説明

粘着シート

【課題】粘着シートの低温粘着性と曲面貼付性を向上させる。
【解決手段】粘着シートは基材シートと粘着剤層とを有する。基材シートに塗工した粘着剤を含む塗液を乾燥させることにより粘着剤層を形成する。エマルジョン型粘着剤に粘着付与剤を所定量添加することにより粘着剤を含む塗液を生成する。前記粘着付与剤として、軟化点が150〜180℃であるロジン系粘着付与樹脂(a)と、軟化点が100℃以下である粘着付与樹脂(b)とを少なくとも含み、かつ前記粘着付与樹脂(a)及び(b)を予め溶融混合又は溶解混合し、前記混合した樹脂を水中に分散させたエマルジョン型粘着付与剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温粘着性および曲面貼付性に優れた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着シートの粘着剤には、有機溶剤型の粘着剤が用いられていた。しかし、塗工時に有機溶剤が揮発することが問題であった。さらに、粘着シートがラベル状になったときにも、有機溶剤がわずかに含まれることが問題であった。
【0003】
一方、エマルジョン型の粘着剤は、有機溶剤型の粘着剤に比べて、環境、安全、衛生の観点において優れている。また、エマルジョン型の粘着剤によれば、高濃度化による高速塗工が可能であり、さらに脱溶剤により低コスト化が可能である。
【0004】
エマルジョン型の粘着剤はこのような優れた特性を有するため、近年では粘着シートの粘着剤としてエマルジョン型の粘着剤が有機溶剤型の粘着剤に代わり用いられるようになった。特に食品関係のラベルにエマルジョン型の粘着剤を使用した粘着シートが好んで用いられるようになった。
【0005】
食品関係に用いられる粘着シートは、冷蔵食品や冷凍食品の表示ラベルに用いられることがある。さらに、冷蔵食品や冷凍食品の表示ラベルにおいては商品の形状が様々であり、角張り部や曲面部へ貼付されることが多い。このような用途に対して、低温における優れた粘着性および曲面貼付性が求められる。
【0006】
さらに、近年の冷蔵食品などの包装はポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムが用いられており、このようなポリオレフィンフィルムに対しても十分な粘着性が求められる。また、被着面が結露などにより濡れることがあるため、耐水粘着力も求められる。
【0007】
このような要請に対して、ガラス転移点を下げることにより低温における粘着性能を向上させた粘着剤が開示されている(特許文献1参照)。さらに、ガラス転移点のピークを広くすることにより曲面貼付性を向上させた粘着剤が開示されている(特許文献2参照)。また、粘着付与剤を添加することによりポリオレフィンフィルムに対して十分な接着性能を発揮可能なエマルジョン型の粘着剤が開示されている(特許文献3参照)。また、耐水粘着力を有する粘着剤も開示されている(特許文献4、5、6参照).
【0008】
しかし、低温における粘着性能、曲面貼付性能、および耐水粘着性に優れた粘着剤は存在しなかった。前述のように、ガラス転移点を下げることにより低温における粘着性能を向上させることは可能であるが、一方で曲面貼付性は悪化する。曲面貼付性は、高軟化点の粘着付与剤を用いることにより向上可能である。しかし、高軟化点の粘着付与剤は、粘着剤全体のガラス転移点を上昇させてしまうため、低温における粘着性能を維持することは困難であった。
【特許文献1】特開2001−214137号公報
【特許文献2】特開2002−155248号公報
【特許文献3】特開2004−143248号公報
【特許文献4】特開平10−330693号公報
【特許文献5】特開2002−371257号公報
【特許文献6】特開2001−64614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明では低温における粘着性能、曲面貼付性、および耐水粘着性に優れた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の粘着シートは、基材シートと、前記基材シートの少なくとも片面に、エマルジョン型粘着剤に対して所定量の粘着付与剤を添加した粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える粘着シートであって、前記粘着付与剤が、軟化点が150〜180℃であるロジン系粘着付与樹脂(a)と、軟化点が100℃以下である粘着付与樹脂(b)とを少なくとも含み、かつ前記粘着付与樹脂(a)及び(b)を予め溶融混合又は溶解混合し、前記混合した樹脂を水中に分散させたエマルジョン型粘着付与剤であることを特徴としている。
【0011】
さらに、前記粘着付与樹脂(a)と(b)との混合割合が、(a)/(b)=40〜85質量部/60〜15質量部であることが好ましい。
【0012】
また、前記エマルジョン型粘着剤がアクリル系エマルジョン型粘着剤であり、前記粘着付与剤の添加量が前記エマルジョン型粘着剤100質量部(固形分換算)に対して4〜16質量部(固形分換算)であることが好ましい。
【0013】
また、前記粘着付与樹脂(b)が、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族石油樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、およびビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体の少なくとも一つであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低温における粘着性能、曲面貼付性、および耐水粘着性に優れた粘着シートを得ることが可能になる。さらに、ポリオレフィンフィルムに対して十分な貼付性を有した粘着シートを得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本発明の粘着シートは、基材シートと粘着剤層によって形成される。粘着シートの粘着剤層側は、剥離シートによって覆われる。粘着シートの使用時には、粘着シートから剥離シートを剥がし、粘着剤層が被着体に貼付される。
