説明

粘着テープおよび粘着テープの製造方法

【課題】貼り付け時の作業性と接着信頼性を両立し得る粘着テープを提供する。
【解決手段】粘着テープ10は、粘着剤層12と、粘着剤層12の粘着面上に形成された撥水剤層14と、を備える。撥水剤層14は、水との接触角が140°以上の撥水性を示す撥水剤を用いて形成されている。撥水剤層14は、疎水性微粒子を有してもよい。疎水性微粒子は、疎水性微細シリカ化合物を含んでもよい。疎水性微細シリカ化合物は、ヘキサメチルジシラザンで改質されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの分野で部材間の接着に粘着テープが用いられている。例えば、大型フラットテレビ、家庭電化製品、住設部材等の筐体や収容されている部品に粘着テープが用いられている。粘着テープは、各部品を固定するという観点からは、その粘着力が高いことが望ましい。一方、粘着力が高い場合、部品に一度貼り付けられた粘着テープを剥がして部品の位置を修正することが困難となる。
【0003】
そこで、被着体に当接した状態では粘着性がほとんど現れずに貼付作業時の位置調整が容易であり、被着体に対して押しつけると高い粘着力を発揮し得る両面粘着テープが考案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−17827号公報
【特許文献2】特開平11−29749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粘着テープの位置調整を容易にするためには、粘着力をある程度抑えた粘着剤層を用いることが一般的であるため、貼り付け後にある程度時間が経過した段階での接着力については、更なる改善の余地があった。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、貼り付け時の作業性と接着信頼性を両立し得る粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の粘着テープは、粘着剤層と、粘着剤層の粘着面上に形成された撥水剤層と、を備える。撥水剤層は、水との接触角が140°以上の撥水性を示す撥水剤を用いて形成されている。
【0008】
この態様によると、粘着テープは、粘着面を被着体に貼り付けた直後の接着力が、引き剥がしが比較的容易な大きさに抑えられている。一方、粘着テープは、時間の経過に伴い被着体との接着力が上昇し、十分な接着力を発揮する。
【0009】
撥水剤層は、疎水性微粒子を有してもよい。疎水性微粒子は、疎水性微細シリカ化合物を含んでもよい。疎水性微細シリカ化合物は、ヘキサメチルジシラザンで改質されていてもよい。粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを含有していてもよい。
【0010】
本発明の別の態様は、粘着テープの製造方法である。この方法は、粘着剤層を準備する工程と、粘着剤層の粘着面上に、水との接触角が140°以上の撥水性を示す撥水剤を用いて撥水剤層を形成する工程と、を含む。
【0011】
この態様によると、粘着面を被着体に貼り付けた直後の接着力が、引き剥がしが比較的容易な大きさに抑えられており、また、時間の経過に伴い被着体との接着力が上昇し、十分な接着力を発揮する粘着テープを簡便に作製することができる。
【0012】
撥水剤は、疎水性微粒子を有してもよい。疎水性微粒子は、疎水性微細シリカ化合物を含んでもよい。疎水性微細シリカ化合物は、ヘキサメチルジシラザンで改質されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、貼り付け時の作業性と接着信頼性を両立し得る粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係る粘着テープの一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面や表を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0016】
本実施の形態に係る粘着テープは、粘着剤や支持材の主たる組成物に、柔軟で耐久性に優れた材料が用いられることで、温度変化に伴う被着体の歪みや変形に追従し、強い接着力と高耐久性、高耐熱性を発揮することができる。なお、本実施の形態に係る粘着テープは、その形状が特に限定されるものではない。以下では、粘着剤層の片側の粘着面上に撥水剤層が形成されているテープ状の粘着テープについて説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る粘着テープの一部断面図である。図1に示すように、粘着テープ10は、粘着剤層12と、粘着剤層12の一方の粘着面上に形成された撥水剤層14とを備える。粘着剤層12は、粘着性組成物16と、粘着性組成物16に含有されている中空無機微粒子18と、粘着性組成物16の内部に形成されている気泡20とを有する。撥水剤層14は、水との接触角が140°以上の撥水性を示す撥水剤を用いて形成されている。本実施の形態に係る粘着テープ10は、粘着面を被着体に貼り付けた直後の接着力が、引き剥がしが比較的容易な大きさに抑えられている。一方、粘着テープ10は、時間の経過に伴い被着体との接着力が上昇し、十分な接着力を発揮する。
【0018】
なお、粘着テープは、図1に示すような片面のみに撥水剤層が形成されている形態だけではなく、両面に撥水剤層が形成されている形態であってもよい。その際、感圧接着面を構成する粘着剤層12は、両面とも同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよい。このような粘着テープは、一枚のセパレータ(はく離ライナー)のみにより感圧接着面や撥水面が保護されたシングルセパレータタイプであってもよく、二枚のセパレータにより両面の感圧接着面や撥水面が保護された構成を有するダブルセパレータタイプであってもよい。
【0019】
また、粘着テープは、その内部や片側の面上に基材を有していてもよい。この場合、基材は、粘着剤層12に含まれる粘着性組成物16と同様の組成物からなっていてもよく、中空無機微粒子18や気泡20が適宜含まれていてもよい。また、粘着テープ10は、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。なお、粘着テープ10をロール状に巻回された形態にする場合、例えば、粘着剤層12を、セパレータや基材の背面側に形成されたはく離処理層により保護した状態でロール状に巻回することにより作製ができる。
【0020】
なお、粘着テープ10は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0021】
[粘着剤層]
(ベースポリマー)
