説明

粒状化装置の噴霧ヘッド

粒状化装置の噴霧ヘッドであって、断面が楕円形で、中心軸(38)を有する円柱状制御体(36)が設けられたスロット付きノズルを具備する噴霧ヘッドに関する。制御体(36)は、ノズル流路(26)の底面(28)とカバー面(30)間の略中心に配置され、所定位置で中心軸(38)の周りに回動可能となっている。制御体(36)の下方と上方にノズルスロット(42、44)が形成され、該スロットの高さは楕円形・円柱状制御体(36)をその中心軸(38)の周りに回動させることにより調整可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒状化装置の噴霧ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
高炉スラグの粒状化に際しては、液体スラグ流がスラグ流路から粒状化池(タンク)に落下する間に、冷却水が噴霧ヘッドによりこのスラグ流に噴霧される。液体スラグはこの工程中に急冷され、固化して粒体を形成する。
【0003】
高炉スラグ1トンを粒状化(粒体化)するためには、粒状化水4〜12mが必要である。従って、大型の高炉では、噴霧ヘッド内の粒状化水の流量は1000〜4000m/hとなる。粒状化水の量は別として、粒状体の質に対しては、就中液体スラグ流に当たる噴射水の衝撃と形状が決定的である。これ等のパラメタは主として、噴霧ヘッドによって決まる。
【0004】
スラグの流量は一定ではない。粒状化を経済的に行い、且つ粒状体の質の一定化を図るには、圧力を一定にした儘、粒状化水をスラグ流量に合わせる必要がある。
【0005】
この目的を達成するため、有孔型ノズル面と、制御可能なスロット付きノズルを備えた噴霧ヘッドがDE4032518C1に提案されている。この制御可能なスロット付きノズルには反対方向に回転される2つのフラップ羽根が設けられ、高さを調整できるノズルを形成している。各フラップ羽根の一方の縦縁は波状で、水の流れ方向を横切る、方形のノズル流路の床面又は上面に延びる円筒状の支承空洞内に回転自在に嵌合している。フラップ羽根の他方の縦縁は、このノズル流路内のノズルスロットの上方又は下方のリップを形成する。2つの、偏心して取り付けられたフラップ羽根を反対方向に回転することにより、2つのリップ間の距離を変更、即ちノズルスロットの高さを減少又は増大することができる。二つのフラップ羽根はノズル流路の外側で、電気モータで駆動される反対回転ギアに連結されている。
【0006】
だが、DE4032518C1に記載の噴霧ヘッドには多くの不都合がある。例えば、水流が2つのフラップ羽根にかなりのモーメントを及ぼすことから、反対回転ギアと電気駆動装置は比較的強力でなければならない。その上、差し込まれるスロット付きノズルの耐摩耗性が求められる。多くの粒状化装置では、粒状化水は実際には密閉サイクルを通る際に、多量のスラグ砂を運ぶことになる。そのようなスラグと砂の混合物の研磨力に付いては、当業者に良く知られているところである。DE4032518C1に記載のスロット付きノズルでは、特にノズルスロットの2つのリップが大きな研磨力を受け、比較的急速に磨耗する。この磨耗のため、スロット付きノズルの制御系は特性が比較的不正確なものになってしまう。その上、微細なスラグ砂がフラップ羽根の支承空洞部に入り込み、フラップ羽根を塞いでしまうこともある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は粒状化装置の噴霧ヘッドであって、簡単に操作でき、保守を殆ど要せず、更に制御系の特性が安定していることを特徴とする制御可能な噴霧ヘッドを提供することにある。本発明によれば、この目的は請求項1による噴霧ヘッドにより達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による噴霧ヘッドでは、少なくとも一つの制御可能なスロット付きノズルが備わり、制御体は断面が楕円形で、中心軸を有する円柱体である。制御体はノズル流路の床面と上面間の略中心に配置され、上記中心軸の周りに回動可能になっていて、制御体の上方と下方にノズルスロットが形成され、その高さは制御体を単にその中心軸の周りに回動することにより調整できる。このような制御可能なスロット付きノズルでは、極めて過酷な条件下(粒状化水中の研磨性の砂等)でも保守を殆ど要せず、且つ極めて長い時間に亘って制御系の優れた特性を確保している。因みに、粒状化水に含まれる砂が特に急速な磨耗を引き起こしたところで、楕円・円柱状制御体には弱点が無い。