【0016】
粘着シートは、基材シートに粘着剤層の粘着剤組成物の溶液を塗工し、乾燥させることによって形成される。粘着剤組成物は、エマルジョン型粘着付与剤をエマルジョン型の粘着基剤に混合することにより調製される。
【0017】
エマルジョン型の粘着基剤としては、アクリル系エマルジョン型粘着剤、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックス等を用いることが可能であり、特にアクリル系エマルジョン型粘着剤を用いることが好ましい。
【0018】
アクリル系エマルジョン型粘着剤は、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキルアルコールとのエステル単量体を重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分として水中に分散されたものである。
【0019】
エステル単量体には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリルなどを1種以上用いることができ、特にアクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルの少なくとも一方が主成分として用いられることが好ましい。
【0020】
さらに、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、前述のエステル単量体と共重合可能なビニル系単量体を共重合させてもよい。なお、(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部中に対して、20質量部以下の割合のビニル系単量体が共重合されることが好ましい。さらには、(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対して、10質量部以下の割合のビニル系単量体が共重合されることが好ましい。
【0021】
なお、共重合可能なビニル系単量体として、スチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のビニル基含有単量体、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有単量体、またはアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピロリドン等の窒素含有単量体が挙げられる。
【0022】
前述のエステル単量体、またはエステル単量体と前述のビニル系単量体は、水を反応の場として、重合開始剤を用いて共重合される。ここで、水は分散媒としても働き、共重合されて得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体が界面活性剤により分散される。(メタ)アクリル酸エステル系重合体が水中に分散されることにより、前述のようにアクリル系エマルジョン型粘着剤が生成される。
【0023】
なお、界面活性剤として、従来公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系の乳化剤および合成高分子乳化剤の中から適宜選択して用いることが出来る。これらの乳化剤の中でも反応性乳化剤を用いることが、耐水粘着力を向上し得る点で好ましい。なお、反応性乳化剤とは、反応性の官能基を分子中に有している乳化剤のことであり、乳化重合の過程でミセル内のポリマーと化学的に結合しうるものである。
【0024】
このような反応性乳化剤としては、例えば一般式(I)〜(VII)で表される構造の化合
物などを挙げることができる。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

なお、上記各式において、R1はアルキル基、R2は水素原子又はメチル基、R3はアルキレン基、Xは水素原子又はスルホン酸塩基を示し、n、m、およびkは1以上の整数であり、かつm+k=3である。
【0025】
このような反応性乳化剤の具体例としては、市販品としてアデカリアソープSE−20N(アニオン系)、アデカリアソープSE−10N(アニオン系)、アデカリアソープNE−10(ノニオン系)、アデカリアソープNE−20(ノニオン系)、アデカリアソープNE−30(ノニオン系)、アデカリアソープNE−40(ノニオン系)、アデカリアソープSDX−730(アニオン系)、アデカリアソープSDX−731(アニオン系)〔以上、旭電化社製〕、エレミノールJS−2(アニオン系)、エレミノールRS−30(アニオン系)〔以上、三洋化成社製〕、ラテムルS−180A(アニオン系)、ラテムルS−180(アニオン系)〔以上、花王社製〕、アクアロンBC−05(アニオン系)、アクアロンBC−10(アニオン系)、アクアロンBC−20(アニオン系)、アクアロンHS−05(アニオン系)、アクアロンHS−10(アニオン系)、アクアロンHS−20(アニオン系)、アクアロンRN−10(ノニオン系)、アクアロンRN−20(ノニオン系)、アクアロンRN−30(ノニオン系)、アクアロンRN−50(ノニオン系)、ニューフロンティアS−510(アニオン系)、ニューフロンティアA−229E(アニオン系)〔以上、第一工業製薬社製〕、フォスフィノールTX(アニオン系)〔東邦化学工業社製〕等を挙げることができる。
【0026】
これらの反応性乳化剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、反応性乳化剤の使用量は、単量体100質量部に対し、通常0.5〜4.5質量部の割合で用いられる。
