好ましく使用される顔料について述べる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての無機顔料、有機顔料、中空粒子などを用いることができる。さらに、顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂を共有結合させたもの等を用いることもできる。
【0040】
本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤或いはマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36、
青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60、緑顔料としては、Pigment Green 7、26、36、50、
黄顔料としては、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94、95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、
黒顔料としては、Pigment Black 7、28、26、
白色顔料としては、PigmentWhite 6、18、21
などが目的に応じて使用できる。
【0041】
上記の中でも、隠蔽性に優れた画像を形成しうる白色顔料は、分散安定性を得ることが困難であるため、本発明のインク組成物は、このような白色顔料を用いた場合に特に優れた効果が得られる。以下、本発明で最も好ましく用いられる白色顔料について説明する。
無機白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)、などが利用可能である。
これらのうち、酸化チタンは他の無機白色顔料と比べると比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、さらに、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンが好ましい。
【0042】
酸化チタンは、一般に未処理で使用されることは少なく、シリカ、アルミナ、亜鉛、ジルコニア、有機物による処理が行われ、処理方法によって耐候性や親油水性が異なるため、目的に応じて処理方法を選択すればよい。
本発明の如きインク組成物に用いる場合には、アルミナ、シリカ、亜鉛、ジルコニア、塩基性有機物により処理された酸化チタンが好ましい。これらの材料により処理が行われた酸化チタンに関しては、アルミナ、亜鉛、ジルコニア、塩基性有機物による処理量、すなわち、酸化チタン表面へのこれらの化合物の付着量が表面付着物全重量に対して50質量%以上であることが好ましい。
無機白色顔料は酸化チタンに限定されず、目的に応じて他の白色顔料、即ち、上に列挙した白色顔料、或いは、それ以外の公知の無機白色顔料を適宜使用してもよい。
なお、前記分散剤において、チタンアルコキシド基を有する分散剤がこの酸化チタン粒子との親和性に優れるため、この組合せにおいて優れた分散安定性が達成される。
【0043】
有機白色顔料は、無機白色顔料に比べて比重が小さいため、粘度の低い分散物中で安定に存在することができる。有機白色顔料としては、高度に架橋したメラミン系、アクリル系などの樹脂材料から成る樹脂粒子や、米国特許第5,514,213号明細書に記載の分子量500程度の低分子樹脂粒子などが挙げられる。
有機白色顔料は市販品としても入手可能であり、具体例には、例えば、ハッコーケミカル社製シゲノックスシリーズなどが利用可能である。
【0044】
中空粒子は、粒子内の空隙部の光散乱により高い隠蔽性を発揮するとともに、無機白色顔料に比べて比重が小さく、粘度の低い分散物中で安定に存在することができる。無機、有機、無機有機混合中空粒子の利用が可能である。
中空粒子の具体例としては、日産化学工業社製 オプトビーズシリーズ、JSR社製SXシリーズ、松本油脂製薬製マイクロスフェアーMFLシリーズなどが利用可能である。
【0045】
これらの白色顔料を用いてインク組成物を調整する際の顔料の分散には、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の公知の分散装置をいずれも用いることができる。
【0046】
インク組成物において顔料などの諸成分を含む分散媒としては、特段の溶剤を添加することなく、以下に詳述する低分子量成分であるカチオン重合性化合物などの硬化性化合物を分散媒として調製することが可能であるが、目的に応じてさらに適切な溶剤を加えてもよい。
本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、紫外線を照射してインク組成物を硬化させて画像形成するため、硬化性の観点から溶剤を添加しないことが好ましい。具体的には、インクの調製に溶剤を用いる場合、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、形成された画像の耐溶剤性が劣化することが懸念され、さらに、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。
本発明のインク組成物における分散媒としては、硬化性化合物のみを用い、なかでも、粘度が低い硬化性化合物を選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0047】
顔料粒子の平均粒径は、0.05〜1.0μmであることが好ましく、最大粒径は5μm以下、好ましくは1μm以下となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
なお、ここで顔料の平均粒径、及び最大粒径は、光散乱法により測定した値を採用している。
本発明のインク組成物における顔料の好ましい含有量は、0.1〜50質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜40質量%の範囲である。この含有量において、隠蔽力に優れた画像形成が可能となる。
【0048】
〔硬化性化合物〕
本発明のインク組成物は、硬化性化合物を含有する。硬化性化合物は、共存するラジカル重合開始剤またはカチオン重合開始剤などから発生した開始種により硬化してインク画像を形成する。
