説明

粘着テープ用基材と該粘着テープ用基材を用いた粘着テープの製造方法

【課題】優れた剥離強度を有する粘着テープを形成させ得る粘着テープ用基材の提供を課題としている。
【解決手段】前記課題を解決すべく、基材層と、該基材層上に形成された下塗り層とを有しており、該下塗り層の表面に接触する状態で前記下塗り層上に粘着剤層が形成されて粘着テープが形成される粘着テープ用基材であって、前記下塗り層は、バインダー樹脂成分とMnO2成分とを含む樹脂組成物により形成されていることを特徴とする粘着テープ用基材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材層と、該基材層上に形成された下塗り層とを有しており、該下塗り層の表面に接触する状態で前記下塗り層上に粘着剤層が形成されて粘着テープが形成される粘着テープ用基材と、該テープ用基材を用いた粘着テープの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着テープとして、基材層と粘着剤層とを有するものが各種用途に広く用いられている。通常、このような粘着テープにおいては、被着体に対する強い接着力を有するものが求められ、剥離強度に優れた粘着テープが求められている。
この被着体に対する粘着テープの剥離力については、通常、被着体と粘着剤層との界面の接着力か、基材層と粘着剤層との界面の接着力かのいずれか弱い方によって決定されることとなる。
【0003】
そのため、この基材層に予め下塗り層と呼ばれる層が設けられた粘着テープ用基材が用いられて粘着テープが形成されたりしている。すなわち、粘着テープ用基材の下塗り層の表面に接触する状態で、粘着剤層が下塗り層上に形成されて粘着テープが形成されたりしている。
【0004】
このようにして、下塗り層を用いることで基材層と下塗り層との界面の接着力や下塗り層と粘着剤層との界面の接着力を、基材層と粘着剤層とが直接接触する状態の粘着テープにおける基材層と粘着剤層との界面の接着力よりも向上させて粘着テープの剥離強度を向上させることが行われたりしている。(下記特許文献1参照)
しかし、従来の粘着テープにおいては、この下塗り層と粘着剤層との接着力が十分向上されておらず、粘着テープの剥離力も十分向上されてはいない。すなわち、従来、優れた剥離強度を有する粘着テープを得ることが困難であるという問題を有している。
【0005】
【特許文献1】特開2000−191989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題点に鑑みてなされたもので、優れた剥離強度を有する粘着テープを形成させ得る粘着テープ用基材の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、下塗り層と粘着剤層との界面の接着力を向上させるべく鋭意検討を行った結果、本発明の完成に到ったのである。
すなわち、本発明は、前記課題を解決すべく、基材層と、該基材層上に形成された下塗り層とを有しており、該下塗り層の表面に接触する状態で前記下塗り層上に粘着剤層が形成されて粘着テープが形成される粘着テープ用基材であって、前記下塗り層は、バインダー樹脂成分とMnO2成分とを含む樹脂組成物により形成されていることを特徴とする粘着テープ用基材を提供する。
【0008】
また、本発明は、基材層と、該基材層上に形成された下塗り層とを有する粘着テープ用基材を用い、前記下塗り層の表面に接触する状態で前記下塗り層上に粘着剤層を形成して粘着テープを形成させる粘着テープ製造方法であって、前記粘着剤層に接触する下塗り層が、バインダー樹脂成分とMnO2成分とを含む樹脂組成物により形成されている粘着テープ用基材を用いて、該粘着テープ用基材の前記下塗り層の表面に酸素ラジカルを接触させた後に、前記粘着剤層を前記下塗り層上に形成することを特徴とする粘着テープ製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材層と、該基材層上に形成された下塗り層とを有しており、該下塗り層の表面に接触する状態で前記下塗り層上に粘着剤層が形成されて粘着テープが形成される粘着テープ用基材において、この下塗り層が、バインダー樹脂成分とMnO2成分とを含む樹脂組成物により形成されていることから、下塗り層の表面に酸素ラジカルを接触させることにより、MnO2成分が触媒として作用してバインダー樹脂を酸化させ得る。