粘着剤層12に含まれる粘着性組成物16は、ベースポリマーが含まれている。ベースポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。ベースポリマーとしては、公知のアクリル系感圧性接着剤におけるベースポリマーを好適に用いることができる。アクリル系感圧性接着剤では、通常、ベースポリマーとして、アクリル系ポリマー[特に、(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマー]を含有している。該アクリル系ポリマーにおいて、(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が組み合わせられて用いられていてもよい。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを好適に用いることができる。前記アクリル系ポリマーにおける(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル、更に好ましくは(メタ)アクリル酸C2-10アルキルエステル]などが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルをいい、「(メタ)・・・」は全て同様の意味である。
【0022】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0023】
なお、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル系ポリマーの単量体主成分として用いられているので、(メタ)アクリル酸エステル[特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル]の割合は、例えば、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して60重量%以上(好ましくは80重量%以上)であることが好ましい。これにより、粘着剤として用いるために別途粘着処理を施す必要がなくなるため、比較的簡便な方法で粘着剤を製造することが可能となり、生産効率が向上する。
【0024】
前記アクリル系ポリマーでは、モノマー成分として、極性基含有単量体や多官能性単量体などの各種の共重合性単量体が用いられていてもよい。モノマー成分として、共重合性単量体を用いることにより、例えば、被着体への接着力を向上させたり、粘着剤(粘着剤層)の凝集力を高めたりすることができる。共重合性単量体は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
前述の極性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系単量体などが挙げられる。極性基含有単量体としては、アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体又はその無水物が好適である。
【0026】
極性基含有単量体の使用量としては、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して30重量%以下(例えば、1〜30重量%)であり、好ましくは3〜20重量%である。極性基含有単量体の使用量が、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して30重量%を超えると、例えば、アクリル系感圧性接着剤の凝集力が高くなりすぎ、感圧接着性が低下するおそれがある。なお、極性基含有単量体の使用量が少なすぎると(例えば、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して1重量%未満であると)、例えば、アクリル系感圧性接着剤の凝集力が低下し、高いせん断力が得られなくなる。アクリル系感圧性接着剤の凝集力を調整するために、多官能性単量体を用いることも可能である。
【0027】
前述の多官能性単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
多官能性単量体の使用量としては、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して2重量%以下(例えば、0.01〜2重量%)であり、好ましくは0.02〜1重量%である。多官能性単量体の使用量が、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して2重量%を超えると、例えば、アクリル系感圧性接着剤の凝集力が高くなりすぎ、感圧接着性が低下するおそれがある。なお、多官能性単量体の使用量が少なすぎると(例えば、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して0.01重量%未満であると)、例えば、アクリル系感圧性接着剤の凝集力が低下するおそれがある。
【0029】
また、極性基含有単量体や多官能性単量体以外の共重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体;フッ素原子含有(メタ)アクリレート;ケイ素原子含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
(重合開始剤)
上述のアクリル系ポリマーは、公知あるいは慣用の重合方法により調整することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、光重合法などが挙げられる。本実施の形態に係る粘着剤層12の製造では、作業性や安定した気泡構造を得る観点から、ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーの調製に際して、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤を用いた熱や活性エネルギー線による硬化反応を利用することが好ましい。すなわち、本実施の形態に係る粘着性組成物16には、熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤が含まれている。
【0031】
このように、粘着性組成物16に重合開始剤(熱重合開始剤や光重合開始剤など)が含まれていると、粘着性組成物16は熱や活性エネルギー線により硬化が可能となる。そのため、中空無機微粒子18が混合された状態で粘着性組成物16が硬化されるため、中空無機微粒子18が安定して含有された粘着剤層12を容易に形成することができる。
【0032】
このような重合開始剤としては、重合時間を短くすることができる利点などから、光重合開始剤を好適に用いることができる。すなわち、活性エネルギー線を用いた重合を利用して、中空無機微粒子18や気泡20を安定して内包する粘着剤層12を形成することが好ましい。なお、重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
このような光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0034】
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。
【0035】
また、ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0036】
光重合開始剤の使用量としては、光重合によってアクリル系ポリマーを形成することができる限り特に限定されないが、例えば、粘着性組成物16中のベースポリマーを形成するための全モノマー成分[特に、(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分]100重量部に対して0.01〜5重量部(好ましくは0.03〜3重量部)の範囲から選択することができる。
