粒径分布測定装置
【課題】粒径分布測定装置においてセルの交換に要する作業を省力化するとともに、その交換に伴い装置の作動を制御するソフトウェアをそのセルタイプに合わせて自動的に変更する。
【解決手段】セルCと、そのセルC1、C2、C3に収容された粒子群に光Lを照射する光源2と、光Lを照射された粒子群から発生する回折光及び/又は散乱光LSの光強度を検出する複数の光検出器31,32、前記各光検出器31、32から出力される光強度信号に基づいて前記粒子群の粒径分布を算出する情報処理装置5とを備えた粒径分布測定装置1において、複数のセルC1、C2、C3をの移動保持手段6と停止手段と、前記光照射位置を識別するセル識別手段7とをさらに備 え、前記セル識別手段7から出力されるセル識別信号を受信し、そのセル識別信号が示すセルC1、C2、C3に対応する作動制御プログラムに自動的に切り替えるプログラム切替手段52とを備えるようにした。
【解決手段】セルCと、そのセルC1、C2、C3に収容された粒子群に光Lを照射する光源2と、光Lを照射された粒子群から発生する回折光及び/又は散乱光LSの光強度を検出する複数の光検出器31,32、前記各光検出器31、32から出力される光強度信号に基づいて前記粒子群の粒径分布を算出する情報処理装置5とを備えた粒径分布測定装置1において、複数のセルC1、C2、C3をの移動保持手段6と停止手段と、前記光照射位置を識別するセル識別手段7とをさらに備 え、前記セル識別手段7から出力されるセル識別信号を受信し、そのセル識別信号が示すセルC1、C2、C3に対応する作動制御プログラムに自動的に切り替えるプログラム切替手段52とを備えるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル内に分散させた粒子群に光を照射し、そのときに発生する回折及び/又は散乱光(以下特に区別する必要がない限り散乱光という)の強度分布に基づいて前記粒子群の粒径分布を測定するいわゆる回折/散乱式粒径分布測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の粒径分布測定装置に用いられるセルには測定方式毎に複数タイプあり、その代表的なものとして、バッチ式セル、湿式フローセルあるいは乾式セル等が知られている。そして従来、粒径分布測定装置には通常1つのセルのみが装置本体にネジ止めされたセルホルダに交換可能に保持されている。しかしながら異なるタイプのセルに交換するには、セルホルダ毎交換しなければならず、その交換にあたっては予め固定されているセルホルダのネジを緩める又は外す等して装置本体外に取り出すか、又はセルを収容している試料室内に邪魔にならないように退避させた後、測定に用いるセルホルダを再びネジを用いて固定する必要があり、その作業にかなりの手間がかかる。特に湿式フロータイプのセルホルダは装置本体内の別箇所に配置してある分散用超音波プローブ、攪拌翼、循環ポンプ等の前処理機構を伴ってパイプにより結合されており、このセルホルダを装置本体外へ取り除く際にはパイプを取り外し、さらにセルホルダを装置に固定しているネジを外す必要があるため、その手間は極めて煩雑である。
【0003】
これに対して、特許文献1に示すように、前記パイプにシリコンチューブ等の柔軟な材質若しくは屈曲又は伸縮可能な管を使用して、パイプとセルホルダとを繋いだままセルホルダを試料室内部に邪魔にならない位置に退避させるようにしたものがある。しかし、これは、他のタイプのセルホルダ(乾式タイプのセルホルダ又はバッチ式セルホルダ等)は不要時に装置本体外へ取り出す必要があるため、やはりセルホルダの交換時には装置本体への固定ネジを外す必要がある。このようにセルの交換、特に違うタイプのセルと交換を行う際に多くの手間を必要とする。
【0004】
さらに、従来の粒径分布測定装置に搭載されているソフトウェアは、いずれか1つのタイプのセル測定方式にしか対応していないため、タイプの異なるセルに交換したとしても、その交換したセルタイプに対応する別のソフトウェアを再度設定しなければならず、作業性の点で問題がある上にソフトウェアの交換忘れによる誤操作の恐れもある。かかる問題点は、異なるタイプのセルに交換する時に特に顕著になるが、同一種のセル(中身は異なる)に交換する際にも少なからず生じうる。
【特許文献1】特開2002−243622
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、この種の粒径分布測定装置においてセルの交換に要する作業を省力化するとともに、その交換に伴い装置の作動を制御するプログラムをそのセル又はセルタイプに合わせて自動的に変更することをその所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る粒径分布測定装置は、セルと、そのセルに収容された粒子群に光を照射する光源と、光を照射された粒子群から発生する回折光及び/又は散乱光の光強度を検出する複数の光検出器と、前記各光検出器から出力される光強度信号に基づいて前記粒子群の粒径分布を算出する情報処理装置とを備えた粒径分布測定装置であって、複数のセルを前記光が照射される光照射位置及びその光照射位置とは異なる位置に設定された退避位置間で移動可能に保持する移動保持手段と、前記光照射位置でいずれか一のセルを停止する停止手段と、前記光照射位置にあるセルを識別してその識別信号を出力するセル識別手段とをさらに備え、前記情報処理装置が、前記セル毎の前記粒径分布測定装置の作動を制御するプログラムである作動制御プログラムを格納している作動制御プログラム格納部と、前記識別手段から出力されるセル識別信号を受信し、そのセル識別信号が示すセルに対応する作動制御プログラムに自動的に切り替えるプログラム切替手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、複数のセルを移動保持手段に保持させたまま、いずれかのセルを選択的に光照射位置に移動させるだけでそのセルに光を照射することができ、しかもこの交換に伴って自動的にそのセルに対応した粒径分布測定装置の作動を制御するプログラムに切り替えられる。故に、セルを変更するのに要する時間を削減することができ、その際のオペレータの作業負担や誤操作の軽減を図れる。
【0008】
ここでセルの交換というのは、異なるタイプのセルに交換することはもちろん、同じタイプのセルであって別のセルに交換することも含む。
