説明

粒子状吸水剤の製造方法および粒子状吸水剤

【課題】優れた液拡散性、通液性と、残存モノマー含有量低減とを両立させた吸水性樹脂を得るための製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法は、不飽和単量体水溶液を重合する重合工程を少なくとも経て得られる吸水性樹脂粒子を有機架橋剤の存在下で表面架橋する表面架橋工程を含む粒子状吸水剤の製造方法であって、上記重合工程以降の工程で、反応系に過酸化物を混合するものである。これにより、液拡散性、通液性に優れ、残存モノマー含有量が少ない粒子状吸水剤、すなわち、高機能で安全性の高い粒子状吸水剤を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつや生理ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料などに好適に用いられる粒子状吸水剤の製造方法および粒子状吸水剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生材料には、体液を吸収させることを目的として、パルプ等の親水性繊維と吸水性樹脂とをその構成材料とする吸収体が幅広く利用されている。
【0003】
近年、これら衛生材料は、優れた液拡散性および通液性、すなわち高機能を有するとともに、フィット性の向上や吸水性能の向上のため薄型であることが求められるようになってきている。
【0004】
これまで、衛生材料の高機能化と薄型化を両立するため、かさ比重の小さい親水性繊維を少なくし、吸水性に優れ且つかさ比重の大きい吸水性樹脂を多く使用することにより、衛生材料中の吸水性樹脂の濃度を増加させる方法がとられている。しかしながら、それにつれて、吸水性樹脂中に含まれる残存モノマー等に由来する肌への影響(肌荒れ)が顕著となるという問題が生じる。したがって、衛生材料の高機能化と薄型化を両立するためには、吸水性樹脂の液拡散性および通液性の向上と、残存モノマー含有量の低減とを同時に実現する必要がある。
【0005】
これまでに、吸水性樹脂の液拡散性および通液性の向上を図る方法としては、例えば、水溶性過酸化物ラジカル開始剤をベースポリマーに含浸させ、加熱することにより吸水性樹脂の内部を軟質ゲル、外部を硬質ゲルで構成し、吸水速度、吸水能、保水性のバランスの取れた製品とする方法や(特許文献1)、水溶液状態のカチオンの存在下で吸水性樹脂をポリオールの水溶液でコーティングすることにより、保持能力、透過性に優れた吸水性樹脂を得る方法(特許文献2)等が開示されている。
【0006】
また、残存モノマー含有量を低減する方法としては、吸水性樹脂に、吸水性樹脂中の残存モノマーと反応しうる還元性物質を添加し、所定の含水率の吸水性樹脂を得て、当該樹脂の含水率の変化を所定の範囲以下に保ちながら所定の温度で加熱する方法(特許文献3)、水の存在下、硫黄原子含有還元性物質を添加し、次いで酸化性物質を添加した後、加熱する方法(特許文献4)、架橋したヒドロゲルに過硫酸塩を添加して乾燥する方法(特許文献5)等が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記従来技術に開示された技術は、前記のように、吸水性樹脂の液拡散性および通液性の向上と、残存モノマー含有量の低減とを同時に実現できるものではなく、オムツ等の衛生材料で実使用された場合の物性や安全性は未だ不十分なものである。
【0008】
すなわち、残存モノマーの少ない吸水性樹脂は知られていても、オムツ等の衛生材料で実使用された場合に安全性が高く、かつ高機能な吸水性樹脂は得られていない。そのため、安全性が高く、かつ高機能な衛生材料は今のところ得られていない。
【0009】
従来、残存モノマーの少ない吸水性樹脂は、米国特許第4929717号、米国特許第490202号、米国特許第5116011号、米国特許第5250640号、米国特許第5210298号、米国特許第5338810号、米国特許第5229488号、米国特許第5866678号(特許文献3)、米国特許第6207796号、米国特許第6552141号、米国特許第7030199号、欧州特許第0505163号等で知られていたが、一般に残存モノマーを低減するための工程は、コストアップの原因となるのみならず、吸水性樹脂の物性を低下させる傾向にあり、物性の向上と残存モノマー含有量の低減とは両立し難いものであった。
【0010】
また、残存モノマーを低減させる方法の中でも、例えば亜硫酸(水素)塩などの、残存モノマーと反応する水溶性化合物を添加剤として吸水性樹脂に添加する技術(例えば特許文献3に記載された方法)が広く知られているが、通常、上記添加剤は水溶液として添加されるため、乾燥が必要であったり、残存モノマーの低減に伴って吸水性樹脂の含水率が向上(固形分が低下)するという問題もあった。
【0011】
さらに、近年、より高物性の吸水性樹脂が求められるようになり、遠心分離機保持容量(CRC)や圧力に対する吸収力(AAP)の向上のみならず、例えば
食塩水流れ誘導性(SFC。SFCについては、例えばUS5669894号、US6849665B1号、US6620889B1号、US6605673B1号を参照)に代表される荷重下通液性については、従来1(×10−7・cm・s・g−1)〜10×(10−7・cm・s・g−1)程度であったSFCを数倍、数十倍にまで向上させることを求められることすらあった。
【0012】
これらの物性の向上(特にSFCの向上)を図るための手段としては、吸水性樹脂の表面架橋密度を強めることが挙げられるが、長時間の表面架橋や高温での表面架橋では、原料アクリル酸の不純物であるアクリル酸オリゴマー(米国特許公開2006−0036043号)や、β−ヒドロキシプロピオン酸(米国特許第6388000号、米国特許第6998447号、米国特許第7078458号)のアクリル酸への熱分解が促進されるため、残存モノマー(残存アクリル酸)が増加する。このように、物性の向上(特にSFCの向上)を図ると、残存モノマー(残存アクリル酸)が増加するという問題があった。
【0013】
すなわち、従来、高物性(特に高SFC)と低残存モノマーとを両立させることは困難であった。また、特許文献3〜5に記載された残存モノマー低減法によっては、残存モノマーの低減に伴って、吸水性樹脂の含水率が向上してしまうという問題もあった。
【0014】
また、加熱以外の表面架橋方法としては、吸水性樹脂と水溶性ラジカル重合開始剤とを混合し、活性エネルギー線を照射して表面架橋を行う方法(特許文献6)が知られているが、当該方法では、水溶性ラジカル重合開始剤の使用量が非常に多く必要であり、不経済であるばかりか、得られた吸水性樹脂が褐色ないし黄色に着色するおそれがあるため好ましくない。
【0015】
また、当該方法では、水溶性ラジカル重合開始剤と共に用いる水の使用量も非常に多く、さらに当該方法では、加熱を必要としないため、得られた吸水性樹脂の含水率が高く保たれるが、その結果、得られた吸水性樹脂における単位重量あたりの吸収量は低下するため、吸水性樹脂含有量の高い衛生材料には適さないおそれがある。また、SFCなどの他の特性も十分なものではなかった。
【0016】
また、上述のように、従来、残存モノマーの少ない吸水性樹脂は知られていたが、残存モノマーの量は、吸水性樹脂を大過剰(数100倍〜数1000倍)の水に分散させて残存モノマーを抽出し、吸水性樹脂全体に含まれる残存モノマー量を測定することによって評価されていた。しかしながら、例えばオムツ等の衛生材料において実際に使用されている形態(実使用形態)の吸水性樹脂は、大過剰の水に分散する訳ではなく、実質的にフリーの尿は存在しない乾燥した状態であるため、上記大過剰の水を用いる測定法で求めた残存モノマー量は、実使用形態の吸水性樹脂に存在する残存モノマー量とは相関しないことが見出された。
【0017】
すなわち、従来の測定法で求めた残存モノマーは、オムツ等の衛生材料中に染み出す残存モノマーを表現するものではなく、また、オムツかぶれや安全性の指標にもならないことが見出された。特に、近年、吸収量増や薄型化のため、オムツ等の衛生材料での吸水性樹脂の使用量が増加する傾向にあり、当該使用量は吸収層の50重量%以上、特に70重量%以上を占めるものもある。したがって、物性の向上を図りつつ、残存モノマーを低減することの重要性は極めて大きい。
【0018】
そこで、本発明者は、残存モノマーの低減はコストアップにつながるという問題点、含水率の低減と残存モノマーの低減との両立が困難であるという問題点、高物性(特に高SFC)と低残存モノマーの両立が困難であるという問題点、などの従来の問題点に加えて、実使用形態における残存モノマー量が少ない吸水性樹脂の提供という新たな課題に取り組んだ。
【0019】
その結果、表面残存モノマー率という新規なパラメータが、オムツ等の衛生材料での実使用形態における吸水性樹脂の残存モノマー量を忠実に表現できることを見出した。また、表面残存モノマー率を一定範囲以下の値となるように制御した上で、残存モノマー量低減とは相反する傾向にある物性(特にSFC)を一定以上に高めた吸水性樹脂を用いることによって、初めて高物性と残存モノマー低減とを両立可能な衛生材料を得ることができることを見出し、本発明に係る新規な粒子状吸水剤を完成した。
【特許文献1】US4783510号公報
【特許文献2】US6605673B1号公報
【特許文献3】US5866678号公報
【特許文献4】特許第3279401号公報
【特許文献5】US6914099B2号公報
【特許文献6】WO2006/062258A2号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた液拡散性、通液性と、残存モノマー含有量低減とを両立させた粒子状吸水剤を得るための製造方法および粒子状吸水剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、粒子状吸水剤の製造工程において過酸化物と有機架橋剤とを用いて架橋反応を行うことによって、粒子状吸水剤の液拡散性、通液性の向上と、残存モノマー含有量の低減とを同時に実現できることを見出し、特に、表面架橋工程において過酸化物と有機架橋剤とを含む水溶液を吸水性樹脂粒子に添加することによって最も大きな効果が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0022】
すなわち、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法は、不飽和単量体水溶液を重合する重合工程を少なくとも経て得られる吸水性樹脂粒子を、カルボキシル基と反応しうる有機架橋剤の存在下で表面架橋する表面架橋工程を含む粒子状吸水剤の製造方法であって、上記表面架橋工程においては紫外線以下の波長を有する活性エネルギー線を上記製造方法の反応系に照射せず、かつ、上記表面架橋工程が、過酸化物、上記有機架橋剤、および水の存在下において行われることを特徴としている。
【0023】
上記構成によれば、重合工程以降、表面架橋工程終了までに反応系に添加された過酸化物、または、重合工程において反応系に添加され、重合工程終了後も反応系に残存している過酸化物が、有機架橋剤とともに吸水性樹脂粒子の表面近傍で架橋反応を引き起こすため、従来よりも強固な表面架橋層が形成され、ゲル強度が向上すると考えられる。その結果、吸水性樹脂の液拡散性、通液性を向上させることができると考えられる。
【0024】
また、上記過酸化物が加熱されることによって生じる過酸化物ラジカルが吸水性樹脂中の残存モノマーと反応することで残存モノマー含有量を低減させることができる。通常、吸水性樹脂の製造方法のうち、粒子状の含水ゲルを乾燥する工程においては、加熱による粒子外部への水分の移動とともに残存モノマーも粒子表面近傍に移動するためか、あるいは含水ゲルの表面では乾燥速度が速く、すぐに含水率が低くなるため残存モノマーと残存過酸化物との反応性が低下するなどと推定されるように、乾燥して得られた粒子状吸水性樹脂の表面近傍には特に残存モノマーが多く存在していることが見出された。
【0025】
そのため、特に表面架橋工程において過酸化物と有機架橋剤とを用いる方法において最も大きな残存モノマー低減効果が得られると考えられる。その結果、高機能であり、かつ、安全性の高い粒子状吸水剤を提供することができるものと考えられる。
【0026】
また、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法では、上記重合工程以降の工程で、乾燥工程終了後に上記反応系に過酸化物を混合することが好ましい。乾燥して得られた粒子状吸水性樹脂の表面近傍には特に残存モノマーが多く存在しているため、乾燥工程終了後に反応系に過酸化物を混合することにより、過酸化物と残存モノマーとの反応を効率的に行うことができると考えられる。その結果、より大きな残存モノマー低減効果を得ることができるものと考えられる。
【0027】
また、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法では、上記表面架橋工程が過酸化物、有機架橋剤および水の存在下において行われることが好ましい。上記構成によれば、水により、過酸化物と吸水性樹脂粒子との混合および、表面架橋剤と吸水性樹脂粒子との混合が行われやすくなり、その結果、過酸化物と表面架橋剤との併用による表面架橋反応が確実に行われると考えられる。その結果、より確実に粒子状吸水剤の液拡散性、通液性向上、残存モノマー含有量低減を実現することができるものと考えられる。
【0028】
また、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法では、上記表面架橋工程において、過酸化物と有機架橋剤とを含む水溶液を反応系に添加することが好ましい。上記構成によれば、過酸化物と有機架橋剤とを含む水溶液が表面架橋剤として用いられ、過酸化物と有機架橋剤とが同時に表面架橋剤として作用するので、従来よりも強固な表面架橋層が形成され、ゲル強度が向上すると考えられる。過酸化物としては無機過酸化物がより好ましく用いられる。
【0029】
また、特に、過酸化物が例えば過硫酸塩のような塩を有するものである場合は、有機架橋剤のみを表面架橋剤として用いる場合よりも表面架橋剤の塩濃度を向上させることができるので、吸水性樹脂粒子内部への表面架橋剤の浸透を抑えることができる。そのため、過酸化物並びに有機架橋剤による架橋が吸水性樹脂のより表面近傍で集中的になされ、さらに強固な表面架橋層が形成されると考えられるため好ましい。
【0030】
