説明

粘度の減少した濃縮タンパク質製剤

【課題】高濃度タンパク質製剤は粘度が上昇する。また、タンパク質製剤はその安定性を維持するために糖などのリオプロテクタント(lyoprotectant)を大量に加えて凍結乾燥する。糖は分子間相互作用を増強し、粘度を増大させる。高い粘度の製剤は、調剤、シリンジへの吸引及び皮下注射を行うのが困難である。上記のようなタンパク質を含む製剤の粘度を減少させる方法を提供する。
【解決手段】粘度の高いタンパク質製剤につき、(1)塩又はバッファー成分を添加することにより製剤の全イオン強度を増大させ;又は(2)製剤のpHを低下(約4.0から約5.3)又は上昇(約6.5から約12.0)させることにより、安定性又は生物学的活性を著しく損なうことなく粘度を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の背景
(発明の分野)
本発明は、特に皮下投与に適する減少した粘度を持つ濃縮タンパク質製剤に関する。本発明はさらに濃縮タンパク質製剤の粘度を減少させる方法に関する。
【0002】
(関連技術の説明)
過去10年間において、バイオテクノロジーの発展により組換えDNA技術を用いて薬学的適用のための様々なタンパク質を生産することが可能となった。タンパク質は従来の有機及び無機薬物より大きくそして複雑であるため(すなわち、複雑な三次元構造に加え複数の官能基を有する)、かかるタンパク質製剤は特有の問題を提示する。問題の一つは、特に高濃度におけるタンパク質製剤の上昇した粘度である。体積限界(≦1.5ml)及び必要投与量(通常≧50mg、好ましくは≧100mg)に依存する皮下投与にとって、しばしば、高いタンパク質濃度での投与が必要となる。例えば、タンパク質が基本的に週毎に2 mg/mlで患者に投与される場合、平均の毎週投与量は、患者の平均体重を65kgと考えると130mgになる。1.5mlより多量のインジェクション体積は皮下投与にとってあまり許容できる量ではないため、週毎の皮下投与のためのタンパク質濃度はおよそ100mg/ml(1.5ml体積未満の130mgタンパク質)になるであろう。しかしながら、高度に濃縮されたタンパク質製剤は幾つかの問題を提示する。一つの問題は、処理及び/又は保存の間に微粒子状物質を形成し、その後の処理の間における操作を困難なものにするタンパク質の傾向である。再構成された液体製剤の場合、この点は通常、凍結乾燥の間、又は凍結乾燥後、製剤を再構成する間に適切な界面活性剤(例えば、ポリソルベート)を添加することにより回避される。界面活性剤はタンパク質の粒子状物質の形成の度合いを著しく減少させることが示されているが、高濃度タンパク質製剤を操作し投与することに関連するその他の問題に対処するものではない。タンパク質は、その巨大分子としての性質及び分子間相互作用の素質により高濃度で粘度の高い溶液を形成する傾向にある。さらに、多くのタンパク質はその安定性を維持するための糖などのリオプロテクタント(lyoprotectant)が大量に存在する状態で、しばしば、凍結乾燥される。糖は分子間相互作用を増強し、粘度を増大させ得る。高い粘度の製剤は、調剤、シリンジへの吸引及び皮下注射を行うのが困難である。粘度の高い製剤の操作において力を加えると、過剰な泡立ちを引き起こし、その生じた泡の界面活性剤的作用は、治療上活性なタンパク質を変性させ、不活性化する可能性を秘めている。さらに、粘度の高い溶液はUF/DF過程の間、逆圧を増大させ、タンパク質の回収を困難にする。結果的にタンパク質生成物のかなりの損失となり得る。かかる問題に対する満足のいく解決方法は、従来技術には欠如している。従って、高濃度タンパク質を含む製剤の粘度を減少させる方法を改善する必要がある。
安定なアイソトニック凍結乾燥タンパク質製剤は、1997年2月13日にPCT公開WO97/04801中に開示され、その全開示がここにおいて出典明示により取り込まれる。開示された凍結乾燥製剤は、明らかな安定性の欠如を伴うことなく高濃度タンパク質液体製剤を生産すために再構成することができる。しかし、再構成された製剤の高い粘度に関連した潜在的問題は扱われていない。
【0003】
出願人は、100mMNaClを含むタンパク質性、凍結乾燥製剤の調製は、結果的に僅かに高張な溶液を生じさせることを発見していた。これまで、医薬製剤は生理学的pH及び等張性が維持されなくてはならないと考えられてきた。この考えは少なくとも一部には高張な製剤の投与は脱水を引き起こし、その結果注射部位の組織を傷つけるとの認識に基づくものであった。しかし、医薬製剤の完全な等張性が必要であるとの考えは、十分な根拠に基づくものではないようである。例えば、Zietkiewicz等, Grzyby Drozdzopodobne 23:869-870(1971)には、薬物の完全な等張性は必要ではないことが示されている。高張性の危険度の限界を越える薬物溶液を避けることで十分であることが見出されていた。例えば、1300mOsmol/Kg(〜650mM NaCl)又はそれより高い高張溶液が、実験動物に対して皮下的に又は筋肉内に投与された場合にのみ、組織障害が観察された。結果的に、僅かに高張又は生理学的pH範囲外の製剤は、投与部位における組織障害の危険性を示さないようである。
出願人は、低下した(4.0−5.3)又は上昇した(6.5−12.0)pHを持つタンパク質性溶液も高濃度タンパク質製剤の粘度を減少させるのに効果的であることをさらに見出した。
本発明は、粘度が減少した高濃度タンパク質製剤であって、扱いが容易で、皮下投与に適しているものを提供することに関する。本発明は、さらに濃縮されたタンパク質製剤の粘度を減少させる方法の提供に関する。
【0004】
本発明の概要
本発明は濃縮されたタンパク質組成物の粘度を:(1)塩又はバッファー成分を添加することにより製剤の全イオン強度を増大させ;又は(2)製剤のpHを低下(約4.0から約5.3)又は上昇(約6.5から約12.0)させるように変更することにより、安定性又は生物学的活性を著しく損なうこなく低下させる方法に関する。従って、本発明は濃縮されたタンパク質製剤の粘度を減少させ、主として患者への投与前及び投与中の容易な操作を保証するための方法及び手段に関する。
一態様において、本発明は少なくとも約80mg/mlの量のタンパク質及び少なくとも約50mMの量の塩又はバッファーを含み、約50cs又はそれ未満の動粘度を持つ粘度の減少した安定な製剤を提供する。塩及び/又はバッファーは薬学的に受容可能で、種々の既知の酸(無機及び有機)又は塩基形成金属及びアミンに由来する。あるいは、塩及び/又はバッファーはアミノ酸に由来してもよい。特定の態様において、塩は塩化ナトリウム、塩酸アルギニン、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛及び酢酸ナトリウムから成るグループから選択される。他の態様において、塩又はバッファーは一価である。さらに他の態様において、製剤は約50−200mMの量の上記塩又はバッファー成分を含み、約2から30csの粘度を持つ。特定の実施態様において、製剤中のタンパク質は、少なくとも約15−20kDの分子量を持つ。他の特定の実施態様において、製剤は高張である。さらに他の特定の態様において、製剤はポリソルベートなどの界面活性剤をさらに含む。また、本発明は、糖などのリオプロテクタント(lyoprotectant)をさらに含む再構成製剤も考慮される。さらに他の特定の態様において、リオプロテクタント(lyoprotectant)糖は、例えば、スクロース又はトレハロースであり得、約60−300mMの量で存在してもよい。他の特定の態様において、再構成された製剤のタンパク質濃度は凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度より約2−40倍高い。
【0005】
他の実施態様において、本発明は、pHを減少(約4.0から約5.3)又は上昇(約6.5から約12.0)させることにより、少なくとも約80mg/mlの量のタンパク質を含む粘度の減少した安定製剤であり、動粘度が50cs又はそれ未満に減少した製剤を提供する。特定の態様において、粘度は約2から30csに減少される。他の特定の態様において、pHは薬学的に受容可能な酸、塩基又はバッファーの添加によって変更されが、少なくとも約10mM、好ましくは約50−200mM、より好ましくは約100−200mM、最も好ましくは約150mMの量で添加される。特定の態様において、酸、塩基及び/又はバッファーは一価である。他の特定の態様において、酸、塩基及び/又はバッファーは酢酸、塩酸、及びアルギニンから成るグループから選択される。他の特別な態様において、製剤はポリソルベートなどの界面活性剤をさらに含んでもよい。また、本発明は糖などのリオプロテクタント(lyoprotectant)をさらに含む再構成された製剤も考慮する。特別の態様において、リオプロテクタント(lyoprotectant)糖は、例えば、スクロース又はトレハロースであり、約60−300mMの量で存在してもよい。他の好ましい態様において、再構成された製剤中のタンパク質濃度は、凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度より約2−40倍高い。特別の態様において、pHは上記列挙された範囲内の任意の10番目のpH値であり;例えば、より低いpH値に対して、例示的値はpH4.0, 4.1, 4.2, 4.3, 4.4, 4.5, 4.6, 4.7, 4.8, 4.9, 5.0, 5.1, 5.2及び5.3である。より高いpH範囲において、例示的値は6.5, 6.6, 6.7, 6.8, 6.9, 7.0, 7.1, 7.2, 7.3, 7.4, 7.5, 7.6, 7.7, 7.8, 7.9, 8.0, 8.1, 8.2, 8.3, 8.4, 8.5, 8.6, 8.7, 8.8, 8.9, 9.0, 9.1, 9.2, 9.3, 9.4, 9.5, 9.6, 9.7, 9.8, 9.9, 10.0, 10.1, 10.2, 10.3, 10.4, 10.5, 10.6, 10.7, 10.8, 10.9, 11.0, 11.1, 11.2, 11.3, 11.4, 11.5, 11.6, 11.7, 11.8, 11.9及び12.0である。
【0006】
特別の実施態様において、本発明はイムノグロブリンなどの高分子量タンパク質の高い濃度を含む製剤を提供する。イムノグロブリンは、例えば、既に決定されている特定の抗原に対する抗体であってもよい。特定の態様において、抗原はIgE(例えば、rhuMAbE−25、rhuMAbE−26及びrhuMAbE−27がWO99/01556中に記載されている)である。あるいは、抗原には:CDタンパク質であるCD3, CD4, CD8, CD19, CD20及びCD34;EGFレセプター、HER2, HER3又はHER4レセプターなどのHERレセプターファミリーのメンバー;LFA−1, Mo1, p150,95, VLA−4, ICAM−1, VCAM及びそのα−及びβ−サブユニットを含むαv/β3インテグリン(例えば、抗−CD11a, 抗−CD18又は抗−CD11b抗体);VEGFなどの成長因子;血液型抗原;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;及びタンパク質Cが含まれる。
【0007】
本発明の製剤は、医薬製剤、特に、皮下投与のための製剤である。
他の態様において、本発明は少なくとも約50mMの量の塩又はバッファー成分を添加することによって少なくとも約80mg/mlの量のタンパク質を含む製剤の粘度を減少させる方法を提供し、この場合動粘度は50cs又はそれ未満まで減少される。特定の態様において、粘度は約2から30csに減少される。他の特定の態様において、塩又はバッファー成分は、少なくとも約100mM、好ましくは約5−200mM、より好ましくは約100−200mM、最も好ましくは約150mMの量で添加される。塩及び/又はバッファーは薬学的に受容可能であり、「塩基形成」金属又はアミンを伴う種々の既知の酸(無機及び有機)に由来する。あるいは、塩及び/又はバッファーはアミノ酸に由来してもよい。さらに他の特定の態様において、塩及び/又はバッファーは一価である。さらに他の特定の態様において、塩は塩化ナトリウム、塩酸アルギニン、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛及び酢酸ナトリウムから成るグループから選択される。さらに他の態様において、製剤は上記塩又はバッファー成分を約50−200mMの量で含有し、約2から30csの粘度を有する。さらに他の態様において、製剤中のタンパク質は、少なくとも約15−20kDの分子量を持つ。他の特別な実施態様において、製剤はポリソルベートなどの界面活性剤をさらに含んでもよい。また、本発明は糖などのリオプロテクタント(lyoprotectant)もさらに含む。特別の態様において、リオプロテクタント(lyoprotectant)糖は、例えば、スクロース又はトレハロースであってよく、約60−300 mMの量で存在してもよい。特定の態様において、製剤はバッファー又は塩を含む希釈液で再構成され得る。好ましい実施態様において、再構成された製剤中のタンパク質濃度は、凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度より約2−40倍高い。
【0008】
さらに他の実施態様において、本発明はpHをより低い(約4.0から約5.3)又は上昇した(約6.5から約12.0)状態に変更することにより少なくとも約80mg/mlの量のタンパク質を含む粘度を減少させるための方法を提供し、この場合、動粘度は50cs又はそれ未満に減少する。特定の態様において、粘度は約2から30csに減少する。他の特定の態様において、pHは薬学的に受容可能な酸、塩基又はバッファーの添加により変更され、少なくとも約10mM、好ましくは約50−200mM、より好ましくは約100−200mM、最も好ましくは約150mMの量で添加される。特定の態様において、酸、塩基及び/又はバッファーは一価である。他の特定の態様において、酸、塩基及び/又はバッファーは酢酸、塩酸、及びアルギニンから成るグループから選択される。他の特別な実施態様において、製剤はポリソルベートなどの界面活性剤をさらに含む。また、本発明は糖などのリオプロテクタント(lyoprotectant)をさらに含有する再構成された製剤も考慮する。特別な態様において、リオプロテクタント(lyoprotectant)糖は、例えば、スクロース又はトレハロースであり、約60−300mMの量で存在してもよい。他の好ましい態様において、再構成された製剤中のタンパク質濃度は、凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度より約2−40倍高い。特別の態様において、pHは上記列挙された範囲内の任意の10番目のpHであり;例えば、より低いpH値に対して、例示的値はpH4.0, 4.1, 4.2, 4.3, 4.4, 4.5, 4.6, 4.7, 4.8, 4.9, 5.0, 5.1, 5.2及び5.3である。より高いpH範囲において、例示的値は6.5, 6.6, 6.7, 6.8, 6.9, 7.0, 7.1, 7.2, 7.3, 7.4, 7.5, 7.6, 7.7, 7.8, 7.9, 8.0, 8.1, 8.2, 8.3, 8.4, 8.5, 8.6, 8.7, 8.8, 8.9, 9.0, 9.1, 9.2, 9.3, 9.4, 9.5, 9.6, 9.7, 9.8, 9.9, 10.0, 10.1, 10.2, 10.3, 10.4, 10.5, 10.6, 10.7, 10.8, 10.9, 11.0, 11.1, 11.2, 11.3, 11.4, 11.5, 11.6, 11.7, 11.8, 11.9及び12.0である。
【0009】
さらに他の態様において、本発明は、イムノグロブリン、つまり特定の抗原に特異的に結合する特異的抗体を含む少なくとも約15−20kDの分子量を持つタンパク質の製剤の粘度を減少させる方法を提供する。特定の態様において、本方法は再構成可能な製剤、特に、前と比較して濃縮のステップ(例えば、凍結乾燥)後、治療上のタンパク質が非常に高い濃度(例えば、2−40倍)にまで濃縮された製剤を調製するために用いられる。
