説明

粘着剤層付き透明導電性フィルム、その製造方法及びタッチパネル

【課題】静電容量方式タッチパネルに用いられる粘着剤層付き透明導電性フィルムであって、フィルム基材が厚み110μm以下の薄型のフィルム基材を用いた場合であっても、さらには、加熱処理によって透明導電体層が結晶化されている場合であっても、パターニングによって生じる段差を小さく抑えること。
【解決手段】フィルム基材と、前記フィルム基材の一方の面に積層され、且つパターニングされた透明導電体層と、前記フィルムの他方の面に積層された粘着剤層とを有する、静電容量方式タッチパネルに用いられる粘着剤層付き透明導電性フィルムであって、前記フィルム基材の厚みは10〜110μmであり、前記フィルム基材と前記粘着剤層の総厚みは30〜300μmであり、且つ、前記粘着剤層は、23℃における貯蔵弾性率が1.2×10〜1.0×10Pa未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム基材の一方の面に透明導電体層を有し、他方の面に粘着剤層を有する粘着剤層付き透明導電性フィルムおよびその製造方法に関する。本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、静電容量方式のタッチパネルの入力装置の電極基板に好適に用いられる。本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムを備えるタッチパネルは、例えば、液晶モニター、液晶テレビ、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話、携帯ゲーム機、カーナビゲーション、電子ペーパー、有機ELディスプレイ等に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電性フィルムとしては、透明なフィルム基材に透明導電体層(例えば、ITO膜)が積層されたものが知られている。また、透明導電性フィルムは、フィルム基材において透明導電体層を設けない側には、他の部材との貼り合せのために粘着剤層が設けられた、粘着剤層付き透明導電性フィルムとして用いられる。
【0003】
前記透明導電性フィルムまたは粘着剤層付き透明導電性フィルムが、静電容量方式のタッチパネルの電極基板に用いられる場合には、前記透明導電体層がパターニングされたものが用いられる(特許文献1)。このようなパターニングされた透明導電体層を有する粘着剤層付き透明導電性フィルムは、他の透明導電性フィルム等とともに積層して用いられ、同時に2本以上の指で操作できるマルチタッチ方式の入力装置に好適に使用される。
【0004】
しかしながら、透明導電体層をパターニングすると、パターニングにより透明導電体層に段差が生じてパターニング部と非パターニング部との相違が明確化して見栄えが悪くなっていた。即ち、視認面側からの外部光が透明導電体層で反射する際や、表示素子側からの内部光が透明導電体層を透過する際に、パターニングの有無が明確となって見栄えが悪くなっていた。
【0005】
そこで、透明導電体層を、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるアンカーコート層を介して形成するとともに、各アンカーコート層の膜厚を調整することにより、透明導電体層のパターンを見え難くした透明導電性フィルムが提案されている(特許文献2)。また、透明導電性フィルムに着色層等の光線透過率を低下させる層を積層することにより、透明導電体層のパターンを見え難くした透明導電性フィルムが提案されている(特許文献3)。また、透明導電体層のパターニング部と非パターニング部の光線透過率差や反射率差を低減させ、透明導電体層のパターニングを見え難くすることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−076432号公報
【特許文献2】特開2010−015861号公報
【特許文献3】特開2010−027391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記パターニングによる見栄えの悪さは、特に、前記透明導電体層を結晶化させるために、前記透明導電性フィルムに加熱処理を施した場合に顕著であった。加熱処理によって透明導電性フィルムにおおきな波状のうねりが生じて、前記パターニングにより形成した透明導電体層の段差が設計値以上に大きくなったこと(例えば、フィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルムの場合には、段差が設計値の5倍以上になる)が原因であると考えられる。また、前記パターニングにより発生する透明導電体層の段差による見栄えの悪さは、フィルム基材が薄いほど顕著になることが分かった。特に、フィルム基材の厚みが110μm以下である場合には、前記段差が大きくなりすぎて実用に供しうるものではなかった。即ち、厚みが大きなフィルム基材が用いられていた粘着剤層付き透明導電性フィルムでは特に問題になっていなかったパターニングにより発生する透明導電体層の段差による見栄えが、粘着剤層付き透明導電性フィルムの薄型化により顕在化することが分かった。
【0008】
本発明は、フィルム基材の一方の面に透明導電体層を有し、他方の面に粘着剤層を有する静電容量方式タッチパネルに用いられる粘着剤層付き透明導電性フィルムであって、フィルム基材が厚み110μm以下の薄型のフィルム基材を用いた場合であっても、さらには、加熱処理によって透明導電体層が結晶化されている場合であっても、パターニングにより形成した段差が設計値よりも大きくなって見栄えが悪くなることを防止することができる粘着剤層付き透明導電性フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は前記粘着剤層付き透明導電性フィルムを用いた静電容量方式タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記粘着剤層付き透明導電性フィルムにより本発明を完成するに到った。
【0011】
即ち本発明は、フィルム基材と、前記フィルム基材の一方の面に積層され、且つパターニングされた透明導電体層と、前記フィルムの他方の面に積層された粘着剤層とを有する、静電容量方式タッチパネルに用いられる粘着剤層付き透明導電性フィルムであって、
前記フィルム基材の厚みは10〜110μmであり、
前記フィルム基材と前記粘着剤層の総厚みは30〜300μmであり、且つ、
前記粘着剤層は、23℃における貯蔵弾性率が1.2×10〜1.0×10Pa未満であることを特徴とする粘着剤層付き透明導電性フィルム、に関する。
【0012】
前記粘着剤層付き透明導電性フィルムとしては、前記透明導電体層が、少なくとも1層のアンダーコート層を介して、前記フィルム基材に積層されているものを用いることができる。
【0013】
前記粘着剤層付き透明導電性フィルムとしては、前記粘着剤層が、オリゴマー防止層を介して、前記フィルム基材に積層されているものを用いることができる。
【0014】
前記粘着剤層付き透明導電性フィルムは、前記パターニングされた透明導電体層が、結晶化している場合に、特に有用である。
【0015】
また本発明は、前記粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法であって、
厚み10〜110μmのフィルム基材の一方の面に透明導電体層が積層されており、且つ、前記フィルム基材の他方の面に、23℃における貯蔵弾性率が1.2×10〜1.0×10Pa未満の粘着剤層であって、前記フィルム基材と前記粘着剤層の厚みの総厚みが30〜300μmになるように制御されている粘着剤層を有する積層体を準備する工程A、
前記工程Aで得られる積層体における前記透明導電体層をパターニングする工程Bを有することを特徴とする粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法、に関する。
【0016】
前記製造方法は、さらに、前記工程Aで得られる積層体を60〜200℃で加熱処理して、前記積層体における透明導電体層を結晶化する工程Cを有することができる。結晶化工程Cを有する場合には、前記工程Aで得られる積層体にパターニングする工程Bを施した後に、結晶化工程Cを施すことが好ましい。
【0017】
また本発明は、前記粘着剤層付き透明導電性フィルムを少なくとも1つ備えていることを特徴とする静電容量方式タッチパネル、に関する。
【発明の効果】
【0018】
パターニングされた透明導電体層を有する透明導電性フィルムは、透明導電体層のパターニング部と非パターニング部において線膨張係数が異なる。また、透明導電体層を結晶化するために、透明導電性フィルムに加熱処理を施してその後に冷却した際には、前記線膨張係数の相違によって、透明導電性フィルムのパターニング部と非パターニング部とで膨張及び収縮挙動が異なることが分かった。そして、このような線膨張係数の相違により生じる膨張及び収縮挙動が、透明導電性フィルム自体においておおきな波状のうねりになり、前記パターニングにより形成した透明導電体層の段差が顕著になり、見栄えが悪化していること考えられる。
【0019】
本発明の粘着剤層付き透明導電性積層体は、フィルム基材の厚みが10〜110μmと薄型のフィルム基材であり、パターニングされた透明導電体層に設計値よりも大きな段差が生じやすいが、前記所定範囲の貯蔵弾性率を満足する粘着剤層を用いることによって、加熱処理を施した場合においても、透明導電性フィルムに生じる波状のうねりを抑えて、パターニングにより形成した段差が設計値よりも大きくなることを防止することができる。
【0020】
また、本発明の粘着剤層付き透明導電性積層体は、フィルム基材が薄いことから、フィルム基材上に透明導電体層を形成する際に、当該フィルム基材中から発生する水分や可塑剤等の蒸気量を少なくすることができるため、品質の高い透明導電体層を形成することができる。また、本発明の粘着剤層付き透明導電性積層体は、薄型のフィルム基材を用いる一方で、フィルム基材と粘着剤層との総厚が30〜300μmになるように制御されている。本発明の粘着剤層付き透明導電性積層体を積層して用いて、マルチタッチ方式のタッチパネルの電極基板に適用する場合には、前記のようにフィルム基材と粘着剤層との総厚を制御することにより、電極間ギャップの設計自由度が広がり、静電容量方式のタッチパネルに好適な透明導電性フィルムを生産性よく得ることができる。
【0021】
また、本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法によれば、薄型のフィルム基材を用いていることから生産性がよく、また、前記所定範囲の貯蔵弾性率を満足する粘着剤層を用いていることから、前記見栄えをよくするための工程を別途追加する必要がなく、製造効率を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る粘着剤層付き透明導電性フィルムを電極基板に用いたタッチパネルの構造の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る粘着剤層付き透明導電性フィルムを電極基板に用いたタッチパネルの構造の一例を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る粘着剤層付き透明導電性フィルムを電極基板に用いたタッチパネルの構造の一例を示す断面図である。