本発明において使用される硬化性化合物には特に制限はなく、一般に知られている硬化性基を有する化合物であれば、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、前述の如く、併用する高分子分散剤との関連やインク組成物の粘度を考慮すれば、モノマー或いは比較的低分子量のオリゴマーなどが好ましい。
硬化性化合物は反応速度や、インク物性、硬化膜物性等を調整する目的で1種または複数を混合して用いることができる。
硬化性化合物としては、ラジカル重合性化合物またはカチオン重合性化合物を用いることができる。以下、それぞれの化合物について説明する。
【0049】
(ラジカル重合性化合物)
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。このようなラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。また、単官能化合物よりも官能基を2つ以上持つ多官能化合物の方がより好ましい。更に好ましくは多官能化合物を2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
【0050】
本発明のインク組成物においては、前記ラジカル重合性化合物として、(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。前記(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記の化合物を挙げることができる。
なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの両方の構造をとり得ることを表す。以下同様である。
【0051】
単官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ
)アクリレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2Hパーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、
【0052】
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
四官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
五官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0057】
六官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0058】
本発明においては、上記の重合性化合物として、(a)少なくとも1種の三官能以上の(メタ)アクリレートと、(b)単官能(メタ)アクリレート及び二官能(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種とを含むように構成することが、粘度調整や架橋密度の調整、硬化後の物性制御(強度、接着性など)の点で好ましい。この場合(a):(b)の混合比(モル比)は15:85〜40:60が好ましく、20:80〜50:50がさらに好ましい。
【0059】
また、列挙した前記化合物以外のラジカル重合性化合物の例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等が挙げられる。具体的には、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアセトンアクリルアミド等のアクリル酸誘導体、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、更に具体的には、「架橋剤ハンドブック」(山下晋三編、1981年大成社)、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(加藤清視編、高分子刊行会(1985年))、「UV・EB硬化技術の応用と市場」(ラドテック研究会編、79頁(1989年)、シーエムシー)、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(滝山栄一郎著、日刊工業新聞社(1988年))等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を用いる場合のインク組成物中の含有量は、インク組成物の総量に対して5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%が更に好ましく、50〜90質量%が特に好ましい。
【0060】
(カチオン重合性化合物)
カチオン重合性化合物は、重合性の程度やインク組成物の物性等を調整する目的で任意に選択可能である。中でも、重合速度や汎用性の観点から、オキシラン化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル類、またはスチレン類などが好ましい。これらは単独で用いることもでき、2種以上併用してもよい。以下にそれらの例を示す。
【0061】
[オキシラン化合物]
オキシラン化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシドなどが挙げられる。芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0062】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
これらのオキシラン化合物のなかでも、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
またオキシラン化合物のうち官能基数が少ないものは、上述したように溶解性及び粘度の調整作用も同時に兼ね備えることができるため、好ましい。
【0063】
本発明で用いられる単官能エポキシドの例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0064】
多官能エポキシドの例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0065】
[オキセタン化合物]
