説明

粘着シート

【課題】空気溜まりやブリスターを防止又は除去することができ、かつ、水が接触する環境下で使用された場合にも、粘着力の低下を抑制することのできる粘着シートを提供する。
【解決手段】基材11と粘着剤層12とを備えた粘着シート1であって、粘着剤層12の被着体貼付面には、一群の溝21が形成された領域2が複数設けられており、一の領域2の溝21と他の領域2の溝21とは互いに連通しておらず、粘着シート1には、基材11の表面から粘着剤層12の溝21までを貫通する貫通孔3が複数形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気溜まりやブリスターを防止又は除去することのできる粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
窓等の被着体に貼る装飾フィルム、マーキングフィルム、ガラス飛散防止フィルムなどの寸法の大きい粘着シートにおいては、貼付するときに当該粘着シートに皺が入ったり、被着体と粘着面との間に空気溜まりができたりして、粘着シートの外観を損ねてしまうことがある。また、粘着シートの被着体に対する位置合わせが難しいため、粘着シートの貼り直しが必要になる場合があり、その場合には、粘着シートが破れたり、粘着シートに皺ができたり、粘着性が低下する等の問題が生じることが多い。
【0003】
一方、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂材料は、加熱等によりガスを発生することがあるが、このような樹脂材料からなる被着体に粘着シートを貼付した場合には、被着体から発生するガスによって被着体と粘着シートとの間にブリスター(ふくれ)が生じることとなる。
【0004】
上記のような問題を解決するために、基材シートの端縁部に開口する凹条溝を設けてなる粘着剤層を有する粘着シートが提案されている(特許文献1)。この粘着シートでは、凹条溝は平面視格子状になっており、全て粘着シート端縁部に連通している。かかる粘着シートによれば、粘着面側の空気を凹条溝から粘着シート端縁部に抜くことにより、粘着シートの空気溜まり又はブリスターを防止することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2003/025078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の粘着シートでは、各凹条溝は全て粘着シート端縁部に連通しているため、当該粘着シートが、水の接触する環境下で使用された場合、特に屋外等の被着体に貼付された場合には、雨水等の水が凹条溝を通じて粘着シート全面に入り込み、粘着力の低下を引き起こすという問題がある。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、空気溜まりやブリスターを防止又は除去することができ、かつ、水が接触する環境下で使用された場合にも、粘着力の低下を抑制することのできる粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、基材と粘着剤層とを備えた粘着シートであって、前記粘着剤層の被着体貼付面には、一群の溝が形成された領域が複数設けられており、前記一の領域の溝と他の領域の溝とは互いに連通しておらず、前記粘着シートには、前記基材の表面から前記粘着剤層の溝までを貫通する貫通孔が複数形成されていることを特徴とする粘着シートを提供する(発明1)。
【0009】
なお、本明細書において、「シート」にはフィルムの概念、「フィルム」にはシートの概念が含まれるものとする。また、本明細書において、「基材の表面」とは、基材における粘着剤層と接する面とは反対側の面をいう。
【0010】
上記発明(発明1)によれば、溝および貫通孔を介して空気溜まりやブリスターを防止又は除去することができ、かつ、各領域の溝が互いに連通していないことで、水が接触する環境下で使用された場合にも、粘着力の低下を抑制することができる。
【0011】
上記発明(発明1)において、前記溝の幅は、30〜500μmであり、互いに隣り合う前記溝同士の間隔は、500〜2000μmであることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)において、互いに隣り合う前記領域同士の間隔は、2〜30mmであることが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明1〜3)において、前記領域の平面視形状は、多角形であることが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明1〜4)において、前記領域の一方向の長さ及び当該一方向と直交する方向の長さは、それぞれ25〜120mmであることが好ましい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明1〜5)において、前記領域における前記一群の溝は、平面視格子状になっていることが好ましい(発明6)。