さらに他の実施態様において、本発明は、ここに開示の製剤を用いて、製剤化されたタンパク質(例えば、抗体)により処置可能な疾患の処置、予防又は治療のための方法を提供する。このような製剤は皮下投与に特に有用である。
ここで開示の製剤を包含する容器を含む製造品も提供される。
さらに他の実施態様において、本発明は(1)少なくとも約50mMの量の塩又バッファー成分を添加し;又は(2)pHを(約4.0から約5.3)にまで低下させ、又は(約6.5から約12.0)にまで上昇させることにより変更することによって、濃縮された液体製剤中のタンパク質の自己会合を防ぐ方法を開示する。特定の態様において、阻止されるべき自己会合は、通常リオプロテクタン(lyoprotectant)として用いられる糖(例えば、スクロース又はトレハロース)の存在によって誘導され又は悪化せしめられる。従って、本方法は、再構成された凍結乾燥製剤の自己会合を阻止するために有用である。
【0010】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
I.定義
「タンパク質」とは、鎖長が三次及び/又は四次構造のより高いレベルを生産するのに十分であるアミノ酸の配列を意味する。従って、タンパク質は、そのような構造を持たないアミノ酸ベースの分子である「ペプチド」とは区別される。典型的には、ここでの使用のためのタンパク質は少なくとも約15−20kD、好ましくは少なくとも約20kDの分子量を有するであろう。
ここでの定義範囲に含まれるタンパク質の例には、例えば、ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1−アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;濾胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;因子VIIIC、因子IX、組織因子、及びフォン・ヴィレブランド因子などの凝固因子;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;ウロキナーゼ又は組織型プラスミノーゲン活性化剤(t−PA、例えば、Activase(登録商標)、TNKase(登録商標)、Retevase(登録商標))等のプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;腫瘍壊死因子−α及びβ;エンケファリナーゼ;RANTES(正常T細胞で発現及び分泌され、活性化により制御される);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP−1−α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;DNase;インヒビン;アクチビン;;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は成長因子のレセプター;インテグリン;プロテインA又はD;リウマチ因子;骨誘導神経向性因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5又は−6(NT−3、NT−4、NT−5、又はNT−6)、又はNGF−β等の神経成長因子などの神経栄養因子;血小板誘導成長因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の繊維芽成長因子;表皮成長因子(EGF);TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、又はTGF−β5を含むTGF−α及びTGF−β等のトランスフォーミング増殖因子(TGF);インシュリン様成長因子−I及び−II(IGF−I及びIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インシュリン様成長因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20等のCDタンパク質;エリスロポエチン(EPO);トロンボポエチン(TPO);骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン−α、−β、及び−γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えば、M−CSF、GM−CSF、及びG−CSF;インターロイキン(ILs)、例えば、IL−1からIL−10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子(DAF);ウイルス性抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部など;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;イムノアドヘシン;抗体;及び上に列挙した任意のポリペプチドの生物学的活性断片又は変異体、などの哺乳類タンパク質を含む。
【0011】
製剤化されるタンパク質は、好ましくは本質的に純粋及び望ましくは本質的に均質である(すなわち、夾雑タンパク質が取り除かれている)。「本質的に純粋な」タンパク質とは、組成物の全重量に対して少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%のタンパク質を含む組成物を意味する。「本質的に均一な」タンパク質とは、組成物の全重量に対して少なくとも約99重量%のタンパク質を含む組成物を意味する。
ある実施態様において、タンパク質は抗体である。抗体は、例えば、上述の分子の何れかに結合する。本発明により包含される抗体に対する例示的な分子標的には、CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、CD19、CD20及びCD34;EGFレセプター、HER2、HER3又はHER4レセプターなどのHERレセプターファミリー;細胞接着分子、例えばLFA−1、Mol、p150.95、VLA−4、ICAM−1、VCAM及びそのα又はβサブユニットを何れか含むαv/β3インテグリン(例えば、抗−CD11a、抗−CD18又は抗−CD11b抗体);成長因子、例えばVEGF;IgE;血液型抗原;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;プロテインC等々が含まれる。
「抗体」という用語は、最も広い意味で用いられ、特にモノクローナル抗体(イムノグロブリンFc領域を持つ全長抗体を含む)、多エピトープ特異性を持つ抗体組成物、二重特異的抗体、ダイアボディー、及び一本鎖分子、並びに抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)、及びFv)をカバーする。
【0012】
塩基性4−鎖抗体ユニットは2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ4量体の糖タンパクである。IgM抗体はJ鎖と称される付加的なポリペプチドと共に5つの塩基性ヘテロ四量体ユニットからなり、10の抗原結合を部位を有すし、一方IgA抗体は、J鎖と組合わされて多価集合を形成するために重合することができる塩基性4−鎖ユニットの2−5を含む。IgGの場合、4−鎖ユニットは一般的に約150,000ダルトンである。各L鎖は1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合されるが、2つH鎖はH鎖のアイソタイプに応じて1つ又は複数のジスルフィド結合により互いに結合している。また、各H及びL鎖は規則的な間隔を持った鎖内ジスルフィド結合も持つ。各のH鎖は、可変ドメイン(V)をN末端に有し、α及びγ鎖の各々に対しては3つの定常ドメイン(C)が、μ及びεアイソタイプに対しては4つのCドメインがこれに続く。それぞれのL鎖は、その他端に定常ドメイン(C)が続く可変ドメイン(V)をN末端に有する。VはVと整列し、Cは重鎖の第一定常ドメイン(C1)と整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。VとV対は共同して単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性は、例えばBasic and Clinical Immunology, 8th edition, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow(eds.), Appleton; Lange, Norwalk, CT, 1994, 71頁及び6章を参照のこと。
【0013】
任意の脊椎動物種からのL鎖には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。また、その重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、イムノグロブリンには異なったクラス又はアイソタイプを割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMというイムノグロブリンの5つの主要なクラスがあり、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる重鎖を有する。さらにγ及びμのクラスは、CH配列及び機能等の比較的小さな差異に基づいてサブクラスに分割され、例えば、ヒトにおいては次のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2が発現する。
【0014】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部分が抗体の間で配列が広範囲に異なることを意味する。Vドメインは抗原結合性を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定める。しかしながら、可変性は可変ドメインの全スパンを通して均等には分布されているわけではない。代わりに、V領域は、それぞれ9−12アミノ酸長である「高頻度可変領域」又は、ときには「相補性決定領域」(CDRs)と称される極度の可変性を有するより短い領域によって分離された15−30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸展からなる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメイン各々は、大きなβ−シート配置をとり、3つの高頻度可変領域により接続された4つのFR領域を含み、それはループ状の接続を形成し、β−シート構造の一部を形成することもある。各鎖の高頻度可変領域はFRにより他の鎖からの高頻度可変領域とともに極近傍に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ED. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)参照のこと。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接は関係ないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害(ADCC)における抗体の寄与を示す。
【0015】
ここで使用される場合、「高頻度可変領域」(「相補性決定領域」又はCDRsとしても知られている)なる用語は、抗原結合部位を形成し、抗原特異性の主たる決定因子であるイムノグロブリンのV領域ドメイン内の抗体のアミノ酸残基(通常、配列可変性の3又は4の短い領域)を意味する。CDR残基を同定するために少なくとも2つの方法がある:(1)種間配列可変性の基づいたアプローチ(即ち、Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institute of Health, Bethesda, MS 1991);及び(2)抗原−抗体複合体の結晶学的研究に基づいたアプローチ(Chothia, C等, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。しかし、2つの残基同定技術が同一領域ではないがオーバーラップする領域を限定する程度内で、それらの方法は、ハイブリッドCDRを限定するために組合わせることができる。
【0016】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を称するが、つまり、集団を含む個々の抗体(群)は、少量存在するであろう自然発生し得る突然変異を別にすれば同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に認識する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物に対し、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基を認識する。それらの特性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培地で合成され、他の免疫グロブリンで混ざらないという点で有利である。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体集団から得られたという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないと解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4,816,567号参照)。「モノクローナル抗体」は、また、Clackson等, Nature, 352:624-628(1991)及びMarks等, J. Mol.Biol., 222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することができる。
【0017】
ここで、モノクローナル抗体は特に、「キメラ」抗体(イムノグロブリン)を含み、それは、重鎖又は軽鎖の一部が特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導された又は他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限りにおいてそれらの抗体の断片である(米国特許第4,816,567号;Morrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。
「無傷」の抗体は、抗原−結合部位、並びにC及び少なくとも重鎖定常ドメイン、C1、C2及びC3を含むものである。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata等, Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]);単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0018】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された残りの「Fc」断片を産生する。Fab断片は全長L鎖とH鎖の可変領域ドメイン(V)、及び一つの重鎖の第一定常ドメイン(C1)からなる。各Fab断片は抗原結合性に関して一価、すなわち単一の抗原−結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab’)断片が生じ、これは2価の抗原結合部位を持つ2つのジスルフィド結合されたFab断片にほぼ対応し、抗原を交差結合させることができるものである。また、Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ又は複数のシステインを含む重鎖C1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されていることによりFab断片と相違する。Fab’−SHは、ここでは定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を持つFab’を表す。F(ab’)抗体断片は、通常はFab’断片の対として生成され、それらの間にヒンジシステインを有する。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