したがって、下塗り層の表面にカルボキシル基などの極性基を形成させることができ、この下塗り層上に形成される粘着剤層と下塗り層との界面の接着力を向上させることができる。すなわち、粘着テープの剥離力を向上させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について(添付図面に基づき)説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の粘着テープ用基材が用いられてなる粘着テープの断面を示す断面図であり、粘着テープ用基材4は、基材層1と、該基材層1上に形成された下塗り層2とを有している。そして、この下塗り層2の表面に接触する状態で粘着剤層3が前記下塗り層2上に形成されて粘着テープ10が形成される。
【0012】
前記基材層1の構成材料としては、特に限定されず各種のものを用いることができる。
例えば、高分子材料や金属材料などが用いられたフィルム、高分子材料、金属材料、無機材料などの繊維が用いられた織布または不織布などを用いて基材層1を形成させることができる。
【0013】
このフィルムに用いられる高分子材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン等のフッ素樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アセテート、セルロースなどがあげられる。
金属材料としては、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄などが箔状に加工された金属箔があげられる。
また、この基材層1の形成に用いられるフィルムとしては、ラミネートフィルムのような複数層の積層構造を有するものであってもよく、例えば、アルミラミネートポリエステルフィルムなどのように、高分子フィルムと金属箔とが複合化されたフィルムであってもよい。
【0014】
基材層1の形成に用いられる織布または不織布としては、上記フィルム材料として例示したものと同様の高分子材料や金属材料を用いた繊維の他、パルプ、綿、羊毛、絹などの天然繊維;ガラス繊維、ロックウールなどの無機繊維;カーボンファイバーなどが用いられたものがあげられる。
また、基材層1の形成には、複数種類の繊維が混紡された糸による織布や、複数種類の繊維が混抄された不織布なども用いることができ、この織布や不織布にさらに樹脂を含浸さて基材層1を形成させることもできる。
【0015】
前記下塗り層2は、バインダー樹脂とMnO2粒子とTiO2粒子とを含む樹脂組成物により形成されており、このMnO2粒子とTiO2粒子とが前記バインダー樹脂に分散された状態で下塗り層が形成されている。
【0016】
前記バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、メラミン樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、イソシアヌレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂や、天然ゴム、イソプレン系ゴム、ブタジエン系ゴム、ポリイソブチレン系ゴムをはじめとするゴムなどがあげられる。
【0017】
このバインダー樹脂に分散されるMnO2粒子としては、樹脂組成物中に、より均一に分散させることができ、しかも、酸素ラジカルによって下塗り層2表面に極性基を形成させる効果を、より少ない含有量で発揮させ得る点において、平均粒子径が100μm以下であることが好ましく、且つ、バインダー樹脂とMnO2粒子との合計量に占めるMnO2粒子の割合が1%以上となる量で樹脂組成物中に含有されることが好ましい。
なお、この平均粒子径とは、本明細書中においては、レーザー回折法により測定される値を意図しており、例えば、「レーザー回折式粒度分布計(ベックマンコールーター社製「LS13 320」を用いて測定することができる。
【0018】
TiO2もまたMnO2と同様の触媒作用を有し、前記TiO2粒子は、酸素ラジカルとの接触により、バインダー樹脂を酸化させて、下塗り層の表面にカルボニル基などの極性基を発生させるという前記MnO2粒子の触媒作用を補うべく樹脂組成物中に含有されている。
