説明

粒子分配装置及び分注装置並びに蒸発防止方法及び分注方法

【課題】 サンプル溶液の蒸発や結露を抑えて濃度変化を確実に防止できると共に、小型でシンプルな構成にすること。
【解決手段】 内部に溶液を貯留可能な貯留部3が形成された容器4の貯留部3に、溶液よりも密度が小さい粒子Pをそれぞれ少なくとも所定量以上投入するものであって、容器4の上方に配され、粒子Pを投入可能な貫通孔10aが形成された第1部材10と、該第1部材10と容器4との間に、該第1部材10に対して相対的に移動可能に配され、貫通孔10aと貯留部3とを連通する流路11aが形成された第2部材11とを備え、第1部材10及び第2部材11が、容器4に対して着脱自在に固定され、第2部材11が、相対的な移動に伴って、貫通孔10a及び貯留部3をそれぞれ塞く閉塞状態と、該閉塞を解いて流路11aを介して貫通孔10aと貯留部3とを連通させる連通状態とが切り替わる粒子分配装置2を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬の濃度調整、試薬の混合や試薬の小分けを行う自動分注装置、血液や尿等の体液を医学的な目的で検査する化学分析装置等、液体試料の吸引分配に利用される溶液の蒸発を防止するための粒子分配装置及びこれを有する分注装置、並びに、蒸発防止方法並びにこれを利用した分注方法に関するものである。
特に、生体関連物質の検出に用いられる基板に、容器からピックアップした何種類もの溶液をスポットして作製する試験片の製造方法に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
従来より、装置上で複数の試薬を混合させて溶液を調整したり、薬品ボトルから複数のマイクロプレート或いは容器に溶液を小分けしたりする装置が知られている。これらの装置では、溶液の蒸発による濃度変化を最小限に抑えるため、冷却、加湿、シール等さまざまな改善が行われてきた。
特に、基板上に、遺伝子を検出可能な核酸プローブの微小なスポットを整列させ、そこに検体である遺伝子を反応させると共に、ハイブリダイズ反応を利用してそのハイブリシグナルを検出することで、遺伝子の発現量や変異等の情報を網羅的に解析するためのツールとして、DNAマイクロアレイが知られている。
【0003】
このようなDNAマイクロアレイは、反応時間の短縮、遺伝子の高密度化や感度、再現性の向上、品質の安定性等が要求されている。そして、これらの要求を満たすよう様々なDNAマイクロアレイの製造装置や製造方法が提供されている。一般的にDNAマイクロアレイ等の試験片を製造するには、化学処理された基板に、スポッターと呼ばれる装置を使用してマイクロプレートと呼ばれる容器の溶液貯留孔に蓄えられた5〜50μlのプローブ溶液をスポッターに搭載されたノズル又は針によりピックアップし、基板上に微小なスポットを並べる工程を行う。
【0004】
ここで、上述したような従来の各種分注装置は、ノズル又は針をマイクロプレートの溶液貯留孔のプローブ溶液に浸漬させて、該プローブ溶液をピックアップする構成になっている。そのため、マイクロプレートの溶液貯留孔は、ノズル又は針がその孔内に対して進退可能なように外部雰囲気に開放されている状態となっている。よって、溶液貯留孔に貯留されたプローブ溶液は、蒸発しやすい構造になっている。
【0005】
加えて、マイクロアレイの作製では、例えば、1枚の基板上に6000個のスポットをノズルで連続して作製するだけでも、現状では約8時間ほどかかってしまう。このように、分注作業が長時間に亘るような場合には、溶液貯留孔に分注したプローブ溶液が時間経過と共に蒸発してしまい、その結果、貯留されているプローブ溶液の濃度に経時的な差違が生じてしまう。
また、スポットしたプローブ溶液中に含まれる試料の量や濃度が不均一になる他にも、スポッターによるプローブ溶液の基板上への打ち始めと打ち終わりとで、均一なスポットができず、完成したマイクロアレイの品質が安定しないという問題があった。
【0006】
そこで、プローブ溶液の蒸発を防止しながらマイクロアレイを作製するマイクロアレイ作製装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
このマイクロアレイ作製装置は、抽出位置の下方に、MTPプレート(マイクロプレート)を内部に収容するMTPプレート用ボックスを備えている。このMTPプレート用ボックスには、蒸気発生装置からの蒸気配管が接続されており、内部に水蒸気が貯留されるようになっている。この際、貯留された水蒸気が上部開口部から外部に逃げて、スポット作業空間に影響を与えないようにMTPプレート用ボックスの高さが調整されている。
【0007】
このように構成されたマイクロアレイ作製装置によれば、MTPプレート用ボックス内を最適な設定湿度範囲に維持することができるので、MTPプレートに貯留されているサンプル溶液の蒸発を抑えることができる。これにより、長時間の作業中を行ったとしても、サンプル溶液の濃度の経時的な変化を防止でき、粘度も一定に保つことができる。その結果、支持体(基板)上に均一なスポットを作製でき、品質を向上することができる。
【特許文献1】特開2002−365302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているマイクロアレイ作製装置では、以下のような問題点があった。
即ち、MTPプレートを内部に収容するためのMTPプレート用ボックスを設ける必要があるので、専用の設置スペースが必要であり、装置全体が大掛かりなものとなってしまうものであった。
また、MTPプレートは、水蒸気の雰囲気内に置かれているが、水蒸気が結露する可能性があり、その結果、サンプル溶液の濃度が薄まってしまう恐れがあった。そのため、やはり均一なスポットを作製することが困難なものであった。
【0009】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、サンプル溶液の蒸発や結露を抑えて濃度変化を確実に防止できると共に、小型でシンプルな構成にすることができる粒子分配装置及び分注装置並びに蒸発防止方法及び分注方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
請求項1に係る発明は、内部に溶液を貯留可能な貯留部が形成された容器の前記貯留部に、溶液よりも密度が小さい粒子をそれぞれ少なくとも所定量以上投入する粒子分配装置であって、前記容器の上方に配され、前記粒子を投入可能な貫通孔が形成された第1部材と、該第1部材と前記容器との間に、該第1部材に対して相対的に移動可能に配され、前記貫通孔と前記貯留部とを連通する流路が形成された第2部材とを備え、前記第1部材及び前記第2部材が、前記容器に対して着脱自在に固定され、前記第2部材が、相対的な移動に伴って、前記貫通孔及び前記貯留部をそれぞれ塞く閉塞状態と、該閉塞を解いて前記流路を介して貫通孔と貯留部とを連通させる連通状態とが切り替わる粒子分配装置を提供する。
【0011】
この発明に係る粒子分配装置においては、まず、容器に対して第2部材及び第1部材を順に固定する。この際、第1部材の貫通孔と容器の貯留部とが流路を介して連通しないように第2部材の位置を調整し、閉塞状態としておく。つまり、この状態は、第1部材の貫通孔が第2部材によって塞がれている状態である。この閉塞状態後、貫通孔内に粒子を投入する。投入後、第2部材を移動させて、流路を介して貫通孔と貯留部とを連通させる。この連通状態により、貫通孔内に投入された粒子は、流路を介して貯留部内に分配されて所定量以上投入される。これにより、容器の貯留部内に粒子を投入することができる。
【0012】
その後、貯留部内に溶液を入れると、粒子は溶液よりも密度が小さいので、溶液の上面に浮いた状態となる。この際、粒子は、所定量以上投入されているので、溶液の上面を隙間なく覆った状態で浮く。よって、溶液と外気との接触面積を抑えることができ、溶液の蒸発量を抑制することができる。その結果、溶液の蒸発を極力防止することができる。また、従来とは異なり水蒸気を利用していないので、該水蒸気の結露により溶液が薄まる心配もない。従って、溶液を長時間貯留部内に貯留したとしても、該溶液の経時的な濃度変化を防止することができる。
【0013】
また、第2部材を移動させる(例えば、平行移動や回転移動等)だけで、閉塞状態と連通状態とを容易且つ確実に切り替えることができるので、粒子を分配し易い。また、第1部材及び第2部材は、従来のように容器を内部に収容する大きさとする必要がないので、小型にでき、使い易くシンプルな構成にできる。
【0014】
なお、貯留部内に溶液を入れた後、粒子を投入して蒸発を防止しても構わない。また、粒子の量は、僅かな量でも本発明の効果を奏することができるが、溶液を貯留したときに、該溶液の表面を覆う量(所定量)であることが好ましい。これは、粒子が1層で溶液の表面を覆っても良く、さらに効果的に蒸発を防止するためには2〜3層の粒子で溶液の表面を覆うことが好ましい。以下の説明においても同様である。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の粒子分配装置において、前記貫通孔及び前記流路は、内部容積が均等になるようにそれぞれ複数形成され、前記連通状態のときに複数の流路のそれぞれが各貫通孔と前記貯留部とを連通させる粒子分配装置を提供する。
【0016】
この発明に係る粒子分配装置においては、貫通孔及び流路が複数形成されているので、各貫通孔内に投入された粒子は各流路を介してそれぞれ貯留部内に投入される。このように複数の流路を介して粒子を貯留部に投入できるので、いずれかの流路が閉塞したとしても、確実に粒子を貯留部内に投入できる。よって、投入の確実性が高まる。また、各貫通孔及び各流路は、それぞれ内部容積が均等であるので同じ量の粒子が貯留部内に投入される。そのため、いずれかの流路が閉塞したとしても、他の流路から確実に所定量以上の粒子を投入することができる。
また、貯留部が複数形成されている容器であったとしても、各貯留部に同時に同量の粒子を投入することができ、このような容器であっても対応することが可能である。
【0017】
請求項3に係る発明は、内部に溶液を貯留可能な貯留部が形成された容器の前記貯留部に、溶液よりも密度が小さい粒子をそれぞれ少なくとも所定量以上投入する粒子分配装置であって、前記容器の上方に配され、前記粒子を投入可能な貫通孔が形成された第1部材と、該第1部材と前記容器との間に配され、前記貯留部を塞ぐシート部材と、前記第1部材の上方で前記容器に対して接近離間する方向に向けて移動可能に配され、該移動に伴って前記貫通孔を通して前記シート部材を破断する針部が下面に形成された第2部材とを備え、少なくとも前記第1部材が、前記容器に着脱自在に固定される粒子分配装置を提供する。