【0016】
上記発明(発明1〜6)において、前記貫通孔の孔径は、0.1〜200μmであることが好ましい(発明7)。
【0017】
上記発明(発明1〜7)において、前記貫通孔の孔密度は、10〜10,000個/100cmであることが好ましい(発明8)。
【0018】
上記発明(発明1〜8)において、前記貫通孔は、レーザ加工により形成されていることが好ましい(発明9)。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る粘着シートによれば、溝および貫通孔を介して空気溜まりやブリスターを防止又は除去することができ、かつ、各領域の溝が互いに連通していないことで、水が接触する環境下で使用された場合にも、粘着力の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【図2】同実施形態に係る粘着シートの裏面図である。
【図3】実施例で形成した貫通孔の配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着シート〕
図1は、本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図であり、図2は、同実施形態に係る粘着シート(剥離材を剥離した状態)の裏面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート1は、基材11と、粘着剤層12と、剥離材13とを積層してなるものである。ただし、剥離材13は、粘着シート1の使用時に剥離されるものである。
【0023】
図1および図2に示すように、粘着シート1における粘着剤層12の被着体貼付面(粘着面)には、一群の溝21が形成された領域2が複数設けられており、一の領域2の溝21と他の領域2の溝21とは互いに連通していない。また、この粘着シート1には、基材11の表面から粘着剤層12の溝21までを貫通する貫通孔3が複数形成されている。
【0024】
溝21の幅Wは、30〜500μmであることが好ましく、特に40〜100μmであることが好ましい。溝21の幅Wが30μm以上であることで、粘着シート1を貼付するときに、粘着剤層12の被着体貼付面と被着体との間の空気が当該溝21を通って排出され易く、空気抜け性に優れたものとなる。一方、溝21の幅Wが500μm以下であることで、粘着剤層12の被着体に対する接着面積を確保し、十分な粘着力を得ることができる。また、貼付後に基材11が溝21の部分で落ち込んで粘着シート1の外観を損なうことを防止することができる。
【0025】
互いに隣り合う2本の溝21同士によって形成される接着領域の幅(以下「接着幅」と称する)Wは、500〜2000μmであることが好ましく、特に520〜700μmであることが好ましい。接着幅Wが500μm以上であることで、粘着剤層12の接着面積を確保し、十分な粘着力を得ることができる。一方、接着幅Wが2000μm以下であることで、溝21の形成比率を確保し、当該溝21による空気抜け効果を十分に得ることができる。
【0026】
溝21の深さDは、5〜50μmであることが好ましく、特に10〜23μmであることが好ましい。溝21の深さDが5μm以上であることで、粘着シート1を貼付するときに、粘着剤層12の被着体貼付面と被着体との間の空気が当該溝21を通って排出され易く、空気抜け性に優れたものとなる。一方、溝21の深さDが50μm以下であることで、貼付後に基材11が溝21の部分で落ち込んで粘着シート1の外観を損なうことを防止することができる。
【0027】
溝21の断面形状(側面視形状)は、特に限定されることなく、例えば、矩形であってもよいし、V字状であってもよいし、U字状であってもよい。
【0028】
本実施形態では、上記一群の溝21は領域2を構成する。図2に示すように、本実施形態における領域2は、平面視四角形(正方形)となっているが、これに限定されるものではなく、三角形、六角形、八角形等の任意の多角形であてもよいし、円形状、楕円形状、∞状等の任意の形状であってもよい。ただし、領域2の配列および領域2の相互間の距離を考慮すると、多角形であることが好ましい。
【0029】