本発明におけるオキセタン化合物としては、オキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526、同2001−310937、同2003−341217の各公報に記載されるような、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明のインク組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましく、上述したように、なかでもインク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0066】
本発明で用いられるオキセタン化合物には、単官能オキセタンの例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0067】
また多官能オキセタンとしては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
【0068】
[ビニルエーテル類]
単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0069】
多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0070】
[スチレン類]
具体的な例として、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0071】
本発明においては、硬化性化合物として、カチオン重合性化合物であるオキシラン化合物及びオキセタン化合物から選択される少なくとも1種とを含むように構成することが、硬化速度の点で好ましい。この場合オキシラン化合物:オキセタン化合物の混合比(モル比)は90:10〜10:90が好ましく、70:30〜30:70がさらに好ましい。また。オキセタン化合物とスチレン類を90:10〜50:50の混合比で用いることも好ましい。
硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を用いる場合のインク組成物中の含量は、インク組成物の総量に対して5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%がさらに好ましく、50〜90質量%が特に好ましい。
【0072】
〔開始剤〕
本発明のインク組成物には、紫外線露光により開始種を発生し、硬化性化合物を硬化させることができる公知の開始剤を含有する。開始剤としては、ラジカル重合開始剤またはカチオン重合開始剤を用いることができ、用いられる硬化性化合物、即ち、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物に適合するものを選択し、組み合わせて用いる。
【0073】
(ラジカル重合開始剤)
本発明で使用され得る好ましいラジカル重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
本発明におけるラジカル重合開始剤は単独で用いてもよいし、併用してもよい。
本発明におけるラジカル重合開始剤は、ラジカル重合性化合物の総量に対して、好ましくは0.01〜35質量%、より好ましくは、0.1〜30質量%、更に好ましくは0.5〜30質量%の範囲で含有されるのが適当である。
【0074】
(カチオン重合開始剤)
硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を用いる場合、本発明のインク組成物には、酸発生剤を含有することが好ましい。この酸発生剤(以下、「カチオン重合開始剤」ともいう)とは、活性光線又は活性放射線の照射により酸を発生してカチオン重合を開始する化合物をいい、公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0075】
本発明におけるカチオン重合開始剤としては、たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0076】
また、これらのカチオン重合開始剤又は、それと同等の作用を有する基若しくは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0077】
カチオン重合開始剤は、前記化合物を1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。カチオン重合開始剤のインク組成物中の含量は0.1〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜10質量%の範囲であることがより好ましい。カチオン重合開始剤の含有量が上記範囲において、優れた硬化性が得られ、且つ、得られた硬化インク画像の脆化や残存開始剤による酸の発生などの問題が生じない。
【0078】
[その他の成分]
本発明のインク組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の各必須成分に加え、必要に応じて種々の添加剤を併用することができる。これらの添加剤について述べる。
【0079】
〔増感色素〕
本発明のインク組成物には、重合開始剤の活性光線照射による分解を促進させるために増感色素を添加することができる。増感色素は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感色素は、重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用を生じ、これにより重合開始剤の化学変化、即ち、分解、ラジカル、酸或いは塩基の生成を促進させるものである。
【0080】
増感色素は、インク組成物に使用される重合開始剤に開始種を発生させる活性放射線の波長に応じた化合物を使用すればよいが、一般的なインク組成物の硬化反応に使用されることを考慮すれば、好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ、350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、チオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)等が挙げられ、多核芳香族類およびチオキサントン類が好ましい類として挙げられる。
【0081】
より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(V)〜(IX)で表される化合物が挙げられる。