このバインダー樹脂に分散されるTiO2粒子としては、樹脂組成物中に、より均一に分散させることができ、しかも、酸素ラジカルによって下塗り層表面に極性基を形成させる効果を、より少ない含有量で発揮させ得る点において、平均粒子径が100μm以下であることが好ましく、且つ、バインダー樹脂とTiO2粒子との合計量に占めるTiO2粒子の割合が1%以上となる量で樹脂組成物中に含有されることが好ましい。
【0019】
なお、本発明においては、MnO2粒子とTiO2粒子とを用いる上記例示に限定されず、このMnO2とTiO2とが表面に付着された無機フィラーや繊維などをバインダー樹脂に分散させて樹脂組成物中にMnO2成分やTiO2成分を含有させるようにしてもよい。
【0020】
また、この下塗り層2の樹脂組成物には、上記バインダー樹脂成分、MnO2成分などに加えて、従来公知の各種の添加剤を加えることができる。
この添加剤としては、架橋剤、老化防止剤、加工助剤、難燃剤、防錆剤、防かび剤、増粘剤、粘着性付与剤、補強剤、着色剤等の慣用の添加剤を含有させることができる。
【0021】
なかでも、難燃剤については、例えば、UL510に規定される難燃性を満足させる目的などのために、他の添加剤に比べて大量に添加される場合が多いことから、この難燃剤の添加により、下塗り層2と粘着剤層3との界面の接着力を低下させてしまいやすい。したがって、下塗り層2に難燃剤が含有される場合においては、MnO2成分が触媒として作用して下塗り層2の表面にカルボキシル基などの極性基を形成させて下塗り層2と粘着剤層3との界面の接着力を向上させるという効果をより顕著に発揮させ得る。
しかも、難燃剤としては、近年、環境配慮の観点から、臭素系、塩素系、あるいは、臭素−塩素複合系のいわゆるハロゲン系難燃剤に代えて、金属水和物系やリン系の難燃剤などのいわゆるノンハロゲン系難燃剤が用いられるようになっているが、これら、金属水和物系やリン系の難燃剤は、ハロゲン系難燃剤と同程度の難燃性を得るためハロゲン系難燃剤に比べて多量に添加しなければならず、一般に、接着力の低下を生じ易い。
すなわち、本発明によれば、下塗り層2と粘着剤層3との界面の接着力を向上されることから、難燃剤としてノンハロゲン系難燃剤の採用を促進させることができ、粘着テープの剥離力の低下を抑制しつつ、環境に優しい粘着テープを提供させ得るという効果も奏する。
【0022】
また、上記のような材料により構成される粘着テープ用基材4により粘着テープを形成させる際に、前記粘着テープ用基材4上に形成される粘着剤層3には、一般に用いられている粘着剤を用いることができる。
この粘着剤としては、例えばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などの樹脂が用いられた各種の粘着剤があげられる。
【0023】
前記ゴム系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、天然ゴム、イソプレン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、再生ゴム、ポリイソブチレン系ゴム、さらにはスチレン−イソプレン−スチレン系ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴムなどがあげられる。
これらのゴムは単独あるいは複数種類を混合して使用することができる。
【0024】
前記アクリル系粘着剤のベースポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合性モノマーを共重合した共重合体があげられる。この(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合性モノマーを共重合した共重合体を用いることにより、粘着剤の接着力、耐熱性などを向上させ得る。
なお、“(メタ)アクリル酸エステル”との用語は、本明細書中においては、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを意図している。また、本明細書中における“(メタ)”とは全て上記と同様のことを意図している。
【0025】
