説明

粒状組成物及びその製造方法

【課題】2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを用いて、粉立ちが少ない粒状組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で示される化合物と、R12−CO−O−R11なるエステル化合物とを含む粒状組成物。


(R1及びR2は、水素原子、アルキル基等、R3は水素原子又はアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、アルキリデン基又はシクロアルキリデン基を表す。又、R11はアルキル基等、R12はアルキル基又はアラルキル基等である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状組成物及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブタジエン等のポリマーに熱安定性を与える化合物としては、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレートが知られており(特許文献1参照)、該アクリレートは、平均粒径が0.1mm未満の粉末の形状で、スミライザーGS(住友化学株式会社の登録商標)として市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−168643号公報(<発明が解決しようとする問題点>、製造実施例1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、該アクリレートは粉末の形状であることから、粉立ちが生じる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、該アクリレートを主成分として含み、粉立ちが少なく、取り扱いが容易なものを見出すべく鋭意検討した結果、以下[1]〜[8]で示される本発明に至った。
[1] 式(1)で示される化合物と、式(2)で示される化合物とを含む粒状組成物であって、該組成物100重量%に対して、式(1)で示される化合物を99.9〜80重量%、式(2)で示される化合物を0.1〜20重量%含有する粒状組成物。

(式(1)中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3 は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)

(式(2)中、R11は炭素数1〜30の直鎖アルキル基又は炭素数3〜60の分枝鎖アルキル基であり、該アルキル基には、水酸基、カルボキシ基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、該アルキル基、該アルコキシカルボニル基及び該アルキルカルボニルオキシ基に含まれるメチレン基は硫黄原子又は酸素原子で置換されていてもよい。R12は、炭素数1〜30の直鎖アルキル基、炭素数3〜30の分枝鎖アルキル基、又は炭素数7〜20のアラルキル基であり、該アルキル基又は該アラルキル基には、水酸基、カルボキシ基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、該アルキル基、該アラルキル基、該アルコキシカルボニル基及び該アルキルカルボニルオキシ基に含まれるメチレン基は硫黄原子又は酸素原子で置換されていてもよい。)
【0006】
[2] 式(1)で示される化合物が、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート及び2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする[1]記載の粒状組成物。
[3] 粒状組成物1粒当りの重量が1mg〜25mgであることを特徴とする[1]又は[2]記載の粒状組成物。
[4] 式(2)で示される化合物が、オクタデシル 3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、グリセリンモノステアレート、ジミリスチル 3,3’−チオジプロピオネート、及び、ジスチリル 3,3’−チオジプロピオネートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか記載の粒状組成物。
[5] 粒状組成物の形状が、略球状又は略半球状であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか記載の粒状組成物。
【0007】
[6] 式(1)で示される化合物と、式(2)で示される化合物とを含む粒状組成物の製造方法であって、該組成物100重量%に対して、式(1)で示される化合物を99.9〜80重量%、及び式(2)で示される化合物を0.1〜20重量%の混合割合で溶融する溶融工程、並びに、
前記溶融工程で得られた溶融物を粒状に固化する成形工程、
を含むことを特徴とする粒状組成物の製造方法。

(式(1)中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3 は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)

(式(2)中、R11は炭素数1〜30の直鎖アルキル基又は炭素数3〜60の分枝鎖アルキル基であり、該アルキル基には、水酸基、カルボキシ基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、該アルキル基、該アルコキシカルボニル基及び該アルキルカルボニルオキシ基に含まれるメチレン基は硫黄原子又は酸素原子で置換されていてもよい。R12は、炭素数1〜30の直鎖アルキル基、炭素数3〜30の分枝鎖アルキル基、又は炭素数7〜20のアラルキル基であり、該アルキル基又は該アラルキル基には、水酸基、カルボキシ基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、該アルキル基、該アラルキル基、該アルコキシカルボニル基及び該アルキルカルボニルオキシ基に含まれるメチレン基は硫黄原子又は酸素原子で置換されていてもよい。)
【0008】
[7] 熱可塑性ポリマー100重量部に対し、[1]〜[5]のいずれか記載の粒状組成物を0.01〜2重量部配合させることを特徴とする熱可塑性ポリマー組成物の製造方法。
[8] 熱可塑性ポリマーを熱安定化させるための[1]〜[5]のいずれか記載の粒状組成物の使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粒状組成物は、粉立ちが少なく、取り扱いが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粒状組成物は、式(1)で示される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある)を含有する。