【0019】
Fc断片はジスルフィドにより一緒に保持されている双方のH鎖のカルボキシル末端部位を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列により決定され、該領域は、所定の型の細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によって認識される部位である。
「Fv」は、完全な抗原−認識及び−結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)であっても、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
【0020】
「sFv」又は「scFv」と略称される「一本鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖内に結合したV及びVドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはV及びVドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの総説については、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと。
「ダイアボディ」という用語は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間の対形成が達成され、その結果、二価の断片、すなわち2つの抗原−結合部位を有する断片が得られるように、VとVドメインとの間に、短いリンカー(約5−10残基)を持つsF断片(前の段落を参照)を構築することにより調製される小型の抗体断片を意味する。二重特異性ダイアボディは2つの「交差」sF断片のヘテロダイマーであり、そこでは2つの抗体のV及びVドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号;米国特許第93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により十分に記載されている。
【0021】
特定のポリペプチド上の特定のポリペプチド又はエピトープに対して「特異的に結合する」又は「特異的な」抗体とは、他の如何なるポリペプチド又はポリペプチドエピトープとも実質的に結合することなく、特定のポリペプチド又はエピトープと結合するものである。
【0022】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、キメライムノグロブリン、つまり、非ヒト抗体から得られた最小配列を含む、大部分がヒト配列のイムノグロブリン鎖又はその断片(Fv,Fab,Fab’,F(ab’)又は抗体の他の抗原結合部分配列など)である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の抗体特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、また、ここで用いられる意味での「ヒト化抗体」は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Reichmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。
【0023】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害;Fc領域結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(すなわち、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
【0024】
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又はADCCとは、ある種の細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原−担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞障害性の形態を意味する。抗体は細胞障害細胞を「備えて」おり、この機構はこのような死滅には絶対に必要なものである。ADCCを媒介する主要な細胞、NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。関心ある分子のADCC活性をアッセイするために、米国特許第5,500,362号又は同5,821,337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。場合によっては、もしくは付加的に、関心ある分子のADCC活性は、例えば、Clynes等, PNAS (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
【0025】
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するものである。好適なFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)と結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性型レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインにチロシンベースの免疫レセプター活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif ;ITAM)を含んでいる。阻害型レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインにチロシンベースの免疫レセプター阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif ;ITIM)を含んでいる(Daeron, Annu. Rev. immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRsに関しては、Ravetch and Kinet, Annu.Rev. Immunol. 9:457-92 (1991);Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Haasら, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)に概説されている。他のFcRs、ここでは、将来的に同定されるものも含めて、「FcR」という言葉によって包含される。また、該用語には、母方由来のIgGsが胎児に受け継がれる要因となっている新生児性レセプターFcRn(Guyerら, J. Immunol. 117:587 (1976) Kimら, J. Immunol.24:249 (1994))も含まれる。
【0026】
「ヒトエフェクター細胞」とは、1つ又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。好ましくは、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCsとMNK細胞が好適である。エフェクター細胞は天然源、例えば血液から単離してもよい。
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
【0027】
「安定な」製剤とは、その中に含まれるタンパク質がその物理的、化学的安定性及び保存に対する完全性を本質的に保持するもののことである。タンパク質の安定性を測定するための種々の分析的技術は、当該技術分野において利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, New York, Pubs.(1991)及びJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10:29-90(1993)中に概説されている。安定性は選択された温度及び選択された期間測定することができる。迅速なスクリーニングを行うために、製剤を2週間から1ヶ月間、40℃にて保存し、時間安定性を測定してもよい。製剤が2−8℃にて保存される場合、一般に、製剤は30℃又は40℃で少なくとも1ヶ月間安定、及び/又は2−8℃で少なくとも2年間安定である必要がある。製剤が30℃にて保存される場合、一般に、製剤は30℃で少なくとも2年間安定で、及び/又は40℃で少なくとも6ヶ月間安定である必要がある。例えば、凍結乾燥及び保存後の凝集の程度は、タンパク質安定の指標として用いることができる。従って、「安定な」製剤は、該タンパク質の約10%未満及び好ましくは約5%未満が製剤中に凝集体として存在してもよい。他の実施態様において、凍結乾燥製剤の凍結乾燥及び保存後の凝集体形成の如何なる増大も定量することができる。例えば、「安定な」凍結乾燥製剤は、凍結乾燥製剤が少なくとも1年間2−8℃で保存される場合、凍結乾燥製剤中の凝集体の増加が、約5%及び好ましくは約3%未満のものである。他の実施態様において、タンパク質製剤の安定性は、生物学的活性のアッセイを用いて測定される。
【0028】
「再構成された」製剤は、凍結乾燥タンパク質製剤を希釈液中に溶解させ、タンパク質が再構成製剤中に分散されることによって調製されるものである。再構成された製剤は、目的のタンパク質で治療されるべき患者に投与(例えば、非経口投与)するのに適するもの、本発明のある実施態様においては、皮下投与に適するものであってもよい。
「等張な」製剤は、ヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を持つものである。アイソトニック製剤は、一般に約250から350mOsmの浸透圧を持つ。「低張な」なる用語は、ヒトの血液の浸透圧より低い浸透圧を持つ製剤を表す。同様に、「高張な」なる用語は、ヒトの血液の浸透圧より高い浸透圧を持つ製剤を表す。等張性は、例えば、蒸気圧又は氷−凍結(ice-freezing)型浸透圧計を用いて測定することができる。本発明の製剤は、塩及び/又はバッファーの添加の結果、高張となる。
【0029】
「薬学的に許容される酸」は、それらが製剤化される濃度及び方法において無毒性である無機及び有機酸を含む。例えば、適切な無機酸には、塩酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルファニル酸、リン酸、炭酸などが含まれる。適切な有機酸には、直鎖及び分岐鎖アルキル、芳香族、環状、環状脂肪族、アリール脂肪族、複素環式、飽和、不飽和、モノ−、ジ−、及びトリ−カルボン酸で、例えば、蟻酸、酢酸、2−ヒドロキシ酢酸、トリフルオロ酢酸、フェニル酢酸、トリメチル酢酸、t−ブチル酢酸、アントラニル酸、プロパン酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−オキソプロパン酸、プロパンジオイン酸(propandioic)、シクロペンタンプロピオン酸、シクロペンタン プロピオン酸、3−フェニルプロピオン酸、ブタン酸、ブタンジオイン酸(butandioic)、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、アスコルビン酸、ケイ皮酸、ラウリル硫酸、ステアリン酸、ムコン酸、マンデル酸、コハク酸、エンボン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、マロン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、グライコン酸、グルコン酸、ピルビン酸、グリオキサール酸、シュウ酸、メシリン酸(mesylic)、コハク酸、サリチル酸、フタル酸、パルモイン酸(palmoic)、パルメイン酸(palmeic)、チオシアン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルフホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−コロベンゼンスルホン酸(chorobenzenesulfonic)、ナフタレン−2−スルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルバイシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボキシル酸、グルコヘプトン酸、4,4’−メチレンビス−3−(ヒドロキシ−2−エン−1−カルボキシル酸)、ヒドロキシナフトイン酸(hydroxynapthoic)を含む。
【0030】
「薬学的に許容な塩基」には、それらが製剤化される濃度及び方法において無毒性である無機及び有機塩基を含む。例えば、適切な塩基には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム、N−メチルグルカミン、モルホリン、ピペリジンなどの無機塩基形成金属、及び第一級、第二級、第三級アミン、置換アミン、環状アミンを含む有機無毒性塩基、及び塩基性イオン交換レジン、[例えば、N(R’)(ここでR’は別個にH又はC1−4アルキル基、例えばアンモニウム、トリス)]、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ポリアミンレジン及び類似物から形成されるものが含まれる。特に、好ましい有機無毒性塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
本発明に使用可能な、さらなる薬学的に許容可能な酸及び塩基には、アミノ酸、例えば、ヒスチジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸。グルタミン酸、リジン、アスパラギンに由来するものが含まれる。
「薬学的に許容可能な」バッファー及び塩には、前記された酸及び塩基の塩を付加された酸及び塩基に由来するものが含まれる。具体的なバッファー及び又は塩には、ヒスチジン、コハク酸及び酢酸が含まれる。
【0031】
「リオプロテクタント(lyoprotectant)」は、目的のタンパク質と組合わせた場合に、凍結乾燥及びその後の保存に対して、タンパク質の化学的及び/又は物理的不安定性を顕著に阻止又は軽減する分子である。典型的なリオプロテクタント(lyoprotectant)には、糖及びそれらに対応する糖アルコール;グルタミン酸一ナトリウム又はヒスチジンなどのアミノ酸;ベタインなどのメチルアミン;硫酸マグネシウムなどの溶媒変性塩;三価又はそれより大きな分子量の糖アルコール、例えば、グリセリン、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトール;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;ピューロニクス(登録商標);及びそれらの組合わせが含まれる。さらなる典型的なリオプロテクタント(lyoprotectant)には、グリセリン及びゼラチン、及び糖、メリビオース、メレチトース、ラフィノース、マンノトリオース及びスタキオースが含まれる。還元糖の例には、グルコース、マルトース、ラクトース、マルツロース、イソマルツロース及びラクツロースが含まれる。非還元糖の例には、糖アルコール及び他の直鎖ポリアルコールから選択されたポリヒドロキシ化合物の非還元グリコシドが含まれる。好ましい糖アルコールは、モノグリコシド、特にラクトース、マルトース、ラクツロース及びマルツロースなどのジサッカライドの還元によって得られる化合物である。グリコシド側鎖はグルコシド又はガラクトシドのいずれかであり得る。糖アルコールの更なる例は、グルシトール、マルチトール、ラクチトール及びイソ−マルツロースである。好ましいリオプロテクタント(lyoprotectant)は非還元糖トレハロース又はスクロースである。
【0032】
本発明の粘度の減少した製剤を調製する場合、上記に挙げられた賦形剤並びに他の添加物を用いるとき、特に高濃度で添加される場合には、製剤の粘度を増加させないように注意すべきである。