【0037】
光重合開始剤の活性化に際しては、活性エネルギー線を粘着性組成物16に照射することが重要である。このような活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。また、活性エネルギー線の照射エネルギーや、その照射時間などは、特に限定されるものではなく、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。このように、活性エネルギー線の作用により重合されることで、迅速で均一な重合が可能となり、生産効率が向上する。
【0038】
なお、熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に限定されるものではなく、従来、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0039】
上述のように粘着剤層12は、各種重合によって中空無機微粒子18を分散した状態で安定して硬化されるため、凝集力や耐熱性が向上する。
【0040】
(中空無機微粒子)
本発明者が鋭意検討した結果、中空無機微粒子18を含有する粘着剤層12や、このような粘着剤層12を備えた粘着テープ10は、通常の粘着力を損なうことなく高いせん断強度を有する。
【0041】
粘着性組成物16に中空無機微粒子18を含有させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、粘着剤層12を構成する粘着性組成物16を形成後に、粘着性組成物16に中空無機微粒子18を配合・混合する方法が挙げられる。また、他の方法としては、アクリル系ポリマーを形成する、アクリル系モノマー混合物又はそれらの一部が重合した部分重合物に、中空無機微粒子18を配合・混合する方法などが挙げられる。これらの方法のうち、作業性の観点から、アクリル系ポリマーを形成する、アクリル系モノマー混合物又はそれらの一部が重合した部分重合物に、中空無機微粒子18を配合・混合する方法が好ましい。
【0042】
本実施の形態に係る粘着剤層12に含まれる微粒子としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素などの炭化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物粒子;アルミナ、ジルコニウムなどの酸化物に代表されるセラミック粒子;炭化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス、シリカ、疎水性シリカなどの無機微粒子などを挙げることができる。特に、中空無機微粒子18としては、中空ガラスバルーン等のガラス製の中空バルーン;中空アルミナバルーン等の化合物の中空バルーン;中空セラミックバルーン等などを挙げることができる。
【0043】
これら微粒子の中でも、紫外線反応を用いる際の重合の効率や重みなどの観点から、中空無機微粒子を用いることが好ましい。より好ましくは、中空ガラスバルーンを用いることで、せん断強度や保持力などの粘着剤層12として必要な強度や特性を損なうことなく、高温接着力を向上させることが可能となる。
【0044】
中空無機微粒子18は、その平均粒径は特に限定されるものではないが、粘着剤層12に求められる所望の物性に応じて選択すればよい。例えば、中空無機微粒子18の平均粒径は、1〜500μmの範囲であればよく、好ましくは、5〜200μmの範囲、より好ましくは、20〜80μm、更に好ましくは30〜50μmの範囲であるとよい。これにより、粘着剤層12のせん断強度や保持力などの特性を損なうことなく、粘着剤層12の単位重量あたりの中空無機微粒子18の表面積を大きくすることができる。
【0045】
中空無機微粒子18は、その比重は特に限定されるものではないが、粘着剤層12に求められる所望の物性に応じて選択すればよい。例えば、中空無機微粒子18の比重は、0.1〜0.8g/cmの範囲であればよく、好ましくは、0.15〜0.50g/cmの範囲であるとよい。これにより、粘着剤層12のせん断強度や保持力などの特性を損なうことなく、粘着剤層12の単位重量あたりの中空無機微粒子18の表面積を大きくすることができる。中空無機微粒子18の比重が0.1g/cmより大きい場合、より好ましくは、0.15cmより大きい場合、アクリル系モノマー混合物又はそれらの一部が重合した部分重合物に中空無機微粒子18を配合して混合する際に、中空無機微粒子18の浮き上がりが抑えられる。そのため、粘着剤層12において中空無機微粒子18が均一に分散される。また、中空無機微粒子18の比重が上述の範囲以上であることで、ガラス強度がある程度確保され、中空無機微粒子18自体の割れが抑制される。
【0046】
一方、中空無機微粒子18の比重が0.8g/cmより小さい場合、より好ましくは、0.50cmより小さい場合、紫外線の透過率がある程度以上確保されるため、紫外線反応の効率の低下が抑制される。また、より安価な材料を用いることが可能なため、製造コストを抑えることができる。また、中空無機微粒子18が分散されている粘着剤層12の重量の増加が抑えられるため、製造時や使用時の作業性が向上し、粘着テープが使用される機器の軽量化にも寄与する。
【0047】
なお、中空無機微粒子18は、その表面に各種の表面処理(例えば、シリコーン系化合物やフッ素系化合物等による低表面張力化処理など)が施されていてもよい。
【0048】
中空無機微粒子18の使用量としては、粘着性組成物16のベースポリマーであるアクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、1重量部以上、好ましくは、5重量部以上であるとよい。粘着性組成物16に対して中空無機微粒子18を前述の範囲以上の割合で分散させることで、含有されている中空無機微粒子18の表面積の総和を増大させることができるとともに、気泡を微分散しやすくなる。
【0049】
一方、中空無機微粒子18の使用量としては、アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、15重量部以下、好ましくは、13重両部以下、より好ましくは、10重量部以下であるとよい。粘着性組成物16に対して中空無機微粒子18を前述の範囲以下の割合で分散させることで、粘着剤層12を粘着テープ10に用いた際に、粘着剤層12と被着体との間に生じる凹凸が減少し、接着面積の減少による接着力の低下が抑制される。
【0050】
中空無機微粒子18として用いられる中空ガラスバルーンとしては、「フジバルーン H−35」、「フジバルーン H−40」(いずれも富士シリシア化学株式会社製)などが挙げられる。
【0051】
(気泡)