【0082】
【化4】

【0083】
一般式(V)中、A1は硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【0084】
【化5】

【0085】
一般式(VI)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは式(V)に示したものと同義である。
【0086】
【化6】

【0087】
一般式(VII)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0088】
【化7】

【0089】
一般式(VIII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−又は−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
【0090】
【化8】

【0091】
一般式(IX)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子又は=NR67を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
式(V)〜(IX)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0092】
【化9】

【0093】
【化10】

【0094】
〔共増感剤〕
本発明のインク組成物は、共増感剤を含有することもできる。本発明において共増感剤は、増感色素の活性放射線に対する感度を一層向上させる、或いは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
この様な共増感剤の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0095】
共増感剤の別の例としてはチオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0096】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0097】
[重合禁止剤]
本発明においては、カチオン重合開始剤による重合を効果的に進行させるために、カチオン性重合以外の重合の進行を禁止する重合禁止剤を併用することが好ましい。
適当な重合禁止剤としてはフェノール系水酸基含有化合物およびキノン類、N−オキシド化合物類、ピペリジン 1−オキシル フリーラジカル化合物類、ピロリジン 1−オキシル フリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、及びカチオン染料類からなる群より選択される化合物である。好ましい重合禁止剤としてはハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、レゾルシノール、カテコール、t−ブチルカテコール、ハイドロキノン、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール) 、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよびその誘導体、ジ−t−ブチルニトロキシド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシドおよびその誘導体等、ピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−マレイミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−ホスホノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン 1−オキシル フリーラジカル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、クリスタルバイオレット、メチルバイオレット、エチルバイオレット及びビクトリアピュアブルーBOH等が挙げられる。重合禁止剤の添加量は、インク組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
【0098】
〔紫外線吸収剤〕
得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成分の0.01〜10質量%程度である。
【0099】
〔酸化防止剤〕
インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の0.001〜1質量%程度である。
【0100】
〔溶剤〕
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0101】
〔高分子化合物〕
インク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、スチレン系重合体、アクリル系重合体、環状エーテル重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、スチレン系モノマー、アクリル系のモノマー、環状エーテルの共重合が好ましい。さらに、高分子結合材の共重合組成として、「環状エーテル基含有モノマー」、「ビニルエーテル基含有モノマー」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の0.01〜10.0質量%程度である。
【0102】
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の0.001〜5.0質量%程度である。
【0103】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0104】
〔インク組成物の好ましい物性〕
本発明のインク組成物は、射出性を考慮し、射出時の温度において、インク粘度が50mPa・s以下であることが好ましく、更に好ましくは30mPa・s以下であり、上記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。なお、25℃でのインク粘度は、10〜300mPa・s、好ましくは10〜100mPa・sである。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となり、更にインク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善される。25℃におけるインク粘度が10mPa・s未満では、滲み防止効果が小さく、逆に500mPa・sより大きいと、インク液のデリバリーに問題が生じる場合がある。