また、表面架橋剤の吸水性樹脂内部への浸透が抑えられていることから、各粒子へより均一に表面架橋剤が行き渡ることによる物性向上効果も考えられる。製造面においても、このような表面架橋剤を用いると、表面架橋剤を吸水性樹脂に混合した際の混合性に優れ、表面架橋工程での加熱処理時に通常発生するダマの形成が抑制されることなどの効果も見られる。
【0031】
なお、上記「ダマ」とは、局所的に表面架橋剤を多く含む吸水性樹脂を加熱することによって形成される粒子の凝集体をいい、吸水性樹脂への表面架橋剤の混合性が不十分である場合に通常発生する。このようなダマが形成された状態で加熱処理をした場合には、ダマの内部にある粒子表面には熱が十分に伝わらず、架橋反応が十分に進行しないため、その後の輸送等の製造工程でダマの凝集が崩れた場合には、吸水性樹脂は、架橋が不十分な粒子を含むことになる。そのため、ダマの存在は、結果として物性の低下を招くと考えられる。
【0032】
また、上記過酸化物が加熱されることによって生じる過酸化物ラジカルが吸水性樹脂中の残存モノマーと反応することで残存モノマー含有量を低減させることができる。上述のように、乾燥して得られた粒子状吸水性樹脂の表面近傍には特に残存モノマーが多く存在しているため、特に表面架橋工程において過酸化物と有機架橋剤とを用いると最も大きな残存モノマー低減効果が得られるものと考えられる。
【0033】
その結果、上記方法によれば、粒子状吸水剤の液拡散性、通液性を向上させることができ、残存モノマー含有量を低減させることができるものと考えられる。
【0034】
また、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法では、重合工程以降、表面架橋工程を行う前の反応系に過酸化物の水溶液を添加し、表面架橋工程において有機架橋剤の水溶液を反応系に添加してもよい。
【0035】
上記構成によれば、表面処理前に過酸化物の水溶液を添加するため、表面架橋工程において過酸化物と有機架橋剤とを含む水溶液を反応系に添加する方法と比べると、吸水性樹脂粒子の表面近傍における架橋の度合いは減少するが、従来の吸水性樹脂粒子よりも表面近傍における架橋の度合いは大きいと推定される。その結果、従来よりも粒子状吸水剤の液拡散性、通液性を向上させることができ、残存モノマー含有量を低減させることができるものと考えられる。
【0036】
また、上記表面架橋工程における加熱温度は150℃以上250℃以下であることが好ましい。上記構成によれば、加熱温度が表面架橋反応を行うために好適な範囲となるため、表面架橋反応を効率的に行うことができると考えられる。その結果、粒子状吸水剤の液拡散性、通液性向上、残存モノマー含有量低減をより効率的に行うことができるものと考えられる。
【0037】
また、上記有機架橋剤は脱水反応性架橋剤であることが好ましい。脱水反応性架橋剤は、吸水性樹脂粒子の酸基と反応し、脱水反応による表面架橋を行うことができるので、表面架橋剤として好適に用いることができる。
【0038】
上記過酸化物は過硫酸塩であることが好ましい。過硫酸塩は、過酸化物の中でも反応性が高く、安全性に優れるため、吸水性樹脂粒子のより表面近傍での架橋を安定的に行うことができる。したがって、本発明の目的である高機能であり、かつ、安全性の高い粒子状吸水剤の提供に寄与することができる。
【0039】
上記重合工程以降の工程においては、さらに水溶性多価金属塩を混合することが好ましい。水溶性多価金属塩は、吸水性樹脂粒子の通液性を高める効果を有する。したがって、より一層通液性の高い粒子状吸水剤を得ることができる。
【0040】
また、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法では、粒子状吸水剤の生理食塩水に対する遠心分離機保持容量(CRC)が25(g/g)以上であり、かつ、食塩水流れ誘導性(SFC)が40(×10−7・cm・s・g−1)以上であることが好ましい。本発明に係る製造方法によれば、通液性等に優れ、安全な粒子状吸水剤を得ることができるが、得られた粒子状吸水剤が有するCRCおよびSFCが上記範囲内であれば、非常に通液性が高いといえるので、より高機能な粒子状吸水剤を提供できることになる。
【0041】
本発明に係る粒子状吸水剤は、アクリル酸およびその塩から選ばれる単量体70モル%以上100モル%以下を繰り返し単位とする吸水性樹脂粒子をカルボキシル基と反応しうる有機架橋剤の存在下で表面架橋した粒子状吸水剤であって、下記(i)〜(iii)を満たす。
【0042】
(i) 下記の式1で算出される表面残存モノマー率が0%より大きく5%以下
表面残存モノマー率(%)=表面残存モノマー量(ppm)/残存モノマー量(ppm)×100・・・式1
(ii) 食塩水流れ誘導性(SFC)が40(×10−7・cm・s・g−1)以上
(iii)含水率が5%未満
係る粒子状吸水剤は、オムツ等の衛生材料での実使用、特に吸水性樹脂含有量の高い高濃度オムツでの実使用に相関した物性を有し、優れた液拡散性、通液性と、残存モノマー含有量低減とを両立させた高機能な粒子状吸水剤である。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法は、以上のように、重合工程以降の工程において、反応系に過酸化物を混合する構成を備えているため、吸水性樹脂粒子の表面近傍で架橋反応を行うことができると考えられる。それゆえ、液拡散性、通液性に優れ、かつ、安全性の高い粒子状吸水剤を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0045】
〔粒子状吸水剤の製造方法〕
一実施形態において、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法は、不飽和単量体水溶液を重合する重合工程を少なくとも経て得られる吸水性樹脂粒子を有機架橋剤の存在下で表面架橋する表面架橋工程を含む粒子状吸水剤の製造方法であって、上記重合工程以降の工程で、反応系に過酸化物を混合するものである。
【0046】
本明細書で用いる「吸水性樹脂粒子」とは、含水ゲル状架橋重合体ないしその乾燥物の粒子であって、少なくとも生理食塩水(0.90質量%NaCl水溶液)の吸収倍率が10倍以上である、(球形あるいは不定形またはそれらの造粒物などの)粒子形状のものである。吸水性樹脂粒子の水可溶分は好ましくは50%以下、さらに好ましくは25%以下であり、吸水性樹脂粒子は水不溶性である。
【0047】
また、本明細書において「吸水性樹脂」とは、含水ゲル状架橋重合体に架橋構造を導入した水膨潤性水不溶性重合体をいう。
【0048】
なお、「水不溶性」とは、吸水性樹脂中の水可溶分が必須に0質量%以上50質量%以下、好ましくは0質量%以上25質量%以下、より好ましくは0質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは0質量%以上10質量%以下である実質水不溶性のことをいう。
【0049】
本発明においては、吸水性樹脂粒子を単に「吸水性樹脂」と称することもある。また、本明細書で用いる「粒子状吸水剤」とは、吸水性樹脂粒子に表面架橋を施したものをいう。
【0050】
<重合工程>
上記重合工程は、不飽和単量体の水溶液を重合し、含水ゲル状架橋重合体を生成する工程であり、粒子状吸水剤の製造において最初に行われる工程である。重合の方法としては、バルク重合、逆相懸濁重合、沈澱重合を行うことも可能であるが、性能面や重合の制御の容易さから、不飽和単量体を水溶液として、逆相懸濁重合または水溶液重合を行うことが好ましく、特に水溶液重合を行うことが好ましい。
【0051】
水溶液の濃度は、単量体として通常20質量%以上飽和濃度以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。
【0052】
かかる重合方法は、例えば、米国特許第4625001号明細書、米国特許第4769427号明細書、米国特許第4873299号明細書、米国特許第4093776号明細書、米国特許第4367323号明細書、米国特許第4446261号明細書、米国特許第4683274号明細書、米国特許第4690996号明細書、米国特許第4721647号明細書、米国特許第4738867号明細書、米国特許第4748076号明細書、欧州特許第1178059号明細書などに記載されている。
【0053】
上記不飽和単量体は、水溶性を有する単量体であり、アクリル酸および/またはその塩を主成分(全単量体の50モル%以上100モル%以下、好ましくは70モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは90モル%以上100モル%以下)として含む単量体であることが好ましい。上記単量体を用いると、得られる含水ゲルの吸水性能や安全性がより一層向上するので好ましい。なお、水溶性とは100gの水に室温で1g以上、さらには10g以上溶解する単量体をさす。
【0054】
ここで、アクリル酸および/またはその塩とは、アクリル酸、および/またはアクリル酸の水溶性塩類を示す。また、アクリル酸の水溶性塩類とは、中和率が30モル%以上100モル%以下の範囲内、好ましくは50モル%以上99モル%以下の範囲内であるアクリル酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ヒドロキシアンモニウム塩、アミン塩、アルキルアミン塩を示す。これらアクリル酸塩系単量体は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0055】
上記アクリル酸および/またはその塩を主成分として含む単量体には、必要により他の単量体を共重合させたものであってもよい。他の単量体の具体例としては、メタアクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸などのアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−ビニルアセトアミドなどのノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびそれらの四級塩などのカチオン性不飽和単量体などを挙げることができる。これらアクリル酸および/またはその塩以外の単量体の使用量は、全単量体中0モル%以上30モル%以下が好ましく、より好ましくは0モル%以上10モル%以下である。
【0056】
上記重合工程では、上記不飽和単量体を主成分として含む単量体組成物を、好ましくは架橋剤の存在下で重合させることによって、上記の含水ゲル状架橋重合体を得ることができる。含水ゲル状架橋重合体は、架橋剤を使用しない自己架橋型のものであってもよいが、1分子中に2個以上の重合性不飽和基や、2個以上の反応性基を有する架橋剤を共重合または反応させたものが好ましい。
【0057】
さらに、上記単量体組成物は、得られる含水ゲル状架橋重合体の親水性を阻害しない程度に、上記不飽和単量体と共重合可能な他の疎水性不飽和単量体を含んでいてもよい。上記の共重合性モノマーとしては、具体的には、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど、酸基や水酸基やアミノ基を含有しない疎水性単量体;などが挙げられる。これら共重合性モノマーは、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0058】
また、上記単量体成分を重合させる際に用いられる架橋剤(別称;内部架橋剤)の具体例としては、例えば、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(エチレンオキサイド変性)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、(エチレンオキサイド変性)グリセリンアクリレートメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N−ジアリルアクリルアミド、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ジアリルオキシ酢酸、ビス(N−ビニルカルボン酸アミド)、(エチレンオキサイド変性)テトラアリロキシエタン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0059】
これらの内部架橋剤は1種のみ用いてもよいし2種以上使用してもよい。中でも、得られる吸水性樹脂粒子の吸水特性などから、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を内部架橋剤として必須に用いることが好ましく、その使用量としては全単量体に対して0.005モル%以上3モル%以下が好ましく、より好ましくは0.01モル%以上1.5モル%以下である。
【0060】
重合に際しては、澱粉−セルロース、澱粉−セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子や、次亜リン酸(塩)等の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0061】
親水性高分子の使用量としては全単量体に対して0質量部以上50質量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは0質量部以上30質量部以下であり、最も好ましくは0質量部以上10質量部以下である。
【0062】
連鎖移動剤の使用量としては、全単量体に対して0.001モル%以上1モル%以下が好ましく、さらに好ましくは0.005モル%以上0.5モル%以下であり、最も好ましくは0.01モル%以上0.3モル%以下である。
【0063】
上記重合反応における重合開始時には、例えば、重合開始剤、あるいは放射線や電子線、紫外線、電磁線などの活性化エネルギー線などを用いることができる。上記重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、熱分解型開始剤や光分解型開始剤が使用されうる。
【0064】
熱分解型開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2´−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロリド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0065】