本実施の形態に係る粘着剤層12は、適宜気泡20を含有している。これにより、粘着剤層12は、曲面や凹凸面に対して良好な接着性を発揮することができ、また、良好な耐反発性を発揮することができる。粘着剤層12に混合可能な気泡20の量としては、特に限定されるものではないが、使用用途などに応じて適宜選択される。本実施の形態に係る気泡20は、粘着剤層12の全体積に対して5〜40体積%、好ましくは8〜30体積%含まれているとよい。粘着剤層12は、気泡20の混合量が5体積%以上の場合、前述の特性をより確実に発揮させることができる。また、含有される気泡20の量を粘着剤層12の全体積に対して40体積%以下とすることで、粘着剤層12を表裏に貫通する気泡の存在が低減され、接着性能や外観の見栄えの悪化が抑制される。
【0052】
粘着剤層12に混合される気泡20は、基本的には、独立気泡タイプの気泡であることが望ましいが、独立気泡タイプの気泡と連続気泡タイプの気泡とが混在していてもよい。
【0053】
また、気泡20としては、通常、球状(特に真球状)の形状を有しているが、いびつな形状の球状を有していてもよい。気泡20において、その平均気泡径(直径)としては、特に限定されるものではないが、例えば、1〜1000μm(好ましくは10〜500μm、更に好ましくは30〜300μm)の範囲から選択される。なお、気泡の平均気泡径(直径)は、電子顕微鏡等で得られるテープサンプル断面の画像より測定される。
【0054】
なお、気泡中に含まれる気体成分(気泡を形成するガス成分;「気泡形成ガス」と称する場合がある)としては、特に限定されるものではないが、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガスの他、空気などの各種気体成分が用いられる。気泡形成ガスとしては、気泡形成ガスを粘着性組成物16と混合した後に、重合反応等の反応を行う場合は、その反応を阻害しないものが好ましい。気泡形成ガスとしては、反応を阻害しないことや、コスト的な観点などから、窒素が好適である。
【0055】
(界面活性剤)
粘着剤層12や粘着剤層12を構成する粘着性組成物16は、それらを含む粘着テープ10の用途に応じて適宜種々の添加剤が含まれていてもよい。例えば、中空無機微粒子18とベースポリマーとの間の密着性や摩擦抵抗の低減、気泡の混合性や安定性の観点から、本実施の形態に係る粘着剤層12や粘着性組成物16には、界面活性剤が適宜添加される。
【0056】
このような界面活性剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、炭化水素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。中でも、フッ素系界面活性剤が好ましく、特に分子中にオキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有するフッ素系界面活性剤が好ましい。また、フッ素系界面活性剤は、1種のみ使用されていてもよいし、2種以上を組み合わせて使用されていてもよい。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、商品名「サーフロンS−393」(AGCセイケミカル株式会社製)が好適である。
【0057】
フッ素系界面活性剤の使用量(固形分)としては、特に限定されるものではないが、例えば、粘着性組成物16中のベースポリマーを形成するための全モノマー成分[特に、(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分]100重量部に対して0.01〜2重量部(好ましくは0.03〜1.5重量部、更に好ましくは0.05〜1重量部)の範囲から選択することができる。フッ素系界面活性剤の使用量が気泡20を含有する粘着性組成物16中のベースポリマー100重量部に対して0.01重量部未満であると、気泡20の混合性が低下して十分な量の気泡20を粘着性組成物16に混合することが困難になる。一方、フッ素系界面活性剤の使用量が気泡20を含有するベースポリマー100重量部に対して2重量部を超えると、接着性能が低下する。
【0058】
本実施の形態では、粘着剤層12に気泡20を安定的に混合して存在させるために、気泡20は、粘着性組成物16に配合する最後の成分として配合して混合させることが好ましい。特に、気泡20を混合する前の粘着性組成物16の粘度としては、混合された気泡20を安定的に保持することが可能な粘度であれば特に限定されるものではないが、例えば、粘度計としてBH粘度計を用いて、ローター:No.5ローター、回転数:10rpm、測定温度:30℃の条件で測定された粘度としては、5〜50Pa・s(好ましくは10〜40Pa・s)であることが望ましい。気泡20が混合される粘着性組成物16の粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、30℃)が、5Pa・s未満であると、粘度が低すぎて、混合した気泡がすぐに合一して系外に抜けてしまう場合があり、一方、50Pa・sを超えていると、気泡20を含有する粘着剤層12の形成が困難となる。
【0059】
なお、気泡を混合する前のアクリル系モノマー混合物の粘度は、例えば、アクリルゴム、増粘性添加剤などの各種ポリマー成分等を配合する方法、ベースポリマーを形成するためのモノマー成分[例えば、アクリル系ポリマーを形成させるための(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分など]を一部重合させる方法などにより、調整することができる。
【0060】
具体的には、例えば、ベースポリマーを形成するためのモノマー成分[例えば、アクリル系ポリマーを形成させるための(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分など]と、重合開始剤(例えば、光重合開始剤など)とを混合してモノマー混合物を調製し、該モノマー混合物に対して重合開始剤の種類に応じた重合反応を行って、一部のモノマー成分のみが重合した組成物(シロップ)を調製する。その後、該シロップに、フッ素系界面活性剤や中空無機微粒子18と、必要に応じて各種添加剤とを配合して、気泡を安定的に含有することが可能な適度な粘度を有する粘着性組成物16の前駆体を調製することができる。そして、この粘着性組成物16の前駆体に気泡を導入して混合させることにより、気泡20が均一に分散された粘着剤層12が得られる。
【0061】
気泡を混合する方法としては、特に限定されるものではないが、公知の気泡混合方法を利用することができる。例えば、装置の例としては、中央部に貫通孔を持った円盤上に、細かい歯が多数ついたステータと、このステータと対向しており、円盤上にステータと同様の細かい歯がついているローターと、を備えた装置などが挙げられる。この装置におけるステータ上の歯と、ローター上の歯との間に気泡を含有する粘着性組成物16を導入し、ローターを高速回転させながら、気泡を形成させるためのガス成分(気泡形成ガス)を貫通孔を通して粘着性組成物16の前駆体中に導入する。これにより、気泡が細かく分散され混合された粘着性組成物16が得られる。
【0062】
なお、気泡の合一を抑制又は防止するためには、気泡の混合から、気泡を含有する粘着剤層12の形成までの工程を一連の工程として連続的に行うことが好ましい。すなわち、粘着剤層12は、前述のようにして気泡を混合させて気泡を含有する粘着性組成物16を調製した後、続いて、その気泡を含有する粘着性組成物16を用いて、公知の形成方法を利用して得られる。具体的には、例えば、気泡が混合されている粘着性組成物16を所定の面上に塗布し、必要に応じて乾燥や硬化等を行うことにより、気泡を含有する粘着剤層12が形成される。なお、気泡20を含有する粘着剤層12の形成に際しては、前述のように、熱線や活性エネルギー線の照射により硬化させる方法が好ましい。