【0027】
なお、重合開始剤として、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物、又はアゾビスイソブチロニトリル等が用いられる。なお、比較的低温で重合を行なう場合には、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等の還元剤を併用してレドックス重合させることも可能である。
【0028】
なお、前述のエステル単量体、又はエステル単量体とビニル系単量体との共重合に、重合体の分子量を調整するために連鎖移動剤および分子量調整剤の少なくとも一方を用いて、共重合をおこなってもよい。なお、連鎖移動剤として、ドデシルメルカプタンまたはラウリルメルカプタン等が用いられる。分子量調整剤として、α―メチルスチレンダイマー等が用いられる。
【0029】
また、生成されるアクリル系エマルジョン型粘着剤を安定させるために、アクリル系エマルジョン型粘着剤に保護コロイドを添加してもよい。なお、保護コロイドとして、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、カルボキシメチルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等の水溶性の高分子化合物が用いられる。
【0030】
さらに、基材シートに塗工した後に粘着剤組成物の溶液を乾燥させる時の造膜速度を速めるために、アクリル系エマルジョン型粘着剤に高沸点溶剤類等の造膜助剤を添加してもよい。
【0031】
なお、エマルジョン型の粘着基剤として天然ゴムラテックス又は合成ゴムラテックスを用いる場合の、天然ゴムラテックスおよび合成ゴムラテックスの調製方法は、前述のアクリル系エマルジョン型粘着剤の調製方法と同様である。
【0032】
次に、本実施形態で用いるエマルジョン型粘着付与剤について説明する。エマルジョン型粘着付与剤は、軟化点が150〜180℃であるロジン系粘着付与樹脂(a)と、軟化点が100℃以下である粘着付与樹脂(b)とを乳化させることにより調製される。また、前記粘着付与樹脂(a)と(b)とを別々に乳化させる(以下、単独乳化ということがある。)のではなく、両者を溶融混合又は溶解混合し、得られた混合樹脂を乳化させること(以下、混合乳化ということがある。)により、本実施形態のエマルジョン型粘着付与剤は生成される。
【0033】
なお、粘着付与樹脂(a)の軟化点が150℃より低い場合、曲面への貼付性や、ポリオレフィンに対しての十分な粘着力が得られないおそれがある。また、粘着付与樹脂(a)の軟化点を180℃より高くすると分子量の増大化を伴うため、エマルジョン型の粘着基剤との相溶性が損なわれ、結果として粘着剤層のタックや粘着力が低下するおそれがある。
【0034】
また、粘着付与樹脂(b)の軟化点が100℃を超える場合に、低温における十分なタック性を得られないおそれがある。
【0035】
なお、粘着付与樹脂(a)と(b)との混合割合は、(a)/(b)=40〜85質量部/60〜15質量部に調整される。相対的に高軟化点である粘着付与樹脂(a)が40質量部より少ない場合、ポリオレフィンに対して十分な粘着力を得られないおそれがある。また、相対的に低軟化点である粘着付与樹脂(b)が15質量部より少ない場合、低温におけるタック性を得られないおそれがある。
【0036】
粘着付与剤の生成に用いる粘着付与樹脂(a)と(b)について、以下に詳細に説明する。
【0037】
粘着付与樹脂(a)として、重合ロジンをアクリル酸、フマル酸、マレイン酸等の酸類で変性した酸変性重合ロジン、重合ロジンをエステル化した重合ロジンエステル、重合ロジンに酸変性とエステル化を施した酸変性重合ロジンエステル等の重合ロジン誘導体、ロジン誘導体、又は水添ロジン誘導体等が用いられる。
【0038】
なお、本発明の粘着付与樹脂(a)は前述のように、軟化点が高い(150℃〜180℃)ため、分子量が大きい酸変性重合ロジンエステルであることが好ましい。具体的には、重合ロジンをフマル酸およびアクリル酸の少なくとも一方を用いて変性させた変性重合ロジンを多価アルコールでエステル化することにより生成される、フマル酸変性重合ロジンエステル、アクリル酸変性重合ロジンエステル、アクリル酸・フマル酸変性重合ロジンエステルおよびこれらの混合物が、好ましく用いられる。
【0039】
重合ロジンは、ロジン単量体を二量化させることにより生成される。なお、本実施形態における重合ロジンには、ロジン単量体が混在していてもよい。ただし、二量化ロジンが重合ロジンに30質量%以上含まれることが好ましい。さらには、二量化ロジンが重合ロジンに60質量%以上含まれ、且つ130℃以上の軟化点の重合ロジンであることが好ましい。ただし、前述のように適正な軟化点の酸変性重合ロジンエステルを得るために、二量化ロジンとロジン単量体との比率は、50/50〜100/0であることが好ましい。さらには二量化ロジンとロジン単量体との比率は、70/30〜100/0であることが好ましい。
【0040】
なお、重合ロジンを生成するためのロジン単量体の原料ロジンとしては、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジン、不均化ロジン、又は水添ロジン等が用いられる。
【0041】
前述のフマル酸変性ロジンエステルは、重合ロジンのフマル酸変性および多価アルコールによるエステル化によって生成される。
【0042】
まず、フマル酸変性において以下のような工程により重合ロジンにフマル酸変性が施される。前述の重合ロジンを不活性ガス雰囲気において加熱溶解した後に、加熱溶解した重合ロジンに180℃〜200℃のフマル酸が攪拌しながら添加される。フマル酸の添加後、徐々に210℃〜230℃に昇温させて、熟成させることによりフマル酸変性重合ロジンが生成される。なお、重合ロジンの原料ロジンにフマル酸を付加させた後または付加しているときに、水添または不均化を行なってもよい。