また、楕円柱状制御体の周りの流れは比較的層流状であり、スラグ砂の研磨力が局部的渦により強化されることはない。従って、楕円柱状制御体は、粒状化水が砂による過酷な攻撃を呈する場合にも、スロット付きノズルの制御系の特性が本質的に悪化することなく、極めて長時間に亘って適用可能である。また、制御体がノズル流路の中心に配置されるため、微細な砂が溝又は空隙に堆積し、スロット付きノズルの作用性を損なうことはない。更に、中心軸の周りに回転可能な制御体に水流が及ぼすモーメントは小さいことも注目されるべきである。従って、制御体の角位置決定のためには、小さいトルクで良く、従って弱い駆動力で足りる。
【0009】
制御系の良好な特性を確保し、磨耗を低く保つには、制御体の楕円形断面の短軸と長軸の比を0.50〜0.95とすると良い。
【0010】
ノズル流路の矩形断面の高さは、楕円形断面の長軸より数ミリメートル大きくすると良い。これにより、例えば、ノズル流路及び/又は制御体が変形する場合でも、制御体が閉位置で閉塞することが無くなる。
【0011】
制御体はその両端の各々に支承ピンが備わり、これがノズル流路から側方に突出し、ノズル流路の外側に回転自在に取り付けられるようにすると良い。簡単なクランクギアを用い、リフト装置のリフト量を、制御体のその中心軸の周りの回転移動量に変換することができる。制御トルクは微小で良いので、リフト装置を比較的弱い電気リニアドライブとすると好都合であり、これにより制御体の角位置を特に簡単に定めることができる。
【0012】
一つの有利な実施態様では、制御体が少なくとも一端に円筒状の封止フランジを備え、これをスロット付きノズルの側壁に設けた丸穴に挿入し、Oリングでそこに封止するようにする。この丸穴は、制御体をこの穴を通してノズル流路に差込・引き出しできるように十分大きくして、制御体の交換が比較的容易にできるようにすると良い。
【0013】
制御体の面並びにノズル溝の床面及び上面は好ましくはプラズマ被覆され、これ等の面の耐摩耗性を更に高めるようにすると良い。制御体の面は簡単な凸面であるので、制御体の表面被覆は特に耐久性がある。
【0014】
本発明による噴霧ヘッドは更に、給水室(箱)を備え、その前側にスロット付きノズルを配設しても良く、更にスロット付きノズルの上方及び/又は下方の前側に一群の有孔型ノズル面を配設できるようにしても良い。
【0015】
噴霧ヘッドに粒状化水を、ポンプセットを用いて供給する場合、粒状化水の圧力を制御する制御装置を噴霧ヘッドが備え、スロット付きノズルがアクチュエータとして一体化されるようにすると有利である。だが、配水タンクを用いて噴霧ヘッドに粒状化水を供給する場合、粒状化水量を制御する制御装置を噴霧ヘッドが備え、そこでスロット付きノズルがアクチュエータとして一体化されるようにすると有利である。
【0016】
高炉スラグの粒状化装置のように水量が大きい粒状化装置に
本発明による噴霧ヘッドを利用すると特に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な側面を本発明の一具体例として添付図面を参照して説明する。
【0018】
図に示されている噴霧ヘッド10は、高炉スラグの粒状化装置用を対象とするものであり、その機能は、液体スラグの流れが、例えばスラグ流路から粒状化タンクに落下する間に、この液体スラグ流に冷却水を噴霧することである。
【0019】
図示の噴霧ヘッド10には、側方粒状化水供給部14と側方支持部16を有する給水箱12が備わる。図2で矢印18が指しているのは、粒状化水が出て来る給水箱12の前側である。粒状化水の送出はこの前側18の上半にある一群の有孔型ノズル面20と、その下半にあるスロット付きノズル22を介して行われる。
【0020】
スロット付きノズル22はソケット材24を有し、その内部に、矩形の流れ断面を有するノズル流路26が、床面28により下方を、上面30により上方を、側面32、34により側方を制限されるように構成されている。これ等の面28、30、32、34はスラグ砂の研磨作用に対する、より有効な保護のため、プラズマ被覆されている。尚、ソケット材24は交換可能な部品として設計され、給水箱12上に突設されている。
【0021】
スロット付きノズル22にはまた円柱状の流れ制御体36が有って、これがノズル流路26内に、その全幅に亘って、床面28と上面30間の中心に延びている。図2から、制御体36は楕円形の断面を有することが分かる。楕円円柱状の制御体36はその中心軸38の周りに回動可能になっている。