【図9】本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの平面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0024】
図1は、本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの一実施形態を示す断面図である。図1に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム11は、フィルム基材1の一方の片面に、パターニングされた透明導電体層2を有し、他方の片面には粘着剤層3を有している。透明導電体層2は、透明導電体層が形成されているパターニング部aと、透明導電体層が形成されていない非パターニング部bとから構成されている。また、粘着剤層3には、セパレータSが貼り合わせることができる。
【0025】
本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムにおいて透明導電体層2のパターニング部aの線膨張係数は、非パターニング部bの線膨張係数よりも大きいことが好ましい。
【0026】
図2乃至図4は、本発明の他の一実施形態に係る粘着剤層付き透明導電性フィルムを示す断面図である。粘着剤層付き透明導電性フィルム12乃至14は、図1に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム11において、フィルム基材1の片面に、アンダーコート層4を介して、パターニングされた透明導電体層2を有する場合の例である。図2は、1層のアンダーコート層4を有する場合である。本発明のアンダーコート層は2層以上の多層構造であってもよい。アンダーコート層が2層の場合が図3、図4に示されている。
【0027】
図3、図4では、フィルム基材1の側からアンダーコート層41、42がこの順で設けられている。図3に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム12では、非パターニング部bを介してアンダーコート層42が露出している。図4に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム13では、フィルム基材1から最も離れたアンダーコート層42が透明導電体層2と同様にパターニングされている。粘着剤層付き透明導電性フィルム13では、非パターニング部b及びアンダーコート層42の非パターニング部を介してアンダーコート層41が露出している。
【0028】
図3、図4では、アンダーコート層が2層の場合について説明したが、アンダーコート層は3層以上であってもよい。アンダーコート層が3層以上の場合、フィルム基材1の側から第一層目のアンダーコート層が露出していることが好ましい。アンダーコート層が少なくとも2層の場合は、パターニング部と非パターニング部の反射率差を小さく制御するうえで好ましい。特にアンダーコート層が少なくとも2層の場合には、透明なフィルム基材1から最も離れたアンダーコート層(図4のように、アンダーコート層4が2層の場合には、アンダーコート層42)は、透明導電体層と同様にパターニングされていることが、パターニング部と非パターニング部の反射率差を小さく制御するうえで好ましい。
【0029】
図5は、本発明の他の一実施形態に係る粘着剤層付き透明導電性フィルムを示す断面図である。粘着剤層付き透明導電性フィルム15は、図1に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム11において、フィルム基材1の片面に、オリゴマー層Gを介して、粘着剤層3を有する場合の例である。なお、図5では、図1に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム11についての態様を記載しているが、図2乃至図4に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム12乃至14についても、同様にオリゴマー層Gを設けることができる。
【0030】
フィルム基材1としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、その材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。
【0031】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルム、例えば、(A)側鎖に置換及び/又は非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換及び/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられる。具体的には、イソブチレン及びN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物の高分子フィルムを用いることができる。
【0032】
フィルム基材1の厚みは10〜110μmである。前記厚みは10〜80μm、さらには10〜60μm、さらには10〜30μmの薄型の場合においても本発明は好適である。上記フィルム基材1を上記範囲のように薄くすれば、粘着剤層付き透明導電性フィルムの総厚みが薄くなることに加え、例えば、透明導電体層2をスパッタ法により形成する際、フィルム基材1の内部から発生する揮発成分量が少なくなり、結果的に欠陥の少ない透明導電体層を形成することができる。
【0033】
フィルム基材1には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施してもよい。これにより、この上に設けられる透明導電体層2またはアンダーコート層4のフィルム基材1に対する密着性を向上させることができる。また、透明導電体層2またはアンダーコート層4を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0034】
透明導電体層2の構成材料としては特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられる。
【0035】
透明導電体層2の厚みは特に制限されないが、10nm以上とするのが好ましく、15〜40nmであることがより好ましく、20〜30nmであることがさらに好ましい。透明導電体層2の厚みが15nm以上であると、表面抵抗を1×103Ω/□以下の良好なものとし易い。また、連続被膜を形成し易い。また、透明導電体層2の厚みが40nm以下であると、より透明性の高い層とすることができる。
【0036】
透明導電体層2の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0037】
透明導電体層2はパターニングされている。透明導電体層2のパターニングはエッチングにより行なわれる。パターニングの形状は、各種態様の粘着剤層付き透明導電性フィルムが適用される用途に応じて、各種形状を形成することができる。なお、透明導電体層2のパターニングにより、パターニング部と非パターニング部が形成されるが、パターニング部の形状としては、例えば、ストライプ状、スクエア状等が挙げられる。図9は、図1に示した粘着剤層付き透明導電性フィルムの平面図である。図9に示すように、透明導電体層2は、パターニング部aと非パターニング部bとがストライプ状に形成されている。なお、図9では、パターニング部aの幅が非パターニング部bの幅より大きいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0038】
透明導電体層2は、後述のアンダーコート層4との屈折率の差が0.1以上とすることが好ましい。透明導電体層2の屈折率は、通常、1.95〜2.05程度である。
【0039】
アンダーコート層4は、無機物、有機物、又は、無機物と有機物との混合物により形成することができる。例えば、無機物として、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al23(1.63)などの無機物〔上記各材料の括弧内の数値は屈折率である〕が挙げられる。これらのなかでも、SiO2、MgF2、A123などが好ましく用いられる。特に、SiO2が好適である。上記の他、酸化インジウムに対して、酸化セリウムを10〜40重量部程度、酸化錫を0〜20重量部程度含む複合酸化物を用いることができる。
【0040】
また、上記有機物としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などが挙げられる。これら有機物は、少なくとも1種が用いられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
【0041】
アンダーコート層4は、フィルム基材1と透明導電体層2の間に設けることができ、導電体層としての機能を有しないものである。すなわち、アンダーコート層4は、パターニングされた透明導電体層2の間を絶縁する誘電体層として設けられる。従って、アンダーコート層4は、通常、表面抵抗が、1×106Ω/□以上であり、好ましくは1×107Ω/□以上、さらに好ましくは1×108Ω/□以上である。なお、アンダーコート層4の表面抵抗の上限に特に制限はない。一般的には、アンダーコート層4の表面抵抗の上限は測定限界である、1×1013Ω/□程度であるが、1×1013Ω/□を超えるものであってもよい。
【0042】
アンダーコート層4の屈折率は、透明導電体層2の屈折率とアンダーコート層の屈折率の差が、0.1以上を有するものとするのが好ましい。透明導電体層2の屈折率とアンダーコート層の屈折率の差は、0.1以上0.9以下、さらには0.1以上0.6以下であるのが好ましい。なお、アンダーコート層4の屈折率は、通常、1.3〜2.5、さらには1.38〜2.3、さらには1.4〜2.3であるのが好ましい。
【0043】
フィルム基材1から第一層目のアンダーコート層(例えば、アンダーコート層41)は、有機物により形成されていることが、透明導電体層2をエッチングによりパターニングする上で好ましい。アンダーコート層4が1層の場合(例えば、図2に示すアンダーコート層4の場合)には、アンダーコート層4は、有機物により形成するのが好ましい。
【0044】
またアンダーコート層4が少なくとも2層ある場合には、少なくとも、フィルム基材1から最も離れたアンダーコート層(例えば、アンダーコート層42)は、無機物により形成されていることが、透明導電体層2をエッチングによりパターニングする上で好ましい。アンダーコート層4が3層以上ある場合には、フィルム基材1から第二層目より上のアンダーコート層についても無機物により形成されていることが好ましい。
【0045】
無機物により形成されたアンダーコート層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスとして、またはウェット法(塗工法)などにより形成できる。アンダーコート層を形成する無機物としては、前述の通り、SiOが好ましい。ウェット法では、シリカゾル等を塗工することによりSiO2膜を形成することができる。
【0046】