【0063】
前述の気泡を含有する粘着性組成物16は、気泡の合一が起こり難く、十分な量の気泡を安定的に含有しているので、粘着性組成物16を構成するベースポリマーや添加剤などを適宜選択することにより、粘着テープ10における粘着剤層12を形成するための材料として好適に利用することができる。また、前述の気泡を含有する粘着性組成物16は、粘着性組成物16を構成するベースポリマーや添加剤などを適宜選択することにより、基材(特に、感圧性接着部材に用いられる気泡を含有する基材)を形成するための材料としても好適に利用することができる。
【0064】
(他の添加剤)
本実施の形態に係る粘着剤層12には、ベースポリマー、重合開始剤、中空無機微粒子、界面活性剤等の他に、粘着剤層12の用途に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。例えば、粘着剤層12が粘着テープ10に用いられる場合、粘着テープ10の種類に応じて、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂、などからなる常温で固体、半固体あるいは液状のもの)、可塑剤、前述の中空無機微粒子以外の充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤(顔料や染料など)などの適宜な添加剤が粘着剤層12に含まれていてもよい。
【0065】
例えば、光重合開始剤を用いて粘着剤層12を形成する場合、粘着剤層12を着色させるために、光重合を疎外させない程度の顔料(着色顔料)を使用することができる。粘着剤層12の着色として、黒色が望まれる場合には、例えば、カーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックの使用量としては、着色度合いや、光重合反応を阻害しない観点から、例えば、粘着性組成物16中のベースポリマーを形成するための全モノマー[特に(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分]100重量部に対して0.15重量部以下(例えば、0.001〜0.15重量部)、好ましくは0.01〜0.1重量部の範囲から選択することが望ましい。
【0066】
なお、上述してきた粘着剤層12は、単層、積層のいずれの形態を有していてもよい。また、粘着剤層12の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、200〜5000μm(好ましくは300〜4000μm、更に好ましくは400〜3000μm)の範囲から選択することができる。粘着剤層12の厚みが200μmよりも小さいと、クッション性が低下して、曲面や凹凸面に対する接着性が低下する。一方、粘着剤層12の厚みが5000μmよりも大きいと、均一な厚みの層が得られにくくなる。
【0067】
[撥水剤層]
本発明者は、粘着テープの貼り付け時の作業性と接着信頼性を両立すべく鋭意研究を重ねた結果、撥水剤層を粘着剤層の表面に形成することに想到した。また、撥水剤層の形成に好適な撥水剤の一つとして、ヘキサメチルジシラザンで改質させた疎水性微細シリカ化合物を樹脂化合物及び揮発性溶媒と組み合わせた疎水性コーティング膜形成組成物に想到した。そして、このような撥水剤を粘着剤層の表面にコーティングすることで、粘着テープを被着体に貼り付けた直後での引き剥がし接着力を抑えることができることを見出した。特に、水との接触角が140°以上の撥水性を示す撥水剤が好適である。より好ましくは接触角が150°以上の撥水剤がよい。更に好ましくは接触角が160°以上の撥水剤がよい。ここでいう接触角の測定方法としては、例えば以下の方法にて測定される。
【0068】
測定サンプルの作成:厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーS10#38」の片面に、マイヤーバーを用いて撥水剤を塗布(塗布量5ml)し、常温雰囲気下で5分以上乾燥したものを接触角測定用サンプルとして準備する。
測定:協和界面科学社製のFACE CA-X型を用いて、撥水剤表面に所定量の蒸留水液滴を滴下し、液滴と撥水剤面との角度を計測する。
【0069】
はじめに、本実施の形態に好適な撥水剤の一つについて説明する。本実施の形態に係る撥水剤は、疎水性微粒子と、樹脂化合物と、揮発性溶媒と、を含有する疎水性コーティング膜形成組成物である。
【0070】
疎水性コーティング膜形成組成物に含まれる疎水性微粒子としての疎水性微細シリカ化合物は、微細シリカの表面のOH基にヘキサメチルジシラザンを接触反応させて改質したものである。かかる疎水性微細シリカ化合物の一次粒子の平均粒子径は5〜50nmであることが好ましい。この平均粒子径が5nm未満であると、疎水性コーティング膜形成組成物をコーティングし、乾燥した後に生成する疎水性コーティング膜の形成性が劣る傾向になる。そのため、コーティング膜から疎水性微細シリカ化合物が飛散しやすくなって疎水性が減少する傾向にある。一方、この平均粒子径が50nmを超えると、均一な疎水性コーティング膜になり難くなって疎水性が減少する傾向にある。
【0071】
また、かかる疎水性微細シリカ化合物中の炭素量は2〜5質量%であることが好ましく、2.2〜4質量%であることが特に好ましい。この炭素量が2質量未満であると微細シリカ表面の疎水性への改質が不十分になる傾向にあり、5質量%を超えると不均一な改質部位が発生しやすくなり、良好な疎水性が妨げられる傾向にある。
【0072】
さらに、疎水性微細シリカ化合物としては、ヘキサメチルジシラザンを接触反応させて改質する際に、まず微細シリカの表面のOH基にメチルトリクロルシラン、ジメチルジクロルシラン等のアルキルハロゲノシランを接触反応させた後に、更にヘキサメチルジシラザンを接触反応させて改質した疎水性微細シリカ化合物であることが好ましい。このような疎水性微細シリカ化合物の製造方法としては、例えば、特許2886037号公報、特許2886105号公報等に開示されている製造方法が挙げられる。また、疎水性微細シリカ化合物は市販品としても入手することが可能であり、例えば、微細シリカの表面のOH基にヘキサメチルジシラザンを接触反応させて改質したレオロシールHM−20L、HM−30S((株)トクヤマ製)や、微細シリカの表面のOH基にアルキルハロゲノシランを接触反応させた後に、更にヘキサメチルジシラザンを接触反応させて改質したレオロシールZD−30ST((株)トクヤマ製)等が挙げられる。
【0073】
