説明

粘着シートおよび液晶表示装置

【課題】輝度上昇フィルムのような凹凸面上に貼付されて、高温高湿の環境におかれても液晶画面の端部に白い筋状に目視される不均一部を生じさせることのない粘着シートおよび同粘着シートを用いた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】基材シートの少なくとも片面に粘着剤層を設けてなる粘着シートにおいて、粘着剤層が(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、架橋性官能基を有し、重量平均分子量40万〜90万のアクリル系共重合体と架橋剤を反応させてなる粘着剤からなり、同粘着剤層のゲル分率が70〜90質量%、粘着剤層の90℃における貯蔵弾性率が350kPa〜1000kPaであることを特徴とする粘着シート、および同粘着シートにより、液晶表示ユニットとバックライトユニットが固定されている液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着シート及び液晶表示装置に関する。さらに詳しくは、特に携帯電話やPDA用途等に好適な液晶表示装置(LCD)等において、液晶表示ユニットとバックライトユニットを固定するために有用な粘着シートおよび同シートが適用された液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等に用いられるLCDは、図1に示すように、液晶表示ユニットとバックライトユニットが粘着シートで固定されている。当該粘着シートには、液晶表示ユニットとバックライトユニットを固定するためにある程度高い粘着力が求められる。
従来、このような粘着シートとして、基材と粘着剤層とを有し、前記粘着剤層が、アクリル系共重合体並びに不均化ロジンエステル等の粘着付与樹脂を含有する粘着剤の層であり、前記アクリル系共重合体の重量平均分子量が80万〜150万であり、さらに、前記アクリル系共重合体100質量部に対して前記粘着付与樹脂を30〜70質量部含有することを特徴とするLCD用粘着テープが提案されている(特許文献1)。
LCDにおいては、一般的に、プリズムシートのような輝度上昇フィルムが用いられており、通常、片面がVまたはU字溝状の凹凸形状に加工されている。そして、液晶表示ユニットとバックライトユニットを固定するために用いられる両面粘着シートの片面が輝度上昇フィルムの凹凸面上の一部に貼付されることになる。
本発明者らの研究の結果、このように形成されたLCDは、高温高湿の環境に置かれた場合、粘着剤層中の粘着付与樹脂や未架橋成分が溶出して凹凸面の凹部分(VまたはU字溝)に流れ出し、液晶画面の端部に白い筋状に目視される不均一部が生じるという問題があることが判明した。
なお、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする共重合体、酸化防止剤および架橋剤を含み、ゲル分率が特定の範囲であり、ゾル分中の低分子量成分の含有量が一定量以下の光学フィルム用粘着剤が提案(特許文献2)されているが、上記のような問題を解決しようとするものではない。
また、光学フィルム用粘着テープにおいて、特定の損失正接と貯蔵弾性率を規定した粘着剤が提案されている(特許文献3)。
しかしながら、この粘着剤は貯蔵弾性率が低いため、前記のような白い筋状に目視される不均一部分が生じるという問題は解決されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−97393号公報
【特許文献2】特開2003−49143号公報
【特許文献3】特開2008−248226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような背景の下、主として、上記のような液晶表示ユニットとバックライトユニットを固定するための粘着シートにおいて、輝度上昇フィルムのような凹凸面上に貼付されて、高温高湿の環境におかれても液晶画面の端部に白い筋状に目視される不均一部分を生じさせることのない粘着シートおよび同粘着シートを用いた液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の重量平均分子量を有し、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体と架橋剤を用い、ゲル分率が特定の範囲で、かつ、粘着剤層の90℃における貯蔵弾性率が特定範囲の粘着剤を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(9)
(1)基材シートの少なくとも片面に粘着剤層を設けてなる粘着シートにおいて、粘着剤層が(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、架橋性官能基を有し、重量平均分子量40万〜90万のアクリル系共重合体と架橋剤を反応させてなる粘着剤からなり、同粘着剤層のゲル分率が70〜90質量%、粘着剤層の90℃における貯蔵弾性率が350kPa〜1000kPaであることを特徴とする粘着シート、
(2)官能基がカルボキシル基である上記(1)に記載の粘着シート、
(3)前記架橋剤がエポキシ系架橋剤である上記(1)または(2)に記載の粘着シート、
(4)(メタ)アクリル酸エステルがアクリル酸ブチル単位を50質量%以上含むものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着シート、
(5)前記粘着剤が粘着付与剤を実質的に含まないものである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着シート、
(6)前記基材シートの両面に粘着剤層を有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の粘着シート、
(7)凹凸形状を有する光学基材面上に貼付される上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着シート、