光分解型開始剤としては、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独もしくは、適宜組み合わせて使用されうる。また、重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、たとえば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、L−アスコルビン酸などの還元剤を併用して酸化還元(レドックス)重合を行ってもよい。
【0066】
これらの重合開始剤の使用量は、全単量体に対して、0.001モル%以上2モル%以下が好ましく、より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下である。以上のような重合工程によって、含水ゲル状架橋重合体を得ることができる。かかる含水ゲル状重合体の固形分(含水率)は、前記水溶液濃度や重合時の水分蒸発などで適宜決定される。
【0067】
本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法は、上記重合工程によって得られた塊状の含水ゲル状架橋重合体を粒子状にするために粉砕するゲル細粒化工程を含んでいてもよい。粒子状の含水ゲルとすることにより、ゲルの表面積が大きくなるため、以下に説明する乾燥工程を円滑に進行させることができる。上記粉砕は、例えばローラー型カッターや、ギロチンカッター、スライサー、ロールカッター、シュレッダー、ハサミなどの各種の切断手段やこれらの組み合わせを用いて行うことができ、特に限定されるものではない。
【0068】
上記吸水性樹脂粒子には、このように含水ゲル状架橋重合体を粒子状にしたものも含まれる。また、含水ゲル状架橋重合体を後述する乾燥工程によって乾燥し、その後粉砕工程や分級工程等によって粒子状にしたものも含まれる。
【0069】
<乾燥工程>
乾燥工程は、上記重合工程によって得られた含水ゲル状架橋重合体、好ましくはゲル細粒化工程によって粉砕した粒子状含水ゲルを乾燥する工程である。なお、乾燥とは、固形分を10%以上上昇させるか、あるいは含水率を25%以下とすることをいう。
【0070】
乾燥方法については特に限定されるものではなく、たとえば、バンド乾燥機、攪拌乾燥機、流動層乾燥機などの1種または2種以上を用いるような従来からの乾燥方法を好適に用いることができる。乾燥後の含水率(180℃、3時間の減量で規定)は、好ましくは0質量%以上25質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上15質量%以下、より好ましくは2質量%以上10質量%以下に制御される。
【0071】
含水ゲル状架橋重合体の乾燥温度や乾燥時間は特に限定されるものではないが、通常70℃以上250℃以下、好ましくは150℃以上230℃以下、より好ましくは160℃以上180℃以下で乾燥するのがよい。ここで、上記乾燥温度とは、熱媒の温度のことである。70℃未満で乾燥を行う場合には乾燥に長時間を要するため生産性の点で好ましくない。また、250℃を超えると樹脂が劣化する。なお、上記乾燥温度は、マイクロ波を用いて乾燥する場合などのように熱媒温度が規定できない場合、材料の温度で規定する。
【0072】
乾燥時間は適宜設定され、通常1分以上5時間以下、好ましくは10分以上2時間程度である。
【0073】
また、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法では、好ましくは、乾燥工程後にさらに粉砕工程、分級工程を含む。粉砕工程とは、上記含水ゲル状架橋重合体の乾燥物を粉砕機で粉砕し粒子状にする工程である。この粉砕工程で用いられる粉砕機としては、たとえば、ローラーミル、ナイフミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等であり、粉砕機自体の内壁面を加熱する手段を備えていることが好ましい。
【0074】
分級工程は、上記粉砕工程で得られた乾燥物粉末を連続的に分級する工程である。上記分級工程は、限定するわけではないが、篩分級(金属篩、ステンレス鋼製)によることが好ましい。好ましくは、目的とする物性と粒度のため、分級工程は複数枚の篩を同時に使用し、また、分級工程は後述する表面架橋工程の前、さらには前後の2ヶ所以上で用いられることが好ましい。連続篩分級工程は、篩に加熱または保温することが好ましい。
【0075】
<表面架橋工程>
表面架橋工程は、吸水性樹脂粒子を表面架橋する工程である。本発明の製造方法の好ましい一例では、当該表面架橋を、過酸化物と有機架橋剤とを併用することによって行うことを大きな特徴としており、その結果、液拡散性および通液性に優れ、残存モノマー含有量が低い粒子状吸水剤を得ることができる。すなわち、表面架橋工程は必須工程である。なお、「表面架橋」とは、吸水性樹脂粒子表面の官能基(特にカルボキシル基)とそれらと反応しうる化合物(有機架橋剤)とを反応させることである。
【0076】
その際、表面架橋後の吸水性樹脂における遠心分離機保持容量(CRC)は、表面架橋前に比べて少なくとも1g/g以上低下し、圧力に対する吸収量(AAP)は少なくとも10g/g以上向上する。CRCおよびAAPについては後述する。また、具体的にカルボキシル基を有する単量体を重合して得られる吸水性樹脂を表面架橋する場合、表面架橋後に残留するカルボキシル基をフッ素化合物(2,2,2−トリフルオロエタノール)によってラベル化し、フッ素/炭素原子比を比較(ESCA測定)することによって、有機架橋剤とカルボキシル基との反応の割合を比較することができる。
【0077】
なお、本発明で表面架橋工程とは、表面架橋剤の添加に始まり、その架橋反応(通常は加熱処理)、そして必要によりその停止(冷却)に至る一連の工程である。
【0078】
また、粒子表面で単量体を重合させて表面被膜を形成する技術は、本願で規定する表面架橋には含まれない。
【0079】
(1.有機架橋剤)
上記有機架橋剤としては、酸基と反応しうる有機架橋剤であれば特に限定されるものではなく、脱水反応性架橋剤やエポキシ化合物、多価イソシアネート化合物、多価オキサゾリン化合物等を用いることができるが、より安全で迅速に表面架橋を行うことができるので、脱水反応性架橋剤が好ましく用いられる。
【0080】
また、本明細書において用語「脱水反応性」とは、吸水性樹脂の官能基(特に表面近傍の官能基)と架橋剤とを脱水反応、好ましくは、脱水エステル化および/または脱水アミド化、さらに好ましくは、脱水エステル化で架橋することをいう。官能基としては、アミノ基、ヒドロキシル基などがあるが、好ましくはカルボキシル基である。
【0081】
具体的に吸水性樹脂がカルボキシル基を含有する場合、多価アルコールなどのヒドロキシル基含有の架橋剤、多価アミンなどのアミノ基含有の架橋剤、さらには、アルキレンカーボネートやモノ、ジまたはポリのオキサゾリジノン化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール等のオキセタン化合物などの環状架橋剤であって、その環状架橋剤の開環反応に伴ってヒドロキシル基やアミノ基を生成し該ヒドロキシル基やアミノ基が架橋反応反応を行う環状架橋剤、などが脱水反応性を示す架橋剤として例示される。上記脱水反応性架橋剤は1種または2種以上が用いられる。
【0082】
具体的に、本発明に用いることのできる脱水反応性架橋剤としては、吸水性樹脂の酸基と反応しうる架橋剤ならば制限なく使用され、通常、該用途に用いられている架橋剤(表面架橋剤)を挙げることができる。
【0083】
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミドポリアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物や、それらの無機塩ないし有機塩(例えば、アゼチジニウム塩等)、並びに、それら多価アミンとハロエポキシ化合物との縮合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキセパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物、並びに、エチレングリコールビス(4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン)エーテル等の多価アルキレンカーボネート化合物;モノ、ジまたはポリのオキサゾリジノン化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール、3−クロロメチル−3−メチルオキセタン、3−クロロメチル−3−エチルオキセタン等のオキセタン化合物ならびに多価オキセタン化合物;等より選ばれる1種または2種以上のものが例示できる。
【0084】
これら脱水反応性架橋剤の中でも、多価アルコール、アルキレンカーボネート、オキサゾリジノン化合物、(多価)オキセタン化合物から選ばれた1種以上が好ましく、少なくとも多価アルコールを用いることが特に好ましい。
【0085】
有機架橋剤としては、これら脱水反応性架橋剤に加えて、さらに、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]などの多価アジリジン化合物が例示される。これらの架橋剤は、一般に開環反応性架橋剤である。
【0086】
これら有機架橋剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも多価アルコールは、安全性が高く、吸水性樹脂粒子表面の親水性を向上させることができる点で好ましい。
【0087】
有機架橋剤の使用量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して0.001質量部以上10質量部以下の範囲が好ましく、0.01質量部以上5質量部以下の範囲が特に好ましい。0.001質量部よりも少ない場合には所望の吸収特性の改善効果が得られ難い。また10質量部よりも多い場合には不経済となるばかりか、ダマの形成など混合性が低下し、所望の吸収特性の改善効果が得られない点で好ましくない。
【0088】
有機架橋剤と吸水性樹脂粒子との混合の際には水を用いてもよい。水の使用量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上5質量部以下の範囲がより好ましい。0.5質量部よりも少ない場合には吸収特性の改善効果が得られ難く、また10質量部よりも多い場合にはダマの形成など混合性が低下する点で好ましくない。
【0089】
有機架橋剤やその水溶液を混合する際には、親水性有機溶媒や、第三物質を混合助剤として用いてもよい。
【0090】
親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、メトキシ(ポリ)エチレングリコール等のエーテル類;ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類などを用いることができる。
【0091】
親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂の種類や粒径、含水率等にもよるが、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、0質量部以上10質量部以下が好ましく、0.1質量部以上5質量部以下の範囲内がより好ましい。また、第三物質として欧州特許第0668080号明細書に示された無機酸、有機酸、ポリアミノ酸や、WO 2005/075070に示された界面活性剤等を存在させてもよい。
【0092】
これらの混合助剤は表面架橋剤として作用しても良いが、表面架橋後に吸水性樹脂の吸水性能を低下させないものが好ましい。特に沸点が40℃以上150℃未満の揮発性アルコール類(低級アルコール類)は表面架橋処理時に揮発してしまうので、残存物が残らず望ましい。
【0093】
表面架橋工程を行う時期は、重合工程の終了後であれば特に限定されるものではなく、乾燥工程開始前に行ってもよいし、乾燥工程の終了後に行ってもよいが、好ましくは乾燥工程後、さらに固形分(180℃3時間の減量で規定)が90%以上の吸水性樹脂に対して実施することが特に好ましい。
【0094】
(2.過酸化物と有機架橋剤との併用)
本発明では、上記重合工程以降の工程で、反応系に過酸化物を混合する。混合された当該過酸化物は、上記有機架橋剤とともに吸水性樹脂の表面架橋反応を行う。過酸化物の種類としては、特に限定されるものではないが、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;過マンガン酸塩;過塩素酸塩などの無機過酸化物、またクメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの有機過酸化物を好適に用いることができる。これらのうち1種または2種以上を併用しても良い。
【0095】
中でも反応性が高く、安全性に優れる点で、無機過酸化物、中でも過硫酸塩が特に好ましい。例えば、過硫酸アンモニウムは日本では食品添加物として使用されている。過酸化物の使用量としては吸水性樹脂粒子100質量部に対して0.001質量部以上3質量部以下、好ましくは0.01質量部以上1質量部以下、特に0.01質量部以上0.5質量部以下の範囲が好ましい。0.001質量部よりも少ない場合には所望の効果(通液性向上並びに残存モノマー量低減)を得ることができず、また1質量部よりも多い場合は吸水性樹脂の劣化を引き起こし、水可溶分が増加するなどの物性の低下が見られる点で好ましくない。
【0096】
表面架橋工程で用いられる有機架橋剤と過酸化物の重量比としては、有機架橋剤:過酸化物が1:0.005〜1:1であることが好ましく、1:0.01〜1:0.8であることがより好ましく、1:0.03〜1:0.5であることがさらに好ましく、1:0.05〜1:0.3であることが特に好ましい。有機架橋剤に対する過酸化物の使用量が多い場合には、粒子状吸水剤の劣化を引き起こし、水可溶分が増加するなどの物性の低下が見られるおそれがある。また、粒子状吸水剤が褐色ないしは黄色に着色するおそれがあるため、粒子状吸水剤の含有量が高い衛生材料には適さないおそれがある。
【0097】
過酸化物と吸水性樹脂粒子との混合の際には水を用いてもよい。水の使用量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上5質量部以下の範囲がより好ましい。0.5質量部よりも少ない場合には吸水性樹脂粒子全体への均一混合が難しく、また10質量部よりも多い場合にはダマの形成など混合性が低下する点で好ましくない。
【0098】