リオプロテクタント(lyoprotectant)は、「リオプロテクティング(lyoprotecting)量」、つまり、リオプロテクタントのリオプロテクティング量の存在下におけるタンパク質の凍結乾燥後、該タンパク質が凍結乾燥及び保存に対して物理的及び化学的安定性を本質的に維持することを意味する量にて凍結乾燥前の製剤に添加される。
ここでの目的における「希釈液」は、薬学的に許容な(ヒトへの投与に関し安全で無毒性)もので、凍結乾燥後に再構成される製剤などの、液性製剤の調製に有用である。典型的な希釈液には、滅菌水、注射のための静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸バッファー生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー溶液又はデキストロース溶液が含まれる。これに代わる実施例において、希釈液は塩及び/又はバッファーの水溶液を含み得る。
【0033】
「保存剤」は、バクテリアの作用を減少させるために、ここにおける製剤に添加され得る化合物である。保存剤の添加は、例えば、複数回使用(複数回投与)製剤の生産を促進する。潜在的保存剤の例には、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)、及び塩化ベンゼトニウムが含まれる。保存剤の他のタイプには、フェノールなどの芳香族アルコール、ブチル及びベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、及びm−クレゾールが含まれる。ここで最も好ましい保存剤は、ベンジルアルコールである。
「充填剤」は、凍結乾燥混合物の質量を付加させ、凍結乾燥ケイク(cake)の物理的構造に貢献する(例えば、開孔構造を維持する本質的に均一な凍結乾燥ケイクの生産を促進する)化合物である。典型的な充填剤には、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコール及びソルビトールが含まれる。凍結乾燥製剤の再構成により得られた本発明の溶液製剤は、かかる充填剤を含んでもよい。
「治療」とは、治療上の処置及び予防又は防止的手段の両方を意味する。治療の必要があるものには、既に羅患しているもの、並びに疾患が予防されるべきものが含まれる。
治療の目的とされる「哺乳動物」とは、ヒト、家庭又は農場用動物、及び動物園、スポーツ又はペット用動物、例えばイヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、マウス、ネコ等を含む、哺乳動物に分類されるあらゆる動物を意味する。好ましくは哺乳動物はヒトである。
「疾患」は、タンパク質による治療によって利益を受ける任意の状態のことである。これには、問題の疾患に哺乳動物を罹患させる素因になる病理状態を含む、慢性及び急性の疾患又は病気が含まれる。ここで治療されるべき疾患の非限定的な例には、癌腫及びアレルギーが含まれる。
【0034】
「治療的有効量」は、少なくとも特定の疾患のかなりの改善又は予防をもたらすのに必要な最小濃度である。既知のタンパク質の治療的有効量は、当該技術分野において周知であり、後述部分に見出されるタンパク質の有効量は、平均的な医者などの当業者において周知の標準的技術によって決定される。
ここで用いられる「粘度」は、「動粘度」又は「絶対粘度」のことである。「動粘度」は、重力の影響下における液体の抵抗性流動の尺度である。等量の2液体が同一のキャピラリー粘度計中に置かれ、重力による流れにまかせるとき、粘度のある液体はより粘度の少ない液体がキャピラリー中を流れるのより時間がかかる。ある液体が流れ終わるのに200秒かかり、他の液体が400秒かかる場合、動粘度のスケール上、第二の液体は第一の液体の2倍粘度が高い。「絶対粘度」は、時にダイナミック又は単に粘度と呼ばれるものであるが、動粘度及び液体密度から計算される:
絶対粘度=動粘度×密度
動粘度の次元は、L/Tであり、ここでLは長さで、Tは時間である。通常、動粘度はセンチストーク(cSt)で表される。動粘度のSI単位は、mm/sであり、1cStである。絶対粘度は、センチポアズ(cP)の単位で表される。絶対粘度のSI単位は、ミリパスカル−セコンド(mPa−s)であり、1cP=1mPa−sである。
【0035】
II.本発明の実施の形態
A.タンパク質の調製
製剤化されるタンパク質は、当該技術分野において周知であるように、タンパク質をコードする核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養するといった任意の公知技術、又は合成技術(組換え技術及びペプチド合成又はこれらの技術の組合わせなど)により生産され、又はタンパク質の内在的在処から単離される。
組換え手段による、本発明の方法によって製剤化されるタンパク質の調製は、適切な宿主細胞を発現又はクローニングベクターで形質転換又は形質移入することによって達成され、プロモーター誘導、形質転換体の選択又は所望の配列をコード化する遺伝子を増幅するために適するように修正された従来の栄養培地中で培養される。培地、温度、pHなどの培養条件は、過度の実験を行うことなく当業者によって選択され得る。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、方法、及び実用的な技術は、Mammalian Cell Biotechnology:A Practical Approach, M. Butler, Ed.(IRL Press, 1991)及びSambrook等, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, New York:Cold Spring Harbor Press中に見出すことができる。形質移入の方法は、当業者にとって既知のことであり、例えば、CaPO及びCaCl形質移入、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションなどを含む。また、適切な技術はSambrook等, 上掲中にも記載されている。さらなる形質移入の技術は、Shaw等, Gene 23:315 (1983);WO89/05859;Graham等, Virology 52:456-457 (1978)及び米国特許第4,399,216号中に記載されている。
【0036】
本発明の方法による製剤として所望のタンパク質をコードする核酸は、クローニング又は発現のための自己複製可能なベクター中へ挿入してもよい。適切なベクターは公的に入手可能で、プラスミド、コスミド、ウィルス粒子又はファージの形態で得られる。適切な核酸配列は、種々の手法によりベクター中へ挿入してもよい。一般に、DNAは当該技術分野において既知の技術を用いて適切な制限エンドヌクレアーゼサイトに挿入される。限定はしないが、ベクターの構成成分には、一般に一又は複数の単一配列、複製オリジン、一又は複数のマーカー遺伝子及びエンハンサー成分、プロモーター及び転写終結配列が含まれる。これらの一又は複数の構成成分を含む適切なベクターの構築には、当業者に既知の標準的なライゲーション技術が用いられる。
製剤化されるタンパク質の形態は、培地又は宿主細胞溶解物から回収される。膜結合の場合、適切な界面活性剤を用いて、又は酵素的な切断により膜から遊離することができる。また、発現に用いられる細胞は、凍結−解凍サイクル、ソニケーション、機械的な破壊又は細胞溶解剤などの種々の物理的又は化学的方法によって破壊することができる。
製剤化されるタンパク質の精製は、既知な任意の適切な技術、例えば、イオン交換カラムによる分画、エタノール沈殿法、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィー又はカチオン交換レジン(例えば、DEAE)、等電点電気泳動法、SDS−PAGE、硫安沈殿法、IgGなどの夾雑物を除去するためのプロテインAセファロースカラム(例えば、Sephadex(商標登録)G75)を用いたゲル濾過法、及びエピトープタグ化形態に結合する金属キレートカラムによって達成される。
【0037】
B.抗体の調製
本発明の一実施態様では、選択されるタンパク質は抗体である。ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異的及びヘテロコンジュゲート抗体を含む抗体の調製技術が以下に示される。
【0038】
(i)ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、一般に、適切な抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより、動物中で産生される。免疫化されるべき種において免疫原性を有するタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン又はダイズトリプシンインヒビターなどに適切な抗原をコンジュゲートさせることが役に立つ。用いられるアジュバントの例には、完全フロイントアジュバント及びMPL−TDMアジュバント(モノホスホリルLipid A、合成トレハロースジコリノミコレート)が含まれる。免疫の方法は、過度の実験をすることなく当業者によって選択することができる。
1ヶ月後、動物を、完全フロイントアジュバントに入れた元々の量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、同一の抗原であって、異なるタンパク質及び/又は異なるクロスリンク剤によりコンジュゲートされたコンジュゲートで動物を追加免疫する。また、コンジュゲートはタンパク質融合体として組換体細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンなどの凝集剤が免疫応答を増強させるのにうまく使用できる。
【0039】
(ii)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体集団から得られるが、つまり、該集団を含む個々の抗体は、少量存在する起こりうる自然発生的突然変異を除いて同一である。従って、「モノクローナル」という形容詞は、別個の抗体の混合物ではないとの抗体の特徴を示すものである。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作成することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はハムスターなどのその他の適当な宿主動物を上記のように免疫し、免疫化に用いられたタンパク質と特異的に結合する抗体を産生する、又は産生することのできるリンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。
【0040】
免疫化剤は、典型的には製剤化されるタンパク質を含む。一般には、ヒト起源の細胞が望まれる場合において末梢血リンパ球(「PBLs」)が用いられるか、又は非ヒト哺乳動物ソースが望まれる場合において脾臓細胞又はリンパ節細胞が用いられるかのいずれかである。次に、リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を調製するためにポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて不死化細胞株と融合される。Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, Academic Press (1986), pp.59-103。通常、不死化細胞はトランスフォームされた哺乳動物細胞であり、実用的にはげっ歯類、ウシ及びヒト起源のミエローマ細胞である。通常、ラット又はマウスミエローマ細胞株が用いられる。このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは、融合していない親のミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する一又は複数の物質を含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親のミエローマ細胞が酵素であるヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失する場合、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT−欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含有することになろう(HAT培地)。
【0041】
好ましいミエローマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現をサポートし、HAT培地のような培地に対して感受性の細胞である。これらの中でも、好ましいミエローマ株化細胞は、マウスミエローマ株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USAより入手し得るMOPC-21及びMPC−11マウス腫瘍、及び、American Type Culture Collection, Rockville, Maryland USAより入手し得るSP-2細胞から誘導されるものである。ヒトミエローマ及びマウス−ヒトヘテロミエローマ株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁、(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
【0042】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munsonら., Anal. Biochem., 107:220(1980)のスキャッチャード分析によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定されると、そのクローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, 上掲)。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が含まれる。また、このハイブリドーマ細胞は、動物の腹水腫瘍として、インビボで増殖させることができる。
【0043】
免疫化剤は、典型的には抗体が結合するエピトープタンパク質を含む。一般には、ヒト起源の細胞が望まれる場合において末梢血リンパ球(「PBLs」)が用いられるか、又は非ヒト哺乳動物ソースが望まれる場合において脾臓細胞又はリンパ節細胞が用いられるかのいずれかである。次に、リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を調製するためにポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて不死化細胞株と融合される。Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, Academic Press (1986), pp.59-103。
通常、不死化細胞はトランスフォームされた哺乳動物細胞であり、実用的にはげっ歯類、ウシ及びヒト起源のミエローマ細胞である。通常、ラット又はマウスミエローマ細胞株が用いられる。ハイブリドーマ細胞を、好ましくは、融合していない不死化細胞の増殖または生存を阻害する一又は複数の物質を含む適当な培地に蒔く。例えば、親のミエローマ細胞が酵素であるヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失する場合、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT−欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含有することになろう(HAT培地)。
【0044】