以上から、アンダーコート層4を2層設ける場合には、第一アンダーコート層41を有機物により形成し、第二アンダーコート層42を無機物により形成するのが好ましい。
【0047】
アンダーコート層4の厚みは、特に制限されるものではないが、光学設計、前記フィルム基材1からのオリゴマー発生防止効果の点から、通常、1〜300nm程度であり、好ましくは5〜300nmである。なお、アンダーコート層4を2層以上設ける場合、各層の厚みは、5〜250nm程度であり、好ましくは10〜250nmである。
【0048】
粘着剤層3は、透明導電性フィルムをタッチパネル等の入力装置内に組み込んで固定するために使用される。粘着剤層3は、23℃における貯蔵弾性率が1.2×10〜1.0×10Pa未満である。かかる貯蔵弾性率を有する粘着剤層3をフィルム基材1に積層して用いることで、剛直な基材と貼り合せた際、フィルム基材1をよりフラットに保つ力が働くため、パターニングされた透明導電体層のパターニング段差が大幅に抑制される。前記粘着剤層3の貯蔵弾性率は、1.5×10Pa以上が好ましく、さらには2.0×10Pa以上が好ましい。一方、前記粘着剤層3の貯蔵弾性率は、5.0×106Pa以下が好ましい。前記粘着剤層3の貯蔵弾性率が1.2×10Pa未満であるとパターニング段差が十分に低減できないおそれがあり、一方、前記貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であると粘着剤層の粘着特性が損なわれるおそれがある。
【0049】
上記粘着剤層3の貯蔵弾性率は、粘着剤に係わるベースポリマー種類、Tg(例えば、ベースポリマーのTgを上げることで貯蔵弾性率の値は高くすることができる)、架橋剤の種類、配合量(例えば、架橋剤の配合量を多くすることで貯蔵弾性率の値は高くすることができる)を制御することにより適宜増加ないし減少させることができる。例えば、架橋剤の割合を増加させることにより、貯蔵弾性率は増加し、架橋剤を減少させる貯蔵弾性率は減少する。
【0050】
粘着剤層3としては、上記貯蔵弾性率を満たすものであれば、特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0051】
前記アクリル系粘着剤としては、例えば、ベースポリマーとして、ガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントおよびガラス転移温度が40℃以上の(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントを有するブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有する粘着剤を用いることができる。
【0052】
(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントのガラス転移温度は0℃以下であり、通常の使用温度において被着体への濡れ性と粘着剤としての柔軟性を付与して、本発明の粘着剤層に接着力を発現させる。(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントのガラス転移温度は−20℃以下が好ましく、より好ましくは−30℃以下であり、通常、ガラス転移温度は、−70℃以上である。(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントのガラス転移温度は−20℃以下であると、低温条件下での耐久性が優れる点で好ましい。
【0053】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントのガラス転移温度は40℃以上であり、通常の使用温度において凝集力を付与して、本発明の粘着剤層に優れた粘着特性と耐久性を発現させる。(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントのガラス転移温度は80℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上であり、通常、ガラス転移温度は、150℃以下である。(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントのガラス転移温度は80℃以上であると、高温条件下での耐久性が優れる点で好ましい。
【0054】
前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体は、前記(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントおよび(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントを有するものを用いることができる。例えば、(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントをA、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントをBとしてはそれぞれ示すと、ブロック共重合体としては、例えば、A−B、で表されるジブロック共重合体;A−B−A、B−A−B、で表されるトリブロック共重合体;さらには、テトラブロック共重合体、それ以上にA、Bを組み合わせたものを例示できる。また、グラフト共重合体としては、AまたはBを主鎖として、主鎖とは異なるセグメントを側鎖とするものが挙げられる。なお、A、Bが2つ以上ある場合には、各A、Bは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0055】
本発明の粘着剤のベースポリマーとしては、前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体を用いることができるが、ガラス転移温度と分子量を制御しやすい点からブロック共重合体が好ましく、ブロック共重合体のなかでも、B−A−B、で表されるトリブロック共重合体を用いることが、より粘着特性とバルク物性を制御しやすい点から好ましい。
【0056】
前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体の重量平均分子量は、50,000〜300,000であり、耐久性とリワーク性の両方の観点から、60,000〜250,000であることが好ましく、70,000〜200,000であることがより好ましい。
【0057】
ブロック共重合体またはグラフト共重合体の分子量分布(Mw/Mn))は1.0〜1.5であり、高温での凝集力が高く、耐久性に優れる観点から、1.0〜1.4であることが好ましく、1.0〜1.3であることがより好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位の主成分として含有し、ガラス転移温度が0℃以下を満足するものであれば、モノマー単位の種類や成分組成は特に制限されないが、総モノマー単位の50重量%以上、さらには60重量%以上が(メタ)アクリル酸アルキルエステルであるのが、ガラス転移温度を制御するうえで好ましい。
【0059】
(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントの主モノマー単位である、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントは、アクリル酸アルキルエステルを主モノマー単位とするアクリル系重合体セグメントであることが好ましい。前記主モノマー単位としては、前記例示のなかでも、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等のアルキル基の炭素数が1〜9のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0060】
前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体における、(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントの重量比は、安定した接着力と耐久性を得る点から、50%〜95%が好ましく、60%〜85%であることがより好ましい。(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントの重量比が50%より少ない場合は、接着力が低くなりやすい。また、(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントの重量比が95%より多い場合には、(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントの割合が少ないために、凝集力が低下し光学フィルム用粘着剤として用いた場合に耐久性の点で好ましくない。
【0061】
(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントは、メタクリル酸アルキルエステルをモノマー単位の主成分として含有し、ガラス転移温度が40℃以上を満足するものであれば、モノマー単位の種類や成分組成は特に制限されないが、総モノマー単位の15重量%以上、さらには20重量%以上がメタクリル酸アルキルエステルであるのが、ガラス転移温度を制御するうえで好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントの主モノマー単位である、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントは、メタクリル酸アルキルエステルを主モノマー単位とするメタクリル系重合体セグメントであることが好ましい。前記主モノマー単位としては、前記例示のなかでも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のアルキル基の炭素数が1〜2のメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0063】
なお、前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体における、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントの重量比は、上記の(メタ)アクリル系重合体(A)セグメント以外の割合である。
【0064】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)セグメント、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントには、各セグメントの総モノマー単位の10重量%以下の範囲であれば、他のモノマー単位が含まれてもよい。前記他のモノマー単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド等のカルボキシル基を有するビニル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系モノマー等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせても挙げることができる。
【0065】