疎水性コーティング膜形成組成物に含まれる樹脂化合物は、被処理材の表面に対して疎水性微細シリカ化合物を担持するためのバインダーとして機能する。このような樹脂化合物は特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂、ロジンエステル系樹脂、アルキルフェノール樹脂(ノボラック型)、アルキルフェノール樹脂(レゾール型)、テルペンフェノール樹脂等を用いることができる。これらの中でも、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂、ロジンエステル系樹脂が好ましく用いられる。このようなアクリル樹脂としては、固形分30質量%での粘度が100mPa・s以下(B型粘度計にて測定)である、酸性アクリル共重合体を有するアクリル共重合体エマルジョンが特に好ましく用いられる。また、ポリウレタン樹脂としては、エステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンが特に好ましく用いられる。さらに、脂環式飽和炭化水素樹脂としては軟化点が80℃以上のものが特に好ましく、ロジンエステル系樹脂としては軟化点が90℃以上のものが特に好ましく用いられる。このようにアクリル樹脂を用いることにより、得られるコーティング膜における疎水性を保持する耐久性や基材への密着性がより向上する傾向にある。また、ポリウレタン樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂又はロジンエステル系樹脂を用いることにより、疎水性微細シリカ化合物の担持力がより向上する傾向にある。さらに、脂環式飽和炭化水素樹脂やロジンエステル系樹脂を用いた場合には、疎水性(撥水性)が特に向上する傾向にある。このようなアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂及びロジンエステル系樹脂は市販品として入手することが可能であり、例えば、アクリル共重合体エマルジョンのリカボンドFK−610(中央理化工業(株)製)、エステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンのネオステッカー1200(日華化学(株)製)、脂環式飽和炭化水素樹脂のアルコンP−90(荒川化学工業(株)製)、ロジンエステル系樹脂のスーパーエステルA−100(荒川化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0074】
疎水性コーティング膜形成組成物に含まれる揮発性溶媒は、疎水性微細シリカ化合物及び樹脂化合物を分散させるための分散媒として機能するものである。このような揮発性溶媒は特に限定されず、単一の有機溶剤であってもよいし、2種以上の有機溶剤の混合物であってもよく、またこれらの有機溶剤には水が含まれていてもよい。
【0075】
揮発性溶媒として用いる有機溶剤としては、実質的に不活性なものが好ましく、好適な有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4の脂肪族アルコール;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル等のエーテル類;脂肪族系炭化水素;脂環式系炭化水素;芳香族系炭化水素等を挙げることができる。
【0076】
疎水性コーティング膜形成組成物においては、疎水性をより向上させる観点からは疎水性微細シリカ化合物を増量し、耐久性(密着性)をより向上させる観点からは樹脂化合物を増量させることが好ましい傾向にあり、両者を両立させることによってより良好な疎水性と耐久性を備えたコーティング膜が得られる傾向にある。そしてそれら成分の相対的な量としては、疎水性微細シリカ化合物:樹脂化合物の配合比率(質量基準)が50:50〜99:1の範囲となるように配合することが好ましく、特に樹脂化合物としてアクリル樹脂やポリウレタン樹脂を用いる場合は疎水性微細シリカ化合物:樹脂化合物の配合比率(質量基準)が80:20〜99:1の範囲となるように配合することがより好ましく、また、樹脂化合物として脂環式飽和炭化水素樹脂やロジンエステル系樹脂を用いる場合は疎水性微細シリカ化合物:樹脂化合物の配合比率(質量基準)が50:50〜95:5の範囲となるように配合することがより好ましい。このような配合比率にすることによって、より良好な疎水性と耐久性(密着性)が達成される傾向にある。疎水性微細シリカ化合物:樹脂化合物の配合比率(質量基準)が50:50未満、すなわち、樹脂化合物が50質量%を超えた比率で配合すると疎水性が低下する傾向にあり、他方、疎水性微細シリカ化合物:樹脂化合物の配合比率(質量基準)が99:1を超えて、すなわち、疎水性微細シリカ化合物を99質量%を超えた比率で配合すると、疎水性微細シリカ化合物が疎水性コーティング膜から脱落しやすくなる傾向にある。
【0077】
また、本実施の形態に係る疎水性コーティング膜形成組成物における揮発性溶媒の配合量は特に制限されず、採用する塗布方法等に応じて適宜選択されるが、得られる疎水性コーティング膜形成組成物における不揮発分(固形分)の含有量が0.1〜6質量%程度となる量の揮発性溶媒を配合することが一般的に好ましい。
【0078】
本実施の形態においては、疎水性微細シリカ化合物、樹脂化合物及び揮発性溶媒を使用時に混合して疎水性コーティング膜形成組成物として用いることもできるが、疎水性微細シリカ化合物及び樹脂化合物の分散性が弱すぎる場合には、疎水性コーティング膜形成組成物の経時での分散安定性が悪くなることにより、疎水性コーティング膜中に分散不良による凝集粒子が混在するようになり、疎水性、耐久性(密着性)が低下する傾向にある。従って、本実施の形態の疎水性コーティング膜形成組成物を調製する際には係る分散性について十分注意すべきであり、疎水性微細シリカ化合物、樹脂化合物及び揮発性溶媒の混合物を高速分散装置を用いて分散させることが好ましい。本実施の形態において使用する疎水性微細シリカ化合物は超微粒子であるので、良好な分散性を得るためには、ホモジナイザー、コロイドミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダー、超音波分散あるいは高圧ジェットミル分散装置等の高速分散装置を用いて、安定性及び均一性に優れた疎水性コーティング膜形成組成物とすることが好ましい。
【0079】
上述の疎水性コーティング膜形成組成物を被処理材の表面に塗布して乾燥させると、水分を寄せ付けない疎水性に優れた微細な凹凸である、いわゆるフラクタル構造を有する膜が効率良くかつ均一に形成される。
【0080】
[基材]
本実施の形態に係る粘着テープ10に用いられる基材は、特に限定されるものではないが、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、ネットなどの繊維系基材(その原料としては、特に限定されるものではないが、例えば、マニラ麻、レーヨン、ポリエステル、パルプ繊維などを適宜選択することができる);金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体(特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など)等の適宜な薄葉体を用いることができる。
【0081】
プラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0082】
なお、基材として、プラスチック系基材が用いられている場合は、延伸処理等により伸び率などの変形性を制御していてもよい。また、基材としては、粘着剤層12が活性エネルギー線による硬化により形成される場合は、活性エネルギー線の透過を阻害しないものを使用することが好ましい。