好ましい不死化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現をサポートし、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。よい好ましい不死化株化細胞は、マウスミエローマ株であり、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California 及びAmeriman Type Culture Collection, Rockville, Marylandより入手可能である。ヒトミエローマ及びマウス−ヒトヘテロミエローマ株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁、(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、製剤化されるタンパク質に対するモノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。かかる技術及びアッセイは当該技術分野において既知のものである。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollard., Anal. Biochem., 107:220(1980)のスキャッチャード分析によって測定することができる。
所望のハイブリドーマ細胞が同定されると、そのクローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる。Goding, 上掲。この目的に対して好適な培地には、例えば、ダルベッコウ修正イーグル培地及びRPMI-1640培地が含まれる。また、このハイブリドーマ細胞は、哺乳動物の腹水として、インビボで増殖させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィー等のような従来の免疫グロブリン精製法によって、培地、腹水、又は血清から上手く分離することができる。
【0045】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、定法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)容易に分離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。一度分離されれば、該DNAを発現ベクター中に挿入し、次に、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は他にイムノグロブリンタンパク質を産生しないミエローマ細胞のような宿主細胞中に形質移入し、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を獲得することができる。抗体をコードするDNAの細菌での組み換え発現に関する概説論文には、Skerraら., Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPluckthun, Immunol. Revs. 130: 151-188(1992)が含まれる。
さらなる実施態様では、抗体は、McCaffertyら, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリーから分離することができる。Clacksonら, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marksら, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用したマウス及びヒト抗体の分離について記述している。次の刊行物は、鎖シャフリングによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに非常に大きなファージライブラリーを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouseら, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266[1993])を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
【0046】
また、該DNAは、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrisonら, Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又はイムノグロブリンコード配列に非イムノグロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることによって修飾することができる。
典型的には、かかる非イムノグロブリンポリペプチドは抗体の定常領域の代わりに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインが置換されて、抗原に対する特異性を有するある抗原結合部位、及び異なる抗原に対する特異性を有する他の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作り出す。
また、キメラ又はハイブリッド抗体はクロスリンク剤に関連した方法を含む合成タンパク質化学における既知の方法を用いてインビトロにおいても調製される。例えば、免疫毒素はジスルフィド置換反応を用いて、又はチオエーテル結合を形成させることにより構築される。当該目的にとって適切な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル−4−メルカプトブチルイミデートが含まれる。
【0047】
(iii)ヒト化及びヒト抗体
本製剤化方法の対象となる抗体には、さらにヒト化又はヒト抗体が含まれる。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメライムノグロブリン、イムノグロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)又は抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒトイムノグロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒトイムノグロブリン(レシピエント抗体)を含む。ある場合には、ヒトイムノグロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、また典型的には2つの可変領域の全てを実質的に含み、この場合、CDR領域の全て若しくは実質的に全てが、非ヒトイムノグロブリンのものに相当し、FR領域の全て若しくは実質的に全てが、ヒトイムノグロブリンコンセンサス配列である。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトのイムノグロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む。Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)。
【0048】
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該技術分野において周知である。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の1つ又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「移入」残基と称され、典型的には「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は基本的には、Winter及び共同研究者、Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)の方法に従うか、又は齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することにより実施される。従って、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されている。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位由来の残基によって置換されたヒト抗体である。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受容される。Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901(1987)。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる。Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaほか, J. Immunol., 151:2623(1993)。
【0049】
さらに、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持したまま、抗体をヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析過程によりヒト化抗体を調製する。三次元イムノグロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補イムノグロブリン配列の予想される三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を観察することで、候補イムノグロブリン配列の機能における残基の想定され得る役割の分析、すなわち候補イムノグロブリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0050】
あるいは、内在性のイムノグロブリン産生がない状態で、ヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが現在では可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列イムノグロブリン遺伝子列の移入は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovits等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993); Bruggermann等, Year in Immuno., 7:33 (1993)。また、ヒト抗体はファージディスプレイライブラリーからも誘導することができる(Hoogenboom等, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991))。
【0051】
また、ヒト抗体はファージディスプレイライブラリーを含む、当該技術分野において既知の種々の技術を用いても生産することができる。Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol. 222:581 (1991)。また、Cole等及びBoerner等の技術もヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p.77 (1985)及びBoerner等, J. Immunol. 147(1):86-95 (1991))。同様に、ヒト抗体は遺伝子導入動物、例えば、内在性のイムノグロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されているマウスなどに、ヒトイムノグロブリン遺伝子座を導入することにより作製することができる。免疫すると、遺伝子再構成、構築及び抗体レパートリーを含む、あらゆる観点においてヒトで観察されるものと近似したヒト抗体の産生が観察される。本アプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;5,545,806号、5,569,825号,、5,625,126号、5,633,425号、5,661,016号及び以下の特定の刊行物中に記載されている:Marks等, Bio/Technology 10:779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368:856-859 (1994);Morrison, Nature 368:812-13 (1994)、Fishwild等, Nature Biotechnology 14:845-51 (1996)、Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996)及びLonberg及びHuszar, Intern, Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)。
【0052】
(iv)抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ治療法(ADEPT)
また、本発明の抗体は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、WO81/01145を参照)を活性な抗癌剤へ変換するプロドラッグ活性化酵素へ抗体をコンジュゲートすることによって、ADEPTにおいて使用することができる。例えばWO88/07378及び米国特許第4,975,278号を参照されたい。
ADEPTに有用な免疫コンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に変換するようにプロドラッグへ作用し得る任意の酵素が含まれる。
限定するものではないが、本発明の方法に有用な酵素には、グリコシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヒトリゾチーム、ヒトグルクロニダーゼ、ホスフェート含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;サルフェート含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なアリルサルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ(例えば、カルボキシペプチダーゼG2及びカルボキシペプチダーゼA)及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの変換に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なβガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に変換させるのに有用なβラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に変換するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体は、本発明のプロドラッグを、遊離の活性薬剤に変換させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458(1987)を参照)。抗体-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを送達するために調製することができる。
【0053】
この発明の酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば前述部分で検討したヘテロ二官能性クロスリンク剤を使用することにより、抗-IL17又はLIF抗体に共有的に結合させることができる。あるいは、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(例えば、Neuberger等, Nature 312:604-608 (1984)を参照のこと)。
【0054】
(iv)二重特異性及び多重特異性抗体
二重特異性抗体(BsAbs)は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。このような抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')二重特異性抗体)から誘導することができる。
