説明

粘着シート及びその製造方法

本発明は、粘着シート及びその製造方法に関する。ポリ塩化ビニルとトルマリン及び/又は貴陽石と難燃剤とを含むポリ塩化ビニル組成物で成形されたポリ塩化ビニルシートを含むことを特徴とする粘着シート、及びその製造方法に関する。本発明の粘着シートは、上記ポリ塩化ビニルシートの一側面に抗菌/脱臭層がさらに形成されていてもよい。本発明による粘着シートは、揮発性有機化合物(VOC)を除去する優れた性能を有し、且つ優れた難燃性及び印刷性を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、粘着シート及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、ポリ塩化ビニルとトルマリン及び/又は貴陽石と難燃剤とを含有するポリ塩化ビニルシート、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
本発明に係る粘着シートは、上記ポリ塩化ビニルシートの一側面に抗菌/脱臭層がさらに、形成されていてもよい。
【0003】
本発明に係る上記粘着シートは、揮発性有機化合物(VOC)の除去性能と難燃性及び印刷性に優れた効果がある。
【背景技術】
【0004】
一般に、内装材または屋外広告用として用いられる印刷シートは、主に、ポリエステル織布を中心に、その両面に半硬質のポリ塩化ビニルシートが接着剤で付着されたもので構成される。このような印刷シートは、屋外広告用に用いるときは、ビルの外部に設けられるので、揮発性有機化合物の発生、空気汚染、または防炎性あるいは難燃性の特性が大きく問題にはならない。しかし、印刷シートを内装材に用いるときには、揮発性有機化合物が室内の空気中に排出されるので、室内空気を汚染する問題があり、防炎性又は難燃性の特性が問題になる。
【0005】
これらの問題点を解決しようとして、 大韓民国実用新案登録第219665号には、ポリ塩化ビニル、天然鉱物のトルマリン、塩、炭、可塑剤及び安定剤を含むポリ塩化ビニル組成物で成形したポリ塩化ビニルシートに関する技術が開示されている。しかし、上記ポリ塩化ビニルシートは天然鉱物のトルマリンを単独で使用するので、所望の水準の揮発性有機化合物(VOC)排出容量を制御するために、また、空気汚染を防止するために過剰量入れなければならない。この理由ため、印刷シートの印刷性が不十分な問題点と、防炎性又は難燃性の特性が不十分な問題点をいまでもまだ持っており、印刷シートで頻繁に使用される有機溶剤の危険に対処できない問題点がある。
【0006】
また、 大韓民国実用登録出願第2004−002052号には、液状の塗料ないしシート形状のフィルムにナノ粒子を塗布してVOC除去、抗菌/脱臭性を高める機能性化粧板が開示されている。しかし、この化粧板は不十分な難燃性と、有機溶剤の危険に対処できないという短所がある。
【0007】
さらに、大韓民国実用新案出願第1998−021810号には、布で作られたベース基板に耐炎性を有する難燃物質を混合した機能性合成樹脂材シートに関する技術が開示されている。しかし、抗菌/脱臭機能に関する技術は言及されていない。
【特許文献1】大韓民国実用新案登録第219665号
【特許文献2】大韓民国実用登録出願第2004−002052号
【特許文献3】大韓民国実用新案出願第1998−021810号
【発明の概要】
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためのものであり、本発明の目的は、揮発性有機化合物(VOC)除去性能と難燃性及び印刷性に優れた粘着シート、及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の上記目的は、天然複合鉱物であるトルマリン及び/又は貴陽石と難燃剤とを含むポリ塩化ビニルシート(又はフィルム)を含む粘着シートを提供することによって、達成することができる。
【0010】
また、本発明の別の目的は、揮発性有機化合物(VOC)除去性能と難燃性、印刷性及び抗菌/脱臭性能に優れた粘着シート、及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、ポリ塩化ビニル(PVC)とトルマリン及び/又は貴陽石と難燃剤とを含むポリ塩化ビニル(PVC)シートを含む粘着シートを提供する。
【0012】
本発明に係る上記PVCシートは、ポリ塩化ビニルとトルマリン及び/又は貴陽石と難燃剤とを含むPVC組成物で成形される。
【0013】
また、本発明に係る粘着シートは、上記PVCシートの一側面に抗菌/脱臭層がさらに、形成されていても良い。
【0014】
発明の効果