前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体の製造方法は、前記(メタ)アクリル系重合体(A)セグメント、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントを有するブロック共重合体またはグラフト共重合体が得られる限りにおいて特に限定されることなく、公知の手法に準じた方法を採用することができる。一般に、分子量分布の狭いブロック共重合体を得る方法としては、構成単位であるモノマーをリビング重合する方法が採用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法(特開平6−93060号公報)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩等の鉱酸塩存在下でアニオン重合する方法(特公平7−25859号公報参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11−335432号公報)、原子移動ラジカル重合方法(ATRP)(Macromol. Chem. Phys. 201,1108〜1114頁(2000年)等が挙げられる。またグラフト共重合体を得る方法としては、特許第4228026号明細書等に記載の方法が挙げられる。
【0066】
上記の製造方法のうち、有機アルミニウム化合物を除触媒とするアニオン重合方法による場合は、重合途中の失活が少ないため失活成分であるホモポリマーの混入が少なく、その結果、得られる粘着剤の透明性が高い。また、モノマーの重合転化率が高いため、製品中の残存モノマーが少なく、光学フィルム用粘着剤として使用する際、貼り合わせ後の気泡の発生を抑制することができる。さらに、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントブロックの分子構造が高シンジオタクチックとなり、光学フィルム用粘着剤に用いた場合に耐久性を高める効果がある。そして、比較的緩和な温度条件下でリビング重合が可能であることから、工業的に生産する場合に、環境負荷(主に重合温度を制御するための冷凍機にかかる電力)が少なくて済む利点がある。
【0067】
上記の有機アルミニウム化合物の存在下でのアニオン重合方法としては、例えば、有機リチウム化合物、および下記一般式(1):
AlR (1)
(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基またはN,N−二置換アミノ基を表すか、またはRが前記したいずれかの基を表し、RおよびRは一緒になって置換基を有していてもよいアリーレンジオキシ基を表す。)で表される有機アルミニウム化合物の存在下に、必要に応じて、反応系内に、ジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、12−クラウン−4等のエーテル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ピリジン、2,2’−ジピリジル等の含窒素化合物をさらに用いて、(メタ)アクリル酸エステルを重合させる方法等を採用することができる。
【0068】
上記有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、テトラメチレンジリチウム、ペンタメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウム等のアルキルリチウムおよびアルキルジリチウム;フェニルリチウム、m−トリルリチウム、p−トリルリチウム、キシリルリチウム、リチウムナフタレン等のアリールリチウムおよびアリールジリチウム;ベンジルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、トリチルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、α−メチルスチリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムの反応により生成するジリチウム等のアラルキルリチウムおよびアラルキルジリチウム;リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド等のリチウムアミド;メトキシリチウム、エトキシリチウム、n−プロポキシリチウム、イソプロポキシリチウム、n−ブトキシリチウム、sec−ブトキシリチウム、tert−ブトキシリチウム、ペンチルオキシリチウム、ヘキシルオキシリチウム、ヘプチルオキシリチウム、オクチルオキシリチウム、フェノキシリチウム、4−メチルフェノキシリチウム、ベンジルオキシリチウム、4−メチルベンジルオキシリチウム等のリチウムアルコキシドが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
また、上記一般式で表される有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリs−ブチルアルミニウム、トリt−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジメチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジエチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジエチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジ−n−オクチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジ−n−オクチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム等のジアルキルフェノキシアルミニウム、メチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、メチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メルフェノキシ)アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム等のアルキルジフェノキシアルミニウム、メトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、tert−ブトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、tert−ブトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、tert−ブトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム等のアルコキシジフェノキシアルミニウム、トリス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、トリス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウム等のトリフェノキシアルミニウム等を挙げることができる。これらの有機アルミニウム化合物の中でも、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム等が、取り扱いの容易であり、また、比較的緩和な温度条件下で失活なくアクリル酸エステルの重合を進行させることができる点で特に好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
また、前記アクリル系粘着剤としては、アルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとして、これに架橋剤を配合したものを用いることができる。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0071】
アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は1〜14程度であり、アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、等を例示でき、これらは単独または組み合わせて使用できる。これらの中でもアルキル基の炭素数1〜9のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0072】
前記アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、1種類以上の各種モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、窒素含有モノマー(複素環含有モノマーを含む)、芳香族含有モノマー等が挙げられる。
【0073】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。これらのなかでもアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0074】
水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどが挙げられる。
【0075】
また、窒素含有モノマーとしては、例えば、マレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド;N−アクリロイルモルホリン;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、3−(3−ピリニジル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマーなども改質目的のモノマー例として挙げられる。
【0076】
芳香族含有モノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
上記モノマーの他に、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。
【0078】
さらに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。
【0079】
これらの中でも、架橋剤との反応性が良好である点から、水酸基含有モノマーが好適に用いられる。また、接着性、接着耐久性の点から、アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。
【0080】
アクリル系ポリマー中の前記共重合モノマーの割合は、特に制限されないが、重量比率において、50重量%以下である。好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜8重量%、さらに好ましくは1〜6重量%である。
【0081】
アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、30万〜250万程度であるのが好ましい。前記アクリル系ポリマーの製造は、各種公知の手法により製造でき、たとえば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50〜80℃程度、反応時間は1〜8時間とされる。また、前記製造法の中でも溶液重合法が好ましく、アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。