【0011】
式(1)中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、2−エチルヘキシル基などが例示され、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、3−メチルシクロペンチル、4−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロヘキシル基などが例示される。中でも、メチル基、t−ブチル基、又はt−ペンチル基が好ましい。
【0012】
3 は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R3 のアルキル基としては、R1 で例示されたアルキル基などが具体的に例示される。中でも、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0013】
Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。
ここで、アルキリデン基としては、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基などが例示され、シクロアルキリデン基としては、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基などが例示される。中でも、メチレン基、エチリデン基又は、ブチリデン基が好ましい。
【0014】
化合物(1)の融点は、通常、融点が70〜220℃、好ましくは、100〜140℃である。
【0015】
化合物(1)としては、例えば、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−〔1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エチル〕−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピル〕−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−プロピルフェニル)エチル〕−4−プロピルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−イソプロピルフェニル)エチル〕−4−イソプロピルフェニル アクリレートなどが挙げられる。とりわけ好ましくは2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレートである。
化合物(1)としては、異なる複数種の化合物(1)を併用してもよい。
【0016】
本発明の粒状組成物は、式(2)で示される化合物(以下、化合物(2)と記すことがある)を含む。本発明の粒状組成物が化合物(2)を含有することにより、粒状組成物を保存した時に粒状組成物同士が固着する、いわゆる、ブロッキングが防止される。このため、本発明の粒状組成物は取り扱いが容易である。

【0017】
式(2)中、R11は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−オクタデシル基、n−テトラデシル基など炭素数1〜30の直鎖アルキル基、又は、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、2−エチルヘキシル基などの炭素数3〜30の分枝鎖アルキル基である。
該アルキル基には、水酸基、カルボキシ基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、該アルキル基、該アルコキシカルボニル基及び該アルキルカルボニルオキシ基に含まれるメチレン基は硫黄原子又は酸素原子で置換されていてもよい。
11の具体例としては、上記アルキル基に加え、下記式で表される基等が挙げられる。

【0018】
12は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−オクタデシル基、n−テトラデシル基など炭素数1〜30の直鎖アルキル基、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、2−エチルヘキシル基などの炭素数3〜30の分枝鎖アルキル基、又は、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などの炭素数7〜20のアラルキル基である。
該アルキル基及び該アラルキル基には、水酸基、カルボキシ基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、該アルキル基に含まれるメチレン基は硫黄原子又は酸素原子で置換されていてもよい。R12の具体例としては、2,3−ジヒドロキシプロポルオキシ基、−CH2CH2SCH2CH2COOC12H25、−CH2CH2SCH2CH2COOC14H29、−CH2CH2SCH2CH2COOC18H37、下記式で表されるアラルキル基などが例示される。