本発明に係る粘着シートは、揮発性有機化合物(VOC)除去性能と印刷性、難燃性及び抗菌/脱臭性能に優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る粘着シートは、主に広告用印刷シートまたは内装材として有用である。上記の用途のために、デジタル印刷にも適するように、優れた印刷性を有すべきであり、印刷時又は使用時に発生する揮発性有機化合物(VOC)を低減することができなければならなく、また、優れた防炎性又は難燃性を有しなければならない。
【0016】
この理由のため、本発明に係る粘着シートは、優れた印刷性、加工性及び成形性を有するポリ塩化ビニルを基材とし、多量のマイナスイオンと遠赤外線とを放出しながら、揮発性有機化合物(VOC)除去性能に優れたトルマリン及び貴陽石の中から選択される1種又は2種全部を含有しながら、難燃剤を含む組成物でシートを成形する。
【0017】
本発明の組成成分として用いられる上記トルマリンは、地球上に存在する鉱物の中では唯一に永久的な電気特性を有する。そのため、“極性結晶体”とも呼ばれる。この鉱石は、マイナスイオン、微電流及び遠赤外線を発生する。化学成分は鉄、マグネシウム、アルカリ金属などを含むアルミニウムの複雑なホウケイ酸塩であり、粒状、塊状、上下が扁平な菱面体などの多角形状を有する。また、上記トルマリンは明確な分裂を示しておらず、摩擦によって電気が生じ、加熱すれば、両端が正、負に帯電するため、上記のように名づけられた。
【0018】
また、上記貴陽石は、地球上で多量のマイナスイオンと高遠赤外線とを放出する天然鉱石である。約6,500万年前の地殻変動に伴う高温熱水作用によって形成された鉱山に存在する。トルマリンの10倍程度の多量のマイナスイオンを発生し、96%の高い遠赤外線放射率と高い界面活性効果と、放射性元素を含有しない、人体に有益な天然物質である。
【0019】
上記トルマリンと貴陽石は、マイナスイオンと遠赤外線とを放出する。マイナスイオンの放出によって、人体の免疫力増加、人体からの活性酸素除去、人体の血液循環改善、人体の血液浄化、VOC除去のための空気浄化の優れた効果がある。遠赤外線の放出によって、人体の成人病予防、抗菌作用、重金属除去、脱臭、かび繁殖防止、VOCを除去する空気浄化作用に優れている。
【0020】
本発明に係る粘着シートを成形するためのPVC組成物は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、好ましくは、トルマリン及び/又は貴陽石を2.0〜30重量部含む。
【0021】
上記ポリ塩化ビニルは重合度が1000±50のものが好ましく、上記トルマリン及び/又は貴陽石は微細粉末形態が好ましい。
【0022】
本発明で用いられる難燃剤は、主にイメージ印刷時に発生する揮発性有機化合物(VOC)によって引き起こされる発火を遮断するために供給される。例えば、酸化アンチモン(Sb)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、及び水酸化マグネシウム(Mg(OH))の中から1種以上を選択することができ、その組成比はポリ塩化ビニル100重量部に対して、5.0〜50重量部を使用することが好ましい。5.0重量部未満のときは、難燃性が足りなくなり、50重量部を超えるときは、樹脂の溶融粘度が低下されるという加工上の問題点が引き起こされる恐れがある。
【0023】
本発明の基材樹脂である、ポリ塩化ビニルは、一般に、熱と酸素によって容易に変色又は分解されるという問題を有しているので、高温度で長期間加工するのが難しく、耐光性が低いという短所がある。ポリ塩化ビニルの上記短所を克服するために、酸化防止剤を組成成分として添加、使用することが好ましい。酸化防止剤を混合することによって、シート成形のカレンダー工程時、PVCの安全性を改善することができる。本発明で用いられる酸化防止剤は、例えば、アミン系、フェノール系及びホスファイト系などが挙げられ、その組成比はポリ塩化ビニル100重量部に対して、0.1〜1.0重量部が好ましい。上記範囲未満のときは、カレンダー加工時、ポリ塩化ビニルの酸化に伴う分解によってPVC樹脂組成物の黄変現象及びロール粘着が生じ、上記範囲を超える場合には、PVC樹脂組成物のカレンダー加工性が低下するという問題が発生する恐れがある。
【0024】
また、本発明に係る粘着シートを成形するためのPVC樹脂組成物には、その加工性を改善するために滑剤が添加されていてもよい。本発明で使用できる滑剤の例は、モンタンワックス、モンタンエステルワックス、オレフィン系及びアミド系ワックスなどが挙げられる。その組成比はポリ塩化ビニル100重量部に対して、0.1〜2.0重量部が好ましい。上記範囲未満のときは、カレンダー加工時、ロール粘着が生じ、上記範囲を超える場合には、製品使用時、印刷性が低下するという問題が発生する恐れがある。
【0025】
本発明に係るPVC樹脂組成物には印刷時、着色と隠蔽のために顔料が添加されていてもよい。本発明で使用できる顔料の例は、酸化チタンのような無機顔料を含み、その組成比はポリ塩化ビニル100重量部に対して、4.0〜30重量部を使用することが好ましい。上記範囲未満のときは隠蔽力が低くなり、上記範囲を超える場合には、樹脂の溶融粘度が低下するため加工上の問題が発生する恐れがある。