【0009】
セルの識別には、セルそのものの形状やセルに貼り付けたバーコードを読み取るといった機構を用いても良いが、より簡単にかつ測定に影響を与えずセル識別を行うには、前記識別手段が前記光照射位置にあるセルを保持しているセルホルダを識別することにより前記セル識別信号を出力するものであることが望ましい。
【0010】
光照射位置にあるセルを退避させれば自動的に他のセルが光照射位置に移動するようにし、セル交換作業をより簡単化するためには、粒径分布測定装置が前記複数のセルを一体的に支持するセル支持部材をさらに備えており、前記移動保持手段が前記セル支持部材を所定の軌道に沿って移動させるものであることが望ましい。
【0011】
バッチ式セル、湿式フローセル、乾式セル等のように異なるタイプのセルでも交換可能とするには、前記移動保持手段が、異なるタイプのセルを複数保持することができるように構成したものであることが望ましい。
【0012】
前記移動保持手段の具体的態様としては、軌道に沿って配置されたレールを備え、前記セルをそのレールに沿って移動可能に構成したものが挙げられる。
【0013】
また、前記停止手段が、ラッチ機構を利用したものであれば、セルの位置決めを正確かつ容易に行える。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明によれば、セルの交換作業における粒径分布測定装置からの複雑な取り付け及び取り外し操作を、移動保持手段に沿った簡単な移動操作で代替することができ、しかもその交換に伴い装置の作動を制御するプログラムをそのセルタイプに合わせて自動的に変更する粒径分布測定装置を提供することができる。故に、測定を変更するのに要する時間を短縮することができ、さらにオペレータの負担を軽減することができ、なおかつ誤操作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係る粒径分布測定装置1は、粒子群に照射光Lを照射した際に生じる散乱光LSの散乱パターン(散乱光強度の角度分布)が、粒子径によって定まることを利用し、前記散乱パターンを検出することによってMIE散乱理論から粒径分布を測定するようにしたものである。この粒径分布測定装置1の模式的概要を図1及び図2に示す。同図中、符号C1、C2、C3は、測定対象粒子群を分散媒中に分散させてなる試料を収容するセルである。前記分散媒は、湿式の場合は水、乾式の場合は空気が一般的である。符号2は、前記セルC1、C2、C3に照射光Lを照射する光源である。この実施形態ではこの光源として例えばコーヒレントなレーザ光を照射する半導体レーザを用いている。符号31、32は、前記セルC1、C2、C3の周囲に配置した光検出器である。そして光Lを照射された粒子群から発生する散乱光LSの光強度を検出する。符号4は、前記光検出器31、32から出力される各散乱光強度信号を受信し変換等の処理を行うバッファ、増幅器等で構成されている信号処理部である。符号5は、信号処理部4で処理された各散乱強度信号の値に基づいて前記粒子群の粒径分布を算出する情報処理装置である。符号8は、光検出器32の受光面中央に透過光Lが収斂するように設定された凸レンズである。
【0017】
しかして本実施形態では、種類の異なる複数のセルC1、C2、C3を図示しないセル収容室内において一体的に支持するセル支持部材9を設けるとともに、さらに移動保持手段6を設けるようにしている。
【0018】
セル支持部材9は、例えば長尺板状をなすもので、その上面に前記セルC1、C2、C3を長辺に沿って一直線上に保持している。具体的には、前記セルC1、C2、C3をセルホルダC1h、C2h、C3hにより着脱可能に保持している。なお、このセル支持部材9には、図2では前記3種類の互いに異なるタイプのセルC1、C2、C3を保持するようにしているが、同タイプのセルを複数保持することも可能である。
【0019】
ここでセルホルダC1h、C2h、C3hは、セルC1、C2、C3をセル支持部材9に保持するためのものであり、例えば矩形板状をなすものである。その長辺は、セルホルダC1h、C2h、C3hの下面に取り付けられるセル支持部材9の幅よりも光軸方向に大きい幅を有しており、その上面に前記セルC1、C2、C3が着脱可能に取り付けられる。
【0020】
セルC1は、乾式タイプのものであり、前記セルホルダC1hと一体になっている。図2に示すように、その上部には粒子を投入するための試料投入口C1tを設け、下部には粒子を吸引する吸引パイプC1vを取り付けており、その間に空気などの分散媒に分散させ、投下した粒子群に照射光Lを照射するための円形などの窓C1wを設けるようにしている。
【0021】
セルC2は、湿式フロータイプのものであり、上下を湿式セルホルダC2hでセル支持部材9に保持するようにしている。そしてセルC2は粒子群を水などの液体溶媒中で分散させておくため図示しない循環ポンプ及び超音波プローブ等の粒子攪拌装置とともに液体循環流路上に設けてある。なお、同図中、符号C2a、C2bは前記液体循環流路を形成するものであって、セルC2の導出入ポートにそれぞれ接続されているパイプC2a、C2bである。
【0022】
セルC3は、微量試料を測定する際に好適に用いられるいわゆるバッチ式のもので、その下部をバッチ式用セルホルダC3hによってセル支持部材9に保持するようにしている。
【0023】
移動保持手段6は、光軸12と直交する直線である軌道10に沿って前記セル収容室の床面に配置したレール11上で、前記セル支持部材9を移動可能に保持するものである。これによって、前記セルC1、C2、C3を光軸12と前記軌道10とが交わる部分である光照射位置Pとそれ以外の部分である退避位置との間で移動し得るようにする。
【0024】
このとき、退避位置にある前記セルC1、C2、C3が光検出器31,32へ入射する散乱光LSを遮ることがないように、例えば軌道10に垂直な平面内にそれら光検出器31、32の位置を設定している。
【0025】
また、光照射位置Pへ移動してきたセルC1、C2、C3をその位置Pで停止させる機構としてスプリング等を用いたラッチ機構を利用した停止手段(図示しない)を設けている。
【0026】
さらに本実施形態に係る粒径分布測定装置1は、前記光照射位置PにあるセルC1、C2、C3を識別してその識別信号を出力するセル識別手段7を設けている。そして、前記情報処理装置5がセル識別信号を受信して、前記粒径分布測定装置1の作動がセルタイプに対応したものとなるようにプログラムを切り替えるようにしている。