二重特異性抗体を調製する方法は、当該技術分野において知られている。全長二重特異性抗体の伝統的な生産は、二つのイムノグロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づいているが、この場合二つの鎖は異なる特異性を持っている。Millstein等, Nature, 305:537-539(1983)。イムノグロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、そのうち一つだけが正しい二重特異性構造を有する。アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる目的の分子の精製はかなり煩雑で、収率は低い。同様の方法がWO93/08829及びTraunecker等、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0055】
望ましい結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原-抗体結合部位)をイムノグロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は、好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含むイムノグロブリン重鎖定常ドメインと行われる。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。イムノグロブリン重鎖の融合、望まれるならばイムノグロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。二重特異性抗体の生産に関しさらに詳細な点については、Suresh等, Methods in Enzymology 121:210 (1986)を参照のこと。
【0056】
異なるアプローチにより、望ましい結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原-抗体結合部位)をイムノグロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は、好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含むイムノグロブリン重鎖定常ドメインと行われる。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。イムノグロブリン重鎖の融合、望まれるならばイムノグロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。これにより、構築に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が所望の二重特異性抗体の最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率である場合、又はその比率が所望の鎖の結合にあまり影響がない場合は、2または3全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0057】
WO96/27011中に記載される他のアプローチによると、抗体分子対間の接点は、組換体細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にするように設計される。好ましい接点には少なくとも抗体定常ドメインのCH3領域の一部が含まれる。この方法において、第一の抗体分子の接点に由来する一又は複数の小アミノ酸側鎖は、より大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)と置換される。大きな側鎖と同一又は同じサイズの代償性の「空洞」が、大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例えば、アラニン又はスレオニン)で置換することにより第二の抗体分子の接点上に創られる。このように、ホモ二量体のような望まれない最終産物以上にヘテロ二量体の収量を増大させるメカニズムが提供される。
このアプローチの好ましい実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッドイムノグロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッドイムノグロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の片側にのみイムノグロブリン軽鎖があると容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要なイムノグロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、1994年3月3日に発行されたWO94/04690に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
【0058】
二重特異性抗体は、クロスリンクした又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの抗体の一方はアビジンに結合され、他方はビオチンに結合され得る。そのような抗体は、例えば、不要の細胞に対する免疫系細胞をターゲティングするため(米国特許第4,676,980号)、及びHIV感染の治療のために提案された(WO91/00360号、WO92/200373号)。ヘテロコンジュゲート抗体は、あらゆる簡便なクロスリンク法を用いて作製することができる。好適なクロスリンク剤は当該分野において良く知られており、幾つかのクロスリンク技術と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。また、以下の技術も必ずしも二重特異的ではない二価抗体断片の産生に用いることができる。例えば、大腸菌から回収されるFab’断片は、インビトロにおいて二価抗体を形成させるのに化学的にカップルさせることができる。Shalaby等, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)を参照のこと。
二重特異性抗体は全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)として調製することができる。抗体断片から二重特異性抗体を生産する技術は、文献中に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。Brennan等, Science 229:81 (1985)は、無傷の抗体がF(ab’)断片を生産するためにタンパク質分解性に切断される方法を記述する。これらの断片は、隣接するジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を防ぐためにジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下にて還元される。次に、生産されたFab’断片はチオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に変換される。次に、Fab’−TNB誘導体の一つは二重特異性抗体を形成させるためにFab’−TNBへ再変換することができる。二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用可能である。
【0059】
Fab'断片は大腸菌から直接回収してもよく、化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalabyら,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の生産を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞及び正常なヒトT細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
また、組換え細胞培養から直接的に二価抗体断片を作成し分離する様々な技術も記述されている。例えば、二価ヘテロ二量体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelny等, J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させた。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性/二価抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、短かすぎて同一鎖上の2つのドメイン間の対形成ができないリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に結合された重鎖可変ドメイン(V)を含む。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、よって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。
【0060】
典型的な二重特異性抗体は対象の分子上の2つの異なるエピトープ上に結合する。あるいは、抗タンパク質アームは、細胞の防御機構を特定のタンパク質を発現する細胞に集中させるために、T細胞レセプター分子(例えば、CD2,CD3,CD28又はB7)、又はFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)などIgGに対するFcレセプター(FcγR)等の白血球上の誘因分子に結合するアームと組合わせてもよい。また、二重特異性抗体を特定のタンパク質を発現する細胞に細胞障害性薬剤を局在化させるために用いてもよい。そのような抗体は、タンパク質−結合アーム、及び細胞障害性薬剤又はEOTUBE,DPTA,DOTA,TETAなどの放射性核種キレーターに結合するアームを保持する。その他の目的たる二重特異的抗体は、対象のタンパク質に結合し、さらに組織因子(TF)に結合する。
【0061】
(v)ヘテロコンジュゲート抗体
また、ヘテロコンジュゲート抗体も本発明の範囲に入る。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため、米国特許第4,676,980号、及びHIV感染の治療のために提案されている。WO91/00360;WO92/200373;欧州特許第03089号。該抗体は、クロスリンク剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,676,980号に開示されたものが含まれる。
【0062】
B.凍結乾燥製剤の調製
ここでの製剤は、再構成される凍結乾燥製剤に限定されないが、特定の実施態様において、タンパク質は凍結乾燥された後、本発明に係る粘度の減少した安定な液体製剤を生産するために再構成される。本特定の実施態様において、上述したような対象のタンパク質の調製後、「前凍結乾燥(pre-lyophilized)製剤」が生産される。前凍結乾燥製剤中に存在するタンパク質の量は、所望の投与体積、投与様式などを考慮に入れながら決定される。例えば、無傷の抗体の出発濃度は、約2mg/mlから約50mg/mlで、好ましくは約5mg/mlから約40mg/ml、最も好ましくは約20−30mg/mlであってもよい。
一般に、製剤化されるタンパク質は溶液中に存在する。例えば、本発明の製剤の粘度を減少させる上昇したイオン強度中において、タンパク質は、約4−8及び好ましくは約5−7のpHのpH緩衝化溶液中に存在してもよい。バッファー濃度は、約1mMから約20mMであり得、あるいは、例えばバッファー及び所望される製剤(例えば、再構成される製剤)の張性に依存して、約3mMから約15mMであってもよい。典型的なバッファー及び/又は塩は、薬学的に受容可能なものであり、「薬学的に受容可能」な酸、塩基又はバッファーなど、適切な酸、塩基及びその塩から作製されてもよい。
【0063】
ある実施態様において、リオプロテクタントは前凍結乾燥製剤に添加される。前凍結乾燥製剤中のリオプロテクタントの量は、一般に、再構成後、生じた製剤が等張になるようなものである。しかし、高張な再構成製剤も適切である。さらに、リオプロテクタントの量は、タンパク質の受容し難い量の分解/凝集が凍結乾燥によって生じてしまう程低すぎてはならない。しかし、前凍結乾燥製剤中の典型的なリオプロテクタント濃度は、約10mMから約400mMであり、あるいは約30mMから約300mM、あるいは約50mMから約100mMである。典型的なリオプロテクタントには、スクロース、マンノース、トレハロース、グルコース、ソルビトール、マンニトールなどの糖及び糖アルコールが含まれる。しかし、特定の環境下では、あるリオプロテクタントは、製剤の粘度の増大に寄与することもある。従って、係る影響を最小化又は中和する特定のリオプロテクタントを選択するように注意が必要である。さらなるリオプロテクタントは「リオプロテクタント」の定義により上述されている。
【0064】
リオプロテクタントに対するタンパク質の割合は、特定のタンパク質又は抗体とリオプロテクタントとの組合わせごとに異なる。高いタンパク質濃度を持つ等張な再構成製剤を生産するために、選択されるタンパク質として抗体、リオプロテクタントとして糖(例えば、スクロース又はトレハロース)である場合、抗体に対するリオプロテクタントのモル比は、1モル抗体に対して約100から約1500モルのリオプロテクタント、及び好ましくは1モル抗体に対して約200から約1000モルのリオプロテクタントであり、例えば1モル抗体に対して約200から約600モルのリオプロテクタントでもよい。
【0065】
好ましい実施態様において、界面活性剤を前凍結乾燥製剤に添加することは望ましいことである。これの代わりに、又はさらに、界面活性剤を凍結乾燥製剤及び/又は再構成された製剤に添加してもよい。典型的な界面活性剤には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又は80);ポリオキサマー(例えば、ポリオキサマー188);トリトン;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−、又はステアリル−スルホベタイン;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−又はステアリル−サルコシン;リノレイル−、ミリスチル−、又はセチル−ベタイン;ラウロアミドプロピル−、コカミドプロピル−、リノールアミドプロピル−、ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、又はイソステアラミドプロピル−ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、又はイソステアラミドプロピル−ジメチルアミン;ソディウムメチルココイル−、又はジソディウムメチルオレイル−タウレート;及びMONAQUATMシリーズ(Mona Industries, Inc., Paterson, New Jersey)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、及びエチレンとプロピレングリコールとのコポリマー(例えば、Pluronics, PF68など)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。添加される界面活性剤の量は、再構成されるタンパク質の微粒子形態を減少させ、再構成後の微粒子形成を最小限にするような量である。例えば、界面活性剤は前凍結乾燥製剤中に約0.001−0.5%、あるいは、約0.005−0.05%の量で存在する。
【0066】
