説明

粘着剤組成物

【課題】本発明は、樹脂に対する溶解性に優れるイオン導電剤を含み、高い導電性、透明性を有し、かつ、長期間の使用においても安定した特性を維持可能な粘着剤組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】アクリレートまたはメタクリレート構造を有する樹脂形成成分と、ペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホニルアミド塩類[(FSO)(C2n+1SO)N・M]から選択された少なくとも1種の化合物と、を含む。但し、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム、アルキルアンモニウム、アルキルホスホニウムからなる群から選ばれた陽イオンのいずれか一種である。また、nは、1〜4の整数を示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネル等の所謂フラットディスプレイパネルには、一般に、粘着層を介して、偏光板、位相差板、及び反射防止フィルム等の各種光学フィルムが積層されている。また、こうした光学フィルムには、流通、製造過程において傷や汚れを防止することを目的として、離形フィルムや表面保護フィルムが貼り合わされている。
【0003】
例えば、表面保護フィルムは、偏光板等に貼り合わされることで、フラットディスプレイパネルをテレビ受信機や携帯電話機の筐体に組み込む工程、及びフラットディスプレイパネルに配線を取り付ける工程において、ディスプレイパネルに貼り合わされた偏光板を保護する。
【0004】
ところで、フラットディスプレイパネルの表示性能を検査する際には、光学的な阻害要因となる表面保護フィルムを取り除いた上で、検査を行う必要がある。
表面保護フィルムを取り除く際には、工程時間を短縮するために、10m/分程度のスピードで表面保護フィルムを剥離している。このような比較的速いスピードで表面保護フィルムを剥離すると、表示面に静電気が帯電されやすくなる。
【0005】
例えば、液晶ディスプレイパネルの表示面に静電気が帯電すると、帯電した静電気が液晶層中の液晶分子の配向状態を乱してしまい、本来には表示性能が合格水準に達しているはずのものが、合格水準を満たさずに不良品と判定される虞がある。
【0006】
そこで、従来、表面保護フィルムの粘着層に帯電防止剤を含有させて、粘着層の導電性を向上させることで静電気の蓄積を防止したり、或いは、表面保護フィルムとは別に帯電防止層をフラットディスプレイパネルに積層させ静電気の蓄積を防止することが行われている。
例えば、特許文献1には、ビス(フルオロスルホニル)イミドを含有する粘着剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−155585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドは、高い導電性を有しているが、加水分解しやすい。そのため、特許文献1に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドを含んだ粘着剤組成物を長期間使用した場合、粘着剤組成物の導電性が低下する虞があった。
また、粘着剤組成物を構成する材料としては、樹脂に対する溶解性に優れたものを用いる必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、樹脂に対する溶解性に優れたイオン導電剤(導電性付与剤)を含み、高い導電性、透明性を有し、かつ、長期間の使用においても安定した特性を維持可能な粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1] アクリレートまたはメタクリレート構造を有する樹脂形成成分と、
下記式(1)で表されるペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホンアミド塩類から選択された少なくとも1種の化合物と、
を含むことを特徴とする粘着剤組成物。
(FSO)(C2n+1SO)N・M ・・・(1)
但し、上記式(1)において、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム、アルキルアンモニウム、アルキルホスホニウムからなる群から選ばれた陽イオンのいずれか一種である。また、nは、1〜4の整数を示している。
[2] 前記化合物が、下記式(2)で表されるトリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホンアミド塩であることを特徴とする前項[1]記載の粘着剤組成物。
(FSO)(CFSO)N・M ・・・(2)
但し、上記式(2)において、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム、アルキルアンモニウム、アルキルホスホニウムからなる群から選ばれた陽イオンのいずれか一種である。
[3] 前記Mが、Li,Na,Kのうち、いずれか1種の元素であることを特徴とする前項[1]又は[2]記載の粘着剤組成物。