【0105】
本発明のインク組成物の表面張力は、好ましくは20〜30mN/m、更に好ましくは23〜28mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では30mN/m以下が好ましい。
【0106】
〔インクジェット記録方法〕
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用のインクとして好適に用いることができる。インクジェット記録方式には特に制限はなく、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出する電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出する音響型インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、発生した圧力を利用するサーマル型インクジェット方式、等のいずれであってもよい。なお、前記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式、が含まれる。
前記のうち、ピエゾ素子を用いたドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)のインクジェット記録用インクとして好適である。
【0107】
吐出された本発明のインク組成物に活性放射線を照射して、インク組成物を硬化して、画像を形成する。この工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカル、酸、塩基などの開始種を発生し、その開始種の機能により重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0108】
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることが更に好ましい。
【0109】
また、本発明のインク組成物の、重合開始系は、低出力の活性放射線であっても十分な感度を有するものである。従って、活性放射線の出力は、2,000mJ/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは、10〜2,000mJ/cm2であり、更に好ましくは、20〜1,000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50〜800mJ/cm2である。
更に、活性放射線は、露光面照度が、例えば、10〜2,000mW/cm2、好ましくは、20〜1,000mW/cm2で照射されることが適当である。
【0110】
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、LED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、特に好ましくは50〜800mW/cm2である。
【0111】
本発明のインク組成物は、このような活性放射線に、例えば、0.01〜120秒、好ましくは、0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(例えば、0.01〜0.5秒、好ましくは、0.01〜0.3秒、より好ましくは、0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。WO99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
このようにして、本発明インク組成物は、活性放射線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0112】
(被記録媒体)
本発明のインク組成物またはインクジェット記録用インクが吐出される被記録媒体としては、特に限定されず、寸度的に安定な支持体であれば、目的に応じていずれも使用することができる。また、必ずしも平面状のものではなく、局面を有する媒体にも記録可能である。
被記録媒体に用いる材料としては、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[合成例1:分散剤1の合成]
精製を行ったエチレングリコール0.8gを、窒素雰囲気下、脱水したキシレン50mlに溶解させた後、分子内に塩基性基を有するチタンカップリング剤(プレンアクトKR44:商品名、味の素ファインテクノ社製) 4.0g(固形分)を加え、110℃の温度条件にて2時間かけて反応させ、減圧下、溶剤留去し液状物質A 4.8gを得た。
次に、精製したアセトン50gに前記で得た液状物質A 2.5gと、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリカプロラクトンジオール(プラクセルL205AL:商品名、ダイセル化学工業社製)を反応させた末端NCOウレタン(Mw=4500)17.9gとを溶解させ、加圧反応装置中で、90℃、2時間反応させてウレタン化を行い、減圧下溶剤を留去して分子内にチタンアルコキシド基を有する分散剤1を得た。
【0114】
[合成例2:分散剤2の合成]
減圧脱水を行ったポリカプロラクトンジオール(プラクセルL205AL)25gを、窒素雰囲気下、精製したキシレン100mlに溶解させた後、分子内にリン酸基を有するチタンカップリング剤(プレンアクトKR38S:商品名、味の素ファインテクノ社製) 20g(固形分)(味の素ファインテクノ社製)を加え、110℃の温度条件にて2時間かけて反応させ、減圧下、溶剤留去し液状物質B 43gを得た。
次に、精製したアセトン100gに前記で得た液状物質B 25gと、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリカプロラクトンジオール(プラクセルL205AL)を反応させた末端NCOウレタン(Mw=4500)54gとを溶解させ、加圧反応装置中で90℃、2時間反応させてウレタン化を行い、減圧下溶剤を留去して分子内にリン酸基とチタンアルコキシド基とを有する分散剤2を得た。