(8)液晶表示ユニットとバックライトユニットの固定用である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着シート、
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の粘着シートにより、液晶表示ユニットとバックライトユニットが固定されてなる液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
高温高湿の環境におかれても必要な粘着力を保持し、液晶画面の端部に白い筋状に目視される不均一部を生じさせることのない粘着シートおよび同粘着シートを用いた液晶表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】粘着シートを使用して液晶表示ユニット等の各部品をバックライトユニットに固定した液晶表示装置の部材構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の粘着シートおよび同粘着シートを用いた液晶表示装置について詳細に説明する。
本発明の粘着シートに用いられる基材シートとしては、材質としては、特に限定されず各種のものを用いることができる。たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネートなどがあげられる。これらのなかでも、耐候性、強度などの点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが好ましい。
基材シートの厚さは、特に制限されないが、薄型軽量化と加工性の点から2〜75μm程度、好ましくは6〜50μmである。
2μm以上とすることにより、基材自体の加工性、その2次加工性および強度を確保し、75μm以下とすることにより、柔軟性を確保し、例えば、液晶表示ユニットとバックライトユニットの固定箇所において粘着シートの存在しない部分との段差を小さくすることができる。
【0010】
また、基材シートとしては、遮光性あるいは光反射性を有する基材であっても良いし、透明基材であってもよい。
基材シートは遮光性及び光反射性を考慮して着色基材フィルム等にする場合には、各着色に応じた顔料等が配合される。また、たとえば、顔料、バインダーおよび溶媒を含有する配合物を、基材シート上に塗工することにより基材シート状に着色層を形成することができる。バインダーとしては、着色層の形成に用いられるものを特に制限なく使用することができる。たとえば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素メラミン樹脂、アクリル樹脂などが例示される。溶媒は、顔料、バインダーの種類に応じて適宜に選択される。顔料は、着色層に応じた顔料が適宜に選択される。
着色層の厚さは、通常、総厚で、1〜10μm程度が好ましい。印刷法により作製される各着色層の厚さは、通常、1〜2μm程度が好ましい。なお、印刷法による着色層の形成方法は、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷などの従来より着色層の形成に採用されている手段を特に制限なく採用できる。
【0011】
基材シートや着色層の着色に用いられる顔料は、黒色の場合、黒色顔料が用いられる。黒色顔料の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、松煙、黒鉛などが例示される。
白色の場合、白色顔料が用いられる。白色顔料の例としては、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウムなどが例示される。
また、前記以外の着色層の形成方法としては、金属蒸着法により行なうことができる。金属蒸着層は反射性と遮光性に寄与することから、金属蒸着法により作製されたものが好ましい。金属蒸着法によって作製された層は、印刷法によって作製されたものに比較して、表面平滑性、層の緻密性がよいので反射率、遮光率をともに改良できる点で有利である。さらに金属蒸着法によって作製されたフィルム膜厚を薄くすることができる点でも有利である。
【0012】
金属蒸着法としては、真空蒸着法、物理スパッタリング法、化学スパッタリング法等を採用することができるが、これらのなかの真空蒸着法が一般に採用される。金属蒸着層の形成には、反射率の高い金属材料が好適に用いられる。金属材料としては、銀、アルミニウム、金、ロジウム、銅、チタン等があげられる。これらのなかでも銀、アルミニウムが好ましい。金属蒸着層の厚みは30〜100nm好ましくは40〜70nmである。
なお、液晶表示ユニットとバックライトユニットを固定する際には、基材シートの液晶表示ユニット側が外からの光を遮光するように遮光性を有するように形成し、またバックライトユニット側は光反射性を有するように形成するのが好ましい。
【0013】
次に、本発明の粘着シートにおける粘着剤層について説明する。
本発明において、粘着剤層を形成させるために用いられる粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、架橋性官能基を有する単量体成分を有し、40万〜90万の重量平均分子量(以下、Mwと表示する)を有するアクリル系共重合体と架橋剤を反応させることにより調製され、70〜90質量%のゲル分を含有し、かつ、粘着剤層の90℃における貯蔵弾性率が350kPa〜1000kPaであることを特徴としている。
【0014】
本発明の粘着シートに用いられる粘着剤において使用する(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を重合して得られたアクリル系共重合体である。この単量体混合物としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、架橋剤と反応する架橋性官能基を有する単量体を含む。また、その他のビニル系単量体を配合しても良い。
架橋性官能基とは具体的には、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、およびアセトアセチル基等である。これらの中でもカルボキシル基および水酸基が好ましく、後で述べる好ましい架橋剤であるエポキシ系架橋剤との反応により高いゲル分率と貯蔵弾性率を得るという観点で、特にカルボキシル基が好ましい。