【0018】
この発明に係る粒子分配装置においては、まず、第1部材の下面にアルミ箔からなるシール等のシート部材を貼り付け等により固定して貯留部を塞ぐ。この際、第1部材の貫通孔は、シート部材によって塞がれている状態である。次いで、貫通孔内に粒子を投入する。投入後、第2部材の下面に形成された針部が貫通孔を通るように、該第2部材を容器に対して接近させてシート部材を破断させる。このシート部材の破断により、貫通孔に投入された粒子は、貯留部内に所定量以上投入される。
【0019】
その後、貯留部内に溶液を入れると、粒子は溶液よりも密度が小さいので、溶液の上面に浮いた状態となる。この際、粒子は、所定量以上投入されているので、溶液の上面を隙間なく覆った状態で浮く。よって、溶液と外気との接触面積を抑えることができ、溶液の蒸発量を抑制することができる。また、従来とは異なり水蒸気を利用していないので、該水蒸気の結露により溶液が薄まる心配もない。従って、溶液を長時間貯留部内に貯留したとしても、該溶液の経時的な濃度変化を防止することができる。また、第1部材は、従来のように容器を内部に収容する大きさとする必要がないので、小型にでき、使い易くシンプルな構成にできる。
なお、貯留部内に溶液を入れた後、粒子を投入して蒸発を防止しても構わない。また、第1部材の下面に予めシート部材を取り付けておいても構わない。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の粒子分配装置において、前記貫通孔が、内部容積が均等になるように複数形成されている粒子分配装置を提供する。
【0021】
この発明に係る粒子分配装置においては、貯留部が複数形成されている容器であったとしても、各貯留部に同時に同量の粒子を投入することができ、このような容器であっても対応することが可能である。
【0022】
請求項5に係る発明は、内部に溶液を貯留可能な貯留部が形成された容器の前記貯留部に、溶液よりも密度が小さい粒子をそれぞれ少なくとも所定量以上投入する粒子分配装置であって、前記粒子を収容する収容部と、該収容部と前記容器との間を移動可能に配された第2部材と、前記貯留部に対して対向配置されるよう前記第2部材の下面に形成された凹部と、該凹部に接続された管路と、該管路を介して前記凹部内に引圧を発生させて前記粒子を内部に吸引すると共に該吸引を解いて粒子を外部に放出させる圧力可変手段とを備え、前記圧力可変手段が、前記第2部材が前記収容部に位置しているときに前記吸引を開始し、前記第2部材が前記容器に位置しているときに前記放出を行う粒子分配装置を提供する。
【0023】
この発明に係る粒子分配装置においては、第2部材を収容部に位置させた状態で、圧力可変手段により吸引を開始する。これにより、管路を介して第2部材の凹部内に引圧が発生して、粒子が凹部内に吸引される。次いで、この吸引状態を維持したまま、第2部材を容器まで移動させて、凹部を容器の貯留部に対向配置させる。この状態で圧力可変手段により吸引を解いて、凹部内に吸引されていた粒子を放出し、貯留部内に投入する。
【0024】
その後、貯留部内に溶液を入れると、粒子は溶液よりも密度が小さいので、溶液の上面に浮いた状態となる。この際、粒子は、所定量以上投入されているので、溶液の上面を隙間なく覆った状態で浮く。よって、溶液と外気との接触面積を抑えることができ、溶液の蒸発量を抑制することができる。その結果、溶液の蒸発を極力防止することができる。また、従来とは異なり水蒸気を利用していないので、該水蒸気の結露により溶液が薄まる心配もない。従って、溶液を長時間貯留部内に貯留したとしても、該溶液の経時的な濃度変化を防止することができる。また、従来のように容器を内部に収容する大きさとする必要がないので、小型にでき、使い易くシンプルな構成にできる。
なお、貯留部内に溶液を入れた後、粒子を投入して蒸発を防止しても構わない。
【0025】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の粒子分配装置において、前記凹部が、内部容積が均等になるように複数形成されている粒子分配装置を提供する。
【0026】
この発明に係る粒子分配装置においては、貯留部が複数形成されている容器であったとしても、各貯留部に同時に同量の粒子を投入することができ、このような容器であっても対応することが可能である。
【0027】
請求項7に係る発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の粒子分配装置において、前記第2部材が、導電性材料により形成されていることを特徴とする粒子分配装置。
【0028】
この発明に係る粒子分配装置においては、第2部材がステンレス等の導電性材料により形成されているので、静電気による影響を極力なくすことができる。よって、静電気による粒子の付着を防止でき、確実に該粒子を容器の貯留部内に投入することができる。
【0029】
請求項8に係る発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の粒子分配装置と、内部に前記溶液を貯留可能な貯留部が形成された容器と、前記貯留部内に前記粒子と共に貯留された前記溶液のうち、該溶液のみを吸引して所定位置に分注する分注手段とを備えている分注装置を提供する。
【0030】
この発明に係る分注装置においては、粒子分配装置によって蒸発が防止され、濃度が変化し難い状態で貯留部に貯留されている溶液を、ノズルや針等の分注手段により所定位置に均一な濃度で分注することができる。よって、分注作業に時間を要したとしても、高品質なマイクロアレイ等を作製することができる。
なお、所定位置とは、別の容器やマイクロプレート等の溶液の貯留部でも良く、マイクロアレイ作製時には基板でも良い。
【0031】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の分注装置において、前記容器が、前記貯留部が複数形成されたマイクロプレートである分注装置を提供する。
【0032】
この発明に係る分注装置においては、容器がマイクロプレートであるので、溶液を貯留する貯留部の数が多く、多種の溶液を貯留することができるので、使用し易く簡便である。また、予め決められた一定の間隔で貯留部が形成されているので、一定の間隔で取り付けられているノズルや針等の分注手段の間隔と一致させることができる。よって、溶液を吸引し易く、効率が良い。
【0033】
請求項10に係る発明は、請求項8又は9に記載の分注装置において、前記分注手段が、ノズル又は針を備えている分注装置を提供する。
【0034】
この発明に係る分注装置においては、先端が細いノズル又は針を利用して貯留部内から溶液を吸引できるので、溶液の上面に浮いた粒子を掻き分けながら溶液のみを確実に吸引することができる。また、溶液内から引き抜いたときに、粒子は速やかに元の状態に戻るので、貯留部内に残った溶液の蒸発を極力抑えることができる。
【0035】
請求項11に係る発明は、容器に形成された貯留部内に溶液を所定量吐出して、該貯留部内に溶液を貯留させる貯留工程と、前記貯留部内に、前記溶液よりも密度が小さい粒子を少なくとも所定量以上投入する投入工程とを備え、前記貯留工程又は前記投入工程のいずれか一方の工程を先に行う蒸発防止方法を提供する。
【0036】
この発明に係る蒸発防止方法においては、まず、投入工程により、容器の貯留部内に粒子を所定量以上投入し、粒子の投入後、貯留工程により貯留部内に溶液を吐出して貯留する。そして、粒子と溶液とが貯留部内で混ざると、該粒子は溶液よりも密度が小さいので、溶液の上面に浮いた状態となる。この際、粒子は、所定量以上投入されているので、溶液の上面を隙間なく覆った状態で浮く。よって、溶液と外気との接触面積を抑えることができ、溶液の蒸発量を抑制することができる。その結果、溶液の蒸発を極力防止することができる。また、従来とは異なり水蒸気を利用していないので、該水蒸気の結露により溶液が薄まる心配もない。従って、溶液を長時間貯留部内に貯留したとしても、該溶液の経時的な濃度変化を防止することができる。
なお、貯留工程、投入工程の順に行って、粒子と溶液とを混ぜても構わない。
【0037】
請求項12に係る発明は、容器に形成された貯留部内に溶液を所定量吐出して、該貯留部内に溶液を貯留させる貯留工程と、前記溶液よりも密度が小さい粒子を昇華材料に混合させた状態で固形化して固形物を作製する作製工程と、前記貯留部の大きさに応じて前記固形物を小分けし、小分けした固形物を貯留部内に投入する投入工程とを備え、前記貯留工程又は前記投入工程のいずれか一方の工程を先に行う蒸発防止方法を提供する。
【0038】
この発明に係る蒸発防止方法においては、初めに作製工程を行って固形物を作製する。即ち、粒子を液化炭酸ガス等の昇華材料に混合させた状態で固形化して、例えば、粒子入りのドライアイスを作製する。その後、作製した粒子入りのドライアイスを貯留部の大きさに応じて小分けし、小分けした粒子入りのドライアイスを貯留部内に投入する投入工程を行う。そして、貯留工程により貯留部内に溶液を貯留させる。この溶液の貯留により、小分けされた粒子入りのドライアイスが気化し始め、該ドライアイスに混入された粒子が溶液に混ざり始める。
【0039】
そして、粒子と溶液とが貯留部内で混ざると、該粒子は溶液よりも密度が小さいので、溶液の上面に隙間なく浮いた状態となる。よって、溶液と外気との接触面積を抑えることができ、溶液の蒸発量を抑制することができる。その結果、溶液の蒸発を極力防止することができる。また、従来とは異なり水蒸気を利用しないので、該水蒸気の結露により溶液が薄まる心配もない。従って、溶液を長時間貯留部内に貯留したとしても、該溶液の経時的な濃度変化を防止することができる。
なお、貯留工程、投入工程の順に行って、粒子と溶液とを混ぜても構わない
【0040】
請求項13に係る発明は、保管部に予め貯留されている溶液を、該溶液よりも密度が小さい粒子を予め所定量以上収容している吸引吐出部内に吸引する吸引工程と、該吸引工程後、前記吸引吐出部を容器に形成された貯留部に移動させて、該貯留部内に吸引した前記溶液を前記粒子と共に吐出する吐出工程とを備えている蒸発防止方法を提供する。
【0041】
この発明に係る蒸発防止方法においては、まず吸引工程により、粒子を予め内部に収容している吸引吐出部内に、保管部に貯留されている溶液を吸引する。この際、粒子は溶液よりも密度が小さいので、吸引吐出部内では粒子が溶液に浮いた状態となっている。吸引工程後、吸引吐出部を容器の貯留部上に移動させて、貯留部内に吸引した溶液を粒子と共に吐出する吐出工程を行う。これにより、貯留部内に溶液及び粒子を貯留させることができる。