【0022】
図1において、中心軸38と短楕円軸を含む面は水の流れ方向40と直角をなしている。制御体36がこの位置にあるとき、ノズル流路26の流れ断面の制御体36による狭まりは最も少ない。制御体36と床面28の間に下方ノズルスロット42が、制御体36と上面30の間に上方ノズルスロット44が形成される。水はソケット材24から2つの扁平なジェットとして、これ等のノズルスロット42,44を通って流れる。
【0023】
制御体36がその中心軸38の周りを図1に示す位置から回動すると、下方ノズルスロット42と上方ノズルスロット44は何れも高さを減じる(図2参照)。云い換えれば、ノズル流路26は制御体36の部分で流れ断面を減じる。この流れ断面は、中心軸38と長楕円軸を含む面が水の流れ方向40と直角をなすとき、即ち制御体36がその中心軸38の周りを図1に示す位置から回動すると、最小となる。長楕円軸とノズル流路26の高さHの差は数ミリメートルと小さいので、制御体36がこの位置にあるときも、二つのノズルスロット42、44は依然僅かに開いている。このため、温度や機械的要因でソケット材24が変形しても、噴射ノズル22はそのような変形に対して比較的不感応なものとなる。尚、制御体36の面もプラズマ被覆されている。
【0024】
図3から、制御体36がその両端の各々に支承ピン50、52を備え、これ等のピンはノズル流路26から側方に突出し、そこでベアリング54、56に夫々、回転自在に取り付けられていることが分かる。これ等2つのベアリング54、56は、外側からソケット材24の側壁にネジ止めされた取付フランジ58、56に設けると有利である。
【0025】
制御体36は更に、その両端の各々に円筒状の封止フランジ62、64を備え、これ等のフランジはソケット材24の側壁の円形穴に挿入され、Oリングでそこに封止されている。尚、ソケット材24の側壁のこれ等2つの円形穴の径は制御体36の長楕円軸より大きく、2つの取付フランジ58、60を緩めた後、制御体36をノズル流路26からこれ等の穴を通して引き抜くことができ、また再度取り付けることができるようになっている。
【0026】
図3において参照番号70は、支承ピン52に設置され、固定連結されている延長シャフトを表している。延長シャフト70は給水箱12の外側で、フランジ72に回動自在に取り付けられ、このフランジの外側にクランク74を備えている。クランク74は電気リニアドライブ76に連結され、このリフト装置のリフト量を、制御体のその回動軸の周りの回動量に変換するようにしている。角度振幅を少なくとも90°とし、制御体36の制御能力が完全に利用されるようにする。尚、ドライブ76は比較的弱いもので良い。制御体36の形状のため、また制御体36が支持されていることから、水の力を抑えるのに必要な制御トルクは小さくて良いからである。電気リニアドライブ76の代わりに、空気圧シリンダーを挿入しても勿論良い。更に、回転駆動装置により制御体36を回動することもできる。回動駆動装置としては、例えば電気パルスモータを用いても良く、これによりリニアドライブ76の場合と同様に、制御体の所定角度位置を正確に調整することができる。
【0027】
また、断面が楕円形の制御体36では水に乱流を生じることは殆ど無いことが強調される。このことは噴霧ヘッド内の粒状化水の全圧力損失に明白な効果をもたらすだけでなく、水が流れる面に対するスラグ砂の研磨効果も本質的に少なくする。
【0028】
図4のグラフは、制御体36の制御角に対するスロット付きノズル22の流量を示している。制御角0°は、中心軸38と長楕円軸を含む面が水の流れ方向40と直角をなすことを示す。制御角90°は、中心軸38と短楕円軸を含む面が水の流れ方向40と直角をなすことを示す。このグラフを得るのに用いた制御体36の断面は、短軸と長軸の比が約0.76の楕円断面である。この比は、スロット付きノズル22の制御系の特性を定めるもので、0.50〜0.95とすると良い。また、図4のグラフから、流量が制御角に略比例して増大するのが分かる。
【0029】
噴霧ヘッド10に粒状化水を、ポンプセット(装置)を用いて供給する場合、好ましくは給水箱12内の測定圧に応じて制御体36の角度位置を制御する制御装置が備わる。そのような制御装置では、給水箱12内の圧力は例えば一定に維持される。その場合、噴霧ヘッド10の水量はポンプ装置の流量制御装置により決定される。
【0030】