過酸化物を添加する時期は、表面架橋工程において過酸化物と有機架橋剤とが併存する状態を保つことができる限り、重合工程以降の任意の工程において添加してもよく、特に限定されるものではない。重合工程の説明で述べたように、過酸化物の中には過硫酸ナトリウム等のように重合開始剤として用いられるものもある。そして、過酸化物は表面架橋剤としても機能しうる。
【0099】
そのため、重合工程において添加され、重合反応には用いられることなく反応系に残存している過酸化物があれば、当該過酸化物は表面架橋工程において有機架橋剤とともに架橋反応を行うことになる。このように、過酸化物は重合工程において添加するだけでも構わない。
【0100】
また、過酸化物は、例えば、重合工程終了後乾燥工程開始前、乾燥工程中、乾燥工程終了後、粉砕工程中およびその前後、分級工程中およびその前後、造粒およびその前後、その他輸送工程、中間の貯蔵工程(ホッパーなど)、表面架橋工程など、重合工程以降のいずれの時期に添加してもよい。表面架橋工程において過酸化物と有機架橋剤とが併存することができるならば、過酸化物が有機架橋剤とともに架橋反応を引き起こすため、ゲル強度が向上する。そのため、粒子状吸水剤の液拡散性、通液性を向上させることができ、残存モノマー含有量を低減させることができる。
【0101】
過酸化物の添加時期として特に好ましいのは、重合工程以降の工程で、乾燥工程終了後である。乾燥して得られた粒子状吸水性樹脂の表面近傍には特に残存モノマーが多く存在しているため、乾燥工程終了後に反応系に過酸化物を混合することにより、過酸化物と残存モノマーとの反応を効率的に行うことができる。それゆえ、乾燥工程終了後に反応系に過酸化物を混合することで、より大きな残存モノマー低減効果を得ることができるものと考えられる。
【0102】
表面架橋工程においては、さらに水が存在すると、過酸化物と吸水性樹脂との混合および、表面架橋剤と吸水性樹脂との混合が行われやすくなる。その結果、過酸化物と表面架橋剤との併用による表面架橋反応が確実に行われるため好ましい。水の使用量については前述のとおりである。
【0103】
このように、表面架橋工程において過酸化物と有機架橋剤とが併存することができるならば、本発明の効果を得ることができるが、本発明の製造方法では、表面架橋工程において過酸化物と有機架橋剤とを含む水溶液を吸水性樹脂粒子に添加することが特に好ましい。
【0104】
この場合は、過酸化物と有機架橋剤とを含む水溶液が吸水性樹脂粒子に添加されるので、過酸化物と有機架橋剤とが同時に表面架橋剤として作用する。なお、「表面架橋剤」とは、表面架橋を行いうる物質との意味である。上述のように、過酸化物と有機架橋剤とは、表面架橋工程において共存していれば通液性の向上や残存モノマー含有量の低減等を実現することができるため、過酸化物の添加時期と有機架橋剤の添加時期は必ずしも同時でなくてもよいが、表面架橋工程において過酸化物と有機架橋剤とを含む水溶液を吸水性樹脂に添加することによって、特に高い効果を得ることができる。
【0105】
通常、表面架橋工程においては、吸水性樹脂と表面架橋剤を混合した後、加熱処理を行うが、過酸化物または有機架橋剤の一方を先に添加すると、他方を添加するまでの間に先に添加した成分は吸水性樹脂のより内部へ浸透し、結果として得られた吸水性樹脂の表面近傍での架橋の割合が低下してしまうおそれがある。
【0106】
一方、過酸化物と有機架橋剤とを含む水溶液として添加する場合は、より表面近傍で両成分による架橋反応が起こるため、従来よりも強固な表面架橋層が形成され、ゲル強度が向上すると考えられる。
【0107】
ここで、表面架橋剤を水溶液とする場合、特に過酸化物が例えば過硫酸塩のような塩を有するものである場合には、有機架橋剤のみを表面架橋剤として用いる場合よりも表面架橋剤の塩濃度を向上させることができるので、吸水性樹脂粒子内部への表面架橋剤の浸透をさらに抑えることができる。そのため、過酸化物並びに有機架橋剤による架橋が吸水性樹脂のより表面近傍で集中的になされ、さらに強固な表面架橋層が形成されると考えられる。
【0108】
その結果、より吸水性樹脂の液拡散性、通液性を向上させることができ、残存モノマー含有量を低減させることができるものと考えられる。この場合、後述する水溶性多価金属塩を添加しなくても、実施例に示すように高い効果が得られることから、表面架橋工程において過酸化物と有機架橋剤とを含む水溶液を吸水性樹脂粒子に添加する方法は特に有効な方法であるということができる。
【0109】
一実施形態においては、本発明に係る製造方法は、重合工程以降、表面架橋工程を行う前、好ましくは乾燥工程後に過酸化物の水溶液を添加し、表面架橋工程において有機架橋剤の水溶液を添加することにより行われる。この場合は、過酸化物による架橋が粒子内部でも起こるため、表面架橋工程において過酸化物と有機架橋剤とを含む水溶液を吸水性樹脂に添加する方法と比べると、通液性の向上は見られるが、加圧下での吸収容量(AAP)が若干低下する。
【0110】
この点からも、過酸化物による架橋が吸水性樹脂粒子のより表面近傍でなされることがより効果的であると言うことができる。なお、上記「重合工程以降」とは、重合工程を含む意であり、「表面架橋工程を行う前」とは、表面架橋工程を含まない意である。
【0111】
なお、乾燥工程後に過酸化物の水溶液を添加して得られる混合物の含水率は0.5%以上10%未満であることが好ましい。含水率が0.5%未満の場合は均一な混合ができないおそれがあるため好ましくない。また、10%以上の場合はダマの形成が多いなど、混合性、取り扱い性が低下するため好ましくない。
【0112】
ここで、乾燥工程後に過酸化物の水溶液を添加した後であって表面架橋工程前に加熱工程を含んでいてもよい。加熱温度は特に規定はないが、40℃以上200℃以下が好ましく、50℃以上150℃以下が好ましい。上記構成によれば、前述の過酸化物の水溶液を添加して得られる混合物中の望ましくない凝集物を解砕しやすくするとともに、取り扱い性を改善することができる。
【0113】
表面架橋反応は、以上のように吸水性樹脂に有機架橋剤、過酸化物、水とを混合した後、加熱処理を行って遂行することが好ましい。加熱処理温度は、用いる表面架橋剤にもよるが、130℃以上300℃以下が好ましく、150℃以上250℃以下がより好ましい。加熱処理温度が130℃未満の場合には、加圧下の吸収倍率や通液性等の吸収特性が十分に改善されない場合がある。加熱処理温度が300℃を越える場合には、吸水性樹脂粒子の劣化を引き起こし、各種性能が低下する場合があり注意を要する。
【0114】
なお、加熱処理温度は熱媒温度で規定するが、マイクロ波など熱媒温度を規定できない場合、材料温度で規定する。加熱処理時間は、好ましくは1分以上2時間以下、より好ましくは5分以上1時間以下である。
【0115】
また、吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とをより均一に混合するため、過酸化物以外の非架橋性の水溶性無機塩基類(好ましくは、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ金属水酸化物、および、アンモニアあるいはその水酸化物)や、非還元性アルカリ金属塩pH緩衝剤(好ましくは炭酸水素塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩等)、さらには界面活性剤を、吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合する際に共存させても良い。これらの使用量は、吸水性樹脂粒子の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂粒子100質量部に対して0.005質量部以上10質量部以下の範囲内が好ましく、0.05質量部以上5質量部以下の範囲内がより好ましい。
【0116】
吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合する混合方法は特に限定されないが、たとえば吸水性樹脂粒子を親水性有機溶剤に浸漬し、必要に応じて水および/または親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を混合する方法、吸水性樹脂粒子に直接、水および/または親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を噴霧若しくは滴下して混合する方法等が例示できる。
【0117】
なお、表面架橋反応は、特許文献5に示されるように、表面架橋剤を使用せず、吸水性樹脂を加熱することによっても行うことは可能ではあるが、液拡散性、通液性、残存モノマー含有量等の特性が、有機架橋剤と過酸化物とを併用することによって大幅に向上することが本発明によって初めて見出された知見であることは言うまでもない。
【0118】
本発明の製造方法では、重合工程以降の工程において、さらに水溶性多価金属塩を混合することが好ましい。水溶性多価金属塩は、粒子状吸水剤の通液性を高める効果を有する。本発明において製造される粒子状吸水剤がおむつなどの衛生材料用の吸収体に利用されることを考えれば、粒子状吸水剤を着色せず、人体に対する毒性の低いものを選ぶのが好ましい。
【0119】
吸液時に水溶性多価金属塩の効果をより効率的に長時間持続させるために、常温の純水に5質量%以上の濃度で溶解し得る水溶性多価金属塩を選択することが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上溶解し得るものを選択して使用する。
【0120】
本発明で使用することができる水溶性多価金属塩としては、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ビス硫酸カリウムアルミニウム、ビス硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミン酸ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどを例示することができる。
【0121】
また、尿などの吸収液との溶解性の点からもこれらの結晶水を有する塩を使用するのが好ましい。好ましくはアルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ジルコニウム塩であり、具体的には3価ないし4価の化合物、特にアルミニウム化合物、中でも、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ビス硫酸カリウムアルミニウム、ビス硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミン酸ナトリウムが好ましく、硫酸アルミニウムが特に好ましく、硫酸アルミニウム18水塩、硫酸アルミニウム14〜18水塩などの含水結晶の粉末は最も好適に使用することができる。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0122】
本発明において水溶性多価金属塩は、水溶液として吸水性樹脂粒子と混合することが好ましい。混合する時期については、有機架橋剤、過酸化物と同時であってもよいし、別々であってもよい。この場合、多価金属イオン(例えば、アルミニウムイオン)が吸水性樹脂粒子の内部に浸透・拡散することを防ぐために、水溶液は、使用温度での飽和濃度に対して50質量%以上の濃度が好ましく、より好ましくは60質量%以上の濃度、さらに好ましくは70質量%以上の濃度、さらに好ましくは80質量%以上の濃度、特に好ましくは90質量%以上の濃度である。もちろん、飽和濃度やスラリーで用いてもよい。
【0123】
本発明によって得られる粒子状吸水剤は、水溶性多価金属塩を粒子状吸水剤の主成分である吸水性樹脂100質量部に対して0.001質量部以上10質量部以下含むことが好ましく、より好ましくは0.01質量部以上5質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以上2質量部以下である。水溶性多価金属塩が0.001質量部よりも少ないと目的とする通液性や耐ブロッキング性の向上が得られない点で好ましくない。また、水溶性多価金属塩が10質量部よりも多い場合はCRCやAAPなどの吸収特性が劣るおそれがある。
【0124】
本発明で用いる吸水性樹脂粒子の粒径や粒径分布に特に制限は無いが、粒径が比較的小さく、小粒径成分の多い粒径分布のものを用いると、吸水速度、毛管吸収倍率などの吸水性能の向上が顕著であるので好ましい。
【0125】
なお、本発明の粒子状吸水剤の製造方法において使用する過酸化物の種類や量、熱処理温度等によっては、粒子が褐色ないしは黄色に着色する場合がある。そのような場合には着色防止剤を用いてもよい。着色防止剤としては、硫黄含有還元剤、アミノ多価カルボン酸またはその塩や、有機リン酸化合物またはその塩などのキレート剤、過酸化水素などを用いることができる。
【0126】
硫黄含有還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸マグネシウム、システイン、シスチン等があり、中でも亜硫酸塩、亜硫酸水素塩が好ましい。
【0127】
また、上記キレート剤としては、FeおよびCuに対するイオン封鎖能やキレート能が高いキレート剤が好ましく、具体的にはFeイオンに対する安定度定数が10以上のキレート剤、好ましくは20以上のキレート剤、さらに好ましくはアミノ多価カルボン酸およびその塩、特に好ましくはカルボキシル基を3個以上有するアミノカルボン酸およびその塩が挙げられる。
【0128】
これら多価カルボン酸は、具体的には、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酢酸、N−アルキル−N´−カルボキシメチルアスパラギン酸、N−アルゲニル−N´−カルボキシメチルアスパラギン酸およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩が挙げられる。
【0129】
上記塩は完全中和でもよく、部分中和でもよく、混合物でもよい。中でも、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸およびその塩が最も好ましい。
【0130】
また、有機リン酸化合物としては、エチリデンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等を挙げることができるが、特に好ましくは1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)である。塩としてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩を挙げることができる。