【0019】
化合物(2)としては、融点が化合物(1)より低融点である化合物が好ましい。化合物(2)が化合物(1)より低融点であると、得られる粒状組成物を輸送又は保存する際にブロッキングしにくい、すなわち、ブロッキング防止性能に優れることから好ましい。また、化合物(2)の融点が30℃以上であると、粒状組成物の形状安定性に優れることから好ましい。特に、化合物(2)の融点が、40℃以上、80℃未満、好ましくは、45℃以上、70℃未満であることが好ましい。
【0020】
化合物(2)としては、特に、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及び帯電防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
化合物(2)としては、例えば、オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(融点50〜55℃、Irganox 1076 チバ スペシャリティ ケミカルズ社の登録商標)などのフェノール系酸化防止剤、
【0021】
例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(融点40〜42℃)、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート(融点49〜54℃)、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート(融点65〜67℃)、テトラキス(3−ドデシルチオプロピオン酸)ペンタエリスリチルエステル(融点約46℃)などの硫黄系酸化防止剤、
【0022】
例えば、グリセリンモノステアレート(融点65〜70℃)、グリセリンモノカプレート(融点46℃)、グリセリンモノラウレート(融点57℃)、クエン酸脂肪酸モノグリセライド(融点59℃)などの帯電防止剤などが挙げられる。
化合物(2)としては、異なる複数種の化合物(2)を併用してもよい。
【0023】
化合物(2)としては特に、オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、グリセリンモノステアレート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、及び、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートが好ましく、とりわけ、オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0024】
本発明の粒状組成物は、該組成物100重量%に対して、化合物(1)を通常99.9〜80重量%、好ましくは99.7〜90重量%、より好ましくは99.5〜90重量%含有する。
また、該組成物100重量%に対して、化合物(2)を通常0.1〜20重量%、好ましくは0.3〜10重量%、より好ましくは0.5〜10重量%含有する。
【0025】
本発明の粒状組成物の製造方法としては、例えば、該組成物100重量%に対して、化合物(1)を99.9〜80重量%及び化合物(2)を0.1〜20重量%の混合割合で溶融する溶融工程、並びに、
前記溶融工程で得られた溶融物を粒状に固化する成形工程を含む製造方法などが例示される。
【0026】
溶融工程との具体例としては、例えば、化合物(1)及び化合物(2)を上記重量比率で容器に混合し、化合物(1)の融点以上、具体的には、120℃〜160℃程度に加熱、攪拌して溶融する方法、容器に仕込む前に化合物(1)及び化合物(2)を予めバンバリーミキサーなどで混合してから溶融する方法、例えば、融点の低い化合物(2)を予め加熱、攪拌して、化合物(2)を溶融させてから、化合物(1)を加えて、溶融させる方法などが挙げられる。
【0027】
成形工程とは、前記溶融工程で得られた溶融物を、例えば、板、好ましくは冷却し得る、ステンレスなどの熱交換板に、液滴状に噴霧或いは滴下する方法などが挙げられる。
具体的には、前記溶融工程で得られた溶融物を、例えば、滴下管から滴下する方法、例えば、ロールドロップ式造粒機、ロートフォーム式造粒機等に充填したのちに滴下する工程などが挙げられる。
ここで、ロールドロップ式造粒機とは、通常、突起を有する回転ドラムを有しており、溶融物は該突起の先端部に掻き取られ、該回転ドラムが回転して得られる遠心力及び/又は重力の作用にて板上に該溶解物が滴下する機構を有する造粒機である。
ロートフォーム式造粒機とは、通常、円筒部を有しており、該円筒部は孔を有し、該円筒部の内部に溶融物を受け入れる構造を有しており、該孔から板上に該溶解物が滴下する機構を有する造粒機である。
特にロートフォーム式造粒機による滴下が好ましい。
【0028】
板は、通常、0〜60℃程度に冷却された熱交換板であり、水などで冷却されたステンレス製のベルト、冷風などで冷却されたステンレス製のベルト、水などで冷却されたステンレス板、冷風などで冷却されたステンレス板などが例示される。
板の滴下される面は、通常、平滑である。
板はベルトであれば、ベルトを動かしながら冷却すればよく、静置された板で固化されれば、固化した後、板から取り出せばよい。
本発明の粒状組成物は、通常、冷却されて10秒〜10分程度の短時間で、化合物(1)の融点±10℃の温度範囲内に吸熱ピークを有する粒状組成物を得ることができる。
【0029】
本発明の粒状組成物1粒あたりの重量は、通常、1mg〜25mg、好ましくは、5mg〜25mgである。粒状組成物の重量は、滴下する工程において、滴下管の場合には、孔の大きさや、溶融物の粘度などにより、溶融物の滴下量を制御すればよく、ロールドロップ式造粒機の場合には、突起の先端部に掻き取る溶融物の量を制御すればよく、ロートフォーム式造粒機の場合には、孔の大きさや、溶融物の粘度などにより、溶融物の滴下量を制御すればよい。粒状組成物1粒あたりの重量が1mg以上であると、粉立ちが抑制される傾向があることから好ましく、25mg以下であると、ポリマーへの化合物(1)及び化合物(2)の分散性に優れる傾向があることから好ましい。
具体的には、粒状組成物が略半球状である場合、その粒径が略半球状である場合、その粒径が1mm〜8mm、好ましくは2mm〜7mm、その高さが1mm〜5mm、好ましくは1mm〜4mmに調整すればよい。
【0030】
粒状組成物の形状は、前記成形工程で、顆粒状、略半球状、略球状、板状、微粉末状、ペレット状、タブレット状、フレーク状をとることができる。中でも顆粒状、略半球状、略球状、ペレット状、タブレット状である場合が取り扱いの容易さや、粉立ちを防止する観点から好ましい。形状は化合物(1)及び化合物(2)を含む溶融液を滴下して得られる形状すなわち、粒径が小さいと通常、球状となり、大きくなると通常、自重により扁平して半球状となる場合が特に好ましい。
【0031】
本発明の粒状組成物としては、示差走査熱量測定装置(DSC)にて10℃/分の割合で昇温させたときに、化合物(1)の融点±10℃で吸熱ピークを有するものが好ましい。かかる吸熱ピークを有する粒状組成物は、保存時に粒状組成物同士が固着する、いわゆる、ブロッキングが防止される傾向がある。
