説明

粘接着剤組成物、粘接着剤層、および粘接着シート

【課題】常温・常圧では、糊はみ出しなどがなく、乾燥および架橋により十分な初期粘着力を有し、光照射または熱硬化により容易に硬化し、かつ高い剥離抵抗を有する粘接着剤層を形成することができる粘接着剤組成物、粘接着剤層、および粘接着剤シート等を提供すること。
【解決手段】アルキル(メタ)アクリレート50〜95重量%、環状エーテル基含有モノマー2〜40重量%、および非環状エーテル基含有(メタ)アクリレート3〜40重量%を構成成分として含むアクリル系ポリマー;および
光カチオン系重合開始剤もしくは熱硬化触媒を含有してなる粘接着剤組成物、それを用いた粘接着剤層、および粘接着剤シートを調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘接着剤組成物、粘接着剤層、および支持体の少なくとも片面にこのような粘接着剤層が形成されている粘接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、接着シートとして、各種部品などの接着用途に、加熱処理により硬化する熱硬化型のものが提案されている。このような熱硬化型接着剤は、接着強度や耐熱性には優れているが、常温接着では粘着性がなく、仮接着が困難である。そこで、被着体との接着初期には粘着剤としての適度な粘着性を示すとともに、接合後には接着剤と同等の高接着性および高耐熱性を示す接着シートが望まれている。
【0003】
さらに、自動車等の軽量化のために、接合用として構造用接着剤が普及しつつあるが、これらは、非常に強度は高いが、硬化前は粘度が低く、それ自体では仮固定は難しく、しかも透明性の高いものはほとんどない。今後、自動車用として、特に透明センサー等を接着することができるものであって、構造用接着剤程の強度はなくとも、透明性を有し、さらに半永久的にはがれないような、粘着剤より強度が高い接着剤の必要性が高まると考えられる。
【0004】
これまでに、例えば、エポキシ基をグラフトしたアクリルポリマーと光開始剤を含む硬化型熱接着シートが提案されている(特許文献1)が、高い透明性を要する用途にはさらに透明性の高い接着シートが望まれる。透明性の高い粘接着剤に関しては、提案されているものもあるが(特許文献2)、より高い強度のものが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−138370号公報
【特許文献2】特開平11−61071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、乾燥および架橋により十分な初期粘着力を有し、光照射または加熱処理により容易に硬化し、かつ高いせん断接着力を有する粘接着剤層を形成し、さらに透明性に優れる光硬化型もしくは熱硬化型部品固定用粘接着シートを形成できる粘接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、前記粘接着剤組成物により形成された高い耐熱性を有する粘接着剤層、および粘接着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記粘接着剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、アルキル(メタ)アクリレート50〜95重量%、環状エーテル基含有モノマー2〜40重量%、および非環状エーテル基含有(メタ)アクリレート3〜40重量%を構成成分として含むアクリル系ポリマー;および
光カチオン系重合開始剤もしくは熱硬化触媒を含有してなる粘接着剤組成物、に関する。
【0010】
前記アクリル系ポリマーにおいて、前記環状エーテル基含有モノマーを含む鎖が、幹ポリマーにグラフト重合されてなることが好ましい。
【0011】
前記アクリル系ポリマーにおいて、前記幹ポリマーに、前記非環状エーテル基含有(メタ)アクリレートが含まれることが好ましい。
【0012】
前記アクリル系ポリマー100重量部に対し、光カチオン系重合開始剤もしくは熱硬化触媒を0.1〜5.0重量部含有してなることが好ましい。
【0013】
さらに、粘接着剤組成物において、イソシアネート系架橋剤および/または粘着付与剤を含有してなることが好ましい。
【0014】
前記アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記イソシアネート系架橋剤を、0.01〜4重量部含有してなることが好ましい。
【0015】
前記アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記粘着付与剤を10〜150重量部含有してなることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、上記いずれかに記載の粘接着剤組成物から得られる粘接着剤層に関する。
【0017】
本発明はまた、上記の粘接着剤層を、基材の少なくとも片面に設けた粘接着シート、に関する。
【0018】
本発明はまた、粘接着剤組成物に光照射または加熱処理を施して得られる粘接着剤層に関する。
【0019】
前記粘接着剤層において、ゲル分率が、70%以上98%以下であることが好ましい。
【0020】
前記粘接着剤層において、貯蔵弾性率が、1.0×10〜1.0×10Paであることが好ましい。
【0021】
前記粘接着剤層において、ヘイズが、4.0以下であることが好ましい。
【0022】
前記粘接着剤層において、せん断接着力が、350N/20mm以上であることが好ましい。
【0023】
本発明はまた、前記いずれかの粘接着剤層を、基材の少なくとも片面に設けた粘接着シート、に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の粘接着剤組成物は、乾燥および架橋により十分な初期粘着力を有し、光照射または加熱処理により容易に硬化し、光照射または加熱処理により容易に硬化し、かつ高いせん断接着力を有する粘接着剤層を形成することができる。さらに本発明の粘接着剤組成物は、その中に含まれるグラフトポリマーの製造過程において流動性が保持され、扱いやすく、加工性、最終的な接着性、耐熱性に優れた粘接着シートを提供することができる。さらに、構造内にROR基を有するアクリル系モノマーを重合によって導入することで、ポリマーの濁りを解消し、より透明性の高い粘接着シートを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の粘接着剤組成物は、アルキル(メタ)アクリレート50〜95重量%、環状エーテル基含有モノマー2〜40重量%、および非環状エーテル基含有(メタ)アクリレート3〜40重量%を構成成分として含むアクリル系ポリマー;および