【0115】
[合成例3:分散剤3の合成]
減圧脱水を行ったポリカプロラクトンジオール(プラクセルL205AL)25gを、窒素雰囲気下、精製したキシレン100mlに溶解させた後、分子内にリン酸基を有するチタンカップリング剤(プレンアクトKR38S) 20g(固形分)を加え、110℃の温度条件にて2時間かけて、反応させ、減圧下、溶剤留去し液状物質C 43gを得た。
次に、精製したアセトン100gに前記で得た液状物質C 25gと、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリプロピレングリコール(Mw=200)を反応させた末端NCOウレタン(Mw=5500)66gを溶解させ、加圧反応装置中で90℃2時間反応させてウレタン化を行い、減圧下溶剤を留去して分子内にリン酸基とチタンアルコキシド基とエチレンオキシド構造単位とプロピレンオキシド構造単位とを有する分散剤3を得た。
【0116】
[合成例4:分散剤4の合成]
加圧反応装置に、脱水を行った エチレングリコール 8gを、窒素雰囲気下、精製したキシレン50mlに溶解させた後、分子内に塩基性基を有するチタンカップリング剤(プレンアクトKR44) 40g(固形分)を加え、110℃の温度を維持するように2時間加熱して、反応させ、減圧下、溶剤留去し液状物質D 48gを得た。
次に、前記で得た液状物質D 25gと、アジピン酸とポリカプロラクトンジオール(プラクセルL205AL)を反応させた末端COOHポリエステル(Mw=5000)198gとを、減圧下縮合反応を行い、分子内に塩基性基とチタンアルコキシド基とを有する分散剤4を得た。
【0117】
[合成例5:分散剤5の合成]
加圧反応装置に、脱水を行った エチレングリコール 8gを、窒素雰囲気下、精製したキシレン50mlに溶解させた後、分子内に塩基性基を有するチタンカップリング剤(プレンアクトKR44) 2.0g(固形分)を加え、110℃の温度を維持するように2時間加熱して、反応させ、減圧下、溶剤留去し液状物質E 4.3gを得た。
次に、前記で得た液状物質E 25gと、アジピン酸とポリエチレングリコール(Mw=200)を反応させた末端COOHポリエステル(Mw=4500)178gとを、減圧下縮合反応を行い、分子内に塩基性基とチタンアルコキシド基とエチレンオキシド構造単位とプロピレンオキシド構造単位とを有する分散剤5を得た。
【0118】
[合成例6:比較分散剤1の合成]
ヘキサメチレンジイソシアネートとポリカプロラクトンジオール(プラクセルL205AL)を反応させた末端NCOウレタン(Mw=4500)とメタノールとを、80℃で
3時間反応させ、比較分散剤1を得た。
[合成例7:比較分散剤2の合成]
ヘキサメチレンジイソシアネートとポリカプロラクトンジオール(プラクセルL205AL)を反応させた末端NCOウレタン(Mw=4500)と3−ヒドロキシブタン酸とを、80℃で3時間反応させ、分子内に酸基を有する比較分散剤2を得た。
[合成例8:比較分散剤3の合成]塩基含有
ヘキサメチレンジイソシアネートとポリカプロラクトンジオール(プラクセルL205AL)とを反応させた末端NCOウレタン(Mw=4500)とエチレンジアミンとを、
50℃で1時間反応させ、分子内に塩基性基を有する比較分散剤3を得た。
[合成例9:表面処理顔料Aの合成]
脱水精製したTHF 100mlにプレンアクトKR9SA 0.3gを添加し、顔料(アルミナ処理酸化チタン、平均粒径:0.20μm 透過型電子顕微鏡、粒子表面アルミナ処理率60%)10gを添加し、30分攪拌を行った。その後、溶媒を留去し、100℃で2時間減圧乾燥を行い、表面処理顔料Aを得た。
【0119】
(実施例1〜3、比較例1〜3)
[インクの調整1]
下記の配合比で、顔料、開始剤、増感色素、硬化性化合物3種と合成例1〜6で得た分散剤1〜5、比較分散剤1〜3を分散機で分散し、インク組成物を作成した。
(インク処方1)
顔料:アルミナ処理酸化チタン
(透過型電子顕微鏡の画像により測定した平均粒径:0.20μm、
粒子表面アルミナ処理率60%) 15質量%
開始剤:トリフェニルスルフォニウム塩(UVI−6992、ダウケミカル社製)
15質量%
増感色素:9,10−ジブトキシアントラセン 1質量%
重合性化合物:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製)
45質量%
重合性化合物:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−22
1:東亞合成(株)製) 20質量%
分散剤:合成例1〜6で得た分散剤、表1に記載の化合物 2質量%
【0120】
(比較例3)
上記インク処方1の顔料を表面処理顔料Aに変更した以外は、インク処方1に従って比較例3のインクを作製した。
【0121】
【表1】

【0122】
(実施例4〜6、比較例4〜6)
[インクの調整2]
下記の配合比で、顔料、開始剤、増感色素、硬化性化合物3種と合成例1〜6で得た分散剤1〜5、比較分散剤1〜3を分散機で分散し、インク組成物を作成した。
(インク処方2)
顔料:シリカ処理酸化チタン
(透過型電子顕微鏡の画像により測定した平均粒径:0.21μm、
粒子表面シリカ処理率60%) 15質量%
開始剤:トリフェニルスルフォニウム塩(UVI−6992、ダウケミカル社製)
15質量%
増感色素:9,10−ジブトキシアントラセン 1質量%
重合性化合物:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製)
22質量%
重合性化合物:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキセタン(OXT−221:東亞合成社製) 45質量%
分散剤:合成例1〜6で得た分散剤、表2に記載の化合物 2質量%
【0123】
【表2】

【0124】
実施例1〜6、比較例1〜4のインク組成物の粘度、分散性、沈降性、再分散性、隠蔽性、吐出安定性、硬化性、密着性、耐候性評価を下記の方法により評価した。その結果を、前記表1〜表2に併記した。
【0125】
[インク組成物の評価]
1.分散性
光学顕微鏡を用いて、インク組成物の分散性を観察し、下記基準で評価した。
1−1.凝集粒子の有無
光学顕微鏡を用いて粒子の粒径を測定し、1μm以上の粒子が観察された場合、顔料粒子が凝集していると判定した。