【0027】
セル識別手段7は、図3に示すように、ホールセンサ71を有したものであり、セルホルダC1h、C2h、C3hの被識別部72を識別するものである。ここで被識別部72は、前記セルホルダC1h、C2h、C3hの端部であってセルC1、C2、C3が取り付けられていない部分に、一直線上に等間隔で複数個の孔73を設け、さらにセルタイプ毎に異なる孔73に磁石74を配置することにより構成している。また、ホールセンサ71は、前記セルC1、C2、C3のいずれかが光照射位置Pに配置されたときにそのセルホルダC1h、C2h、C3hに設けられた各孔73それぞれに対応するように、そのセルホルダC1h、C2h、C3hの下側に設置している。そして、光照射位置Pにあるセルホルダの被識別部72を検知することによってセルC1、C2、C3を識別し、セル識別信号を出力する。
【0028】
前記情報処理装置5は、図4に示すように、CPU、メモリ、入出力インターフェイス等を備えた汎用乃至専用のコンピュータであり、前記メモリの所定領域に記憶させた所定プログラムに従ってCPU、周辺機器等を協働させることにより、図5に示すように、作動制御プログラム格納部51、プログラム切替手段52等としての機能も発揮する。
【0029】
作動制御プログラム格納部51は、粒径分布測定装置1のセルタイプに対応する作動を制御するプログラムである作動制御プログラムを格納している。本実施形態においては乾式セルC1に対応する測定プログラムを格納している乾式セル測定プログラム格納部511と湿式フローセルC2に対応する測定プログラムを格納している湿式フローセル測定プログラム格納部512とバッチ式セルC3に対応する測定プログラムを格納しているバッチ式測定プログラム格納部513とを有している。
【0030】
乾式セル測定プログラムは、粒径分布測定装置1の画面上に図6の測定画面13及び図7の条件設定ダイアログ14を表示し、さらに乾式用演算処理、初期化処理及び乾式用測定シーケンスの設定を行う。測定画面13は乾式用測定131、ブランク測定132、光軸調整133等を行うための画面である。条件設定ダイアログ14は、乾式用測定の際の詳細な設定を行うためのものである。具体的な条件設定には、温度設定141、自動プリント又は自動セーブの設定142、試料調整(ふるい速度設定143、吸引の設定144、圧縮空気圧設定145、)、ブランク測定の時間設定146等の条件設定がある。
【0031】
湿式フローセル測定プログラムは、粒径分布測定装置1の画面上に図8の測定画面15及び図9の条件設定ダイアログ16を表示し、さらに湿式用演算処理、初期化処理及び湿式用測定シーケンスの設定を行う。測定画面15は湿式用測定150、光軸調整151、ブランク測定152の他排水153、部分排水154、脱泡155、分散媒の自動注入156、部分的な分散媒の自動注入157、洗浄158、試料の自動希釈159等を行うための画面である。条件設定ダイアログ16は湿式用測定の際の詳細な設定を行うためのものである。具体的な条件設定には、温度設定161、自動プリント又は自動セーブの設定162、ブランク測定の時間設定163、試料調整(循環速度設定164、超音波時間/強度設定165、166)、洗浄回数設定167、等の条件設定がある。
【0032】
バッチ式測定プログラムは、画面上に図10の測定画面17を表示し、演算処理、初期化処理又は測定シーケンス等の設定を行う。測定画面17は、バッチ式用測定171、光軸調整172、ブランク測定173等を行うためのものである。
【0033】
プログラム切替手段52は、前記セル識別手段7から出力されたセル識別信号を受信して、そのセル識別信号によってセルタイプを特定する。そして、粒径分布測定装置1をそのセルタイプに対応した作動仕様とするようにプログラムを変更する。これにより、画面表示又は処理条件を自動的に変更することができる。
【0034】
次に本装置1を用いた粒径分布測定手順の一例について以下に述べる。
【0035】
まずオペレータが、セル支持部材9をレール11上でスライドさせ、所望のセル(例えばC2)を光照射位置Pに移動する。この状態が図12に示す状態である。光照射位置PにセルC2があるかどうかはラッチ機構によるクリックストップ感で判断できる。そして、図11に示すように、セル識別手段7がセルを識別しセル識別信号を出力する(ステップS1)。この出力されたセル識別手段7をプログラム切替手段52が受信して(ステップS2)、そのセルC2に対応したプログラムを選択し起動する(ステップS3)。そして、選択したプログラムに基づいて粒径分布測定装置1の画面に図8及び図9のように表示し、処理条件等を設定(変更)する(ステップS4)。その後、従来通りに測定を開始すれば(ステップS5)、セルC2に収容された粒子群の粒径分布が得られる。
【0036】
別のセルC1、C3の粒子群を測定する場合は、前記同様セル支持部材9をスライドさせればよい。
【0037】
なお、セルC1、C2にはパイプC1v、C2a、C2bがそれぞれ連結されているが、前述したようにそれらのパイプC1v、C2a、C2bは、その一部又は全部が柔軟性を有するため、セルC1、C2の移動に伴って変形することから着脱が容易で、セルC1、C2の移動を阻害したりすることはない。
【0038】
図13は乾式セルC1を、図14はバッチ式セルC3を退避位置から光照射位置Pに移動し終えた状態を示している。
【0039】
このように本実施形態によれば、セル交換に際しては各セルC1、C2、C3を移動保持手段6を利用してスライドさせるだけで良く、それらの取り付け及び取り外しが不要であるため作業性を阻害することはない。しかもその交換に伴い装置の作動を制御するプログラムをそのセルタイプに合わせて自動的に変更することができる。故に、測定を変更するのに要する時間を短縮することができ、さらにオペレータの負担を軽減することができ、なおかつ所望のセルC1、C2、C3が照射位置Pにセットされているのか画面上のみで確認することができるので、誤操作を防止することができる。
【0040】
また、ラッチ機構を有しているため各セルC1、C2、C3を正確且つ簡単に光照射位置Pに位置決めできる。
【0041】