[4]ヒドロキシル基含有モノマーよりなる成分を含むことを特徴とする前項[1]乃至[3]のうち、いずれか1項記載の粘着剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂に対する溶解性に優れるイオン導電剤を含み、高い導電性、透明性を有し、かつ、長期間の使用においても安定した特性を維持可能な粘着剤組成物を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る粘着剤組成物について詳細に説明する。
(実施の形態)
本実施の形態の粘着剤組成物は、アクリレートまたはメタクリレート構造を有する樹脂形成成分と、下記式(3)に示される含フッ素スルホニルアミド塩と、を含む。
(C2x+1SO)(C2y+1SO)N・M・・・(3)
但し、上記式(3)において、xとyは、0〜4の整数であり、かつxとyは異なる整数である。
【0013】
また、上記式(3)においてカチオン成分Mは、特に制限されるものではなく、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム、アルキルアンモニウム、アルキルホスホニウムからなる群から選ばれた陽イオンのいずれか一種を適用することができる。
【0014】
(アクリレートまたはメタクリレート構造を有する樹脂形成成分)
本発明では、ベースポリマーとして、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートの1種または2種以上を主成分とするアクリル系ポリマーを含有する。アクリル系ポリマーは、粘着性能のバランスの観点から、ガラス転移点Tgが0℃以下(通常は−100℃以上)であることが好ましい。また、同様の観点から、アルキル基の炭素数は6〜14が好ましい。
【0015】
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートの1種または2種以上を主成分とするアクリル系ポリマーとしては、炭素数が1〜14のアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートの1種または2種以上を50〜100重量%含有する単量体を主成分とした重量平均分子量10万以上のアクリル系ポリマーが用いられる。
なお、以下の説明では、アクリレート及びメタクリレートを総称して「(メタ)アクリレート」と表記する。
【0016】
炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ) アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
アクリル系ポリマーの酸価は、1.0以下であり、0.8以下が好ましく、0.0が最も好ましい。酸価が1.0を超えると、酸官能基の量が増加して、帯電防止性が不十分となる。アクリル系ポリマーの酸価は、カルボキシル基またはスルホネート基を有するモノマーの使用量をゼロ又は少なくすることで調整する。
【0018】
したがって、アクリル系ポリマーを構成するその他の成分としては、カルボキシル基またはスルホネート基を有するアクリレート及び/又はメタクリレート以外の成分であれば、特に限定されることなく用いることができる。中でも、架橋の制御を容易に行えることから、ヒドロキシル基含有モノマーが好ましく、特に、ヒドロキシル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートが好ましい。
【0019】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等があげられる。粘着物組成物は、ヒドロキシル基含有モノマを0.1〜10質量部含むことが好ましい。
【0020】
上記のヒドロキシル基含有モノマー以外の成分としては、アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル類、スチレン等の芳香族ビニル化合物等の凝集力・耐熱性向上成分や、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド等のアミド基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類等の接着力向上や架橋化基点として働く官能基を有する成分が挙げられる。以上の成分は、1種又は2種以上併用することも可能である。
【0021】
また、アクリル系ポリマーを適宜架橋することで、更に耐熱性に優れた粘着剤組成物が得られる。架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物等アクリル系ポリマーに適宜架橋化基点として含ませたヒドロキシル基、アミノ基、アミド基等と反応しうる基を有する化合物を添加し反応させる、いわゆる架橋剤を用いる方法がある。中でも、ポリイソシアネート化合物やエポキシ化合物が特に好ましい。
【0022】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名;コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名;コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名コロネートHX)[いずれも日本ポリウレタン工業(株)製]等のイソシアネート付加物等が挙げられる。