【0015】
主成分として用いる(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、(メタ)アクリル酸ブチル、特にアクリル酸n-ブチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル中、アクリル酸n-ブチル単位を50質量%以上含むことが粘着性などの点から好ましい。
【0016】
また、架橋性官能基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸および無水マレイン酸などのようなカルボキシル基を有する単量体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、クロロ-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびアリルアルコールなどの水酸基含有単量体、アミノメチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基を含有する単量体、アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体、メタクリロキシプロピルメトキシシランなどのアルコキシ基含有単量体およびアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアセトアセチル基を有する単量体などを挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。

前記架橋性官能基を有する単量体の中でも、後で述べる好ましい架橋剤であるエポキシ系架橋剤との反応性の観点、すなわち、ゲル分率を70〜90質量%にコントロールし、粘着剤層の90℃における貯蔵弾性率を350kPa〜1000kPaにコントロールし易いという観点から、(メタ)アクリル酸、特にアクリル酸が好ましい。すなわち、アクリル系共重合体中の官能基としてはカルボキシル基であることが好ましい。
アクリル系共重合体は官能基として、カルボキシル基を有する場合でも、水酸基を少量含有していても良い。
すなわち、アクリル系共重合体を重合する際、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基含有単量体を少量用いてもよい。
【0017】
その他のビニル系単量体としては、スチレン、メチルスチレン及びビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリルなどを挙げることができる。これらは単独で、あるいは、組み合わせて使用することができる。
【0018】
これら単量体の使用量は、主成分である(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して、架橋性官能基含有単量体は0.1〜25質量部好ましくは、0.5〜15質量部である。
架橋性官能基含有単量体を上記範囲として共重合体を調製し、それを後で述べる架橋剤と反応させることにより、粘着剤中のゲル分率を70〜90質量%、90℃における貯蔵弾性率を350kPa〜1000kPaとすることができる。
その他のビニル系単量体は、主成分である(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して、必要に応じて0〜25質量部程度配合する。
本発明における粘着剤において、樹脂成分として用いられるアクリル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量は、粘着性能などの点から、Mwで40万〜90万であることを要し、好ましくは45万〜80万の範囲である。
Mwを上記範囲とすることにより、後で述べる架橋剤との反応により形成されるゲル分率を40〜90質量%、90℃における貯蔵弾性率を350kPa〜1000kPaにコントロールし易くなる。
なお、上記Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
ゲル分率の測定方法は後で詳細に説明する。
【0019】
本発明においては、このアクリル系共重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明におけるアクリル系共重合体の調製は、溶媒の存在下または不存在下、常法により行うことができる。溶媒としては、酢酸エチル、トルエン等を挙げることができ、重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等を挙げることができる。重合条件に関しても特に限定されず、通常50〜90℃で2〜30時間の条件で行われる。
【0020】
次に、本発明の粘着シートにおける粘着剤において使用される架橋剤について述べる。
架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤およびアミン系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤、イソシアネート系架橋剤などを挙げることができる。
中でも、特に高いゲル分率と貯蔵弾性率を得ることができるという観点からエポキシ系架橋剤が好ましい。これらの架橋剤は単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。
【0021】
エポキシ系架橋剤の具体例としては、分子中に2個以上のエポキシ基又はグリシジル基を有するものであれば、特に限定されるものではないが、1分子中にエポキシ基を2個以上含む多官能性エポキシ化合物の使用が好ましい。
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジまたはトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジまたはトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリンのようなジグリシジルアミン等を挙げることができる。