さらに、1つのセル支持部材10に複数のセルC1、C2、C3を保持させており、一度に光照射位置PからセルC1、C2、C3の退避と光照射位置PへのセルC1、C2、C3の移動を行うことができる。
【0042】
上記に加えて本実施形態では、移動保持手段6のレール12を直線的にすることで退避位置で移動したセルC1、C2、C3が直線上に並ぶため、散乱光LSを遮るセルC1、C2、C3の面積を減らし、光検出器3を配置可能な面積を広く取ることができる。
【0043】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0044】
例えば、同一タイプのセルであってもセルに収容される測定対象が異なれば設定(例えば屈折率の設定等)が異なる場合があるので、同一タイプのセル同士の交換であっても、そのセルに対応したプログラムへ自動的に変更するようにしても良い。
【0045】
前記実施形態では乾式セル、湿式フローセル及びバッチ式セルを用いた粒径分布測定装置を示したが、セルの組み合わせはこれらに限るものではなく、例えば乾式セルと湿式フローセルの2種類を用いたものでも良い。あるいは、湿式フローセルとバッチ式セルの2種類を用いたものでも構わない。
【0046】
セル識別手段の被識別部は、孔に磁石を配置するものに限らず、バーコード等でも良いし、被識別部を光の入射方向のセルホルダ側面に設けても良い。
【0047】
さらに、前記実施形態では孔が4個であったが、例えばセルタイプの数だけ孔を設けても良いし、磁石を配置する孔の数を変えても構わない。
【0048】
また軌道は直線に限らず、例えば湾曲したものでも構わない。
【0049】
それから移動保持手段には、レールを用いたもののみならず、例えばロボットアームやベルトコンベア等も挙げられる。
【0050】
そのうえ、セルを移動させるためのアクチュエータを備えたものであれば、オペレータがセルを自ら移動させる必要が無く、セル又はセルホルダの交換をさらに省力化することができる。
【0051】
また、セル支持部材を測定装置本体へ着脱可能且つ複数取り付け可能とし、さらに複数のセル支持部材を連結可能としたものであれば、必要に応じた数のセルを備えることができ、光照射位置と退避位置間での移動とそれぞれの位置での固定を同時に行うことができる。
【0052】
さらに、照射光が試料を照射するようセル支持部材と各種セルを適切な距離で固定する取り替え可能なアダプタ等を装着可能としたものであれば、様々なタイプのセル又はセルホルダを目的に応じて備えることが可能となり、既存の又は今後現れる未知のセル等の利用にも対応できる。
【0053】
もちろん、情報処理装置、信号処理部、粒径分布測定装置の制御部及び装置本体が一体となっているものではなく、例えば、信号処理部と情報処理装置とが粒径分布測定装置本体の外部にあるものでも良い。あるいは、情報処理装置、信号処理部及び粒径分布測定装置の制御部が装置本体の外部にあるものでも構わない。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態における粒径分布測定装置の構成を示す模式的全体図。
【図2】同実施形態における移動保持手段近傍を示した斜視図。
【図3】同実施形態におけるセル識別手段の構成を示す模式図。
【図4】同実施形態における情報処理装置の機器構成を示す機器構成図。
【図5】同実施形態における情報処理装置の機能構成を示す機能ブロック図。
【図6】同実施形態における乾式セルに対応した測定画面を示す図。
【図7】同実施形態における乾式セルに対応した条件設定ダイアログを示す図。
【図8】同実施形態における湿式フローセルに対応した測定画面を示す図。
【図9】同実施形態における湿式フローセルに対応した条件設定ダイアログを示す図。
【図10】同実施形態におけるバッチ式セルに対応した測定画面を示す図。
【図11】同実施形態における粒径分布測定装置の作動の切替を示すフローチャート。
【図12】同実施形態において湿式フローセルが選択された場合を示している平面図。
【図13】同実施形態において乾式セルが選択された場合を示している平面図。
【図14】同実施形態においてバッチ式セルが選択された状態を示している平面図。
【符号の説明】
【0055】
1・・・粒径分布測定装置
C1、C2、C3・・・セル
2・・・光源
31、32・・・光検出器
5・・・情報処理装置
51・・・作動制御プログラム格納部
52・・・プログラム切替手段
6・・・移動保持手段
7・・・セル識別手段
9・・・セル支持部材
10・・・軌道
11・・・レール
12・・・光軸
L・・・光
LS・・・回折及び/又は散乱光
P・・・光照射位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル内に分散させた粒子群に光を照射し、そのときに発生する回折及び/又は散乱光(以下特に区別する必要がない限り散乱光という)の強度分布に基づいて前記粒子群の粒径分布を測定するいわゆる回折/散乱式粒径分布測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の粒径分布測定装置に用いられるセルには測定方式毎に複数タイプあり、その代表的なものとして、バッチ式セル、湿式フローセルあるいは乾式セル等が知られている。そして従来、粒径分布測定装置には通常1つのセルのみが装置本体にネジ止めされたセルホルダに交換可能に保持されている。しかしながら異なるタイプのセルに交換するには、セルホルダ毎交換しなければならず、その交換にあたっては予め固定されているセルホルダのネジを緩める又は外す等して装置本体外に取り出すか、又はセルを収容している試料室内に邪魔にならないように退避させた後、測定に用いるセルホルダを再びネジを用いて固定する必要があり、その作業にかなりの手間がかかる。特に湿式フロータイプのセルホルダは装置本体内の別箇所に配置してある分散用超音波プローブ、攪拌翼、循環ポンプ等の前処理機構を伴ってパイプにより結合されており、このセルホルダを装置本体外へ取り除く際にはパイプを取り外し、さらにセルホルダを装置に固定しているネジを外す必要があるため、その手間は極めて煩雑である。
【0003】