【0026】
本発明に係る粘着シートは、PVC組成物をカレンダー、キャスト又は押出成形(加工)方法のような通常のシート(又はフィルム)成形方法によって製造することができる。本発明の粘着シートは、ポリ塩化ビニル組成物を製造する段階、及び上記ポリ塩化ビニル組成物からポリ塩化ビニルシートを形成する段階、を含む。
【0027】
本発明に係るPVC組成物の混合方式は、カレンダー加工のためにはバンバリーミキサーで組成物をゲル化することが好ましい。押出機を介してゲル化を遂行するときには、上記組成物を含有する化合物を使用することが好ましい。
【0028】
本発明に係る粘着シートは、ポリ塩化ビニルシートの一方の面に形成された抗菌/脱臭層がさらに、形成されていてもよい。上記抗菌/脱臭層は金、銀又は銅のナノ粒子よりなる群から選択される1種以上の金属粉末を含有し、粘着シートの表面層を構成する。上記抗菌/脱臭層は上記金属のナノ粒子をシート上にコーティングすることで形成することができ、殺菌、脱臭機能はもちろん、揮発性有機化合物の排出を低減することができる。さらに、ナノ金属粒子層であることから、表面が滑らかで印刷性を向上させることができる。
【0029】
上記抗菌/脱臭層は金属ナノ粒子を通常の化学気相蒸着法、コーティング法(グラビア、スプレー、ディッピング又はスクリーン)、またはラミネート法によって上記ポリ塩化ビニルシートの一側面に形成することができる。
【0030】
抗菌/脱臭層が形成された本発明に係る粘着シートは、図1を参照すると、表面層としての抗菌/脱臭層1から順に、ポリ塩化ビニルシート2、粘着剤層3、及び剥離紙層4が形成された積層構造からなる。
【0031】
本発明の粘着シートはその厚さは0.1mm〜1.0mm範囲のものを使用することが好ましい。
【実施例】
【0032】
実施例1
まず、粘着シートを成形するための組成物として、ポリ塩化ビニル(韓国、LG、LS−100)100重量部に対して、トルマリン粉末を8重量部、滑剤としてモンタンワックス(米国、Clariant社、WE−40)を0.8重量部、ホスファイト系酸化防止剤(スイス、Ciba社、IrganoxB−561)を0.5重量部、難燃剤として酸化アンチモンを21重量部、及び顔料として酸化チタン(オーストラリア、KerrMcGee Chemical社、CR−834)を6.0重量部、混合してポリ塩化ビニル組成物を得た。
【0033】
上記組成物をバンバリーミキサーで十分にゲル化し、カレンダーロールに投入し、厚さ0.10mm〜0.15mmのポリ塩化ビニルシートを製作した。その後、ポリ塩化ビニルシートの一側に銀ナノ粒子をコーティング法で塗布し、粘着シートを製作した。
【0034】
本実施例で製造された粘着シートの防炎効果、アニオン及び遠赤外線の放出を測定し、その結果を下記表1に示した。また、脱臭及びVOC低減を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0035】
実施例2
実施例1のトルマリン8重量部の代わりに貴陽石粉末を8重量部を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で粘着シートを製作した。その後、防炎効果、アニオン及び遠赤外線の放出を測定し、結果を下記表1に示した。また、脱臭及びVOC低減を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0036】
実施例3
実施例1のトルマリン粉末8重量部代わりにトルマリン粉末を4重量部及び貴陽石粉末 を4重量部使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で粘着シートを製作した。その後、防炎効果、アニオン及び遠赤外線の放出を測定し、その結果を下記表1に示した。また、脱臭及びVOC低減を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0037】
実施例4
ポリ塩化ビニルを銀ナノ粒子で塗布しないことを除いて、実施例1と同様の方法で粘着シートを製作した。その後、防炎効果、アニオン及び遠赤外線の放出を測定し、その結果を表1に示した。また、脱臭及びVOC低減を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0038】
比較例1
トルマリン粉末及び/又は貴陽石粉末を使用しないことを除いて、実施例1と同様の方法で粘着シートを製作した。その後、防炎効果、アニオン及び遠赤外線の放出を測定し、その結果を下記表1に示した。また、脱臭及びVOC低減を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0039】
比較例2