【0022】
アジリジン系架橋剤としては、特に限定はないが、その具体例として、1,1'−(メチレン−ジp−フェニレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、1,1'−(ヘキサメチレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパン−トリス−(2−アジリジニルプロピオネート)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いられる。
アジリジン系架橋剤としての市販品としては例えば、BXX5134(アジリジン系硬化剤、東洋インキ製造株式会社製)等が挙げられる。
【0023】
金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属にアセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物等が挙げられる。金属キレート系架橋剤の具体例としては、アルミニウムにアセチルアセトンが配位した日本化学産業株式会社製:ナーセムアルミ等が挙げられる。
【0024】
アミン系架橋剤としては、ポリアミン、例えば脂肪族ポリアミン(例えばトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、エチレンジアミン、N,N−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、エタノールアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサ−2−スピロ[5.5]ウンデカン等)ならびにこれらの塩;芳香族ポリアミン(例えばジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0025】
アミノ樹脂系架橋剤としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン等が挙げられるが、好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメチロール化ベンゾグアナミン等を挙げることができる。
【0026】
イソシアネート架橋剤の具体例としては、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートをトリメチロールプロパンなどと付加したポリイソシアネート化合物やポリイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらには公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のポリイソシアネートなどを挙げることができる。
前記のように、例えば、アクリル系共重合体がカルボキシル基とともに少量の水酸基を有する場合、または、官能基としてカルボキシル基を有するアクリル系共重合体に対して、架橋剤としてエポキシ系架橋剤を用いた場合、架橋反応で生成する水酸基をイソシアネート系架橋剤を併用して架橋させることもできる。
【0027】
例えば、アクリル系共重合体中の官能基がカルボキシル基で、架橋剤がエポキシ系架橋剤の場合、質量比で表わすと共重合体100質量部に対して架橋剤(溶媒などを除いた有効成分)0.01〜3質量部程度、好ましくは0.05〜2質量部となる。架橋剤の配合量を0.01質量部以上とすることにより、ゲル分率が70質量%未満となって得られる粘着剤の凝集力が低くなるのを防止する。また、高温雰囲気下で発泡し易くなるのを防止する。
架橋剤の配合量を3質量部以下とすることにより、ゲル分率が90質量%より大きくなったり、粘着剤の経時安定性が低下するのを防止し、得られる粘着剤が応力緩和性に劣るのを防止する。
前記アクリル系共重合体と架橋剤を配合して基材シートまたは剥離シートに塗布した後、70〜120℃で30〜180秒程度加熱処理して架橋(反応)させることにより粘着剤層を形成させることができる。
粘着剤層の厚さは使用目的等に応じて適宜決定できるが、一般的には5〜100μm程度である。本発明の粘着シートを、携帯電話等に適用される液晶表示装置における液晶表示ユニットとバックライトユニットを固定する両面粘着テープとして使用する場合は、薄型軽量化の観点から、粘着剤層の厚さは5〜50μmが好ましい。
両面粘着テープの構成としては、前記基材の両面に粘着剤層を設けたものであり、被着体であるプリズムシート等の凹凸面側に上述した粘着剤層を設けることが必要である。他面側の粘着剤層は上述した粘着剤層でもよいし、他の粘着剤層でもよい。
【0028】
なお、本発明における粘着剤のゲル分率は、後記の方法で測定した値である。
このゲル分率は、粘着剤層を構成する粘着剤の樹脂成分、例えば(メタ)アクリル酸エステル共重合体を製造する際の架橋性官能基を有する単量体および架橋剤の使用量によって調整することができる。
【0029】
本発明の粘着シートにおける粘着剤の90℃における貯蔵弾性率(G’)は、350kPa〜1000kPaであり、これはJIS K7244に準拠してねじり剪断法により測定した値である。
貯蔵弾性率の測定装置としては、例えば、レオメトリック社製の動的粘弾性測定装置DYNAMIC ANALYZER 「型式RDA II」、同「型式itk DVA−200」、同「型式RDS−II」やアイティー計測制御社製の動的粘弾性測定装置「型式DVA−200」等が用いられる。貯蔵弾性率の具体的な測定法については後で詳しく説明する。
【0030】
また、本発明の粘着シートにおける粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、粘着付与剤、可塑剤、消泡剤及び濡れ性調整剤等を配合しても良いが、これらの成分が高温高湿条件下において、溶出する可能性があることから極力配合しないことが好ましい。
特に、ロジンおよびその誘導体、ポリテルペン、テルペンフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂等、従来から粘着力向上の目的で使用されている粘着付与剤は極力用いない方が好ましい。