これに対して、特許文献1に示すように、前記パイプにシリコンチューブ等の柔軟な材質若しくは屈曲又は伸縮可能な管を使用して、パイプとセルホルダとを繋いだままセルホルダを試料室内部に邪魔にならない位置に退避させるようにしたものがある。しかし、これは、他のタイプのセルホルダ(乾式タイプのセルホルダ又はバッチ式セルホルダ等)は不要時に装置本体外へ取り出す必要があるため、やはりセルホルダの交換時には装置本体への固定ネジを外す必要がある。このようにセルの交換、特に違うタイプのセルと交換を行う際に多くの手間を必要とする。
【0004】
さらに、従来の粒径分布測定装置に搭載されているソフトウェアは、いずれか1つのタイプのセル測定方式にしか対応していないため、タイプの異なるセルに交換したとしても、その交換したセルタイプに対応する別のソフトウェアを再度設定しなければならず、作業性の点で問題がある上にソフトウェアの交換忘れによる誤操作の恐れもある。かかる問題点は、異なるタイプのセルに交換する時に特に顕著になるが、同一種のセル(中身は異なる)に交換する際にも少なからず生じうる。
【特許文献1】特開2002−243622
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、この種の粒径分布測定装置においてセルの交換に要する作業を省力化するとともに、その交換に伴い装置の作動を制御するプログラムをそのセル又はセルタイプに合わせて自動的に変更することをその所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る粒径分布測定装置は、セルと、そのセルに収容された粒子群に光を照射する光源と、光を照射された粒子群から発生する回折光及び/又は散乱光の光強度を検出する複数の光検出器と、前記各光検出器から出力される光強度信号に基づいて前記粒子群の粒径分布を算出する情報処理装置とを備えた粒径分布測定装置であって、複数のセルを前記光が照射される光照射位置及びその光照射位置とは異なる位置に設定された退避位置間で移動可能に保持する移動保持手段と、前記光照射位置でいずれか一のセルを停止する停止手段と、前記光照射位置にあるセルを識別してその識別信号を出力するセル識別手段とをさらに備え、前記情報処理装置が、前記セル毎の前記粒径分布測定装置の作動を制御するプログラムである作動制御プログラムを格納している作動制御プログラム格納部と、前記識別手段から出力されるセル識別信号を受信し、そのセル識別信号が示すセルに対応する作動制御プログラムに自動的に切り替えるプログラム切替手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、複数のセルを移動保持手段に保持させたまま、いずれかのセルを選択的に光照射位置に移動させるだけでそのセルに光を照射することができ、しかもこの交換に伴って自動的にそのセルに対応した粒径分布測定装置の作動を制御するプログラムに切り替えられる。故に、セルを変更するのに要する時間を削減することができ、その際のオペレータの作業負担や誤操作の軽減を図れる。
【0008】
ここでセルの交換というのは、異なるタイプのセルに交換することはもちろん、同じタイプのセルであって別のセルに交換することも含む。
【0009】
セルの識別には、セルそのものの形状やセルに貼り付けたバーコードを読み取るといった機構を用いても良いが、より簡単にかつ測定に影響を与えずセル識別を行うには、前記識別手段が前記光照射位置にあるセルを保持しているセルホルダを識別することにより前記セル識別信号を出力するものであることが望ましい。
【0010】
光照射位置にあるセルを退避させれば自動的に他のセルが光照射位置に移動するようにし、セル交換作業をより簡単化するためには、粒径分布測定装置が前記複数のセルを一体的に支持するセル支持部材をさらに備えており、前記移動保持手段が前記セル支持部材を所定の軌道に沿って移動させるものであることが望ましい。
【0011】
バッチ式セル、湿式フローセル、乾式セル等のように異なるタイプのセルでも交換可能とするには、前記移動保持手段が、異なるタイプのセルを複数保持することができるように構成したものであることが望ましい。
【0012】
前記移動保持手段の具体的態様としては、軌道に沿って配置されたレールを備え、前記セルをそのレールに沿って移動可能に構成したものが挙げられる。
【0013】
また、前記停止手段が、ラッチ機構を利用したものであれば、セルの位置決めを正確かつ容易に行える。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明によれば、セルの交換作業における粒径分布測定装置からの複雑な取り付け及び取り外し操作を、移動保持手段に沿った簡単な移動操作で代替することができ、しかもその交換に伴い装置の作動を制御するプログラムをそのセルタイプに合わせて自動的に変更する粒径分布測定装置を提供することができる。故に、測定を変更するのに要する時間を短縮することができ、さらにオペレータの負担を軽減することができ、なおかつ誤操作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係る粒径分布測定装置1は、粒子群に照射光Lを照射した際に生じる散乱光LSの散乱パターン(散乱光強度の角度分布)が、粒子径によって定まることを利用し、前記散乱パターンを検出することによってMIE散乱理論から粒径分布を測定するようにしたものである。この粒径分布測定装置1の模式的概要を図1及び図2に示す。同図中、符号C1、C2、C3は、測定対象粒子群を分散媒中に分散させてなる試料を収容するセルである。前記分散媒は、湿式の場合は水、乾式の場合は空気が一般的である。符号2は、前記セルC1、C2、C3に照射光Lを照射する光源である。この実施形態ではこの光源として例えばコーヒレントなレーザ光を照射する半導体レーザを用いている。符号31、32は、前記セルC1、C2、C3の周囲に配置した光検出器である。そして光Lを照射された粒子群から発生する散乱光LSの光強度を検出する。符号4は、前記光検出器31、32から出力される各散乱光強度信号を受信し変換等の処理を行うバッファ、増幅器等で構成されている信号処理部である。符号5は、信号処理部4で処理された各散乱強度信号の値に基づいて前記粒子群の粒径分布を算出する情報処理装置である。符号8は、光検出器32の受光面中央に透過光Lが収斂するように設定された凸レンズである。
【0017】
しかして本実施形態では、種類の異なる複数のセルC1、C2、C3を図示しないセル収容室内において一体的に支持するセル支持部材9を設けるとともに、さらに移動保持手段6を設けるようにしている。