架橋剤としてポリイソシアネート化合物を用いる場合、ポリイソシアネート化合物の添加量は、重合体100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0023】
エポキシ化合物としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名;TETRAD−X)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル) シクロヘキサン(商品名;TETRAD−C)[いずれも三菱瓦斯化学(株)製]等が挙げられる。
これらの架橋剤は単独で、または2種以上の混合系で使用される。架橋剤の使用量は、架橋すべきアクリル系ポリマーとのバランスにより、さらには、使用用途によって適宜選択される。
【0024】
また、実質的な架橋剤として放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーとして添加し、放射線等で架橋させることもできる。放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーとしては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルベンジル基の如き放射線の照射で架橋処理(硬化)しうる1種または2種以上の放射線反応性を2個以上有する多官能モノマー成分が用いられる。
なお、一般的には放射線反応性不飽和結合が10個以下のものが好適に用いられる。多官能モノマーは2種以上を併用することも可能である。
【0025】
多官能モノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。
【0026】
多官能モノマーの使用量は、架橋すべきアクリル系ポリマーとのバランスにより、さらには、粘着シートとしての使用用途によって適宜選択される。アクリル粘着剤の凝集力により充分な耐熱性を得るためには、アクリル系ポリマー100重量部に対して0.1〜30重量部で配合するのが好ましい。また、柔軟性、接着性の点からアクリル系ポリマー100重量部に対して、10重量部以下で配合することがより好ましい。
【0027】
放射線としては、例えば、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、x線、電子線等が挙げられるが、制御性および取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線が好適に用いられる。より好ましくは、波長200〜400nmの紫外線を用いるとよい。
紫外線は、高圧水銀灯、マイクロ波励起型ランプ、ケミカルランプ等の適宜光源を用いて照射することができる。なお、放射線として紫外線を用いる場合、アクリル粘着剤に光重合開始剤を添加するとよい。
【0028】
光重合開始剤としては、放射線反応性成分の種類に応じ、その重合反応の引金となり得る適当な波長の紫外線を照射することによりラジカルもしくはカチオンを生成する物質であればよい。
粘着剤組成物中にアクリル樹脂等の光硬化性化合物を含有する場合であって、紫外線等で重合硬化させる場合には、光重合開始剤を粘着剤組成物に含ませることが好ましい。
【0029】
光重合開始剤としては、種々の光重合開始剤を用いることができる。具体的には、例えば、ベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン等のモノカルボニル化合物、ベンザイル、2−エチルアントラキノン、9,10−フェナントレンキノン、メチル−α−オキソベンゼンアセテート、4−フェニルベンザイル等のジカルボニル化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のエーテル化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−n−プロピルフェニル−ジ(2,6−ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等のアシルフォスフィンオキシド化合物、メチル−4−(ジメトキシアミノ)ベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート等のアミノカルボニル化合物等が使用できる。
【0030】
また、光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。さらに、重合速度を向上させるために、光重合開始剤に1種又は2種以上の光反応開始助剤や光増感剤を併用してもよい。
【0031】
(含フッ素スルホニルアミド塩)
