説明

粒状浴用剤組成物

【課題】十分に高い炭酸ガス濃度が得られ、保存安定性の良好な粒状浴用剤を提供する。
【解決手段】次の成分(A)〜(C):
(A)粒子径が180μm以上の粒子が50%以上である炭酸アルカリ金属塩 25〜55質量%、
(B)粒子径180μm以上の粒子が50%以上である有機酸 40〜70質量%、及び
(C)難水溶性金属酸化物 0.01〜10質量%
を含有する粒状浴用剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴湯中に炭酸ガスが高濃度溶解し、保存安定性の良好な粒状浴用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸塩と有機酸を配合した浴用剤は、浴湯中で炭酸ガスの泡を発生し、当該炭酸ガスによる血行促進効果が得られることから、優れた浴用剤として広く知られている。血行促進効果を高めるためには、浴湯中で発生した炭酸ガスの濃度を高くすることが必要となる。
【0003】
このような浴用剤の形態として、浴槽の底部付近でゆっくり溶解させることができる錠剤型と、溶解時間が短い粉末または粒状の浴用剤とは、一般に使用状態や好みにより使い分けがなされている。そこで、粒状の浴用剤においては、溶解時間や発泡性を制御し、すばやく発泡しかつ炭酸ガス濃度を高めるため種々の研究がされている。例えば、炭酸塩や有機酸の粒子径を制御することにより短時間に炭酸ガスを溶解させようとする技術(特許文献1〜2)、有機酸を水溶性高分子で被覆する技術(特許文献3)等が報告されている。また、浴湯中で沈降しながら溶解するようにすることにより、炭酸ガス濃度を十分に高めようとする技術として、例えば、浴湯中での溶解パターンが異なる2種以上の炭酸塩と有機酸を含有し、その炭酸塩の少なくとも1種が浴槽底部まで実質的に溶けずに沈降する炭酸塩である粒状入浴剤(特許文献4)が報告されている。さらに、特定粒径の炭酸塩と有機酸の発泡性物質に、炭酸塩及び有機酸以外の水溶性物質を含有させて、十分な量の炭酸ガスを短時間に浴湯に溶解させる技術(特許文献5)等が報告されている。
【特許文献1】特開平11−47220号公報
【特許文献2】特開2004−131455号公報
【特許文献3】特開平11−47221号公報
【特許文献4】特開2000−309523号公報
【特許文献5】特開2005−298454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの粒状浴用剤において、保存安定性やケーキングに関する記載はない。また、浴湯中に溶解している炭酸ガスの濃度についても、炭酸塩等が溶け残りせずに溶解し、かつ浴湯中の炭酸ガス濃度を高めることが必要とされている。
従って、本発明の課題は、十分に高い炭酸ガス濃度が得られ、かつ保存安定性の良好な粒状浴用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、炭酸塩と有機酸により発生する炭酸ガスを浴湯中に高濃度に溶解させるための技術として、粒子径の制御について種々検討した結果、炭酸塩と有機酸の粒子径の50%以上を180μm以上にすることにより、浴湯中に高濃度の炭酸ガスを溶解させることができることを見出した。しかしながら、そのような粒子径の大きな炭酸塩と有機酸の両者を含有する粒状浴用剤は、保存中にケーキングを生じてしまい安定性の問題があることが判明した。
そこでさらに検討したところ、当該ケーキングは代表的な乾燥剤である硫酸ナトリウムの配合では防止できず、全く意外にも、上記の特定の粒子径を有する炭酸塩と有機酸に少量の難水溶性金属酸化物を配合すれば、保存中にケーキング等を生じず長期間安定で、浴湯中に高濃度の炭酸ガスを溶解できる粒状浴用剤が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(C):
(A)粒子径が180μm以上の粒子が50%以上である炭酸アルカリ金属塩 25〜55質量%、
(B)粒子径180μm以上の粒子が50%以上である有機酸 40〜70質量%、及び
(C)難水溶性金属酸化物 0.01〜10質量%
を含有する粒状浴用剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粒状浴用剤組成物を浴湯に投入すれば、高濃度の炭酸ガスを浴湯中に溶解させることができ、温浴効果に優れた人工炭酸泉浴が得られる。また、溶解時のザラツキがなく使用感も良好である。さらに、長期保存してもケーキングを生じず、包装袋のふくれ等も生じない。
本発明の粒状浴用剤組成物によれば、高濃度の炭酸ガスを含有する人工炭酸泉浴が手軽に得られるので、足浴、腕浴等の部分浴用剤として特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の粒状浴用剤組成物における炭酸ガス発生源としての炭酸アルカリ金属塩の主成分は、発生する炭酸ガスを浴湯中に高濃度溶解させる点から、(A)粒子径180μm以上の粒子が50%以上である炭酸アルカリ金属塩である。炭酸アルカリ金属塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸ジアルカリ金属塩、及び炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素アルカリ金属塩が挙げられる。このうち、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)が特に好ましい。
【0009】
(A)炭酸アルカリ金属塩としては、(A1)炭酸ジアルカリ金属塩と(A2)炭酸水素アルカリ金属塩を併用することもできる。(A1)と(A2)の重量比は、炭酸ガスを多量に発生させ、保存安定性の点から、50〜100:50〜0とするのが好ましい。