【0018】
セル支持部材9は、例えば長尺板状をなすもので、その上面に前記セルC1、C2、C3を長辺に沿って一直線上に保持している。具体的には、前記セルC1、C2、C3をセルホルダC1h、C2h、C3hにより着脱可能に保持している。なお、このセル支持部材9には、図2では前記3種類の互いに異なるタイプのセルC1、C2、C3を保持するようにしているが、同タイプのセルを複数保持することも可能である。
【0019】
ここでセルホルダC1h、C2h、C3hは、セルC1、C2、C3をセル支持部材9に保持するためのものであり、例えば矩形板状をなすものである。その長辺は、セルホルダC1h、C2h、C3hの下面に取り付けられるセル支持部材9の幅よりも光軸方向に大きい幅を有しており、その上面に前記セルC1、C2、C3が着脱可能に取り付けられる。
【0020】
セルC1は、乾式タイプのものであり、前記セルホルダC1hと一体になっている。図2に示すように、その上部には粒子を投入するための試料投入口C1tを設け、下部には粒子を吸引する吸引パイプC1vを取り付けており、その間に空気などの分散媒に分散させ、投下した粒子群に照射光Lを照射するための円形などの窓C1wを設けるようにしている。
【0021】
セルC2は、湿式フロータイプのものであり、上下を湿式セルホルダC2hでセル支持部材9に保持するようにしている。そしてセルC2は粒子群を水などの液体溶媒中で分散させておくため図示しない循環ポンプ及び超音波プローブ等の粒子攪拌装置とともに液体循環流路上に設けてある。なお、同図中、符号C2a、C2bは前記液体循環流路を形成するものであって、セルC2の導出入ポートにそれぞれ接続されているパイプC2a、C2bである。
【0022】
セルC3は、微量試料を測定する際に好適に用いられるいわゆるバッチ式のもので、その下部をバッチ式用セルホルダC3hによってセル支持部材9に保持するようにしている。
【0023】
移動保持手段6は、光軸12と直交する直線である軌道10に沿って前記セル収容室の床面に配置したレール11上で、前記セル支持部材9を移動可能に保持するものである。これによって、前記セルC1、C2、C3を光軸12と前記軌道10とが交わる部分である光照射位置Pとそれ以外の部分である退避位置との間で移動し得るようにする。
【0024】
このとき、退避位置にある前記セルC1、C2、C3が光検出器31,32へ入射する散乱光LSを遮ることがないように、例えば軌道10に垂直な平面内にそれら光検出器31、32の位置を設定している。
【0025】
また、光照射位置Pへ移動してきたセルC1、C2、C3をその位置Pで停止させる機構としてスプリング等を用いたラッチ機構を利用した停止手段(図示しない)を設けている。
【0026】
さらに本実施形態に係る粒径分布測定装置1は、前記光照射位置PにあるセルC1、C2、C3を識別してその識別信号を出力するセル識別手段7を設けている。そして、前記情報処理装置5がセル識別信号を受信して、前記粒径分布測定装置1の作動がセルタイプに対応したものとなるようにプログラムを切り替えるようにしている。
【0027】
セル識別手段7は、図3に示すように、ホールセンサ71を有したものであり、セルホルダC1h、C2h、C3hの被識別部72を識別するものである。ここで被識別部72は、前記セルホルダC1h、C2h、C3hの端部であってセルC1、C2、C3が取り付けられていない部分に、一直線上に等間隔で複数個の孔73を設け、さらにセルタイプ毎に異なる孔73に磁石74を配置することにより構成している。また、ホールセンサ71は、前記セルC1、C2、C3のいずれかが光照射位置Pに配置されたときにそのセルホルダC1h、C2h、C3hに設けられた各孔73それぞれに対応するように、そのセルホルダC1h、C2h、C3hの下側に設置している。そして、光照射位置Pにあるセルホルダの被識別部72を検知することによってセルC1、C2、C3を識別し、セル識別信号を出力する。
【0028】
前記情報処理装置5は、図4に示すように、CPU、メモリ、入出力インターフェイス等を備えた汎用乃至専用のコンピュータであり、前記メモリの所定領域に記憶させた所定プログラムに従ってCPU、周辺機器等を協働させることにより、図5に示すように、作動制御プログラム格納部51、プログラム切替手段52等としての機能も発揮する。
【0029】
作動制御プログラム格納部51は、粒径分布測定装置1のセルタイプに対応する作動を制御するプログラムである作動制御プログラムを格納している。本実施形態においては乾式セルC1に対応する測定プログラムを格納している乾式セル測定プログラム格納部511と湿式フローセルC2に対応する測定プログラムを格納している湿式フローセル測定プログラム格納部512とバッチ式セルC3に対応する測定プログラムを格納しているバッチ式測定プログラム格納部513とを有している。
【0030】
乾式セル測定プログラムは、粒径分布測定装置1の画面上に図6の測定画面13及び図7の条件設定ダイアログ14を表示し、さらに乾式用演算処理、初期化処理及び乾式用測定シーケンスの設定を行う。測定画面13は乾式用測定131、ブランク測定132、光軸調整133等を行うための画面である。条件設定ダイアログ14は、乾式用測定の際の詳細な設定を行うためのものである。具体的な条件設定には、温度設定141、自動プリント又は自動セーブの設定142、試料調整(ふるい速度設定143、吸引の設定144、圧縮空気圧設定145、)、ブランク測定の時間設定146等の条件設定がある。
【0031】
湿式フローセル測定プログラムは、粒径分布測定装置1の画面上に図8の測定画面15及び図9の条件設定ダイアログ16を表示し、さらに湿式用演算処理、初期化処理及び湿式用測定シーケンスの設定を行う。測定画面15は湿式用測定150、光軸調整151、ブランク測定152の他排水153、部分排水154、脱泡155、分散媒の自動注入156、部分的な分散媒の自動注入157、洗浄158、試料の自動希釈159等を行うための画面である。条件設定ダイアログ16は湿式用測定の際の詳細な設定を行うためのものである。具体的な条件設定には、温度設定161、自動プリント又は自動セーブの設定162、ブランク測定の時間設定163、試料調整(循環速度設定164、超音波時間/強度設定165、166)、洗浄回数設定167、等の条件設定がある。
【0032】