【0043】
なお、フマル酸変性において、フマル酸は重合ロジンに滴下または一括添加のいずれであってもよいが、フマル酸の添加量は、全重合ロジン100質量部に対して有効成分で0.5〜10質量部が好ましい。さらには、好ましくは、フマル酸の添加量は、全重合ロジン100質量部に対して有効成分で1〜10質量部であり、より好ましくは、有効成分で2〜10質量部である。
【0044】
次に、エステル化において以下のような工程によりフマル酸変性重合ロジンに対してエステル化が施される。まず、フマル酸変性において生成されたフマル酸変性重合ロジンが200℃程度まで冷却され、多価アルコールが添加される。多価アルコールの添加後に徐々に270℃〜280℃まで昇温させ、脱水縮合反応を行なわせることによりフマル酸変性重合ロジンエステルが生成される。
【0045】
なお、フマル酸変性の場合と同様に、重合ロジンの原料ロジンにフマル酸を付加させた後のフマル酸変性ロジンのエステル化の後またはエステル化をしているときに、水添又は不均化を行ってもよい。
【0046】
なお、エステル化において、フマル酸変性重合ロジンと多価アルコールのエステル化には、ロジン系樹脂と多価アルコールとの従来公知のエステル化法が適用可能である。
【0047】
なお、エステル化に用いる多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、6−ヘキサンジオール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコール、ジペンタエリスリトール等の6価アルコール、又はトリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-イソブチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン等のアミノアルコール等が用いられる。
【0048】
なお、アクリル酸変性重合ロジンエステルまたはマレイン酸変性重合ロジンエステルは、前述のフマル酸変性重合ロジンエステルと同様にして生成される。
【0049】
前記粘着付与樹脂(b)として、テルペン樹脂、ロジン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族石油樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体等の中より少なくとも一つを用いることができ、特にタックと粘着力のバランスが優れ且つ低温時の粘着性能の良好なテルペン樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
なお、テルペン樹脂には、テルペン重合体、β−ピネン重合体、テルペンフェノール樹脂、および芳香族変性テルペン重合体の1種が用いられることが好ましい。ただし、テルペン重合体、β−ピネン重合体、テルペンフェノール樹脂、および芳香族変性テルペン重合体の中の2種以上を含む混合物であってもよい。
【0051】
なお、テルペン重合体とは、α−ピネン、β−ピネン、およびリモネンの少なくとも1つを触媒の存在下においてカチオン重合させることにより生成される重合体とする。ただし、前述のモノテルペンの重合体が好ましいが、ジテルペン等の他のテルペン類をカチオン重合させることにより生成される重合体を粘着付与樹脂として用いることも可能である。なお、β−ピネン重合体とは、テルペン重合体の中で特にβ−ピネンの相当量が多い重合体である。
【0052】
なお、テルペンフェノール樹脂とは、テルペンをフェノール、ホルマリン等と縮合させることにより生成される樹脂である。芳香族変性テルペン重合体とは、テルペンモノマーと芳香族モノマーとを共重合させることにより生成される樹脂、又はテルペンに存在する炭素6員環をベンゼン環変性させた樹脂である。
【0053】
次に粘着付与樹脂(a)と(b)との混合樹脂を乳化させることについて説明する。前述のように、まず粘着付与樹脂(a)と(b)とを溶融混合又は溶解混合し、次に得られた混合樹脂が乳化される。
【0054】
このように溶融混合又は溶解混合して得られる混合樹脂を乳化することにより、一つのエマルジョン粒子内に粘着付与樹脂(a)と(b)とを相溶させることが可能になる。一つのエマルジョン粒子内に粘着付与樹脂(a)のみが存在し、別のエマルジョン粒子内に粘着付与樹脂(b)が存在するエマルジョンと異なり、曲面貼付性と低温粘着性を同時に向上させる粘着付与剤の生成が可能になる。
【0055】
なお、溶融混合とは、粘着付与樹脂(a)と(b)とを加熱溶融しながら混合することである。また、溶解混合とは、粘着付与樹脂(a)と(b)とを溶剤に溶解させて混合溶液として混合することである。このような溶融混合または溶解混合に、従来公知のいかなる方法を適用してもよい。なお、粘着付与樹脂(a)と(b)との混合割合は、(a)/(b)=40〜85質量部/60〜15質量部であることが低温粘着性および曲面貼付性を満足させうる上から好ましい。
【0056】
混合樹脂を乳化させる乳化剤には、従来公知の乳化剤を用いることが可能である。例えば、アニオン系、ノニオン系、カチオン系の乳化剤および合成高分子乳化剤の少なくとも一方を用いることが可能である。ただし、アニオン系およびノニオン系の乳化剤の少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0057】