光カチオン系重合開始剤および/もしくは熱硬化触媒を含有してなる。
【0026】
まず、(メタ)アクリル系ポリマーに含まれるモノマー単位としては、いずれの(メタ)アクリレートでも用いることができ、特に限定はされない。ここで、好ましくは、例えば炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを(メタ)アクリル系ポリマー全体の50重量%〜95重量%含有する。
【0027】
本明細書で、単に、「アルキル(メタ)アクリレート」と言うときは、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを指す。前記アルキル基の炭素数は4以上であり、好ましくは、炭素数4〜9である。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0028】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどがあげられる。なかでも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどを例示でき、これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0029】
本発明において、前記アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーの全モノマー成分に対して、50重量%以上であり、好ましくは55重量%以上である。また、すべてのモノマーが、アルキル(メタ)アクリレートでもよいが、95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。
【0030】
本発明において、非環状エーテル基含有(メタ)アクリレートとは、非環状のエーテル基を含む(メタ)アクリレートであれば特に限定されない。例えば、側鎖アルキル基として直鎖または分岐したアルコキシアルキル基を含み、環状エーテル基を含まない、非環状エーテル基含有アルコキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシオクチル(メタ)アクリレート、エトキシオクチル(メタ)アクリレート、メトキシデシル(メタ)アクリレート、エトキシデシル(メタ)アクリレートなどを単独または組み合わせて使用できる。さらに、フェノキシ(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート、メトキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの芳香族や脂環族を含む非環状エーテル基含有(メタ)アクリレートであってもよい。
【0031】
非環状エーテル基含有(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリレート系ポリマーの全モノマー成分に対して、3〜40重量%含まれ、好ましくは6〜35重量%含まれる。非環状エーテル基含有(メタ)アクリレートを用いることで、環状エーテル基含有モノマー成分との相溶性が向上し、透明性(ヘイズ)を向上させることができる。
【0032】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーには、この他に、アルキル基中の少なくとも1個の水酸基を含む水酸基含有モノマーが含まれていることが好ましい。すなわち、このモノマーは、水酸基1個以上のヒドロキシアルキル基を含むモノマーである。ここで、水酸基は、アルキル基の末端に存在することが好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは2〜8であり、より好ましくは2〜6であり、さらに好ましくは2〜4である。このような水酸基含有モノマーが含まれることによって、グラフト重合の際の水素引き抜きが起こる位置やグラフトポリマーとグラフト重合の際に生成する環状エーテル基含有モノマーのホモポリマーとの相溶性に好ましい影響があり、耐熱性が良好なグラフトポリマーを調製するのに役立つと考えられる。
【0033】
このようなモノマーとして、(メタ)アクリロイル基の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ水酸基を有するヒドロキシ(メタ)アクリルアミドモノマーを特に制限なく用いることができる。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリルアミド、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリルアミドなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0034】
このようなヒドロキシ(メタ)アクリルアミドモノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは、10重量%以下である。最も好ましくは、1重量%〜10重量%である。
【0035】
(メタ)アクリル系ポリマーに、環状エーテル基含有モノマーが共重合されていることも好ましい。
【0036】
ここで、環状エーテル基含有モノマーは、特に限定はされないが、エポキシ基含有モノマーあるいはオキセタン基含有モノマーまたはその両方の組合せであることが好ましい。
【0037】
エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、または4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが例示され、これらを単独または組み合わせて用いることができる。
【0038】
オキセタン基含有モノマーとしては、3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ブチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、または3−ヘキシル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレートが例示され、これらを単独または組み合わせて用いることができる。
【0039】
環状エーテル基含有モノマーの量は、(メタ)アクリル系ポリマー全体に対して、2重量%以上であることが好ましく、より好ましくは、3重量%以上である。上限は特に限定はされないが、40重量%以下が好ましい。環状エーテル基含有モノマーの量が、3重量%以上であれば、組成物の粘着接着剤としての機能発現が十分となり、一方、40重量%以上では、タック性が減少して初期粘着しにくい場合がある。