【0082】
前記アクリル系ポリマーには配合される架橋剤は、透明導電性フィルムとの密着性や耐久性を向上でき、また高温での信頼性や粘着剤自体の形状の保持を図ることができる。架橋剤としては、イソシアネート系、エポキシ系、過酸化物系、金属キレート系、オキサゾリン系などを適宜に使用可能である。これら架橋剤は1種を、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート化合物が用いられる。イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したアダクト系イソシアネート化合物;イソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらには公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどを付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどが挙げられる。
【0084】
上記イソシアネート系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、前記ポリイソシアネート化合物架橋剤を0.01〜2重量部含有してなることが好ましく、0.02〜2重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜1.5重量部含有してなることがさらに好ましい。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0085】
過酸化物系架橋剤としては、各種過酸化物が用いられる。過酸化物としては、ジ(2‐エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ‐sec‐ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t‐へキシルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ‐n‐オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシイソブチレート、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシ2‐エチルヘキサノエート、ジ(4‐メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t‐ブチルパーオキシイソブチレート、などが挙げられる。これらのなかでも、特に架橋反応効率に優れる、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシドが好ましく用いられる。
【0086】
前記過酸化物は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、前記過酸化物0.01〜2重量部であり、0.04〜1.5重量部含有してなることが好ましく、0.05〜1重量部含有してなることがより好ましい。加工性、リワーク性、架橋安定性、剥離性などの調整の為に、この範囲内で適宜選択される。
【0087】
さらに、本発明の粘着剤には、シランカップリング剤を含有することできる。シランカップリング剤を用いることにより、耐久性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、任意の適切な官能基を有するものを用いることができる。具体的には、官能基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリロキシ基、アセトアセチル基、イソシアネート基、スチリル基、ポリスルフィド基等が挙げられる。具体的には、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シランカップリング剤;γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のポリスルフィド基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0088】
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記シランカップリング剤0.001〜5重量部が好ましく、さらには0.01〜1重量部が好ましく、さらには0.02〜1重量部がより好ましく、さらには0.05〜0.6重量部が好ましい。
【0089】
また、粘着剤層3には必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また透明微粒子を含有させて光拡散性が付与された粘着剤層3とすることもできる。
【0090】
尚、前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、酸化カルシウム、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性の無機系微粒子や、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタンの如き適宜なポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子など適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。
【0091】
粘着剤層3は、通常、ベースポリマー又はその組成物を溶剤に溶解又は分散させた固形分濃度が10〜50重量%程度の粘着剤溶液として用いられる。前記溶剤としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤や水等の粘着剤の種類に応じたものを適宜に選択して用いることができる。
【0092】
粘着剤層3の厚みは、当該粘着剤層3の厚みと前記フィルム基材1の厚みとの合計の総厚みが30〜300μmになるように制御される。前記総厚みは20〜280μmが好ましく、さらには20〜170μmが好ましく、さらには20〜110μmが好ましい。前記総厚みを前記範囲に制御することにより、マルチタッチ方式のタッチパネルの電極基板に適用する場合には、電極間ギャップの設計自由度が広がり、静電容量方式のタッチパネルに好適な透明導電性フィルムを生産性よく得ることができる。粘着剤層3の厚みは、具体的には、10〜170μmの範囲が好ましくは、さらに好ましくは10〜110μm、さらに好ましくは10〜80μmの範囲から選択される。
【0093】
前記粘着剤層3は、フィルム基材1に粘着剤溶液を、直接、塗布し、乾燥することにより形成することができる。また、セパレータSに粘着剤溶液を塗布し、乾燥して粘着剤層3を形成し、セパレータS上に形成された粘着剤層3は、フィルム基材1に転写することにより、フィルム基材1に、セパレータS付の粘着剤層3として積層することができる。
【0094】
セパレータSを用いて粘着剤層3を転写する場合、その様なセパレータSとしては、例えばポリエステルフィルムの少なくとも粘着剤層3と接着する面に移行防止層及び/又は離型層が積層されたポリエステルフィルム等を用いるのが好ましい。
【0095】
セパレータSの総厚は、30μm以上であることが好ましく、60〜100μmの範囲内であることがより好ましい。粘着剤層3の形成後、ロール状態にて保管する場合に、ロール間に入り込んだ異物等により発生することが想定される粘着剤層3の変形(打痕)を抑制する為である。
【0096】
前記移行防止層としては、ポリエステルフィルム中の移行成分、特に、ポリエステルの低分子量オリゴマー成分の移行を防止する為の適宜な材料にて形成することができる。移行防止層の形成材料として、無機物若しくは有機物、又はそれらの複合材料を用いることができる。移行防止層の厚みは、0.01〜20μmの範囲で適宜に設定することができる。移行防止層の形成方法としては特に限定されず、例えば、塗工法、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法などが用いられる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法等も用いることができる。
【0097】
前記離型層としては、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブテン等の適宜な剥離剤からなるものを形成することができる。離型層の厚みは、離型効果の点から適宜に設定することができる。一般には、柔軟性等の取り扱い性の点から、該厚みは20μm以下であることが好ましく、0.01〜10μmの範囲内であることがより好ましく、0.1〜5μmの範囲内であることが特に好ましい。離型層の形成方法としては特に制限されず、前記移行防止層の形成方法と同様の方法を採用することができる。
【0098】
前記塗工法、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法に於いては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の電離放射線硬化型樹脂や前記樹脂に酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、マイカ等を混合したものを用いることができる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法又は電気メッキ法を用いる場合、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト又はスズやこれらの合金等からなる金属酸化物、ヨウ化鋼等からなる他の金属化合物を用いることができる。
【0099】
また、フィルム基材1に粘着剤層3を積層するにあたっては、粘着剤層3を積層するフィルム基材1の面にオリゴマー防止層Gを設けることができる。オリゴマー防止層Gの形成材料としては透明な膜を形成しうる適宜なものが用いられ、無機物、有機物またはそれらの複合材料であってもよい。その膜厚は0.01〜20μmであることが好ましい。また、当該オリゴマー防止層5の形成にはコーターを用いた塗布法やスプレー法、スピンコート法、インラインコート法などが用いられることが多いが真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法といった手法が用いられていてもよい。コーティング法においては、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、UV硬化型樹脂、エポキシ系樹脂等の樹脂成分やこれらアルミナ、シリカ、マイカ等の無機粒子の混合物を使用してもよい。または、高分子基板を2層以上の共押出しにより基材成分に防止層5の機能を持たせてもよい。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法といった手法においては、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルトもしくはスズやこれらの合金等からなる金属、または酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化カドミウムもしくはこれらの混合物からなる金属酸化物、ヨウ化鋼等からなる他の金属化合物を用いることができる。