【0042】
また、この吐出工程の際に再度溶液と粒子とが混ざったとしても、再び粒子は溶液の上面に浮いた状態となる。特に、粒子は、予め吸引吐出部内に所定量以上収容されているので、溶液の上面を隙間なく覆った状態で浮く。よって、溶液と外気との接触面積を抑えることができ、溶液の蒸発量を抑制することができる。その結果、溶液の蒸発を極力防止することができる。また、従来とは異なり水蒸気を利用していないので、該水蒸気の結露により溶液が薄まる心配もない。従って、溶液を長時間貯留部内に貯留したとしても、該溶液の経時的な濃度変化を防止することができる。
【0043】
請求項14に係る発明は、請求項13に記載の蒸発防止方法において、前記吸引工程が、前記粒子の大きさより小さい開口が形成された多孔質のシート部材を通して前記吸引吐出部内に前記溶液を吸引し、前記吐出工程が、前記シート部材を取り除いた後に、前記溶液及び前記粒子を共に吐出する蒸発防止方法を提供する。
【0044】
この発明に係る蒸発防止方法においては、前記吸引工程の際、粒子の大きさより小さい開口が形成されたシート部材を通して溶液の吸引を行うので、予め吸引吐出部内に収容されている粒子がシート部材を介して外部に零れてしまうことはない。そして、吐出工程の際に、シート部材を取り除くことで、確実に溶液と共に粒子を貯留部内に吐出することができる。その結果、溶液の蒸発防止を図ることができる。
【0045】
請求項15に係る発明は、請求項13に記載の蒸発防止方法において、前記吸引吐出部が、先端が前記粒子の大きさより径が小さくなるよう先細りのテーパー形状に形成されており、前記吐出工程が、前記粒子が通過する内径となる位置で前記吸引吐出部を切断した後、前記溶液及び前記粒子を共に吐出する蒸発防止方法を提供する。
【0046】
この発明に係る蒸発防止方法においては、吸引吐出部が先細りのテーパー形状に形成されているので、予め吸引吐出部内に収容されている粒子が外部に零れてしまうことはない。そして、前記吸引工程により先端側から溶液の吸引を行う。次いで、吐出工程の際に、粒子が通過する内径となる位置で吸引吐出部を切断することで、溶液と共に粒子を確実に貯留部内に吐出することができる。その結果、溶液の蒸発防止を図ることができる。
【0047】
請求項16に係る発明は、請求項11から15のいずれか1項に記載の蒸発防止方法において、前記粒子として、材質が樹脂又は中空金属である粒子を用いる蒸発防止方法を提供する。
【0048】
この発明に係る蒸発防止方法においては、溶液よりも比重が軽いポリエチレンやABS等の樹脂からなる粒子を利用できるので、確実に粒子を溶液の上面に浮かせて蒸発の防止を図ることができる。また、溶液よりも比重が重い物質であっても、中空状態にした粒子を利用するので、比重を小さくでき、同様に溶液の上面に浮かせることができる。
【0049】
請求項17に係る発明は、請求項16に記載の蒸発防止方法において、前記樹脂が、ポリスチレン又は架橋アクリルである蒸発防止方法を提供する。
【0050】
この発明に係る蒸発防止方法においては、ポリスチレン又は架橋アクリルを利用するので、比重が小さく、耐薬品性を有する粒子を安価に使用することができる。
【0051】
請求項18に係る発明は、請求項11から17のいずれか1項に記載の蒸発防止方法により、前記貯留部内に粒子と共に貯留された前記溶液のうち、該溶液のみを分注手段により吸引すると共に所定位置に分注する分注工程を備えている分注方法を提供する。
【0052】
この発明に係る分注方法においては、蒸発防止方法により蒸発が防止され、濃度が変化し難い状態で貯留されている溶液を、ノズルや針等の分注手段による分注工程により、所定位置に均一な濃度で分注することができるので、分注工程に時間を要したとしても高品質なマイクロアレイ等を作製することができる。
なお、所定位置とは、別の容器やマイクロプレート等の溶液の貯留部でも良く、マイクロアレイ作製時には基板でも良い。
【0053】
請求項19に係る発明は、請求項18に記載の分注方法において、前記粒子として、球状に形成された粒子を用いる分注方法を提供する。
【0054】
この発明に係る分注方法においては、製造が容易な球状の粒子を用いることができるので、ランニングコストを抑えることができる。また、溶液を吸引するためにノズルや針等の分注手段を溶液に差し込んだときに、僅かな力で粒子が逃げるので、吸引に影響を与え難く、また、外周面が、突起物がなく滑らかであるので、分注手段と接触したときに傷等を与え難い。
【0055】
請求項20に係る発明は、請求項19に記載の分注方法において、前記粒子が、直径が前記貯留部の直径の1/6以下であり、且つ、前記分注手段の内径の1.5倍以上の範囲内にある分注方法を提供する。
【0056】
この発明に係る分注方法においては、通常の分注装置やインクジェットのマイクロアレイ作製装置のように、内径を有する分注手段を用いた場合には、粒子の直径が該内径の1.5倍以上であるので、溶液を吸引するときに分注手段内に溶液と共に粒子が吸引されてしまうことを防ぐことができる。よって、確実に溶液のみを吸引することができる。また、吸引により粒子の数が減ることはないので、貯留部内に残った溶液と外気との接触を防止して、蒸発防止を引き続き図ることができる。
更に、粒子の直径は貯留部の直径の1/6以下であるので、粒子間の隙間を極力小さくできる。そのため、溶液の上面をさらに隙間なく覆うことができ、溶液と外気との接触面積をさらに小さくすることができる。よって、蒸発防止の効果をより高めることができる。加えて、溶液を吸引するためにノズルや針等の分注手段を溶液に差し込んだときに、粒子がより逃げ易いので、吸引に影響を与え難い。
【0057】
請求項21に係る発明は、請求項19又は20に記載の分注方法において、前記粒子が、直径が0.075mm〜1mmの範囲内である分注方法を提供する。
【0058】
この発明に係る分注方法においては、直径が0.075mm〜1mmの範囲内にある粒子を用いることができるので、ノズル等の分注手段に吸引されず、また、貯留部内で溶液の上面を隙間なく覆うことができる。
【0059】
請求項22に係る発明は、請求項18から21のいずれか1項に記載の分注方法において、前記溶液として、特異的結合物質を含む溶液を用いる分注方法を提供する。
【0060】
この発明に係る分注方法においては、生体関連物質の検出に用いられる特異的結合物質を含む溶液を用いることができるので、よりマイクロアレイを製造し易い。
【発明の効果】
【0061】
本発明に係る粒子分配装置及び蒸発防止方法によれば、貯留孔内にプローブ溶液よりも密度が小さい粒子を所定量以上投入して、該粒子により溶液の上面を隙間なく覆うことができるので、溶液と外気との接触面積を抑えて溶液の蒸発量を抑制でき、その結果、溶液の蒸発を極力防止することができる。また、水蒸気を利用するものではないので、該水蒸気の結露により溶液が薄まる心配もない。従って、溶液を長時間貯留部内に貯留したとしても、該溶液の経時的な濃度変化を防止することができる。
【0062】
また、本発明に係る分注装置及び分注方法によれば、蒸発が防止されて濃度が変化し難い状態で貯留されている溶液を、ノズルや針等により所定位置に均一な濃度で分注することができるので、分注作業に時間を要したとしても高品質なマイクロアレイ等を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、本発明に係る粒子分配装置及び分注装置並びに蒸発防止方法及び分注方法の第1実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
本実施形態の分注装置1は、図1に示すように、粒子分配装置2と、内部にプローブ溶液(溶液)Wを貯留可能な貯留孔(貯留部)3が複数形成されたマイクロプレート(容器)4と、貯留孔3内に後述する粒子Pと共に貯留されたプローブ溶液Wのうち、該プローブ溶液Wのみを吸引してDNAマイクロアレイ用基板5(以下、基板5と称する)上の所定位置に分注するスポッター(分注手段)6とを備えている。
【0064】
上記マイクロプレート4は、例えば、96穴マイクロプレートであり、上面に上記貯留孔3が96個(8×12)形成されている。また、上記スポッター6は、プローブ溶液Wを吸引又は分注するノズル又は針6aを4つ備えている。
なお、図1においては、ノズル又は針6aを1つのみ図示している。また、ノズル6aとした場合にはプローブ溶液Wを内部に吸引可能であるが、針6aとした場合には一般的には針先にプローブ溶液Wを付着させることになる。但し、以下の説明においては、針6aによる付着の場合も吸引に含まれるものとして説明する。
上記基板5は、10%のポリ−L−リジン溶液で表面を前処理したものであって、例えば、76mm×26mm×1mmのサイズに形成されたスライドガラスを担体とするものである。そして、この基板5は、スポッター6の図示しないステージ上に載置される。
【0065】
上記粒子分配装置2は、上記マイクロプレート4の各貯留孔3内に、プローブ溶液Wよりも密度が小さい粒子Pをそれぞれ少なくとも所定量以上投入するものであって、マイクロプレート4の上方に配され、粒子Pを投入可能な貫通孔10aが形成された板状の粒子分配部材(第1部材)10と、該粒子分配部材10とマイクロプレート4との間に、粒子分配部材10に対して相対的に移動可能に配され、貫通孔10aと各貯留孔3とを連通する流路11aが形成された板状の蓋部材(第2部材)11とを備えている。
なお、所定量とは、貯留部3にプローブ溶液Wを貯留したときに、粒子Pが浮いて該プローブ溶液Wの表面を覆う量である。
【0066】
この粒子分配部材10と蓋部材11とは、マイクロプレート4に対して着脱自在に固定できるようになっており、蓋部材11は、粒子分配部材10とマイクロプレート4との間で水平方向にスライドできるようになっている。
また、上記貫通孔10a及び流路11aは、貯留孔3の数に応じてそれぞれ複数個、即ち、96個形成されている。また、貫通孔10aは、内部容積が全て均等になるように同じ大きさで形成されている。また、流路11aは、貫通孔10a側の一方の開口が該貫通孔10aと同じ大きさに形成され、貯留孔3側の他方の開口が一方の開口より径が小さい大きさに形成されている。つまり、流路11aは、一方の開口から他方の開口に向けて漸次径が縮径するテーパー状に形成されている。
【0067】