【0040】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分として、本発明の目的を損なわない範囲で他の共重合単量体を単独でまたは組み合わせて用いてもよい。他の共重合単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ芳香族環を有する芳香族環含有モノマーがあげられる。芳香族環含有モノマーの具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−ナフトエチル(メタ)アクリレート、2−(4−メトキシ−1−ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0041】
また、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;などが含まれることも好ましい。
【0042】
また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマー;アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマーなども使用することができる。
【0043】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は60万以上であることが好ましく、より好ましくは70万以上300万以下である。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0044】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択して行うことができる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもいずれでもよい。
【0045】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
【0046】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0047】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0049】
なお、重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを用いて、前記重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを製造するには、重合開始剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.06〜0.2重量部程度とするのが好ましく、さらには0.08〜0.175重量部程度とするのが好ましい。
【0050】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
【0051】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0052】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、例えば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(ADEKA社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0053】
(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、250K以下、好ましくは240K以下である。ガラス転移温度はまた、200K以上であることが好ましい。ガラス転移温度が、250K以下であれば、耐熱性が良好でかつ、内部凝集力に優れた粘接着組成物となる。このような(メタ)アクリル系ポリマーは、用いるモノマー成分や組成比を適宜かえることにより調整することができる。また、このようなガラス転移温度は、例えば溶液重合で、アゾビスイソビチロニトリルやベンゾイルパーオキサイドなどの重合開始剤を0.06〜0.2部使用し、酢酸エチルなどの重合溶媒を使用して、窒素気流下50℃〜70℃で8〜30時間反応させることにより得られる。ここで、ガラス転移温度(Tg)は、下記のフォックス式から算出して求められる。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・
上記Tg1、Tg2、Tg3等は、共重合成分それぞれ単独の重合体1、2、3等のガラス転移温度を絶対温度で表したものであり、W1、W2、W3等は、それぞれの共重合成分の重量分率である。なお、単独の重合体のガラス転移温度(Tg)は、Polymer Handbook (4th edition, John Wiley & Sons. Inc.)から得た。
【0054】
次に、このようにして得られた(メタ)アクリル系ポリマーをそのまま、あるいは、希釈剤を加えて希釈した溶液を、グラフト重合に供してもよい。
【0055】
希釈剤としては、特に限定はされないが、酢酸エチルまたはトルエンなどが例示される。
【0056】
グラフト重合は、好ましくはアルキル(メタ)アクリル系ポリマーに非環状エーテル基含有モノマーなどを共重合させて得られる幹ポリマーに、環状エーテル基含有モノマーおよび任意に環状エーテル基含有モノマーとその他のモノマーを反応させて行う。
【0057】
ここで、環状エーテル基含有モノマーは、特に限定はされないが、エポキシ基含有モノマーあるいはオキセタン基含有モノマーまたはその両方の組合せであることが好ましい。
【0058】
エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、または4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが例示され、これらを単独または組み合わせて用いることができる。
【0059】
オキセタン基含有モノマーとしては、3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ブチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、または3−ヘキシル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレートが例示され、これらを単独または組み合わせて用いることができる。
【0060】