バッチ式測定プログラムは、画面上に図10の測定画面17を表示し、演算処理、初期化処理又は測定シーケンス等の設定を行う。測定画面17は、バッチ式用測定171、光軸調整172、ブランク測定173等を行うためのものである。
【0033】
プログラム切替手段52は、前記セル識別手段7から出力されたセル識別信号を受信して、そのセル識別信号によってセルタイプを特定する。そして、粒径分布測定装置1をそのセルタイプに対応した作動仕様とするようにプログラムを変更する。これにより、画面表示又は処理条件を自動的に変更することができる。
【0034】
次に本装置1を用いた粒径分布測定手順の一例について以下に述べる。
【0035】
まずオペレータが、セル支持部材9をレール11上でスライドさせ、所望のセル(例えばC2)を光照射位置Pに移動する。この状態が図12に示す状態である。光照射位置PにセルC2があるかどうかはラッチ機構によるクリックストップ感で判断できる。そして、図11に示すように、セル識別手段7がセルを識別しセル識別信号を出力する(ステップS1)。この出力されたセル識別手段7をプログラム切替手段52が受信して(ステップS2)、そのセルC2に対応したプログラムを選択し起動する(ステップS3)。そして、選択したプログラムに基づいて粒径分布測定装置1の画面に図8及び図9のように表示し、処理条件等を設定(変更)する(ステップS4)。その後、従来通りに測定を開始すれば(ステップS5)、セルC2に収容された粒子群の粒径分布が得られる。
【0036】
別のセルC1、C3の粒子群を測定する場合は、前記同様セル支持部材9をスライドさせればよい。
【0037】
なお、セルC1、C2にはパイプC1v、C2a、C2bがそれぞれ連結されているが、前述したようにそれらのパイプC1v、C2a、C2bは、その一部又は全部が柔軟性を有するため、セルC1、C2の移動に伴って変形することから着脱が容易で、セルC1、C2の移動を阻害したりすることはない。
【0038】
図13は乾式セルC1を、図14はバッチ式セルC3を退避位置から光照射位置Pに移動し終えた状態を示している。
【0039】
このように本実施形態によれば、セル交換に際しては各セルC1、C2、C3を移動保持手段6を利用してスライドさせるだけで良く、それらの取り付け及び取り外しが不要であるため作業性を阻害することはない。しかもその交換に伴い装置の作動を制御するプログラムをそのセルタイプに合わせて自動的に変更することができる。故に、測定を変更するのに要する時間を短縮することができ、さらにオペレータの負担を軽減することができ、なおかつ所望のセルC1、C2、C3が照射位置Pにセットされているのか画面上のみで確認することができるので、誤操作を防止することができる。
【0040】
また、ラッチ機構を有しているため各セルC1、C2、C3を正確且つ簡単に光照射位置Pに位置決めできる。
【0041】
さらに、1つのセル支持部材10に複数のセルC1、C2、C3を保持させており、一度に光照射位置PからセルC1、C2、C3の退避と光照射位置PへのセルC1、C2、C3の移動を行うことができる。
【0042】
上記に加えて本実施形態では、移動保持手段6のレール12を直線的にすることで退避位置で移動したセルC1、C2、C3が直線上に並ぶため、散乱光LSを遮るセルC1、C2、C3の面積を減らし、光検出器3を配置可能な面積を広く取ることができる。
【0043】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0044】
例えば、同一タイプのセルであってもセルに収容される測定対象が異なれば設定(例えば屈折率の設定等)が異なる場合があるので、同一タイプのセル同士の交換であっても、そのセルに対応したプログラムへ自動的に変更するようにしても良い。
【0045】
前記実施形態では乾式セル、湿式フローセル及びバッチ式セルを用いた粒径分布測定装置を示したが、セルの組み合わせはこれらに限るものではなく、例えば乾式セルと湿式フローセルの2種類を用いたものでも良い。あるいは、湿式フローセルとバッチ式セルの2種類を用いたものでも構わない。
【0046】
セル識別手段の被識別部は、孔に磁石を配置するものに限らず、バーコード等でも良いし、被識別部を光の入射方向のセルホルダ側面に設けても良い。
【0047】
さらに、前記実施形態では孔が4個であったが、例えばセルタイプの数だけ孔を設けても良いし、磁石を配置する孔の数を変えても構わない。
【0048】
また軌道は直線に限らず、例えば湾曲したものでも構わない。
【0049】
それから移動保持手段には、レールを用いたもののみならず、例えばロボットアームやベルトコンベア等も挙げられる。
【0050】
そのうえ、セルを移動させるためのアクチュエータを備えたものであれば、オペレータがセルを自ら移動させる必要が無く、セル又はセルホルダの交換をさらに省力化することができる。
【0051】
また、セル支持部材を測定装置本体へ着脱可能且つ複数取り付け可能とし、さらに複数のセル支持部材を連結可能としたものであれば、必要に応じた数のセルを備えることができ、光照射位置と退避位置間での移動とそれぞれの位置での固定を同時に行うことができる。
【0052】
さらに、照射光が試料を照射するようセル支持部材と各種セルを適切な距離で固定する取り替え可能なアダプタ等を装着可能としたものであれば、様々なタイプのセル又はセルホルダを目的に応じて備えることが可能となり、既存の又は今後現れる未知のセル等の利用にも対応できる。
【0053】
もちろん、情報処理装置、信号処理部、粒径分布測定装置の制御部及び装置本体が一体となっているものではなく、例えば、信号処理部と情報処理装置とが粒径分布測定装置本体の外部にあるものでも良い。あるいは、情報処理装置、信号処理部及び粒径分布測定装置の制御部が装置本体の外部にあるものでも構わない。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態における粒径分布測定装置の構成を示す模式的全体図。
【図2】同実施形態における移動保持手段近傍を示した斜視図。
【図3】同実施形態におけるセル識別手段の構成を示す模式図。
【図4】同実施形態における情報処理装置の機器構成を示す機器構成図。
【図5】同実施形態における情報処理装置の機能構成を示す機能ブロック図。
【図6】同実施形態における乾式セルに対応した測定画面を示す図。