領域2が四角形の場合、一方向(X軸方向)の長さL及び当該一方向と直交する方向(Y軸方向)の長さLは、それぞれ25〜120mmであることが好ましく、特に50〜90mmであることが好ましい。L及びLが25mm未満であると、貫通孔3がない領域2が発生するおそれがある。一方、L及びLが120mmを超えると、粘着シート1の貼付後、粘着シート1の端部の領域2の溝21に水が浸入したときに、その浸入面積が比較的大きくなり、粘着シート1全体としての粘着力が低下するおそれがある。
【0030】
互いに隣り合う領域2によって形成される障壁の幅(以下「障壁幅」と称する)Wは、2〜30mmであることが好ましく、特に5〜20mmであることが好ましい。障壁幅Wが2mm以上であることで、粘着シート1の貼付後、一の領域2の溝21に水が浸入したときでも、当該一の領域2からその隣の領域2に水が移行することを確実に防止し、水が粘着シート1の全面に行き渡って粘着力が低下することを抑制することができる。一方、障壁幅Wが30mm以下であることで、粘着シート1を貼付するときに、粘着剤層12の粘着面と被着体との間の空気を一の領域2からその隣の領域2に逃すことができ、これにより、後述する貫通孔3による空気抜け効果と相俟って、粘着シート1の貼付時における空気溜まりを効果的に防止又は除去することができる。
【0031】
領域2に形成された一群の溝21は、本実施形態では、平面視格子状になっているが、これに限定されることなく、例えば、任意の一方向(例えばX軸方向、Y軸方向等)に複数平行に延びた直線状であってもよいし、任意の形状の曲線状であってもよいし、任意に枝分かれした形状等であってもよい。ただし、後述する貫通孔3を溝21の位置に合わせて形成することを考慮すると、一群の溝21は、規則的に配列していることが好ましく、特に平面視格子状になっていることが好ましい。一群の溝21が平面視格子状になっていると、粘着シート1を貼付するときに、粘着剤層12の粘着面と被着体との間の空気が特に抜け易くなるという利点がある。
【0032】
なお、粘着剤層12の溝21は、粘着シート1の端部にて開口していないことが好ましいが、開口していてもよい。溝21が粘着シート1の端部にて開口していなければ、粘着シート1の貼付後に溝21への水の浸入を効果的に防止することができる。また、溝21が粘着シート1の端部にて開口しており、粘着シート1の貼付後に開口部から溝21に水が浸入したとしても、その水は当該溝21の領域2のみで留まり、他の領域2に水が移行することはないため、浸入した水が粘着シート1の全面に行き渡って粘着力が低下することは抑制される。
【0033】
貫通孔3は、基材11の表面から粘着剤層12の溝21までを貫通しているが、全ての貫通孔3が溝21と通じている必要はなく、一部の貫通孔3は、基材11の表面から溝21と溝21との間の被着体貼付面、または領域2と領域2との間の被着体貼付面と通じていてもよい。また、貫通孔3は、完全に各溝21の中央に位置する必要はなく、少なくとも溝21の端部と連通していれば足りる。貫通孔3の配列は、直線、曲線等任意の形状をとりうる。また、配列同士は格子模様のように交差してもよく、平行直線やジグザグ状であってもよい。
【0034】
貫通孔3の孔径は、基材11および粘着剤層12を通して(基材11および粘着剤層12の厚さ方向の全ての位置において)、0.1〜200μmであることが好ましく、特に0.5〜150μmであることが好ましい。貫通孔3の孔径が0.1μm以上であることで、貫通孔3を介して空気又はガスが抜け易いものとなる。一方、貫通孔3の孔径が200μm以下であることで、貫通孔3が目立ち難く、粘着シートの外観を損なうことを防止することができ、また、粘着シート1の機械強度を維持することも可能である。特に、至近距離でも貫通孔3が見えないことが要求される場合には、基材11の表面における孔径を0.1〜42μm、特に0.1〜40μmとすることが好ましい。
【0035】
貫通孔3の孔径は、粘着シート1の厚さ方向に一定であってもよいし、粘着シート1の厚さ方向に変化していてもよいが、粘着剤層12の被着体貼付面から基材11の表面にかけて漸次小さくなるのが好ましい。このように貫通孔3の孔径が変化することにより、粘着シート1の外観を良好に保つだけでなく、貼付後に貫通孔3から水が浸入することを防ぐことができる。
【0036】
貫通孔3の孔密度は、10〜10,000個/100cmであることが好ましく、特に50〜5,000個/100cmであることが好ましい。貫通孔3の孔密度が10個/100cm以上であることで、貫通孔3が領域2の溝21と通じ、空気又はガスが抜け易いものとなる。一方、貫通孔3の孔密度が50,000個/100cm以下であることで、粘着シート1の引張強度や引裂強度が低下することを防止することができる。本実施形態では、粘着シート1の貼付時に、貫通孔3からだけではなく、粘着剤層12の溝21からも空気を抜くことができるため、貫通孔3のみから空気を抜く場合と比較して、貫通孔3の孔密度を小さく、すなわち貫通孔3の数を少なくすることができ、それによって粘着シート1の生産性を向上させることができる。