【0131】
これら着色防止剤は、それぞれ単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。これらの添加量としては吸水性樹脂100質量部に対して0.0001質量部以上10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.001質量部以上5質量部以下である。添加量が0.0001質量部未満では、期待する着色防止効果が得られず、10質量部を超えると吸水性能が低下するため好ましくない。
【0132】
これら着色防止剤の添加方法としては特に制限はなく、重合時に添加しても、乾燥後の吸水性樹脂に添加しても、表面架橋工程で用いてもよい。
【0133】
<吸水性樹脂粒子および粒子状吸水剤の粒度>
本発明の製造方法では、吸水性樹脂粒子および粒子状吸水剤の粒径としては、好ましくは質量平均粒子径(D50)が200μm以上600μm以下、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20以上0.55以下であり、より好ましくは質量平均粒子径が250μm以上500μm以下、粒度分布の対数標準偏差が0.23以上0.45以下であり、さらに好ましくは質量平均粒子径が300μm以上420μm以下、粒度分布の対数標準偏差が0.25以上0.35以下である。
【0134】
質量平均粒子径、粒度分布の対数標準偏差が上記範囲となる吸水性樹脂粒子および粒子状吸水剤は、粒度分布が通液性等の吸収特性を向上させるために好ましい範囲となる。
【0135】
また、本発明の製造方法では、吸水性樹脂粒子および粒子状吸水剤は、粒子径150μm未満の粒子の割合や、850μm以上の粒子の割合が全体の0質量%以上5質量%以下、好ましくは0質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0質量%以上1質量%以下であることが好ましい。粒子径150μm未満の粒子の割合が5質量%を超えると通液性が低下する点で好ましくない。粒子径150μm未満の粒子の割合が全体の5質量%以下、である吸水性樹脂粒子および粒子状吸水剤は、吸収特性を低下させる要因となる微粉の量が少ない。
【0136】
本発明の製造方法では、吸水性樹脂粒子および粒子状吸水剤が前記の粒度分布に調整されることで、通液性を始めとする吸収特性に優れた粒子状吸水剤を得ることができる。このような粒度分布を有する吸水性樹脂粒子は、水溶液重合で得られた吸水性樹脂(粒子)を粉砕すること、あるいはこれらを篩に掛けて粒度を調整することによって好ましく得ることができる。
【0137】
<粒子状吸水剤の物性>
本発明では前記粒子径の粒子状吸水剤が好ましく、また、下記のSFC,CRC,AAP,残存モノマーを有することが好ましい。さらに、表面の残存モノマーが少ないという特徴を有する。
【0138】
本発明者は、残存モノマーの低減はコストアップにつながるという問題点、含水率の低減と残存モノマーの低減との両立が困難であるという問題点、高物性(特に高SFC)と低残存モノマーの両立が困難であるという問題点、などの従来の問題点に加えて、実使用形態における残存モノマー量が少ない吸水性樹脂の提供という新たな課題に取り組んだ。
【0139】
その結果、表面残存モノマー率という新規なパラメータが、オムツ等の衛生材料での実使用形態における吸水性樹脂の残存モノマー量を忠実に表現できることを見出した。また、表面残存モノマー率を一定範囲以下の値となるように制御した上で、残存モノマー量低減とは相反する傾向にある物性(特にSFC)を一定以上に高めた吸水性樹脂を用いることによって、初めて高物性と残存モノマー低減とを両立可能な衛生材料を得ることができることを見出し、本発明に係る新規な粒子状吸水剤を完成した。
【0140】
すなわち、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法を製造方法の一例とする本発明の粒子状吸水剤は、アクリル酸および/またはその塩から選ばれる単量体70モル%以上100モル%以下を繰り返し単位とする吸水性樹脂粒子をカルボキシル基と反応しうる有機架橋剤の存在下で表面架橋した粒子状吸水剤であって、(i)下記の式1で算出される表面残存モノマー率が0%より大きく5%以下、(ii)食塩水流れ誘導性(SFC)が40(×10−7・cm・s・g−1)以上、(iii)含水率が5%未満、を満たす粒子状吸水剤という新規な粒子状吸水剤であって、オムツ、特に高濃度オムツ等の衛生材料における実使用に好適な粒子状吸水剤である。上述のように、式1は以下のように表される。
【0141】
表面残存モノマー率(%)=表面残存モノマー量(ppm)/残存モノマー量(ppm)×100・・・式1
以下、本発明の粒子状吸水剤について説明する。
【0142】
本発明で得られる粒子状吸水剤は、加圧下吸収量(AAP)が20g/g以上であることが好ましく、22g/g以上であることがさらに好ましく、24g/g以上であることがより好ましく、26g/g以上であることが特に好ましい。上限は30g/gである。
【0143】
本発明で得られる粒子状吸水剤は、前記粒度を有することが好ましく、さらに遠心分離機保持容量(CRC)が、好ましくは10(g/g)以上であり、より好ましくは20(g/g)以上であり、さらに好ましくは25(g/g)以上である。上限値は、特に限定されないが、好ましくは50(g/g)以下であり、より好ましくは45(g/g)以下であり、さらに好ましくは40(g/g)以下である。遠心分離機保持容量(CRC)が10(g/g)未満の場合、吸収量が少なすぎ、オムツ等の衛生材料の使用に適さない。また、遠心分離機保持容量(CRC)が50(g/g)よりも大きい場合、通液性に優れる吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0144】
本発明で得られる粒子状吸水剤は、食塩水流れ誘導性(SFC)が、好ましくは30(×10−7・cm・s・g−1)以上であり、以下、40(×10−7・cm・s・g−1)以上、50(×10−7・cm・s・g−1)以上、80(×10−7・cm・s・g−1)以上、100(×10−7・cm・s・g−1)以上、、120(×10−7・cm・s・g−1)以上、150(×10−7・cm・s・g−1)以上、の順に、後者ほど好ましい。
【0145】
上限値は特に限定されないが、通常、好ましくは1000(×10−7・cm・s・g−1)以下であり、より好ましくは500(×10−7・cm・s・g−1)以下であり、さらに好ましくは300(×10−7・cm・s・g−1)以下である。食塩水流れ誘導性(SFC)が30(×10−7・cm・s・g−1)未満の場合、オムツのコア中での吸水性樹脂粒子の濃度が30質量%以上、より具体的には50質量%以上の場合において、尿の吸収速度が遅くなり、漏れを引き起こす恐れがある。
【0146】
本発明で得られる粒子状吸水剤は、残存モノマーが0ppm以上500ppm以下であることが好ましく、0ppm以上300ppm以下であることがさらに好ましく、0ppm以上200ppm以下であることが特に好ましい。
【0147】
ここで、残存モノマーの量としては、安全面の観点からはより少ないことが好ましいが、残存モノマー量を低レベルにするためには、過酸化物の使用量を多くすることなどの方法が必要である。しかしながら、過酸化物の使用量が多すぎると、粒子状吸水剤の劣化を引き起こし、例えば水可溶分の増加等のように、物性の低下が見られるおそれがある。また、過酸化物の使用量が多すぎると、粒子状吸水剤が褐色ないしは黄色に着色するため、粒子状吸水剤の含有量が高い衛生材料には適さないおそれがある。
【0148】
よって、残存モノマー量としては、通常150ppm以上300ppm以下といった少ないレベルであれば、上記の問題となるような物性の低下を伴わないため、好適に使用することができる。
【0149】
本発明で得られる粒子状吸水剤は、含水率が0%以上5%未満であることが好ましく、より好ましくは0%以上3%未満であり、さらに好ましくは0%以上2%未満である。含水率が5%以上の場合、粒子状吸水剤における単位重量当たりの吸収量が低下するため、粒子状吸水剤の含有量が高い衛生材料には適さないおそれがある。
【0150】
本発明で得られる粒子状吸水剤は、表面残存モノマー率が0%より大きく5%以下であることが好ましく、より好ましくは0%より大きく4.5%以下であり、さらに好ましくは0%より大きく4%以下である。表面残存モノマー率が5%を超える場合、吸液時に粒子状吸水剤表面から残存モノマーが溶出し易く、粒子状吸水剤の含有量が高い衛生材料には安全面からも適さないおそれがある。
【0151】
また、表面残存モノマー率が0%である場合には、使用する過酸化物の量が多く不経済であるばかりか、粒子状吸水剤の劣化を引き起こし、例えば水可溶分の増加等のように、物性の低下が見られる点で好ましくない。また、このような場合には、粒子状吸水剤が褐色ないしは黄色に着色するため、粒子状吸水剤の含有量が高い衛生材料には適さないおそれがある。
【0152】
なお、本明細書において、「残存モノマー」とは、吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤に含まれる未反応の単量体の量をいう。「表面残存モノマー率」については、実施例にて後述する。
【0153】
<その他添加剤>
また、本発明によって得られた粒子状吸水剤は、有機酸(塩)と混合したものであってもよい。
【0154】
有機酸(塩)としては、例えば、アニス酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリオキシル酸、グリコール酸、グルタル酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、プロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、マロン酸、イミジノ酢酸、リンゴ酸、イセチオン酸、アジピン酸、シュウ酸、サリチル酸、グルコン酸、ソルビン酸、p−オキシ安息香酸、およびこれらのナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩が挙げられる。中でも好ましくは、グリコール酸、酒石酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、リンゴ酸、サリチル酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸、およびこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩である。これらは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0155】
但し、吸水性樹脂の原料として用いられ、その重合の過程において吸水性樹脂中に残存するアクリル酸やその他のアクリル酸由来の他の反応副生成物は除く。
【0156】
本発明によって得られた粒子状吸水剤を有機酸(塩)と混合することにより、多価金属イオン(例えば、アルミニウムイオン)が粒子状吸水剤の内部に浸透することが抑制され、粒子表面に均一に拡散されるため、通液性が大きく向上する。
【0157】
また、有機酸(塩)を用いることにより、従来のように金属成分が粒子状吸水剤表面に面状に不均一に付着してしまう問題が解消でき、金属成分が粒子状吸水剤表面近傍全体に細かい点状で均一に付着(局在)できるという効果を発揮できる。
【0158】
本発明において有機酸(塩)は、そのまま粒子状吸水剤と混合してもよいが、水溶性多価金属塩とともに混合することが好ましく、有機酸(塩)と水溶性多価金属塩を共に水溶液として混合することがより好ましく、有機酸(塩)と水溶性多価金属塩を共通の水溶液として混合することが特に好ましい。水溶性多価金属塩は、粒子状吸水剤の通液性を高める効果を有する。水溶性多価金属塩と有機酸(塩)の均一溶液を得るためには、有機酸塩を用いることが好ましい。水溶性多価金属塩としては、(2.過酸化物と有機架橋剤との併用)の項で述べたものを用いることができる。
【0159】
有機酸(塩)を混合した粒子状吸水剤は、有機酸(塩)を粒子状吸水剤100質量部に対して0.1ppm以上10質量部以下を含むことが好ましく、より好ましくは0.0001質量部以上5質量部以下、0.001質量部以上1質量部以下である。有機酸(塩)が0.1ppmよりも少ないと、粒子状吸水剤内部への金属成分の浸透を抑制できず、また通液性の向上も得られない点で好ましくない。また、有機酸(塩)が10質量部よりも多い場合はCRCやAAPなどの吸収特性が劣るおそれがある。
【0160】
また、有機酸(塩)と水溶性多価金属塩は前述の表面架橋工程において同時に用いても良いが、高温下で各種鋼材への腐食性を有するような水溶性多価金属塩の使用時や、水溶性多価金属塩の吸水性樹脂内部への浸透のし易さなどの観点から、表面架橋された粒子状吸水剤に添加するのが特に好ましい。
【0161】
粒子状吸水剤に有機酸(塩)と水溶性多価金属塩とを混合する場合は、親水性有機溶媒をも混合することが好ましい。より好ましくは、有機酸(塩)と水溶性多価金属塩とを含む共通の水溶液に親水性有機溶媒が含まれる形態である。親水性有機溶媒を用いることにより、水溶性多価金属塩をさらに均一に粒子状吸水剤に混合することが可能となる。
【0162】
親水性有機溶媒としては、前述の表面架橋処理で併用してもよい親水性有機溶媒が挙げられる。
【0163】
<混合装置>
なお、本発明の製造方法において、反応系に過酸化物、有機性架橋剤、水、多価金属塩、親水性有機溶媒等を添加し、その後混合する装置としては、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機、レディゲミキサーなどを挙げることができる。
【0164】
混合方法としては、バッチ式、連続式、その併用のいずれも採用できるが、工業的生産の観点から連続混合がより好ましい。混合の際の回転数は特に制限はないが、吸水性樹脂がダメージを受けない程度の回転数が好ましい。具体的には1rpm以上3000rpm以下の範囲が好ましく、より好ましくは2rpm以上500rpm以下、さらに好ましくは5rpm以上300rpm以下である。3000rpmを超えると吸水性樹脂の粉化が生じ、吸水特性が低下する点で好ましくない。また1rpmを下回ると混合性が十分でなく、目的とする通液性や耐ブロッキング性の向上効果が得られない。
【0165】
<吸収体>