【0100】
前記例示のオリゴマー防止層Gの形成材料のなかでも、ポリビニルアルコール系樹脂はオリゴマー防止機能に優れており、特に本発明の用途において好適である。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコールを主成分として、通常、ポリビニルアルコールの含有量は30〜100重量%の範囲が好ましい。ポリビニルアルコールの含有量が30重量%以上の場合にオリゴマー析出防止効果がよい。ポリビニルアルコールとともに混合することができる樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン等の水系樹脂が挙げられる。ポリビニルアルコールの重合度は特に限定されるわけではないが、通常、300〜4000のものが用途上好適である。ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されるわけではないが、通常、70モル%以上、99.9モル%以上のものが好適である。ポリビニルアルコール系樹脂には架橋剤を併用することもできる。当該架橋剤の具体例としては、メチロール化またはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系の各種化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコ‐アルミネートカップリング剤等が挙げられる。これら架橋成分は、バインダーポリマーと予め結合していてもよい。また、固着性、滑り性改良を目的として無機系粒子を含有してもよく、具体例として、シリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、バリウム塩等が挙げられる。さらに必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機系高分子粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0101】
なお、前記のように、前記フィルム基材1と粘着剤層3の総厚みは、30〜300μmになるように制御されるが、前記フィルム基材1と粘着剤層3の間に、オリゴマー防止層Gを設ける場合には、オリゴマー防止層Gにより形成される層を含めて、前記フィルム基材1と粘着剤層3の総厚みが前記範囲になるように制御するのが好ましい。
【0102】
本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法は、前記構成のものが得られる方法であれば特に制限はない。例えば、厚み10〜110μmのフィルム基材1の一方の面に透明導電体層が積層されており、且つ、前記フィルム基材の他方の面に、前記所定の貯蔵弾性率を満足する粘着剤層であって、前記粘着剤層の厚みが、前記フィルム基材と前記粘着剤層の総厚みを30〜300μmになるように制御されている粘着剤層を有する積層体(透明導電体層がパターニングされていない粘着剤層付き透明導電性フィルム)を準備する工程Aにより、前記積層体を準備した後、前記積層体における透明導電体層をパターニングする工程Bを施すことにより、本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムを得ることができる。
【0103】
前記積層体の準備工程Aでは、通常は、フィルム基材1の一方の面に透明導電体層2(アンダーコート層4を含む場合あり)を形成して透明導電性フィルムを製造した後、当該透明導電性フィルムの他方の面に、前記粘着剤層3は積層される。粘着剤層3は前述の通りフィルム基材1に直接形成してもよく、セパレータSに粘着剤層3を設けておき、これを前記フィルム基材1に貼り合わせてもよい。後者の方法では、粘着剤層3の形成を、フィルム基材1をロール状にして連続的に行なうことができるので、生産性の面で一層有利である。
【0104】
パターニング工程Bでは、前記透明導電体層2をエッチングすることによりパターニングを行なうことができる。エッチングに際しては、パターンを形成するためのマスクにより透明導電体層2を覆って、エッチング液により、透明導電体層2をエッチングする。
【0105】
透明導電体層2は、酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズが好適に用いられるため、エッチング液としては、酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液が挙げられる。
【0106】
アンダーコート層4が少なくとも2層ある場合には、透明導電体層2のみをエッチングしてパターニングすることができる他、透明導電体層2を、酸によりエッチングしてパターニングした後に、少なくとも、フィルム基材1から最も離れたアンダーコート層を透明導電体層2と同様にエッチングしてパターニングすることができる。好ましくは、フィルム基材1から第一層目のアンダーコート層以外の透明導電体層2を透明導電体層2と同様にエッチングしてパターニングすることができる。
【0107】
アンダーコート層4のエッチングに際しては、透明導電体層2をエッチングした場合と同様のパターンを形成するためのマスクによりアンダーコート層4を覆って、エッチング液により、アンダーコート層4をエッチングする。第二層目より上のアンダーコート層は、前述の通り、SiO等の無機物が好適に用いられるため、エッチング液としては、アルカリが好適に用いられる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水溶液、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、第一層目の透明導電体層は、酸またはアルカリによって、エッチングされないような有機物により形成するのが好ましい。
【0108】
2層のアンダーコート層4を介して、パターニングされた透明導電体層2が設けられている場合、当該パターニング部における、各層の屈折率(n)、厚み(d)、及び前記各層の光学厚み(n×d)の合計は、以下の通りとすることができる。これにより、パターニング部と非パターニング部の反射率の差を小さく設計できる。
【0109】
フィルム基材1から第一層目のアンダーコート層41は、屈折率(n)は1.5〜1.7とすることができ、1.5〜1.65が好ましく、1.5〜1.6であるのがより好ましい。厚み(d)は100〜220nmが好ましく、さらには120〜215nm、さらには130〜210nmであるのが好ましい。
【0110】
フィルム基材1から第二層目のアンダーコート層42は、屈折率(n)は1.4〜1.5とすることができ、1.41〜1.49が好ましく、1.42〜1.48であるのがより好ましい。厚み(d)は20〜80nmが好ましく、さらには20〜70nm、さらには20〜60nmであるのが好ましい。
【0111】
透明導電体層2は、屈折率(n)が1.9〜2.1とすることができ、1.9〜2.05が好ましく、1.9〜2.0がより好ましい。厚み(d)は15〜30nmが好ましく、さらには15〜28nm、さらには15〜25nmであるのが好ましい。
【0112】
前記各層(第一層目のアンダーコート層41、第二層目のアンダーコート層42、透明導電体層2)の光学厚み(n×d)の合計は208〜554nmとすることかでき、230〜500nmが好ましく、250〜450nmであるのがより好ましい。
【0113】
また、前記パターニング部の光学厚みの合計と、非パターニング部のアンダーコート層の光学厚みの差(Δnd)は、40〜130nmとすることかできる。前記光学厚みの差(Δnd)は40〜120nmが好ましく、40〜110nmであるのがより好ましい。
【0114】
さらに、本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムには、前記工程Aで準備した積層体を60〜200℃で加熱処理して、前記積層体における透明導電体層2を結晶化する工程Cを施すことができる。結晶化工程Cによる加熱処理により、透明導電体層2は、結晶化される。本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、上記所定の貯蔵弾性率を有する粘着剤層3が積層されているため、加熱処理が施された場合においても、フィルムのうねりを小さく抑えることができる。
【0115】
結晶化に際しての加熱温度は、通常、60〜200℃程度であり、好ましくは100〜150℃である。また加熱処理時間は、5〜250分間である。かかる観点からすれば、フィルム基材1は、上記加熱処理が施されることから、100℃以上、更には150℃以上の耐熱性を有することが好ましい。
【0116】
また、パターニング工程Bにより、透明導電体層2がパターニングされている場合には、フィルムのうねりが大きくなり、透明導電体層の段差による見栄えの悪さが顕著になる傾向にある。そのため、前記結晶化工程Cは、前記工程Aで準備される積層体にパターニング工程Bを施した後に施すことが好ましい。また、透明導電体層2を結晶化するとエッチングが困難になる場合があることからも、結晶化工程Cは、パターニング工程Bにより透明導電体層2をパターニングした後に行うことが好ましい。さらに、アンダーコート層4をエッチングする場合には、アンダーコート層4のエッチングの後に結晶化工程Cを行うことが好ましい。
【0117】
本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、静電容量方式のタッチパネルの入力装置の電極基板に用いることができる。静電容量方式のタッチパネルは、マルチタッチ方式を採用することができ、本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、前記電極基板の一部として用いることができる。図6乃至図8は、図1に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム11を前記電極基板に適用した場合のタッチパネルの入力装置の断面図である。
【0118】
図6は、フェイスダウンタイプに係わり、図1に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム11を、ウインドウWに対して、透明導電体層2が下向きになるように2枚積層して用いられている場合である。上側の粘着剤層付き透明導電性フィルム11の粘着剤層3がウインドウWに貼り合わされている。一方、下側の粘着剤層付き透明導電性フィルム11は、粘着剤層3´を介してフィルム基材1´に貼り合わされている。フィルム基材1´の下面には機能層Fが設けられている。
【0119】
図7は、フェイスアップタイプに係わり、図1に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム11を、ウインドウWに対して、透明導電体層2が上向きになるように1枚用いられている場合である。粘着剤層付き透明導電性フィルム11の透明導電体層2が、粘着剤層3´を介してウインドウWに貼り合わされている。一方、粘着剤層付き透明導電性フィルム11の粘着剤層3には、別の透明導電性フィルム(フィルム基材1´にパターニングされた透明導電体層2´が設けられたもの)の透明導電体層2´の側が貼り合わされている。フィルム基材1´の下面には機能層Fが設けられている。