この(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、オクチルエステル、イソノニルエステルなどがあげられる。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合される共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(例えば、ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシブチルエステル、ヒドロキシヘキシルエステル等)、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレートなど)、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどがあげられる。
これら共重合性モノマーは、単独または複数使用できる。さらに、前記アクリル系ポリマーを架橋させるための多官能性モノマーなども、必要に応じて共重合用モノマー成分として含有させることができる。
【0026】
前記シリコーン系粘着剤としては、例えば、重量平均分子量が400〜20000のポリジメチルシロキサンを硬化させた硬化物を用いることができる。
【0027】
前記ポリビニルエーテル系粘着剤としては、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
また粘着剤層3を形成する粘着剤にも、必要により、上記成分のほかに、架橋剤、老化防止剤、加工助剤、難燃剤、防錆剤、防かび剤、増粘剤、粘着性付与剤、補強剤、着色剤などの慣用の添加剤を含有させることができる。
【0029】
次いで、粘着テープ用基材4ならびに粘着テープ10の製造方法について説明する。
まず、前記バインダー樹脂と、MnO2粒子ならびにTiO2粒子や難燃剤など他の添加剤とを混合して下塗り層を形成させる樹脂組成物の調整を行う。
この下塗り層用の樹脂組成物の調整方法、バインダー樹脂に対するMnO2粒子ならびにその他の添加剤の分散方法としては一般に用いられている方法を採用し得る。
例えば、バインダー樹脂が熱可塑性の樹脂である場合には、バインダー樹脂を加熱溶融状態として、該加熱溶融状態のバインダー樹脂にMnO2粒子ならびにその他の添加剤を加えて混合攪拌させてバインダー樹脂にMnO2粒子が分散された樹脂組成物を作製することができる。
【0030】
また、バインダー樹脂が熱硬化性のプラスチックや、ゴムなどの場合には、このバインダー樹脂を溶解可能な溶媒に溶解させてバインダー樹脂溶液を作成し、このバインダー樹脂溶液にMnO2粒子ならびにその他の添加剤を加えて混合攪拌させて樹脂組成物を調整することができる。
【0031】
次に、粘着テープ用基材を製造すべく、この樹脂組成物を用いて、基材層上に下塗り層を積層する。
このとき、基材層として、樹脂フィルムなどの高分子材料を用いる場合には、例えば、この下塗り層が形成される側の表面を予めプラズマ処理しておくことなどにより下塗り層との界面の接着力を向上させることもできる。
また、金属箔などの金属材料やガラスクロスなどの無機材料を用いる場合には、例えば、この下塗り層が形成される側の表面をカップリング剤処理しておくなどして下塗り層との界面の接着力の向上を図ることができる。
【0032】
この基材層への下塗り層の積層方法については、一般的な積層方法を適宜選択して用いることができる。
例えば、下塗り層用の樹脂組成物に、上記に示したように熱可塑性のバインダー樹脂が用いられている場合には、押出しラミネートや、一旦製膜したものをドライラミネートする方法などを採用でき、形成材料が各種溶媒への溶解性を有している場合には、下塗り層用の樹脂組成物を溶媒に溶解させた溶液を一般的なコーティング方法によるコーティングを実施した後、乾燥させる方法などを採用できる。
【0033】
このようにして作製された粘着テープ用基材を用い、この粘着テープ用基材の下塗り層の表面に酸素ラジカルを接触させた後に、この下塗り層上に粘着剤層を形成して粘着テープを製造することができる。
【0034】
この下塗り層の表面に酸素ラジカルを接触させる方法としては、例えば、空気など酸素を含む気体中で粘着テープ用基材の下塗り層表面に対してバリア放電するなどして下塗り層表面近傍に酸素ラジカルを発生させる方法や、下塗り層表面近傍にオゾン分解触媒を配置し、オゾンガスを、このオゾン分解触媒に接触させて下塗り層表面に接触させるようにして、オゾン分解触媒によりオゾンガスを分解させて発生させた酸素ラジカルを下塗り層表面に接触させる方法などを採用することができる。
なかでも、バリア放電などにより、電子温度が、イオンや中性粒子温度に比べて高温となる非熱平衡プラズマを発生させて下塗り層の表面に酸素ラジカルを接触させる方法は、大気圧以下の低圧力状態で実施することができ、装置構成を簡略化させ得るとともに、処理自体も簡便で好適である。