なお、具体的なアニオン系乳化剤として、ドデジルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類、オレイル硫酸ナトリウム等のアルケニル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、およびポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸2ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩およびアルキルスルホコハク酸エステル塩誘導体、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、またはアルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩誘導体が、用いられる。
【0058】
なお、具体的なノニオン系乳化剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルケニルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマーが、用いられる。
【0059】
なお、合成高分子系乳化剤には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリルアマイド、酢酸ビニル、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、および2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の重合性モノマーを2種以上重合させて生成される重合体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ類で塩形成させて水中に分散または可溶化させた重合体が用いられる。
【0060】
なお、乳化剤の使用量は、溶融混合又は溶解混合した混合樹脂100質量部に対して少なくとも10質量部以下であることが好ましい。10質量部を超える量を使用する場合に耐水性が悪化するおそれがある。なお、混合樹脂100質量部に対して5質量部以下の使用量であることがさらに好ましい。
【0061】
なお、混合樹脂の乳化には、従来公知の乳化法を適用することが可能である。例えば、溶剤型乳化法、無溶剤型乳化法、転相乳化法等が適用される。
【0062】
なお、溶剤型乳化法とは、混合樹脂を有機溶剤に溶解させる第1の工程、乳化剤を水に混合した乳化水を第1の工程で得られた溶液に予備混合することにより粗粒子の水性エマルジョンを生成する第2の工程、粗粒子の水性エマルジョンを微細乳化させる第3の工程、および微細乳化した水性エマルジョンから常圧または減圧下で第1の工程で溶媒として用いた有機溶剤を除去する第4の工程、により乳化を実行する方法である。
【0063】
なお、第1の工程における有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、又はメチレンクロライド等の塩素系炭化水素溶剤等が挙げられる。
【0064】
また、第3の工程における微細乳化は、ミキサー、コロイドミル、高圧乳化機、高圧吐出型乳化機、高剪断型乳化分散機等を用いて実行される。なお、微細乳化により混合樹脂の水性エマルジョンの平均粒子径は0.10〜0.50μmに調整される。平均粒子系が0.10μmより小さい場合に粘度が増すおそれがある。また、平均粒子系が0.50μmを超える場合にエマルジョンの貯蔵安定性および機械安定性を悪化させるおそれがある。
【0065】
なお、無溶剤型乳化法とは、混合樹脂を常圧又は加圧下において溶融させる第1の工程、乳化剤を水に混合した乳化水を第1の工程で溶融させた混合樹脂に予備混合することにより粗粒子の水性エマルジョンを生成する第2の工程、および粗粒子の水性エマルジョンを微細乳化させる第3の工程、により乳化を実行する方法である。
【0066】
なお、転相乳化は、溶剤法と無溶剤法とに従って行うことができる。溶剤型の転相乳化法とは、混合樹脂を有機溶剤に溶解させる第1の工程、第1の工程で得られた溶液を攪拌しながら、乳化剤を水に混合した乳化水を徐々に加えて油中水型エマルジョンを生成する第2の工程、油中水型エマルジョンを水中油型エマルジョンに相反転させる第3の工程、および水中油型エマルジョンから常圧または減圧下で第1の工程で溶媒として用いた有機溶剤を除去する第4の工程、により乳化を実行する方法である。
【0067】
無溶剤型の転相乳化法とは、混合樹脂を常圧又は加圧下において溶融させる第1の工程、溶融させた混合樹脂を攪拌しながら、乳化剤を水に混合した乳化水を徐々に加えて油中水型エマルジョンを生成する第2の工程、および油中水型エマルジョンを水中油型エマルジョンに相反転させる第3の工程、により乳化を実行する方法である。
【0068】
本実施形態の粘着シートの粘着剤層に用いられる粘着剤組成物は、エマルジョン型粘着剤100質量部に対してエマルジョン型粘着付与剤を所定量(4〜50質量部、固形分換算)添加することにより調製される。より具体的には、エマルジョン型粘着剤がアクリル系エマルジョン型粘着剤である場合には、エマルジョン型粘着付与剤の添加量がエマルジョン型粘着剤100質量部(固形分換算)に対して4〜16質量部(固形分換算)であることが好ましい。また、エマルジョン型粘着剤が天然ゴムラテックス又は合成ゴムラテックスである場合には、エマルジョン型粘着付与剤の添加量がエマルジョン型粘着剤100質量部(固形分換算)に対して10〜50質量部(固形分換算)であることが好ましい。
【0069】
基材シートとしては、上質紙、クラフト紙、グラシン紙、アート紙、コート紙、感熱発色紙、防湿加工紙等の紙基材、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ナイロン等の透明あるいは着色されたプラスチックフィルム基材、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属箔基材、金属箔とプラスチックフィルムとを積層した複合シート基材、アルミニウムやシリカ等を蒸着した蒸着箔基材、ポリウレタン製やポリエチレン製の平板状の発泡体基材、又は不織布基材等が適用可能である。その他に粘着シートの機能を確保可能な素材であれば、いかなる素材も適用可能である。