上記式(3)に示すように、本実施の形態の含フッ素スルホニルアミド塩は、非対称性アミド化合物であって、該含フッ素スルホニルアミド塩としては、トリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホニルアミド[(FSO)(CFSO)NM]、ペンタフルオロ−N−(フルオロスルホニル)エタンスルホニルアミド[(FSO)(CSO)NM]、ヘプタフルオロ−N−(フルオロスルホニル)プロパンスルホニルアミド[(FSO)(CSO)NM]、ノナフルオロ−N−(フルオロスルホニル)ブタンスルホニルアミド[(FSO)(CSO)NM]、ペンタフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]エタンスルホニルアミド[(CFSO)(CSO)NM]、ヘプタフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]プロパンスルホニルアミド[(CFSO)(CSO)NM]、ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド[(CFSO)(CSO)NM]、ヘプタフルオロ−N−[(ペンタフルオロエタン)スルホニル]プロパンスルホニルアミド[(CSO)(CSO)NM]、ノナフルオロ−N−[(ペンタフルオロエタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド[(CSO)(CSO)NM]、ノナフルオロ−N−[(ヘプタフルオロプロパン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド[(CSO)(CSO)NM]が挙げられる。
【0032】
本実施の形態では、上記式(3)で表される含フッ素スルホニルアミド塩のうち、下記式(4)で表されるペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホンアミド塩類から選択された少なくとも1種の化合物であることが好ましく、トリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホニルアミド塩[(FSO)(CFSO)N・M]がより好ましい。
(FSO)(C2n+1SO)N・M ・・・(4)
但し、上記式(4)において、カチオン成分Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム、アルキルアンモニウム、アルキルホスホニウムからなる群から選ばれた陽イオンのいずれか一種である。また、nは、1〜4の整数を示している。
【0033】
本実施の形態では、粘着剤組成物中に含まれるアクリレートまたはメタクリレート構造を有する樹脂形成成分100質量部に対して、上記式(1)で表されるペルフルオロアルキルスルホンイミド塩から選択された少なくとも1種の化合物が、樹脂100%重量部に対して0.01〜5質量部含まれていることが好ましい。
【0034】
ここで、上記含フッ素スルホニルアミド塩から選択された少なくとも1種の化合物が0.01質量部未満であると、導電性の効果が充分に得られないために好ましくない。
一方、5質量部を超えると、高温での使用時において樹脂から滲み出してブリードしたり、相分離したりするため好ましくない。これに対して、上記質量部の範囲であれば、高温の使用環境においても樹脂からにじみ出ることがなく、耐ブリード性を備えると共に、優れた導電性を有した粘着剤組成物となる。
【0035】
本実施の形態において、粘着剤組成物中のアクリレートまたはメタクリレート構造を有する樹脂形成成分、及び上記式(3)で表されるペルフルオロアルキルスルホンイミド塩から選択された少なくとも1種の化合物の組成比は、粘着剤組成物100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲が好ましく、10.0〜100質量部の範囲がより好ましい。
【0036】
上記アクリレートまたはメタクリレート構造を有する樹脂形成成分、及び含フッ素スルホニルアミド塩が0.1質量部未満であると、導電性の効果が充分に得られないために好ましくない。
これに対して、上記質量部の範囲であれば、高温の使用環境においても樹脂からにじみ出ることがなく、均一な樹脂が得られると共に、優れた耐ブリード性及び導電性を有する粘着剤組成物となる。
【0037】
また、本実施の形態において、粘着剤組成物に対する光重合開始剤の添加量は、特に制限はされないが、アクリレートまたはメタクリレート構造を有する樹脂形成成分100質量部に対して0.1〜20質量部の範囲内で添加することが好ましく、硬化速度、樹脂の硬度という観点から、1〜10質量部の範囲内で添加することが好ましい。
【0038】
また、その他の成分として、染料、顔料、充填剤、シランカップリング剤、接着性改良剤、安定剤、レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、潤滑剤、防錆剤等の添加剤を加えてもよい。
【0039】
本実施の形態の粘着剤組成物によれば、上記式(3)で表される含フッ素スルホニルアミド塩から選択された少なくとも1種の化合物(イオン導電剤)は、アクリレートまたはメタクリレート構造を有する樹脂形成成分に対する溶解性に優れている。
【0040】
特に、上記式(4)で表されるペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホンアミド塩類は、従来のイオン導電剤を構成するビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩[(CFSON・M]よりも高い導電性、透明性を有する粘着剤組成物を実現できる。