難燃剤を使用しないことを除いて、実施例1と同様の方法で粘着シートを製作した。その後、防炎効果、アニオン及び遠赤外線の放出を測定し、その結果を下記表1に示した。また、脱臭及びVOC低減を測定し、その結果を下記表2に示した。
【表1】

【0040】
上記表1で示されるように、本発明の実施例1〜実施例4に伴う粘着シートは、比較例1〜比較例2と対比して炭化長と炭化面積が少なく、残炎時間と残じん時間も合格基準の以下であることから、優れた防炎効果を示した。
【0041】
また、本発明の実施例1〜実施例4に伴う粘着シートは、比較例1と対比して、多量のアニオンと遠赤外線を放出した。本発明のこれはこれらの粘着シートが人体に有益であることを示唆する。
【表2】

【0042】
上記表2で示されるように、本発明の実施例1〜実施例4に伴う粘着シートは、比較例1〜比較例2と対比して、脱臭能力とVOC低減能力に優れているので、優れた作業性を有していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上述するように、本発明による粘着シートは、天然複合鉱物と難燃剤を含むポリ塩化ビニル組成物と上記組成物で成形したシートとで構成されているので、印刷作業時、従来のポリ塩化ビニル製品と違って、防炎性及びVOC低減効果に優れている。また、本発明による粘着シートは、アニオンと遠赤外線を放出し、その一側面に形成された金属ナノ粒子層をさらに含むことによって、優れた脱臭及び抗菌性を有する。また、金属ナノ粒子層の表面が滑らかであるので、印刷性が向上するだけでなく、設けられた場所でも、環境的な問題を引き起こさない効果がある。さらに、本発明による粘着シートはシンプルな構造と多様な機能を有しているので、コストの面で利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による粘着シートの断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1:抗菌/脱臭層
2:PVCシート
3:粘着剤層
4:剥離紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル(PVC)とトルマリン及び/又は貴陽石と難燃剤とを含むポリ塩化ビニル組成物から成形されたポリ塩化ビニルシートを含んでなることを特徴とする、粘着シート。
【請求項2】
前記ポリ塩化ビニル組成物が、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、トルマリン及び/又は貴陽石を2.0〜30重量部、及び難燃剤を5.0〜50重量部、含んでなる、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記ポリ塩化ビニル組成物が、滑剤、酸化防止剤、及び顔料をさらに含んでなる、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記難燃剤が、酸化アンチモン(Sb)、酸化アルミニウム(Al(OH))、及び水酸化マグネシウム(Mg(OH))よりなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記ポリ塩化ビニル組成物が、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、トルマリン及び/又は貴陽石を2.0〜30重量部、難燃剤を5.0〜50重量部、滑剤を0.1〜2.0重量部、酸化防止剤を0.1〜1.0重量部、及び顔料を4.0〜30重量部、含んでなる、請求項3に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着シートは、前記ポリ塩化ビニルシートの一方の側面に、金、銀、及び銅のナノ粒子よりなる群から選択される1種以上の金属粉末の抗菌/脱臭層がさらに形成されたものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着シートは、前記ポリ塩化ビニルシートの他方の側面に、粘着剤層及び剥離紙が順に積層されたものである、請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記粘着剤層が難燃剤を含有する、請求項7に記載の粘着シート。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−510879(P2008−510879A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536628(P2007−536628)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002692
【国際公開番号】WO2007/035027
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】