【図7】同実施形態における乾式セルに対応した条件設定ダイアログを示す図。
【図8】同実施形態における湿式フローセルに対応した測定画面を示す図。
【図9】同実施形態における湿式フローセルに対応した条件設定ダイアログを示す図。
【図10】同実施形態におけるバッチ式セルに対応した測定画面を示す図。
【図11】同実施形態における粒径分布測定装置の作動の切替を示すフローチャート。
【図12】同実施形態において湿式フローセルが選択された場合を示している平面図。
【図13】同実施形態において乾式セルが選択された場合を示している平面図。
【図14】同実施形態においてバッチ式セルが選択された状態を示している平面図。
【符号の説明】
【0055】
1・・・粒径分布測定装置
C1、C2、C3・・・セル
2・・・光源
31、32・・・光検出器
5・・・情報処理装置
51・・・作動制御プログラム格納部
52・・・プログラム切替手段
6・・・移動保持手段
7・・・セル識別手段
9・・・セル支持部材
10・・・軌道
11・・・レール
12・・・光軸
L・・・光
LS・・・回折及び/又は散乱光
P・・・光照射位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルと、そのセルに収容された粒子群に光を照射する光源と、光を照射された粒子群から発生する回折光及び/又は散乱光の光強度を検出する複数の光検出器と、前記各光検出器から出力される光強度信号に基づいて前記粒子群の粒径分布を算出する情報処理装置とを備えた粒径分布測定装置において、
複数のセルを前記光が照射される光照射位置及びその光照射位置とは異なる位置に設定された退避位置間で移動可能に保持する移動保持手段と、
前記光照射位置でいずれか一のセルを選択的に停止させる停止手段と、
前記光照射位置にあるセルを識別してその識別信号を出力するセル識別手段とをさらに備え、
前記情報処理装置が、前記セル毎に対応する前記粒径分布測定装置の作動を制御するプログラムである作動制御プログラムを格納している作動制御プログラム格納部と、
前記セル識別手段から出力されるセル識別信号を受信し、そのセル識別信号が示すセルに対応する作動制御プログラムに自動的に切り替えるプログラム切替手段とを備えたことを特徴とする粒径分布測定装置。
【請求項2】
前記セル識別手段が、前記光照射位置にあるセルを保持しているセルホルダを識別することにより前記セル識別信号を出力するものであることを特徴とする請求項1記載の粒径分布測定装置。
【請求項3】
前記複数のセルを一体的に支持するセル支持部材をさらに備えており、前記移動保持手段が前記セル支持部材を所定の軌道に沿って移動させるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の粒径分布測定装置。
【請求項4】
前記移動保持手段が、異なるタイプのセルを複数保持することができるものであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の粒径分布測定装置。
【請求項5】
前記移動保持手段が、軌道に沿って配置されたレールを備え、前記セルをそのレールに沿って移動させるものであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の粒径分布測定装置。
【請求項6】
前記停止手段が、ラッチ機構を利用したものであることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の粒径分布測定装置。
【請求項1】
セルと、そのセルに収容された粒子群に光を照射する光源と、光を照射された粒子群から発生する回折光及び/又は散乱光の光強度を検出する複数の光検出器と、前記各光検出器から出力される光強度信号に基づいて前記粒子群の粒径分布を算出する情報処理装置とを備えた粒径分布測定装置において、
複数のセルを前記光が照射される光照射位置及びその光照射位置とは異なる位置に設定された退避位置間で移動可能に保持する移動保持手段と、
前記光照射位置でいずれか一のセルを選択的に停止させる停止手段と、
前記光照射位置にあるセルを識別してその識別信号を出力するセル識別手段とをさらに備え、
前記情報処理装置が、前記セル毎に対応する前記粒径分布測定装置の作動を制御するプログラムである作動制御プログラムを格納している作動制御プログラム格納部と、
前記セル識別手段から出力されるセル識別信号を受信し、そのセル識別信号が示すセルに対応する作動制御プログラムに自動的に切り替えるプログラム切替手段とを備えたことを特徴とする粒径分布測定装置。
【請求項2】
前記セル識別手段が、前記光照射位置にあるセルを保持しているセルホルダを識別することにより前記セル識別信号を出力するものであることを特徴とする請求項1記載の粒径分布測定装置。
【請求項3】
前記複数のセルを一体的に支持するセル支持部材をさらに備えており、前記移動保持手段が前記セル支持部材を所定の軌道に沿って移動させるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の粒径分布測定装置。
【請求項4】
前記移動保持手段が、異なるタイプのセルを複数保持することができるものであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の粒径分布測定装置。
【請求項5】
前記移動保持手段が、軌道に沿って配置されたレールを備え、前記セルをそのレールに沿って移動させるものであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の粒径分布測定装置。
【請求項6】
前記停止手段が、ラッチ機構を利用したものであることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の粒径分布測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−38601(P2006−38601A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217911(P2004−217911)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
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