本発明によって得られる粒子状吸水剤は、適当な素材と組み合わせることにより、たとえば、衛生材料の吸収層として好適な吸水体とすることができる。以下、吸水体について説明する。
【0166】
吸水体とは、血液や体液、尿などを吸収する、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる、粒子状吸水剤とその他の素材からなる成形された組成物のことであり、用いられる素材の例としては、例えば、セルロース繊維が挙げられる。セルロース繊維の具体例としては、木材からのメカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、溶解パルプ等の木材パルプ繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維等を例示できる。好ましいセルロース繊維は木材パルプ繊維である。これらセルロース繊維はナイロン、ポリエステル等の合成繊維を一部含有していてもよい。
【0167】
本発明によって得られる粒子状吸水剤を吸水体の一部として使用する際には、吸水体中に含まれる本発明によって得られる粒子状吸水剤の質量が、20質量%以上100質量%以下、40質量%以上100質量%以下、50質量%以上100質量%以下、70質量%以上100質量%以下の範囲で後者ほど好ましい。上記質量が、20質量%未満になると、十分な効果が得られなくなるおそれがある。
【0168】
本発明によって得られる粒子状吸水剤とセルロース繊維から吸水体を得るには、たとえば、セルロース繊維からなる紙やマットに吸水剤を散布し、必要によりこれらで挟持する方法、セルロース繊維と粒子状吸水剤を均一にブレンドする方法、など吸水体を得るための公知の手段を適宜選択できる。
【0169】
好ましくは、粒子状吸水剤とセルロース繊維を乾式混合した後、圧縮する方法である。この方法により、セルロース繊維からの吸水剤の脱落を著しく抑えることが可能である。圧縮は加熱下に行うことが好ましく、その温度範囲は、たとえば50〜200℃である。また、吸水体を得るために、特表平9−509591号公報や特開平9−290000号公報に記載されている方法も好ましく用いられる。
【0170】
本発明によって得られる粒子状吸水剤は、液拡散性、通液性に優れ、残存モノマーの含有量が少ないため、当該粒子状吸水剤を用いることにより、優れた吸水特性を有し、かつ安全性に優れた吸水体を得ることができる。
【0171】
本発明によって得られる粒子状吸水剤は、優れた吸水特性を有しているため、種々の用途の吸水保水剤として使用できる。例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の吸収物品用吸水保水剤;水苔代替、土壌改質改良剤、保水剤、農薬効力持続剤等の農園芸用保水剤;内装壁材用結露防止剤、セメント添加剤等の建築用保水剤;リリースコントロール剤、保冷剤、使い捨てカイロ、汚泥凝固剤、食品用鮮度保持剤、イオン交換カラム材料、スラッジまたはオイルの脱水剤、乾燥剤、湿度調整材料等で使用できる。また、本発明によって得られる粒子状吸水剤は、紙おむつ、生理用ナプキンなどの、糞、尿または血液の吸収用衛生材料に特に好適に用いられる。
【0172】
本発明によって得られる粒子状吸水剤は、液拡散性、通液性に優れ、残存モノマーの含有量が少ないため、薄型の吸収用衛生材料の製造に特に適している。すなわち、従来は薄型の吸収用衛生材料を製造する場合は、親水性繊維を少なくし、吸水性樹脂を多く使用することにより、衛生材料中の吸水性樹脂の濃度を増加させる方法がとられていたが、それゆえに吸水性樹脂中に含まれる残存モノマー等に由来する肌への影響(肌荒れ)が顕著となるという問題があった。本発明によって得られる粒子状吸水剤を用いることにより、高い吸水特性を有し、かつ安全性の高い薄型吸収用衛生材料を得ることができる。
【0173】
吸水体は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる場合、(a)着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート、および(c)トップシートとバックシートの間に配置された吸水体、を含んでなる構成で使用されることが好ましい。吸水体は二層以上であっても良いし、パルプ層などとともに用いても良い。
【0174】
なお、本発明は以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0175】
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「質量%」を「wt%」と記すことがある。
【0176】
吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤の諸性能は、以下の方法で測定した。特に記載が無い限り下記の測定は室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で行われたものとする。
【0177】
なお、衛生材料などの最終製品として使用された吸水性樹脂組成物の場合は、吸水性樹脂組成物は吸湿しているので、適宜、吸水性樹脂組成物を最終製品から分離して減圧低温乾燥後(例えば、1mmHg以下、60℃で12時間)に測定すればよい。また、本発明の実施例および比較例において使用された吸水性樹脂組成物の含水率はすべて8質量%以下であった。
【0178】
<遠心分離機保持容量(CRC)>
遠心分離機保持容量(CRC)は0.90質量%食塩水(生理食塩水)に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。なお、CRCは、無加圧下吸収倍率と称されることもある。
【0179】
吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤0.200gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、室温で大過剰(通常500ml程度)の0.90質量%食塩水(塩化ナトリウム水溶液)中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物を用いずに行い、その時の質量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、次式に従って遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)を算出した。
【0180】
遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)
=(W1(g)−W0(g))/(吸水性樹脂粒子または吸水剤の質量(g))−1
<圧力に対する吸収力(AAP)>
圧力に対する吸収力(AAP)は0.90質量%食塩水に対する4.83kPaで60分の吸収倍率を示す。なお、AAPは、4.83kPaでの加圧下吸収倍率と称されることもある。
【0181】
図1に示す装置を用い、内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網101(目の大きさ38μm)を融着させ、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、該網上に吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤0.900gを均一に散布し、その上に、吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤に対して4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒との隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストン103と荷重104とをこの順に載置し、この測定装置一式の質量Wa(g)を測定した。
【0182】
直径150mmのペトリ皿105の内側に直径90mmのガラスフィルター106(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.90質量%食塩水108(20〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙107(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0183】
上記測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その質量Wb(g)を測定した。そして、Wa、Wbから、下記の式に従って圧力に対する吸収力(AAP)(g/g)を算出した。
【0184】
圧力に対する吸収力(AAP)
=(Wb(g)−Wa(g))/(吸水性樹脂粒子または吸水剤の質量(0.900g))
<食塩水流れ誘導性(SFC)>
食塩水流れ誘導性(SFC)は吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。
【0185】
特表平9−509591号公報記載の食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
【0186】
図2に示す装置を用い、容器40に均一に入れた吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤(0.900g)を人工尿(1)中で0.3psi(2.07kPa)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル44のゲル層の高さを記録し、次に0.3psi(2.07kPa)の加圧下、0.69質量%食塩水33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル層を通液させた。このSFC試験は室温(20〜25℃)で行った。コンピューターと天秤を用い、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録した。
【0187】
膨潤したゲル44(の主に粒子間)を通過する流速Fs(T)は増加質量(g)を増加時間(s)で割ることによりg/sの単位で決定した。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をTsとし、Tsと10分間の間に得たデータだけを流速計算に使用して、Tsと10分間の間に得た流速を使用してFs(T=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算した。Fs(T=0)はFs(T)対時間の最小2乗法の結果をT=0に外挿することにより計算した。
【0188】
食塩水流れ誘導性(SFC)
=(Fs(t=0)×L0)/(ρ×A×ΔP)
=(Fs(t=0)×L0)/139506
ここで、
Fs(t=0):g/sで表した流速
L0:cmで表したゲル層の高さ
ρ:NaCl溶液の密度(1.003g/cm
A:セル41中のゲル層上側の面積(28.27cm
ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm
およびSFC値の単位は(10−7・cm・s・g−1)である。
【0189】
図2に示す装置としては、タンク31には、ガラス管32が挿入されており、ガラス管32の下端は、0.69質量%食塩水33をセル41中の膨潤ゲル44の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置した。タンク31中の0.69質量%食塩水33は、コック付きL字管34を通じてセル41へ供給された。セル41の下には、通過した液を補集する容器48が配置されており、補集容器48は上皿天秤49の上に設置されていた。セル41の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)42が設置されていた。ピストン46の下部には液が通過するのに十分な穴47があり、底部には吸水性樹脂粒子または吸水剤あるいはその膨潤ゲルが、穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けてあった。セル41は、セルを乗せるための台の上に置かれ、セルと接する台の面は、液の透過を妨げないステンレス製の金網43の上に設置した。
【0190】
人工尿(1)は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、りん酸2水素アンモニウム0.85g、りん酸水素2アンモニウム0.15g、および、純水994.25gを加えたものを用いた。
【0191】
<質量平均粒子径(D50)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)>
吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤を目開き850μm、710μm、600μm、500μm、300μm、150μm、45μmなどのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。なお、篩は必要により適宜追加すればよい。これにより、R=50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0192】
σζ=0.5×ln(X2/X1)
(X1はR=84.1%、X2はR=15.9%の時のそれぞれの粒子径)
質量平均粒子径(D50)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)を測定する際の分級方法は、吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤10.0gを、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、300μm、150μm、45μmのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により、5分間、分級を行った。
【0193】
<水可溶分(水可溶成分)量>
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に0.90質量%食塩水184.3gをはかり取り、その水溶液中に吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤1.00gを加え、16時間スターラーを回転させ攪拌することにより、樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り測定溶液とした。