また、蓋部材11は、スライド動作(相対的な移動)に伴って、図2に示すように、粒子分配部材10の各貫通孔10aとマイクロプレート4の各貯留孔3とをそれぞれ塞ぐ閉塞状態と、図3に示すように、該閉塞を解いて各流路11aをそれぞれ介して各貫通孔10aと各貯留孔3とを連通させる連通状態とが切り替わるようになっている。
【0068】
このように構成された粒子分配装置2及び分注装置1を用いた蒸発防止方法及び分注方法により、マイクロアレイを作製する場合について以下に説明する。
本実施形態の蒸発防止方法は、各貯留孔3内にプローブ溶液Wを所定量吐出して、各貯留孔3内にそれぞれプローブ溶液Wを貯留させる貯留工程と、各貯留孔3内に上記粒子Pをそれぞれ少なくとも所定量以上投入する投入工程とを備えており、該投入工程又は貯留工程のいずれか一方の工程を先に行うものである。なお、本実施形態では、先に投入工程を行う場合を例にして説明する。
また、本実施形態の分注方法は、上記蒸発防止方法によって各貯留孔3内に粒子Pと共に貯留されたプローブ溶液Wのうち、該プローブ溶液Wのみをスポッター6により吸引すると共に、基板5上の所定位置に分注するスポット工程(分注工程)を備えている。
これら各工程について、以下に詳細に説明する。
【0069】
なお、粒子Pとして、材質が樹脂、具体的には架橋アクリルであって、平均直径が0.2mmの球状に形成されたものを用いる場合を例にする。また、プローブ溶液Wとして、特異的結合物質(互いに異なる複数の、塩基配列が既知のアミノ標識オリゴDNA)が溶解されたプローブ溶液を用いる場合を例にする。
【0070】
まず、上記投入工程を行う。即ち、蓋部材11をスライドさせて、図2に示すように、各貫通孔10aと各貯留孔3とが連通しない閉塞状態になるように蓋部材11の位置を調整する。つまり、この閉塞状態は、貫通孔10aの一方の開口が蓋部材11によって塞がれている状態である。この閉塞状態を確認した後、粒子分配部材10の表面に粒子Pを撒き、各貫通孔10aを埋めるようにそれぞれ所定量以上の粒子Pを投入する。この際、図示しない平行板等で粒子分配部材10の表面を払うことで、各貫通孔10a内に投入されなかった余分な粒子Pを取り除くことができる。
【0071】
次いで、蓋部材11をスライド操作して連通状態にする。即ち、それぞれの流路11aを介して各貫通孔10aと各貯留孔3とを連通させる。この連通状態により、各貫通孔10a内に投入された粒子Pは、流路11aを介して各貯留孔3内に同時に投入される。この際、流路11aはテーパ状に形成されているので、貯留孔3の略中心に向かって引っ掛かり等がなく投入され、貫通孔10a内に投入された所定量以上の粒子Pが、確実にそのままの量で投入される。また、各貫通孔10aは、内部容積が均等に形成されているので、各貯留孔3内に同じ量だけの粒子Pを投入することができる。
この投入工程により、マイクロプレート4の複数の貯留孔3内に、同時且つ均等に粒子Pを投入することができる。
【0072】
次いで、投入工程後、粒子分配部材10及び蓋部材11をマイクロプレート4上から取り外し、上記貯留工程を行う。即ち、図示しないピペットを用いて、プローブ溶液Wを50μl(所定量)毎各貯留孔3内に吐出して、貯留させる。この投入工程により、貯留孔3内では、粒子Pとプローブ溶液Wとが混ざった状態となる。ここで、粒子Pはプローブ溶液Wよりも密度が小さいので、図4に示すように、プローブ溶液Wの上面に浮いた状態となる。特に、粒子Pは所定量以上投入されているので、プローブ溶液Wの上面を隙間なく覆った状態で浮く。よって、プローブ溶液Wと外気とが触れる接触面積を抑えることができ、プローブ溶液Wの蒸発量を抑えることができる。
その結果、プローブ溶液Wの蒸発を極力防止することができる。また、従来の方法とは異なり、水蒸気を用いていないので、該水蒸気の結露によりプローブ溶液Wが薄まる心配もない。従って、長時間貯留孔3内に貯留したとしても、プローブ溶液Wの経時的な濃度変化を防止することができる。
【0073】
また、蓋部材11をスライド操作するだけで、閉塞状態と連通状態とを容易且つ確実に切り替えることができるので、粒子Pを分配し易い。また、粒子分配部材10及び蓋部材11は、従来のようにマイクロプレート4を内部に収容する大きさとする必要がなく、脱着可能な板状で小型に設計できるので、使い易くシンプルな構成にすることができる。
【0074】
また、粒子Pは、プローブ溶液Wよりも比重が軽い架橋アクリル(樹脂)であるので、確実にプローブ溶液Wの上面に浮かせることができ、蒸発防止を確実なものとすることができる。特に、架橋アクリルは、耐薬品性を有していると共に安価であるので使い易く、ランニングコストを抑えることができる。
【0075】
次いで、スポッター6を用いて上記スポット工程を行う。即ち、スポッター6の4つのノズル又は針6aを各貯留孔3の真上から貯留孔3内に垂直に下降させて、先端をプローブ溶液W内に浸漬させる。この際、ノズル又は針6aを利用しているので、プローブ溶液Wの上面に浮いた粒子Pを掻き分けながらプローブ溶液W内に差し込めるので、上面に浮いた粒子Pの影響を受けることなく、プローブ溶液Wのみを吸引することができる。
【0076】
吸引後、ノズル又は針6aを貯留孔3から引き抜いて、基板5上に移動させる。この際、ノズル又は針6aを利用しているので、プローブ溶液Wから引き抜いたときに、粒子Pが速やかに元の状態に戻ることができ、貯留孔3内に残ったプローブ溶液Wの蒸発を極力抑えることができる。更に、球状の粒子Pであるので、ノズル又は針6aを差し込んだときに僅かな力で周囲に逃げ、吸引に影響を与え難く、また、外周面は突起物等がなく滑らかであるので、ノズル又は針6aに対して傷等を与え難い。
【0077】
そして、基板5上の所定位置に、吸引したプローブ溶液Wをスポットする。このスポットを貯留孔3の数に応じて所定回数繰り返すことで、基板5上に複数箇所プローブ溶液Wがスポットされたマイクロアレイを作製することができる。
特に、各貯留孔3内に貯留されたプローブ溶液Wは、粒子Pにより経時的な濃度変化がし難い状態であるので、スポットに時間を要したとしても、均一な濃度で複数スポットすることができる。従って、容易に高品質なマイクロアレイを作製することができる。
【0078】
また、マイクロプレート4を利用しているので、プローブ溶液Wの貯留孔3の数が多く、多種のプローブ溶液Wを貯留できるので、使い易く簡便である。また、予め決められた一定の間隔で貯留孔3が形成されているので、一定の間隔で取り付けられているノズル又は針6aの間隔と一致させることができる。よって、プローブ溶液Wを吸引し易く分注作業の効率を向上することができる。
【0079】
なお、上記第1実施形態においては、投入工程を行った後に、貯留工程を行ったが、この場合に限られず、例えば、各貯留孔3内にプローブ溶液Wを貯留させる貯留工程を先に行い、その後、粒子Pを投入する投入工程を行っても構わない。但し、プローブ溶液Wの蒸発をより効果的に抑えるには、先に投入工程を行うことが好ましい。
また、蓋部材11を水平方向にスライドさせることで、閉塞状態と連通状態とを切り替えたが、スライド移動に限られず、例えば、回転移動させることで閉塞状態と連通状態とを切り替えても構わない。いずれにしても、蓋部材11と粒子分配部材10とを相対的に移動させることで、切り替えを行えるように構成すれば良い。
【0080】
また、粒子Pが貯留部3内に少しでも入れば、本発明の作用効果を奏することができるが、上述したようにプローブ溶液Wの表面を覆う量である所定量以上に粒子Pを投入することが好ましい。これは、粒子Pが1層でプローブ溶液Wの表面を覆っても良く、さらに効果的に蒸発を防止するためには2〜3層の粒子Pでプローブ溶液Wの表面を覆うことがこの好ましい。
【0081】
また、粒子Pとして、平均直径0.2mmのものを使用したが、このサイズに限定されるものではない。例えば、直径が貯留孔3の直径の1/6以下であり、且つ、ノズル6aの内径の1.5倍以上の範囲内にあるものを使用しても良い。特に、ノズルにより液体を吸引するタイプの分注装置を用いる場合に、ノズル6aの内径の1.5倍以上の直径に形成された粒子Pを用いることで、プローブ溶液Wを吸引するときに、プローブ溶液Wと共に吸引されてしまうことを防ぐことができ、確実にプローブ溶液Wのみの吸引を行うことができる。仮に、粒子Pが誤って吸引された場合には、開口が詰まってしまい、それ以上プローブ溶液Wを吸引することができなくなってしまうが、1.5倍以上にすることでこのような不都合を回避することできる。
更に、貯留孔3の直径の1/6以下の直径に形成された粒子Pを用いることで、粒子P間の隙間を極力小さくでき、プローブ溶液Wの上面をさらに隙間なく覆うことができ、蒸発防止の効果をさらに高めることができる。
特に、直径が0.075mm〜1mmの粒子Pを用いることで、一般的に上述した条件を満たすことができる。
【0082】
また、上記第1実施形態において、プローブ溶液Wに含まれる特異的結合物質とは、担体上の所定の位置に配置された既知の特異的結合物質であって、生体から抽出、単離等された物質を意味するが、生体から直接抽出されたものだけでなく、これらを化学処理、化学修飾等したものも含まれる。例えば、ホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク、核酸、cDNA、DNA、mRNA等の物質である。
【0083】
また、上記第1実施形態において、粒子Pの材質として樹脂である架橋アクリルを用いたが、ポリスチレンでも構わない。この場合においても、架橋アクリルと同じ作用効果を奏することができる。
更に、粒子Pの材質は、密度を考慮すると、樹脂又は中空金属が好ましい。粒子Pの材質の種類としては、分注作業で使用されるプローブ溶液Wは水やバッファーを用いることが多いので、水よりも密度が小さい樹脂としては、ポリエチレン、ポリエチレン共重合体、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリアロマー、アイオノマー樹脂は、使用する多くの液体に対応できるので好ましい。
水とほぼ同等の密度の樹脂としては、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリブチレン、ポリアミドといった樹脂についても、バッファー等(例えば、3X SSPEでは、密度1.028 25℃)は水(密度0・0997 25℃)より密度が大きいので、これらの樹脂も好ましい。
【0084】