環状エーテル基含有モノマーの量は、グラフト重合の場合、2〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは、4重量%〜35重量%である。環状エーテル基含有モノマーが、グラフト重合の場合、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、2重量部以上であれば、組成物の粘着接着剤としての機能発現が十分となり、一方、50重量部以上では、タック性が減少して初期粘着しにくい場合がある。
【0061】
グラフト重合時に、環状エーテル基含有モノマーと共に、共グラフトするその他のモノマーを用いることも可能である。このようなモノマーとしては、環状エーテル基を含まないモノマーであれば、特に限定はないが、炭素数1〜9のアルキル(メタ)アクリレートなどがあげられる。アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが例示できる。また、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリレート類も用いることができる。これらは、単独あるいは組み合わせて使用することができる。
【0062】
これらグラフト時に共グラフトするその他のモノマーを用いると粘接着剤を効果させるための光照射時の照射量を下げることができる。この理由は、グラフト鎖の運動性があがるためか、あるいはグラフト鎖や副生する未グラフト鎖と幹ポリマーとの相溶性がよくなるためと推測される。
【0063】
このようなその他のモノマーは、主鎖(幹)、すなわち(メタ)アクリル系ポリマーの成分と同じモノマーから選択することも好ましい。
【0064】
環状エーテル基含有モノマー以外のモノマーの量は、配合される場合には、環状エーテル基含有モノマーと重量比は、環状エーテル基含有モノマー:その他のモノマーで、好ましくは、90:10から10:90、より好ましくは、80:20から20:80である。その他のモノマーの含有量が少ないと硬化のための光照射量を下げる効果が十分でない場合もあり、多いと光照射後の剥離抵抗が増加する恐れがある。
【0065】
グラフト重合条件は、特に限定されず、当業者に公知の方法により行うことができる。重合に際しては、過酸化物を重合開始剤として使用することが好ましい。
【0066】
このような重合開始剤の量は、メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.02〜5重量部である。この重合開始剤の量が少ない場合には、グラフト重合反応の時間がかかりすぎ、多い場合には、環状エーテル基含有モノマーのホモポリマーが多く生成する為、好ましくない。
【0067】
グラフト重合は、例えば溶液重合であれば、アクリル系コポリマーの溶液に、環状エーテル基含有モノマーと粘度調整可能な溶媒とを加えて、窒素置換した後、ジベンゾイルパーオキシドのような過酸化物系の重合開始剤を0.02〜5重量部加えて、50℃〜80℃で4〜15時間加熱することによって行うことができるが、これに限定はされない。
【0068】
得られるグラフトポリマーの状態(分子量、グラフトポリマーの枝部の大きさ等)は、反応条件により適宜選択することができる。
【0069】
非環状エーテル基含有モノマーと環状エーテル基含有モノマーの配合比は、同量程度とすることで、高い透明性を得ることができるが、1:0.5〜4.0、好ましくは、1:0.6〜3.0、より好ましくは、1:0.7〜2.0とする。
【0070】
本発明の粘接着剤組成物は、このようにして得られるポリマーまたはグラフトポリマーと光カチオン系重合開始剤もしくは熱硬化触媒を含む。
【0071】
光カチオン系重合開始剤としては、当業者に公知のいずれの光カチオン系重合開始剤も好ましく用いることができる。より具体的には、アリールスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート塩、トリアリールスルホニウム塩、スルホニウムヘキサフルオロフォスフェート塩類、およびビス(アルキルフェニル)イオドニウムヘキサフルオロフォスフェートからなる群より選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0072】
このような光カチオン系重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.1〜5重量部であり、好ましくは、0.3〜3重量部である。
【0073】
熱硬化触媒としては、より具体的には、イミダゾール化合物、酸無水物、フェノール樹脂、ルイス酸錯体、アミノ樹脂、ポリアミン、およびメラミン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を使用することができる。このうち、特に、イミダゾール化合物が好ましく、イミダゾール化合物には、限定はされないが、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイトなどが例示される。これらの化合物は、その硬化開始温度や粘接着剤との相溶性などを考慮して選択される。
【0074】
これらのうち、イミダゾール化合物は、その添加量が少なくてすむ点などから好ましく用いられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2ヘプタデシルイミダゾール、1、2ジメチルイミダゾール、2フェニルイミダゾール、2フェニル4メチルイミダゾール、1ベンジル2メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0075】
例えば、粘接着剤ポリマーが水分散のエマルジョンである場合、1,2‐ジメチルイミダゾールを選択し、保存性を優先したり比較的高温での熱硬化を目的とする場合には、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールを選択し、比較的低温での硬化を目的とするなら、2−フェニルイミダゾールが選択できる。
【0076】
このような環状エーテル基の熱硬化触媒は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記グラフトポリマー100重量部に対して、0.1〜20重量であり、好ましくは、0.3〜10重量部である。
【0077】
本発明の粘接着剤組成物には、必要に応じて、架橋剤が加えられる。架橋剤としては、特に限定されないが、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物であるイソシアネート系架橋剤が例示される。
【0078】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどがあげられる。
【0079】
より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどをあげることができる。これらのうち、脂肪族イソシアネートを用いることが、反応速度が速い為に好ましい。