【0037】
貫通孔3は、レーザ加工により形成するのが好ましい。レーザ加工によれば、上記の条件を満たす貫通孔を容易に形成することができる。ただし、貫通孔3の形成方法はこれに限定されるものではなく、例えば、ウォータージェット、マイクロドリル、精密プレス、熱針、溶孔等によって形成してもよい。
【0038】
レーザ加工に利用するレーザの種類は特に限定されるものではなく、例えば、炭酸ガス(CO)レーザ、TEA−COレーザ、YAGレーザ、UV−YAGレーザ、エキシマレーザ、半導体レーザ、YVOレーザ、YLFレーザ、フェムト秒レーザ等を利用することができる。
【0039】
なお、本実施形態に係る粘着シート1における貫通孔3は、基材11の表面から、粘着剤層12の溝21までを貫通するものであるが、剥離材13をも貫通していてもよい。
【0040】
基材11の材料としては、貫通孔3が形成され得る材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂フィルム、金属フィルム、金属を蒸着させた樹脂フィルム、紙、それらの積層体等が挙げられる。基材11が樹脂フィルムからなる場合、基材11は不透明であってもよいし、透明であってもよいが、一般的に基材11が不透明の方が、貫通孔3が目立ち難い。
【0041】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、アクリルウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ABS樹脂、アイオノマー樹脂、各種熱可塑性エラストマーなどの樹脂からなるフィルム、発泡フィルム、またはそれらの積層フィルム、合成紙等を使用することができる。樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよいし、無延伸フィルムであってもよく、工程材料を用いてキャスティング法等で形成したものを使用してもよい。また、紙としては、例えば、上質紙、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等を使用することができる。
【0042】
なお、上記樹脂フィルムは、無機フィラー、有機フィラー、紫外線吸収剤等の各種添加剤を含んだものであってもよい。また、貫通孔3の形状に悪影響を与えない限り、上記樹脂フィルムの表面には、例えば、印刷、印字、塗料の塗布、転写シートからの転写、蒸着、スパッタリング等の方法による装飾層が形成されていてもよいし、かかる装飾層を形成するための易接着コート、あるいはグロス調整用コート等のコート層が形成されていてもよいし、ハードコート、汚染防止コート、表面粗さおよび鏡面光沢度調整用コート、耐候性を付与するためのコート等のコート層が形成されていてもよい。また、それら装飾層またはコート層は、上記材料の全面に形成されていてもよいし、部分的に形成されていてもよい。
【0043】
上記の中でも、ポリ塩化ビニルからなるフィルムは、曲面追従性に優れる点から好ましい。また、装飾層を印刷によって形成する場合には、ポリ塩化ビニルからなるフィルムは、耐候性およびインキの定着性に優れる点からも好ましい。
【0044】
基材11の厚さは、通常は1〜500μm、好ましくは25〜200μm程度であるが、粘着シート1の用途に応じて適宜変更することができる。
【0045】
粘着剤層12を構成する粘着剤の種類としては、溝21および貫通孔3が形成され得るものであれば特に限定されるものではなく、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ゴム系、シリコーン系等のいずれであってもよい。また、粘着剤はエマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。
【0046】
粘着剤層12の厚さは、通常は1〜300μm、好ましくは10〜50μm程度であるが、粘着シート1の用途に応じて適宜変更することができる。
【0047】
剥離材13の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
【0048】
剥離材13の厚さは、通常10〜250μm程度であり、好ましくは20〜200μm程度である。また、剥離材23における剥離剤の厚さは、通常0.05〜5μmであり、好ましくは0.1〜3μmである。
【0049】