【0010】
炭酸アルカリ金属塩の粒子径は、180μm以上の粒子が50%以上であるが、泡の持続時間、沈降性、浴湯中への炭酸ガス溶解性等の点から、さらに60%以上、特に70%以上であることが好ましい。粒子径180μm以上の粒子が50%以上であれば、浴湯に添加したときの溶解時間が長すぎることがなく、短時間で浴湯中に炭酸ガスを発生させることができる。また、炭酸アルカリ金属塩は、180μm〜1000μmの粒子が50%以上であることが好ましい。
さらに、浴湯中への炭酸ガス溶解性を考慮すると90μm以下の粒子が10%以下であることが好ましく、また1400μm以上の粒子が10%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明において、例えば粒子径180μm以上の粒子が「50%以上」であるとは、粒子径180μm以上の粒子の重量が、全粒子重量の50%以上であることをいう。また、該粒子径はふるい分け法により測定できる。
【0012】
炭酸アルカリ金属塩の浴用剤組成物中の含有量は、炭酸ガス発生量及び溶解性の点から25〜55質量%であるが、さらに30〜55質量%、特に32〜50質量%が好ましい。
【0013】
本発明に用いられる(B)有機酸は、粒径180μm以上の粒子を50%以上含むものであるが、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上のものである。粒子径180μm以上の粒子が50%以上であれば、浴湯中に炭酸ガスが十分に溶解する。
【0014】
また、本発明に用いる有機酸は、粒子径250μm〜1000μmの粒子が50%以上、特に60%以上、さらに特に70%以上であることが好ましい。また浴湯中への炭酸ガス溶解性の点から90μm以下の粒子が10%以下、浴湯中への溶解性の点から1400μm以上の粒子が10%以下であることが好ましい。
【0015】
(B)有機酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、ピリドンカルボン酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、グルタル酸等が挙げられ、これらの有機酸を1種又は2種以上用いることができる。これらの有機酸のうち、水に対する溶解度が高い有機酸が浴湯中の炭酸ガス濃度を上げ、ザラツキも抑制できる点から好ましく、水に対する溶解度が10g/100mL(20℃)以上、特に水に対する溶解度が50g/100mL以上の有機酸が好ましい。このような有機酸としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸等が挙げられ、さらにクエン酸、酒石酸、リンゴ酸が好ましい。
【0016】
当該(B)有機酸は、浴用剤組成物中の含有量が40〜70質量%であるが、炭酸ガス発生量、及び溶解性の点から、さらに50〜70質量%、特に55〜70質量%が好ましい。
【0017】
(B)有機酸は、浴用剤中にそのまま配合してもよいし、水溶性高分子、油性成分、非イオン界面活性剤等の界面活性剤によりコーティングして、造粒して用いてもよい。
【0018】
水溶性高分子の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、デキストリン、デンプン、寒天、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等が挙げられ、中でも水面で膨潤して高粘度の膜を作るという観点から、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。これらは1種又は2種以上用いても良い。また、本発明浴用剤中のこれら水溶性高分子の含有量は、有機酸の飛散防止効果、及び浴湯のぬるつき防止、浴槽の滑り抑制、浴湯の増粘防止、感触低下防止の点で0.001〜10質量%、特に0.1〜5質量%が好ましい。
【0019】
具体的な油性成分としては、流動パラフィン、白色ワセリン等の鉱物油;ケイヒ油、ベルガモ油、菖蒲油、ラベンダー油、オリーブ油、大豆油、パイン油、ヌカ油、米糠エキス、ホホバ油等の植物性油;イソプロピルミリステート等の脂肪酸エステル及びその他のエステル油、直鎖型、分岐型又は環状シリコーン、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリエチルシトレート等が挙げられる。中でもジプロピレングリコール、2−エトキシエタノール、イソプロピルミリステート、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリエチルシトレート、流動パラフィン、ケイヒ油が好ましい。これらは1種又は2種以上用いても良い。また、本発明浴用剤中の油性成分の含有量は、浴湯に添加した際の油浮き防止、ぬるつき防止、また粒子固着防止等の点から、0.01〜10質量%、特に0.1〜5質量%が好ましい。
【0020】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、例えばグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。本発明浴用剤中の界面活性剤の含有量は、浴水に添加した際の油浮き防止、過剰な泡立ち防止、ぬるつき防止の点から、0.001〜5質量%、さらに0.1〜5質量%、特に0.1〜3質量%が好ましい。
【0021】