【0080】
上記イソシアネート系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記イソシアネート化合物架橋剤を0.01〜4重量部含有してなることが好ましく、0.02〜2重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜1.5重量部含有してなることがさらに好ましい。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0081】
また、架橋剤として、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを併用してもよい。有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤(エポキシ基を1分子中に2つ以上有する化合物をいう)があげられる。エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート、スピログリコールジグリシジルエーテルなどがあげられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0082】
多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
【0083】
本発明においては、さらに、架橋剤として、オキサゾリン系架橋剤や過酸化物を加えることも可能である。
【0084】
オキサゾリン系架橋剤としては、分子内にオキサゾリン基を有するものを特に制限なく使用できる。オキサゾリン基は、2−オキサゾリン基、3−オキサゾリン基、4−オキサゾリン基のいずれでもよい。オキサゾリン系架橋剤としては、付加重合性オキサゾリンに不飽和単量体を共重合した重合体が好ましく、特に付加重合性オキサゾリンに2−イソプロペニル−2−オキサゾリンを用いたものが好ましい。例としては、日本触媒(株)製の商品名「エポクロスWS−500」等があげられる。
【0085】
過酸化物としては、加熱によりラジカル活性種を発生して粘接着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃〜160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃〜140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0086】
用いることができる過酸化物としては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などがあげられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)などが好ましく用いられる。
【0087】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0088】
前記過酸化物は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記過酸化物0.01〜2重量部であり、0.04〜1.5重量部含有してなることが好ましく、0.05〜1重量部含有してなることがより好ましい。加工性、リワーク性、架橋安定性、剥離性などの調整の為に、この範囲内で適宜選択される。
【0089】
なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0090】
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘接着剤組成物を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0091】
前記架橋剤により、粘接着剤層を形成するが、粘接着剤層の形成にあたっては、架橋剤全体の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮する必要がある。
【0092】
本発明の粘接着剤組成物は、さらに接着力や耐熱性を向上させるためにエポキシ樹脂やオキセタン樹脂を含有しても良い。
【0093】
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、及びヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型等のグリシジルアミン型などのエポキシ樹脂が例示される。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0094】
これらのエポキシ樹脂としては、限定はされないが、市販のエポキシ樹脂を用いることができる。このような市販のエポキシ樹脂には、限定はされないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂として、ジャパンエポキシレジン株式会社のjER828、jER806など;脂環式エポキシ樹脂としてジャパンエポキシレジン株式会社のYX8000、YX8034など;株式会社ADEKAのEP4000、EP4005など;ポリアルコールのポリグリシジルエーテル類としてナガセケムテックス株式会社のデナコールEX−313、EX−512、EX−614B、EX−810など、の公知のエポキシ樹脂が含まれる。
【0095】
オキセタン樹脂としては、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼンなどのキシリレンジオキセタン、3−エチル−3−{[3−エチルオキセタン−3−イル]メトキシ}メチル}オキセタン、3−エチルヘキシルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどの公知のオキセタン樹脂を用いることができる。これらのオキセタン樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0096】
オキセタン樹脂としては、限定はされないが、市販の樹脂を用いることができる。このような市販のオキセタン樹脂には、東亜合成株式会社のアロンオキセタンOXT−121、OXT221、OXT101、およびOXT212などが例示されるが、これらに限定はされない。
【0097】
このようなエポキシ樹脂とオキセタン樹脂は、どちらか一方または両方を組み合わせて、本発明の粘接着剤組成物に用いることができる。
【0098】
本発明において、エポキシ樹脂および/またはオキセタン樹脂は、前記グラフトポリマー100重量部に対し、含まれる場合には、その総量が、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは70重量部以下である。総量が5重量部以上であれば、接着力向上および耐熱性向上に顕著な効果が認められる。総量が100重量部を超える場合には、十分硬化しない場合がある。