【0035】
前記粘着剤層の形成については、粘着テープ用基材の製造時における基材層上への下塗り層の形成方法と同様の方法を採用することができる。
【0036】
なお、粘着テープが自動車用ワイヤーハーネスの結束テープなどに用いられる場合には、適度なコシを有しつつも柔軟性に優れ、被着体の凹凸に対する優れた追従性を有することから基材層にアセテートクロスが用いられることが好ましい。ところで、自動車用ワイヤーハーネスの結束テープなどにおいては、難燃性が求められており、しかも、ノンハロゲン系での難燃性が強く求められている。したがって、このような用途に供すべくアセテートクロスを用いて粘着テープを形成させる場合には、前記下塗り層用バインダー樹脂としては、金属水和物系やリン系の難燃剤などのいわゆるノンハロゲン系難燃剤を大量に含有させた状態においても基材となるアセテートクロスに対する優れた接着性を有し、しかも、MnO2成分を含有した状態で酸素ラジカルが接触された際に粘着剤層に対する接着性に有効に作用させ得る極性基を効率良く形成させやすいという優れた点を有することからウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂が好適である。
また、この下塗り層にウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂が用いられる場合には、粘着剤層は、アクリル系樹脂が用いられた粘着剤により形成されることが好ましい。
【実施例】
【0037】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
(バリア放電装置)
実施例、比較例の粘着テープ用基材の作製に用いたバリア放電装置を図2に示す。
このバリア放電装置は、1対の平板状電極と2枚のガラス板とにより形成された放電部がチャンバー内に収容されて形成されている。この平板状電極(電極面積:190mm×130mm)は、電極面を対向させた状態で上下に離間されて配されており、この平板状電極間に、2枚のガラス板(150mm×210mm)が隙間を設けた状態で配置され、この間隙部に試料がセットされて放電処理が実施される。
また、バリア放電に際しては、上下のガラス板の隙間を調整すべくスペーサを用いた。
このチャンバーとしては、上記のガラス板間の隙間を通じて一方から他方にガスを流通させ得るように、フローガス流入口と、排ガス口とが形成されたものを用い、バリア放電装置においては、このフローガス流入口にフローガスとなる擬似空気(酸素21%窒素79%混合ガス、以下単に「空気」ともいう)を供給する手段として酸素ボンベと窒素ボンベならびにガス供給配管を用いた。
【0039】
粘着テープの作製に用いた材料ならびに粘着テープ作製方法については以下のとおり。
【0040】
(粘着テープ構成材料)
・粘着テープ用基材:
180μm厚さ、目付け90g/m2のアセテートクロスを使用
・下塗り層用樹脂組成物:
比較例1〜12では、(アクリル樹脂100重量部、水酸化アルミニウム「昭和電工製ハイジライト」250重量部)+(硬化剤0.6重量部)がトルエンに溶解されて作製されたMnO2を含まない樹脂組成物を用いた。
実施例1〜24では、(アクリル樹脂100重量部、水酸化アルミニウム「昭和電工製ハイジライト」250重量部、MnO2 17重量部)+(硬化剤0.6重量部)がトルエンに溶解されて作製された樹脂組成物を用いた。
実施例25〜39では、(アクリル樹脂100重量部、水酸化アルミニウム「昭和電工製ハイジライト」250重量部、MnO2 8.5重量部、TiO2 8.5重量部)+(硬化剤0.6重量部)がトルエンに溶解されて作製された樹脂組成物を用いた。
・粘着層用粘着剤:
アクリル系粘着剤を使用
【0041】
(粘着テープの作製)
上記粘着テープ用基材(アセテートクロス)上に、上記下塗り層用樹脂組成物を乾燥後の厚みが70μmとなるようにナイフコーターで塗工して下塗り層を形成して粘着テープ用基材を作製した。
この、粘着テープ用基材の下塗り層表面に上記粘着層用粘着剤を50μm厚さとなるように塗工して粘着テープを作製した。
なお、このとき下塗り層用樹脂組成物塗工前の粘着テープ用基材表面、下塗り層用樹脂組成物塗工後の下塗り層表面に対して、上記バリア放電装置により、各表に記載の条件でバリア放電を実施した。
【0042】
(粘着力測定)