【0083】
基材の表面は、粘着剤層12との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤やはく離剤等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0084】
基材の厚さは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択すればよく、例えば、一般的には1000μm以下(例えば、1〜1000μm)、好ましくは1〜500μm、更に好ましくは3〜300μm程度であるが、これらに限定されるものではない。なお、基材は単層、積層いずれの形態を有していてもよい。
【0085】
[セパレータ]
本実施の形態では、粘着剤層12や粘着テープ10の接着面(粘着面)を保護するために、セパレータ(はく離ライナー)が用いられていてもよい。なお、セパレータは必ずしも設けられていなくてもよい。セパレータは、セパレータにより保護されている接着面を利用する際に(すなわち、セパレータにより保護されている粘着剤層12に被着体を貼着する際に)剥がされる。
【0086】
このようなセパレータとしては、慣用のはく離紙などを使用できる。具体的には、セパレータとしては、例えば、はく離処理剤によるはく離処理層を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などを用いることができる。なお、セパレータは、粘着剤層12を支持するための基材として用いることも可能である。
【0087】
セパレータとしては、例えば、はく離ライナー用基材の少なくとも一方の面にはく離処理層が形成されているセパレータを好適に用いることができる。このようなはく離ライナー用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や、紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体)等が挙げられる。
【0088】
一方、はく離処理層を構成するはく離処理剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、シリコーン系はく離処理剤、フッ素系はく離処理剤、長鎖アルキル系はく離処理剤などを用いることができる。はく離処理剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、セパレータの厚さや、形成方法などは特に限定されない。
【0089】
[アクリル系粘着テープ]
本実施の形態に係る粘着テープのうち、粘着性組成物や基材にアクリル系ポリマーが含有されている場合、低温(例えば、−20〜5℃程度の温度)での初期接着性に優れる。また、粘着剤層や基材に気泡が含有されている場合、応力緩和性が向上することにより、高い耐反発性が発揮される。また、曲面や凹凸面および被着体の屈曲に対して追従しやすくなるため、接着に十分な面積を確保することができる。また、応力分散性に優れるため、高いせん断力が得られる。また、中空無機微粒子を適度に含んだ粘着剤層12を有しているので、優れた常温接着力やせん断接着力を有する。
【0090】
アクリル系粘着テープは、塗膜(例えば、耐酸性雨塗膜、自動車用塗膜など)、塗料板、樹脂板、鋼板等の金属板、塗装板(例えば、前述の樹脂板、鋼板等の金属板などの表面に前述の耐酸性雨塗膜、自動車用塗膜などの塗膜を設けたもの)などの接着が困難な被着体に対する初期接着性優れている。特に、自動車のボディーなどの自動車塗装板に対する初期接着性に優れている。
【0091】
被着体である塗膜としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル・メラミン系、アルキド・メラミン系、アクリル・メラミン系、アクリル・ウレタン系、アクリル・多酸硬化剤系などの各種塗膜が挙げられる。
【0092】
特に、本実施の形態に係る粘着テープは、粘着剤層12の粘着面上に撥水剤層が形成されているため、湿度の高い環境での使用や表面に水滴が付いている被着体へ使用するような場合であっても、水が接着面に滞留したり粘着剤層に達して接着力を低下させたりすることが抑制される。また、本発明者が鋭意検討した結果、粘着剤層12の粘着面上に前述の撥水剤により撥水剤層を形成することで、粘着テープを被着体に貼り付けた直後の引き剥がし接着強さを小さくすることができる。そのため、粘着テープを一度被着体に貼り付けた後でも、貼り付け位置の修正が容易に行える。
【0093】
そのため、本実施の形態に係る粘着テープ10は、前述の用途の他、大型フラットテレビ、家庭電化製品、住設部材等の筐体や収容されている部品に対して好適に用いることができる。これらの用途においては、貼り付けた粘着テープの位置が比較的容易に修正できることで、作業効率の向上が図られるとともに、粘着テープの貼り間違いによる不良品の発生を抑えることができる。
【0094】
加えて、本実施の形態に係る粘着テープ10は、被着体に貼り付けられてから時間が経過すると、接着強さが徐々に増加する。最終的には、粘着テープ10は、撥水剤層がない粘着剤層と被着体との引き剥がし接着強さと遜色ない大きさの接着強さを発揮する。このように、本実施の形態に係る粘着テープ10によれば、貼り付け時の作業性と接着信頼性を高いレベルで両立することができる。
【0095】
[製造方法の概略]
本実施の形態に係る粘着性組成物16は、所定の面上に塗布され、紫外線を照射して光重合させることにより硬化され、粘着剤層12を形成する。粘着剤層12は、粘着化されており、それ自体が感圧接着性を有する。その後、後述の方法により粘着剤層12の粘着面上に前述の撥水剤を用いて撥水剤層を形成する。なお、光重合の際の紫外線照射量は200〜3000mJ/cm程度である。このとき、粘着性組成物16の厚さは中空無機微粒子18の粒径以上であれば任意であるが、100〜3000μm程度が好ましい。
粘着面上に撥水剤を形成する方法としては、撥水剤を粘着面に直接塗布し乾燥して形成する方法と、撥水剤を一旦、別の基材上に塗布・乾燥して作製した皮膜を、粘着面上に転写させて形成する方法等がある。
【0096】
粘着性組成物16を基材などに塗布する際は、作業を円滑に行うために増粘することが好ましい。増粘は、例えば、アクリルゴム、増粘性添加剤などの各種ポリマー成分を配合する方法、ベースポリマーを形成するためのモノマー成分[例えば、アクリル系ポリマーを形成させるための(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分など]を一部重合させる方法などにより、調整することができる。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0098】
(実施例1)
マイヤーバー#5を用いて、超撥水剤「アデッソWR−1」(日華化学(株)製)の1.5%希釈溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーS10#38」(東レ株式会社製)上に塗布し、室温雰囲気下で乾燥することでコーティング膜を形成した。このように、PETフィルムの「アデッソWR−1」が塗布されている面における水との接触角は149°であった。その後、表面にアクリル系粘着剤を有する粘着テープであるハイパージョイントH9004(日東電工株式会社製)に、その粘着剤表面にコーティング膜が対向するようにポリエチレンテレフタレートをハンドローラで貼り合わせる。これにより、コーティング膜が粘着剤層の粘着面上に転写され、表面に撥水剤層が形成されている両面粘着テープが得られる。