【0099】
本発明においては、アクリルポリマーに環状エーテル基含有モノマーをグラフトしたグラフトポリマーに、エポキシ樹脂を添加すると、硬化前に、糊はみだしなどが発生しない、良好な粘接着剤層を作成し得る組成物が調製できる。これは、グラフトされた環状エーテル基が低分子量エポキシ樹脂と相溶して、強固な粘接着剤層構造を作ることができる為と考えられる。
【0100】
本発明の粘接着剤組成物には、その他に粘着付与剤を配合することができる。粘着付与剤は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、合計で、10〜100重量部、好ましくは、20〜80重量部用いられ得る。
【0101】
粘着付与剤としては、例えば、ヤスハラケミカル株式会社のテルペン系樹脂等が挙げられる。このような樹脂を酢酸エチルに溶解させて、粘接着剤に配合することによって、界面の密着性が向上し、接着力が向上すると考えられる。
【0102】
本発明の粘接着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。
【0103】
本発明の粘接着剤層は、好ましくは、支持体の少なくとも片面に形成される。
【0104】
粘接着剤層は、支持基材の片面または両面に前記粘接着剤組成物へ塗工し、乾燥させることにより形成することができるがこれに限定されない。またセパレータ(剥離フィルム)上に形成した粘接着剤層を、支持基材の片面または両面に移設する方式などによっても、粘接着層や粘接着シートを形成することができる。さらに支持基材にセパレータを用いて、実用時には基材レスの両面粘接着シートなどとして使用することもできる。粘接着シート類はシート状やテープ状などの形態として用いられる。
【0105】
粘接着シートにおける支持基材としては、例えば紙、布、不織布等からなる多孔質基材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムあるいはシート、ネット、発泡体、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体等があげられる。これら支持基材は、粘接着シートが用いられる用途に応じて適宜に選択される。支持基材に厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜に決定される。
【0106】
粘接着剤層を形成する方法は、より詳細には、例えば、前記粘接着剤組成物を剥離処理したセパレーターなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去し架橋処理して粘接着剤層を形成した後に光学部材などの支持体に転写する方法、または光学部材に前記粘接着剤組成物を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去し光架橋処理して粘接着剤層を光学部材に形成する方法などにより作製される。なお、粘接着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0107】
剥離処理したセパレーターとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の粘接着剤組成物を塗布、乾燥させて粘接着剤層を形成する工程において、粘接着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を過熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘接着剤を得ることができる。
【0108】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜10分、特に好ましくは、10秒〜5分である。
【0109】
また、支持体の表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘接着剤層を形成することができる。また、粘接着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0110】
粘接着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0111】
粘接着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜400μm程度である。好ましくは、2〜200μm、より好ましくは2〜150μmである。
【0112】
前記粘接着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレーター)で粘接着剤層を保護してもよい。
【0113】
このような保護用セパレーターの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0114】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘接着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共ポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共ポリマーフィルムなどがあげられる。
【0115】
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレーターの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘接着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0116】
なお、上記の剥離処理したシートは、そのまま粘接着型シートのセパレーターとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0117】
本発明の粘接着剤組成物、粘接着剤層、および粘接着型シートは、特定の光を照射することで、あるいは熱処理を行うことで、またはその両方の処理を行うことで硬化が起こる。従って、本発明の粘接着型シートは、被着体との貼合せ直前あるいは貼合せ後に、光を照射することにより容易に硬化させることができる。また、例えば、被着体と部材との間に介在させる粘接着型シートは、好ましくは両面粘着テープのような形態で用いられ、貼合せ後にいつでも光を照射して硬化することもできる。このような硬化反応により、被着体への接着あるいは被着体と部材との接着が確実なものとなる。