作製された粘着テープを19mm幅のリボン状試料とし、このリボン状試料を2枚、互いの粘着剤層を対向させた状態で接着させて測定試料とした。
このとき、粘着テープ同士の接着は、50℃の温度で0.5MPaの圧力を10秒間加えて実施した。
また、粘着力の測定は、測定試料として接着されている2枚のリボン状試料の端部を一方のリボン状試料の端部の引張り方向と、他方のリボン状試料の端部の引張り方向とが180℃異なる方向となるように両側に引き剥がしてその応力を測定した。
このとき、引張り速度は、300mm/分とし、応力の測定を開始してからさらに剥離個所が100mm形成されるまで連続して応力を測定してその平均値を求めて粘着力とした。
【0043】
(比較例1〜12)
アセテートクロス表面と上部のガラス板との距離を1.5mmとして下記表1のような条件でバリア放電を行った後に、MnO2成分を含んでいない樹脂組成物を用いて下塗り層を形成し、この下塗り層の表面と、上部のガラス板との距離、ならびに下部のガラス板との距離がいずれも1.5mmとなるようにして、下記表1に示す条件でバリア放電を実施し比較例1〜12の粘着テープ用基材を作製した。
なお、このアセテートクロス表面へのバリア放電、下塗り層表面へのバリア放電においては、チャンバー内にフローガスを流通させずに通常の大気状態で実施した。
この比較例1〜12の粘着テープ用基材を用いた粘着テープの粘着力を上記に示す方法で測定した結果は、表1の通りで、8.9〜12.5N/19mmと低い値であった。
【0044】
【表1】

【0045】
(実施例1〜9)
アセテートクロス表面と上部のガラス板との距離を1.5mmとして下記表2のような条件でバリア放電を行った後に、MnO2粒子がバインダー樹脂に分散され、しかも、MnO2粒子が固形分全体に対して重量で約5%となるようにMnO2粒子が含まれている樹脂組成物を用いて下塗り層を形成し、この下塗り層の表面と、上部のガラス板との距離、ならびに下部のガラス板との距離がいずれも1.5mmとなるようにして、下記表2に示す条件でバリア放電を実施し実施例1〜9の粘着テープ用基材を作製した。
なお、このアセテートクロス表面へのバリア放電においては、チャンバー内に6m3/hの量で空気を流通させた。また、下塗り層表面へのバリア放電においては、チャンバー内に4m3/hの量で空気を流通させた。
この実施例1〜9の粘着テープ用基材を用いた粘着テープの粘着力を上記に示す方法で測定した結果は、表2の通りで、15.9〜19.3N/19mmと優れた値を示している。
【0046】
【表2】

【0047】
(実施例10〜39)
アセテートクロス表面と上部のガラス板との距離を1.5mmとして下記表3のような条件でバリア放電を行った後に、MnO2粒子がバインダー樹脂に分散され、しかも、MnO2粒子の割合が固形分全体に対して重量で約5%となるようにMnO2粒子が含まれている樹脂組成物を用いて下塗り層を形成し、この下塗り層の表面と、上部のガラス板との距離、ならびに下部のガラス板との距離がいずれも1.5mmとなるようにして、下記表3に示す条件でバリア放電を実施し実施例10〜24の粘着テープ用基材を作製した。
また、MnO2粒子を約5重量%含む樹脂組成物に代えて、MnO2粒子を約2重量%とTiO2粒子を約2重量%含んだ樹脂組成物で下塗り層を形成して実施例25〜39の粘着テープ用基材を作製した。
なお、このアセテートクロス表面へのバリア放電においては、チャンバー内に6m3/hの量で空気を流通させた場合と空気の流通のない状態との2条件で実施した。また、下塗り層表面へのバリア放電においては、チャンバー内に4m3/hの量で空気を流通させた。
この実施例10〜39の粘着テープ用基材を用いた粘着テープの粘着力を上記に示す方法で測定した結果は、表3の通りで、16.3〜20.7N/19mmと優れた値を示している。
【0048】
【表3】

【0049】
(参考実験1:参考例1〜9)
MnO2粒子に代えてTiO2粒子を用いて実施例1〜9の粘着テープ用基材と同一条件で参考例1〜9の粘着テープ用基材を作製した。
この参考例1〜9の粘着テープ用基材を用いた粘着テープの粘着力を測定したところ下記表4の通りとなった。
この参考例1〜9の結果は、上記比較例に対して総じて良好なる結果が得られているものの、実施例1〜9の結果と参考例1〜9の結果とを、条件ごとに対比してみた場合には、総じて、実施例1〜9の粘着テープ用基材を用いた粘着テープの粘着力の方が優れており、この下塗り層が、バインダー樹脂成分とMnO2成分とを含む樹脂組成物により形成されていることにより、特に、粘着テープの剥離力を向上させ得ることがわかる。