また、ペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホンアミド塩類は、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩[(FSON・M]と比較して、化学的に安定であるため、加水分解性しにくく、かつ経時的な分解反応が発生しにくい。これにより、粘着剤組成物を長期間使用した場合においても高い導電性を有することができる。
【0041】
つまり、樹脂に対する溶解性に優れたイオン導電剤を含み、高い導電性、透明性を有し、かつ、長期間の使用においても安定した特性を維持可能な粘着剤組成物を実現できる。
【0042】
次に、上記式(3)で示される含フッ素スルホニルアミド塩から選択された少なくとも1種の化合物を用いた本実施の形態の粘着剤組成物の製造方法の一例について、以下に説明する。
始めに、攪拌機、温度計、還流冷却器、及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、有機溶剤と、アクリレートまたはメタクリレート構造を有する樹脂形成成分と、重合開始剤と、を仕込み、攪拌しながら還流温度(例えば、50〜90℃)で反応させることで、アクリル系共重合体を生成する。
【0043】
次いで、該アクリル系共重合体の中に、上記式(3)に示される含フッ素スルホニルアミド塩から選択された少なくとも1種の化合物をとり込ませる。次いで、上記式(3)に示される含フッ素スルホニルアミド塩から選択された少なくとも1種の化合物をとり込んだアクリル系共重合体に、架橋剤を配合することで、導電性を有した本実施の形態の粘着剤組成物が製造される。
【0044】
本実施の形態の粘着剤組成物を製造する際に使用する上記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、n−オクタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピルグリコールモノメチルエーテル、プロピルグリコールモノエチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステルまたはラクトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミドまたはラクタム等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
次に、上記式(3)で表される含フッ素スルホニルアミド塩から選択された少なくとも1種の化合物(アミド化合物)の製造方法について説明する。
本実施の形態のアミド化合物の製造方法は、上記式(3)に示されるアミド化合物の製造方法であって、下記式(5)に示される含フッ素スルホン酸と、下記式(6)に示される含フッ素スルホニルアミドと、を塩化チオニル(SOCl)の存在下で反応させるものである。
2x+1SOH・・・(5)
2y+1SONH ・・・(6)
但し、上記式(5)及び(6)において、xとyは、0〜4の整数であり、かつxとyは異なる整数である。
【0046】
反応機構は、下記式(7)に示すような化学反応によって、上記式(5)に示される含フッ素スルホン酸と上記式(6)に示される含フッ素スルホンアミドとが塩化チオニル(SOCl)の存在下で反応することにより、上記式(3)に示す含フッ素スルホニルアミドと、塩化水素(HCl)と、二酸化硫黄(SO)とが生成していると推測される。
2x+1SOH+C2y+1SONH+SOCl→(C2x+1SO)(C2y+1SO)NH+2HCl+SO・・・(7)
但し、上記式(3)において、xとyは、0〜4の整数であり、かつxとyは異なる整数である。
【0047】
次に、下記式(8)に示すように、上記式(7)で得られる含フッ素スルホニルアミドを水酸化物等(MOH)で中和させることにより、上記式(3)で表される含フッ素スルホニルアミド塩を得ることができる。
(C2x+1SO)(C2y+1SO)NH+MOH→(C2x+1SO)(C2y+1SO)NM+HO・・・(8)
但し、上記式(8)において、Mは、カチオン成分を示している。カチオン成分Mとしては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム、アルキルアンモニウム、アルキルホスホニウムからなる群から選ばれた陽イオンのいずれか一種を適用することができる。また、カチオン成分Mは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)のいずれか一種の元素であることが特に好ましい。
【0048】
(含フッ素スルホン酸)
アミド化合物の製造方法において、一方の原料である上記式(5)で表される含フッ素スルホン酸としては、フルオロスルホン酸(FSOH)、トリフルオロメチルスルホン酸(CFSOH)、ペンタフルオロエチルスルホン酸(CSOH)、ヘプタフルオロプロピルスルホン酸(CSOH)、ノナフルオロブチルスルホン酸(CSOH)が挙げられる。
【0049】
(含フッ素スルホニルアミド)