【0120】
図8は、両面タイプに係わる。図8では、図1に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム11を、ウインドウWに対して、透明導電体層2が上向きになるように1枚用いられており、粘着剤層付き透明導電性フィルム11の透明導電体層2が、粘着剤層3´を介してウインドウWに貼り合わされている。一方、粘着剤層付き透明導電性フィルム11の粘着剤層3には、別の透明導電性フィルム(フィルム基材1´´にパターニングされた透明導電体層2´が設けられたもの)のフィルム基材1´´の側が貼り合わされている。さらに、粘着剤層3´´を介してフィルム基材1´´が貼り合わされている。フィルム基材1´´の下面には機能層Fが設けられている。
【0121】
上記図6乃至図8では、図1に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム11を用いた場合を例示しているが、図2乃至図5に示す粘着剤層付き透明導電性フィルム12乃至15、その他の態様ものも同様に用いることができる。また、図6乃至図8は、マルチタッチ方式の一例を示すものであり、粘着剤層付き透明導電性フィルムの積層数、積層の組み合わせ、順序、等は適宜に組み合わせることができる。
【0122】
なお、図6乃至図8に示す、フィルム基材1´、1´´に用いられる材料としては、フィルム基材1に例示したものを用いることができる。フィルム基材1´、1´´の厚みは特に制限されないが、通常は、10〜110μmであるのが好ましい。
【0123】
また、粘着剤層3´、3´´として特に制限はないが、粘着剤層3に例示したものを用いることができる他、従来、タッチパネルにおいて透明導電性フィルムの貼り合せに用いられていたものを用いることができる。粘着剤層3´、3´´の厚みは特に制限されないが、通常は、10〜170μmであるのが好ましい。
【0124】
ウインドウWは、通常、ガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板等が用いられる。
【0125】
また機能層Fとしては、防眩処理層や反射防止層を設けることができる。
【0126】
防眩処理層の構成材料としては特に限定されず、例えば電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。防眩処理層の厚みは0.1〜30μmが好ましい。
【0127】
反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられる。反射防止機能を一層大きく発現させる為には、酸化チタン層と酸化ケイ素層との積層体を用いることが好ましい。
【実施例】
【0128】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部、%は特記がない限りいずれも重量基準である。
【0129】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)の測定>
装置:東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(HLC−8020)
カラム:東ソー社製TSKgel GMHXL、G4000HXLおよびG5000HXLを直列に連結
溶離剤:テトラヒドロフラン
溶離剤流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)
検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
【0130】
<プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)分光法による共重合体における各共重合成分の含有量の測定>
装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置(JNM−LA400)
溶媒:重クロロホルム
1H−NMRスペクトルにおいて、3.6ppm、および、4.0ppm付近のシグナルは、それぞれ、メタクリル酸メチル単位のエステル基(−O−CH)、および、アクリル酸n−ブチル単位のエステル基−O−CH−CH−CH−CH)に帰属され、その積分値の比によって共重合成分の含有量を求めた。
【0131】
<屈折率>
各層の屈折率は、アタゴ社製のアッベ屈折率計を用い、各種測定面に対して測定光を入射させるようにして、該屈折計に示される規定の測定方法により測定を行った。
【0132】
<各層の厚み>
フィルム基材、透明基体、ハードコート層、粘着剤層等の1μm以上の厚みを有するものに関しては、ミツトヨ製マイクロゲージ式厚み計にて測定を行った。ハードコート層、粘着剤層等の直接厚みを計測することが困難な層の場合は、各層を設けた基材の総厚みを測定し、基材の厚みを差し引くことで各層の膜厚を算出した。
【0133】
第一層目のアンダーコート層、第二層目のアンダーコート層、ITO膜等の厚みは、大塚電子(株)製の瞬間マルチ測光システムであるMCPD2000(商品名)を用い、干渉スペクトルよりの波形を基礎に算出した。
【0134】
<アンダーコート層の表面抵抗>
JIS K 6911(1995)に準拠する二重リング法に従って、三菱化学(株)製の表面高抵抗計を用いて、アンダーコート層の表面電気抵抗(Ω/□)を測定した。
【0135】
実施例1
(粘着剤層を形成するポリマーの調製)
2Lの三口フラスコに三方コックをつけ内部を窒素で置換した後、室温にてトルエン868g、1,2−ジメトキシエタン43.4g、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム40.2mmolを含有するトルエン溶液60.0gを加え、さらにsec−ブチルリチウム6.37mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液3.68gを加えた。続いて、これにメタクリル酸メチル(MMA)51.5gを加え、室温にて60分攪拌した。引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル(nBA)240gを2時間かけて滴下した。次に、メタクリル酸メチル51.5gを加え、一晩室温にて攪拌後、メタノ−ル3.50gを添加して重合反応を停止した。得られた反応液をメタノール中に注ぎ、沈澱物を濾過により回収した。これを乾燥させることにより、ブロック共重合体1を340g得た。
【0136】
H−NMR測定とGPC測定の結果、上記トリブロック共重合体1は、PMMA−PnBA−PMMAのトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は7.9×10であり、数平均分子量(Mn)は6.2×10であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.27であった。なお、PMMA−PnBA−PMMAは、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸n−ブチル−ポリメタクリル酸メチルを表す。トリブロック共重合体1のモノマー単位の重量比は、nBA/MMA=70/30であった。
【0137】
(粘着剤層の形成)
上記ブロック共重合体1をトルエンに溶解して固形分濃度30%の粘着剤溶液を調製し、離型処理を施したポリエステルフィルム(厚み38μm)からなるセパレータ上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように、リバースコート法により塗布し、90℃で3分間加熱処理して溶剤を揮発させ、粘着剤層を得た。
【0138】
(アンダーコート層の形成)
厚みが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムともいう)からなるフィルム基材の一方の面に、メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物の重量比2:2:1の熱硬化型樹脂(光の屈折率n=1.54)により、厚みが185nmの第一層目のアンダーコート層を形成した。次いで、シリカゾル(コルコート(株)製、製品名「コルコートP」)を、固形分濃度2%になるようにエタノールで希釈し、第一層目のアンダーコート層上に、シリカコート法により塗布し、その後、150℃で2分間乾燥、硬化させて、厚みが33nmの第二層目のアンダーコート層(SiO膜,光の屈折率1.46)を形成した。第一層目、第二層目のアンダーコート層を形成した後の表面抵抗は、いずれも1×1012Ω/□以上であった。
【0139】
(透明導電体層の形成)
次に、第二層目のアンダーコート層上に、アルゴンガス98%と酸素ガス2%とからなる0.4Paの雰囲気中で、酸化インジウム97重量%、酸化スズ3重量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、透明導電体層としての厚み22nmのITO膜(光の屈折率2.00)を形成した。
【0140】
(粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製)
次いで、ITO膜形成面とは反対側の面に、上記でセパレータ上に形成した粘着剤層を貼り合わせて、粘着剤層付き透明導電性フィルムを作製した。
【0141】
(ITO膜のエッチングによるパターニング)
粘着剤層付き透明導電性フィルムの透明導電体層に、ストライプ状にパターニングされているフォトレジストを塗布し、乾燥硬化した後、25℃、5%の塩酸(塩化水素水溶液)に、1分間浸漬して、ITO膜のエッチングを行った。
【0142】
(第二層目のアンダーコート層のエッチングによるパターニング)
上記ITO膜のエッチングを行った後、引き続きフォトレジストを積層したまま、45℃、2%の水酸化ナトリウム水溶液に、3分間浸漬して、第二層目のアンダーコート層のエッチングを行い、その後、フォトレジストを除去した。
【0143】
(透明導電体層の結晶化)
上記第二層目のアンダーコート層のエッチングを行った後、140℃で90分間の加熱処理を行って、ITO膜を結晶化した。
【0144】
実施例2〜4
実施例1において、フィルム基材である厚み25μmのPETフィルムの代わりに、表1に示す厚みのPETフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製し、また、その後のパターニング、結晶化を行なった。
【0145】
実施例5
実施例1において、フィルム基材である厚みが25μmのPETフィルムの代わりに、厚み75μmのPETフィルムを用いたこと、また、粘着剤層の厚みを25μmから150μmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製し、また、その後のパターニング、結晶化を行なった。
【0146】
実施例6