なお、本実施形態に係る粘着シート1は剥離材13を備えたものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、剥離材13はなくてもよい。さらに、本実施形態に係る粘着シート1の大きさ、形状等は特に限定されるものではない。例えば、粘着シート1は、基材11および粘着剤層12のみからなるテープ状のもの(粘着テープ)であって、ロール状に巻き取られて巻取体となり得るものであってもよい。
【0050】
〔粘着シートの製造〕
上記実施形態に係る粘着シート1における粘着剤層12に溝を形成する方法としては、例えば、
(1)基材11の一方の面に、櫛形ブレード等を用いて、溝21を有する粘着剤層12を直接設ける方法、
(2)基材11の一方の面に、平坦な粘着剤層12を直接設けたのち、その粘着剤層12を、凹凸を有するエンボスロールと接触させて、粘着剤層12に溝21を転写する方法、
(3)剥離材13用の基材にあらかじめ凹凸を設けておき、その凹凸面に剥離処理を施したのち粘着剤層12を形成し、当該粘着剤層12に溝21を転写する方法、
(4)剥離材13の剥離処理面にあらかじめ凹凸を形成しておき、その剥離処理面に粘着剤層12を形成し、当該粘着剤層12に溝21を転写する方法(図1参照)
などを採用することができるが、これらの中でも、操作性等の面から(4)の方法が好適である。
以下、(4)の方法を利用した粘着シート1の製造方法を説明する。
【0051】
最初に、粘着剤層12に形成すべき溝21及び領域2のパターンを有するエンボスロールを用意し、当該エンボスロールを剥離材13の剥離処理面に圧接し、剥離材13の剥離処理面に上記パターンを転写する。
【0052】
次いで、上記パターンが転写された剥離材13の剥離処理面に、粘着剤層12を形成し、当該粘着剤層12に溝21及び領域2のパターンを転写する。粘着剤層12を形成するには、粘着剤層12を構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって剥離材13の剥離処理面に塗布して乾燥させればよい。
【0053】
次に、粘着剤層12の表面に基材11を圧着し、基材11と粘着剤層12と剥離材13とからなる積層体とする。
【0054】
そして、基材11の表面から粘着剤層12の溝21までを貫通する貫通孔3を形成する。上述したように、この貫通孔3の形成はレーザ加工によって行うことが好ましい。レーザ光は、基材11の表面側から照射してもよいし、剥離材13側から照射してもよいし、剥離材13を剥離した後、露出した粘着剤層12に直接照射してもよい。また、レーザ加工を行う際に、レーザ光が粘着剤層12の溝21の位置に照射されるように、粘着シート1を平面方向に適宜移動させたり、傾けたりしてもよい。
【0055】
なお、上記製造方法では、粘着剤層12を剥離材13上に塗布形成し、形成された粘着剤層12と基材11とを貼り合わせたが、本発明はこれに限定されるものではなく、粘着剤層12を基材11上に塗布形成した後、粘着剤層12に剥離材13の剥離処理面を圧着してもよい。
【0056】
〔粘着シートの使用〕
粘着シート1を被着体に貼付する際には、まず、剥離材13を粘着剤層12から剥離する。
【0057】
次に、露出した粘着剤層12の粘着面を被着体に密着させるようにして、粘着シート1を一端部から徐々に被着体に対して押圧する。このとき、被着体と粘着剤層12の粘着面との間の空気は、粘着剤層12の溝21を通って、粘着剤層12が未だ被着体に密着していない方向に排出される。さらに、粘着剤層12の溝21に存在する空気は、貫通孔3を介して基材11の表面の外側にも抜ける。そのため、被着体と粘着剤層12の粘着面との間に空気が巻き込まれ難く、空気溜まりができることが防止される。仮に空気が巻き込まれて空気溜まりができたとしても、その空気溜まり部又は空気溜まり部を含んだ空気溜まり部周辺部を再圧着することにより、空気が貫通孔3から基材11の表面の外側に抜けて、空気溜まりが消失する。
【0058】
また、粘着シート1を被着体に貼付した後に、被着体からガスが発生したとしても、そのガスは粘着シート1に形成された貫通孔3から基材11の表面の外側に抜けるため、粘着シート1にブリスターが生じることが防止される。
【0059】
ここで、粘着シート1を被着体に貼付した後に、一の領域2の溝21に水が浸入したときでも、当該一の領域2の溝21と他の領域2の溝21とは互いに連通していないため、当該一の領域2から他の領域2に水が移行することが防止され、これにより、水が粘着シート1の全面に行き渡って粘着力が低下することが抑制される。
【実施例】
【0060】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0061】
〔実施例1〕