水よりも密度が大きいものは、AS樹脂、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、フェノール、エポキシ、ポリウレタン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂等の各種樹脂、又は、銅、鉄、ニッケル、コバルト、カドニウム、鉛、亜鉛、砒素、錫、チタン、銀、金、バナジウム、白金、ロジウム等の単一金属、ニッケル−コバルト、ニッケル−コバルト−リン、ニッケル−鉄−リン、ニッケル−タングステン−リン、及びニッケル−リンのようなニッケル合金;コバルト−鉄−リン、コバルト−タングステン−リン及びコバルト−ニッケル−マンガン−レニウム−リンのようなコバルト合金、鉄合金等の金属粒子が挙げられる。
【0085】
また、これらのプローブ溶液Wよりも密度の大きい物質は、中空粒子、不連続孔を有した発泡粒子、又は、連続孔を有した発泡体は、表面を前述した樹脂等でコーティングすると、粒子Pとして密度を小さくできるのでより好ましい。フッ素樹脂の粒を、ポリエチレン等の低比重のプラスチックに分散させて、素材の比重を下げることも可能である。密度が溶液よりも小さいものは、必ずしも中空や発泡体にする必要は無い。特に樹脂は容易に中空体や発泡体を製造可能なので好ましい。
【0086】
ここで用いる粒子Pには、帯電防止処理を行っていることが好ましい。容器を運搬する場合等に粒子P間での摩擦や、粒子Pと容器との摩擦が起こるので、静電気が発生しやすいが、静電気の発生を防止することができる。帯電防止処理には、樹脂に非イオン系、又は、陰イオン系の界面活性剤を練りこんだ材料を用いて粒子Pを製造すればよい。
【0087】
更に、容器の底部から容器内の液体について光学的な検出を行う場合、粒子Pが光を散乱してノイズとなるのを防止するために、以下の2つの方法を用いることができる。
1)粒子Pの屈折率を水の屈折率1.33にできるだけ近い材質を用いる。
2)着色した粒子P、特に、黒色の粒子Pを用いる。ここで、好適に用いることができる材質は、屈折率がガラス(1.5程度)より小さい材質で、例えば、テトラフルオロエチレン(屈折率1・35)等のフッ素樹脂、シリコン樹脂(屈折率1.43)、ポリメチルペンテン(屈折率1.463)、ブニルブチラール(屈折率1.47)、ポリアセタール(屈折率1.48)、PMMA(屈折率1.488)、ポリプロピレン(屈折率1.49)、ポリアロマー(屈折率1.492)が挙げられる。
【0088】
このとき粒子Pの密度は、水の密度より小さければ、特に発泡体にすることなく、生化学的な反応にしばしば用いられる種々の液体(例えば、樹種の緩衝溶液(例えばPBS (密度0.999g/cm)、PB(密度1.03g/cm)、SSC(密度1.004g/cm) ,SSPE,TAE) 、生理食塩水(密度 1.0003g/cm)、界面活性剤(SDS,Tween(登録商標)、Triton (Dow Chemical社))水溶液、EDTA水溶液)に対して、浮力により液体表面に浮くので好ましい。
従って、これらの溶液は水が主成分なので、密度が水より大きくなる。従って、水より密度が小さい材質を用いれば、必ず浮力により液表面に浮く。
【0089】
密度が水より小さい材質は、ポリメチルペンテン(密度0.833)、ポリエチレン(密度0.91〜0.95)、ポリブチレン(密度 0.098〜0.917)、ポリプロピレン(密度0.901)、ポリアロマー(密度0.898)、シリコン樹脂(密度1.0)等が挙げられる。これ以外の材質で密度が水より大きな材質は、中空粒子又は不連続孔を有した発泡粒子の形態、又は、連続孔を有した発泡体は、表面を樹脂等でコーティングすると、粒子Pとしての密度(見かけの密度)を小さくできるのでより好ましい。
更に、ここで用いる粒子Pには、帯電防止処理を行なっていることが好ましい。ここで、見かけの密度とは、粒子Pに空隙が含まれている場合、空隙の体積も含めて粒子の体積としたときの密度である。
【0090】
樹脂を黒色にする方法は、顔料や染料を樹脂に含有させ着色する方法がある。顔料ではカーボン、酸化鉄系顔料、鉄とそれ以外の金属からなる複合酸化鉄系顔料等が挙げられる。染料ではアゾ系染料、アントラキノン系染料等多くの合成染料が挙げられる。特に、顔料であれば不透明で粗面の黒色粒子とすることができるので、光学的な観察や測定を行う場合に好ましい。カーボンの粒子を樹脂に含有させると、粒子同士の帯電防止にも効果を有するので更により好ましい。
【0091】
以上より、用いる粒子Pは、屈折率がより小さく、黒色、望ましくは、粗面であることがより好ましい。例えば、本発明の容器をアレイ基板の製造に使用する場合、容器に貯留する液体として特異的結合物質(例えば、核酸、蛋白質)の溶液を使用するが、粒子Pは該特異的結合物質と結合(反応、吸着)しない材質を使用するのが好ましい。粒子Pと該特異的結合物質が結合すると、粒子Pと該特異的結合物質との反応性の違いにより、プローブ濃度に差違が生じてしまい、均一なスポットができなく、完成したマイクロアレイの品質が安定しないという問題が生じてしまうが、例えばポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミドの粒子Pを使用すると、蛋白質と吸着し難いのでプローブ濃度に差違が生じないのでより良い。
【0092】
また、MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマー(日本油脂製)を樹脂の表面にコーティングする方法でも蛋白質の吸着を減少させることができる。また、アレイ基板の製造以外に使用する場合も同様に、液体そのものや、溶液に含まれている物質と結合(反応、吸着)しない材質を使用するのが好ましい。
【0093】
貯留する液体が、水を主成分とするものの場合は、みかけの密度を考慮すれば、上述した材質は、特に制限がなく用いることができる。しかし、有機溶媒や酸、アルカリを含んでいる場合は、化学的な耐性を考慮する必要がある。このときには、ポリエチレン、ポリエチレン共重合体、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂は、種々の有機溶媒や酸、アルカリに対して耐性が高く好ましい。生化学的な物質を扱う場合にしばしば用いられる酸やアルカリは、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液が用いられる。粒子Pの材質は、上述の性質や価格を考慮して目的に応じて選択される。
【0094】
次に、本発明に係る粒子分配装置及び蒸発防止方法の第2実施形態を、図5から図7を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態の粒子分配装置2は、蓋部材11をスライドさせることで、貫通孔10aと貯留孔3とを流路11aにより連結して、粒子Pを貯留孔3内に投入する構成であったが、第2実施形態の粒子分配装置20は、貯留孔3を塞いでいるシール21を破断することで、貫通孔10a内の粒子Pを貯留孔3内に投入する点である。
【0095】
即ち、本実施形態の粒子分配装置20は、図5に示すように、粒子分配部材10と、該粒子分配部材10とマイクロプレート4との間に配され、各貯留孔3を塞ぐ上記シール(シート部材)21と、粒子分配部材10の上方でマイクロプレート4に対して接近離間する方向に向けて移動可能に配され、該移動に伴って粒子分配部材10の貫通孔10aを通してシール21を破断する針部22aが下面に複数形成された板状の治具(第2部材)22とを備えている。
上記シール21は、粒子分配部材10の下面に糊等の接着剤により貼り付けされており、各貫通孔10aの一方の開口を塞いでいる。また、その材質としては、帯電防止及び貫通性に優れたアルミ箔を採用している。
【0096】
上記治具22は、粒子分配部材10と略同じサイズに形成され、粒子分配部材10に形成された複数の貫通孔10aの対向位置に上記複数の針部22aが形成されている。また、針部22aの長さは、治具22を粒子分配部材10上に重ねたときに、貫通孔10a内を通してシール21を破断できる長さとされている。
【0097】
このように構成された粒子分配装置20を用いた蒸発防止方法について説明する。
まず、第1実施形態と同様に投入工程を行う。即ち、図5に示すように、シール21が貼り付けられた粒子分配部材10をマイクロプレート4にセットした後、粒子分配部材10の表面に粒子Pを撒き、各貫通孔10aを埋めるようにそれぞれ所定量以上の粒子Pを投入する。この際、図示しない平行板等で粒子分配部材10の表面を払うことで、各貫通孔10a内に投入されなかった余分な粒子Pを取り除くことができる。
【0098】
次いで、図6に示すように、複数の針部22aが各貫通孔10a内を通るように治具22をマイクロプレート4に接近させてシール21を破断させる。このシール21の破断により、図7に示すように、貫通孔10a内に投入された粒子Pは、各貯留孔3内に所定量以上投入される。これにより、マイクロプレート4の複数の貯留孔3内に同時に粒子Pを投入することができる。また、シール21は、帯電防止及び貫通性に優れたアルミ箔を用いているので、僅かな力で確実にシール21を破断でき、破断作業を容易にすることができると共に、帯電によるアルミへの付着がないので、貫通孔10a内に投入された粒子Pを無駄なく貯留孔3内に投入することができる。
【0099】
この投入工程後、粒子分配部材10をマイクロプレート4上から離間させ、第1実施形態と同様に投入工程を行う。即ち、図示しないピペットを用いて、プローブ溶液Wを50μl(所定量)毎各貯留孔3内に吐出して、貯留させる。この投入工程により、貯留孔3内では、粒子Pとプローブ溶液Wとが混ざった状態となる。ここで、粒子Pはプローブ溶液Wよりも密度が小さいので、プローブ溶液Wの上面に浮いた状態となる。特に、粒子Pは所定量以上投入されているので、プローブ溶液Wの上面を隙間なく覆った状態で浮く。よって、プローブ溶液Wと外気が触れる接触面積を抑えることができ、プローブ溶液Wの蒸発量を抑えることができる。その結果、プローブ溶液Wの蒸発を極力防止することができる。また、従来の方法とは異なり、水蒸気を用いていないので、該水蒸気の結露によりプローブ溶液Wが薄まる心配もない。従って、長時間貯留孔3内に貯留したとしても、プローブ溶液Wの経時的な濃度変化を防止することができる。
【0100】
なお、上記第2実施形態では、投入工程を行った後に、貯留工程を行ったが、この場合に限られず、例えば、各貯留孔3内にプローブ溶液Wを貯留させる貯留工程を先に行い、その後、粒子Pを投入する投入工程を行っても構わない。但し、プローブ溶液Wの蒸発をより効果的に抑えるには、先に投入工程を行うことが好ましい。
また、シール21の材質として、アルミ箔を採用したが、アルミ箔に限定されるものではない。また、シール21を粒子分配部材10の下面に貼り付けた構成にしたが、例えば、粒子P部材部材とマイクロプレート4とにより、単にシール21を挟み込んで固定しても構わない。