【0118】
照射用の光は特に限定はされないが、好ましくは、紫外線、可視光、および電子線等の活性エネルギー線である。紫外線照射による架橋処理は、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、エキシマレーザ、メタルハライドランプなどの適宜の紫外線源を用いて行うことができる。その際、紫外線の照射量としては、必要とされる架橋度に応じて適宜選択することができるが、通常は、紫外線では、0.2〜10J/cmの範囲内で選択するのが望ましい。照射時の温度は、特に限定されるものではないが、支持体の耐熱性を考慮して140℃程度までが好ましい。
【0119】
本発明の光学積層シートを構成する粘接着剤組成物が、熱硬化触媒を含む場合には、加熱することで、硬化が起こり、従って、本発明の粘接着シートは、被着体との貼合せ前に、加熱することにより容易に硬化させることができる。
【0120】
硬化開始温度が低い環状エーテル基の熱硬化触媒を使用する場合には、加熱乾燥工程にて、溶媒の乾燥と粘接着剤組成物の主鎖ポリマーの反応とともに、環状エーテル基の硬化反応も起こる。従ってさらなる加熱処理を行うことなく、本発明の粘着シートを調製することができる。
【0121】
硬化開始温度が高い環状エーテル基の熱硬化触媒を使用する場合には、この乾燥工程にて、溶媒の乾燥と粘接着剤組成物の主鎖ポリマーの反応のみが進行し、環状エーテル基は残存する。従ってさらに加熱処理を行うか、あるいはそのまま、本発明の粘接着シートを得ることができる。
【0122】
熱硬化の温度などの条件は、特に限定はされないが、支持体の耐熱性を考慮して170℃程度までが好ましい。
【0123】
環状エーテル基の硬化反応後のゲル分率は、70~98%であり、好ましくは、80〜98%であり、非常に凝集力が高い粘接着剤層で、その23℃での貯蔵弾性率は、100000~10000000Paである。一方、環状エーテル基は残存させた粘着シートを被着体接着後に加熱することで、残存する環状エーテル基の硬化反応を進行させれば、非着体への仮接着と加熱による強固な接着という両機能をも発現可能となる。
【0124】
本発明の粘接着シートを用いた部品の接着方法はまた、以下のようなものを採用することができる。すなわち、まず、ガラスや金属等の被着体に、PETセパレータ上に形成した本発明の光硬化性もしくは熱硬化性の粘接着シートを室温で貼り付ける。
【0125】
光硬化の場合には、続いて、PETセパレータの剥離前、もしくは剥離後に光照射を行う。通常光照射量は、200~2000mJ/cmの範囲内に規定される。次いで、セパレータを剥離し、もう一方の被着体を貼り合せる。圧着後の必要に応じて、50~150℃の加熱を行う。また、非着体の少なくとも一方が透明で、UVを透過するものである場合、被着体両面に貼り合せた後に照射することも可能である。その場合の方が、より強固に接着される。
【0126】
熱硬化の場合には、加熱乾燥温度は、好ましくは、40℃~200℃であり、さらに好ましくは、50℃~180℃であり、特に好ましくは、70℃~170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘接着剤を得ることができる。
【0127】
乾燥時間は、適宜適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは、5秒~20分、さらに好ましくは5秒~10分、特に好ましくは、10秒~5分である。
【0128】
本発明の粘接着剤組成物、粘接着剤層、および粘接着型シートの用途は特に限定されないが、例示すると、光学部材用の粘着用途、半導体素子を有機基板やリードフレームに接着する為の用途、自動車部品の接着用途、建築用途などが挙げられ、幅広く使用することができる。以下、実施例においては、接着性の評価は、モデル的に、SUS−BA板同士のせん断接着力の評価によって行った。
【実施例】
【0129】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RH(1時間あるいは1週間)である。
【0130】
<重量平均分子量の測定>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエー
ション・クロマトグラフィー)により測定した。サンプルは、試料をジメチルホルムアミドに溶解して0.1重量%の溶液とし、これを一晩静置した後、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した濾液を用いた。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ;各7.8mmφ×30cm 計90cm
・溶離液:テトラヒドロフラン(濃度0.1重量%)
・流量:0.8ml/min
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度:40℃
・ 注入量:100μl
・ 標準試料:ポリスチレン
【0131】
<ゲル分率の測定>
乾燥・架橋処理した粘接着剤(最初の重量W1)を、酢酸エチル溶液に浸漬して、室温で1週間放置した後、不溶分を取り出し、乾燥させた重量(W2)を測定し、下記のように求めた。
ゲル分率=(W2/W1)×100
【0132】
<ヘイズ>
実施例・比較例で得た幅30mmの粘着シートサンプルを用いて、25℃の雰囲気温度で、村上色彩技術研究所製反射・透過率計HR−100型にて、D−65光を用いてJISK−7136に準じて測定(%)した。
【0133】
<動的粘弾性の測定方法>
150℃で1時間加熱処理した粘接着剤の動的粘弾性を測定した。
装置:ティー・エイ・インスツルメント社製ARES
変形モード:ねじり
測定周波数:一定周波数1Hz
昇温速度:5℃/分
測定温度:粘接着剤のガラス転移温度付近から160℃ まで測定
形状:パラレルプレート8.0mmφ
試料厚さ:0.5〜2mm(取り付け初期)
23℃ での貯蔵弾性率(G')を読み取った。
【0134】
実施例1
(アクリル系ポリマーの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、n−ブチルアクリレート(BA)85重量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)15重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)3重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル200重量部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って10時間重合反応を行い、重量平均分子量90万のアクリル系ポリマー溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマーのガラス転移温度は233Kであった。