【0050】
【表4】

【0051】
(参考実験2:参考例10〜24)
MnO2粒子に代えてTiO2粒子を用いて実施例10〜24の粘着テープ用基材と同一条件で参考例10〜24の粘着テープ用基材を作製した。
この参考例10〜24の粘着テープ用基材を用いた粘着テープの粘着力を測定したところ下記表5の通りとなった。
この参考例10〜24の結果は、上記比較例に対して総じて良好なる結果が得られているものの、実施例10〜24の結果と参考例10〜24の結果とを、条件ごとに対比してみた場合には、総じて、実施例10〜24の粘着テープ用基材を用いた粘着テープの粘着力の方が優れており、この下塗り層が、バインダー樹脂成分とMnO2成分とを含む樹脂組成物により形成されていることにより、特に、粘着テープの剥離力を向上させ得ることがわかる。
【0052】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】一実施形態の粘着テープ用基材が用いられた粘着テープを示す断面図。
【図2】バリア放電装置ならびに放電方法を模式的に示した模式図。
【符号の説明】
【0054】
1:基材層、2:下塗り層、3:粘着剤層、4:粘着テープ用基材、10:粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、該基材層上に形成された下塗り層とを有しており、該下塗り層の表面に接触する状態で前記下塗り層上に粘着剤層が形成されて粘着テープが形成される粘着テープ用基材であって、
前記下塗り層は、バインダー樹脂成分とMnO2成分とを含む樹脂組成物により形成されていることを特徴とする粘着テープ用基材。
【請求項2】
前記MnO2成分としてMnO2粒子が用いられ、該MnO2粒子がバインダー樹脂に分散された状態で前記下塗り層が形成されており、前記MnO2粒子の平均粒子径は100μm以下であり、しかも、前記バインダー樹脂とMnO2粒子との合計に占めるMnO2粒子の割合が重量で1%以上である請求項1記載の粘着テープ用基材。
【請求項3】
前記下塗り層の形成に用いられる樹脂組成物には、さらにTiO2成分が含有されている請求項1又は2に記載の粘着テープ用基材。
【請求項4】
前記TiO2成分としてTiO2粒子が用いられ、該TiO2粒子がバインダー樹脂に分散された状態で前記下塗り層が形成されており、前記TiO2粒子の平均粒子径は、100μm以下であり、しかも、前記バインダー樹脂とTiO2粒子との合計に占めるTiO2粒子の割合が重量で1%以上である請求項3記載の粘着テープ用基材。
【請求項5】
前記下塗り層の形成に用いられる樹脂組成物には、さらに難燃剤が含有されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粘着テープ用基材。
【請求項6】
前記基材層にはアセテートクロスが用いられている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粘着テープ用基材。
【請求項7】
基材層と、該基材層上に形成された下塗り層とを有する粘着テープ用基材を用い、前記下塗り層の表面に接触する状態で前記下塗り層上に粘着剤層を形成して粘着テープを形成させる粘着テープ製造方法であって、
前記粘着剤層に接触する下塗り層が、バインダー樹脂成分とMnO2成分とを含む樹脂組成物により形成されている粘着テープ用基材を用いて、該粘着テープ用基材の前記下塗り層の表面に酸素ラジカルを接触させた後に、前記粘着剤層を前記下塗り層上に形成することを特徴とする粘着テープ製造方法。
【請求項8】
前記下塗り層に接触させる酸素ラジカルを、酸素存在下での非熱平衡プラズマにより発生させる請求項7記載の粘着テープ製造方法。
【請求項9】
オゾンガスをオゾン分解触媒に接触させて酸素ラジカルを発生させ、該酸素ラジカルを前記下塗り層に接触させる請求項7記載の粘着テープ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−69281(P2008−69281A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249641(P2006−249641)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】