【0099】
この両面粘着テープのうち撥水剤層が形成されていない粘着面に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーS10#50」(東レ株式会社製)を貼り合わせた後、粘着テープを10mm幅に切断した。そして、切断された粘着テープを、撥水面側が貼り付け面となるように、表面をアルコールで洗浄したポリカーボネート板(タキロン株式会社製)に2kgローラを1往復させて圧着し、それを評価用サンプルとした。
【0100】
(比較例1)
粘着テープであるハイパージョイントH9004の粘着面に、「ルミラーS10#50」を貼り合わせた後、粘着テープを10mm幅に切断した。そして、切断された粘着テープを、実施例1と同様の条件で、ポリカーボネート板に圧着したものを評価用サンプルとした。
【0101】
(評価内容)
評価方法は、90°の剥離角度で引き剥がした場合の接着強さの経時変化により行った。実施例1および比較例1に示す評価用サンプルを、23℃の雰囲気下で放置し、圧着10秒後、30分後、2日後、5日後に、23℃の雰囲気下で引張圧縮試験機「TG−1kN」(ミネベア株式会社製)を用いて、引っ張り速度50mm/min、90℃の剥離方向に引き剥がすことにより、90℃引き剥がし接着強さを測定した。測定結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
表1に示されているように、撥水剤層が形成されている実施例1に記載の粘着テープは、圧着10秒後、30分後の接着強さが比較例1の粘着テープと比較して低くなっている。つまり、このような粘着テープを被着体に貼り付けた場合であっても、直後であればその引き剥がし接着強さが小さいため、粘着テープを一度被着体に貼り付けた後でも、貼り付け位置の修正が容易に行える。また、実施例1に記載の粘着テープは、時間の経過とともに接着強さが上昇し、5日後には撥水剤層を有しない比較例1と比較しても遜色のない接着強さが得られる。その結果、粘着テープが用いられた部品における接着信頼性が向上する。
【0104】
以上、本発明を実施の形態や実施例をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0105】
以下では、本発明に適用可能な撥水剤や撥水剤に含まれる各種成分の変形例について説明する。例えば、疎水性微粒子として低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の微粒子をアクリルシリコーン樹脂等の疎水性バインダー樹脂に分散させた撥水剤であってもよい。具体的には、分子量が500〜20000でかつ末端までフッ素化した低分子量四フッ化エチレン粉末を、アクリルシリコン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂の中の少なくとも1種類以上の樹脂もしくは混合樹脂中に揮発成分揮発後の体積分率で1〜70体積%となるように混入分散させた撥水剤であってもよい。このような撥水剤であれば水との接触角が概ね160°以上の撥水性を示す。
【0106】
また、疎水性微粒子の例としては、前述のシリカの他に、SiOを含む各種ガラス、シラス、ケイ砂、ゼオライト、シリコンカーバイド(SiC)等の無機材料の単体あるいは複合させたもの、および架橋したポリメタクリル酸メチル、ウレタン等の有機材料の単体あるいは複合させたものが挙げられる。これらの無機材料と有機材料を複合させて使用してもよい。該微粉末の混合比としては、溶剤揮発後の重量分率で10〜90%となるように混入分散させることが好ましい。
【0107】
カップリング剤の例としては、分子内に撥水性の基を持つシランカップリング剤、チタンカップリング剤の単体あるいは複合させたものが挙げられる。該カップリング剤は、重量で1〜50%混入分散させることが好適である。
【0108】
シランカップリングは、一般に、YRSiXと表されるが、Yの部分がフッ素化されているもの、Rの部分が短いものが撥水性の点からは好ましい。
【0109】
また、疎水性微粒子は、フッ素を含まない疎水性シランカップリング剤で表面処理された硬質微粒子であってもよい。フッ素を含まない疎水性シランカップリング剤としては、RSiX、RSiX、RSiXが挙げられる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基等のアルキル基、Xはメトキシ基、エトキシ基、βメトキシエトキシ基等のアルコキシ基または塩素等のハロゲン置換基である。これらは、フッ素を含むシランカップリング剤に比べて1桁程度安価である。
【符号の説明】
【0110】
10 粘着テープ、 12 粘着剤層、 14 撥水剤層、 16 粘着性組成物、 18 中空無機微粒子、 20 気泡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と、
前記粘着剤層の粘着面上に形成された撥水剤層と、を備え、
前記撥水剤層は、水との接触角が140°以上の撥水性を示す撥水剤を用いて形成されていることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記撥水剤層は、疎水性微粒子を有することを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記疎水性微粒子は、疎水性微細シリカ化合物を含むことを特徴とする請求項2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記疎水性微細シリカ化合物は、ヘキサメチルジシラザンで改質されていることを特徴とする請求項3に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを含有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
粘着剤層を準備する工程と、
前記粘着剤層の粘着面上に、水との接触角が140°以上の撥水性を示す撥水剤を用いて撥水剤層を形成する工程と、
を含む粘着テープの製造方法。
【請求項7】
前記撥水剤は、疎水性微粒子を有することを特徴とする請求項6に記載の粘着テープの製造方法。
【請求項8】
前記疎水性微粒子は、疎水性微細シリカ化合物を含むことを特徴とする請求項7に記載の粘着テープの製造方法。
【請求項9】
前記疎水性微細シリカ化合物は、ヘキサメチルジシラザンで改質されていることを特徴とする請求項8に記載の粘着テープの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−127034(P2011−127034A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288028(P2009−288028)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】