○:1μm以上の粒子がない(顔料の凝集が認められない)。
×:1μm以上の粒子がある(凝集が認められる)。
1−2.粒度分布
レーザー光散乱により粒子径、分布測定を行い、下記基準で評価した。平均粒子径が小さいほど、凝集が抑制され、単分散に近い状態であることを示し、そのような粒子の体積頻度が多いほど、均一分散されていると判断するものであり、以下の基準により、評価:A〜Cであれば、インク組成物として実用上問題のないレベルであると判断する。
A:平均粒子径0.5μm以下であり、且つ、平均粒子径の±25%以内に全体積頻度の90%以上が存在する。
B:平均粒子径0.5μm以下であるが、平均粒子径の±25%以内に存在する粒子は全体積頻度の10%未満である。
C:平均粒子径1.0μm以下であり、且つ、平均粒子径の±25%以内に全体積頻度の90%以上が存在する。
D:平均粒子径1.0μm以下であり、平均粒子径の±25%以内に存在する粒子は全体積頻度の10%未満である。
E:平均粒子径1.0μm以上。
【0126】
2.吐出安定性
インク組成物を、インクジェットプリンタ(印字密度300dpi、打滴周波数4kHz、ノズル数64)により、60分連続印字した。吐出状態、形成された画像を観察し、以下の基準により評価した。
A:60分間、問題なく吐出できた。
B:一部にサテライトを生じた。
C:画像にノズル欠が生じた。
D:60分経過する前に、ノズルつまりにより印字不能となった。
【0127】
3.保存安定性
作製したインクを75%RH、60℃で3日保存した後、射出温度でのインク粘度を測定し、インク粘度の増加分を、保存後/保存前の粘度比で表した。粘度が変化せず1.0に近いほうが保存安定性良好であり、1.5を超える、または0.9以下になると射出時に目詰まりを起こす場合があり好ましくないと評価する。
【0128】
表1〜表2に示されるように、インク調製例1及び2のいずれにおいても、特定分散剤を用いた本発明のインク組成物は、分散性、吐出安定性、分散の経時安定性に優れていることがわかる。さらに、本発明のインク組成物により形成された画像は、塗膜の硬化性、基材との密着性及び隠蔽性が良好であった。
このようなインク組成物では、目詰まりが少なく、装置へのインク供給が安定している。これに対して、本発明に係る分散剤を含まない比較例のインク組成物は、インクの分散性、経時安定性に劣り、吐出安定性を満足させることができなかった。
【0129】
(実施例7〜9、比較例7〜9)
[インクの調整3]
下記の配合比で、顔料、ラジカル開始剤、硬化性化合物2種と合成例1〜6で得た分散剤1〜5、比較分散剤1〜3を分散機で分散し、インク組成物を作成した。
(インク処方3)
顔料:アルミナ処理酸化チタン
(透過型電子顕微鏡の画像により測定した平均粒径:0.20μm、
粒子表面アルミナ処理率60%) 15質量%
重合性化合物1:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 50質量%
重合性化合物2:トリエチレングリコールジビニルエーテル 28質量%
重合開始剤:IRGACURE 184(CSC製) 5質量%
分散剤:合成例1〜6で得た分散剤、表1に記載の化合物 2質量%
【0130】
(比較例3)
上記インク処方3の顔料を表面処理顔料Aに変更した以外は、インク処方3に従ってインクを作製した。
【0131】
【表3】

【0132】
(実施例10−12、比較例10−12)
[インクの調整4]
下記の配合比で、顔料、光開始剤、増感色素、光硬化性化合物2種と合成例1〜6で得た分散剤1〜5、比較分散剤1〜3を分散機で分散し、インク組成物を作成した。
(インク処方1)
顔料:シリカ処理酸化チタン
(透過型電子顕微鏡の画像により測定した平均粒径:0.21μm、
粒子表面アシリカ処理率60%) 15質量%
重合性化合物1:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 50質量%
重合性化合物2:トリエチレングリコールジビニルエーテル 38.8質量%
重合開始剤:IRGACURE 184(CSC製) 5質量%
分散剤:合成例1〜6で得た分散剤、表4に記載の化合物 2質量%
(比較例12)
上記インク処方4の顔料を表面処理顔料Aに変更した以外は、インク処方4に従ってインクを作製した。
【0133】
【表4】

【0134】
実施例7〜12、比較例7〜12のインク組成物の粘度、分散性、沈降性、再分散性、隠蔽性、吐出安定性、硬化性、密着性、耐候性評価を下記の方法により評価した。その結果を、前記表3〜表4に併記した。
表3〜表4に示されるように、インク調製例3及び4のいずれにおいても、特定分散剤を用いた本発明のインク組成物は、分散性、吐出安定性、分散の経時安定性に優れていることがわかる。さらに、本発明のインク組成物により形成された画像は、塗膜の硬化性、基材との密着性及び隠蔽性が良好であった。
以上の結果より、本発明の粒子分散物を応用したインク組成物では、カチオン硬化性組成物、ラジカル硬化性組成物のいずれにおいても、目詰まりが少なく、装置へのインク供給が安定していることがわかる。これに対して、本発明に係る分散剤を含まない比較例のインク組成物は、ラジカル重合性組成物を用いた場合においても、インクの分散性、経時安定性に劣り、吐出安定性を満足させることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属アルコキシド化合物および/または金属アルコキシド化合物の部分加水分解物を用いて得られる縮合物よりなる分散剤で分散された粒子を含む粒子分散物。
【請求項2】
さらに、酸性化合物及び塩基性化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含有する請求項1記載の粒子分散物。
【請求項3】
金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解物を用いて得られる縮合物よりなる分散剤で分散された顔料を含有するインク組成物。

【公開番号】特開2007−270085(P2007−270085A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100810(P2006−100810)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】