リオプロテクタント(スクロース又はトレハロースなど)と充填剤(例えば、マンニトール又はグリシン)との混合物は、前凍結乾燥製剤の調製に用いてもよい。充填剤は、中に余計なポケットを含まない均質な凍結乾燥ケイクの生産を可能ならしめる。製剤の望ましい特徴に悪影響を与えないという条件にて、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)中に記載されるような他の薬学的に受容可能な坦体、賦形剤又は安定化剤が、前凍結乾燥製剤(及び/又は凍結乾燥製剤及び/又は再構成製剤)中に含まれてもよい。受容可能な坦体、賦形剤又は安定化剤は、使用される投与量及び濃度において受容者に対し無毒性であり、さらなる緩衝化剤;保存剤;共溶解剤(co-solvents);アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;EDTAなどのキレート剤;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ポリエステルなどの生物分解性ポリマー;及び/又はナトリウムなどの塩形成対イオンを包含する。
【0067】
また、ここでの製剤は、処置される特定の効能に対して必要な一以上のタンパク質、好ましくは他のタンパク質に悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものを含んでもよい。例えば、単一の製剤中に、HER2レセプター又はIgEと結合する2又はそれより多くの抗体を提供することが望ましい。そのようなタンパク質は、意図される目的にとって効果的な量で組合わされて好適に存在する。
インビボでの投与に用いられる製剤は滅菌的でなくてはならない。これは、凍結乾燥及び再構成に先立って、もしくはその後に滅菌ろ過膜でろ過することにより容易に達成される。あるいは、全混合物の滅菌は、例えば、約120℃で約30分間タンパク質を除いた成分をオートクレーブすることにより達成される。
【0068】
タンパク質、任意のリオプロテクタント及び他の任意の構成成分を混合した後、製剤は凍結乾燥される。多くの様々な凍結乾燥機、Hull50TM(Hull, USA)又はGT20TM(Leybold-Heraeus, Germany)凍結乾燥機が本目的に対し利用可能である。凍結乾燥は、製剤を凍結し、引き続き、凍結された内容物から初期乾燥に適する温度にて氷を昇華させることにより達成される。本条件下において、生産物の温度は、融点又は製剤の崩壊温度より低い。典型的には、初期乾燥のための棚温度は、適切な圧力下、約−30から25℃(初期乾燥の間、生産物を凍結状態にする)の範囲であり、典型的に、約50から250mTorrの範囲である。製剤、試料を保持する容器(例えば、ガラスバイアル)のサイズ及び型及び液体の体積は、主として乾燥に要する時間を決定し、数時間から数日(例えば、40−60時間)に及ぶ。場合によっては、第二の乾燥工程も生産物中の所望の残存水分量レベルに依存して実施されてもよい。第二の乾燥が実施される温度は、約0−40℃の範囲に及び、主として容器の型及びサイズ、及び用いられるタンパク質のタイプに依存する。例えば、凍結乾燥の水分除去の全相にわたる棚温度は、約15−30℃(例えば、約20℃)であってもよい。第二の乾燥に要する時間及び圧力は、適切な凍結乾燥ケイクを生産するものであり、例えば、温度及び他のパラメーターに依存する。第二の乾燥時間は、生産物中の所望の残存水分量レベルによって決定され、典型的には少なくとも約5時間(例えば、10−15時間)かかる。圧力は、初期乾燥ステップの間に使用されたものと同一でよい。凍結乾燥状態は、製剤及びバイアルサイズに依存して異なりうる。
【0069】
C.凍結乾燥製剤の再構成
患者への投与に先立ち、凍結乾燥製剤は、再構成される製剤中のタンパク質濃度が少なくとも約50mg/ml、例えば、約50mg/mlから約400mg/ml、あるいは、約80mg/mlから約300mg/ml、あるいは、約90mg/mlから約150mg/mlであるような、薬学的に受容可能な希釈液で再構成される。そのような製剤中におけるタンパク質の高い濃度は、再構成される製剤の皮下投与が意図される場合、特に有用であると考えられる。しかし、静脈内などの他の投与経路に関しては、再構成製剤中におけるより低いタンパク質濃度が望まれる(例えば、再構成される製剤中、約5−50mg/ml、又は約10−40mg/mlタンパク質)。ある実施態様において、再構成される製剤中のタンパク質濃度は、前乾燥製剤中の濃度より著しく高い。例えば、再構成される製剤中のタンパク質濃度は、前凍結乾燥製剤の約2−40倍、あるいは、3−10倍、あるいは3−6倍(例えば、少なくとも3倍又は少なくとも4倍)である。
【0070】
一般に、再構成は完全な水和を保証する約25℃の温度で起こるが、他の温度が望まれる場合には使用され得る。再構成に要する時間は、例えば、希釈液のタイプ、賦形剤及びタンパク質の量に依存するであろう。典型的な希釈液には、滅菌水、注射のための静菌水(BWFI)、pH緩衝化溶液(例えば、リン酸緩衝化食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー溶液又はデキストロース溶液が含まれる。希釈液は、場合によっては、保存剤を含む。典型的な保存剤は上述したように、好ましい保存剤であるベンジル又はフェノールアルコールなどの芳香族アルコールを有する。使用される保存剤の量は、タンパク質との適合性及び保存剤の有効性試験に関し異なる保存剤濃度を評価することによって決定される。例えば、保存剤が芳香族アルコール(ベンジルアルコールなど)である場合、約0.1−2.0%、好ましくは約0.5−1.5%、最も好ましくは約1.0−1.2%の量で存在する。
好ましくは、再構成される製剤は、大きさが10μm以上のものがバイアルあたり6000粒子未満である。
【0071】
D.製剤の投与
限定はしないが、再構成される製剤を含む本発明の製剤は、タンパク質による治療を必要としている哺乳動物、好ましくはヒト、に対して、ボーラス又はある期間にわたる連続的注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、腱鞘内、口内、局部的又は吸入経路による既知の方法に従い投与される。
好ましい実施態様において、製剤は皮下(すなわち、皮膚の下)投与によって哺乳動物に投与される。かかる目的のため、製剤はシリンジを用いて注射される。しかし、製剤の投与のための他の装置、例えば、注射装置(例えば、Inject-easeTM及びGenjectTM装置);インジェクターペン(GenPenTMなど);針なし装置(例えば、MediJectorTM及びBioJectorTM);及び皮下パッチ送達システムなどが利用可能である。
【0072】
タンパク質の適当な投与量(「治療上有効量」)は、例えば、治療される状態、該タンパク質が予防的又は治療的目的で投与される状態の重篤性及び経過、治療歴、患者の病歴及び該タンパク質に対する反応性、使用されるタンパク質のタイプ、主治医の判断に依存するであろう。タンパク質は、一時期に又は一連の治療にわたり適切に投与され、その後の診断による任意の時期に患者に投与される。タンパク質は、単一の治療として又は他の薬物又は問題の状態を治療するのに有用な療法と併せて投与してもよい。
選択されるタンパク質が抗体の場合、例えば、一回又は複数回に分けての投与のいずれであっても、患者への投与に関する初回の推奨される投与量は、約0.1−20mg/kgである。しかし、他の投与計画が有効な場合もある。本治療の進捗は、従来の技術によって容易にモニターすることができる。
抗IgE製剤(例えば、rhuMAbE−25,rhMAbE−26)の使用には、例えば、IgEを介したアレルギー性疾患、寄生虫感染、間質性膀胱炎及び喘息の治療又は予防法が含まれる。治療されるべき疾病又は疾患に依存して、抗IgE抗体の治療上有効量(例えば、約1−15mg/kg)が患者へ投与される。
【0073】
E.製造品
本発明の他の実施態様では、製剤を含有する製造品が提供され、好ましくはその使用のための説明書を提供する。製造品は容器を含む。適切な容器には、例えばボトル、バイアル(例えば、二重チャンバーバイアル)、シリンジ(二重チャンバーシリンジなど)、及び試験管が含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料で形成することができる。容器は凍結乾燥製剤及び該容器の上又は該容器に付随したラベルを保持し、再構成及び/又は使用のための指示を表示する。例えば、ラベルは凍結乾燥製剤は上述したタンパク質濃度で再構成されることを表示する。さらに、該ラベルは製剤が皮下投与にとって有用であること、又は意図されることを表示する。製剤を収容する容器は、多目的使用バイアルであってもよく、再構成された製剤の繰り返し(例えば、2−6投与)投与を可能ならしめる。さらに、製造品は適切な希釈液(例えば、BWFI)を含む第二の容器を包含してもよい。希釈液と凍結乾燥製剤を混合すると、再構成された製剤中の最終タンパク質濃度は、通常、少なくとも50mg/mlになるであろう。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明に関する添付文書を含む、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでいてもよい。
本発明は以下の実施例を参照することにより、さらに十分に理解されるであろう。しかし、それらは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきものではない。本開示を通して全ての引例は、ここに出典により明確に取り込まれる。
【0074】
実施例1
組換体抗−IgEモノクローナル抗体製剤(rhuMAb E25)の粘度に関するタンパク質濃度の影響は、25℃で検討された。本抗体は、アレルギー性鼻炎及びアレルギー性喘息を治療する潜在的な治療剤として(Presta等, J. Immunol. 151(5):2623-2632 (1993)(PCT/US92/06860))Genentech Inc.によって開発されたヒト化抗−IgEモノクローナル抗体である。製剤化されたrhuMAb E25は、最終濃度40mg/ml、85mMスクロース、5mMヒスチジン、0.01%ポリソルベート20で製剤化され、5ccのバイアルに充填された。その後、試料は45分間で5℃から−50℃にすることにより凍結された後、凍結乾燥機の棚温度を1時間に10℃毎、−50℃から25℃に連続的に上昇させた。乾燥工程は25℃の棚温度及び50mTorrのチャンバー圧力で39時間実施された。凍結乾燥されたrhuMAb E25は、125mg/mlのrhuMAb E25、266mMスクロース、16mMヒスチジン、0.03%ポリソルベート20を含む溶液を生産するためにSWFIで再構成された。
【0075】
再構成された試料の粘度は、キャノン−フェンスケ ルーチンキャピラリー粘度計(Industrial Research Glassware LTD)中で測定される。試料はガラスピペットでおよそ8ml計り取り、動粘度が0.8から4csの範囲にある液体試料のためのサイズ50又は20から100csの試料のためのサイズ200のキャピラリー粘度計に充填した。試料温度は、デジタル化された温度制御システムを備えた水浴槽中、25℃で維持した。粘度計はホルダー中に垂直に静置し、固定温度で維持された水浴槽中に挿入された。流出時間は、試料が目標点を自然に流れ過ぎるままにすることにより測定された。液体試料センチストーク単位による動粘度は、秒あたりの流出時間に粘度計の定数(サイズ50に対して0.004及びサイズ100に対して0.015)を乗じることにより計算された。E25溶液の粘度は、タンパク質分子の濃度に高度に依存する(図1)。それは、rhuMAb E25濃度の増加に伴い指数関数的に増大する。25℃で、125mg/mlの再構成されたrhuMAb E25は、水より約80倍粘度が高い。
【0076】
実施例2
実施例1の凍結乾燥されたrhuMAb E25は、異なる濃度のNaCl溶液で再構成された。再構成された溶液の粘度は、実施例1で記載された方法と同じ方法を用いて、キャノン−フェンスケ ルーチンキャピラリー粘度計中、25℃で測定された。
図2に示される結果は、NaClの添加によりタンパク質製剤の粘度を顕著に減少させることが可能であることを示す。100mMのNaClで再構成されたrhuMAb E25は、SWFIで再構成されたものより約4倍低い粘度溶液を生じさせるであろう。
100mMNaClによるrhuMAb E25の凍結乾燥製剤調製の結果、わずかに高張な溶液が生じた。しかし、すでに報告されているように、組織障害が非常に高い張性レベル(1300mOsmol/Kg)の場合にのみ検出されたという点で、厳密な等張性は絶対的に必要であるわけではない。
従って、ここで考慮されるような高い塩濃度(本rhuMAb E25凍結乾燥物質に対して〜600から〜700mOsmol/Kgの浸透圧を生じさせる100mMから200mMのNaCl)を含む製剤の投与は、製剤の粘度を低下させることに関し、投与部位における組織障害の危険性を示すようには思えない。
【0077】
実施例3
rhuMAb E25溶液の粘度に対する異なる塩の影響が25℃にて検討された。凍結乾燥rhuMAb E25は、初めに125mg/mlのrhuMAb E25、266mMスクロース、16mMヒスチジン、0.03%ポリソルベート20を含む溶液を生産するためにSWFIで再構成された。次に、試料は10mMヒスチジン、250mMスクロース、pH6.0で最終濃度40mg/mlに希釈された。次いで、種々の濃度の塩が0−200mMの範囲の最終塩濃度を調製するために溶液へ添加された。溶液の粘度は、実施例1で記載された方法と同じ方法を用いてキャノン−フェンスケ ルーチンキャピラリー粘度計中で測定された。
結果は図3に示された。各塩は、粘度の変化に対しわずかに異なる影響を示すが、それらは、溶液の粘度がバッファー濃度及びイオン強度の増加に従い減少するといった類似の傾向を伴うようである。
【0078】
実施例4
また、rhuMAb E25溶液の粘度に対する異なるバッファーの影響も25℃において検討された。80mg/mlのrhuMAb E25、50mMヒスチジン、150mMトレハロース及び0.05%のポリソルベート20を含む液体製剤に、異なる量のヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩のバッファー成分が添加された。試料のpHは、全標品に関して〜6.0に維持された。溶液の粘度はキャノン−フェンスケ ルーチンキャピラリー粘度計中で、実施例1に記載された方法と同じ方法を用いて決定された。
図4に示されるように、ヒスチジン又は酢酸塩バッファーのいずれかを含む溶液の粘度は、バッファーの濃度が200mMまで増加するにつれて減少する。しかし、コハク酸塩に関しては、溶液の粘度は低いバッファー濃度においてのみ(<100mM)減少し、高いバッファー濃度(>200mM)では減少しない。同様の結果は、リン酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩などの負に荷電した多価バッファー成分を含むその他のバッファーにおいても観察された。
【0079】
実施例5
本実施例は、抗−IgEモノクローナル抗体、rhuMAb E26の第二の生産を利用した。本モノクローナル抗体は、rhuMAb E25に相同で、軽鎖中のCDR I領域中の5つのアミノ酸残基の相違を持ち、WO99/01556中に記載されている。組換体rhuMAb E26は、CHO細胞株中においても発現され、上述のrhuMAb E25のためのクロマトグラフィー法と同様な方法で精製された。試料は5mMヒスチジン及び275mMスクロース中にrhuMAb E25の濃度21mg/mlで製剤化された。試料の粘度は、実施例1に記載される方法と同じ方法を用いてキャノン−フェンスケ ルーチンキャピラリー粘度計中、6℃で測定された。
rhuMAb E26の粘度に対するNaClの影響は図5に示された。結果は、NaCl濃度の増加によりrhuMAb E26溶液の粘度が効果的に減少することを示す。
【0080】
実施例6
液体製剤中に高度に濃縮された抗−IgEモノクローナル抗体、rhuMAb E25の粘度に対するpHの影響は、低張及び等張の両条件下にて実施された。低張な溶液は、少量の10%酢酸又は0.5MアルギニンをミリQ水で〜130mg/mlにまで濃縮された緩衝化されていないrhuMAb E25溶液に添加することにより調製された。全バッファー及び塩の最終濃度は、17.5mMに維持された。その後、低張溶液は、最終濃度およそ150mMNaClの等張溶液を生産するために、少量の5MNaClと混合された。溶液の粘度は、実施例1に記載される方法と同じ方法を用いてキャノン−フェンスケ ルーチンキャピラリー粘度計中、25℃で測定された。図6に示されるように、rhuMAb E25溶液の粘度は、特に非常に低張な溶液の場合、バッファーのpHに高度に依存する。NaClなどのイオン種の添加により、かかるpHの影響を顕著に減少させることができる。