【0070】
前記基材シートの厚さ(又は坪量)は、使用目的や状況に応じて適宜定めればよいが、通常10〜250μm(又はg/m2)、好ましくは25〜100μm(又はg/m2)の範囲である。
【0071】
また、この基材シートとしてプラスチックシートを用いる場合には、その片面又は両面に、その上に設けられる層との接着性を向上させる目的で、所望により、サンドブラストや溶剤処理などによる凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理などの酸化処理などを施すことができる。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0072】
また、基材シートには酸化防止剤、UV吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤等の添加剤が混入されていてもよい。
【0073】
基材シートに前述の粘着剤組成物を含む溶液が塗工されることにより、粘着剤層が形成される。前記粘着剤組成物を含む溶液を基材シートに塗工する方法には、例えばロールコーティング法、ナイフコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法等の従来公知の方法が適用可能である。前記粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。
【0074】
本実施形態の粘着シートにおいては、このようにして形成された粘着剤層の上に、所望により剥離シートを設けることができる。この剥離シートとしては、例えばグラシン紙のような高密度原紙、クレーコート紙、クラフト紙、上質紙などの紙にポリエチレン樹脂などをラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィンなどのプラスチックフィルムに、フッ素樹脂やシリコーン樹脂などの剥離剤を乾燥質量で0.1〜3g/m2 程度になるように塗布し、熱硬化や紫外線硬化などによって剥離層を設けたものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常25〜200μmの範囲である。
【0075】
本実施形態の粘着シートにおいては、低温環境下(5℃)におけるポリエチレン板に対する粘着力(低温粘着力)、ポリエチレン板に対する24時間後の耐水粘着力が、それぞれ5N/25mm以上であり、かつ径15mmのポリエチレン製丸棒に対する浮きが7日後で3mm以下であることが、低温粘着性、耐水粘着性及び曲面貼付性を満足させる上から好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、本実施形態について、以下に実施例を挙げて説明する。なお、本発明はこれらの実施例の構成に何ら限定されるものではない。なお、各例で得られた粘着シートの性能は、以下に示す要領に従って評価した。
【0077】
〔低温粘着力試験〕
粘着シートを、5℃、30%RHの環境下で被着体(ポリエチレン板:日本テストパネル標準試験板)に貼り合わせた。貼り合わせて30分間経過後に、5℃,30%RHの環境下、粘着シートを被着体から180度方向に剥離させるときの180度剥離強度を測定した。試験条件は、JIS(Z0237)と同様とした。なお、本試験で粘着シートの剥離過程でジッピング(断続剥離)を生じるものは安定的な粘着力を有しておらず実用上問題が生じるものである。
【0078】
〔耐水粘着力試験〕
粘着シートを、23℃、50%RHの環境下で被着体(ポリエチレン板:日本テストパネル標準試験板)に貼り合わせた。貼り合わせて24時間経過後に、被着体ごと粘着シートを40℃の温水に24時間浸水させた。温水から取出した直後に、23℃、50%RHの環境下で、粘着シートを被着体から180度方向に剥離させるときの180度剥離強度を測定した。試験条件は、JIS(Z0237)と同様とした。
【0079】
〔曲面貼付性試験〕
25mm幅の粘着シートを、径15mmのポリエチレン製丸棒に、円周の7/10が蔽われるように(粘着シートの長さ:15mm×π×7/10=33mm)、23℃、50%RH環境下にて貼付したのち、23℃、50%RH環境下にて7日間放置後の浮き〔ポリエチレン製丸棒から剥がれた粘着シートの端からの長さ:片側)を測定し、下記の判定基準に従って曲面貼付性を評価した。
○:0〜3mmの浮き 実用上問題の無いレベル
△:3〜6mmの浮き 用途、基材によっては問題の生じるレベル
×:6mm〜全面浮き 問題が生じるレベル
【0080】
〔総合評価〕
上記の各試験結果を参考にし、下記の判定基準に従って評価した。
◎:冷蔵・冷凍食品用の粘着シートとして優れた適性を有する。
○:冷蔵・冷凍食品用の粘着シートとして適性があり実用上問題がないレベル。
△:冷蔵・冷凍食品用の粘着シートとして欠点があり実用上問題があるレベル。
×:冷蔵・冷凍食品用の粘着シートとしては適していない。
【0081】
実施例1
(1)エマルジョン型粘着剤の製造
エマルジョン型粘着剤の製造には、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下漏斗を備えた反応釜を用いた。反応釜において、イオン交換水55質量部を攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃になったときに重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1質量部添加した。また、過硫酸アンモニウム水溶液とは別に、アクリル酸2エチルヘキシル60質量部、アクリル酸ブチル38質量部、およびアクリル酸2質量部と、アニオン系の反応性乳化剤(商品名「ニューフロンティアA−229E」、第一工業製薬社製品)1質量部と、25%アンモニア水適当量と、過硫酸アンモニウム0.4質量部とを、イオン交換水43質量部に加えて、ミキサーで攪拌してプレエマルジョンを得た。反応釜内の温度を80℃に保ちながら、過硫酸アンモニウム水溶液にプレエマルジョンを2時間かけて滴下した。プレエマルジョンの滴下終了後、1時間および2時間経過時に過硫酸を1質量部ずつ添加して重合反応を完結させさせることにより、アクリル系エマルジョン型粘着剤を製造した。