また、他方の原料である上記式(6)で表される含フッ素スルホニルアミドとしては、フルオロスルホンアミド(FSONH)、トリフルオロメチルスルホンアミド(CFSONH)、ペンタフルオロエチルスルホンアミド(CSONH)、ヘプタフルオロプロピルスルホンアミド(CSONH)、ノナフルオロブチルスルホンアミド(CSONH)が挙げられる。
【0050】
上記アミド化合物の製造方法の一例としては、含フッ素スルホン酸に塩化チオニルを溶解して溶解液を生成する過程(溶解液の生成過程)と、この溶解液を加熱し、これに含フッ素スルホニルアミドを添加して反応させる過程(添加反応過程)と、を有する。以下、各過程について具体的に説明する。
【0051】
(溶解液の生成過程)
先ず、反応容器内に含フッ素スルホン酸と塩化チオニルとを反応させることなく投入して、含フッ素スルホン酸に塩化チオニルが溶解した溶解液を生成する。
【0052】
ここで、含フッ素スルホン酸の量は、添加する含フッ素スルホニルアミドに対してモル比で1〜20倍とすることが好ましく、1〜8倍とすることがより好ましい。
【0053】
(添加反応過程)
添加反応過程では、先ず、反応容器内に投入された上記溶解液を加熱する。次に、加熱している上記反応容器に含フッ素スルホニルアミドを添加する。このようにして、含フッ素スルホン酸と含フッ素スルホニルアミドとを塩化チオニルの存在下で反応させる。
【0054】
ここで、含フッ素スルホニルアミドを添加中の反応容器内の反応温度が、50〜140℃の範囲であることが好ましく、60〜120℃の範囲であることがより好ましい。
【0055】
上記アミド化合物の製造方法によれば、含フッ素スルホン酸と含フッ素スルホニルアミドとを塩化チオニルの存在下で反応させることにより、スルホン酸とスルホンアミドとから上記式(3)で表される含フッ素スルホニルアミド塩を合成することが可能となる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0057】
以下、実施例によって本発明の効果をさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例によって、なんら限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
始めに、攪拌機、温度計、還流冷却器、及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、2−エチルヘキシルアクリレート100gと、2−ヒドロキシエチルアクリレート2gと、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2gと、酢酸エチル153gと、を仕込み、その後、65℃で7時間反応させることで、固形分濃度40%のアクリル系共重合体を得た。
上記アクリル系共重合体250gと、架橋剤であるコロネートL(日本ポリウレタン工業製 固形分濃度75%)5gと、トリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホンアミドリチウム5gと、を混合することで、実施例1の粘着剤組成物を調製した。
【0059】
次いで、実施例1の粘着剤組成物をポリエステルフィルムに塗工し、90℃で3分間乾燥させ、厚さ25μmの粘着剤層を得た。次いで、粘着剤層の表面に、片側にシリコーンコートされたポリエステルフィルムを貼り合わせ、実施例1の粘着剤組成物を供えた粘着シートを作製した。
【0060】
次いで、剥離フィルムを剥がした後、得られた粘着面の表面抵抗を表面抵抗測定機(三菱化学(株)製、HT−450)を用いて測定した結果、1×10Ω/sq.であった。
上記粘着シートをSUS304製の板に貼り合わせ、JIS Z0237に準じてロールにより圧着した。剥離速度0.3m/分、剥離角度180度、23℃×50%RHの条件にて粘着力を測定した結果3.8N/25mmであった。
【0061】
(実施例2)
始めに、攪拌機、温度計、還流冷却器、及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、ブチルアクリレート90gと、メチルアクリレート10gと、2−ヒドロキシエチルアクリレート2gと、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル0.2gと、酢酸エチル153gと、を仕込み、その後、65℃で7時間反応させ、固形分濃度40%のアクリル系共重合体を得た。
次いで、該アクリル系共重合体250gと、架橋剤であるコロネートL(日本ポリウレタン工業製 固形分濃度75%)5gと、トリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホンアミドリチウム5gと、を混合することで、実施例2の粘着剤組成物を調製した。
【0062】
次いで、粘着剤組成物をポリエステルフィルムに塗工し、90℃で3分間乾燥させ、厚さ25μmの粘着剤層を得た。次いで、粘着剤層の表面に、片側にシリコーンコートされたポリエステルフィルムを貼り合わせることで、実施例2の粘着剤組成物を備えた粘着シートを作製した。
次いで、剥離フィルムを剥がした後、得られた粘着面の表面抵抗を表面抵抗測定機(三菱化学(株)製、HT−450)を用いて測定した結果、1×10Ω/sq.であった。