【0101】
次に、本発明に係る粒子分配装置及び蒸発防止方法の第3実施形態を、図8から図10を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態の粒子分配装置2は、蓋部材11をスライドさせることで、貫通孔10aと貯留孔3とを流路11aにより連結して粒子Pを貯留孔3内に投入する構成であったが、第3実施形態の粒子分配装置30は、バキュームポンプ31の吸引力を利用して各貯留孔3内に粒子Pを投入する点である。
【0102】
即ち、本実施形態の粒子分配装置30は、図8から図10に示すように、粒子Pを収容する箱体(収容部)32と、該箱体32とマイクロプレート4との間を移動可能に配された板状の粒子分配部材(第2部材)33と、マイクロプレート4の各貯留孔3に対して対向配置されるよう粒子分配部材33の下面に複数形成された凹部34と、該複数の凹部34にそれぞれ接続された管路35と、該管路35を介して各凹部34内に引圧を発生させて粒子Pを内部に吸引すると共に該吸引を解いて粒子Pを外部に放出させる上記バキュームポンプ(圧力可変手段)31とを備えている。
【0103】
上記凹部34は、各貯留孔3内に粒子Pを所定量以上投入できる容積となるように形成されていると共に、内部容積が全て均等になるよう同じ大きさに形成されている。また、各凹部34と管路35との間には、粒子Pが管路35内に侵入することを防ぐメッシュ36がそれぞれ設けられている。つまり、メッシュ36の開口は、粒子Pより小さい大きさに形成されている。
上記バキュームポンプ31は、粒子分配部材33が箱体32に位置しているときに吸引を開始し、粒子分配部材33がマイクロプレート4上に位置しているときに放出を行うように制御されている。
【0104】
このように構成された粒子分配装置30を用いた蒸発防止方法について説明する。
まず、第1実施形態と同様に投入工程を行う。即ち、図8及び図9に示すように、粒子分配部材33を箱体32に位置させて、複数の凹部34が形成された下面と粒子Pとを接触させる。そして、この状態でバキュームポンプ31を作動させて複数の凹部34内に引圧を発生させる。これにより、箱体32に収容されていた粒子Pは、各凹部34内に吸引される。この際、各凹部34と管路35との間にはメッシュ36が設けられているので、吸引された粒子Pが管路35内に侵入することはない。
【0105】
次いで、図10に示すように、吸引状態を維持したまま、粒子分配部材33をマイクロプレート4上に移動させて、複数の凹部34が複数の貯留孔3に対向配置されるように重ね合わせる。重ね合わせ後、バキュームポンプ31により圧力を開放、即ち、吸引を解いて、各凹部34内に吸引されていた粒子Pを各貯留孔3内に投入する。これにより、複数の貯留孔3内に同時且つ均等に所定量以上の粒子Pを投入することができる。
【0106】
この投入工程後、粒子分配部材33をマイクロプレート4上から移動させ、第1実施形態と同様に投入工程を行う。即ち、図示しないピペットを用いて、プローブ溶液Wを50μl(所定量)毎各貯留孔3内に吐出して、貯留させる。この投入工程により、貯留孔3内では、粒子Pとプローブ溶液Wとが混ざった状態となる。ここで、粒子Pはプローブ溶液Wよりも密度が小さいので、プローブ溶液Wの上面に浮いた状態となる。特に、粒子Pは所定量以上投入されているので、プローブ溶液Wの上面を隙間なく覆った状態で浮く。よって、プローブ溶液Wと外気が触れる接触面積を抑えることができ、プローブ溶液Wの蒸発量を抑えることができる。その結果、プローブ溶液Wの蒸発を極力防止することができる。また、従来の方法とは異なり、水蒸気を用いていないので、該水蒸気の結露によりプローブ溶液Wが薄まる心配もない。従って、長時間貯留孔3内に貯留したとしても、プローブ溶液Wの経時的な濃度変化を防止することができる。
【0107】
なお、上記第3実施形態では、投入工程を行った後に、貯留工程を行ったが、この場合に限られず、例えば、各貯留孔3内にプローブ溶液Wを貯留させる貯留工程を先に行い、その後、粒子Pを投入する投入工程を行っても構わない。但し、プローブ溶液Wの蒸発をより効果的に抑えるには、先に投入工程を行うことが好ましい。
【0108】
次に、本発明に係る蒸発防止方法の第4実施形態を、図11及び図12を参照して説明する。なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第4実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態の蒸発防止方法は、粒子分配装置2を用いて機械的に粒子Pを各貯留孔3内に投入したが、第4実施形態の蒸発防止方法は、ドライアイスを利用して粒子Pを各貯留孔3内に投入する点である。
【0109】
即ち、本実施形態の蒸発防止方法は、マイクロプレート4に形成された複数の貯留孔3内にプローブ溶液Wを所定量吐出して、各貯留孔3内にそれぞれプローブ溶液Wを貯留させる貯留工程と、粒子Pを昇華材料である液化炭酸ガスに混合させた状態で固形化し、粒子入りドライアイス(固形物)Dを作製する作製工程と、貯留孔3の大きさに応じて粒子入りドライアイスDを小分けし、小分けした粒子入りドライアイスD’を各貯留孔3内に投入する投入工程とを備え、貯留工程又は投入工程のいずれか一方の工程を先に行うものである。なお、本実施形態においては、投入工程を先に行う例を示す。
【0110】
初めに、図11に示すように、上記作製工程を行って粒子入りドライアイスDを作製する。即ち、炭酸ガスを圧縮器で冷却して水分と不純物とを精製し、液化炭酸ガスを作製する。そして、この液化炭酸ガスに粒子Pを混入させると共に均一となるように分散させた後、さらに圧縮して粒子入りドライアイスDを作製する。
該作製工程後、貯留孔3の大きさに応じて大きさが均等になるように粒子P入りドライアイスDを切り分けて小分けにし、小分けした粒子入りドライアイスD’を各貯留孔3内に投入する。
なお、各貯留孔3の大きさは全て同じであるので、小分けした粒子P入りドライアイスD’は均等な大きさとなっている。
【0111】
そして、投入工程後、図示しないピペットを用いて、プローブ溶液Wを50μl(所定量)毎各貯留孔3内に吐出して、貯留させる。この貯留工程により、図12に示すように、小分けされた粒子入りドライアイスD’が気化し始め、該ドライアイスD’に混入された粒子Pが溶液に混ざり始める。ここで、粒子Pはプローブ溶液Wよりも密度が小さいので、プローブ溶液Wの上面に浮いた状態となる。特に、粒子Pは所定量以上投入されているので、プローブ溶液Wの上面を隙間なく覆った状態で浮く。よって、プローブ溶液Wと外気が触れる接触面積を抑えることができ、プローブ溶液Wの蒸発量を抑えることができる。その結果、プローブ溶液Wの蒸発を極力防止することができる。また、従来の方法とは異なり、水蒸気を用いていないので、該水蒸気の結露によりプローブ溶液Wが薄まる心配もない。従って、長時間貯留孔3内に貯留したとしても、プローブ溶液Wの経時的な濃度変化を防止することができる。
【0112】
なお、上記第3実施形態では、投入工程を行った後に、貯留工程を行ったが、この場合に限られず、例えば、各貯留孔3内にプローブ溶液Wを貯留させる貯留工程を先に行い、その後、小分けされた粒子入りドライアイスD’を投入する投入工程を行っても構わない。但し、プローブ溶液Wの蒸発をより効果的に抑えるには、先に投入工程を行うことが好ましい。
【0113】
次に、本発明に係る蒸発防止方法の第5実施形態を、図13から図17を参照して説明する。なお、この第5実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第5実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態の蒸発防止方法は、粒子分配装置2を用いて機械的に粒子Pを各貯留孔3内に投入したが、第5実施形態の蒸発防止方法は、予め粒子Pが収容されているチップ40を利用して、該粒子Pをプローブ溶液Wと共に各貯留孔3内に投入する点である。
【0114】
即ち、本実施形態の蒸発防止方法は、容器41に予め貯留されているプローブ溶液Wを、粒子Pを予め所定量以上収容しているチップ(吸引吐出部)40内に吸引する吸引工程と、該吸引工程後、チップ40をいずれかの貯留孔3上に移動させて、該貯留孔3内に吸引したプローブ溶液Wを粒子Pと共に吐出する吐出工程とを備え、これら吸引工程及び吐出工程を、貯留孔3の数に応じて繰り返すものである。
ここで、上記チップ40は、図13から図15に示すように、ピペット42の先端に取り付けて使用されるものであって、先端には粒子Pの大きさより小さい開口である直径0.05mmの開口が複数形成されているポリエチレンフィルム(以下、穴開きフィルム43と称する)(多孔質のシート部材)が貼り付けられている。
【0115】
まず、図14に示すように、穴開きフィルム43が貼り付けられているチップ40内に、所定量以上の粒子Pを投入し、図13に示すように、該チップ40をピペット42に取り付ける。この際、上述したように、穴開きフィルム43の開口は粒子Pより径が小さいので、内部に収容されている粒子Pが外部に零れることはない。そして、チップ40の取り付け後、該チップ40を容器41内に差し込んで先端をプローブ溶液Wに浸漬させる。そして、図16に示すように、穴開きフィルム43を通して、各貯留孔3に貯留する量(例えば、50μl)だけプローブ溶液Wをチップ40内に吸引する。この際、粒子Pはプローブ溶液Wよりも密度が小さいので、プローブ溶液Wの上面に浮いた状態となる。
【0116】
上記吸引工程後、吐出工程を行う。即ち、図17に示すように、チップ40をマイクロプレート4のいずれか1つの貯留孔3上に位置させた状態で、穴開きフィルム43を取り除く。これにより、チップ40内に吸引したプローブ溶液Wを粒子Pと共に貯留孔3内に吐出することができる。また、穴開きフィルム43を利用しているので、吸引時には、粒子Pの零れを防止しながらプローブ溶液Wの吸引を確実に行え、吐出時には、プローブ溶液W及び粒子Pの両方を確実に吐出することができる。
【0117】
また、吐出工程の際に、再度溶液と粒子Pとが混ざったとしても、再び粒子Pはプローブ溶液Wの上面に浮いた状態となる。特に、粒子Pは予めチップ40内に所定量以上投入されているので、プローブ溶液Wの上面を隙間なく覆った状態で浮く。よって、プローブ溶液Wと外気とが触れる接触面積を抑えることができ、プローブ溶液Wの蒸発量を抑えることができる。その結果、プローブ溶液Wの蒸発を極力防止することができる。また、従来の方法とは異なり、水蒸気を用いていないので、該水蒸気の結露によりプローブ溶液Wが薄まる心配もない。従って、長時間貯留孔3内に貯留したとしても、プローブ溶液Wの経時的な濃度変化を防止することができる。