【0135】
(グラフトポリマーの調製)
得られたアクリル系ポリマー溶液を、酢酸エチルにて固形分が25%になるように希釈して、希釈溶液(I)を調製した。攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、希釈溶液(I)400重量部に対して、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE)20重量部と2−エチルエキシルアクリレート(2EHA)20重量部とベンゾイルパーオキサイド0.2部を加え、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を65℃付近に保って4時間、次いで70℃で4時間重合反応を行い、グラフトポリマー溶液を得た。
【0136】
(粘接着剤層の形成)
次いで、このようにして得られたグラフトポリマー溶液の固形分100重量部に対して、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)(NCO)0.1重量部、光開始剤としてアリールスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート(LAMBERTI社製、ESACURE1064)0.1重量部、粘着付与剤としてフェノール変性テルペン樹脂(安原ケミカル、YS−ポリスターT−145、軟化点145℃)20重量部を配合して粘接着剤溶液を調製した。
【0137】
上記粘接着剤溶液を、シリコーン処理を施した38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂社製「MRF−38」)の片面に、乾燥後の粘接着剤層の厚さが100μmになるように塗布し、120℃で3分間乾燥をさせて、試験サンプルを作製した。
【0138】
(光照射)
ついで、試験サンプルから10mm×10mmのサンプル片を切り出し、厚さ0.4mmのBA板(SUS403鋼板表面仕上げBA鋼板)に貼り付け、PETフィルムを剥がし、反対側にも、同じBA2板を2kgのロール1往復で貼り付けた(BA板/サンプル/BA板)。このときのせん断接着力(剥離速度10mm/分)を測定し、光未照射時の接着力とする。片側のBA板に貼り付けた後、サンプル面に、メタハラUVランプで、1J/cm光照射を行った後、反対側のBA板を貼り付け、暗反応処理(60℃、48時間)を行う。このサンプルでせん断接着力を測定し、光照射時の接着力とする。
【0139】
(粘接着剤層の形成)ゲル分率測定用サンプル:1B
上記粘接着剤溶液を、シリコーン処理を施した、38μmのPETフィルム(三菱樹脂社製、MRF−38)の片面に、乾燥後の粘接着剤層の厚さが20μmになるように塗布し、120℃で3分間乾燥をさせて、試験サンプル1Bを作製し、粘接着剤層面にもMRF−38を貼り合せた。光を照射せずにゲル分率の測定を行い、これを光未照射時のゲル分率とする。
【0140】
試験サンプル1BにメタハラUVランプ組成で、1J/cm光照射を行った後、暗反応処理(60℃×48時間)を行う。このサンプルでゲル分率を測定し、光照射時のゲル分率とする。
【0141】
実施例2〜11、比較例1〜2
実施例1と同様の手順で、表に示す処方にて、粘接着剤層を形成した。なお、実施例5、6は、光開始剤として、トリアリールスルホニウム塩(サンアプロ社製、CPI−200K)を用いた。
【0142】
上記実施例および比較例で得られたサンプルについて行った接着力の評価結果を表1に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル(メタ)アクリレート50〜95重量%、環状エーテル基含有モノマー2〜40重量%、および非環状エーテル基含有(メタ)アクリレート3〜40重量%を構成成分として含むアクリル系ポリマー;および
光カチオン系重合開始剤もしくは熱硬化触媒を含有してなる粘接着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーにおいて、前記環状エーテル基含有モノマーを含む鎖が、幹ポリマーにグラフト重合されてなる、請求項1記載の粘接着剤組成物。
【請求項3】
前記アクリル系ポリマーにおいて、前記幹ポリマーに、前記非環状エーテル基含有(メタ)アクリレートが含まれる、請求項2記載の粘接着剤組成物。
【請求項4】
前記アクリル系ポリマー100重量部に対し、光カチオン系重合開始剤もしくは熱硬化触媒を0.1〜5.0重量部含有してなる請求項1〜3までのいずれか1項に記載の粘接着剤組成物。
【請求項5】
さらに、イソシアネート系架橋剤および/または粘着付与剤を含有してなる請求項1〜4までのいずれか1項記載の粘接着剤組成物。
【請求項6】
前記アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記イソシアネート系架橋剤を、0.01〜4重量部含有してなる請求項5記載の粘接着剤組成物。
【請求項7】
前記アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記粘着付与剤を10〜150重量部含有してなる請求項5記載の粘接着剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜7までのいずれかに記載の粘接着剤組成物から得られる粘接着剤層。
【請求項9】
請求項8記載の粘接着剤層を、基材の少なくとも片面に設けた粘接着シート。
【請求項10】
請求項1〜7までのいずれかに記載の粘接着剤組成物に光照射または加熱処理を施して得られる粘接着剤層。
【請求項11】
ゲル分率が、70%以上98%以下である請求項10記載の粘接着剤層。
【請求項12】
貯蔵弾性率が、1.0×10〜1.0×10Paである、請求項10または11記載の粘接着剤層。
【請求項13】
ヘイズが、4.0以下である、請求項10〜12のいずれか1項記載の粘接着剤層。
【請求項14】
せん断接着力が、350N/20mm以上である請求項10〜13のいずれか1項記載の粘接着剤層。
【請求項15】
請求項10〜14までのいずれか1項記載の粘接着剤層を、基材の少なくとも片面に設けた粘接着シート。

【公開番号】特開2012−172045(P2012−172045A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34744(P2011−34744)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】