【0031】
粘着剤層は、基材シートの片面または両面に形成させることができるが、本発明の粘着シートは、携帯電話やPDA用途等に好適な液晶表示装置(LCD)等において、液晶表示ユニットと凹凸形状を有する光学基材(輝度上昇フィルム)が表層にあるようなバックライトユニットの両者を固定する粘着シートとして使用される場合が多いので、粘着剤層が基材シートの両面に形成されている両面粘着シートの方が好ましい。
粘着剤層の形成方法は、特に制限されず、基材シートに前記共重合体と架橋剤および必要に応じて少量添加される添加剤を含む溶液またはエマルジョンを、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、リバースコーター、グラビアコーターなどを用いて直接塗布して加熱乾燥する方法、また別途、剥離シートに粘着剤層を形成させた後、粘着剤層を基材シートに貼り合せる方法等を採用することができる。
【0032】
粘着剤層には、剥離シートが必要に応じて設けられる。上記剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、キャストコート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布したものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0033】
剥離剤層を形成させるために用いる剥離剤としては、例えばオレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂などのゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などが用いられる。本発明の粘着シートをハードディスク製造時や管理時の情報ラベルとして用いる場合にシリコーン系剥離剤を使用すると、シリコーン成分が剥離剤層から粘着剤層に微量移行し、さらにハードディスク装置に付着し、それがハードディスク装置内部の記録ディスクや読み取りヘッドに酸化物などを形成し、該ハードディスク装置の機能を破損する場合がある。したがって、ハードディスク用途に本発明の粘着シートを用いる場合には、非シリコーン系剥離剤の使用が好ましい。また、剥離剤としてシリコーン系剥離剤を用いる場合には、シリコーン成分の粘着剤層への移行の少ないものを選択することが望ましい。
基材上に形成される剥離剤層の厚さは、特に限定されないが、剥離剤を溶液状態で塗工する場合は0.01〜2.0μmであるのが好ましく、より好ましくは、0.03〜1.0μmである。
剥離剤層として、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて形成させる場合は、剥離剤層の厚さは、3〜50μmであるのが好ましく、5〜40μmであるのがより好ましい。
【0034】
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。
図1は本発明の液晶表示ユニット等の各部品をバックライトユニットに固定した液晶表示装置の部材構成の一例を示す断面図である。
本発明の液晶表示装置において、粘着シート1は基本的には、例えば、図1に示されているように液晶表示ユニット8を輝度上昇フィルム2を含むバックライトユニット7に固定するための役割を有している。なお、符号3は拡散シート、4は光源、5は導光板、6は反射板である。
前記背景技術欄で述べたように、輝度上昇フィルム2は、通常、片面がVまたはU字溝状の凹凸形状に加工されており、VまたはU字溝状の凹部分に粘着付与樹脂や未架橋成分が溶出して流れ出し、液晶画面の端部に白い筋状に目視される不均一部が生じるという問題があったが、前記のような本発明の粘着シートを用いることによりこの問題が解決される。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
〔実施例1〕
アクリル酸n-ブチル90質量部及びアクリル酸10質量部からなる単量体混合物に、溶媒として酢酸エチル150質量部及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を加え、窒素雰囲気下、80℃で10時間重合を行い、アクリル酸ブチル/アクリル酸共重合体の溶液を得た。
次いで、この共重合体溶液の固形分100質量部に対し、エポキシ系架橋剤[三菱瓦斯化学(株)製、商品名「TedradC」、固形分 97%]0.1質量部を加えて、粘着剤塗工液を調製した。なお、前記共重合体のMwは60万であった。
次に、この粘着剤塗工液を、ナイフコーターにて剥離シート〔リンテック(株)製、商品名「SP−PET381031」〕の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、90℃で約1分間乾燥させたのち、予め片面に黒コート層を施した厚さ38μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルムの反射性を有する基材シート〔東レ(株)製、商品名「E20」、厚さ38μm〕にラミネートし、また、他面側にも同様にして上記粘着剤層を形成させて基材シートの両面に粘着剤層を有する両面粘着シートを作製した。なお、粘着剤のゲル分率および90℃における貯蔵弾性率等は表1に示す。
【0036】
〔実施例2〕
実施例1において、単量体混合物として、アクリル酸ブチル77質量部、アクリル酸エチル20質量部、及びアクリル酸3質量部からなる混合物を用い、「TedradC」を1.0質量部用いた以外は、実施例1と同様にして共重合体溶液を得たのち、粘着剤塗工液を調製した。なお、前記共重合体のMwは80万であった。
次に、この粘着剤塗工液を用い、実施例1と同様にして、基材シートの両面に粘着剤層を有する両面粘着シートを作製した。粘着剤のゲル分率および90℃における貯蔵弾性率等は表1に示す。
【0037】
〔比較例1〕