(アクリル系ポリマー溶液の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル100部、アクリル酸5部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.075部、及び、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2部を酢酸エチルと共に加えて、窒素ガス気流下、55℃にて10時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量220万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分濃度30%)(以下、「アクリル系ポリマー溶液(I)」ともいう)を得た。
【0147】
(粘着剤の調製)
上記アクリル系ポリマー溶液(I)の固形分100部に対して0.2部のジベンゾイルパーオキシド(日本油脂(株)製,商品名「ナイパーBMT」)と、0.2部のエポキシ系架橋剤であるジグリシジルアミノメチルシクロへキサン(三菱瓦斯化学(株)製,商品名「テトラッドC」)、0.1部のイソシアネート系架橋剤であるトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネートのアダクト体(日本ポリウレタン工業(株)製,商品名「コロネートL」)と、0.075部のシランカップリング剤(信越化学工業(株)製,KBM403)を均一に混合撹拌して、アクリル系粘着剤溶液(固形分10.9重量%)を調製した。
【0148】
(粘着剤層の形成)
離型処理を施したポリエステルフィルム(厚み38μm)からなるセパレータ上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように、上記アクリル系粘着剤をリバースコート法により塗布し、155℃で3分間加熱処理して溶剤を揮発させ、粘着剤層を得た。
【0149】
(粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製等)
実施例1において、粘着剤層として、上記で形成した粘着剤層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製し、また、その後のパターニング、結晶化を行なった。
【0150】
実施例7
(粘着剤層を形成するポリマーの調製)
実施例1と同様にして、モノマー単位の重量比が、nBA/MMA=60/40になるように変えたこと以外は、PMMA−PnBA−PMMAのトリブロック共重合体2を得た。なお、両サイドのPMMAの割合は同じである。また、トリブロック共重合体2の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は実施例1で得られたトリブロック共重合体1と同じである。
【0151】
実施例1において、トリブロック共重合体1の代わりに、上記で調製したトリブロック共重合体2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製し、また、その後のパターニング、結晶化を行なった。
【0152】
比較例1
(アクリル系ポリマーの調製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル100部、アクリル酸2部、酢酸ビニル5部、及び、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2部を酢酸エチルと共に加えて、窒素ガス気流下、55℃にて10時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量220万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分濃度30%)(以下、「アクリル系ポリマー溶液(II)」ともいう)を得た。
【0153】
(粘着剤の調製)
上記アクリル系ポリマー溶液(II)の固形分100部に対して、1部のイソシアネート系架橋剤であるトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネートのアダクト体(日本ポリウレタン工業(株)製,商品名「コロネートL」)を均一に混合撹拌して、アクリル系粘着剤溶液(固形分10.9重量%)を調製した。
【0154】
(粘着剤層の形成)
離型処理を施したポリエステルフィルム(厚み38μm)からなるセパレータ上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように、上記アクリル系粘着剤をリバースコート法により塗布し、150℃で3分間加熱処理して溶剤を揮発させ、粘着剤層を得た。
【0155】
(粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製等)
実施例1において、粘着剤層として、上記で形成した粘着剤層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製し、また、その後のパターニング、結晶化を行なった。
【0156】
比較例2
(粘着剤層を形成するポリマーの調製)
実施例1と同様にして、モノマー単位の重量比が、nBA/MMA=50/50になるように変えたこと以外は、PMMA−PnBA−PMMAのトリブロック共重合体3を得た。なお、両サイドのPMMAの割合は同じである。また、トリブロック共重合体3の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は実施例1で得られたトリブロック共重合体1と同じである。
【0157】
実施例1において、トリブロック共重合体1の代わりに、上記で調製したトリブロック共重合体3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製し、また、その後のパターニング、結晶化を行なった。
【0158】
比較例3
実施例1において、粘着剤層の厚みを25μmから300μmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製し、また、その後のパターニング、結晶化を行なった。
【0159】
比較例4
比較例1において、フィルム基材である厚みが25μmのPETフィルムの代わりに、厚み100μmのPETフィルムを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製し、また、その後のパターニング、結晶化を行なった。
【0160】
<評価>
実施例及び比較例で得られた粘着剤層付き透明導電性フィルムについて、下記評価を行なった。結果を表1に示す。表1には、フィルム基材、粘着剤層の厚みおよびこれらの総厚みを併せて示す。
【0161】
≪貯蔵弾性率≫
セパレータ上に形成された粘着剤層について、以下方法により貯蔵弾性率を求めた。
[貯蔵弾性率の測定方法]
貯蔵弾性率は、レオメトリック社製の粘弾性スペクトロメータ(商品名:RSA−II)を用いて行った。測定条件は、周波数1Hz、サンプル厚2mm、圧着加重100g、昇温速度5℃/minでの−50℃〜200℃の範囲に於ける、23℃での測定値とした。
【0162】
≪段差目視評価≫
粘着剤層付き透明導電性フィルムからセパレータを取り除いた後、粘着剤層の側をガラス板に貼り合せたものをサンプルとした。サンプルを、粘着剤層付き透明導電性フィルムのパターニングされた透明導電体層側が上側になるように配置して、目視にて段差評価を行った。評価は、パターニング部と非パターニング部の判別ができるか否かを下記基準で評価した。目視距離は20cm、目視角度はサンプル面から40度とした。
◎:パターニング部と非パターニング部の判別が困難。
○:パターニング部と非パターニング部とをわずかに判別できる。
△:パターニング部と非パターニング部とを判別できる。
×:パターニング部と非パターニング部とをはっきりと判別できる。
【0163】
≪密着力≫
粘着剤層付き透明導電性フィルムからセパレータを取り除いた後、粘着剤層の密着性を指触によって下記の基準で評価した。
○:粘着剤としてのタック感あり
×:タック感なし
【0164】
【表1】

【符号の説明】
【0165】
1 フィルム基材
2 透明導電体層
a パターニング部
b 非パターニング部
3 粘着剤層
4 アンダーコート層
S セパレータ
G オリゴマー防止層
11、12、13、14、15 粘着剤層付き透明導電性フィルム
F 機能層
W ウインドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材と、前記フィルム基材の一方の面に積層され、且つパターニングされた透明導電体層と、前記フィルムの他方の面に積層された粘着剤層とを有する、静電容量方式タッチパネルに用いられる粘着剤層付き透明導電性フィルムであって、
前記フィルム基材の厚みは10〜110μmであり、
前記フィルム基材と前記粘着剤層の総厚みは30〜300μmであり、且つ、
前記粘着剤層は、23℃における貯蔵弾性率が1.2×10〜1.0×10Pa未満であることを特徴とする粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記透明導電体層は、少なくとも1層のアンダーコート層を介して、前記フィルム基材に積層されていることを特徴とする請求項1記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層は、オリゴマー防止層を介して、前記フィルム基材に積層されていることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【請求項4】
パターニングされた透明導電体層は、結晶化していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法であって、
厚み10〜110μmのフィルム基材の一方の面に透明導電体層が積層されており、且つ、前記フィルム基材の他方の面に、23℃における貯蔵弾性率が1.2×10〜1.0×10Pa未満の粘着剤層であって、前記フィルム基材と前記粘着剤層の厚みの総厚みが30〜300μmになるように制御されている粘着剤層を有する積層体を準備する工程A、
前記工程Aで得られる積層体における前記透明導電体層をパターニングする工程Bを有することを特徴とする粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項6】
さらに、前記工程Aで得られる積層体を60〜200℃で加熱処理して、前記積層体における透明導電体層を結晶化する工程Cを有することを特徴とする請求項5記載の粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記工程Aで得られる積層体にパターニングする工程Bを施した後に、結晶化工程Cを施すことを特徴とする請求項6記載の粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤層付き透明導電性フィルムを少なくとも1つ備えていることを特徴とする静電容量方式タッチパネル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−128629(P2012−128629A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279066(P2010−279066)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】