【0032】
かくして得られた本発明の粒状組成物は、通常、熱可塑性ポリマーの熱安定剤に用いられる。
ポリマーの熱安定剤として用いる場合、粉立ちをほとんど生じることなくポリマーに配合することができる。また、粉立ちをほとんど生じることなくペンタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの炭化水素溶媒に溶解させた上で熱可塑性ポリマーに配合してもよい。
本発明の粒状組成物を熱可塑性ポリマーに配合した後、通常、溶融混錬するなどして化合物(1)及び(2)はポリマーに分散されて、本発明の熱可塑性ポリマー組成物を得ることができる。本発明の熱可塑性ポリマー組成物における化合物(1)及び化合物(2)の分散性は、化合物(1)及び化合物(2)を別々に熱可塑性ポリマーに配合したのち溶融混錬して得られる熱可塑性ポリマー組成物におけるこれらの分散性と略同等である。
【0033】
ここで、熱可塑性ポリマーとしては、市販の熱可塑性ポリマーとしては、例えば、溶液重合、気相重合、懸濁重合、乳化重合などで得られた熱可塑性ポリマーが挙げられる。中でも、エチレン−プロピレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂(高密度ポリエチレン(HD−PE)、低密度ポリエチレン(LD−PE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)など)、メチルペンテンポリマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン類(ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)などのポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、特殊アクリルゴム−アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体など)、塩素化ポリエチレン、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、メタクリル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂(たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などが挙げられ、特に、成形加工性の良さから、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン類が好ましく、とりわけ、ポリプロピレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。
【0034】
本発明の熱可塑性ポリマー組成物は、通常、熱可塑性ポリマー100重量部に対して、本発明の粒状組成物を2重量部以下含有し、具体的には、0.01重量部以上、2重量部以下、好ましくは0.01重量部以上、1重量部以下含有する。2重量部以下であると熱可塑性ポリマー組成物表面に化合物(1)及び/又は化合物(2)が現れる、いわゆる、ブリード現象が抑制される傾向があることから好ましい。
【実施例】
【0035】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
化合物(1)としては、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート(融点115℃、住友化学株式会社製、化合物(1−1))を用いた。
化合物(2)としては、グリセリンモノステアレート(以下、化合物(i)と記すことがある。融点65〜70℃、帯電防止剤)、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート(以下、化合物(ii)と記すことがある。融点49〜54℃、硫黄系酸化防止剤)、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート(以下、化合物(iii)と記すことがある。融点65〜67℃、硫黄系酸化防止剤)、オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(以下、化合物(iv)と記すことがある。融点55℃、フェノール系酸化防止剤、チバ スペシャリティ ケミカルズ登録商標、Irganox 1076)を用いた。
【0036】
(実施例1)
溶融工程:溶融タンクに、化合物(1)と化合物(iv)とを重量比10:1の混合割合で仕込み、145℃に加熱して溶融物を得た。
成形工程:30℃の冷却水で冷却したステンレス板上に前記工程で得られた溶融物を滴下し冷却したところ、平均粒径5.0mm、平均粒高さ1.5mm、平均粒重量13.6mgの略半球状の粒状組成物aを得た。粒状組成物aには粉立ちは認められなかった。
この粒状組成物について、下記の方法により、粒径、重量、DSC分析及びブロッキング防止性能を測定した。
【0037】
(粒径測定方法)
ノギスのジョウ部にて得られた粒状組成物の水平方向を粒径、垂直方向を高さとして目盛を読み取った。同様の測定を各試料10回繰り返して測定し、その平均値をそれぞれ、粒径(幅)、高さとした。
【0038】
(粒状組成物一粒の重量測定方法)
メトラー・トレド社製精密天秤を用いて得られた粒状組成物一粒の数値を読み取った。同様の測定を各試料20回繰り返して測定し、その平均値をそれぞれ粒状組成物一粒の重量とした。
【0039】
(DSC分析方法)
島津製作所製、示差走査熱量測定器DSC−60Aを用い、得られた粒状組成物をアルミニウムセルに密閉し、サンプルホルダー内で窒素雰囲気下10℃/分の速度で150℃まで加熱し、吸熱ピークを観察した。結果、115.5℃の吸熱ピークを示した。
【0040】
(ブロッキング防止性能)
温度40℃、湿度80%RH条件の恒温恒湿槽内で得られた10粒程度の粒状組成物に73.6g/cm2の荷重を掛け、1週間放置し目視による粒状組成物同士の固着の有無を確認した。結果を表1に示した。
【0041】
(実施例2)
化合物(1)と化合物(iv)とを重量比100:1の割合で混合する以外は実施例1と同様に行って粒状組成物bを得た。結果を表1にまとめた。尚、粒状組成物bは、DSCにより、120℃の吸熱ピークを示した。
【0042】
(実施例3)
化合物(1)と化合物(i)とを重量比99.5:0.5の割合で混合する以外は実施例1と同様に行って粒状組成物cを得た。結果を表1にまとめた。尚、粒状組成物cは、DSCにより、117.1℃の吸熱ピークを示した。
【0043】
(参考例1)
化合物(1)のみを用い、化合物(2)を全く用いなかったこと以外は実施例1と同様に行って粒状物dを得た。結果を表1にまとめた。粒状物dは、DSCにより、100〜150℃の間で吸熱ピークは認められなかった。
【0044】
(参考例2)
化合物(1)と化合物(iv)とを重量比1:1の割合で混合した以外は実施例1と同様に行って粒状組成物eを得た。結果を表1にまとめた。粒状組成物eは、DSCにより、100〜150℃の間で吸熱ピークは認められなかった。
【0045】
【表1】