【0082】
(2)エマルジョン型粘着付与剤の製造
エマルジョン型粘着付与剤の製造には、フマル酸変性重合ロジンエステルとβ−ピネン重合体を用い、これらの樹脂を予め混合し、その混合樹脂を乳化させることにより、エマルジョン型粘着付与剤を生成した。まず、フマル酸変性重合ロジンエステルの生成について説明する。
【0083】
フマル酸変性重合ロジンエステルの製造には、攪拌機、冷却器、温度計、および窒素導入管を備えた反応釜を使用した。重合ロジン(商品名「ダイマレックス」、イーストマンケミカル社製品、重合部66.0%、酸価150、軟化点133℃)を、反応釜に入れた。窒素ガスを吹込みながら、重合ロジンを加熱溶解させた。加熱溶解させた後、攪拌させながら温度を190℃に維持した。重合ロジン100質量部に対して、フマル酸2.0質量部を加えた。フマル酸は、滴下漏斗を用いて秤量しながら、溶融させた重合ロジンに加えた。フマル酸を加えた重合ロジンを210℃に昇温して2時間反応させ、フマル酸変性重合ロジンを生成した。
【0084】
生成したフマル酸変性重合ロジンの内温を190℃まで冷却した。フマル酸変性重合ロジン100質量部に対して、ペンタエリスリトール11.8質量部を添加した。ペンタエリスリトールの添加後、徐々に280℃に昇温して、8時間脱水縮合反応させることにより、フマル酸変性重合ロジンエステルを生成した。なお、生成したフマル酸変性重合ロジンエステルの軟化点は166℃であった。
【0085】
次に、粘着付与樹脂の乳化方法について説明する。フマル酸変性重合ロジンエステル(軟化点166℃)50質量部とβ−ピネン重合体(商品名「YSレジンPX300N」、ヤスハラケミカル社製品、軟化点30℃)50質量部とを予め混合した。この混合物100質量部をトルエン100質量部に溶解させてトルエン溶液を調製した。また、アニオン系乳化剤(商品名「ソフタノールMES−9」、日本触媒社製品、有効成分24%)12.5質量部(固形分で3質量部)を116質量部の水によって希釈して、乳化水を調製した。上記トルエン溶液200質量部に、乳化水128.5質量部を添加して、攪拌することによりプレエマルジョンを調製した。プレエマルジョンに高圧乳化機によって300kg/cm2の圧力をかけて微細乳化を行なった。微細乳化したエマルジョンを110mmHGの圧力下で加熱することにより、トルエンを減圧蒸留して除去した。トルエンを除去することにより、エマルジョン型粘着付与剤を生成した。このエマルジョン型粘着付与剤にアンモニア水を添加して、pHを7.0に調整した。さらに、水を適量加えることにより、固形分を50質量%に調整し、エマルジョン型粘着付与剤を得た。
【0086】
(3)粘着剤組成物の調製
上記(1)で得られたアクリル系エマルジョン型粘着剤100質量部(固形分換算)に、上記(2)で得られたエマルジョン型粘着付与剤を5質量部(固形分換算)添加・混合して、粘着剤組成物を調製した。
【0087】
(4)粘着シートの作成
上記(3)で得られた粘着剤組成物を、剥離シート[リンテック社製、商品名「SP−8Kアオ」]の上に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmとなるように塗布した。塗布後、90℃で1分間乾燥させた後、坪量84.9g/m2のキャストコート紙(商品名「エスプリコートTMF(B)」、日本製紙社製品)に貼合わせて粘着シートを作成した。
【0088】
実施例2
実施例1(3)において、エマルジョン型粘着付与剤の添加量を10質量部(固形分換算)に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、さらに粘着シートを作製した。
【0089】
実施例3
実施例1(3)において、エマルジョン型粘着付与剤の添加量を15質量部(固形分換算)に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、さらに粘着シートを作製した。
【0090】
実施例4
実施例1(2)において、フマル酸変性重合ロジンエステル(軟化点166℃)とβ−ピネン重合体(軟化点30℃)との配合比を50/50質量部から80/20質量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、さらに粘着シートを作製した。
【0091】
実施例5
実施例1(2)において、フマル酸変性重合ロジンエステル(軟化点166℃)の代わりに、フマル酸2.0質量部を98%のアクリル酸5.1質量部に変更して製造したアクリル酸変性重合ロジンエステル(軟化点177℃)を用い、βーピネン重合体(軟化点30℃)の代わりに芳香族変性テルペン重合体(商品名「YSレジンTO85」、ヤスハラケミカル社製品、軟化点85℃)を用い、アクリル酸変性重合ロジンエステル(軟化点177℃)と芳香族変性テルペン重合体(軟化点85℃)の配合比を80/20質量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、さらに粘着シートを作製した。
【0092】
比較例1
実施例1(3)において、エマルジョン型粘着付与剤の添加量を3質量部(固形分換算)に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、さらに粘着シートを作製した。
【0093】
比較例2
実施例1(3)において、エマルジョン型粘着付与剤の添加量を20質量部(固形分換算)に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、さらに粘着シートを作製した。