図1(断面図)および図2(平面図)に示すような格子状の溝および正方形の領域のパターンを有するエンボスロールを用意した。上質紙の片面をポリエチレン樹脂でラミネートし、そのラミネート面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離材(リンテック社製,KP−64シロ,厚さ:80μm)の剥離処理面に、上記エンボスロールを圧接し、剥離材の剥離処理面に上記パターンを転写した。
【0062】
次いで、上記パターンが転写された剥離材の剥離処理面に、アクリル系溶剤型粘着剤(リンテック社製,PA−10)の塗布剤を乾燥後の厚さが26μmになるようにナイフコーターによって塗布し、90℃で1分間乾燥させた。このようにして形成した粘着剤層に、透明なポリエステルフィルムの基材(東レ社製,厚さ:50μm)を圧着し、3層構造の積層体を得た。
【0063】
得られた粘着剤層には、剥離材に形成された溝及び領域のパターンが転写された。この粘着剤層に形成された溝の幅Wは60μm、接着幅Wは550μm、溝の深さDは18μmであった。また、一の領域の大きさL×Lは70mm×70mm、障壁幅Wは15mmであった。
【0064】
次に、基材表面側から上記積層体に対してCOレーザ光を照射して、図3に示すような配列で貫通孔を形成し、これを粘着シートとした。具体的には、平面視にて、孔数26個の直線状に並んだ単位を粘着シートの幅方向にジグザグ状に形成し、それを一群として、粘着シートの長さ方向に当該群を互いに重ならないように繰り返し形成した。直線状に並んだ単位の長さは50mm、当該単位における孔間距離は2mmであり、群の長さ方向端部における孔間距離(粘着シート幅方向の距離)は3mmおよび10mm間隔のものから、3mmおよび100mm間隔のものまで10通り(3mm/10mm,20mm,30mm,40mm,50mm,60mm,70mm,80mm,90mm,100mm)の粘着シートを作製した。なお、直線状に並んだ単位の粘着シート長さ方向に対する傾斜角θは、7°であった。
【0065】
形成した貫通孔の基材表面における孔径は約50μm、粘着面における孔径は約30μmであった。貫通孔の孔径は、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製,S−2360N形)を使用して測定した。なお、レーザー加工により、基材および粘着剤層には孔が貫通したが、剥離材は貫通しなかった。
【0066】
〔比較例1〕
図2において格子状の溝のパターンを全面に有し、領域間の障壁を設けない(W=0mm)エンボスロールを用意した。上質紙の片面をポリエチレン樹脂でラミネートし、そのラミネート面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離材(リンテック社製,KP−64シロ,厚さ:80μm)の剥離処理面に、上記エンボスロールを圧接し、剥離材13の剥離処理面に上記パターンを転写した。
【0067】
得られた剥離材を使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。この粘着シートの粘着剤層に形成された溝の幅Wは60μm、接着幅Wは550μm、溝の深さDは18μmであり、その溝が粘着剤層の被着体貼付面の全面に形成された。
【0068】
〔比較例2〕
上質紙の片面をポリエチレン樹脂でラミネートし、そのラミネート面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離材(リンテック社製,KP−64シロ,厚さ:80μm)を、剥離処理面が平滑なまま使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。したがって、この粘着シートは、貫通孔は有するが、粘着剤層に溝は形成されなかった。
【0069】
〔比較例3〕
実施例1で得られた3層構造の積層体に対してレーザ光を照射することなく、当該積層体をそのまま粘着シートとした。
【0070】
〔試験例〕
(1)空気抜け性試験
実施例および比較例で得られた粘着シートについて、以下のようにして空気抜け性試験を行った。結果を表1に示す。
【0071】
剥離材を剥した粘着シート(大きさ:50mm×50mm)を、直径15mm、最大深さ1mmの部分球面形の窪み(凹部)を有する70mm×70mmのメラミン塗装板に貼付し(窪みと粘着シートとの間には空気溜りが発生し得る)、その粘着シートを圧着し(場合に応じてスキージを使用)、空気溜まりができるか否か、または空気溜まりが除去できるか否かを確認した。その結果、スキージで圧着しなくても粘着シートがメラミン塗装版の凹部に追従し、空気溜まりが発生しなかったものを◎、スキージでの圧着により粘着シートがメラミン塗装板の凹部に追従して空気溜まりが除去されたものを○、スキージで数回圧着することにより粘着シートがメラミン塗装板の凹部に追従して空気溜まりが除去されたものを△、スキージで圧着しても粘着シートがメラミン塗装板の凹部に追従せずに空気溜まりが除去されなかったもの(空気溜まりが小さくても残存したものを含む)を×で表す。