ブロッキング防止性能 ○:固着は認められない。
△:衝撃でほぐれる程度の固着が認められる。
×:溶融、又は重度の固着、衝撃を与えても崩れない
【0046】
(実施例4)
化合物(2)として、化合物(ii)を用いる以外は実施例2と同様にすれば、粒状組成物を得ることができる。
【0047】
(実施例5)
化合物(2)として、化合物(iii)を用いる以外は実施例2と同様にすれば、粒状組成物を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の粒状組成物は、粉立ちが少なく、取り扱いが容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される化合物と、式(2)で示される化合物とを含む粒状組成物であって、該組成物100重量%に対して、式(1)で示される化合物を99.9〜80重量%、式(2)で示される化合物を0.1〜20重量%含有する粒状組成物。

(式(1)中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3 は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)

(式(2)中、R11は炭素数1〜30の直鎖アルキル基又は炭素数3〜60の分枝鎖アルキル基であり、該アルキル基には、水酸基、カルボキシ基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、該アルキル基、該アルコキシカルボニル基及び該アルキルカルボニルオキシ基に含まれるメチレン基は硫黄原子又は酸素原子で置換されていてもよい。R12は、炭素数1〜30の直鎖アルキル基、炭素数3〜30の分枝鎖アルキル基、又は炭素数7〜20のアラルキル基であり、該アルキル基又は該アラルキル基には、水酸基、カルボキシ基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、該アルキル基、該アラルキル基、該アルコキシカルボニル基及び該アルキルカルボニルオキシ基に含まれるメチレン基は硫黄原子又は酸素原子で置換されていてもよい。)
【請求項2】
式(1)で示される化合物が、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート及び2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1記載の粒状組成物。
【請求項3】
粒状組成物1粒当りの重量が1mg〜25mgであることを特徴とする請求項1又は2記載の粒状組成物。
【請求項4】
式(2)で示される化合物が、オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、グリセリンモノステアレート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、及び、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の粒状組成物。
【請求項5】
粒状組成物の形状が、略球状又は略半球状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の粒状組成物。
【請求項6】
式(1)で示される化合物と、式(2)で示される化合物とを含む粒状組成物の製造方法であって、該組成物100重量%に対して、式(1)で示される化合物を99.9〜80重量%、及び式(2)で示される化合物を0.1〜20重量%の混合割合で溶融する溶融工程、並びに、
前記溶融工程で得られた溶融物を粒状に固化する成形工程、
を含むことを特徴とする粒状組成物の製造方法。

(式(1)中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3 は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)

(式(2)中、R11は炭素数1〜30の直鎖アルキル基又は炭素数3〜60の分枝鎖アルキル基であり、該アルキル基には、水酸基、カルボキシ基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、該アルキル基、該アルコキシカルボニル基及び該アルキルカルボニルオキシ基に含まれるメチレン基は硫黄原子又は酸素原子で置換されていてもよい。R12は、炭素数1〜30の直鎖アルキル基、炭素数3〜30の分枝鎖アルキル基、又は炭素数7〜20のアラルキル基であり、該アルキル基又は該アラルキル基には、水酸基、カルボキシ基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、該アルキル基、該アラルキル基、該アルコキシカルボニル基及び該アルキルカルボニルオキシ基に含まれるメチレン基は硫黄原子又は酸素原子で置換されていてもよい。)
【請求項7】
熱可塑性ポリマー100重量部に対し、請求項1〜5のいずれか記載の粒状組成物を0.01〜2重量部配合させることを特徴とする熱可塑性ポリマー組成物の製造方法。
【請求項8】
熱可塑性ポリマーを熱安定化させるための請求項1〜5のいずれか記載の粒状組成物の使用。

【公開番号】特開2010−111860(P2010−111860A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232245(P2009−232245)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】