【0118】
そして、使用したチップ40を新たな粒子P入りのチップ40に交換してピペット42に取り付けた後、再度上記吸引工程及び吐出工程を繰り返して、次の貯留孔3内にプローブ溶液W及び粒子Pを投入する。これを貯留孔3の数だけ繰り返すことで、全ての貯留孔3内にプローブ溶液W及び粒子Pを入れることができる。
【0119】
次に、本発明に係る蒸発防止方法の第6実施形態を、図18から図21を参照して説明する。なお、この第6実施形態においては、第5実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第6実施形態と第5実施形態との異なる点は、第5実施形態の蒸発防止方法は、チップ40の先端に取り付けられた穴開きフィルム43を利用することで、粒子Pをプローブ溶液Wと共に各貯留孔3内に投入したが、第6実施形態の蒸発防止方法は、穴開きフィルム43を用いずに予めチップ50内に収容されている粒子Pをプローブ溶液Wと共に各貯留孔3内に投入する点である。
【0120】
即ち、本実施形態のチップ50は、図18に示すように、先端が粒子Pの大きさより小さい径、即ち、直径0.05mmの径となるように先細りのテーパ形状に形成されている。これにより、チップ50内に予め収容された粒子Pは先端から外部に零れてしまうことはない。
そして、図19に示すように、吸引工程を行って、容器41からプローブ溶液Wをチップ50内に吸引する。この際、粒子Pはプローブ溶液Wよりも密度が小さいので、プローブ溶液Wの上面に浮いた状態となっている。
【0121】
次いで、上記吸引工程後、吐出工程を行う。ここで、本実施形態の吐出工程は、粒子Pが通過する内径となる位置でチップ50を切断した後、プローブ溶液W及び粒子Pを吐出させる。つまり、図20及び図21に示すように、チップ50をマイクロプレート4のいずれか1つの貯留孔3上に位置させた状態で、カッター等によりチップ50を切断する。これにより、チップ50内に吸引したプローブ溶液Wを粒子Pと共に貯留孔3内に吐出することができる。
このように、チップ50を切断することで、吸引時には、粒子Pの零れを防止しながらプローブ溶液Wの吸引を確実に行え、吐出時には、プローブ溶液W及び粒子Pの両方を確実に吐出することができる。
【0122】
また、吐出工程の際に、再度溶液と粒子Pとが混ざったとしても、再び粒子Pはプローブ溶液Wの上面に浮いた状態となる。特に、粒子Pは予めチップ50内に所定量以上投入されているので、プローブ溶液Wの上面を隙間なく覆った状態で浮く。よって、プローブ溶液Wと外気とが触れる接触面積を抑えることができ、プローブ溶液Wの蒸発量を抑えることができる。その結果、プローブ溶液Wの蒸発を極力防止することができる。また、従来の方法とは異なり、水蒸気を用いていないので、該水蒸気の結露によりプローブ溶液Wが薄まる心配もない。従って、長時間貯留孔3内に貯留したとしても、プローブ溶液Wの経時的な濃度変化を防止することができる。
【0123】
そして、使用した切断済みのチップ50を新たなチップ50に交換してピペット42に取り付けた後、再度上記吸引工程及び吐出工程を繰り返して、次の貯留孔3内にプローブ溶液W及び粒子Pを投入する。これを貯留孔3の数だけ繰り返すことで、全ての貯留孔3内にプローブ溶液W及び粒子Pを入れることができる。
【0124】
〔第1実施例〕
次に、上記第1実施形態の方法に基づいて、実際にマイクロアレイを作製した第1実施例について説明する。
なお、96穴マイクロプレート4は、Mjresearch社製のものを使用した。また、粒子Pは、綜研化学、MRシリーズを使用した。また、スポッター6は、針により液体を吸引するタイプである日立ソフトウエア社製SPBIOを使用した。
【0125】
まず、第1実施形態の粒子分配装置2及び蒸発防止方法により、マイクロプレート4の貯留孔3に粒子P及びプローブ溶液Wを貯留した。そして、このマイクロプレート4をスポッター6に搭載すると共に、ステージ上に基板5を20枚搭載した。次いで、プローブ溶液Wをピックアップして基板5にスポットを行うプログラムを設定した後、マイクロアレイの作製を開始した。
初めに、スポッター6に搭載された4本の針6aを貯留孔3の上方に移動させた後、真上から下降して、粒子Pを押し退けて貯留孔3内のプローブ溶液Wに浸漬した。そして、4本の針6aでプローブ溶液Wのみをピックアップした後、貯留孔3の上方に移動させた。この際、押し退けられた粒子Pは、再度プローブ溶液Wの上面全体を覆うように移動したことが確認できた。
【0126】
次いで、4本の針6aを基板5に移動させてプローブ溶液Wを基板5にスポットした後、洗浄槽へ移動させて針6aの洗浄を行った。その後、エアドライヤーで乾燥された針6aを、再び貯留孔3上方に移動させてプローブ溶液Wのピックアップを行うと共に、基板5へのスポットを行った。これを全ての基板5に対して、全ての貯留孔3に貯留されているプローブ溶液Wをスポットするまで繰り返し行った。
全てのプローブ溶液Wのスポットが終了した後、スポッター6に搭載された全ての基板5を回収し、20枚の基板5を、プローブ溶液Wと相補的に反応する蛍光色素が標識されたカウンターオリゴによりハイブリダイズさせて、解析装置(パーキンエルマーライフサイエンス社製;Scan Array)で輝度の測定を行った。その結果、スポットの輝度のCV値は5%以下であり、後半に輝度が高くなる傾向では無かったことが確認できた。
【0127】
〔第2実施例〕
次に、上記第1実施例と同様に、第1実施形態による粒子分配装置2及び蒸発防止方法によって、貯留孔3に粒子P及びプローブ溶液Wを貯留したマイクロプレート4を、ノズルにより液体を吸引するタイプであるインクジェット式スポッター(パーキンエルマーライフサイエンス社製:Biochip arrayer)に搭載してマイクロアレイを実際に作製した第2実施例について説明する。なお、マイクロプレート4及び粒子Pは、第1実施例と同じものを使用した。
まず、マイクロプレート4を上記スポッターに搭載すると共に、ステージ上に基板5を20枚搭載した。次いで、プローブ溶液Wをピックアップして基板5にスポットを行うプログラムを設定した後、マイクロアレイの作製を開始した。
【0128】
初めに、スポッターに搭載された4本のノズルを貯留孔3の上方に移動させた後、真上から下降して、粒子Pを押し退けて貯留孔3内のプローブ溶液Wに浸漬した。そして、4本のノズルでプローブ溶液Wのみをピックアップした後、貯留孔3の上方に移動させた。この際、押し退けられた粒子Pは、再度プローブ溶液Wの上面全体を覆うように移動したことが確認できた。
4本のノズルによりインクジェット方式で微小なプローブ溶液Wを全ての基板5に吐出し、終了後、洗浄槽に移動させてコンタミを防止するために吸引したプローブ溶液Wを後方から水で押し出し、超音波洗浄を行った。その後、再びマイクロプレート4上方に移動させてプローブ溶液Wの吸引及び基板5への吐出を、全てのプローブ溶液Wを吐出し終えるまで繰り返し行った。
【0129】
全てのプローブ溶液Wの吐出が終了した後、全ての基板5を回収して、20枚の基板5を、プローブ溶液Wと相補的に反応する蛍光色素が標識されたカウンターオリゴでハイブリダイズさせて、解析装置(パーキンエルマーライフサイエンス社製;Scan Array)で輝度の測定を行った。その結果、図22に示すように、スポットの輝度のCV値は5%以下であり、後半に輝度が高くなる傾向では無かったことが確認できた。
【0130】
ここで、上記第2実施例と比較を行うために、貯留孔3内に粒子Pを投入しないで、単にプローブ溶液Wのみを分注した同じ種類のマイクロプレートを用いて、マイクロアレイを作製し、カウンターオリゴでハイブリダイズさせて解析を行った結果を、図23に示す。
この図23に示すように、輝度のCV値は10%以上であり、プローブ溶液Wの蒸発により、該プローブ溶液Wの濃度が濃くなってしまい後半になると輝度が徐々に高くなることが確認できた。
【0131】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0132】
例えば、上記各実施形態では、特異的結合物質を含むプローブ溶液を用いたが、これに限定されるものではない。また、容器として、96穴マイクロプレートを用いたが、これに限定されるものではない。
また、貯留部が複数形成された容器を用いた場合を説明したが、貯留部が1つの容器に粒子を投入する場合でも、同様の作用効果を奏することができる。
また、粒子分配装置の各構成品を、導電性材料により形成しても構わない。この場合には、静電気の影響による粒子の付着を防止できるので、確実に貯留孔内に粒子を投入することができる。特に、導電性材料として、ステンレスを採用した場合には、加工性も優れているので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明に係る粒子分配装置及び分注装置の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す粒子分配装置を、マイクロプレート上にセットすると共に蓋部材を閉塞状態にして、粒子分配部材の各貫通孔内に粒子を投入した状態を示す断面図である。
【図3】図2に示す状態から、蓋部材をスライドさせて連通状態にし、各貯留孔内に粒子を投入した状態を示す断面図である。
【図4】図3に示す状態から、粒子分配部材及び蓋部材を取り外した後、各貯留孔内にプローブ溶液を貯留させた状態を示す断面図である。
【図5】本発明に係る粒子分配装置及び蒸発防止方法の第2実施形態を示す図であって、シールにより一方の開口が塞がった粒子分配部材の各貫通孔に粒子を投入した状態を示す断面図である。
【図6】図5に示す状態から、治具を粒子分配部材に重ね合わせ、貫通孔を通して針部によりシールを破断させる直前の状態を示す断面図である。
【図7】図6に示す状態から、針部によりシールを破断させて、粒子を各貯留孔内に投入した状態を示す図である。
【図8】本発明に係る粒子分配装置及び蒸発防止方法の第3実施形態を示す図であって、粒子が収容された箱体の上方に、複数の凹部が形成された粒子分配部材を位置させた状態を示す断面図である。
【図9】図8に示す状態から、粒子分配部材を箱体に下降させて凹部と粒子とを接触させ、バキュームポンプにより各凹部内に粒子を吸引した状態を示す断面図である。
【図10】図9に示す状態から、粒子分配部材をマイクロプレートに移動させ、バキュームポンプにより圧力を開放して、各凹部内の粒子を各貯留孔内に投入した状態を示す断面図である。