その後、粘着シートをSUS304製の板に貼り合わせ、JIS Z0237に準じてロールにより圧着した。剥離速度0.3m/分、剥離角度180度、23℃×50%RHの条件にて粘着力を測定した結果、3.7N/25mmであった。
【0063】
(実施例3)
トリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホンアミドリチウムの代わりにトリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホンアミドカリウムを用いた以外は、実施例1と同様な手法により、実施例3の粘着剤組成物を備えた粘着シートを作製した。
【0064】
次いで、剥離フィルムを剥がした後、得られた粘着面の表面抵抗を表面抵抗測定機(三菱化学(株)製、HT−450)を用いて測定した結果、5×10Ω/sq.であった。
その後、粘着シートをSUS304製の板に貼り合わせ、JIS Z0237に準じてロールにより圧着した。剥離速度0.3m/分、剥離角度180度、23℃×50%RHの条件にて粘着力を測定した結果、粘着力は3.6N/25mmであった。
【0065】
(実施例4)
トリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホンアミドリチウムの代わりに1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビストリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホンアミドを用いた以外は、実施例1と同様な手法により、実施例4の粘着剤組成物を備えた粘着シートを作製した。
【0066】
次いで、剥離フィルムを剥がした後、得られた粘着面の表面抵抗を表面抵抗測定機(三菱化学(株)製、HT−450)を用いて測定した結果、5×10Ω/sq.であった。
その後、粘着シートをSUS304製の板に貼り合わせ、JIS Z0237に準じてロールにより圧着した。剥離速度0.3m/分、剥離角度180度、23℃×50%RHの条件にて粘着力を測定した結果、粘着力は3.7N/25mmであった。
【0067】
(比較例)
トリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホンアミドカリウムを添加しないこと以外は、実施例1と同様な手法により、比較例の粘着シートを作成した。
次いで、剥離フィルムを剥がした後、得られた粘着面の表面抵抗を表面抵抗測定機(三菱化学(株)製、HT−450)を用いて測定した結果、1×1014Ω/sq.であった。
【0068】
その後、粘着シートをSUS304製の板に貼り合わせ、JIS Z0237に準じてロールにより圧着した。剥離速度0.3m/分、剥離角度180度、23℃×50%RHの条件にて粘着力を測定した結果、粘着力は3.8N/25mmであった。
【0069】
上記実施例1〜4及び比較例の粘着シートの抵抗及び粘着力の測定結果から、実施例1〜4の粘着シートを構成する粘着剤組成物は、比較例の粘着シートを構成する粘着剤組成物と比較して、高い導電性を有することが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレートまたはメタクリレート構造を有する樹脂形成成分と、
下記式(1)で表されるペルフルオロ−N−(フルオロスルホニル)アルカンスルホンアミド塩類から選択された少なくとも1種の化合物と、
を含むことを特徴とする粘着剤組成物。
(FSO)(C2n+1SO)N・M ・・・(1)
但し、上記式(1)において、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム、アルキルアンモニウム、アルキルホスホニウムからなる群から選ばれた陽イオンのいずれか一種である。また、nは、1〜4の整数を示している。
【請求項2】
前記化合物が、下記式(2)で表されるトリフルオロ−N−(フルオロスルホニル)メタンスルホンアミド塩であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
(FSO)(CFSO)N・M ・・・(2)
但し、上記式(2)において、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム、アルキルアンモニウム、アルキルホスホニウムからなる群から選ばれた陽イオンのいずれか一種である。
【請求項3】
前記Mが、Li,Na,Kのうち、いずれか1種の元素であることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
ヒドロキシル基含有モノマーよりなる成分を含むことを特徴とする請求項1乃至3のうち、いずれか1項記載の粘着剤組成物。

【公開番号】特開2012−126846(P2012−126846A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280643(P2010−280643)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(597065282)三菱マテリアル電子化成株式会社 (151)
【Fターム(参考)】