本発明に用いられる(C)難水溶性金属酸化物は、長期保存安定性の点から特に重要である。当該難水溶性金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等のアルカリ土類金属酸化物が特に好ましい。通常、保存時のケーキング等は、水が原因と考えられるため、金属酸化物に代えて代表的な乾燥剤として知られている硫酸ナトリウムを配合したところ、ケーキングの発生は防止できなかった。従って、本発明における(C)難水溶性金属酸化物の効果は、単なる乾燥によるものでないことは明らかである。
【0022】
(C)難水溶性金属酸化物の平均粒子径は、1〜3000μmが好ましく、特に1〜1000μmが好ましい。また(C)難水溶性金属酸化物の浴用剤中の含有量は、0.01〜10質量%であるが、さらに保存安定性及びザラツキ抑制の点から0.1〜10質量%が好ましく、特に0.1〜5質量%が好ましい。
【0023】
また、本発明の粒状浴用剤は、その0.01重量%水溶液の25℃におけるpHが5〜7、特に5.5〜6.5であることが好ましい。pHが5〜7であれば、発生した炭酸ガスが浴湯中に溶け込み易く、血行促進等の効果を発揮しやすいからである。
【0024】
本発明の浴用剤は、速やかに浴湯中の炭酸ガス濃度を高くする点から錠剤型でなく粒状もしくは粉末状であり、最大粒子径は3000μm以下、さらに2000μm以下、特に1500μm以下であるのが好ましい。
【0025】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常浴用剤に用いられている成分を添加することができる。例えば、硫酸マグネシウム等の無機塩類、ビタミンA等のビタミン類、ペプシン等の蛋白分解酵素、着色料、香料等が挙げられる。
【0026】
本発明の粒状浴用剤は、前記成分を混合することによって製造できる。また、本発明の粒状浴用剤は、浴湯に溶解し、炭酸ガスを浴湯中に溶解させた後使用するのが好ましい。なお、本発明の浴用剤は風呂等の全身浴としても使用できる。特に、高濃度の炭酸ガスを含有する浴湯を生成できること、すなわち一般的な足浴器等に使用する少量のお湯(5〜10L程度)に対して短時間(1分程度)で溶解し、溶解時にザラツキの問題を認めず、非常に高濃度の炭酸ガスが溶け込むことから、足浴、腕浴等の部分浴として使用するのが特に好ましい。
【実施例】
【0027】
実施例1〜5、比較例1〜3
表1に示す配合で各成分を混合し、粒状浴用剤組成物を製造した。得られた浴用剤について、炭酸ガスの濃度測定、ざらつき評価、保存安定性を評価し、結果を合わせて表1に示す。
【0028】
〔炭酸ガスの濃度測定、ざらつき評価〕
上記で得られた粒状浴用剤組成物45gを、38℃、6Lの浴湯に添加し、攪拌し1分間放置した後、浴湯をイオン交換水で10倍に希釈し、炭酸ガス電極を用いて炭酸ガス濃度を測定した。また、攪拌し1分間放置した後、喫水線の付近を手で触りザラツキの有無について評価した。
【0029】
〔保存安定性〕
また、得られた粒状浴用剤45gをアルミピローに包装し、50℃1ヶ月間に保存したときの保存後に包装の膨れの有無、及びケーキングの有無を評価した。
【0030】
結果を表1に示す。表1から明らかなように、粒子径180μm以上の粒子が50%以上の炭酸アルカリ金属塩及び粒子径180μm以上の粒子が50%以上の有機酸に加えて、難水溶性金属酸化物を少量配合すると、1000ppmもの高い炭酸ガス濃度を有する浴湯が得られるとともに、溶解時のザラツキがなく、保存安定性も良好な浴用剤が得られる。一方、粒子径180μmの粒子が50%に満たない炭酸塩や有機酸を配合した浴用剤では、高濃度の炭酸ガス濃度が高くならない(比較例)。また、ケーキングは、乾燥剤として周知の硫酸ナトリウムの配合では防止できず、難水溶性金属酸化物の配合によって防止された。
【0031】
炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの配合比を50〜100:50〜0にした場合には、特に包装膨れ等の保存安定性が特に良好であった。また、有機酸として、溶解度が低いコハク酸(溶解度6.45)に比べて溶解度が10g/100mL以上の有機酸を用いた場合に、ザラツキ抑制効果が高かった。
【0032】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C):
(A)粒子径が180μm以上の粒子が50%以上である炭酸アルカリ金属塩 25〜55質量%、
(B)粒子径180μm以上の粒子が50%以上である有機酸 40〜70質量%、及び
(C)難水溶性金属酸化物 0.01〜10質量%
を含有する粒状浴用剤組成物。
【請求項2】
(A)炭酸アルカリ金属塩が、(A1)炭酸ジアルカリ金属塩と(A2)炭酸水素アルカリ金属塩を含有し、これらの重量比(A1:A2)が50〜100:50〜0である請求項1記載の粒状浴用剤組成物。
【請求項3】
(B)有機酸が、水に対する溶解度が10g/100mL(20℃)以上の有機酸である請求項1又は2記載の粒状浴用剤組成物。
【請求項4】
(C)難水溶性金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び酸化亜鉛から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の粒状浴用剤組成物。
【請求項5】
部分浴用である、請求項1〜4のいずれか1項記載の粒状浴用剤組成物。

【公開番号】特開2009−155213(P2009−155213A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331622(P2007−331622)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】