【0194】
はじめに0.90質量%食塩水だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。
【0195】
同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。
【0196】
例えば既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩からなる吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤中の可溶分量を以下の計算式により算出することができる。未知量の場合は滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
【0197】
可溶分(質量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100
<残存モノマー量(ppm)>
吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤1.00gを0.90質量%食塩水184.3gに分散させ、長さ25mmの攪拌子を用い、マグネティックスターラーで16時間攪拌(回転数400〜500rpm)して残存モノマーを抽出した。その後、膨潤ゲルを(トーヨー濾紙(株)製、No.2、JIS P 3801で規定された保留粒子径5μm)を用いて濾過し、この濾液をHPLCサンプル前処理用フィルタークロマトディスク25A(倉敷紡績株式会社製、水系タイプ、ポアサイズ0.45μm)でさらに濾過して、残存モノマー測定サンプルとした。
【0198】
この残存モノマー測定サンプルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。既知の濃度を示すモノマー標準液を分析して得た検量線を外部標準となし、吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤の0.90質量%食塩水に対する希釈倍率を考慮して、吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤の残存モノマー量を定量した。HPLCの測定条件は、次の通りである。
【0199】
キャリア液:りん酸(85質量%、和光純薬工業株式会社製、試薬特級)3mlを、超純水(比抵抗15MΩ・cm以上)1000mlで希釈したりん酸水溶液
キャリアスピード:0.7ml/min.
カラム:SHODEX RSpak DM−614(昭和電工株式会社)
カラム温度:23±2℃
波長:UV205nm
<ペイントシェーカーテスト>
ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。
【0200】
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1、10分間としたものをペイントシェーカーテスト2とする。
【0201】
浸透後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤が得られる。
【0202】
<含水率>
吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤1.00gを底面の直径が約50mmのアルミカップに計り取り、吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤、およびアルミカップの総質量W(g)を測定した。その後、雰囲気温度180℃のオーブン中に3時間静置して乾燥した。3時間後、オーブンから取り出した吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤、およびアルミカップをデシケーターで十分に室温まで冷却した後、乾燥後の吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤、およびアルミカップの総質量W(g)を求め、次式に従って含水率を求めた。
【0203】
含水率(質量%)=(W−W)/(吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤の質量(g))×100
<表面残存モノマー率(SRMR)>
スクリュー管(マルエム社製、型番No.7(外径35mm×高さ78mm×口内径20mm))中で、粒子状吸水剤1.00gをメタノール(高速液体クロマトグラフ用、キシダ化学株式会社)/2N塩酸=97.5/2.5からなる混合溶媒10.0gに分散させ、長さ25mmの攪拌子を用い、マグネティックスターラーで1時間攪拌(回転数:250rpm)して粒子表面の残存モノマーを抽出した。
【0204】
その後、上澄み液をHPLCサンプル前処理用フィルタークロマトディスク25A(倉敷紡績株式会社製、水系タイプ、ポアサイズ0.45μm)で濾過し、濾液を得た。この濾液をキャリア液(リン酸(85質量%、和光純薬工業株式会社製、試薬特級)3mlを、超純水(比抵抗15MΩ・cm以上)1000mlで希釈したリン酸水溶液)で2倍に希釈し、表面残存モノマー率測定サンプルとした。
【0205】
この表面残存モノマー率測定サンプルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した(HPLCの測定条件は前記<残存モノマー量(ppm)>の項を参照)。次に、前記<残存モノマー量(ppm)>の項で作成した検量線を外部標準となし、得られた数値を粒子状吸水剤のメタノール/2N塩酸混合溶媒およびキャリア液に対する希釈倍率の差を考慮して換算し、粒子状吸水剤の表面残存モノマー量を求めた。表面残存モノマー率(Surface Residual Monomer Ratio)は以下の式によって求めた。
【0206】
表面残存モノマー率(%)=表面残存モノマー量(ppm)/残存モノマー量(ppm)×100
<表面架橋剤に対する吸収容量(SCRC)>
表面架橋剤に対する吸収容量(SCRC)は、表面架橋が施される前の吸水性樹脂粒子の表面架橋工程で使用される各種表面架橋剤水溶液に対する無加圧下での5分間の吸収倍率を示す。
【0207】
吸水性樹脂粒子0.100gを不織布(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒトロンペーパー、形式:GSP−22)製の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、室温で表面架橋剤水溶液(通常100ml程度)中に浸漬した。
【0208】
5分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:形式H−122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂粒子を用いずに行い、その時の質量W(g)を測定した。そして、これらW、Wから、次式に従って表面架橋剤に対する吸収容量(SCRC)(g/g)を算出した。
【0209】
表面架橋剤に対する吸収容量(SCRC)(g/g)
=(W(g)−W(g))/(吸水性樹脂粒子の質量(g))−1
なお、表面架橋剤に対する吸収容量(SCRC)の値が小さいほど、吸水性樹脂粒子への表面架橋剤水溶液の浸透が抑制されており、混合性の向上、ダマの低減に繋がっていることを示している。
【0210】
(製造例1)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸436.4g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4617.9g、純水381.0g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)11.40gを溶解させて反応液とした。
【0211】
次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で20分間脱気した。続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液29.07gおよび0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液24.22gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始された。
【0212】
そして、生成したゲルを粉砕しながら、20〜95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
【0213】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径372μmの不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(A)を得た。吸水性樹脂粒子(A)の遠心分離機保持容量(CRC)は32.3g/g、水可溶分は10.0質量%であった。
【0214】
(実施例1)
製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)100質量部に1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、過硫酸ナトリウム0.1質量部、純水2.7質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された粒子状吸水剤(1)を得た。
【0215】
(実施例2)
前記実施例1において加熱処理時間を40分に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(2)を得た。
【0216】
(実施例3)
前記実施例1において過硫酸ナトリウムの量を0.2質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(3)を得た。
【0217】
(実施例4)
水道用液体硫酸アルミニウム27質量%溶液(朝日化学工業株式会社製)1質量部に対し、60%乳酸ナトリウム水溶液(ピューラック・ジャパン株式会社製)0.17質量部を混合し、透明な均一溶液を得た。
【0218】
前記粒子状吸水剤(1)100質量部にこの水溶液1.0質量部を攪拌下均一に混合し、60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次にこの粒子に前記ペイントシェーカーテスト2を行った。こうして粒子状吸水剤(A)を得た。
【0219】
(実施例5)
前記実施例4において粒子状吸水剤(2)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(B)を得た。
【0220】
(実施例6)
前記実施例4において粒子状吸水剤(3)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(C)を得た。
【0221】
(比較例1)
比較例1、2では、過酸化物を用いずに表面架橋を行った。
【0222】
製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)100質量部に1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水2.7質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された比較粒子状吸水剤(1)を得た。
【0223】
(比較例2)
前記比較例1において加熱処理時間を40分に変えた以外は比較例1と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(2)を得た。
【0224】
(製造例2)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸185.4g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.942g(0.07モル%:対アクリル酸)、および、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.13gを混合した溶液(A)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液148.53gと50℃に調温したイオン交換水159.71gを混合した溶液(B)を、マグネティックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系ですばやく加えて混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液が得られた。
【0225】
得られた単量体水溶液に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液4.29gを加え、数秒攪拌した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されていた。
【0226】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水ゲル状架橋重合体を取り出した。
【0227】
得られた含水ゲル状架橋重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水ゲル状架橋重合体を得た。
【0228】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径350μmの不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(B)を得た。吸水性樹脂粒子(B)の遠心分離機保持容量(CRC)は34.0g/g、水可溶分は11.0質量%であった。
(実施例7)
製造例2で得られた吸水性樹脂粒子(B)100質量部に1,4−ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.6質量部、過硫酸ナトリウム0.1質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された粒子状吸水剤(4)を得た。
【0229】
(実施例8)
前記実施例4において粒子状吸水剤(4)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(D)を得た。