【0072】
(2)耐水粘着力試験
実施例および比較例で得られた粘着シート(実施例1および比較例1,2の粘着シートにおいては孔間距離10mmのものに限る)について、以下のようにして耐水粘着力試験を行った。結果を表1に示す。
【0073】
粘着シート作製後、23℃、50%RHの環境下で、25mm×300mmに粘着シートをカットし、この試験片を被着体であるステンレススチール板(SUS360)に貼付した。これを23℃、50%RHの環境下で1日静置した後、40℃の温水に1週間浸漬し、そして23℃、50%RHの環境下に取り出し、その直後の状態を試験サンプル1とした。また、比較として、温水に浸漬せずに、23℃、50%RHの環境下に1週間静置したものを試験サンプル2とした。
【0074】
上記試験サンプル1,2について、JIS Z0237(2000)に基づき、180°引き剥がし法(引張速度300m/分)による粘着力を測定した。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から分かるように、実施例1で得られた粘着シートは、空気抜け性および耐水粘着力に優れるものであった。これに対し、比較例1で得られた粘着シートは、空気抜け性には優れるが、耐水粘着力には劣るものであった。また、比較例2及び3で得られた粘着シートは、耐水粘着力には問題なかったが、空気抜け性には劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の粘着シートは、一般的に粘着シートに空気溜まりやブリスターが生じやすい場合、例えば粘着シートの面積が大きい場合や、被着体からガスが発生する場合等であって、特に貼付後に水の接触する環境下でも良好な粘着力が要求される場合に好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
1…粘着シート
11…基材
12…粘着剤層
13…剥離材
2…領域
21…溝
3…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と粘着剤層とを備えた粘着シートであって、
前記粘着剤層の被着体貼付面には、一群の溝が形成された領域が複数設けられており、
前記一の領域の溝と他の領域の溝とは互いに連通しておらず、
前記粘着シートには、前記基材の表面から前記粘着剤層の溝までを貫通する貫通孔が複数形成されている
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記溝の幅は、30〜500μmであり、
互いに隣り合う前記溝同士の間隔は、500〜2000μmである
ことを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
互いに隣り合う前記領域同士の間隔は、2〜30mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記領域の平面視形状は、多角形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記領域の一方向の長さ及び当該一方向と直交する方向の長さは、それぞれ25〜120mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記領域における前記一群の溝は、平面視格子状になっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記貫通孔の孔径は、0.1〜200μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記貫通孔の孔密度は、10〜10,000個/100cmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記貫通孔は、レーザ加工により形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−82260(P2012−82260A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227577(P2010−227577)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】