噴霧ヘッド10に一定水圧を、例えば配水タンクから供給する場合、スロット付きノズルがアクチュエータとして一体化された粒状化水量制御装置が備わるようにすると良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による噴霧ヘッドの三次元図である。
【図2】図1の噴霧ヘッドの断面を示し、図3における切断面の位置が線2−2で表されている。
【図3】図1の噴霧ヘッドの断面を示し、図2における切断面の位置が線3−3で表されている。
【図4】本発明による噴霧ヘッドにおけるスロット付きノズルの制御動作を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロット付きノズル(22)を有し、その中で、流れ断面が長方形のノズル流路(26)が床面(28)により下方を、上面(30)により上方を、側面(32、34)により側方を制限され、このノズル流路(26)内で長方形の流れ制御体(36)が側面(32、34)間を軸方向に延びてノズルスロットの高さを制限し、この制御体(36)が長手方向軸線の周りに回動してノズルスロットの高さを制御するようにした粒状化装置用噴霧ヘッドであって、
制御体(36)が楕円形の断面を有し、床面(28)と上面(30)間の略中央に配置され、中心軸の(38)の周りに回動自在の円柱体であり、それにより制御体(36)の上方並びに下方にノズルスロット(42、44)が形成され、制御体(36)をその中心軸(38)の周りに回動することによりその高さが調整可能となる構成を特徴とする粒状化装置用噴霧ヘッド。
【請求項2】
楕円形断面の短軸と長軸と比が0.50〜0.95である請求項1に記載の噴霧ヘッド。
【請求項3】
ノズル流路(26)の断面は、高さ(H)が楕円形断面の長軸より数ミリメートル長い矩形断面であり、それにより2つのノズルスロット(42、44)が常に開口状態にあるようにして成る請求項2に記載の噴霧ヘッド。
【請求項4】
制御体(36)がその両端の各々に支承ピン(50、52)を備え、この支承ピンがノズル流路(26)から側方に突出し、ノズル流路(26)の外側に回動自在に取り付けられて成る請求項1〜3の何れか一つに記載の噴霧ヘッド。
【請求項5】
2つの支承ピンの一方(52)にクランク(74)が固定連結され、このクランク(74)にリフト装置(76)が連結され、このリフト装置のリフト量が、制御体(36)のその中心軸(38)の周りの回動量に変換されるようにして成る請求項4に記載の噴霧ヘッド。
【請求項6】
制御体(36)が少なくとも一端に、スロット付きノズル(22)の側壁の円形穴に挿入され、Oリングにて封止された円筒状封止フランジ(62、64)を備え、上記円形穴が制御体(36)をこの穴を通してノズル流路(26)に挿入・引抜するのに十分な大きさである請求項4又は5に記載の噴霧ヘッド。
【請求項7】
ノズル流路(26)の床面(28)と上面(30)並びに制御体(36)の面がプラズマ被覆されて成る請求項1〜6の何れか一つに記載の噴霧ヘッド。
【請求項8】
スロット付きノズル(22)が給水室(箱)の前側に配置され、スロット付きノズル(22)の上方及び/又は下側にて、この前側で有孔型ノズルを備えた面が配置されて成る請求項1〜7の何れか一つに記載の噴霧ヘッド。
【請求項9】
噴霧ヘッド内の粒状化水流量を制御するための制御装置内に、スロット付きノズル(22)がアクチュエータとして組み込まれて成る請求項1〜8の何れか一つに記載の噴霧ヘッド。
【請求項10】
噴霧ヘッド内の粒状化水圧を制御する制御装置内に、スロット付きノズル(22)がアクチュエータとして組み込まれて成る請求項1〜8の何れか一つに記載の噴霧ヘッド。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2006−507407(P2006−507407A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554541(P2004−554541)
【出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2003/050855
【国際公開番号】WO2004/048617
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(500173376)ポール ヴルス エス.エイ. (44)
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
【Fターム(参考)】