【0094】
比較例3
実施例1(3)において、フマル酸変性重合ロジンエステル(軟化点166℃)とβ−ピネン重合体(軟化点30℃)とを混合乳化したエマルジョン型粘着付与剤の代わりに、フマル酸変性重合ロジンエステル(軟化点166℃)のみを用いて実施例1(2)に準じて単独乳化したエマルジョン型粘着付与剤3質量部(固形分換算)と、β−ピネン重合体(軟化点30℃)のみを用いて実施例1(2)に準じて単独乳化したエマルジョン型粘着付与剤7質量部(固形分換算)を使用した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、さらに粘着シートを作製した。
【0095】
比較例4
実施例1(3)において、フマル酸変性重合ロジンエステル(軟化点166℃)とβ−ピネン重合体(軟化点30℃)とを混合乳化したエマルジョン型粘着付与剤の代わりに、フマル酸変性重合ロジンエステル(軟化点166℃)のみを用いて実施例1(2)に準じて単独乳化したエマルジョン型粘着付与剤12質量部(固形分換算)と、β−ピネン重合体(軟化点30℃)のみを用いて実施例1(2)に準じて単独乳化したエマルジョン型粘着付与剤3質量部(固形分換算)を使用した以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、さらに粘着シートを作製した。
【0096】
比較例5
実施例1(2)において、βーピネン重合体(軟化点30℃)の代わりに、芳香族変性テルペン重合体(商品名「YSレジンTO105」、ヤスハラケミカル社製品、軟化点105℃)を用い、フマル酸変性重合ロジンエステル(軟化点166℃)と芳香族変性テルペン重合体(軟化点105℃)の配合比を80/20質量部とした以外は、実施例3と同様にして粘着剤組成物を調製し、さらに粘着シートを作製した。
【0097】
比較例6
実施例1(2)において、フマル酸変性重合ロジンエステル(軟化点166℃)の代わりに、重合ロジンを重合ロジンと中国産ガムロジンとの混合(混合比50/50質量部)とし、フマル酸2.0質量部を98%のアクリル酸0.6質量部に変更して製造したアクリル酸変性重合ロジンエステル(軟化点132℃)を用い、アクリル酸変性重合ロジンエステル(軟化点132℃)とβーピネン重合体(軟化点30℃)の配合比を80/20質量部とした以外は、実施例3と同様にして粘着剤組成物を調製し、さらに粘着シートを作製した。
【0098】
得られた粘着シートについて、各例で用いた粘着剤組成物の調製における概略条件を表1に示すとともに、粘着シートの評価結果を表2に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
上記表1において、※1は以下の事項を示す。
※1 アクリル系エマルジョン型粘着剤100質量部(固形分換算)に対するエマルジョン型粘着付与剤の質量部(固形分換算)。
【0101】
【表2】

【0102】
上記表2において、※1、※2は以下の事項を示す。
※1 Z:ジッピング
※2 AT:被着体への全面転着
【0103】
上記実施例1〜5の粘着シートは、低温粘着力、耐水粘着力、および曲面貼付性の試験のすべてにおいて優れた特性を有していることが確認され、特に冷蔵・冷凍食品関連の用途に使用される粘着シートとしての適性を十分に備えていることが分かる。
【0104】
一方、比較例1、比較例3、および比較例6の粘着シートでは、十分な曲面貼付性を備えることが出来ないことが確認され、比較例2、比較例4、および比較例5の粘着シートでは、ジッピングを生じ、低温での安定的な粘着力を得ることが出来ないことが確認され、比較例4の粘着シートでは、低い耐水粘着力および被着体への全面転着が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、前記基材シートの少なくとも片面に、エマルジョン型粘着剤に対して所定量の粘着付与剤を添加した粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える粘着シートであって、
前記粘着付与剤が、軟化点が150〜180℃であるロジン系粘着付与樹脂(a)と、軟化点が100℃以下である粘着付与樹脂(b)とを少なくとも含み、かつ前記粘着付与樹脂(a)及び(b)を予め溶融混合又は溶解混合し、前記混合した樹脂を水中に分散させたエマルジョン型粘着付与剤である
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記粘着付与樹脂(a)と(b)との混合割合が、(a)/(b)=40〜85質量部/60〜15質量部であることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記エマルジョン型粘着剤がアクリル系エマルジョン型粘着剤であり、前記粘着付与剤の添加量が前記エマルジョン型粘着剤100質量部(固形分換算)に対して4〜16質量部(固形分換算)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着付与樹脂(b)が、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族石油樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、およびビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の粘着シート。


【公開番号】特開2007−186589(P2007−186589A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5664(P2006−5664)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】