実施例1において、共重合体溶液の固形分100質量部に対しイソシアネート系架橋剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」、固形分75%〕を2質量部添加した以外は、実施例1と同様にして粘着剤塗工液を調製し、実施例1と同様にして、基材シートの両面に粘着剤層を有する両面粘着シートを作製した。粘着剤のゲル分率および90℃における貯蔵弾性率等は表1に示す。
【0038】
〔比較例2〕
実施例1において、共重合体溶液の固形分100質量部に対し粘着付与剤である不均化ロジンエステル〔荒川化学工業(株)製、商品名「スーパーエステルA100」〕を50質量部添加した以外は、実施例1と同様にして粘着剤塗工液を調製し、実施例1と同様にして、基材シートの両面に粘着剤層を有する両面粘着シートを作製した。粘着剤のゲル分率および90℃における貯蔵弾性率等は表1に示す。
【0039】
<試験方法>
(1)白筋確認試験
図1の液晶表示ユニットとバックライトユニットを実施例及び比較例で作製した両面粘着シートによって凹凸面を有する輝度上昇フィルム上に固定(白色側をバックライトユニット上に貼付)し液晶表示装置を作製した。この液晶表示装置を高温高湿(90℃、95%RH)の状況に48時間放置し、液晶画面の淵の部分に白い筋状物が発生するか否かデジタル顕微鏡にて確認した。
○:白筋発生無し。
×:白筋がはっきりと多数見られる。
(2)ゲル分率(質量%)
各例における粘着剤塗工液を、ナイフコーターにて重剥離フィルム[リンテック(株)製「SP−PET7511」]の剥離処理面に塗布したのち、90℃で約1分間加熱処理して粘着剤層(厚さ約25μm)を作製した。これに、軽剥離フィルム[リンテック(株)製「SP−PET381031」]をラミネートし、ゲル分率測定用シートサンプルを得た。
次いで、このシートサンプルを、23℃、相対湿度50%の条件下で1週間放置したのち、粘着剤層を剥ぎ取り、ソックスレー抽出器を用いて、酢酸エチルにて約16時間還流させて抽出を行なった。未溶解成分を風乾後、100℃で10時間乾燥させ、23℃、相対湿度50%の条件下に3時間放置して調湿を行った後、その質量を測定して、以下の式によりゲル分率を計算した。
ゲル分率(質量%)=(乾燥・調湿後の未溶解成分の質量/抽出前の粘着剤の質量)×100
(3)貯蔵弾性率測定(G′)
貯蔵弾性率(G′)は、剥離フィルム上に形成された厚さ25μmの粘着剤層を積層して、直径8mm、厚さ3mmの円柱状の粘着剤層からなる試験片を作製し、ねじり剪断法により、下記の条件で測定した。
測定装置:レオメトリック(株)製の動的粘弾性測定装置(DYNAMI C ANALYZER RDA11)
測定周波数:1Hz
温度:90℃
【0040】
【表1】

【0041】
表1において、実施例1および2における粘着力は比較例のそれより低いが、実用上十分使用可能な範囲である。
ちなみに、本発明においては、液晶表示ユニットとバックライトユニット(輝度上昇フィルム)との固定が目的であり、この用途において致命的な欠陥である「白筋」の発生が抑制されることが最も重要である。
比較例2の結果より、粘着付与剤を添加すると粘着力は向上するが、「白筋」の発生が生じるので粘着付与剤を使用しない方が好ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の粘着シートは、携帯電話やPDA用途等に好適な液晶表示装置(LCD)等における液晶表示ユニットとバックライトユニットを固定するための粘着シートとして、特に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1:粘着シート
2:輝度上昇フィルム
3:拡散シート
4:光源
5:導光板
6:反射板
7:バックライトユニット
8:液晶表示ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの少なくとも片面に粘着剤層を設けてなる粘着シートにおいて、粘着剤層が(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、架橋性官能基を有し、重量平均分子量40万〜90万のアクリル系共重合体と架橋剤を反応させてなる粘着剤からなり、同粘着剤層のゲル分率が70〜90質量%、粘着剤層の90℃における貯蔵弾性率が350kPa〜1000kPaであることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
官能基がカルボキシル基である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記架橋剤がエポキシ系架橋剤である請求項1または請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸エステルがアクリル酸ブチル単位を50質量%以上含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤が粘着付与剤を実質的に含まないものである請求項1〜4のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項6】
前記基材シートの両面に粘着剤層を有する請求項1〜5のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項7】
凹凸形状を有する光学基材面上に貼付される請求項1〜6のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項8】
液晶表示ユニットとバックライトユニットの固定用である請求項1〜8のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の粘着シートにより、液晶表示ユニットとバックライトユニットが固定されてなる液晶表示装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−26361(P2011−26361A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170074(P2009−170074)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】