【図11】本発明に係る蒸発防止方法の第4実施形態を示す図であって、粒子入りドライアイスを貯留孔の数に応じて小分けし、小分けした粒子入りドライアイスを各貯留孔内に投入した状態を示す断面図である。
【図12】図11に示す状態から、各貯留孔内にプローブ溶液を貯留させて、小分けされた粒子入りドライアイスを気化させた状態を示す断面図である。
【図13】本発明に係る蒸発防止方法の第5実施形態を示す図であって、内部に予め粒子が収容され、先端に穴開きフィルタが貼り付いたチップをピペットの先端に取り付けた状態を示す側面図である。
【図14】図13に示すチップの断面図である。
【図15】図14に示すチップの先端に貼り付けられた穴開きフィルタの上面図である。
【図16】図13に示すチップの先端をプローブ溶液に浸漬させ、穴開きフィルタを通してチップ内にプローブ溶液を吸引した状態を示す断面図である。
【図17】図16に示す状態からチップを貯留孔上に移動させた後、穴開きフィルタを取り外し、吸引されたプローブ溶液と共に粒子を貯留孔内に投入する直前の状態を示す断面図である。
【図18】本発明に係る蒸発防止方法の第6実施形態を示す図であって、内部に予め粒子が収容され、先端が粒子の大きさより小さい開口に形成されているテーパー状のチップの断面図である。
【図19】図18に示すチップ内にプローブ溶液を吸引している状態を示す断面図である。
【図20】図19に示す状態から、粒子の大きさより大きな径となる位置で、チップを切断した状態を示す断面図である。
【図21】図20に示す状態からチップを貯留孔上に移動させた、吸引されたプローブ溶液と共に粒子を貯留孔内に投入する直前の状態を示す断面図である。
【図22】第1実施形態の粒子分配装置及び分注装置を用いて、実際にマイクロアレイを作製し、カウンターオリゴでハイブリダイズさせた後、解析装置で輝度の測定を行った実際の結果を示す“輝度とスポット時間との関係”を示すグラフである。
【図23】図22と比較するための図であって、単にプローブ溶液だけを貯留させたマイクロプレートを用いて実際にマイクロアレイを作製し、カウンターオリゴでハイブリダイズさせた後、解析装置で輝度の測定を行った実際の結果を示す“輝度とスポット時間との関係”を示すグラフである。
【符号の説明】
【0134】
D 粒子入りドライアイス(固形物)
D’ 小分けされた粒子入りドライアイス
P 粒子
W プローブ溶液(溶液)
1 分注装置
2、20、30 粒子分配装置
3 貯留孔(貯留部)
4 マイクロプレート(容器)
6 スポッター(分注手段)
6a ノズル又は針
10 粒子分配部材(第1部材)
10a 貫通孔
11 蓋部材(第2部材)
11a 流路
21 シール(シート部材)
22 治具(第2部材)
22a 針部
31 バキュームポンプ(圧力可変手段)
32 箱体(収容部)
33 粒子分配部材(第2部材)
35 管路
34 凹部
40、50 チップ(吸引吐出部)
43 穴開きフィルム(多孔質のシート部材)






【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に溶液を貯留可能な貯留部が形成された容器の前記貯留部に、溶液よりも密度が小さい粒子をそれぞれ少なくとも所定量以上投入する粒子分配装置であって、
前記容器の上方に配され、前記粒子を投入可能な貫通孔が形成された第1部材と、
該第1部材と前記容器との間に、該第1部材に対して相対的に移動可能に配され、前記貫通孔と前記貯留部とを連通する流路が形成された第2部材とを備え、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記容器に対して着脱自在に固定され、
前記第2部材は、相対的な移動に伴って、前記貫通孔及び前記貯留部をそれぞれ塞く閉塞状態と、該閉塞を解いて前記流路を介して貫通孔と貯留部とを連通させる連通状態とが切り替わることを特徴とする粒子分配装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子分配装置において、
前記貫通孔及び前記流路は、内部容積が均等になるようにそれぞれ複数形成され、前記連通状態のときに複数の流路のそれぞれが各貫通孔と前記貯留部とを連通させることを特徴とする粒子分配装置。
【請求項3】
内部に溶液を貯留可能な貯留部が形成された容器の前記貯留部に、溶液よりも密度が小さい粒子をそれぞれ少なくとも所定量以上投入する粒子分配装置であって、
前記容器の上方に配され、前記粒子を投入可能な貫通孔が形成された第1部材と、
該第1部材と前記容器との間に配され、前記貯留部を塞ぐシート部材と、
前記第1部材の上方で前記容器に対して接近離間する方向に向けて移動可能に配され、該移動に伴って前記貫通孔を通して前記シート部材を破断する針部が下面に形成された第2部材とを備え、
少なくとも前記第1部材は、前記容器に着脱自在に固定されることを特徴とする粒子分配装置。
【請求項4】
請求項3に記載の粒子分配装置において、
前記貫通孔は、内部容積が均等になるように複数形成されていることを特徴とする粒子分配装置。
【請求項5】
内部に溶液を貯留可能な貯留部が形成された容器の前記貯留部に、溶液よりも密度が小さい粒子をそれぞれ少なくとも所定量以上投入する粒子分配装置であって、
前記粒子を収容する収容部と、
該収容部と前記容器との間を移動可能に配された第2部材と、前記貯留部に対して対向配置されるよう前記第2部材の下面に形成された凹部と、該凹部に接続された管路と、該管路を介して前記凹部内に引圧を発生させて前記粒子を内部に吸引すると共に該吸引を解いて粒子を外部に放出させる圧力可変手段とを備え、
前記圧力可変手段は、前記第2部材が前記収容部に位置しているときに前記吸引を開始し、前記第2部材が前記容器に位置しているときに前記放出を行うことを特徴とする粒子分配装置。
【請求項6】
請求項5に記載の粒子分配装置において、
前記凹部は、内部容積が均等になるように複数形成されていることを特徴とする粒子分配装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の粒子分配装置において、
前記第2部材は、導電性材料により形成されていることを特徴とする粒子分配装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の粒子分配装置と、
内部に前記溶液を貯留可能な貯留部が形成された容器と、
前記貯留部内に前記粒子と共に貯留された前記溶液のうち、該溶液のみを吸引して基板上の所定位置に吐出する分注手段とを備えていることを特徴とする分注装置。
【請求項9】
請求項8に記載の分注装置において、
前記容器は、前記貯留部が複数形成されたマイクロプレートであることを特徴とする分注装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の分注装置において、
前記分注手段が、ノズル又は針を備えていることを特徴とする分注装置。
【請求項11】
容器に形成された貯留部内に溶液を所定量吐出して、該貯留部内に溶液を貯留させる貯留工程と、
前記貯留部内に、前記溶液よりも密度が小さい粒子を少なくとも所定量以上投入する投入工程とを備え、
前記貯留工程又は前記投入工程のいずれか一方の工程を先に行うことを特徴とする蒸発防止方法。
【請求項12】
容器に形成された貯留部内に溶液を所定量吐出して、該貯留部内に溶液を貯留させる貯留工程と、
前記溶液よりも密度が小さい粒子を昇華材料に混合させた状態で固形化して固形物を作製する作製工程と、
前記貯留部の大きさに応じて前記固形物を小分けし、小分けした固形物を貯留部内に投入する投入工程とを備え、
前記貯留工程又は前記投入工程のいずれか一方の工程を先に行うことを特徴とする蒸発防止方法。
【請求項13】
保管部に予め貯留されている溶液を、該溶液よりも密度が小さい粒子を予め所定量以上収容している吸引吐出部内に吸引する吸引工程と、
該吸引工程後、前記吸引吐出部を容器に形成された貯留部に移動させて、該貯留部内に吸引した前記溶液を前記粒子と共に吐出する吐出工程とを備えていることを特徴とする蒸発防止方法。
【請求項14】
請求項13に記載の蒸発防止方法において、
前記吸引工程は、前記粒子の大きさより小さい開口が形成された多孔質のシート部材を通して前記吸引吐出部内に前記溶液を吸引し、
前記吐出工程は、前記シート部材を取り除いた後に、前記溶液及び前記粒子を共に吐出することを特徴とする蒸発防止方法。
【請求項15】
請求項13に記載の蒸発防止方法において、
前記吸引吐出部は、先端が前記粒子の大きさより径が小さくなるよう先細りのテーパー形状に形成されており、
前記吐出工程は、前記粒子が通過する内径となる位置で前記吸引吐出部を切断した後、前記溶液及び前記粒子を共に吐出することを特徴とする蒸発防止方法。
【請求項16】
請求項11から15のいずれか1項に記載の蒸発防止方法において、
前記粒子として、材質が樹脂又は中空金属である粒子を用いることを特徴とする蒸発防止方法。
【請求項17】
請求項16に記載の蒸発防止方法において、
前記樹脂は、ポリスチレン又は架橋アクリルであることを特徴とする蒸発防止方法。
【請求項18】
請求項11から17のいずれか1項に記載の蒸発防止方法により、前記貯留部内に粒子と共に貯留された前記溶液のうち、該溶液のみを分注手段により吸引すると共に所定位置に分注する分注工程を備えていることを特徴とする分注方法。
【請求項19】
請求項18に記載の分注方法において、
前記粒子として、球状に形成された粒子を用いることを特徴とする分注方法。
【請求項20】
請求項19に記載の分注方法において、
前記粒子は、直径が前記貯留部の直径の1/6以下であり、且つ、前記分注手段の内径の1.5倍以上の範囲内にあることを特徴とする分注方法。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の分注方法において、
前記粒子は、直径が0.075mm〜1mmの範囲内であることを特徴とする分注方法。
【請求項22】
請求項18から21のいずれか1項に記載の分注方法において、
前記溶液として、特異的結合物質を含む溶液を用いることを特徴とする分注方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−17252(P2007−17252A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198475(P2005−198475)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】