【0081】
実施例7
また、再構成された抗−IgEモノクローナル抗体、rhuMAb E25の粘度に対するpHの影響は、トレハロースなどその他の賦形剤の存在下においても検討されている。凍結乾燥されたrhuMAb E25は、SWFIで再構成され、次に、20mMヒスチジン、250mMトレハロース、pH5に対して透析された。タンパク質濃度は約94mg/mlである。溶液のpHは1MNaOHで調整した。溶液の粘度は、実施例1に記載される方法と同じ方法を用いてキャノン−フェンスケ ルーチンキャピラリー粘度計中、25℃で測定された。結果は、図7に示されるように、抗体の粘度は溶液のpHによって顕著に変更され得ることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、抗−IgE抗体rhuMAb E25、16mMヒスチジン、266mMスクロース及び0.03%ポリソルベート20を25℃で含有する再構成された製剤の粘度に対するタンパク質濃度の影響を示す。
【図2】図2は、125mg/mlの抗−IgE抗体rhuMAb E25、16mMヒスチジン、266mMスクロース、0.03%ポリソルベート20及び種々の量のNaClを25℃で含有する再構成された製剤の粘度に対するNaCl濃度の影響を示す。
【図3】図3は、40mg/mlの抗−IgE抗体rhuMAb E25、10mMヒスチジン、250mMスクロース、0.01%ポリソルベート20及び種々の量の塩を25℃で含有する再構成された製剤の粘度に対する種々の塩の影響を示す。
【図4】図4は、80mg/mlの抗−IgE抗体rhuMAb E25、50mMヒスチジン、150mMトレハロース、0.05%ポリソルベート20及び種々の量のヒスチジン、酢酸塩、又はコハク酸塩成分を25℃で含有する液体製剤の粘度に対するバッファー濃度の影響を示す。
【図5】図5は、21mg/mlのrhuMAb E26、5mMヒスチジン、275mMスクロースを6℃で含有する再構成された製剤の粘度に対するNaCl濃度の影響を示す。
【図6】図6は、150mMNaCl存在下及び非存在下における、130mg/mlのrhuMAb E25、2−17.5mMの酢酸塩又はアルギニンを25℃で含有する液体製剤の粘度に対するpHの影響を示す。
【図7】図7は、94mg/mlのrhuMAb E25、250mMトレハロース、20mMヒスチジンを25℃で含有する再構成された凍結乾燥製剤の粘度に対するpHの影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約80mg/mlの量のタンパク質及び少なくとも約50mMの量の塩及び/又はバッファーを含み、約50cs又はそれ未満の動粘度を持つ安定な液体製剤。
【請求項2】
少なくとも約100mMの量の前記塩及び/又はバッファーを含む請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
約50−200mMの量の前記塩及び/又はバッファーを含む請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
約100−200mMの量の前記塩及び/又はバッファーを含む請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
約200mMの量の前記塩及び/又はバッファーを含む請求項2に記載の製剤。
【請求項6】
前記塩及び/又はバッファーが:
a)有機又は無機酸及び塩基形成金属又はアミン;又は
b)アミノ酸
に由来する請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
塩基形成金属がアルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Zn及びFeから成るグループから選択される請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
塩基形成アミンがNRであり、Rが独立にH又はC1−4アルキル基である請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
塩及び/又はバッファーがアミノ酸に由来する請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
前記塩が塩化ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩酸アルギニン、塩化亜鉛及び酢酸ナトリウムから成るグループから選択される請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
約40cs又はそれ未満の粘度を持つ請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
約30cs又はそれ未満の粘度を持つ請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
約20cs又はそれ未満の粘度を持つ請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
約10csから30csの粘度を持つ請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
さらにリオプロテクタント(lyoprotectant)を含む請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
前記リオプロテクタント(lyoprotectant)が糖である請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
前記糖がスクロース又はトレハロースである請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
約60−300mMの量の前記糖を含む請求項16に記載の製剤。
【請求項19】
さらに、界面活性剤を含む請求項1に記載の製剤。
【請求項20】
高張である請求項1に記載の製剤。
【請求項21】
再構成された製剤である請求項1に記載の製剤。
【請求項22】
凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度より再構成された製剤中のタンパク質濃度が約2−40倍高い請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
前記タンパク質が少なくとも約15−20kDの分子量を持つ請求項1に記載の製剤。
【請求項24】
前記タンパク質がイムノグロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバーである請求項1に記載の製剤。
【請求項25】
前記タンパク質がイムノグロブリンである請求項24に記載の製剤。
【請求項26】
前記イムノグロブリンが特異的抗原に対する抗体である請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
前記抗体がIgE、HERレセプターファミリーのメンバー、細胞接着分子又はそのサブユニット、又は成長因子に対するものである請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
抗体がrhuMAb−E25、rhuMAb−E26又はrhuMAb−E27である請求項27に記載の製剤。
【請求項29】
液体医薬製剤である請求項1に記載の製剤。
【請求項30】
皮下投与する請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
少なくとも約50mMの量の塩の添加を含んで成る、高濃度タンパク質を含有する製剤の粘度を減少させる方法。
【請求項32】
前記タンパク質が少なくとも約80mg/mlの量で存在する請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記塩が塩化ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウムから成るグループから選択される請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記タンパク質がイムノグロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバーである請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記タンパク質がイムノグロブリンである請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記イムノグロブリンが特異的抗原に対する抗体である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体がIgE対するものである請求項36に記載の方法。
【請求項38】
抗体がrhuMAb−E25、rhuMAb−E26又はrhuMAb−E27である請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記製剤が再構成された製剤である請求項31に記載の方法。
【請求項40】
製剤が高張である請求項31に記載の方法。
【請求項41】
凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度より再構成製剤中のタンパク質濃度が約2−40倍高い請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記製剤の粘度が約50cs又はそれ未満まで減少する請求項41に記載の方法。
【請求項43】
請求項1に記載の製剤を収納する容器を含む製造品。
【請求項44】
前記製剤の投与に関する指示をさらに含む請求項43に記載の製造品。
【請求項45】
約4.2から約5.3又は約6.5から約12.0のpHのいずれかになるように少なくとも約80mg/mlの量のタンパク質及び少なくとも約50mMの量の薬学的に受容可能な酸、塩基及び/又はバッファーを含み、約50cs又はそれ未満の動粘度を持つ安定な液体製剤。
【請求項46】
少なくとも約100mMの量の前記酸、塩基及び/又はバッファーを含む請求項45に記載の製剤。
【請求項47】
約50−200mMの量の前記酸、塩基及び/又はバッファーを含む請求項45に記載の製剤。
【請求項48】
約100−200mMの量の前記酸、塩基及び/又はバッファーを含む請求項45に記載の製剤。
【請求項49】
約200mMの量の前記酸、塩基及び/又はバッファーを含む請求項45に記載の製剤。
【請求項50】
前記酸、塩基及び/又はバッファーが:酢酸、塩酸、アルギニン及びヒスチジンから成るグループから選択される請求項45に記載の製剤。
【請求項51】
塩基がリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、銅から成るグループから選択される塩基形成金属由来である請求項45に記載の製剤。
【請求項52】
塩基形成アミンがNRであり、Rが独立にH又はC1−4アルキル基である請求項45に記載の製剤。
【請求項53】
塩基及び/又はバッファーがアミノ酸由来である請求項45に記載の製剤。
【請求項54】
約40cs又はそれ未満の粘度を持つ請求項45に記載の製剤。
【請求項55】
約30cs又はそれ未満の粘度を持つ請求項45に記載の製剤。
【請求項56】
約20cs又はそれ未満の粘度を持つ請求項45に記載の製剤。
【請求項57】
約10から30csの粘度を持つ請求項45に記載の製剤。
【請求項58】
さらにリオプロテクタント(lyoprotectant)を含む請求項45に記載の製剤。
【請求項59】
前記リオプロテクタント(lyoprotectant)が糖である請求項58に記載の製剤。
【請求項60】
前記糖がスクロース又はトレハロースである請求項59に記載の製剤。
【請求項61】
約60−300mMの量の前記糖を含む請求項59に記載の製剤。
【請求項62】
さらに、界面活性剤を含む請求項45に記載の製剤。
【請求項63】
高張である請求項45に記載の製剤。
【請求項64】
再構成された製剤である請求項45に記載の製剤。
【請求項65】
凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度より再構成された製剤中のタンパク質濃度が約2−40倍高い請求項64に記載の製剤。
【請求項66】
前記タンパク質が少なくとも約15−20kDの分子量を持つ請求項45に記載の製剤。
【請求項67】
前記タンパク質がイムノグロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバーである請求項45に記載の製剤。
【請求項68】
前記タンパク質がイムノグロブリンである請求項67に記載の製剤。
【請求項69】
前記イムノグロブリンが特異的抗原に対する抗体である請求項68に記載の製剤。
【請求項70】
前記抗体がIgE、HERレセプターファミリーのメンバー、細胞接着分子又はそのサブユニット、又は成長因子に対するものである請求項69に記載の製剤。
【請求項71】
抗体がrhuMAb−E25、rhuMAb−E26又はrhuMAb−E27である請求項70に記載の製剤。
【請求項72】
液体医薬製剤である請求項45に記載の製剤。
【請求項73】
皮下投与する請求項72に記載の製剤。
【請求項74】
pHを約4.2から約5.3に低下させるか又はpHを約6.5から約12.0に低下させることのいずれかを含む高濃度タンパク質を含有する製剤の粘度を減少させる方法。
【請求項75】
前記タンパク質が少なくとも約80mg/mlの量で存在する請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記タンパク質がイムノグロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバーである請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記タンパク質がイムノグロブリンである請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記イムノグロブリンが特異的抗原に対する抗体である請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記抗体がIgE対するものである請求項78に記載の方法。
【請求項80】
抗体がrhuMAb−E25、rhuMAb−E26又はrhuMAb−E27である請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記製剤が再構成された製剤である請求項80に記載の方法。
【請求項82】
凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度より再構成された製剤中のタンパク質濃度が約2−40倍高い請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記製剤の粘度が約50cs又はそれ未満まで減少する請求項82に記載の方法。
【請求項84】
請求項45に記載の製剤を収納する容器を含む製造品。
【請求項85】
前記製剤の投与に関する指示をさらに含む請求項84に記載の製造品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−167190(P2009−167190A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−44568(P2009−44568)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【分割の表示】特願2002−533902(P2002−533902)の分割
【原出願日】平成13年10月4日(2001.10.4)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】