【0230】
(比較例3)
製造例2で得られた吸水性樹脂粒子(B)100質量部に1,4−ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された比較粒子状吸水剤(3)を得た。
【0231】
(比較例4)
前記実施例4において比較粒子状吸水剤(1)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(A)を得た。
【0232】
(比較例5)
前記実施例4において比較粒子状吸水剤(2)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(B)を得た。
【0233】
(比較例6)
前記実施例4において比較粒子状吸水剤(3)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(C)を得た。
【0234】
(実施例9)
製造例2で得られた吸水性樹脂粒子(B)100質量部に1,4−ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.6質量部、過硫酸アンモニウム0.3質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面処理剤を均一に混合した後、混合物を200℃で50分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された粒子状吸水剤(5)を得た。
【0235】
(実施例10)
前記実施例4において粒子状吸水剤(5)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(E)を得た。
【0236】
(比較例7)
前記製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)100質量部に過硫酸ナトリウム0.2質量部、純水2.7質量部の混合液からなる処理剤を均一に混合した後、混合物を200℃で40分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された比較粒子状吸水剤(4)を得た。
【0237】
(比較例8)
前記実施例4において比較粒子状吸水剤(4)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(D)を得た。
【0238】
(比較例9)
前記製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)100質量部に1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、硫酸ナトリウム0.1質量部、純水2.7質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を200℃で40分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された比較粒子状吸水剤(5)を得た。
【0239】
(比較例10)
前記実施例4において比較粒子状吸水剤(5)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(E)を得た。
【0240】
(実施例11)
前記製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)100質量部に3.3%の過硫酸ナトリウム水溶液3.0質量部を均一に混合し、60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、吸水性樹脂粒子(C)を得た。次に得られた吸水性樹脂粒子(C)100質量部に1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水2.7質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された粒子状吸水剤(6)を得た。
【0241】
(実施例12)
前記実施例4において粒子状吸水剤(6)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(F)を得た。
【0242】
(製造例3)
製造例2の方法において、分級条件を目開き710μmと目開き45μmのJIS標準篩での分級に変更し、粒度を調整した以外は製造例2と同様にして、質量平均粒子径340μmの不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(D)を得た。吸水性樹脂粒子(D)の遠心分離機保持容量(CRC)は33.0g/g、水可溶分は12.5質量%であった。
【0243】
(比較例11)
製造例3で得られた吸水性樹脂粒子(D)を用いた以外は実施例7および実施例8と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(F)を得た。
【0244】
(比較例12)
前記製造例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)100質量部に水3.0質量部を均一に混合し、60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、吸水性樹脂粒子(E)を得た。次に得られた吸水性樹脂粒子(E)100質量部に1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水2.7質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された比較粒子状吸水剤(6)を得た。
【0245】
(比較例13)
前記実施例4において比較粒子状吸水剤(6)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(G)を得た。
【0246】
(比較例14)
前記実施例1において加熱処理をせずに、混合物を石英製セパラブルフラスコ中で攪拌しながら、メタルハライドランプ(ウシオ電機製、UVL−1500M2−N1)を取り付けた紫外線照射装置(ウシオ電機製、UV−152/1MNSC3−AA06)を用いて、照射強度60W/cmで10分間、室温で紫外線を照射したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(7)を得た。
【0247】
上記の実施例および比較例で得られた、粒子状吸水剤(1)〜(6)、粒子状吸水剤(A)〜(F)、比較粒子状吸水剤(1)〜(7)、比較粒子状吸水剤(A)〜(G)の遠心分離機保持容量(CRC)、圧力に対する吸収力(AAP)、食塩水流れ誘導性(SFC)、残存モノマー(RM)、表面残存モノマー率(SRMR)、含水率を測定した結果を表1,2に示す。表1は表面架橋時に過酸化物を使用した場合の結果を表し、表2は表面架橋前の吸水性樹脂に過酸化物を添加した場合の結果を表している。
【0248】
また粒度分布の測定結果を表3に示し、表面架橋剤に対する吸収容量(SCRC)の測定結果を表4に示す。なお、表1中の有機架橋剤「BD」とは1,4−ブタンジオールの略であり、有機架橋剤「PG」とはプロピレングリコールの略である。また、表1,2中「RM」は「Residual Monomer」の略で残存モノマーを表しており、「SRMR」は「Surface Residual Monomer Ratio」の略で表面残存モノマー率を表している。表3において例えば「on710μm」とは目開き710μmのJIS標準篩上に残留している粒子の割合(重量%)を表しており、「thru.45μm」とは、目開き45μmのJIS標準篩を通過した粒子の割合(重量%)を表している。
【0249】
【表1】

【0250】
【表2】

【0251】
【表3】

【0252】
【表4】

【0253】
表1、2の結果から本発明で得られた粒子状吸水剤は通液性において非常に優れた物性を有することが分かる。また、過酸化物を用いることで通液性の向上だけではなく、残存モノマーおよび表面残存モノマー率(SRMR)も大幅に低減されていることが分かる。よって、本発明は通液性と安全性の両方に優れた粒子状吸水剤を簡便に提供することができ、紙おむつなどに使用した場合に優れた性能を示す。
【0254】
また、表4の結果から、有機架橋剤と過硫酸ナトリウムとを併用することによって、表面架橋剤水溶液に対する吸水性樹脂粒子の吸収容量(SCRC)が大幅に低下しており、吸水性樹脂への表面架橋剤の混合性の向上やダマの低減に有効であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0255】
本発明に係る製造方法は、過酸化物と有機架橋剤とを併用して表面架橋工程を行うものであるため、通液性と安全性の両方に優れた粒子状吸水剤を簡便に提供することができる。
【0256】
当該粒子状吸水剤は、優れた吸水特性等を有しているため、種々の用途の吸水保水剤として使用できる。例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の吸収物品用吸水保水剤;水苔代替、土壌改質改良剤、保水剤、農薬効力持続剤等の農園芸用保水剤;内装壁材用結露防止剤、セメント添加剤等の建築用保水剤;リリースコントロール剤、保冷剤、使い捨てカイロ、汚泥凝固剤、食品用鮮度保持剤、イオン交換カラム材料、スラッジまたはオイルの脱水剤、乾燥剤、湿度調整材料等で使用できる。また、当該粒子状吸水剤は、紙おむつ、生理用ナプキンなどの、糞、尿または血液の吸収用衛生材料に特に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0257】
【図1】AAPの測定装置の概略図である。
【図2】SFCの測定装置の概略図である。
【符号の説明】
【0258】
31 タンク
32 ガラス管
33 0.69質量%食塩水
34 コック付きL字管
35 コック
40 容器
41 セル
42 ステンレス製金網
43 ステンレス製金網
44 膨潤ゲル
45 ガラスフィルター
46 ピストン
47 ピストン中の穴
48 補集容器
49 上皿天秤
100 プラスチックの支持円筒
101 ステンレス製400メッシュの金網
102 膨潤ゲル
103 ピストン
104 荷重(おもり)
105 ペトリ皿
106 ガラスフィルター
107 濾紙
108 0.90質量%食塩水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和単量体水溶液を重合する重合工程を少なくとも経て得られる吸水性樹脂粒子を、カルボキシル基と反応しうる有機架橋剤の存在下で表面架橋する表面架橋工程を含む粒子状吸水剤の製造方法であって、
上記表面架橋工程においては紫外線以下の波長を有する活性エネルギー線を上記製造方法の反応系に照射せず、かつ、
上記表面架橋工程が、過酸化物、上記有機架橋剤、および水の存在下において行われることを特徴とする粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項2】
上記表面架橋工程において、過酸化物と、上記有機架橋剤とを含む水溶液を上記反応系に添加することを特徴とする請求項1に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項3】
上記表面架橋工程における加熱温度が150℃以上250℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項4】
上記有機架橋剤が脱水反応性架橋剤であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項5】
上記過酸化物が過硫酸塩であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項6】
上記重合工程以降の工程において、さらに水溶性多価金属塩を混合することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項7】
粒子状吸水剤の生理食塩水に対する遠心分離機保持容量(CRC)が25(g/g)以上であり、かつ、食塩水流れ誘導性(SFC)が40(×10−7・cm・s・g−1)以上であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項8】
上記不飽和単量体がアクリル酸およびその塩から選ばれる単量体を70モル%以上100モル%以下含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項9】
アクリル酸および/またはその塩から選ばれる単量体70モル%以上100モル%以下を繰り返し単位とする吸水性樹脂粒子をカルボキシル基と反応しうる有機架橋剤で表面架橋した粒子状吸水剤であって、下記(i)〜(iii)を満たすことを特徴とする粒子状吸水剤。
(i) 下記の式1で算出される表面残存モノマー率が0%より大きく5%以下
表面残存モノマー率(%)=表面残存モノマー量(ppm)/残存モノマー量(ppm)×100・・・式1
(ii) 食塩水流れ誘導性(SFC)が40(×10−7・cm・s・g−1)以上
(iii)含水率が5%未満
【請求項10】
さらに、以下の(iv)〜(vi)を満たすことを特徴とする請求項9に記載の粒子状吸水剤。
(iv)質量平均粒子径(D50)が250μm以上500μm以下
(v) 粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.23以上0.45以下
(vi)粒子径150μm未満の粒子の割合が粒子状吸水剤全体の5質量%以下
【請求項11】
残存モノマーが150ppm以上300ppm以下であることを特徴とする請求項9または10に記載の粒子状吸水剤。
【請求項12】
上記表面架橋が過酸化物、上記有機架橋剤および水溶性多価金属塩によって行われることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項13】
表面架橋工程で用いられる有機架橋剤と過酸化物の重量比が1:0.005〜1:1であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−119757(P2007−119757A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263491(P2006−263491)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】